説明

流体移送装置、流体移送方法、プログラム、及び、記録媒体

【課題】本発明は、例えば高度な計測機器が必要とするような高精度な流体移送制御が可能であり、かつ、流体移送の制御フローである流体移送過程を容易に構築可能な流体移送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】流体移送機構と流体移送制御手段を備える流体移送装置であって、前記流体移送制御手段は、設定手段とデータバッファとプログラムカウンタとコード化手段と記憶手段とコード展開手段と処理手段を有し、前記処理手段は、当該処理手段の動作を制御する処理制御手段と、前記流体移送機構の前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、前記流体移送機構の前記流体吸入部における流体の吸入処理及び前記流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段を有し、前記動作コードは、前記処理制御手段、前記信号制御手段及び前記流体制御手段の動作にそれぞれ対応する。流体移送機構は流体移送を一貫して内包する恒温槽を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体移送装置、流体移送方法、プログラム、及び、記録媒体に関し、特に、流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し、信号入出力部を有する流体移送機構と、前記流体移送機構を制御する流体移送制御手段を備える流体移送装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品の残留農薬や化学物質が問題となっている。例えば、食中毒の原因として検出された残留農薬MP(メチルパラチオン)は、強い急性毒性を持つとして、現在の日本では農薬としての使用が禁止されている。しかし、海外では使用されている可能性がある。海外からの野菜などの日本への輸入は増加しており、輸入食品中に残留する農薬や化学物質の計測技術が注目されている。
【0003】
従来、食品中に残留する微量な残留農薬や化学物質を迅速で高感度に測定するには、多大な時間と費用が必要であった。そのため、迅速で低廉な簡易測定法の開発・導入が期待されていた。
【0004】
発明者らは、SPR(表面プラズモン共鳴)イムノアッセイ装置を開発した(特許文献1及び非特許文献1から3参照)。これは、従来のイムノアッセイ装置と比べて、試料の着色の影響を全く受けない利点を有する。さらに、パームサイズSPR計測の差動化を行い、プロトタイプの試作に成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4076962号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】田中 真由美、外6名著、「メチルパラチオン計測のための表面プラズモン共鳴イムノセンサーの開発」、BUNSEKI KAGAKU、Vol.56、No.9、pp.705-712、2007.
【非特許文献2】RuiQi Zhang、外7名著、“Sequential injection chemiluminescence immunoassay for nonionic surfactants by using magnetic microbeads”、ANALYTICA CHIMICA ACTA、600、pp.105-113、2007.
【非特許文献3】RuiQi Zhang、外8名著、“Sequential injection chemiluminescence immunoassay for anionic surfactants using magnetic microbeads immobilized with an antibody”、Talanta、2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SPRイムノアッセイ計測は、計測対象である流体の温度変化や、人の動き及び計測室のドアの開閉といったわずかな圧力変化にも計測精度が左右されるほどに繊細な計測である。したがって、計測を効果的に実現するためには、計測機器に移送される流体が高精度に制御されなければならず、そのような制御を実現する流体移送装置が必要となる。
【0008】
従来、このような高精度な制御を可能とする流体移送装置は、外部パソコンにインストールされた汎用の機器制御フロー構築ソフトウェアにより制御されていた。汎用の機器制御フロー構築ソフトウェアを用いた場合、配線やスイッチといった基本的な制御ツールを最小構成単位として、制御フローの全てを組み立てる必要がある。そのため、計測対象の流体を高精度に制御するためには、構築すべき制御フローが非常に複雑なものとなる。
【0009】
SPRイムノアッセイ計測のような高精度な計測を行う者は、通常、ソフトウェアを用いた制御について技術的知識を有していない。また、仮に有していたとしても、細分化された制御フローを構築し、さらに各ステップを一つ一つチェックしていく作業の負担は膨大なものとなる。
【0010】
なお、このような課題は、計測分野に限らず、高度な流体移送制御が必要となる場合に広く生じうるものである。
【0011】
ゆえに、本発明は、例えば高度な計測機器が必要とするような高精度な流体移送制御が可能であり、かつ、流体移送の制御フローである流体移送過程を容易に構築可能な流体移送装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、上記目的に加えて本発明は、各種計測機器に接続可能な流体移送装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し、信号入出力部を有する流体移送機構と、前記流体移送機構を制御する流体移送制御手段を備える流体移送装置であって、前記流体移送制御手段は、前記流体移送機構に対する動作コード及び制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段と、前記設定手段において設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを順番付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番に従って読み出して処理する処理手段を有し、前記処理手段は、当該処理手段の動作を制御する処理制御手段と、前記流体移送機構の前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、前記流体移送機構の前記流体吸入部における流体の吸入処理及び前記流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段を有し、前記動作コードは、前記処理制御手段、前記信号制御手段及び前記流体制御手段の動作にそれぞれ対応するものである。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の流体移送装置であって、前記流体吸入部は、シリンジポンプとバルブセレクタを有し、前記処理制御手段は、処理を行わないNOP制御手段と、経過時間を計測する計時制御手段と、待ち処理を行う待ち制御手段と、所定の条件を満たす場合に前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを処理する順番を変更するJMP制御手段を有し、前記信号制御手段は、前記信号入出力手段に対して、特定のビットをオンするビットオン制御手段と、特定のビットをオフするビットオフ制御手段と、特定のビットがオンになるのを待たせるビットオン待ち制御手段と、特定のビットがオフになるのを待たせるビットオフ待ち制御手段を有し、前記流体制御手段は、前記流体吸入部に対して液体のIN処理をさせるIN吸入制御手段と、前記流体吸入部に対して液体のOUT処理をさせるOUT吸入制御手段と、前記流体終端部に対して流体の排出IN処理をさせる排出IN制御手段と、前記流体終端部に対して流体の排出OUT処理をさせる排出OUT制御手段と前記流体移送機構のバルブを制御するバルブNo.制御手段と、前記流体移送機構のバルブの流路を制御するバルブバイパス制御手段を有し、前記動作コードには、前記NOP制御手段、前記計時制御手段、前記待ち制御手段、前記JMP制御手段、前記ビットオン制御手段、前記ビットオフ制御手段、前記ビットオン待ち制御手段、前記ビットオフ待ち制御手段、前記IN吸入制御手段、前記OUT吸入制御手段、前記排出IN制御手段、前記排出OUT制御手段、前記バルブNo.制御手段及び前記バルブバイパス制御手段のそれぞれの動作に対応するものが含まれ、前記設定手段は、ユーザが、タッチパネル方式により、順番を付けて、前記動作コードの一つを選択し、流体移送パラメータを設定することで、流体吸入部への流体の吸入から流体終端部への流体の排出に至る過程を設定可能であり、前記流体移送パラメータを前記流体移送機構の制御パラメータに変換する論理演算手段を備えるものである。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の流体移送装置であって、前記流体移送制御手段は、前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを一時的に記憶するデータバッファと、前記データバッファに記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせにプログラム番号を関連付けるプログラムカウンタと、前記データバッファに記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータと前記プログラム番号の組み合わせを前記データバッファから読み出し、まとめてコード化し、流体移送過程として記憶手段に転送するコード化手段と、前記処理手段が前記記憶手段から前記流体移送過程を読み出す際に、コード化された前記流体移送過程を個々の前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせに展開する、コード展開手段を有し、前記プログラムカウンタは、前記処理手段が処理を実行する際に、前記流体移送過程の前記プログラム番号のうち前記処理手段が処理すべきプログラム実行番号を指し示すものである。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の流体移送装置であって、前記流体終端部は、計測機器に接続可能であり、前記流体終端部から前記計測手段へ流体が排出されるものであり、前記流体移送機構は、内部空間の温度を一定に保つことが可能である恒温層を有し、前記処理手段は、前記計測機器を制御する計測制御手段及び前記恒温槽を制御する温度制御手段を有し、前記恒温槽は、移送する流体、前記流体吸入部、前記流体終端部、前記計測機器を内包できることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の流体移送装置であって、前記計測機器は、光量計測及びSPRイムノアッセイ法によるSPR計測が可能であり、前記計測制御手段は、前記計測機器に対して、前記流体終端部に到達した流体の光量計測処理を行わせる光量計測制御手段と、前記計測機器に対して、前記流体終端部に到達した流体のSPR計測処理を行わせるSPR計測制御手段を有し、前記動作コードには、前記光量計測制御手段及び前記SPR計測制御手段のそれぞれの動作に対応するものが含まれるものである。
【0018】
請求項6に係る発明は、流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し、信号入出力部を有する流体移送機構と、前記流体移送機構を制御する流体移送制御手段を一体として備える流体移送装置における流体移送制御方法であって、前記流体移送制御手段は、前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、前記流体移送機構の流体吸入部における流体の吸入処理及び流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段と、前記信号制御手段及び前記流体制御手段の動作にそれぞれ対応する動作コード及び当該動作コードの制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段を有し、前記設定手段が、記憶手段に対して、前記設定手段において設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを順番付けて記憶させるステップと、前記流体移送制御手段の処理手段が、前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番に従って読み出し、当該流体移送制御手段の動作を制御するステップを含むものである。
【0019】
請求項7に係る発明は、流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し信号入出力部を有する流体移送機構、並びに、動作コード及び制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段、前記設定手段により設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番付けて記憶する記憶手段を備える流体移送制御手段、とを備える流体移送装置を制御するためのコンピュータを、前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせの順番に従って、前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、前記流体移送機構の流体吸入部における流体の吸入処理及び流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段、として、動作コードに対応させて動作させて機能させるためのプログラムであることを特徴とする。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であることを特徴とする。
【0021】
なお、設定手段における入力手段は、流体移送装置に付属の入力手段であればよく、請求項2記載のタッチパネル方式による入力以外にも、例えば画面付近に付属のプッシュ式ボタンあるいはキーボードによる入力手段であってもよい。
【0022】
また、JMP制御手段は、所定の条件を満たす場合に動作コード及び制御パラメータの複数の組み合わせを処理する順番を変更する以外にも、例えば、所定の条件が成立する場合には、JMP制御手段が流体移送過程の一部を繰り返させる制御を行うものであってもよい。
【0023】
さらに、上記とは異なる各種制御手段を処理手段に設けてもよい。例えば、恒温槽の内部空間の湿度を制御する湿度制御手段、又は、同じく恒温槽の内部空間の圧力を制御する圧力制御手段を設けてもよい。
【0024】
また、請求項3において、データバッファに記憶された動作コード及び制御パラメータの組み合わせとプログラム番号を関連付けるプログラムカウンタと、処理手段が処理を実行する際にプログラム実行番号を指し示すプログラムカウンタとが同じであるとしたが、両者を別々のプログラムカウンタとして設けてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本願の各請求項に係る発明によれば、流体移送機構と流体移送制御手段とを備える流体移送装置において、流体移送制御手段が備える各種制御手段に対応する動作が流体移送過程の最小構成単位となる。したがって、外部パソコンにインストールされた汎用の機器制御フロー構築ソフトウェアで制御する場合と比較して、ユーザが、装置の詳細な制御の順序ではなく、装置の動作の順序に基づいて制御フローを構築しチェックすることを可能とする。また、装置の動作は配線やスイッチといった制御の基本ツールに比べて大きな構成単位である。このため、ソフトウェアを用いた制御に通じていない計測者が、高精度な流体移送を実現するための複雑な流体移送過程を容易に構築することを可能とする。
【0026】
さらに、請求項2に係る発明によれば、ユーザは20程度の各種制御手段の動作コードの選択がもたらす流体移送機構の動作を把握することにより、流体移送機構が実現可能ないかなる動作をも構築可能である。すなわち、ユーザは途方に暮れることもなく、かつ、編集範囲を制限されることもなく、必要十分な構成単位を基に流体移送過程を構築し、チェックし、又は修正することが可能となる。
【0027】
さらに、請求項3に係る発明によれば、動作コード及び制御パラメータの組み合わせを、まとめてコード化し、流体移送過程として記憶手段に記憶させることが可能となる。コード化の際、併せて通常のデータ圧縮技術を用いてデータを圧縮することで、記憶手段が記憶する流体移送装置のデータ量を減らすことが可能となる。請求項2に係る発明のように制御手段が多数となることで、複雑かつ大規模化な流体移送過程が編集可能となるため、このようにデータ量を減らす手段を導入することで、実質的な記憶容量の増大を図ることが可能となる。通常は、流体移送装置の記憶容量が小さいことを考慮すると、このようにデータ量を減らすことは望ましいといえる。また、実質的に記憶容量が増大することで、過去に設定した流体移送過程を多数保存することも可能となる。
【0028】
また、上記の効果に加えて、請求項4及び5に係る発明によれば、流体は移送される前の段階から流体吸入部及び流体終端部を経由して計測機器に至るまで一貫して、温度が一定に保たれる恒温槽内部で全ての移送が行われる。この効果は、従来計測機器の付属物と考えられていた流体移送装置が計測機器を内包するという発想の転換によって可能となったものであり、計測対象となる流体の計測環境を高精度に制御可能となる。しかも、計測機器を流体移送装置の内部にある恒温槽内に入れたことで、流体移送装置を密閉することなどにより、計測室などの外部雰囲気との遮断が可能となる。結果として、人の動きや計測室のドアの開閉といったわずかな圧力変化の影響に敏感なSPR測定の安定な実行が可能となる。
【0029】
さらに、請求項4及び5に係る発明によれば、計測機器に接続し、流体移送から計測まで全自動で制御することが可能となり、計測対象となる流体の計測環境を高精度に制御可能となる。したがって、SPRイムノアッセイ装置などの各種計測機器に、計測対象となる流体の計測環境を高精度に制御された流体を移送することにより、精密な計測が可能となる。
【0030】
また、上記の効果に加えて、本願の各請求項に係る発明によれば、制御手段が個別に存在することで、それぞれの制御手段が専門性をもつため、確実性の高い動作が期待できる。また、流体移送機構の各機能に対応する制御手段が区別されているため、流体移送機構が正常に機能しない場合に故障をきたした制御手段を容易に特定できる。したがって、流体移送装置のメンテナンスが容易となる。
【0031】
さらに、請求項2に係る発明によれば、論理演算手段が流体移送パラメータを制御パラメータに変換する。流体移送パラメータを工業単位のパラメータとし、制御パラメータを前記処理手段が前記流体移送装置を制御するためのパラメータとすることで、さらにユーザフレンドリーな環境をユーザに提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る流体移送装置の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る流体移送装置の動作を示すフロー図である。
【図3】図2におけるステップEXST3の制御フローの具体例を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る流体移送装置の流体終端部にSPR残留農薬検出器を接続したシステム構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る流体移送装置の流体終端部にSPR残留農薬検出器を接続したシステムのハードウェア構成の概要を示す図である。
【図6】図4において検量線のデータの入力を可能としたシステム構成を示す図である。
【図7】本発明に係る設定手段が設定する動作コード及び制御パラメータのイメージ図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る流体移送装置の流体終端部にSPR残留農薬検出器を接続したシステムを動作させるプログラムの例を示す図である。
【図9】図8と共に、本発明の実施の形態に係る流体移送装置の流体終端部にSPR残留農薬検出器を接続したシステムを動作させるプログラムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
図1は、本発明に係る流体移送装置の概要を示すブロック図である。流体移送装置1は、流体移送制御手段3と流体移送機構5を備え、計測機器57に接続可能である。流体移送制御手段3は、設定手段31と記憶手段33と処理手段35とデータバッファ37とプログラムカウンタ39とコード化手段41とコード展開手段43とを備える。流体移送機構5は、信号入出力部51と流体吸入部53と流体終端部55と計測機器57と恒温槽59とを備える。
【0035】
まず、ユーザによる設定手段31を用いた動作設定処理、及び、記憶手段33に記憶された流体移送過程331の生成処理について説明する。設定手段31は、タッチパネル311と論理演算手段313とを備える。タッチパネル311は、ユーザの操作に応じて、動作コードと流体移送パラメータを設定する。論理演算手段313は、タッチパネル方式により設定された流体移送パラメータを、流体移送機構を制御するための制御パラメータに変換する。データバッファ37は、設定手段31が設定した動作コード及び制御パラメータの複数の組み合わせを一時的に記憶する。プログラムカウンタ39は、データバッファ37に記憶された制御パラメータ及び制御パラメータの組み合わせに対して、設定手段31によって設定された順に割り振るプログラム番号を関連付ける。コード化手段41は、データバッファ37に記憶された動作コード、制御パラメータ、及び、プログラム番号の複数の組み合わせを、まとめてコード化し、記憶手段33に記憶させる。記憶手段33は、コード化手段41がコード化して転送した情報を、流体移送過程331として記憶する。このように記憶されたものが流体移送過程331である。
【0036】
本実施例において、ユーザは、目的の流体移送を実現する流体移送過程331を編集するために、タッチパネル311に表示された日本語で書かれた動作コードの選択、及び、一般に当業者によって用いられる単位(いわゆる工業単位)での流体移送パラメータの設定を行えばよい。これによって、ソフトウェアを用いた制御に通じていないユーザの負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0037】
続いて、流体移送機構5の制御処理について説明する。処理手段35は、処理手段35の動作を制御する処理制御手段351と、流体移送機構5の信号入出力部51の動作を制御する信号制御手段353と、流体移送機構の流体吸入部53における流体の吸入処理及び流体終端部55における流体の排出処理を制御する流体制御手段355と、計測機器57を制御する計測制御手段357の4つの制御手段を備える。
【0038】
処理手段35は、記憶手段33に記憶された動作コード及び制御パラメータの組み合わせを順番に従って読み出して処理する。処理手段35が備える各制御手段は、さらに、設定手段31が設定する動作コードに対応する処理を具体的に行う手段を、下記のように備える。
【0039】
処理制御手段351は、特別な処理を行わないNOP制御手段3511と、経過時間を計測する計時制御手段3513と、待ち処理を行う動作完了待ち制御手段3515と、所定の条件を満たす場合に前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを読み出す順番を変更するJMP制御手段3517とを備える。
【0040】
信号制御手段353は、特定のビットをオンするビットオン制御手段3531と、特定のビットをオフするビットオフ制御手段3533と、特定のビットがオンになるのを待たせるビットオン待ち制御手段3535と、特定のビットがオフになるのを待たせるビットオフ待ち制御手段3537とを備える。
【0041】
流体制御手段355は、流体吸入部53に対して液体のIN処理をさせるIN吸入制御手段3551と、流体吸入部53に対して液体のOUT処理をさせるOUT吸入制御手段3553と、流体終端部55に対して流体の排出IN処理をさせる排出IN制御手段3555と、流体終端部55に対して流体の排出OUT処理をさせる排出OUT制御手段3557と流体移送機構5のバルブを制御するバルブNo.制御手段3559と、流体移送機構5のバルブの流路を制御するバルブバイパス制御手段3561とを備える。
【0042】
計測制御手段357は、光量計測制御手段3571とSPR計測制御手段3573とを備え、計測機器57を制御する。
【0043】
流体移送機構5の信号入出力部51は流体移送機構5の信号を授受し、流体移送制御手段3の他、流体移送機構5の外部装置との電子的な信号を一元的に管理する。装置外部から流体吸入部53のシリンジポンプ531及びバルブセレクタ533を通して吸入された流体は、流体終端部55へと移送される。計測を行う場合は、流体は流体終端部55から計測機器57へと移送され、計測が行われる。
【0044】
本発明の実施の形態に係る流体移送装置1は、抗原や抗体等の移送される流体を入れた試薬瓶の他、シリンジポンプ531、バルブセレクタ533、流路、及び計測機器57を全て恒温槽59の内部空間に安置できる。また、5℃以上の設定温度に対して、プラスマイナス1℃の精度で流体を計測機器57に移送するため、高精度に流体の環境を制御した流体移送及び計測を実現可能である。さらに、恒温槽59の外枠である流体移送装置1は密閉化を可能としている。このことにより、計測機器人の動きや計測室のドアの開閉によって計測値が左右されることはない。さらに、処理手段35が計測制御手段357も備えるため、流体移送から計測に至るまでを全自動で実施できる。
【0045】
ここで、処理手段35が備える3511から3573の各制御手段の動作は、流体移送機構5の動作の最小単位を制御している。したがって、3511から3573の各制御手段の動作に対応する動作コードを流体移送過程331の最小構成単位とすることで、制御に通じていない計測者でも流体移送過程331を構築し、チェックし、又は修正することが容易となる。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係る流体移送装置1において、従来パソコンが担っていた制御部としての機能を流体移送制御手段3が備えている。したがって、パソコンのOSや制御フロー構築ソフトウェアによって生じていたパソコンと機器間の通信の不具合が生じない。そのため、パソコンのOSを更新する度にあるいは制御ソフトウェア毎に装置の動作を検証する必要もない。また、パソコンのように処理手段35が流体移送装置の制御以外の原因でシャットダウンすることもなく、流体移送システムの動作稼働率を高く維持できる。さらに、パソコンが停電やパソコンの演算エラーでシャットダウンしたときには一般に運転中のデータは全て失われていたが、本発明の実施の形態に係る流体移送装置1は、流体移送専用装置であるため停電前の流体移送に関するデータを記憶部33に記憶させておくことが容易である。
【0047】
図2は、本発明に係る流体移送装置1の動作を示すフロー図である。図2(a)は、ユーザの設定手段31を用いた設定から記憶手段33が流体移送過程331を記憶する編集段階のフロー図である。図2(b)は、処理手段35が記憶手段33から流体移送過程331を読出して処理を行う実行段階のフロー図である。以下、図2を用いて、本発明の実施の形態に係る流体移送装置1を用いた流体移送について説明する。
【0048】
まず、図2(a)の編集段階のステップEDST1において、ユーザが設定手段31のタッチパネル311を用いて、動作コード及び流体移送パラメータを設定する。ステップEDST2において、論理演算手段313が流体移送パラメータを制御パラメータに変換する。ステップEDST3において、設定手段31によって設定された動作コード及び制御パラメータがデータバッファ37に一時的に記憶される。ステップEDST4において、データバッファ37に記憶された制御パラメータ及び制御パラメータの組み合わせに対して、プログラムカウンタ39がプログラム番号を関連付ける。ステップEDST5において、データバッファ37に記憶された動作コード、制御パラメータ、及び、プログラム番号の複数の組み合わせを、コード化手段41がまとめてコード化し、記憶手段33に転送する。ステップEDST6において、記憶手段33は、コード化手段41がコード化して転送した情報を、流体移送過程331として記憶する。
【0049】
記憶手段33としてメモリを用いる場合、上記のように流体移送過程の個々の動作コードがプログラム番号と関連付けられて明確に分けられることで、個々の動作コードをメモリのアドレス毎に保存可能となる。
【0050】
続いて、図2(b)の実行段階のステップEXST1において、記憶手段33に記憶された流体移送過程331を、処理手段35が読み出す。ステップEXST2において、読み出された流体移送過程331がコード展開手段43によって、個々の動作コード、制御パラメータ、及び、プログラム番号の複数の組み合わせに展開される。ステップEXST3において、プログラムカウンタ39は、処理手段35に処理を実行させるべきプログラム番号であるプログラム実行番号nを初期化する。EXST4において、処理手段35はnが指し示すプログラム番号に対応する動作コードが存在するかどうかを判定する。もし、対応する動作コードがあれば、ステップEXST5において、処理手段35はプログラム実行番号nが指し示すプログラム番号に対応する制御を各種制御手段3511〜3573に実行させる。続いてステップEXST6において、プログラムカウンタ39は、プログラム実行番号nをn+1にインクリメントする。もし、EXST4において、nが指し示すプログラム番号に対応する動作コードが存在しなければ、処理手段35は処理を終了する。
【0051】
図3は、図2におけるステップEXST3の制御フローの具体例を示す図である。図3(a)は、JMP制御手段3517の制御フローの具体例を示す。図3(b)は、ビットオン待ち制御手段3535の制御フローの具体例を示す。図3(c)は、IN吸入制御手段3551の制御フローの具体例を示す。図3(d)は、SPR計測制御手段3573の制御フローの具体例を示す。以下、図3を用いて各種制御手段3511〜3573が行う制御の具体例を説明する。
【0052】
まず、図3(a)を用いて、JMP制御手段3517の制御フローの具体例について説明する。ステップEXST3a1において、JMP制御手段3517は制御パラメータに基づいて条件を指定する。また、ステップEXST3a2において、JMP制御手段3517は制御パラメータに基づいて、条件成立時にプログラム実行番号nとなるプログラム番号pを指定する。ステップEXST3a3において、JMP制御手段3517は指定された条件が成立しているか否かを判定する。もし、条件が成立していれば、ステップEXST3a4において、JMP制御手段3517はプログラムカウンタ39にプログラム実行番号nをpに一致させて処理を終了する。もし、ステップEXST3a3において条件が成立していなければ、JMP制御手段3517は処理を終了する。
【0053】
JMP制御手段3517が指定する条件の例として、指定のビットがオンであれば条件成立、指定のビットがオフであれば条件成立、吸入した流体の容量が指定された容量に達していれば条件成立、排出した流体の容量が指定された容量に達していれば条件成立、指定された範囲のプログラム番号の動作が別に指定された回数だけ繰り返されれば条件成立、指定の時刻に達していれば条件成立、無条件で条件成立、といったものが挙げられる。
【0054】
続いて、図3(b)を用いて、ビットオン待ち制御手段3535の制御フローの具体例について説明する。ステップEXST3b1において、ビットオン待ち制御手段3535は制御パラメータに基づいてビットを指定する。ステップEXST3b2において、ビットオン待ち制御手段3535は指定されたビットがオンであるか否かを判定する。もし、指定されたビットがオンであれば、ビットオン待ち制御手段3535は処理を終了する。もし、指定されたビットがオンでなければ、ビットオン待ち制御手段3535はステップEXST3b2に戻る。
【0055】
続いて、図3(c)を用いて、IN吸入制御手段3551の制御フローの具体例について説明する。ステップEXST3c1において、IN吸入制御手段3551は制御パラメータに基づいてIN側ポート番号を指定する。ステップEXST3c2において、IN吸入制御手段3551は制御パラメータに基づいて吸入する流体の容量を指定する。ステップEXST3c3において、IN吸入制御手段3551は制御パラメータに基づいて流体を吸入する流速を指定する。ステップEXST3c4において、IN吸入制御手段3551は吸入された流体の容量が指定された流体の容量に達したか否かを判定する。もし達していなければ、ステップEXST3c5において、IN吸入制御手段3551は指定されたIN側ポート番号から指定された流速で流体を吸入してステップEXST3c4に戻る。もし、ステップEXST3c4において、吸入された流体の容量が指定された流体の容量に達していれば、ステップEXST3c6において、IN吸入制御手段3551は指定したIN側ポートからの処理を終了する。
【0056】
続いて、図3(d)を用いて、SPR計測制御手段3573の制御フローの具体例について説明する。ステップEXST3d1において、SPR計測制御手段3573は制御パラメータに基づいて計測のインターバルタイムを指定する。ステップEXST3d2において、SPR計測制御手段3573は制御パラメータに基づいて計測範囲を指定する。ステップEXST3d3において、SPR計測制御手段3573はSPR計測機器57とシリアル通信を開始する。ステップEXST3d4において、SPR計測制御手段3573はSPR計測を行うと同時に、このSPR計測からの経過時間の計測を開始する。ステップEXST3d5において、SPR計測制御手段3573はSPR計測した計測データを保存する。ステップEXST3d6において、SPR計測制御手段3573は指定された計測範囲の計測を終えたか否かを判定する。もし計測を終えていれば、SPR計測制御手段3573は処理を終了する。もし、計測を終えていなければ、ステップEXST3d7において、SPR計測制御手段3573は前回の計測からインターバルタイムが経過したかいないかを判定する。もしインターバルタイムが経過していれば、SPR計測制御手段3573はステップEXST3d4に戻る。もしインターバルタイムが経過していなければ、SPR計測制御手段3573はステップEXST3d7に戻る。
【0057】
なお、ユーザは、図3を用いて上に例示した制御フローの詳細を理解せずとも、望みの流体移送を実現できる。ユーザは、各制御フローを実行する各種制御手段3511〜3573に対応する動作コードをタッチパネル311で選択するだけでよいからである。
【0058】
図4は、流体移送装置1の流体終端部55に、計測機器57としてSPR残留農薬検出器を接続したシステム構成を示す図である。図4では便宜上、計測機器57に当たるD−SPRセンサーが流体移送装置1の外部に接続されているように描かれているが、実際には流体移送装置1の内部にある恒温槽に収めることが可能である。
【0059】
計測者は、タッチパネル311からの設定を行うことで流体移送過程331を構築可能である。流体移送過程331を実現する制御の詳細は、流体移送機構331のコード化から流体移送機構5の動作、さらには計測に至るまで、計測者の目に触れることなく流体移送装置1及び計測機器57の内部で処理される。したがって計測者は、制御の詳細に立ち入ることなく、動作コードの入力と流体移送装置1及び計測機器57の動作という入出力の関係を直観的に結び付けて把握可能であり、容易に流体移送過程331を構築し、チェックし、又は修正することが可能である。
【0060】
図4では、バッファー液を吸入するシリンジポンプを複数設置することで、検体試料である流体と標準試料である流体を計測機器に移送し、SPR計測の差動化を可能としている。また、バルブセレクタの数を増やすことで、より多くの検体を一度に計測することが可能である。
【0061】
図5は、流体移送装置1の流体終端部55に、SPR残留農薬検出器を接続したシステムのハードウェア構成の概要を示す図である。以下、図1と対応させて説明する。
【0062】
図1における設定手段のタッチパネル311に相当する小型タッチパネルがCPUに接続されている。また、図1における論理演算手段313、処理手段35、プログラムカウンタ39、コード化手段41、及び、コード展開手段43がPLCCPUとして実現されている。記憶手段33及びデータバッファ37がPLCCPU内のメモリとして実現されている。図5においてCPUは、小型タッチパネルが設定した動作コード及び流体移送パラメータに基づいて、図1における流体移送機構5の信号入出力部51に相当するコントロールI/O、流体吸入部53を構成するシリンジポンプ531及びバルブセレクタ533、並びに、計測機器57に相当するSPR残留農薬検出器を制御する。
【0063】
計測機器57に相当する計測機器として、界面活性剤検出装置など他の計測機器を接続することも可能である。本発明の実施の形態に係る流体移送装置1は外部に接続できるハードウェア構成であるため、計測機器57に接続する代わりに、工場の生産ラインに組み込むことも容易である。
【0064】
図6は検量線のデータを流体移送装置1に入力可能としたシステム構成を示す図である。図4と同様に図6においても、D−SPRセンサーは実際には流体移送装置1の内部にある恒温槽59に収めることが可能である。図4の場合には、検量線を作成する必要があるために計測まで15〜16時間を要する場合でも、図6の場合は検量線を作成する必要がないため、測定まで2〜3時間のみで済む。また、検量線を作成するための抗原が必要ないため、図4のシステムと比較して吸入する流体の種類を削減可能である。したがって、図4では9つあったバルブセレクタのバルブの数が、図6では6つと減少しているのも有利な点である。
【0065】
図7は、設定手段31が設定する動作コード及び制御パラメータからなる流体移送過程331のイメージ図である。図7(a)において、動作コードと制御パラメータの複数の組み合わせが順序付けられてプログラムパターンを構成している。1つのプログラムパターンは125個程度まで組み合わせ数を増やすことが可能である。また、図7(b)において、流体移送装置1の記憶手段33は、プログラムパターンを16個程度記憶することが可能である。したがって、2000個程度の動作コードと制御パラメータの複数の組み合わせを順序付けて記憶させることが可能であり、流体を精密に制御する上で十分に精緻な流体移送過程331を構築することが可能である。
【0066】
図8及び図9は、本発明の実施の形態に係る流体移送装置の流体終端部にSPR残留農薬検出器を接続したシステムを動作させるプログラムの例を示す図である。図8が1番目のプログラムパターンであり、図9が2番目のプログラムパターンであり、1番目のプログラムパターンと2番目のプログラムパターンが、流体移送から計測に至るまでの流体移送過程331を構成している。ソフトウェアを用いた制御に通じていない計測者にとって、専用の制御用ソフトウェアで流体移送プログラムを構築する場合よりも流体移送プログラムの構築・チェック作業が格段に容易となっている。
【0067】
ここで、抗原‐抗体反応によるSPRユニットを用いて特定の物質を検出するためには、抗原と抗体がSPRユニット上で反応できるように、検体である流体が十分に時間をかけて移送される必要がある。しかし、従来の流体移送装置を用いた場合、最も遅いスピードでも数μl/secのスピードで移送されてしまっていた。そのため、SPRユニットで抗原‐抗体反応が起こりにくかった。強いて遅いスピードでの移送を実現するために手作業によって移送することも行われていたが、長時間にわたって一定速度の流体移送を実現することは困難であった。また、ダイオキシンなどの毒性の強い物質に関しては危険が伴うために、手作業による流体移送は行えず、SPRユニットを用いた検出方法を適用できなかった。
【0068】
本発明の実施の形態に係る流体移送装置1は、駆動周波数設定によって6.25μl/minまで遅い流速の設定が可能である。さらに、遅延時間制御によって0.050μl/minまで遅い流速の設定が可能であるため、SPRユニットで抗原‐抗体反応を起こすのに十分に遅い流速での流体移送を行える。
【0069】
なお、図1における設定手段31のタッチパネル311を設定手段31の入力方式としてのみならず、流体移送機構5が移送する流体の流量や計測機器57からの出力を表示する表示手段として用いることも可能である。あるいは、パソコンを流体移送装置1の外部から接続して、パソコンを流体移送データ又は計測データの収集、表示、編集、保存の各手段として用いることも可能である。
【0070】
さらに、設定手段31が、外部操作の有効/無効切り替え設定を可能としてもよい。このようにすることで、設定手段31が外部操作を可能としたとき、流体移送装置1の運転/停止を外部スイッチに委ねることを可能とする。パッチ配線を行うことで、ビット出力信号で運転/停止の制御を行うことも可能である。パソコンを外部から接続して、専用のアプリケーションソフトを用いてパソコンで流体移送過程331を構築・保存することも可能である。このとき、構築した流体移送過程331のパソコンと流体移送装置1との通信にはイーサネット(登録商標)かRS232Cを用いる。
【0071】
一度設定した動作コード及び制御パラメータの設定を記録するレシピ機能を流体移送装置1に実装すれば、次回以降に同じ流体移送を行う際の設定を省略可能とできるで有用である。また、流体移送に関する設定に限らず、例えば、流体終端部55に接続した計測機器57の設定データ及び計測データを多数保存/読出ができるようにするとよい。計測の分析に有用だからである。このような設定やデータを記録するために記録手段33を用いてもよいし、他に記録手段を設けてもよい。
【0072】
また、図1において処理手段35が備える3511から3573の各制御手段の他にも、ネットワークへの参加を可能とするネットワーク制御手段、音声によるメッセージ発声を制御するサウンド制御手段を備えてもよい。
【0073】
ネットワーク制御手段は、数台の本発明の実施の形態に係る流体移送装置をネットワーク化して、単独/連動運転を実現する点で有用である。また、ネットワーク制御手段がイーサネット(登録商標)通信を可能とすることで、リモートメンテナンス、遠隔制御、遠隔監視を行うことが可能となる。
【0074】
流体移送装置1からのビット出力をモニターしたり、流体移送装置1にビット信号を入力したりする、ビット信号モニター用パッチボードを流体移送装置1に接続可能としてもよい。このようにすることで、それぞれの出力又は入力につながったジャックにプラグを差し込むと外部にその信号を委ねることが可能となる。ここで、ジャックに差し込むプラグは一般のオーディオ用抵抗なしのミニプラグを使用可能とすることで流体移送装置1の汎用性を向上させることができる。
【0075】
上記のビット信号モニター用パッチボードに加えて、ビット出力信号でメカニカルリレーを駆動するリレーボックスを接続することで、商用電源を流体移送装置1に供給することも可能である。このとき、リレーボックスを単体で使用できるようにトグルスイッチを付けるとよい。また、出力コンセントとしては日本仕様の2Pタイプだけでなく、3Pタイプとすることも可能である。
【0076】
メッセージを発するサウンド制御手段を設ける際、例えば.WAV形式の拡張子を持つサウンドファイルを編集して流体移送装置1に取り込み、場面に応じて再生できるような動作コードを設定手段31に設けるとよい。サウンドファイルを流体移送装置に取り込むには、例えばSDメモリに保存して取り込むことでサウンド制御手段が制御することが可能である。
【0077】
また、処理手段35の制御とは独立にシリンジポンプを繰り返し動作させる装置を流体移送機構5に連結することを可能としてもよい。
【0078】
さらに、シリンジサイズを設定した時に、シリンジサイズに対応する流速設定範囲表示部に表示させることも有用である。こうすることで、流体移送装置の使用経験が浅い者でも、設定可能な流速を容易に把握可能となるからである。
【0079】
さらに、上記では本発明の実施の形態に係る流体移送装置がシリンジポンプ531又はバルブセレクタ533をそれぞれ1つずつ備えるものとして説明した。しかし、複数のシリンジポンプ531又はバルブセレクタ533を備えることとしてもよい。複数のシリンジポンプ531又はバルブセレクタ533を備えることで、より多くの流体の吸入過程を流体移送過程331に含めることが可能となる点で有利である。
【0080】
流体移送過程331において、二以上のシリンジポンプ531又はバルブセレクタ533からの二以上の流体の吸入過程を含めることで、複数の流体を任意の割合で混合させた流体を排出することも可能である。この場合、計測機器57の代わりに容器を設置することで、本発明に係る流体移送装置1は、試薬の調合装置としても機能することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し、信号入出力部を有する流体移送機構と、前記流体移送機構を制御する流体移送制御手段を備える流体移送装置であって、
前記流体移送制御手段は、
前記流体移送機構に対する動作コード及び制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段と、
前記設定手段において設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを順番付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番に従って読み出して処理する処理手段を有し、
前記処理手段は、
当該処理手段の動作を制御する処理制御手段と、
前記流体移送機構の前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、
前記流体移送機構の前記流体吸入部における流体の吸入処理及び前記流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段を有し、
前記動作コードは、前記処理制御手段、前記信号制御手段及び前記流体制御手段の動作にそれぞれ対応する、
流体移送制御装置。
【請求項2】
前記流体吸入部は、シリンジポンプとバルブセレクタを有し、
前記処理制御手段は、
処理を行わないNOP制御手段と、
経過時間を計測する計時制御手段と、
待ち処理を行う待ち制御手段と、
所定の条件を満たす場合に前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを処理する順番を変更するJMP制御手段を有し、
前記信号制御手段は、前記信号入出力手段に対して、
特定のビットをオンするビットオン制御手段と、
特定のビットをオフするビットオフ制御手段と、
特定のビットがオンになるのを待たせるビットオン待ち制御手段と、
特定のビットがオフになるのを待たせるビットオフ待ち制御手段を有し、
前記流体制御手段は、
前記流体吸入部に対して液体のIN処理をさせるIN吸入制御手段と、
前記流体吸入部に対して液体のOUT処理をさせるOUT吸入制御手段と、
前記流体終端部に対して流体の排出IN処理をさせる排出IN制御手段と、
前記流体終端部に対して流体の排出OUT処理をさせる排出OUT制御手段と
前記流体移送機構のバルブを制御するバルブNo.制御手段と、
前記流体移送機構のバルブの流路を制御するバルブバイパス制御手段を有し、
前記動作コードには、前記NOP制御手段、前記計時制御手段、前記待ち制御手段、前記JMP制御手段、前記ビットオン制御手段、前記ビットオフ制御手段、前記ビットオン待ち制御手段、前記ビットオフ待ち制御手段、前記IN吸入制御手段、前記OUT吸入制御手段、前記排出IN制御手段、前記排出OUT制御手段、前記バルブNo.制御手段及び前記バルブバイパス制御手段のそれぞれの動作に対応するものが含まれ、
前記設定手段は、
ユーザが、タッチパネル方式により、順番を付けて、前記動作コードの一つを選択し、流体移送パラメータを設定することで、流体吸入部への流体の吸入から流体終端部への流体の排出に至る過程を設定可能であり、
前記流体移送パラメータを前記流体移送機構の制御パラメータに変換する論理演算手段を備える、
請求項1記載の流体移送装置。
【請求項3】
前記流体移送制御手段は、
前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを一時的に記憶するデータバッファと、
前記データバッファに記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせにプログラム番号を関連付けるプログラムカウンタと、
前記データバッファに記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータと前記プログラム番号の組み合わせを前記データバッファから読み出し、まとめてコード化し、流体移送過程として記憶手段に転送するコード化手段と、
前記処理手段が前記記憶手段から前記流体移送過程を読み出す際に、コード化された前記流体移送過程を個々の前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせに展開する、コード展開手段を有し、
前記プログラムカウンタは、前記処理手段が処理を実行する際に、前記流体移送過程の前記プログラム番号のうち前記処理手段が処理すべきプログラム実行番号を指し示す、
請求項2記載の流体移送装置。
【請求項4】
前記流体終端部は、計測機器に接続可能であり、前記流体終端部から前記計測手段へ流体が排出されるものであり、
前記流体移送機構は、内部空間の温度を一定に保つことが可能である恒温層を有し、
前記処理手段は、前記計測機器を制御する計測制御手段及び前記恒温槽を制御する温度制御手段を有し、
前記恒温槽は、移送する流体、前記流体吸入部、前記流体終端部、前記計測機器を内包できることを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載の流体移送装置。
【請求項5】
前記計測機器は、光量計測及びSPRイムノアッセイ法によるSPR計測が可能であり、
前記計測制御手段は、
前記計測機器に対して、前記流体終端部に到達した流体の光量計測処理を行わせる光量計測制御手段と、
前記計測機器に対して、前記流体終端部に到達した流体のSPR計測処理を行わせるSPR計測制御手段を有し、
前記動作コードには、前記光量計測制御手段及び前記SPR計測制御手段のそれぞれの動作に対応するものが含まれる
請求項4記載の流体移送装置。
【請求項6】
流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し、信号入出力部を有する流体移送機構と、前記流体移送機構を制御する流体移送制御手段を一体として備える流体移送装置における流体移送制御方法であって、
前記流体移送制御手段は、
前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、
前記流体移送機構の流体吸入部における流体の吸入処理及び流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段と、
前記信号制御手段及び前記流体制御手段の動作にそれぞれ対応する動作コード及び当該動作コードの制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段を有し、
前記設定手段が、記憶手段に対して、前記設定手段において設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの複数の組み合わせを順番付けて記憶させるステップと、
前記流体移送制御手段の処理手段が、前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番に従って読み出し、当該流体移送制御手段の動作を制御するステップ
を含む流体移送制御方法。
【請求項7】
流体吸入部より吸入された流体を流体終端部へ移送し信号入出力部を有する流体移送機構、並びに、動作コード及び制御パラメータの組み合わせを設定可能な設定手段、前記設定手段により設定された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせを順番付けて記憶する記憶手段を備える流体移送制御手段、とを備える流体移送装置を制御するためのコンピュータを、
前記記憶手段に記憶された前記動作コード及び前記制御パラメータの組み合わせの順番に従って、
前記信号入出力部の動作を制御する信号制御手段と、
前記流体移送機構の流体吸入部における流体の吸入処理及び流体終端部における流体の排出処理を制御する流体制御手段、
として、動作コードに対応させて動作させて機能させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−175454(P2010−175454A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19944(P2009−19944)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(509031899)矢部川電気工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】