説明

流体製品用ディスペンサ装置と流体製品の供給方法

【課題】本発明の目的は、供給される流体製品の化学特性を変質可能なディスペンサ装置を提供することである。
【解決手段】流体製品11を通過させる導出管34と、前記導出管34から前記流体製品11を供給するために作動可能な供給部18と、前記流体製品11が前記導出管34を通過する際前記流体製品11に照射するよう構成された電気式の照射部24と、から成る流体製品用のディスペンサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品を供給するためのディスペンサ装置と、流体製品の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなディスペンサ装置として、特に医療用組成物、化粧用組成物、その他、導出管を通じて供給可能な程度の流動性を有する組成物の供給に用いられるものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、供給される流体製品の化学特性を変質可能なディスペンサ装置を提供することである。
具体的には、ディスペンサ装置は流体製品を変質可能にすることで、流体製品の作用を高め、皮膚における有効性及び/又は効果(例えば、メイクアップのための視覚効果の実現)を向上させる。
【0004】
本発明のディスペンサ装置は、流体製品が通過できる導出管と、導出管から流体製品を供給するために作動可能な供給部を備え、ディスペンサ装置は、流体製品が導出管を通過する際に流体製品に照射するように構成された照射部を更に備えることを特徴とする。
【0005】
そのため、流体製品は、非活性状態で貯蔵され、使用の直前に照射を行って活性状態へと変えることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な実施形態においては、以下の構成のうち1つ以上の構成を採用することができる。
ディスペンサ装置は、供給される流体製品を貯蔵するタンクと、タンクに貯蔵された流体製品には照射せず、導出管を通過する流体製品のみに照射するように構成された照射部と、を更に含む。
照射部は電気装置である。
ディスペンサ装置は、
前記導出管を通じて前記流体製品を供給するように構成された作動部材と、
電力供給部と、
作動部材によって作動可能であり、作動部材が作動されたとき、電力供給部と電気照射部との間の電気回路を閉じるよう構成された電気制御部と、を更に含む。
作動部材は押しボタンである。
導出管は押しボタンの一部である。
電力供給部は、押しボタン内に配置された電池から成る。
供給部は押しボタンによって作動されることにより流体製品を導出管から供給することができ、供給部は、本体と、本体に可動的に取付けられ押しボタンに固定される浸漬管と、押しボタンに固定された電気接点を1つ以上と本体に固定された電気接点を1つ以上含む電気制御部と、から成る。
供給部は供給ポンプである。
電気制御部は、
本体に固定され、浸漬管と同軸である金属リングと、
2つの接続タブと、を更に含み、2つの接続タブの一方は電池に接続され、2つの接続タブの他方は照射部に接続され、2つの接続タブは作動部材が作動されるとリングに当接して電気回路を閉じるよう構成される。
照射部は電磁波源から成る。
電磁波源は発光ダイオードである。
電磁波源は導出管の近傍に配置される。
導出管は放出口と、放出口の近傍に配置される開口部と、を備え、電磁波源は開口部を通じて流体製品に照射するよう配置される。
ディスペンサ装置は、携帯可能であり手動式である。
【0007】
また、本発明は、流体製品がディスペンサ装置に備えられた導出管を通る流体製品の供給手順を含む、ディスペンサ装置を用いた流体製品の供給方法に関する。
本発明によれば、供給手順において、流体製品は導出管内で照射を受ける。
【発明の効果】
【0008】
流体製品の供給後に、活性化された流体製品がディスペンサ装置内に多量に残留することを防ぎ、タンク内の非活性流体製品の汚染を最小限に抑える為、ディスペンサ装置から放出される直前に流体製品に照射を行うことが好ましい。
タンク内の非活性流体製品に照射しないことで、流体製品は安定した非活性状態に保たれ、より長期の保存に耐えることができる。
【0009】
好ましくは、流体製品は照射により活性化が可能な物質を含み、この物質は供給手順において導出管を通過する際に活性化される。
流体製品には、1種以上の電磁波を照射することが好ましい。
【0010】
本発明のより良い理解の為、本発明の非限定的な一実施例について図面を用い詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるディスペンサ装置を示す図である。
【図2】図1のディスペンサ装置のタンク以外の部分の縦断面図である。
【図3】電気回路が開状態のディスペンサ装置の回路模式図である。
【図4】電気回路が閉状態のディスペンサ装置の回路模式図である。
【符号の説明】
【0012】
11 流体製品
34 導出管
18 供給部
24 照射部
12 作動部材
26 電力供給部
30 電気回路
28 電気制御部
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、タンク14と、作動部材、具体的には押しボタン12と、から成る流体製品のディスペンサ装置10を示す図である。
押しボタン12は、供給される流体製品11を貯蔵するタンク14に気密的に接続された環16に、摺動自在に取付けられる。
【0014】
ディスペンサ装置10は、本体20と、本体20に可動的に取付けられ押しボタン12に固定される空洞の浸漬管22と、から成る供給部18を更に含む。
【0015】
供給部18は、押しボタンによって作動するのに好適であり、導出管を通じて流体製品を供給するように構成された、プレストレスされたバネを任意に含む周知の種類の供給ポンプ、周知の種類の弁、又はその他の供給手段であってよい。
【0016】
ディスペンサ装置10は、好ましくは電気装置である照射部24と、照射部24が流体製品に照射するために電力を供給する電力供給部26と、を更に含む。
一例として、電力供給部は、押しボタン12内に配置された電池26から成る。
【0017】
ディスペンサ装置10は、押しボタン12によって作動可能であり、電池26と照射部24との間の電気回路30を閉じるよう構成された電気制御部28と、を更に含む。
【0018】
一例として、照射部24は、紫外線から赤外線までの範囲に含まれる1つ以上の波長で光を放射可能な電磁波源から成る。
照射の対象となる流体製品によって、単色光または多色光を使用してよい。
具体的には、電磁波源は発光ダイオード(LED)32である。
周知の方法では、LEDの色は選択される半導体の波長により決まる。
これに限定されるものではないが、本発明に係るLED32は、好ましくは赤外線(IR)(700nm以上)又は紫外線(UV)(200nmから400nmの範囲)で光(電磁波)を放射することで、タンク14に貯蔵される流体製品11に含まれる活性化可能な物質に照射し活性化する。
【0019】
ディスペンサ装置10は、タンク14に貯蔵された流体製品11を供給するための導管34を更に含む。
具体的には、導管は押しボタン12に形成される導出管34である。
【0020】
供給時に導出管34内に含まれる流体製品11のみに、好ましくは該流体製品11がディスペンサ装置から放出される直前に、上記の光を照射するためには、LED32は導出管34の近傍に配置されることが好ましい。
すなわち、導出管34には、放出口36と、導出管34内で放出口36の近傍に形成される開口部38と、が設けられる。
LED32は、開口部38を通じて照射できるよう、開口部38に向かって配置される。
【0021】
実施に際しては、LEDは、特に密閉性の問題を避けるため、オーバーモールド成形によって押しボタンに含まれる。
もしくは、LEDを流体製品から隔離する、漏れ止め用の覆いを設けてもよい。
また、放射された光の波長を変える目的で、開口部38とLEDとの間にフィルタを配置してもよい。
漏れ止め用の覆いを設ける場合、この覆いがフィルタとしても機能してよい。
【0022】
流体製品11は、導出管34を通過する際、開口部38を通じてLED32と接触することで、導出管34を通過する際のみ照射を受ける。
流体製品11が、放出される直前に活性化されるよう、LED32は放出口36の近傍に配置される。
これにより、作動後に供給部18と押しボタン12内に残留した流体製品11のほとんどは活性化されないため、安定した状態に保たれる。
【0023】
電気制御部28は、供給部18の本体20に固定され、浸漬管22の周囲に同軸となるように配置される金属リング40を更に含む。
具体的には、本体20に固定されるリング40は、環16に強固に取付けられる。
金属リング40は、導電性材料で作られることが好ましく、また、円筒形状であることが好ましい。
【0024】
電気制御部28は、2つの接続タブ42A、42Bを更に含む。
2つの接続タブ42A、42Bは導電性材料で作られることが好ましく、浸漬管22の周囲に、タンク14に向かって長手方向に延びるように形成される。
一例として、接続タブ42Aは電池26に接続され、接続タブ42Bは照射部、具体的にはLED32、の端子に接続され、LEDの他方の端子は別の導体26Aを通じて電池26に接続される。
図3、図4に図示されるとおり、接続タブ42A、42Bはリング40と接触して電気回路30を閉状態にするよう構成される。
【0025】
なお、押しボタン12を作動すると、つまり、使用者が押しボタン12を押し、環16内をスライドさせてタンク14に向かって移動させると、接続タブ42A、42Bは押しボタン12と共にスライドし、リング40に向かって移動する。
リング40は、本体20に強固に固定される下部40Aと、浸漬管22の周囲に同軸となるよう配置され、タンク14側から押しボタン12に向かって延びるように形成される非固定上部40Bを含む。
【0026】
押しボタン12がタンク14に向かって押し込まれると、接続タブ42A、42Bは押しボタンと共に動き、押込みヘッド12と共に本体20に向かってスライドし、これにより、接続タブ42A、42Bはリング40の非固定上部40Bの内面に弾性接触し、この内面に沿って垂直方向にスライドする。
接続タブ42A、42Bがリング40に接触すると、電気回路30が閉状態となり、電池26がLED32に電力を供給する。
その結果、LED32は電磁波を放射し、流体製品11が導出管34を通過する際に、導出管34内に含まれる流体製品にのみ、開口部38を通じて照射することが可能になる。
【0027】
図3、図4を参照すると、図3に示すように、押しボタン12が押し込まれず、作動していないとき(タンク14から離れた休止位置にあるとき)、接続タブ42A、42Bはリング40から離間しており、電気回路30は開状態である。
押しボタン12が作動されると、接続タブ42A、42Bはリング40に接触するまで該リング40に向かって動き、図4に示すとおり電気回路30は閉状態となり電流が流れ、LED32は光線を放射できる。
押しボタン12が、使用者によって作動されていないときに自動的に休止位置に戻るよう、弾性復元手段を設けてもよい。
【0028】
想定される流体製品11は、医療用流体又は化粧用流体であってよい。
【0029】
一例として、想定される流体製品11は、照射により活性化される所望の特性を有する生物学的有効成分を含んでよく、該特性は流体製品の使用時まで非活性状態で保存される。
【0030】
化粧用の生物学的有効成分としては、例えば、皮膚の加齢を予防及び/又は改善するための、しわ予防効果を有する(E)−3,4’,5−トリメトキシスチルベン誘導体が挙げられる。
この分子は、E(トランス)型では想定された効果が活性化されていないが、Z(シス)型ではレチノイン酸の特性と同様の特性を示す。
これは、200nmから400nmの範囲、好ましくは約250nmの紫外線照射によりE型からZ型に変化することが知られている。
【0031】
同様のことが、硫化亜鉛などの色素を有する物質を含む、メークアップのための化粧用組成物についてもいえる。
この組成物が使用された瞬間に、リン光(硫化亜鉛の光学的特性)が発現する。
【0032】
また、流体製品11は、光の照射により開き、その内部に含んでいる物質を放出する、カプセル又はキャリアを含んでよい。
一例として、主に海洋由来のデオキシリボ核酸(DNA)で構成される、紫外線の照射により開く特性を持った膜を有するカプセルを使用できる。
【0033】
このように、特に、非活性状態で保存可能か、あるいは照射により破壊されるカプセル等の保護膜に包まれ、使用時に解放されるように保存可能な有効物質が含まれる場合、タンク14に貯蔵された流体製品11は、その特性を失うことなく長期間保存が可能となる。
【0034】
所望する効果、すなわち、流体製品に含まれる特定の活性化可能な物質を活性化すること、及び/又はキャリアとしてのカプセルを解放すること、に基づいて、想定される利用法に適した照射光の種類を決定する方法は、当業者には周知であろう。
【0035】
このために、当業者は本発明の装置に、照射光の種類(単色又は多色)と、電磁波源と、の双方の観点から好適である照射源を配備してよい。電磁波源は、放射する光(紫外線、赤外線、及び/又は可視光線)、ならびに、要求される出力により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体製品11を通過させる導出管34と、前記導出管34から前記流体製品11を供給するために作動可能な供給部18と、から成る流体製品用のディスペンサ装置であって、
前記流体製品11が前記導出管34を通過する際前記流体製品11に照射するよう構成された電気式の照射部24と、
前記導出管34を通じて前記流体製品11を供給するよう構成された作動部材12と、
電力供給部26と、
前記作動部材12によって作動可能であり、前記作動部材12が作動されたとき、前記電力供給部26と電気照射部24との間の電気回路30を閉じるよう構成された電気制御部28と、を更に含むことを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項2】
供給する前記流体製品11を貯蔵するタンク14を更に含む請求項1に記載のディスペンサ装置であって、前記照射部24は、前記タンク14に貯蔵されている前記流体製品11には照射せず、導出管34を通過する前記流体製品11のみに照射するよう構成されることを特徴とするディスペンサ装置。
【請求項3】
前記作動部材12は押しボタンである、請求項1又は2に記載のディスペンサ装置。
【請求項4】
前記流体製品11の前記導出管34は前記押しボタン12の一部である、請求項3に記載のディスペンサ装置。
【請求項5】
前記電力供給部26は、前記押しボタン12内に配置された電池26から成る、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のディスペンサ装置。
【請求項6】
前記供給部18は、前記押しボタン12によって作動可能であり、前記導出管34から前記流体製品11を供給でき、前記供給部18は、本体20と、前記本体20に可動的に取付けられ前記押しボタン12に固定される浸漬管22と、を含み、前記電気制御部28は、前記押しボタン12に固定された電気接点を1つ以上と前記本体20に固定された電気接点を1つ以上含む、請求項3乃至5のいずれか1つに記載のディスペンサ装置。
【請求項7】
前記供給部18は供給ポンプ18である、請求項6に記載のディスペンサ装置。
【請求項8】
前記電気制御部28は、
前記本体20に固定され、前記浸漬管22と同軸である金属リング40と、
2つの接続タブ42A、42Bと、を更に含み、
前記2つの接続タブの一方42Aは前記電池26に接続され、前記2つの接続タブの他方42Bは前記照射部24に接続され、前記2つの接続タブ42A、42Bは前記作動部材12が作動されると前記リング40に当接して前記電気回路30を閉じるよう構成されることを特徴とする、請求項5、請求項6又は7に記載のディスペンサ装置。
【請求項9】
前記照射部24は電磁波源24から成る、請求項1乃至8のいずれか1つに記載のディスペンサ装置。
【請求項10】
前記電磁波源は発光ダイオード24である、請求項9に記載のディスペンサ装置。
【請求項11】
前記電磁波源24は前記導出管34の近傍に配置される、請求項9又は10に記載のディスペンサ装置。
【請求項12】
前記導出管34は放出口36と、前記放出口36の近傍に配置される開口部38と、を備え、前記電磁波源24は前記開口部38を通じて前記流体製品11に照射するよう配置されることを特徴とする、請求項11に記載のディスペンサ装置。
【請求項13】
前記ディスペンサ装置10は携帯可能であり手動式である、請求項1乃至12のいずれか1つに記載のディスペンサ装置。
【請求項14】
流体製品11がディスペンサ装置10に備えられた導出管34を通る流体製品11の供給手順を含む、ディスペンサ装置10を用いた流体製品の供給方法であって、
前記導出管34に前記流体製品11を通過させ、照射部24に電力を供給して電磁波を放射させ、上記供給手順において前記流体製品11に照射することを特徴とする供給方法。
【請求項15】
前記流体製品11は前記ディスペンサ装置10から放出される直前に照射される、請求項14に記載の供給方法。
【請求項16】
前記流体製品11は照射により活性化される物質13を含み、前記物質13は前記導出管34を通過する際に活性化される、請求項14又は15に記載の供給方法。
【請求項17】
前記流体製品11に対し1回以上の電磁波照射を行う、請求項14乃至16のいずれか1つに記載の供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−196709(P2009−196709A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−21776(P2009−21776)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】