説明

流体装置における光学干渉の減少

【課題】体液のサンプル内の被検体を検出する流体装置を提供すること。
【解決手段】上記流体装置は、体液のサンプルを上記流体装置に供給するようになされたサンプル採取ユニット;上記サンプル採取ユニットと流体連通し、上記体液のサンプル内の上記被検体の存在を示す光信号を発するようになされた分析アセンブリ;および上記分析アセンブリと流体連通し、上記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリを備える。一局面において、上記分析アセンブリは、上記分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および上記被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
おびただしい数の疾患バイオマーカーの発見および小型流体システムの確立によって、ポイントオブケア環境における疾病の予測、診断および治療モニタリングのための方法およびシステムの考案に至る新しい道が開かれてきた。ポイントオブケア検査は、患者および医師にすぐに結果を通知し、患者と医療従事者との迅速な話し合いを可能にすることから、とりわけ好ましい。早期診断によって医師は、即座に治療を開始することを可能とし、放置したことによる患者の病状悪化を回避することができる。バイオマーカーレベルおよび治療薬濃度などの適切なパラメータを頻繁にモニタリングすることで、薬物療法の有効性を認識したり、その療法が却って患者の症状を悪化させていることに早期に気づくことができる。ポイントオブケア解析の例としては、グルコース、プロトロンビン時間、薬物濫用、血清コレステロール、妊娠、および排卵の検査が挙げられる。
【0002】
流体装置は、被験者の体液のサンプル内の対象被検体を検出するために多種多様な分析法を利用することができる。ELISA(酵素結合免疫吸着検定)分析(とりわけポイントオブケアという文脈での臨床分析にとって好ましい技法)においては、酵素−抗体複合体および酵素基質などの分析試薬が分析実行後に流体装置に残存する場合は、分析物捕捉表面に結合しなかった試薬または過剰な試薬は、同じ流体装置内で集められると、互いに反応して分析物によって生成された対象信号と干渉する可能性のある信号を生じる。これは、例えば、吸収度または蛍光を測定する分析とは異なり、分析試薬が光を発生する発光性分析に特に当てはまる。多くの発光性分析が酵素を使用して発光を生じさせ、測定種の増幅によって分析感度を向上させている。加えて、廃洗浄液を含む分析成分全てを小型のハウジングに内包する分析システムにおいては、発光性廃棄物の発光の可能性が更に高められる。こうした分析方式においては、過剰な、あるいは非結合の酵素標識試薬が酵素基質と反応し、望ましくない干渉信号を生じるおそれがある。
【0003】
流体装置の形態構成の中には、干渉信号の問題をある程度緩和し得るものがある。例えば、流体装置の本体を不透明にして望ましくない発光を光学的に絶縁する、あるいは流体装置内の反応部位が発生源ではない光を排除するように検出システムを構成することができる。しかし、それでも光が流体装置の透明な要素内を伝わって対象信号と干渉することがあるため、こうした緩和構成も、干渉を十分に排除できないことがある。特に、分析物から発生する信号の比率が例えば信号を発生させる試薬全体の10,000分の1未満ほどのごくわずかであるような、高感度が必要とされる分析の場合にはそうしたことが起こる。
【0004】
従って、干渉光信号を最小限にするよう設計された改良型の流体装置、とりわけポイントオブケア装置に対する相当な需要が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明の一態様は、体液のサンプル内の被検体を検出する流体装置である。流体装置は、体液のサンプルを前記流体装置に供給するようになされたサンプル採取ユニット、前記サンプル採取ユニットと流体連通し、前記体液のサンプル内の被検体の存在または量を示す光信号を発するようになされた分析アセンブリ、および前記分析アセンブリと流体連通し、前記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリ(quencher assembly)を備える。
【0006】
一部の実施形態においては、分析アセンブリが、分析に用いられる試薬を備える複数の試薬室、および被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を含む。試薬は、酵素複合体および酵素基質であってよい。
【0007】
消光アセンブリが、反応部位と流体連通する消光部位、および消光部位における消光剤を含むことができる。消光アセンブリが、更に吸収材を含むことができ、吸収材は、例えば、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル(polyacylamide gel)、アガロースまたは寒天でもよい。
【0008】
吸収材に消光剤を含浸させることができる。消光剤が分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって干渉光信号を減少させることができる。一部の実施形態においては、消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸である。
【0009】
一部の実施形態においては、分析アセンブリが免疫測定法を実施するようになされており、免疫測定法は化学発光分析でよい。消光アセンブリが干渉を実質的に排除するようになされることができる。
【0010】
一部の実施形態においては、流体装置が消光部位を含む廃棄物室を有する。
【0011】
本発明の別の態様は、サンプル内の被検体を検出するシステムである。該システムは、前記被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ、および前記分析アセンブリと流体連通し、前記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリを有する流体装置と、前記光信号を検出する検出アセンブリとを備える。
【0012】
一部の実施形態においては、前記光信号を外部装置に伝送する通信アセンブリを該システムが更に含む。
【0013】
一部の実施形態においては、分析アセンブリが、分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える。少なくとも1種の試薬は、酵素複合体および酵素基質を含むことができる。
【0014】
一部の実施形態においては、消光アセンブリが、反応部位と流体連通する消光部位、および消光部位における消光剤を備える。消光アセンブリが、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロースまたは寒天などの吸収材を含むことができる。吸収材に消光剤を含浸させることができ、消光剤は、前記分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって前記光信号の前記干渉を減少させる。消光剤は、例えば、4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸でよい。
【0015】
該システムの一部の実施形態においては、分析アセンブリが、免疫測定法を実施するようになされており、更に化学発光分析でよい。
【0016】
消光アセンブリが干渉を実質的に排除するようになされることができる。
【0017】
該システムの一部の実施形態には、流体装置が消光部位を備える廃棄物室がある。
【0018】
本発明の一態様は、サンプル内の被検体を検出する方法である。該方法は、前記被検体を含有する疑いのあるサンプルを、前記被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ、および前記分析アセンブリと流体連通し、前記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリを有する流体装置に内包された試薬と反応させること、および前記光信号を検出し、もって前記サンプル内の前記被検体を検出することを備える。
【0019】
本発明の一態様は、消光アセンブリを有する流体装置を製造する方法である。該方法は、前記流体装置の複数の層を準備すること、サンプル採取ユニットと、少なくとも1つの試薬室と、少なくとも1つの反応部位と、少なくとも1つの消光アセンブリとの間に流体ネットワークを設けるために前記層を一体に取り付けることを備える。
【0020】
一部の実施形態において、取り付けが該層を一体に超音波溶接することを備える。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
体液のサンプル内の被検体を検出する流体装置であって、
体液のサンプルを上記流体装置に供給するようになされたサンプル採取ユニット;
上記サンプル採取ユニットと流体連通し、上記体液のサンプル内の上記被検体の存在を示す光信号を発するようになされた分析アセンブリ;および
上記分析アセンブリと流体連通し、上記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリを備える流体装置。
(項目2)
上記分析アセンブリが、上記分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および上記被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える、項目1に記載の流体装置。
(項目3)
上記少なくとも1種の試薬が、酵素複合体および酵素基質を含む、項目2に記載の流体装置。
(項目4)
上記消光アセンブリが、上記反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目2に記載の流体装置。
(項目5)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目4に記載の流体装置。
(項目6)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目5に記載の流体装置。
(項目7)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目5に記載の流体装置。
(項目8)
上記消光剤が上記分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって上記光信号の上記干渉を減少させる、項目5に記載の流体装置。
(項目9)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸である、項目8に記載の流体装置。
(項目10)
上記分析アセンブリが化学発光分析を実施するようになされた、項目1に記載の流体装置。
(項目11)
上記消光アセンブリが上記干渉を実質的に排除するようになされた、項目1に記載の流体装置。
(項目12)
上記流体装置が免疫測定法を実施するようになされた、項目1に記載の流体装置。
(項目13)
上記消光部位を備える廃棄物室を更に備える、項目4に記載の流体装置。
(項目14)
上記体液のサンプルが血液である、項目1に記載の流体装置。
(項目15)
サンプル内の被検体を検出するシステムであって、
上記被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ;および
上記分析アセンブリと流体連通し、上記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリ
を備えた流体装置と
上記光信号を検出する検出アセンブリとを備えるシステム。
(項目16)
上記光信号を外部装置に伝送するようになされた通信アセンブリを更に備える、項目15に記載のシステム。
(項目17)
上記分析アセンブリが、上記分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および上記被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える、項目15に記載のシステム。
(項目18)
上記少なくとも1種の試薬が、酵素複合体および酵素基質を含む、項目17に記載のシステム。
(項目19)
上記消光アセンブリが、上記反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目17に記載のシステム。
(項目20)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目19に記載のシステム。
(項目21)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目20に記載のシステム。
(項目22)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目20に記載のシステム。
(項目23)
上記消光剤が上記分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって上記光信号の上記干渉を減少させる、項目20に記載のシステム。
(項目24)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸である、項目23に記載のシステム。
(項目25)
上記分析アセンブリが化学発光分析を実施するようになされた、項目17に記載のシステム。
(項目26)
上記消光アセンブリが上記干渉を実質的に排除するようになされた、項目17に記載のシステム。
(項目27)
上記流体装置が免疫測定法を実施するようになされた、項目17に記載のシステム。
(項目28)
上記消光部位を備える廃棄物室を更に備える、項目19に記載のシステム。
(項目29)
上記体液のサンプルが血液である、項目15に記載のシステム。
(項目30)
サンプル内の被検体を検出する方法であって、
上記被検体を含有する疑いのあるサンプルを、
上記被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ;および
上記分析アセンブリと流体連通し、上記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリ
を備える流体装置に内包された少なくとも1種の反応物と反応させること;および
上記光信号を検出し、もって上記サンプル内の上記被検体を検出することを備える方法。
(項目31)
上記分析アセンブリが、上記分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および上記被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える、項目30に記載の方法。
(項目32)
上記少なくとも1種の試薬が、酵素複合体および酵素基質を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
上記消光アセンブリが、上記反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目31に記載の方法。
(項目34)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目34に記載の方法。
(項目37)
上記消光剤が上記分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって上記光信号の上記干渉を減少させる、項目34に記載の方法。
(項目38)
消光アセンブリを有する流体装置を製造する方法であって、
上記流体装置の複数の層を準備すること;
サンプル採取ユニットと、少なくとも1つの試薬室と、少なくとも1つの反応部位と、少なくとも1つの消光アセンブリとの間に流体ネットワークを設けるために上記層を一体に取り付けることを備える方法。
(項目39)
上記取り付けが、上記層を一体に超音波溶接することを備える、項目38に記載の方法。
(項目40)
上記消光アセンブリが、上記少なくとも1つの反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目38に記載の方法。
(項目41)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目40に記載の方法。
(項目42)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目41に記載の方法。
(項目43)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目41に記載の方法。
(項目44)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸である、項目42に記載の方法。
(項目45)
サンプル内の被検体を検出する流体装置であって、
サンプル採取ユニットと;
表面、およびそこに固定化された被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位;
酵素複合体を備える第1の試薬室;
上記酵素複合体と反応して発光信号を生成する酵素基質を備える第2の試薬室;および
上記試薬室を上記少なくとも1つの反応部位と接続する流体通路;
を備える分析アセンブリと;
吸収材、および上記酵素複合体と上記酵素基質との上記反応を軽減する消光剤を備える消光アセンブリと;
上記サンプル採取ユニットおよび上記消光アセンブリを上記分析アセンブリと接続する複数の流体通路とを備える流体装置。
(項目46)
流体通路を介して上記分析アセンブリに接続され、上記吸収材を備える廃棄物室を、上記消光アセンブリが更に備える、項目45に記載の流体装置。
(項目47)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、または寒天からなる群から選択される、項目45に記載の流体装置。
(項目48)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸であり、上記酵素複合体がアルカリホスファターゼで標識された試薬である、項目47に記載の流体装置。
(項目49)
上記分析アセンブリが免疫測定法を実施するようになされた、項目45に記載の流体装置。
(項目50)
サンプル内の被検体を検出する方法であって、
上記被検体を含有する疑いのあるサンプルを、
上記被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ;および
上記分析アセンブリと流体連通し、上記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリ
を備える流体装置に内包された少なくとも1種の反応物と反応させること;および
上記光信号を検出し、もって上記サンプル内の上記被検体を検出することを備える方法。
(項目51)
上記分析アセンブリが、上記分析に用いられる少なくとも1種の試薬を備える複数の試薬室、および上記被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位を備える、項目50に記載の方法。
(項目52)
上記少なくとも1種の試薬が、酵素複合体および酵素基質を含む、項目51に記載の方法。
(項目53)
上記消光アセンブリが、上記反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目51に記載の方法。
(項目54)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目53に記載の方法。
(項目55)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目54に記載の方法。
(項目56)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目54に記載の方法。
(項目57)
上記消光剤が上記分析からの少なくとも1種の試薬を不活性化するようになされ、もって上記光信号の上記干渉を減少させる、項目54に記載の方法。
(項目58)
消光アセンブリを有する流体装置を製造する方法であって、
上記流体装置の複数の層を準備すること;
サンプル採取ユニットと、少なくとも1つの試薬室と、少なくとも1つの反応部位と、少なくとも1つの消光アセンブリとの間に流体ネットワークを設けるために上記層を一体に取り付けることを備える方法。
(項目59)
上記取り付けが、上記層を一体に超音波溶接することを備える、項目58に記載の方法。
(項目60)
上記消光アセンブリが、上記少なくとも1つの反応部位と流体連通する消光部位、および上記消光部位における消光剤を備える、項目58に記載の方法。
(項目61)
上記消光アセンブリが吸収材を更に備える、項目60に記載の方法。
(項目62)
上記吸収材には上記消光剤を含浸させてある、項目61に記載の方法。
(項目63)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、および寒天からなる群から選択される、項目61に記載の方法。
(項目64)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸である、項目63に記載の方法。
(項目65)
サンプル内の被検体を検出する流体装置であって、
サンプル採取ユニットと;
表面、およびそこに固定化された被検体と結合する反応物を備える少なくとも1つの反応部位;
酵素複合体を備える第1の試薬室;
上記酵素複合体と反応して発光信号を生成する酵素基質を備える第2の試薬室;および
上記試薬室を上記少なくとも1つの反応部位と接続する流体通路;
を備える分析アセンブリと;
吸収材、および上記酵素複合体と上記酵素基質との上記反応を軽減する消光剤を備える消光アセンブリと;
上記サンプル採取ユニットおよび上記消光アセンブリを上記分析アセンブリと接続する複数の流体通路とを備える流体装置。
(項目66)
流体通路を介して上記分析アセンブリに接続され、上記吸収材を備える廃棄物室を、上記消光アセンブリが更に備える、項目65に記載の流体装置。
(項目67)
上記吸収材が、ガラス繊維、シリカ、紙、ポリアシルアミドゲル、アガロース、または寒天からなる群から選択される、項目65に記載の流体装置。
(項目68)
上記消光剤が4−アミノ−1,11−アゾベンゼン−3,41−ジスルホン酸であり、上記酵素複合体がアルカリホスファターゼで標識された試薬である、項目67に記載の流体装置。
(項目69)
上記分析アセンブリが免疫測定法を実施するようになされた、項目65に記載の流体装置。
【0021】
(参照による引用)
本明細書で言及した出版物および特許出願の全ては、参照することにより、個々の出版物または特許出願が具体的にかつ個別に参照することによって組み込まれるように示されたのと同じ程度に本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に述べられている。本発明の原理を利用した実例的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより、本発明の特徴および利点の一層の理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】流体伝導性を図示する、例示的流体装置の上面図を示している。
【図2】流体伝導性を図示する、例示的流体装置の底面図を示している。
【図3】本発明の例示的流体装置の上面図を示している。
【図4】本発明の例示的流体装置の底面図を示している。
【図5】例示的流体装置の各種構成要素および層を図示している。
【図6】本発明の例示的システムを示している。
【図7】二段階分析法を示している。
【図8】例示的化学発光分析法を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
流体装置
本明細書に含まれるWSGR整理番号30696−715.201号の分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−アクリロニトリル、ポリスルホン、ポリカーボネート、デキストラン、乾燥セファデックス、ポリフタレート、シリカ、ガラス繊維、またはこれらに類似の他の材料。加えて、吸収材は、本明細書に記載の材料の任意の組み合わせが可能である。
【0025】
一般に、吸収材は吸水性に優れ、通常、空気の体積分率が吸収材の約10〜70%である。吸収材は分析に使用された廃液の吸収に役立ち、従って光信号を検出するために流体装置と併用した検出装置への汚染物質の付着または侵入を防止することが望ましい場合に、流体装置からの流体の漏出を防止する。
【0026】
一部の実施形態においては、吸収材は、サンプル内の被検体の存在を示す光信号の干渉を減少させるため前記分析アセンブリからの少なくとも一種の試薬と反応する少なくとも一種の消光剤を備える。消光剤は、試薬同士の結合を阻害することができる、または、好ましい実施形態においては、消光剤は、干渉光信号の一因となり得る試薬の少なくとも一種、より好ましくは全てを不活性化させる。
【0027】
干渉を減少させるために消光アセンブリ内の消光剤が反応する一種または複数の試薬の例としては、非結合酵素および/または非結合基質が挙げられるが、これに限らない。干渉を減少させるために消光剤が反応する試薬は、通常、干渉の減少それ自体ほど重要ではない。消光アセンブリ内の消光剤は、流体装置において実行される分析の種類によって異なってよい。対象の消光剤は、干渉光信号を少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上減少させることが好ましい。好ましい実施形態において、消光剤は干渉光信号を約99%減少させる。別の好ましい実施形態においては、消光アセンブリは光学干渉を少なくとも約99.5%減少させる。更に好ましい実施形態においては、消光剤は光学干渉を少なくとも約99.9%減少させる。
【0028】
この点では、消光アセンブリは、一種または複数の特定の分析を考慮に入れて製造することができ、干渉信号を十分に減少させる消光剤を備えることができる。
【0029】
一部の実施形態において、消光剤は、トリクロロ酢酸などの不揮発性の強酸、またはその塩であるトリクロロ酢酸ナトリウムといった化学物質でよい。この物質は、水酸化ナトリウムなどの強アルカリでもよい。本発明によれば、その他の不揮発性の強酸および強アルカリも使用可能である。
【0030】
一部の実施形態において、消光剤は、酵素を阻害することによって光学干渉を減少させる。例えば、ELISAにおいては、消光剤は、基質を変化させて発光信号を生成する酵素の能力を妨げることができる。酵素阻害物質の例としては、β−ガラクトシダーゼの発光性ガラクトシドに対する作用を阻害するラクトース、およびホスファターゼを阻害するリン酸塩が挙げられる。
【0031】
一部の実施形態において、消光剤は、酵素を変性させることによって干渉を減少させることができる。変性によって酵素は酵素機能を果たすことができなくなり、光学干渉の抑制または減少がもたらされる。変性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:sodium dodecyl sulfate)などの洗浄剤、酢酸水銀などの重金属塩、またはアルカリホスファターゼなどのある種の酵素の活性に不可欠な金属イオンを隔絶することができるEDTAなどのキレート化剤が含まれる。カチオン性(CTMAB)およびアニオン性(SDS)を含むあらゆるタイプの界面活性剤を使用してもよい。
【0032】
一部の実施形態において、消光剤は、酵素活性とは相容れない非変性化学物質であってもよい。化学物質の例としては、酵素が不活性となって干渉信号の生成を促進できなくなる値へとpHを変化させる緩衝剤などが挙げられる。
【0033】
他の実施形態において、消光剤は、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TFTCNQ)、カーボンナノチューブ、モーダントイエロー10(MY)および4−アミノ−1,1−アゾベンゼン−3,4−ジスルホン酸(AB)を含む、例えば有機電化移動分子でもよい。好ましい実施形態においては、アゾベンゼン化合物は、TCNQ、TFTCNQおよびカーボンナノチューブに比べて遥かに水溶性が高いことから、MYおよびABである。ABの構造を以下に示す:
【0034】
【化1】


【0035】
一部の実施形態において、消光剤は、化学発光信号を強めるために用いられる蛍光種を消光することによって干渉を減少させるヨウ素などの重原子であってもよい。他の実施形態においては、消光剤は、化学発光信号を強めるために用いられる蛍光種の蛍光発光スペクトルに重なる吸収スペクトルを有する有機化合物であってもよい。一部の実施形態において、こうした消光剤は、カーボン粒子(例えば、カーボンブラック、炭)の分散体などのダーククエンチャーである。カーボンは活性種を吸収することによって化学発光を不活性化させることができ、実質的に蛍光を発する能力のない非常に良好な消光剤である。
【0036】
一部の実施形態において、消光剤は、化学発光反応を妨害することによって干渉を減少させることができる酸化防止剤であってもよい。本発明の一部の実施形態において使用し得る消光剤としては、トロロクス、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸、クエン酸、レチノール、カロテノイド・テルペノイド類、非カロテノイド・テルペノイド類、フェノール酸類およびそのエステル、ならびにビオフラビノイド類(bioflavinoids)が挙げられるが、これに限らない。
【0037】
他の実施形態において、消光剤は、化学発光反応を妨害することによって干渉を減少させる一重項酸素消光剤であってもよい。一重項酸素消光剤としては、1,4ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、メチオニンまたはシステインなどのチオール含有化合物、およびリコピンなどのカロテノイド類が含まれるが、これに限らない。
【0038】
吸収材に含浸させるまたは染み込ませる物質は、高濃度であることが好ましく、概して大過剰モル濃度の分析試薬である。
【0039】
通常、消光アセンブリはある種の望ましい特質を有し、その一部を例として以下に説明する。消光アセンブリが吸収材を備える実施形態においては、廃液の吸収が分析時間に比して急速であることが好ましい。好ましい実施形態においては、廃液の吸収は、数分以内、より好ましくは数秒以内に行われる。
【0040】
吸収材は、流体装置内の液状廃棄物を実質的に全て吸収することが好ましい。好ましい実施形態においては、廃棄物室内の液体の99%超が吸収される。これが、光学干渉を減少させることに加えて、分析終了後に液体が流体装置から漏出するの防ぐのに役立ち、それが、本明細書において説明するように、流体装置と共に使用され得る検出装置の汚染防止に役立つ。
【0041】
消光アセンブリの酵素活性阻害作用は、好ましくは迅速であるべきであり、通常は数分以内、より好ましくは数秒以内に行われる。
【0042】
阻害酵素反応は、干渉ができるだけ減少させられるよう、できる限り完全でなければならない。好ましい実施形態においては、酵素反応の不活化は、本明細書に記載の流体装置と共に使用され得る任意の検出機構によってサンプル内の被検体の存在を示す光信号が検出される前に、99%超完了していなければならない。
【0043】
好ましい実施形態において、消光アセンブリは吸収材を備え、そのため、吸収材に含ませる不活性化物質は、吸収材内で安定であることが好ましい。更に、消光剤は、廃液に接触して数秒から数分以内に溶解することが好ましい。
【0044】
一部の実施形態において、消光アセンブリは廃棄物室を備える。廃棄物室は通常、分析アセンブリと流体連通し、分析アセンブリ内の反応部位に結合しない分析試薬およびサンプルが分析後に集まる室またはウェルである。廃液は分析後も流体装置に残るため、廃棄物室は通常、結合しなかった、または過剰な試薬およびサンプルが分析後に全て集まる流体装置の領域である。消光アセンブリが吸収材を備える実施形態においては、吸収材は廃棄物室に収容されるようになされていてもよい。吸収材は、廃棄物室全体を満たしていても満たしていなくてもよく、流体が廃棄物室に入ったときに膨張してもよい。
【0045】
消光アセンブリは、流体装置内の吸収材を安定化させるまたは固定するようになされた安定化形態構成を更に備えていてもよい。例えば、吸収材を収容するようになされた廃棄物室が、廃棄物室の頂上部から突出し、吸収パッドに接触して安定化させるあるいは固定するピンまたは支柱を更に備えていてもよい。
【0046】
図1および図2は、組立後の例示的流体装置のそれぞれ上面図および底面図を示している。各種の層が三次元の流体通路ネットワークを形成するよう設計され、組付けられている。サンプル採取ユニット4が患者からの体液のサンプルを供給する。以下により詳細に説明するように、読取装置アセンブリが流体装置を作動させて流体装置内に体液サンプルおよび分析試薬の流れを起こし、方向づけることができる駆動要素(図示せず)を備えている。一部の実施形態において、駆動要素はまず、流体装置2において、サンプル採取ユニット4から反応部位6へのサンプルの流れを生じさせ、そのサンプルを点G’から点Gへと流体装置内を上方に流動させた後、吸収材9が収容されている廃棄物室8へと流動させる。次に駆動要素は、試薬室10から点B’、点C’、および点D’を経てそれぞれ上方の点B、点C、および点Dへ向かい、点Aを経て、点A’へと下り、更に、サンプルと同様に廃棄物室8へと至る試薬の流れを発生させる。サンプルおよび試薬は、廃棄物室8に入ると消光アセンブリ9に接触する。
【0047】
反応部位にて生成された一定の光子数がサンプル内の対象被検体の正確な濃度と確実に相関するよう、光子を検出する前に流体装置を較正することが好ましく好都合である。流体装置を例えば製造時に較正することは、流体装置が使用前に出荷され、例えば、温度などの変化を受ける場合があり、製造時に行った較正は流体装置の構造またはそこに含まれる試薬のその後の変化を何ら考慮していないため、正確に被検体濃度を判定させるには不十分な場合がある。本発明の好ましい実施形態においては、流体装置が、分析アセンブリに構成要素および設計を似せた較正アセンブリを有する。分析アセンブリとの違いは、較正アセンブリにはサンプルを導入しないという点のみである。図1および図2を参照すると、較正アセンブリは、流体装置2の約半分を占め、試薬室32、反応部位34、廃棄物室36、流体通路38、および吸収材9を含む。分析アセンブリと同様、試薬室および反応部位の数は、流体装置で実施される分析および検出される被検体の数に応じて変わってもよい。
【0048】
図3は、流体装置の別の例示的実施形態の上面図である。複数の吸収材9が示されている。図4は、図3の実施形態の底面図を示している。
【0049】
図5は、図3および図4に示す例示的流体装置の複数の層を図示している。吸収材9の位置が、流体装置のその他の構成要素および層と関連させて示されている。
【0050】
そして、図6に示す検出アセンブリがサンプル内の被検体の存在を示す光信号を検出し、検出された信号は、サンプル内の被検体の濃度を判定するために用いることができる。図6は、サンプル内の対象被検体の存在を示す流体装置からの光信号を検出するのに用いることができる例示的検出アセンブリの位置を図示している。検出アセンブリは、流体装置の上方または下方に配置されてもよく、あるいは、例えば、実施される分析および採用されている検出機構のタイプに基づいて流体装置に関して異なる向きに配置されてもよい。
【0051】
好ましい実施形態においては、光学検出器が検出装置として用いられる。非限定的例としては、光電子倍増管(PMT:photomultiplier tube)、フォトダイオード、光子数検出器、または電荷結合素子(CCD:charge−coupled device)が含まれる。本発明において記載するように、分析物の中には発光するものがある。一部の実施形態においては、化学発光が検出される。一部の実施形態においては、検出アセンブリがCCD検出器またはPMT列に束として接続される複数の光ファイバーケーブルを含むこともあり得る。光ファイバー束は、分離型ファイバーまたは融合されてソリッド型束を形成する多数の小径ファイバーから構成されることもあり得る。こうしたソリッド型束は市販されており、CCD検出器に容易にインターフェイス接続できる。
【0052】
流体装置と共に使用し得る例示的検出アセンブリは、2006年3月24日出願の特許出願第11/389,409号に記載されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書に記載される干渉または光学干渉とは、結合反応物によって生成されて対象被検体の存在を示す光信号と干渉する、流体装置において生成される光信号を一般に意味する。典型的には、こうした干渉信号は、反応部位に結合しない試薬が蓄積して互いに接触する廃棄物室において生成される。例えば、分析において分析感度を高めるために用いた酵素が非結合基質と反応して結合反応物が発した光信号と干渉する光信号を生成する場合には、廃液の蓄積がこうした干渉を引き起こすことがある。
【0054】
使用方法
本発明の別の態様は、サンプル内の被検体を検出する方法である。この方法は、被検体を含有する疑いのある体液サンプルを、被検体の存在を示す光信号を発するように構成された分析アセンブリ、および前記光信号の干渉を減少させるようになされた消光アセンブリを有する流体装置に含まれる反応物と反応させること、および該光信号を検出することによってサンプル内の被検体を検出することを備える。
【0055】
対象被検体を含有する疑いがある体液の任意のサンプルが本システムまたは装置に関して使用可能である。一般的に採用される体液としては、血液、血清、唾液、尿、胃液および消化液、涙液、便、精液、膣液、腫瘍性組織由来の間質液、ならびに脳脊髄液が挙げられるが、これに限らない。一部の実施形態において、体液は、更なる処理を加えることなく直接流体装置に供給される。しかしながら、一部の実施形態においては、体液は本流体装置による解析を実施する前に前処理されてもよい。前処理は、使用される体液の種類および/または調査中の被検体の性質によって選択される。例えば、体液のサンプルに被検体が低いレベルで存在する場合は、被検体の濃度を高めるための任意の従来手段によってサンプルを濃縮することもできる。被検体が核酸である場合は、各種溶菌酵素または化学溶液を用い、Sambrook他(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」)に記載の手順に従って、または、核酸結合樹脂を用い、製造者によって提供される添付の説明書に従って抽出することもできる。被検体が細胞上または細胞内に存在する分子の場合は、SDSなどの変性洗浄剤、またはThesit(登録商標)、デオキシル酸ナトリウム(sodium deoxylate)、triton X−100、およびtween−20などの非変性洗浄剤を含むがこれに限らない溶解剤を用いて抽出を行うことができる。
【0056】
体液は、ランセットによる採取、注射、またはピペットによる採取などを含むがこれに限らない種々の方法で患者から抜き出して流体装置へ導入してもよい。一部の実施形態においては、ランセットが皮膚を貫通し、例えば、重力、毛管現象、吸引、または真空力を用いて流体装置へとサンプルを抜き出す。能動機構を必要としない他の実施形態においては、患者が例えば、血液または唾液サンプルの場合と同様に体液を流体装置へと単純に供給することもできる。採取された流体は、流体装置が分析に用いるのに必要な体積のサンプルを自動的に検出できる流体装置内のサンプル採取ユニットに入れられる。更に別の実施形態においては、流体装置が皮膚を貫通させる少なくとも1本の極微針を備える。極微針は、流体装置とだけで使用することもでき、流体装置が読取装置アセンブリに挿入された後に皮膚を貫通させることもできる。本願において使用し得るサンプル採取技法は、2006年3月24日出願の特許出願第11/389,409号に記載されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0057】
一部の実施形態において、体液のサンプルはまず、本明細書に記載の方法のいずれかによって流体装置へと供給される。次いで、流体装置は、図6に示す読取装置アセンブリに挿入することができる。読取装置アセンブリに収容された識別検出器が、流体装置の識別子を検出し、好ましくは読取装置アセンブリに収容された通信アセンブリに識別子を送信することができる。すると、通信アセンブリは、識別子を外部装置に伝送し、外部装置は識別子に基づいて流体装置で作動するプロトコルを通信アセンブリに伝送する。好ましくは読取装置アセンブリに収容された制御器が、流体装置と相互作用して装置内の流体の動きを制御し方向づける少なくとも1つのポンプおよび1つのバルブを含む駆動要素を制御する。図6に図示した読取装置アセンブリおよびその構成要素は、2006年3月24日出願の特許出願第11/389,409号により詳細に記載されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0058】
好ましくは、流体装置は、最初に較正アセンブリを用い、分析に用いるのと同じ試薬を較正反応部位に流すことによって較正され、反応部位からの光信号が検出手段によって検出され、その信号が流体装置を較正するのに用いられる。本明細書における流体装置において使用し得る較正技法は、2006年3月24日出願の特許出願第11/389,409号に記載されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。被検体を含有するサンプルは、流体通路に導入される。サンプルは、希釈、混合されても、および/またはフィルタを用いて更にプラスマまたは他の望ましい成分に分けてもよい。次に、サンプルは反応部位を通過して流れ、サンプル内に存在する被検体が反応部位上に結合された反応物と結合する。続いてサンプル流体は、反応ウェルから廃棄物室へと洗い流される。分析を実行するため、実施される分析に応じて、適切な試薬が流路を介して反応部位を通過するように導かれる。較正工程を含む様々な工程で用いられた洗浄緩衝剤および他の試薬は全て、少なくとも1つの廃棄物室に集められる。そして、反応部位において生成された信号が、本明細書に記載する検出方法のいずれかによって検出される。
【0059】
本発明による流体装置においては、サンプル内の対象被検体を検出するため様々な分析が実行されてもよい。
【0060】
検出分析は、発光、特に化学発光に依存している。一実施形態においては、分析は、例えば、酵素と複合したタンパク質を含む酵素複合体を採用する。酵素は、基質と反応して発光信号を発生する。分析は、直接分析または被検体と結合していない反応物を酵素と複合した被検体分子を含む試薬と接触させる競合分析でもよいと考えられる。更に、反応の信号出力を直線的に増加させるために、化学発光反応と共に、または化学発光反応と一体的に蛍光化合物を用いてもよい。
【0061】
図7に示す例示的二段階分析においては、被検体(「Ag」)を含有するサンプルがまず、抗体(「Ab」)を含有する反応部位上を通過する。抗体は、サンプル内に存在する被検体と結合する。サンプルが表面上を通過した後、高濃度の標識に複合させた被検体(「標識Ag」)を有する溶液が表面を通過させられる。複合体が被検体と結合していない抗体を飽和させる。平衡状態に達して事前に結合させた非標識被検体の置換が起こる前に、高濃度の複合体溶液は洗い流される。次に、表面に結合した複合体の量が適当な技法によって測定され、検出された複合体がサンプル内に存在する被検体の量と反比例する。
【0062】
二段階分析用の例示的測定技法は、図8に示す化学発光酵素免疫測定法である。当技術分野では周知のように、標識は、ジオキセタン−ホスフェートなどの市販の標識でよい。これは、発光性ではないが、例えば、アルカリホスファターゼによる加水分解後に発光性となる。アルカリホスファターゼなどの酵素は複合体に接触して基質に蛍光を発生させる。一部の実施形態において、基質溶液には、発光団単独よりも遥かに明るい信号を発する蛍光色素を含む混合ミセル、可溶性ポリマー、またはPVCなどだがこれに限らない増強剤を追加してもよい。十分量の干渉が減少する限り、消光アセンブリが機能して干渉を減少させる機構は、本発明の機能性にとって重要ではない。
【0063】
ELISAは、反応物が発生する反応部位への干渉信号を排除するのに光学的クエンチャーを用いることができる別の例示的分析である。典型的なELISAにおいては、対象抗原を含有するサンプルに反応部位上を通過させ、そこに反応部位に吸着された抗体分子(抗原を対象とする)によってサンプル内の対象被検体が結合する。そして、酵素標識抗体複合体(抗原を対象とし、反応部位に結合された抗体が複合体の結合をブロックしないように選択された)に反応部位上を通過させて結合させ、基質と置き換えさせる。酵素は基質に光信号を生成させる。最終的に廃棄物室に入った非結合試薬は同様に干渉信号を生成する可能性がある。
【0064】
一部の実施形態においては、標識は、当技術分野では周知の方法に従って生成物、基質、または酵素などの検出すべき分子に直接または間接的に取り付けられる。上記のように、多種多様な標識が、要求される感度、その化合物の複合の容易さ、安定性要件、使用可能な機器、および廃棄規定に応じて選択され、使用される。非放射性標識が間接的手段によって取り付けられることが多い。通常、リガンド分子は、重合体に共有結合する。そして、リガンドは、本質的に検出可能であるか、検出可能な酵素または化学発光性化合物などの信号システムに共有結合する抗リガンド分子と結合する。数多くのリガンドおよび抗リガンドが使用可能である。リガンドが例えば、ビオチン、サイロキシン、およびコルチゾールなどの天然抗リガンドを有する場合は、標識付けした抗リガンドと併用することができる。あるいは、抗体と組み合わせて任意のハプテン性または抗原性化合物を使用することができる。
【0065】
一部の実施形態において、標識は、信号発生化合物に、例えば、酵素との複合によって直接複合させることも可能である。標識としての対象酵素は、主に、加水分解酵素類、特にホスファターゼ類、エステル分解酵素類およびグリコシダーゼ類、または酸化還元酵素、特にペルオキシダーゼ類である。化学発光性化合物は、ルシフェリン、ルミノールなどの2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、ジオキセタン類およびアクリジニウムエステルを含む。
【0066】
標識を検出する方法は、当業者には周知である。デジタルカメラ、電荷結合素子(CCD)または光電子倍増管、および光電管などの電子検出器、あるいは他の検出装置を用いて検出を達成することができる。同様に、酵素標識は、その酵素用の適切な基質を供給して生じる反応生成物を検出することによって検出される。最終的に、単純な比色標識が標識に関連した色を観察することによって検出されることが多い。例えば、複合した金はピンク色を呈することが多く、様々な複合ビーズがそのビーズの色を呈する。
【0067】
好適な化学発光源としては、化学反応によって電子的に励起され、検出可能な信号として機能する光を発し得る化合物が挙げられる。これまで、様々な条件下で化学発光を実現するための多種多様な化合物族が発見されている。化合物族の一つが2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンである。よく使用される化合物がルミノールであり、これは5−アミノ化合物である。化合物族の他の要素としては、5−アミノ−6,7,8−トリメトキシ−およびジメチルアミノ[ca]ベンズ類似体が挙げられる。これらの化合物は、アルカリ性過酸化水素または次亜鉛素酸カルシウムおよび塩基を用いて発光させることができる。別の化合物族は、2,4,5−トリフェニルイミダゾール類であり、親生成物としての一般名ロフィンを有する。化学発光性類似体としては、パラ−ジメチルアミノ置換基およびパラ−メトキシ置換基が挙げられる。化学発光は、シュウ酸塩、通常はオキサリル活性エステル類、例えば、p−ニトロフェニルおよび過酸化物、例えば過酸化水素を用いて塩基性条件下でも得られる。更に周知の他の有用な化学発光性化合物としては、−N−アルキルアクリジナム(acridinum)エステル類、およびジオキセタン類が含まれる。あるいは、ルシフェリン類をルシフェラーゼまたはルシゲニンと共に使用して生物発光を実現してもよい。
【0068】
一部の実施形態においては、流体装置において免疫測定法が実施される。一部の実施形態においては、当技術分野では周知の競合結合分析が実施されてもよいが、一部の実施形態においては、複合体とサンプルを混合してからその混合物を抗体に接触させる必要がない二段階法が用いられる。この方が本発明の流体装置の場合のように、ごく少量のサンプルおよび複合体が用いられる場合には望ましいこともある。二段階分析は、本明細書に記載したような流体装置と共に使用する場合には、競合結合分析に優る更なる利点もある。小分子を分析可能なサンドイッチ(競合結合)免疫測定法の使いやすさと高感度とを併せ持つのである。
【0069】
図8に示す例示的二段階分析を、二段階分析用の例示的計測技法−図8に示すような化学発光酵素免疫測定法、として本明細書においては説明した。
【0070】
本発明による「被検体」という用語は、薬物、プロドラッグ、医薬品、薬物代謝産物、発現タンパク質および細胞標識などのバイオマーカー、抗体、血清タンパク質、コレステロール、多糖類、核酸、生物的被検体、バイオマーカー、遺伝子、タンパク質、あるいはホルモン、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これに限らない。分子レベルでは、被検体は、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖、脂質、核酸、およびこれらの組み合わせも可能である。
【0071】
本明細書に記載した流体装置および方法を用いて検出可能な被検体のより完全なリストは、2006年3月24日出願の特許出願第11/389,409号に含まれており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明の一態様は、消光アセンブリを有する流体装置の製造方法である。本方法は、流体装置の複数の層を準備すること、およびサンプル採取ユニットと、少なくとも1つの試薬室と、少なくとも1つの反応部位と、消光アセンブリを備える少なくとも1つの廃棄物室との間の流体ネットワークを設けるためにこれら層を一体に取り付けることを備える。
【0073】
一部の実施形態においては、流体装置の各種層のうちの少なくとも1つが、高分子基材で構成されていてもよい。高分子材料の非限定例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxanes)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinylchloride)、メチルメタクリレートおよびポリスルホンが含まれる。
【0074】
流体通路の製造は、通常、当技術分野では周知である多数の微細加工技法によって実施されてもよい。例えば、写真平版エッチング、プラズマエッチングまたは湿式化学エッチングなどの半導体製造業で周知の方法を用いて例えば、ガラス、石英またはケイ素基材を加工する際に、必要に応じて写真平版技法が採用される。あるいは、レーザー穿孔、マイクロミリングなどのミクロ機械加工法が必要に応じて採用される。同様に、高分子基材については、周知の製造技法を使用することもできる。これらの技法としては、射出成形が挙げられる。例えば、回転型打ち機を用いてマイクロスケールの基材の大型シートを製造するために多数の基材を必要に応じて製造する場合の型打ち成形および型押法、または基材をミクロ機械加工した鋳型内で重合させる場合の重合体微細鋳造法。ダイキャスト法を用いることもできる。
【0075】
好ましい実施形態においては、流体装置の各種層は、本技術分野では周知の方法に従って超音波溶接される。これらの層は、型打ち、熱接合、接着剤または、ある種の基材、例えば、ガラス、または半硬質および非硬質重合体基材の場合には、2つの構成要素同士の自然接着を含むがこれに限らない他の方法を用いて接合されてもよい。
【0076】
図5は、流体装置2が複数の異なる材料層から構成される本発明の実施形態を示す。図示したように、重合体基材には、これら層が正しく位置決めされたときにアセンブリが流体ネットワークを形成するように、例えば、図示したような形態構成が切り抜かれている。一部の実施形態においては、これよりも多い、または少ない数の層を用いて本発明の目的を実施するための流体装置を構成してもよい。
【0077】
本明細書において消光アセンブリを説明したが、一部の実施形態においては吸収材を備えることができる。こうした実施形態においては、消光アセンブリは、消光剤を吸収材に染み込ませることによって製造することができる。これは、例えば、吸収材が実質的に吸収材に入り込むまでこの液体を吸収材にピペットで滴下する、または単純に吸収材に消光剤を吸収させるなど、本技術分野で周知である多数の技法を用いて達成可能である。吸収材に染み込ませる量は、少なくとも分析試薬に対して阻害効果を生じるのに十分な量の消光剤が吸収材に組み込まれる限り異なってもよい。
【0078】
消光剤が吸収材に添加された後、吸収材を乾燥させる。この乾燥工程は、凍結乾燥、高温流動気体下での乾燥、または吸収材中の水分を蒸発させることによる単純受動乾燥など、任意の好適な技法によって達成することができる。
【0079】
乾燥すれば、消光剤を組み込んだ吸収材は、流体装置内で実施される分析において光学干渉を減少させるために用いることができる場合は、製造工程中に既に説明した流体装置内に配置することができる。流体装置内への配置は、任意周知の技法で行うことができ、単純に手作業で流体装置内に配置することもできる。上記のように、吸収材は、好ましくは流体装置内部で使用された非結合液体を集めるようになされた廃棄物室に配置される。
【実施例】
【0080】
1×0.5インチのWhatman#32ガラス繊維マット片(製品10 372 968)を15%w/vの4−アミノ−1,1−アゾベンゼン−3,4−ジスルホン酸(04M)水溶液50μLに浸し、「ドライボックス」にて乾燥させた。
【0081】
アルカリホスファターゼ(ウシの腸から採取)で標識された試薬(約10μg/mL以下の濃度で希釈トリス緩衝液内でハプテンまたは抗体に結合させたAPase)、および供給元によって出荷されたままの状態(ジオキセタン中100μM)で使用した、Lumigen社Lumiphos(商標)530またはKPL Phosphoglow(商標)AP基質(両者ともジオキセタンであって、酵素が作用するエステル化リン酸残基を有する)を用いた分析において、結果としては、約200μLの酵素と200μLの基質が廃棄物室に入り吸着剤と接触した。
【0082】
38,550カウント/秒の初期発光速度(廃棄物室からデータが得られるように流体装置をMolecular Device製M5照度計に入れて観察)の後、吸着剤の添加後数秒以内に強度は約100カウント/秒に減少した(照度計のノイズレベルは約100回/秒)。換言すれば、99%超の光学干渉が排除された。
【0083】
アゾベンゼンが酵素と基質の両方に対し、阻害するように作用した。酵素は試薬の酸性によって不活性化され、他の機構によっても不活性化され易かった。基質はアゾベンゼンによってアルカリホスファターゼの基質ではなくなるように化学的に改質された。
【0084】
本明細書において本発明の好ましい実施形態を示し説明したが、こうした実施形態は例として示したにすぎないことは当業者には明らかであろう。本発明の範囲を逸脱することなく多数の変形、変更、および置換が当業者には思い当たるであろう。当然ながら、本発明を実施する際には本明細書に記載した本発明の実施形態の各種代替例が採用され得る。添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定するものとし、請求項の範囲内の方法および構造、ならびに均等物がそれによって包括されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の流体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101155(P2013−101155A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−37058(P2013−37058)
【出願日】平成25年2月27日(2013.2.27)
【分割の表示】特願2009−532550(P2009−532550)の分割
【原出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(508007444)セラノス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】