説明

流体継手

【課題】 ガスケット入れ忘れ不良が生じている場合に、リーク試験で確実にそれを発見できるようにした流体継手を提供する。
【解決手段】 各継手部材1,2の突合わせ端面に、環状のシール突起7,8およびこれよりも突出量が大きい締過ぎ防止用環状突起9,10が設けられている。少なくとも一方の締過ぎ防止用環状突起9,10に、両締過ぎ防止用環状突起9,10が互いに突き合わされた際に、その内部空間Siと外部空間Soとを連通する連通路31,32が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体継手に関し、特に、適正な締付けよりもさらに締付けることを防止するための締過ぎ防止用環状突起が設けられている流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
流体継手として、従来、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケットと、継手部材同士を結合するねじ手段とを備えており、各継手部材の突合わせ端面に、環状のシール突起およびこれよりも突出量が大きい締過ぎ防止用環状突起が設けられているものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この流体継手によると、環状のシール突起がガスケットに当接してこれを変形させることで所要のシール性が得られるとともに、締過ぎ防止用環状突起によって適正な締付けよりもさらに締付けることが防止される。締過ぎ防止については、一方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起と他方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起とが、適正な締付け時には、リテーナを介してまたはリテーナを介さずに対向するが、力は及ぼし合わないまたは大きな力は及ぼさない状態とされ、これよりさらに締め付けた場合、一方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起と他方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起とがリテーナを介してまたは直接突き合わされることで、締付けに対する抵抗が増大し、これにより過剰な締付けが防止されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3876351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記流体継手によると、ガスケットを入れ忘れた場合、一方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起と他方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起とが直接突き合わされることになり、この状態で、リーク試験を行うと、一方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起と他方の継手部材の締過ぎ防止用環状突起との突き合わせによってシール性が得られるため、ガスケットが入れ忘れられているにもかかわらず、リーク試験で合格となってしまう可能性があるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、ガスケット入れ忘れ不良が生じている場合に、リーク試験で確実にそれを発見できるようにした流体継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による流体継手は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケットと、継手部材同士を結合するねじ手段とを備えており、各継手部材の突合わせ端面に、環状のシール突起およびこれよりも突出量が大きい締過ぎ防止用環状突起が設けられている流体継手において、少なくとも一方の締過ぎ防止用環状突起に、両締過ぎ防止用環状突起が互いに突き合わされた際に、その内部空間と外部空間とを連通する連通路が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
連通路は、締過ぎ防止用環状突起の先端面に設けられた連通溝によって形成されていることがあり、また、連通路は、締過ぎ防止用環状突起を径方向に貫通する貫通孔によって形成されていることがある。
【0009】
連通溝は、例えば、半円状、V字状、方形状などの断面とされて、締過ぎ防止用環状突起の先端面に、その内径から外径まで通じるように形成される。連通路は、例えば断面円形の貫通孔とされてもよい。いずれにしろ、連通路は、両締過ぎ防止用環状突起が互いに突き合わされた際に、その内部空間と外部空間とを連通するように設けられる。ここで、内部空間は、ガスケットが配置される空間であり、外部空間は、例えば、継手部材同士を結合するナットの内側の空間であり、この場合、ナットにリーク試験用の試験孔があけられることで、リーク試験によって、ガスケット入れ忘れを確実に発見することができる。連通路は、1つあればよく、複数としてももちろんよい。
【0010】
締過ぎ防止用環状突起は、シール性に寄与するものではないので、これに連通路を形成することで、シール性に悪影響を与えることは全くない。
【0011】
ねじ手段は種々の構成が可能であり、例えば、第1および第2の継手部材のいずれか一方におねじ部が形成され、継手部材のおねじ部にねじ合わされたナットによって、両継手部材が結合されてもよく、第1および第2の継手部材がいずれもおねじ部が形成されていないスリーブとされ、別部材とされたおねじ部材とナットとによって、両継手部材が結合されてもよい。また、継手部材同士は、一方にボルト挿通孔が、他方にめねじ部が形成されたものとされ、ボルトによって結合されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の流体継手によると、少なくとも一方の締過ぎ防止用環状突起に、両締過ぎ防止用環状突起が互いに突き合わされた際に、その内部空間と外部空間とを連通する連通路が形成されているので、ガスケット入れ忘れ不良が生じている場合には、締過ぎ防止用環状突起の連通路を介してのリークがあり、リーク試験で確実にガスケット入れ忘れを発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明による流体継手の1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、ガスケット入れ忘れ時の要部の縦断面図である。
【図3】図3は、締過ぎ防止用環状突起に設けられる連通路の例を示す斜視図である。
【図4】図4は、締過ぎ防止用環状突起に設けられる連通路の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は、従来の継手におけるガスケット入れ忘れ時の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。
【0015】
図1は、この発明による流体継手の1実施形態を示しており、流体継手は、互いに連通する流体通路を有している管状の第1継手部材(1)および管状の第2継手部材(2)と、第1継手部材(1)の右端面と第2継手部材(2)の左端面との間に介在させられる円環状ガスケット(3)と、円環状ガスケット(3)を保持しかつ第1継手部材(1)に保持されるリテーナ(5)とを備えており、第2継手部材(2)側から第1継手部材(1)にねじはめられたナット(4)により、第2継手部材(2)が第1継手部材(1)に固定されている。各継手部材(1)(2)の突合わせ端面の半径方向略中央部には、環状のシール突起(7)(8)がそれぞれ形成され、同外周部には、環状の締過ぎ防止用突起(9)(10)がそれぞれ形成されている。
【0016】
ガスケット(3)の両端面は、軸方向に対して直角な平坦面とされている。ガスケット(3)の外周面には、外向きフランジよりなる抜止め部(3b)が設けられており、ガスケット(3)をリテーナ(5)に保持させたりリテーナ(5)を各継手部材(1)(2)に保持させたりする作業がやりやすい。
【0017】
両継手部材(1)(2)およびガスケット(3)は、SUS316L製である。両継手部材(1)(2)の内径とガスケット(3)の内径とは、等しくなされている。両継手部材(1)(2)およびガスケット(3)の材質としては、SUS316L以外のステンレス鋼やその他の金属が適宜採用される。
【0018】
リテーナ(5)は、ステンレス鋼板で一体的に形成されたもので、円環部(21)と、円環部(21)右端に内方突出状に設けられた3つの爪(23)を備えガスケット(3)の外周面を保持するガスケット保持部(22)と、第1継手部材(1)の右端面に係合するようになされた継手部材保持部(24)とよりなる。3つの爪(23)は若干弾性を有しており、各爪(23)の先端には、右方に折曲げられた若干の弾性を有する折曲げ部(23a)が設けられている。そして、各爪(23)の内側にガスケット(3)が嵌め込まれ、折曲げ部(23a)がガスケット(3)に密着させられてガスケット(3)のリテーナ(5)内における半径方向および軸方向への移動が阻止されている。円環部(21)には、3つの爪(23)が設けられている位置において、それぞれ一対の軸線方向切欠きが設けられており、これによって形成された3つの爪状保持部(25)によって継手部材保持部(24)が構成されている。3つの爪状保持部(25)は、弾性力によって第1継手部材(1)の右端部外面を挾みつけることにより、リテーナ(5)を第1継手部材(1)に保持している。
【0019】
ナット(4)の右端部には内向きフランジ(11)が形成されており、このフランジ(11)の部分が第2継手部材(2)の周囲にはめられている。ナット(4)の左端部の内周にはめねじ(12)が形成されており、これが第1継手部材(1)の右側に形成されたおねじ(14)にねじはめられている。第2継手部材(2)の左端部外周には外向きフランジ(13)が形成されており、これとナット(4)の内向きフランジ(11)との間に共回り防止用のスラスト玉軸受(6)が介在させられている。
【0020】
各締過ぎ防止用環状突起(9)(10)は、シール突起(7)(8)よりも左右方向ガスケット(3)側に突出させられており、適正な締付けよりもさらに締付けようとしたさいに、リテーナ(5)をその両面から押圧するようになされている。各締過ぎ防止用環状突起(9)(10)は組立て前の各継手部材(1)(2)のシール突起(7)(8)を保護しており、これにより、シール性に重要な影響を及ぼすシール突起(7)(8)が傷付くことが防止されている。
【0021】
手で締め付けた状態からスパナ等によりさらにナット(4)を締付けていくと、ガスケット(3)が変形し、適正な締付け時には、各継手部材(1)(2)の内周(1a)(2a)とガスケット(3)の内周(3a)とがほぼ面一となる。すなわち液だまりとなる凹所は存在しなくなる。そして、これよりさらに締付けると、締過ぎ防止用環状突起(9)(10)とリテーナ(5)との間の隙間が0となり、締付けに対する抵抗力が非常に大きくなり、締過ぎが防止される。
【0022】
上記の流体継手では、ナット(4)にリーク試験用の試験孔(図示略)があけられており、ガスケット入れ忘れなどのシール不良品を発見するためのリーク試験が行われている。
【0023】
ここで、ガスケット(3)を入れ忘れた場合、例えば所定の締付け力に達するまで締め付けることにしていると、従来の流体継手では、図5に示すように、第1継手部材(1)の締過ぎ防止用環状突起(9)と第2継手部材(2)の締過ぎ防止用環状突起(10)とが直接突き合わされることで、締付けに対する抵抗が増大し、この後さらに締付けを行うことで、所定の(適切な締付け力と同じ大きさ)の締付け力に達することになる。図5の状態となっている流体継手に対して、リーク試験を行うと、第1継手部材(1)の締過ぎ防止用環状突起(9)と第2継手部材(2)の締過ぎ防止用環状突起(10)との突き合わせによってある程度のシール性が得られるため、ガスケット(3)が入れ忘れられているにもかかわらず、リーク試験で合格となってしまう可能性がある。
【0024】
このようなガスケット忘れの流体継手がリーク試験で合格することは避ける必要があり、そこで、この発明による流体継手では、少なくとも一方(図示は両方)の締過ぎ防止用環状突起(9)(10)に、両締過ぎ防止用環状突起(9)(10)が互いに突き合わされた際に、その内部空間(Si)と外部空間(So)とを連通する連通溝(連通路)(31)(32)が形成されている。
【0025】
図2において、ガスケット(3)を入れ忘れた状態で、両締過ぎ防止用環状突起(9)(10)が互いに突き合わされると、連通溝(31)(32)によって両締過ぎ防止用環状突起(9)(10)の突き合わせ部の内部空間(Si)と外部空間(So)とが連通され、リーク試験を行った場合、確実にリークが発見される。
【0026】
連通溝(31)((32)についても同様)の形状は、図3(a)に示すように、断面半円形であってもよく、図3(b)に示すように、断面V字状であってもよく、図3(c)に示すように、断面方形であってもよい。また、連通溝(31)(32)は、図4に示すように、締過ぎ防止用環状突起(9)を径方向に貫通する断面円形の貫通孔(連通路)(33)に置き換えてもよい。いずれの形状であっても、ガスケット(3)を入れ忘れた場合には、リーク試験によって確実にリークを発見することができる。
【0027】
なお、連通路(31)(32)(33)の数は、1つでよいが、複数設けてももちろんよい。連通路(31)(32)(33)は、いずれか一方の継手部材(1)(2)の締過ぎ防止用環状突起(9)(10)だけに設けられていればよい。両方の継手部材(1)(2)の締過ぎ防止用環状突起(9)(10)に連通溝(31)(32)が設けられている場合、突き合わせ時にこれらを位置合わせする必要はない。
【符号の説明】
【0028】
(1)(2) 継手部材
(3) ガスケット
(4) ナット
(7)(8) シール突起
(9)(10) 締過ぎ防止用突起
(31)(32) 連通溝(連通路)
(33) 貫通孔(連通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケットと、継手部材同士を結合するねじ手段とを備えており、各継手部材の突合わせ端面に、環状のシール突起およびこれよりも突出量が大きい締過ぎ防止用環状突起が設けられている流体継手において、
少なくとも一方の締過ぎ防止用環状突起に、両締過ぎ防止用環状突起が互いに突き合わされた際に、その内部空間と外部空間とを連通する連通路が形成されていることを特徴とする流体継手。
【請求項2】
連通路は、締過ぎ防止用環状突起の先端面に設けられた連通溝によって形成されている請求項1の流体継手。
【請求項3】
連通路は、締過ぎ防止用環状突起を径方向に貫通する貫通孔によって形成されている請求項1の流体継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−31960(P2012−31960A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173252(P2010−173252)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】