流体貯蔵装置
【課題】環境流体より低密度の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置における筒状の貯留体を立った姿勢で環境流体の液面近くに浮いた状態にする。
【解決手段】可撓性かつ筒状の複数の貯留体10を集合させることで集合体9を構成し、この集合体9を外枠20で囲む。各貯留体10の密封された第1貯蔵室13に貯蔵流体を3充填すると、隣接する貯留体10,10…どうしが押し合い、かつ集合体9の外周部が外枠20の内周面に押し当てられる。
【解決手段】可撓性かつ筒状の複数の貯留体10を集合させることで集合体9を構成し、この集合体9を外枠20で囲む。各貯留体10の密封された第1貯蔵室13に貯蔵流体を3充填すると、隣接する貯留体10,10…どうしが押し合い、かつ集合体9の外周部が外枠20の内周面に押し当てられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状の環境流体中に被貯蔵流体を環境流体から隔離して貯蔵する装置に関し、特に、環境流体よりも低密度の被貯蔵流体を貯蔵するのに適した流体貯蔵装置に関し、更に好ましくは、環境流体の液面近くに浮いた状態で配置される流体貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海、湖沼等の液体環境中に淡水、石油、天然ガス等の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置は公知である。特許文献1に記載の流体貯蔵装置は、可撓性の膜からなる貯留体を有している。貯留体は、水平方向の直径が上下方向の長さより大きな円筒形状になっている。この貯留体の内部に水が蓄えられている。貯留体は海中の海面近くに浮かんでいる。
特許文献2、3では、貯留体が内袋及び外袋の二重袋構造になっている。
特許文献2に記載の流体貯蔵装置では、貯留体の内袋及び外袋が、共に、軸長方向を上下に向けた起立姿勢の筒形状になっている。内袋の内部に被貯蔵液が蓄えられる。外袋と内袋の間には水及び空気が蓄えられる。外袋の下端部がアンカーにて水底に定着されている。
特許文献3に記載の流体貯蔵装置では、貯留体の内外の袋の中心軸に沿って注排液パイプが鉛直に設けられている。内外の袋の上端部及び下端部が上記注排液パイプに接合されている。更に、外袋の下端部と注排液パイプの下端部がそれぞれアンカーにて水底に定着されている。内袋の内部が被貯蔵液の貯蔵室になっている。外袋と内袋の袋間空間には水が溜められている。この袋間空間の水を排出しながら、被貯蔵液を貯蔵室に注入する。このとき、内袋の内部体積が増大(膨張)する。被貯蔵液の取り出し時は、袋間空間に水を圧入して内袋を圧縮することで、貯蔵室内の被貯蔵液を押し出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−33972号公報
【特許文献2】実開昭62−78694号公報
【特許文献3】実開昭62−78695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような筒状の貯留体の直径又は周長を大きくするのは、製造上又は耐張力強度上の限界がある。また、設置スペースも大きくなる。なるべく小さい設置スペースに被貯蔵流体を大量に貯蔵するには、貯留体の寸法形状を上下方向(高さ方向、深さ方向)に大きくする必要がある。しかし、筒状の貯留体の長さを大きくした場合、長さ方向が水平を向いて寝た姿勢になりやすい。被貯蔵流体が環境流体よりも低密度である場合、長い筒状(袋状)の貯留体は、環境流体の液面近くに浮いて寝た姿勢になりやすく、広い設置スペースを要する。貯留体を立った姿勢(軸長方向が上下に向いた姿勢)にするには、貯留体の下を向くべき端部に錘を付けて、浮力の約2分の1倍以上の力で下方に引っ張る必要がある。例えば、淡水を充填した周長10m、軸長10mの円筒状膜からなる貯留体を海面近くに立った姿勢で浮かせるには、4000N(400kg重)程度の下向きの引っ張り力が必要であり、それだけの力を発現する錘を設置するのは容易でなく、費用も嵩む。また、貯留体には上向きの浮力と下向きの引っ張り力とによって張力が作用するため、もしも、貯留体を構成する膜体にピンホールが空いた場合、たちまち大きな裂け目に進展しやすい。更に、上記貯留体は、2枚の平膜を重ねて4つの縁を融着したり、1枚の平膜を2つ折りにして折り目以外の3つの縁を融着したり、インフレーション製法等で両端開放の筒状に成形した膜の両端開口をそれぞれ融着したりすることによって作製されるが、貯留体に張力が作用する場合には、該貯留体を構成する膜体そのものの強度はもちろんのこと、融着部の強度をも上記張力に耐え得る大きさにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、液状の環境流体の液面近くに浮いた状態で、前記環境流体より低密度の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置において、
密封された第1貯蔵室を有する可撓性かつ筒状の複数の貯留体を、互いの軸長方向を揃えて集合させた集合体と、前記集合体を囲む外枠と、を備え、
各貯留体の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で、隣接する貯留体どうしが押し合い、かつ前記集合体の外周部が前記外枠の内周面に押し当てられることを特徴とする。
【0006】
上記の特徴を備えた流体貯蔵装置によれば、各貯留体の下を向くべき端部に錘を付けなくても、若しくは前記下を向くべき端部に付けた錘の重量が小さくても、又は前記下を向くべき端部を海底等の環境底部に固定しなくても、各貯留体を安定的に起立姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。したがって、設置スペースをコンパクトにできる。また、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。加えて、被貯蔵流体の浮力と錘の重力とに起因する張力が各貯留体に作用するのを防止でき、又は前記張力を低減できる。したがって、貯留体を構成する膜体にピンホールが形成されたとしても、それが大きな裂け目に進展するのを防止又は抑制することができる。貯留体に融着部分があっても、該融着部分の強度を必要以上に高くする必要がない。よって、貯留体の製造を容易化できる。
【0007】
前記集合体の前記軸長方向と直交する短手方向の幅が、前記集合体の軸長より大きいことが好ましく、前記集合体の軸長の2倍以上であることがより好ましい。これによって、各貯留体を確実に起立姿勢にでき、集合体の姿勢を一層確実に安定させることができる。ここで、前記集合体の前記短手方向の幅は、前記外枠の内直径のうち最も短い寸法と実質的に等しい。
【0008】
前記各貯留体が、内部を前記第1貯蔵室と、前記環境流体を溜める第2貯蔵室とに仕切り、かつ前記被貯蔵流体と前記環境流体の貯蔵割合に応じて変形する可撓性の隔壁を含み、
前記各貯留体が常時満杯になるように、ひいては前記隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態が常時維持されるように、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室に供給されるときは前記第2貯蔵室から前記環境流体が排出され、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室から排出されるときは前記環境流体が前記第2貯蔵室に供給されることが好ましい。この場合、各貯蔵体内において被貯蔵流体が相対的に上側に位置しようとし、かつ環境流体が相対的に下側に位置しようとする。したがって、被貯蔵流体の注入途中又は排出途中の段階でも、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。また、被貯蔵流体が未満杯のときでも、被貯蔵流体と環境流体を合わせると、貯留体全体としては満杯状態にできる。したがって、隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態を維持できる。この結果、集合体の集合状態を確実に維持できる。更には、第2貯蔵室に導入する流体として環境流体を用いることで、資材コストを削減できる。
【0009】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状(袋状)の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記外膜と前記内膜の間の空間が前記第2貯蔵室を構成していることが好ましい。この場合、第1貯蔵室に被貯蔵流体を供給していくと、第1貯蔵室への被貯蔵流体の注入によって、内膜の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。第2貯蔵室への環境流体の注入によって、外膜の下側部分の内部体積が増大(膨張)する。これによって、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。前記内膜は、前記隔壁を構成する。内膜の上を向くべき端部が外膜に一体に接合されていてもよい。内膜の軸長方向の両端部が外膜と接合されていてもよい。或いは、内膜の前記両端部ひいては内膜の全体が、外膜と接合されていなくてもよい。
【0010】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された2つの両端閉止の筒状(袋状)の第1内膜及び第2内膜とを含み、第1内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、第2内膜の内部空間が前記第2貯蔵室を構成していてもよい。
この場合、第1貯蔵室への被貯蔵流体の注入によって、第1内膜の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。第2貯蔵室への環境流体の注入によって、第2内膜の下側部分の内部体積が増大(膨張)する。これによって、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。この場合、前記第1、第2内膜の各々が前記隔壁を構成する。第2内膜が破損したとしても、第1内膜内の被貯蔵流体に環境流体が混ざったり、第1内膜内の被貯蔵流体が漏出したりするのを回避できる。
【0011】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていてもよい。これによって、集合体の集合状態を確実に維持できる。
【0012】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていなくてもよい。これによって、施工を一層簡易化できる。
【0013】
前記外枠が、可撓性を有する枠本体を含むことが好ましい。前記枠本体は、前記各貯留体より伸びにくいことが好ましい。これによって、各貯留体内の流体圧に起因する張力を外枠に確実に担わせることができ、その分、各貯留体に作用する張力を確実に低減できる。 前記枠本体が、複数の可撓性の膜体を積層してなることが好ましい。これによって、前記枠本体を前記各貯留体より確実に伸びにくくすることができ、前記流体圧に起因する張力を外枠に確実に担わせることができる。
【0014】
前記外枠が、前記枠本体に巻き付けられたタガを、更に含むことが好ましい。前記タガは、前記枠本体より伸びにくいことが好ましい。これによって、前記流体圧に起因する張力を外枠に一層確実に分担させることができる。
【0015】
前記各貯留体が、内部空間が前記第1貯蔵室となる両端閉止の筒状(袋状)の内膜と、前記内膜の変形を許容するようにして前記内膜を収容した筒状の外膜とを含んでいてもよい。被貯蔵流体を各内膜の第1貯蔵室(内部空間)に注入していくと、被貯蔵流体の浮力によって各内膜の一端部が上側を向き、そこに被貯蔵流体が溜まる。これによって、流体貯蔵装置は、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で安定する。したがって、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって各貯留体を確実に起立姿勢にすることができる。
【0016】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状(袋状)の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で前記内膜の周側部のほぼ全体が前記外膜の内周面に押し当てられるようになっていてもよい。これによって、被貯蔵流体の圧が外膜に伝達され、外膜に前記流体圧と対抗する張力(流体圧起因の強力)が掛かる。その分、内膜に掛かる前記流体圧起因の張力を低減できる。ひいては、被貯蔵流体を安定して貯蔵できる。
【0017】
さらに、前記外膜が前記内膜より伸びにくくてもよい。これによって、前記流体圧起因の張力が、内膜と外膜のうち、主に外膜に掛かるようにでき、内膜には張力があまり掛からないようにすることができる。したがって、内膜にピンホールが形成されたとしても、それが大きな裂け目に進展するのを確実に防止できる。ひいては、被貯蔵流体をより一層安定的に貯蔵できる。
【0018】
前記内膜が、前記貯蔵量に応じて前記外膜とは別体に変形してもよい。この場合、好ましくは、前記外膜に開口が形成されている。より好ましくは、前記外膜の軸長方向の端部が開口されている。一層好ましくは、外膜の下を向くべき端部(他端部)が開口されている。これによって、各貯留体の被貯蔵流体の貯蔵量が非満杯のときは、各内膜の上を向くべき一端部に被貯蔵流体が溜まって該一端部の内部体積が増大(膨張)する。内膜の下を向くべき他端部は、内部体積が減少(収縮)する。内膜の他端部と外膜との間には、外膜の開口を通して流入した環境流体が溜まる。したがって、流体貯蔵装置を、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、確実に安定させることができる。この結果、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって、各貯留体を確実に立った姿勢にすることができる。また、前記被貯蔵流体の貯蔵量に応じて、前記内膜が、内部体積が増減するように変形するのに伴って、環境流体が、外膜の開口を通して、外膜と内膜との間の第2貯蔵室に出入りする。したがって、外膜は、内膜の変形に拘わらず、ほぼ一定の形状を維持する。
【0019】
前記外膜が、内部の内膜と一体に前記貯蔵量に応じて変形するようになっていてもよい。この場合、被貯蔵流体の貯蔵量が少ないときは、各貯留体の内膜の上を向くべき一端部に被貯蔵流体が溜まることで、内膜及び外膜の一端部の内部体積が増大(膨張)する。一方、内膜及び外膜の他端部の内部体積は減少(収縮)する。したがって、流体貯蔵装置を、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、確実に安定させることができる。この結果、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって、各貯留体を確実に立った姿勢にすることができる。
【0020】
前記外膜の内部が密封され、かつ前記内膜と外膜との間の膜間空間(第2貯蔵室)の容積が常時ほぼゼロであってもよい。これによって、各貯留体の内膜及び外膜が被貯蔵流体の貯蔵量に応じて確実に一体的に変形するようにできる。また、内膜が破損したときでも、被貯蔵流体の流出を防止したり、被貯蔵流体の汚染を防止したりできる。
前記外膜とその内部の内膜とを接合することによって、各貯留体の内膜及び外膜が被貯蔵流体の貯蔵量に応じて一体的に変形するようにしてもよい。
【0021】
前記環境流体は、例えば海水であり、前記被貯蔵流体は、例えば淡水である。これによって、海中に淡水を貯蔵できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、筒状の各貯留体の下を向くべき端部に錘を付けなくても、又は錘の重量を小さくしても、各貯留体を立った姿勢にして、貯蔵体の集合体を環境流体の液面近くに浮いた状態で安定的に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯の状態で模式的に示す、図2のI−I線に沿う正面断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う、上記流体貯蔵装置の平面断面図である。
【図3】上記流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯の状態で模式的に示す正面断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示し、上記流体貯蔵装置の貯留体どうしの接合状態の変形態様を示し、図8のVII−VIIに沿う平面断面図である。
【図8】上記第4実施形態における貯留体どうしの接合状態の変形態様を示し、図7のVIII−VIIIに沿う正面断面図である。
【図9】上記第4実施形態における前記貯留体どうしの接合状態の他の変形態様を示す正面断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体及び環境流体が半々ずつ充填されている状態で模式的に示す正面断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う、上記第5実施形態に係る流体貯蔵装置の貯留体の平面断面図である。
【図12】第5実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯に充填されている状態で模式的に示す正面断面図である。
【図13】第5実施形態に係る流体貯蔵装置の全体構成を示す平面図である。
【図14】第5実施形態に係る流体貯蔵装置の、図13のXIV−XIV線に沿う正面図である。
【図15】第5実施形態に係る流体貯蔵装置における1つの貯留ユニットの平面図である。
【図16】本発明の第6実施形態に係る貯留体を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図3は、本発明の第1実施形態を示したものである。流体貯蔵装置1は、海域Sの海面近くに浮いた状態で設置されている。環境流体2は海水である。流体貯蔵装置1の貯蔵対象すなわち被貯蔵流体3は、淡水である。流体貯蔵装置1は、海水2より低密度の淡水3を海水2から隔離して海水2中に貯蔵している。装置1の上端部が海面上に出ており、装置1の上端部より下側部分が海中に配置されている。
【0025】
図1に示すように、流体貯蔵装置1は、貯蔵ユニット4と、被貯蔵流体路5を備えている。貯蔵ユニット4は、設置海域Sの海面(環境流体の液面)の近くに浮いた状態で設置されている。貯蔵ユニット4の上端部が海面上に出ており、貯蔵ユニット4の上端部より下側部分が海中に配置されている。貯蔵ユニット4は、複数の貯留体(セル)10の集合からなる集合体9と、この集合体9を囲む外枠20とを有している。集合体9を構成する貯留体10の数は、3個〜1000個程度が好ましいが、2個でもよく、1000個以上でもよい。
なお、貯蔵ユニット4は、繋留手段にて繋留してもよい(図14参照)。
【0026】
各貯留体10は、可撓性の筒状(袋状)になっている。各貯留体10の内部に淡水3を貯蔵する第1貯蔵室13が形成されている。図1及び図3に示すように、貯蔵室13の大きさ(内部体積)は、淡水3の貯蔵量に応じて増減可能(膨張収縮可能)である。筒状の各貯留体10が、軸長方向を上下に向けた起立姿勢になっている。複数の貯留体10が、軸長方向(図1において上下方向)を互いに揃えて海面に沿って集合して配置されている。隣接する貯留体10どうしが接合されている。好ましくは、集合体9ひいては貯蔵ユニット4の軸長方向と直交する幅寸法が、集合体9の軸長(図1において上下寸法)より大きく、ひいては各貯留体10の軸長より大きい。より好ましくは、集合体9の短手方向の幅(軸長方向と直交する最短寸法)が、集合体9の軸長より大きい。一層好ましくは、集合体9の短手方向の幅が、集合体9の軸長の2倍以上である。
【0027】
貯留体10の構造を更に詳述する。図1及び図2に示すように、各貯留体10は、外膜11(張力膜)と、内膜12(貯蔵膜)とを有している。外膜11は、可撓性を有し、かつ軸長方向の両端部が開口された筒状になっている。外膜11は、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。外膜11を構成する可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、外膜11は、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、外膜11は、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。低密度ポリエチレンは伸縮性に富む。外膜11が、補強繊維を樹脂膜で挟んだ複合膜にて構成されていてもよい。さらに、外膜11が複数の膜体を積層した積層膜構造になっていてもよい。
【0028】
外膜11の軸長方向は、上下方向に向けられている。外膜11の上端部11c(一端部)は、海面上に出ている。外膜11の下端部11d(他端部)は、海中に配置されている。外膜11の上下両端部11c,11dは、それぞれ開口されている。淡水充填時における開口端部11c,11dの開口面積は、外膜11の中間部の内部空間の断面積と同じ大きさであるが、これに限られず、内膜12の抜け出しを阻止する程度に開口端部11c,11dの開口度が狭くなっていてもよい。
【0029】
外膜11の軸長(図1において上下方向の寸法)ひいては貯留体10の軸長は、例えば1m〜20m程度である。外膜11の軸長は、外膜11の周長以上であることが好ましい。外膜11の軸長の上限は、流体貯蔵装置1の設置場所の水深未満ないしは50m以下であることが好ましい。外膜11の厚みは、例えば10μm〜200μm程度である。図において、外膜11の厚みは、該外膜11の周長及び軸長に対して誇張されている。外膜11の厚みは、外膜11の周長と比べて十分に小さく、外膜11の外周面の周長と外膜11の内周面の周長は実質的に等しい。
【0030】
各貯留体10の外膜11の内部に内膜12が収容されている。内膜12は、外膜11に接合されておらず、外膜11とは別体に変形可能である。外膜11は、内膜12の変形を許容する。なお、ここで言う「変形」とは、膜が、その表面積が増減するように伸び縮みすることではなく、表面積は略一定を保ちながら当該膜の形状が変化することを意味する。内膜12が、外膜11とは別体に変形可能な程度に部分的ないしは局所的に外膜11と融着等で接合されていてもよい。
【0031】
内膜12は、可撓性を有し、かつ断面円形の筒状になっている。内膜12は、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。上記可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、内膜12は、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、内膜12は、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。
【0032】
内膜12の軸長方向は、上下方向に向けられている。内膜12の上端部12a(一端部)は、海面上に出ている。内膜12の下端部12b(他端部)は、海中に配置されている。内膜12の上下両端部12a,12bは、それぞれ融着されて液密(液体が透過不能)に封止され、封止端部を構成している。これによって、内膜12の内部が密封されている。この内膜12の内部空間が、上記第1貯蔵室13となっている。内膜12は、淡水3の貯蔵量に応じて内部体積が増減(膨張収縮)するように変形する。
【0033】
内膜12の周長は、淡水3の非充填時の外膜11の周長とほぼ同じ大きさである。淡水3の非充填時において、内膜12の周長は、外膜11の周長と同じであるか、又は外膜11の周長の例えば0〜10%程度小さくてもよく、若しくは外膜11の周長の例えば0〜10%程度大きくてもよい。好ましくは、淡水3の非充填時における両膜11,12の周長差は、各膜11,12の周長と比べて無視できるほど小さい。
【0034】
内膜12の軸長(図1において上下方向の寸法)は、外膜11の軸長とほぼ同じか、少し小さく、例えば1m〜20m程度である。内膜12の軸長は、内膜12の周長以上であることが好ましい。内膜12の軸長の上限は、流体貯蔵装置1の設置場所の水深未満ないしは50m以下であることが好ましい。内膜12の厚みは、外膜11の厚みと同じであるが、外膜11の厚みより大きくてもよく、小さくてもよい。例えば、内膜12の厚みは、10μm〜200μm程度である。図において、内膜12の厚みは、該内膜12の周長及び軸長に対して誇張されている。内膜12の厚みは、内膜12の周長と比べて極めて小さく、内膜12の外周面の周長と内膜12の内周面の周長は実質的に等しい。
【0035】
内膜12を単一の膜体からなる単層構造にし、かつ外膜11を複数の膜体を積層してなる積層構造にしてもよい。内膜12の抗張力性を外膜11の抗張力性より低くし、内膜12を外膜より伸びやすくしてもよい。内膜12と外膜11とに同じ大きさの引っ張り力を印加した場合、内膜12の伸び率が、外膜11の伸び率より大きくてもよい。
【0036】
各内膜12に被貯蔵流体路5が接続されている。被貯蔵流体路5を介して、淡水3を内膜12に注入したり、内膜12内から淡水3を取り出したりすることができる。
なお、図において、被貯蔵流体路5は、内膜12の上端部に接続されているが、内膜12の下端部に接続されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、第1貯蔵室13に被貯蔵流体3が満杯に充填されていない状態では、内膜12が外膜11の内周面から全体的又は部分的に離れ、外膜11内で動く(外膜11に対し相対変位する)ことができる。外膜11と内膜12との間には、膜間空間14Aが形成される。図1に示すように、第1貯蔵室13に被貯蔵流体3が満杯に充填された状態では、内膜12の周側部が全周にわたって外膜11の周側部の内周面に押し当てられる。このとき、膜間空間14Aの容積は殆どゼロである。
【0038】
図2に示すように、隣接する貯留体10,10の外膜11,11どうしが互いの接触部において接合されている。これによって、流体貯蔵装置1を構成する複数の貯留体10,10…が互いにくっ付いて集合体9を構成している。図3に示すように、隣接する外膜11,11どうしの接合部11eは、加熱による融着によって一体化されている。図1に示すように、この融着接合部11eは、外膜11の軸長方向の全体にわたってスジ状に延びている。融着接合部11eの幅(図1の紙面直交方向の寸法)は、1mm以上、外膜11の周長の10分の1以下であることが好ましい。
なお、融着接合部11eが、外膜11の軸長方向に離れた複数箇所だけにスポット状に形成されていてもよい。
【0039】
仮に、各貯留体10が他の貯留体10と押し合っておらず、単独で海中に配置されていたとすると、当該貯留体10の外周形状は円筒形である。実際には、図2の実線に示すように、集合体9における隣り合う貯留体10どうしが、各貯留体10内の流体圧によって互いに押し合うことで変形し、各貯留体10の膜11,12が平面視で概略多角形になっている。
【0040】
集合体9(複数の貯留体10,10…の全体)が、筒状の外枠20によって囲まれている。外枠20は、可撓性の枠本体21を含む。枠本体21は、複数(図では2つ)の膜体21aを積層した複層構造になっている。各膜体21aは、軸長方向の両端部が開口された筒状になっている。各膜体21aは、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。膜体21aを構成する可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、膜体21aは、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、膜体21aは、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。或いは、膜体21aが、補強繊維を樹脂膜で挟んだ複合膜であってもよい。膜体21aの数は、耐張力の観点からは多いほうが好ましいが、コストを考慮して、20個以下が好ましい。外枠20が、単一の膜体21aからなる単層構造であってもよい。
外枠20が、枠本体21を囲むタガを更に備えていてもよい(図10参照)。
【0041】
外枠20の軸長(上下方向の長さ)は、貯留体10の軸長と同程度であり、例えば1m〜20m程度である。外枠20の各膜体21aの厚みは、各膜11,12の厚みと同じか、膜11,12の厚み以上であることが好ましいが、膜11,12の厚みより小さくてもよい。外枠20全体の厚みは、各膜11,12の厚みより大きいことが好ましい。例えば、膜体21aの厚みは、10μm〜200μm程度である。図において、外枠20の厚みは、該外枠20の周長及び軸長に対して誇張されている。
【0042】
複層構造の外枠20は、全体として膜11,12より高い抗張力性を有し、膜11,12よりも伸びにくい。すなわち、膜11,12及び外枠20に同じ大きさの引っ張り力を印加した場合、外枠20の伸び率が、膜11,12の伸び率よりも小さく、かつ外膜11の伸び率よりも小さい。なお、外枠20の各膜体21aの伸びやすさは、膜11,12と同程度であってもよく、或いは、各膜体21aが膜11,12よりも伸びやすくてもよい。複数の膜体21aが合わさることで、膜11,12よりも伸びにくくなればよい。外枠20が単一の膜体21aからなる単層構造である場合、膜体21aの厚みを膜11,12の厚みより大きくしたり、膜体21aを膜11,12より高い抗張力特性を有する材質にて構成したりすることによって、外枠20を膜11,12より伸びにくくしてもよい。
【0043】
上記のように構成された流体貯蔵装置1において、淡水3の貯蔵量が殆ど空の状態では、各貯留体10の内膜12のほぼ全体がしぼんだ状態になる。外膜11は、全体的に断面円形の状態を維持する。膜間空間14Aには、外膜11の下端開口11dから流入した海水2が溜まる。外膜11の上端開口11cから海面上の空気が膜間空間14A内に入り込んでいてもよい。隣接する貯留体10の外膜11,11どうしが接合されているため、内膜12が萎んでいても、貯留体10,10…どうしがばらばらになることはなく、集合体9が集合状態を維持できる。この状態から、淡水3を被貯蔵流体路5から各第1貯蔵室13に注入していくと、淡水3は、浮力によって各第1貯蔵室13の上側部分に溜まろうとする。したがって、図3に示すように、淡水3の貯蔵量が少ないときは、各内膜12の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。一方、内膜12の下側部分の内部体積は小さいままである。外膜11の下側部分の膜間空間14Aには、海水2が残留する。このため、複数の貯留体10が海面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、貯蔵ユニット4が安定する。
【0044】
淡水3の貯蔵量が増えるにしたがって、内膜12の充満部分が下方へ進展するように、内膜12が変形する。これに伴ない、外膜11の下側部分の膜間空間14Aの海水2が、外膜11の下端開口11dから押し出され、膜間空間14Aの体積が収縮する。そして、図1に示すように、各第1貯蔵室13に淡水3を満杯に充填することで、各貯留体10を起立姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。
【0045】
したがって、貯留体10を起立姿勢にするために貯蔵ユニット4の底部に錘を付ける必要がない。よって、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。加えて、錘が無いから、各膜11,12に淡水3の浮力と錘の重力とに起因する張力が掛かることがない。錘を付けるとしても、その重量は小さくて済む。したがって、淡水3の浮力と錘の重力とに起因する張力を充分に小さくできる。
【0046】
各貯留体10の第1貯蔵室13に淡水3を満杯に充填すると、淡水3の圧によって内膜12の周側部が全周にわたって外膜11の周側部の内周面に押し当てられる。また、隣接する貯留体10,10…どうしが押し合うことで、膜11,12の断面形状が変形する。さらに、集合体9の外周部(最も外側の貯留体10の外側を向く部分)が外枠20の内周面に押し当てられる。したがって、各貯留体10の周側部の全周が、隣接する貯留体10又は外枠20に押し当てられる。これによって、各貯留体10の淡水3の圧が外枠20に伝達され、外枠20に上記淡水3の圧と対抗する張力(流体圧起因の張力)が掛かる。すなわち、外枠20は、貯蔵ユニット4全体の淡水3の圧力に対する抗力を担う。その分、各貯留体10の膜11,12に掛かる張力を低減できる。外枠20を膜11,12よりも伸びにくくすることで、外枠20が貯蔵ユニット4全体の張力の大部分を負担するようにでき、各貯留体10の膜11,12には張力が殆ど掛からないようにすることができる。したがって、膜11,12にピンホールが形成されたとしても、該ピンホールが大きな裂け目に進展するのを防止又は抑制できる。
【0047】
さらに、淡水3の充填によって内膜12のどの部分においても内圧が外圧より高圧になるようにできるから、たとえ内膜12の周側部にピンホールが形成されたとしても、海水2がピンホールを介して第1貯蔵室13内に混入するのを防止でき、第1貯蔵室13内の淡水3が汚染されるのを防止できる。また、内膜12の材質や厚みを大きな張力に耐え得るように選定ないしは設定する必要が無い。さらに、内膜12の両端の融着部分の封止強度を必要以上に高くする必要が無く、内膜12の製造時における上記部分の融着作業を簡易化できる。
【0048】
海水2中の漂流物が流体貯蔵装置1に衝突したとしても、集合体9は外枠20によって護られて損傷しにくい。特に、集合体9の内側の貯留体10は、外枠20だけでなく外側の貯留体10によっても護られることで一層損傷しにくい。したがって、貯蔵した淡水3の全量を失うのを回避できる。また、フジツボ等の固着生物の幼体は、主に外枠20の外周面に付き易い。この外枠20の外周面上で上記固着生物が成長しても、貯留体10は殆ど影響を受けない。また、淡水3の圧によって、隣接する貯留体10間の隙間を殆ど無くすことができるから、上記固着生物の幼体が貯留体10の外周面に付くのを確実に防止できる。したがって、上記固着生物によって貯留体10が破損するのを確実に防止できる。
【0049】
海水2中の漂流物が流体貯蔵装置1に衝突したとしても、内側の貯留体10は外側の貯留体10によって護られて損傷しにくいから、貯蔵した淡水3の全量を失うのを回避できる。また、フジツボ等の硬い殻を有する固着生物の幼体は、主に、最も外側に在る貯留体10の露出面に付き易い。この露出面上で上記固着生物が成長しても、貯留体10が破損するまでには至りにくい。一方、上記固着生物の幼体は内側の貯留体10には付きにくい。たとえ、上記固着生物の幼体が内側の貯留体10に付いたとしても、内側の貯留体10,10どうしの隙間は狭く、一般に栄養状態が良好でないと考えられるから、上記固着生物が成長しにくい。したがって、貯留体10が破損する可能性は小さいと考えられる。
【0050】
貯蔵ユニット4に貯蔵した淡水3を利用する際は、被貯蔵流体路5を介して各貯留体10から淡水3を取り出す。淡水3が排出されるにしたがって、内膜12が、内部体積の収縮方向に変形する。これに伴ない、外部の海水2が外膜11の下端開口11dから膜間空間14Aに流入する。したがって、内膜12の変形に拘わらず、外膜11を一定の形状に維持できる。または、外膜11の変形量を内膜12の変形量より小さくできる。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4に示す第2実施形態は、外膜11の変形態様に係る。この変形態様では、外膜11の上端部が融着(ヒートシール)等にて閉じられ、閉塞端部11aとなっている。これによって、内膜12の上端部を日光の照射や鳥の攻撃等から保護することができる。
外膜11の下端部11dは開口されている。
【0052】
外膜11の上端部11aの閉塞手段は、融着に限られない。上記閉塞手段として、例えば一対の板状の挟付部材を用い、外膜11の上端部を上記一対の挟付部材によって挟み付けて閉じ、かつ貫通ボルトにて上記一対の挟付部材を止めてもよい。外膜11の上端部は、必ずしも気密又は液密に封止する必要は無く、空気や海水の出入りを許容していてもよい。
【0053】
図5及び図6に示す第3実施形態は、外膜11の他の変形態様に係る。この変形態様では、外膜11の上端部11a及び下端部11bが、それぞれ融着によって液密に封止され、封止端部を構成している。これによって、外膜11の内部が密封されている。このため、淡水3の貯蔵量に応じて、外膜11が、内部の内膜12と一体に変形する。外膜11と内膜12との間の袋間空間の容積は、淡水3の貯蔵量に拘わらず常時ほぼゼロである。外膜11の内周面の全体が、淡水3の貯蔵量に拘わらず常時、内膜12の外周面にほぼ密着している。
なお、膜11,12の上端部11a,12aに空気抜き用の穴(図示省略)を設けてもよい。
【0054】
図6に示すように、第3実施形態において、各貯留体10における淡水3の貯蔵量が少ないときは、淡水3は、浮力によって内膜12の上側部分だけに溜まろうとする。このため、外膜11及び内膜12の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。膜11,12の下側部分は萎んだ状態になり、不規則に変形する。したがって、貯留体10,10…どうしが海面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、貯蔵ユニット4が安定する。淡水3の貯蔵量が増えるにしたがって、膜11,12の充満部分が下方へ伸長するように、膜11,12が一体的に変形する。このようにして、図5に示すように、淡水3を満杯に充填したとき、各貯留体10を立った姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。したがって、貯蔵ユニット4に錘を付ける必要がなく、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。錘を付ける場合であっても、その重量を充分に小さくでき、膜11,12に働く張力を小さく抑えることができる。また、外膜11が密封されているために、内部の内膜12を確実に保護できる。たとえ、内膜12にピンホールが形成されたとしても、淡水3が貯留体10から流出するのを確実に阻止できる。
【0055】
図7及び図8に示す第4実施形態は、隣接する貯留体10,10の外膜11,11どうしの接合構造の変形態様に係る。隣接する貯留体10,10どうしは、融着に代えて、接合手段40にて接合されている。接合手段40は、一対の接合部材41,41を有している。これら接合部材41は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂にて構成されている。各接合部材41は、接合手段40の軸長方向に沿って真っ直ぐ延びる棒状になっている。各接合部材41の長手方向と直交する断面形状は半円状になっている。
【0056】
各接合部材41は、対応する貯留体10の内膜12と外膜11との間に配置されている。一対の接合部材41,41の間に、隣接する貯留体10,10の外膜11,11が挟み付けられている。一対の接合部材41,41は、複数のボルト43にて連結されている。ボルト43は、塩化ビニール等の耐海水性のある樹脂製ボルトであることが望ましい。各ボルト43が外膜11を貫通している。複数のボルト43は、接合部材41の長手方向に間隔を置いて配置されている。ボルト43の配置間隔は、50mm〜1m程度が好ましい。これらボルト43を締め付けることで、接合部材41の平坦な内側面が外膜11に強く押し当てられている。これによって、接合手段40が、隣接する貯留体10,10の接合部分の張力を負担している。その分、上記接合部分の外膜11には張力があまり掛からないようにできる。接合部材41の半円筒面状の外面には内膜12が被さっている。接合部材41の外面を滑らかな曲面にすることによって、内膜12の損傷を防止できる。
【0057】
図9に示すように、接合部材は、棒状に代えて、半円球状であってもよい。複数の半円球状の接合部材42が、貯留体10の軸長方向に間隔を置いて設けられていてもよい。
或いは、図示は省略するが、一対の接合部材のうち一方が、貯留体10の軸長方向に沿って真っ直ぐ延びる棒状の接合部材41であり、他方が、貯留体10の軸長方向に間隔を置いて配置された複数の半円球状の接合部材42にて構成されていてもよい。
【0058】
図10〜図15は、本発明の第5実施形態を示したものである。図13及び図14に示すように、第5実施形態の流体貯蔵装置1は、貯蔵ユニット4を複数備えていている。装置1全体の貯蔵ユニット4の数は、1個〜10000個程度が好ましい。貯蔵ユニット4の直径は、1m〜100m程度であることが好ましく、ここでは20m程度である。各貯蔵ユニット4は、好ましくは直径が高さより大きい筒状になっている。貯蔵ユニット4の高さ(図13の紙面と直交する方向の寸法)は、0.5m〜50m程度又は設置海域Sの水深未満であることが好ましい。隣り合う貯蔵ユニット4,4どうしの間隔は、各ユニット4の直径の0.3倍から水深程度が好ましく、ここでは15m程度である。
【0059】
図14及び図15に示すように、各貯蔵ユニット4は、繋留手段6によって海域Sに繋留されている。貯蔵ユニット4の外周部には、複数の被繋留部6aが設けられている。複数の被繋留部6aは、外枠20の周方向に離れて、好ましくは等間隔置きに配置されている。図において、被繋留部6aの数は、4つであるが、5つ以上でもよく、2つ又は3つでもよい。貯蔵ユニット4に被繋留部6aが1つだけ設けられていてもよい。
【0060】
各被繋留部6aに繋留ロープ6bの一端部が繋がれている。繋留ロープ6bの他端部は、設置海域Sの海上に浮遊しているフロート6c(浮遊体)に接続されている。フロート6cは、第2繋留ロープ6dを介して海底のシンカー6eに繋がれている。シンカー6eが、海中に浮遊していてもよい。或いは、第1繋留ロープ6bが、シンカー6eに直接繋がれていてもよい。第1繋留ロープ6bが、護岸等の海中壁に繋がれていてもよい。
【0061】
図10に示すように、第5実施形態では、各貯蔵ユニット4の各貯留体10Aが、外膜11及び内膜12を有している。外膜11は、第1実施形態の膜11と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い袋状(筒状)になっている。外膜11の上端部11a及び下端部11bは、融着(ヒートシール)等によって封止されている。外膜11の内部に内膜12が収容されている。内膜12は、第1実施形態の膜12と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い袋状(筒状)になっている。内膜12の上端部12a及び下端部12bは、融着(ヒートシール)等によって封止されている。外膜11と内膜12は、何れの箇所でも接合されておらず、互いに別体になっている。
なお、膜11,12の上端部11a,12aどうしが融着等によって一体に接合されていてもよい。さらに、膜11,12の下端部11b,12bどうしが融着等によって一体に接合されていてもよい。
集合体9の隣り合う貯留体10A,10Aどうしは接合されておらず、互いに別体かつ分離可能になっている。
【0062】
図14に示すように、集合体9の幅(軸長方向と直交する方向の寸法)は、集合体9の軸長(上下方向の寸法)より大きく、好ましくは集合体9の軸長の2倍以上である。集合体9が軸長方向と直交する方向に短径と長径を有しているときは、短径すなわち集合体9の短手方向の幅が、集合体9の軸長より大きいことが好ましく、上記短手方向の幅が、集合体9の軸長の2倍以上であることがより好ましい。
【0063】
複数の貯留体10A,10A…からなる集合体9が外枠20によって囲まれている。外枠20は、枠本体21と、タガ22を含む。枠本体21は、第1実施形態と同様に、複数の可撓性の膜体21aを積層した積層膜構造になっている。複層構造の枠本体21は、貯留体10Aの各膜11,12より伸びにくい。
【0064】
図14に示すように、枠本体21の外周には、上下に離れて2つ(複数)の環状のタガ22,22が巻き付けられている。タガ22は、硬質樹脂又は金属にて構成され、枠本体21より伸びにくい。タガ22は、完全に閉じた環状であってもよく、一箇所が切り欠かれたC字環状であってもよい。C字環状のタガ22の場合、その切り欠き部がボルト等の連結具にて引き寄せられるように連結される。タガ22が、周方向に複数の円弧状のタガ部材に分割されていて、周方向に隣接するタガ部材どうしが連結具にて連結されていてもよい
【0065】
図15に示すように、集合体9の上面には上部網23が被せられている。図10に示すように、網23の外周部が外枠20の上端部に止着されている。網23によって、外枠20内の貯留体10Aが上へ抜け出るのが阻止されている。集合体9の下面には底部網24が被せられている。網24の外周部が外枠20の下端部に止着されている。網24によって、外枠20内の貯留体10Aが下へ抜け出るのが阻止されている。
【0066】
図10に示すように、各貯留体10Aの底部には錘15が設けられている。後述するように、貯留体10Aの底部には相対的に重比重の海水2が溜まり、上部には相対的に軽比重の淡水3が溜まる傾向があるから、錘15の重さは、1kg〜10kg程度で十分である。貯留体10Aの上部にはフロート16が設けられている。フロート16は、発泡スチロール等の発泡樹脂にて構成されている。錘15及びフロート16によって、貯留体10Aを確実に安定した起立姿勢にすることができる。錘15とフロート16の何れか一方を省略してもよい。錘15とフロート16の両方を省略してもよい。通常、貯留体10A内の上部には空気が溜まりやすく、この空気がフロート16の代わりになる。
【0067】
各貯留体10Aの内膜12の内部が第1貯蔵室13になっている。外膜11と内膜12の間の空間が第2貯蔵室14になっている。内膜12が、第1貯蔵室13と第2貯蔵室14を隔てる隔壁になっている。第1貯蔵室13には淡水3(被貯蔵流体)が充填されている。第2貯蔵室14には海水2(環境流体)が充填されている。
【0068】
図13及び図15に示すように、被貯蔵流体路5が、陸地Lの被貯蔵流体源3Sから延びて、複数段階にわたってツリー状に分岐している。被貯蔵流体源3Sは、雨水や地下水を蓄えた井戸、貯留池、ダム、河川等にて構成されている。なお、図13及び図15においては、流体路5の一部のみを図示する。図10に示すように、被貯蔵流体路5の最終段の枝路が、各貯蔵ユニット4の貯留体10Aの第1貯蔵室13に接続されている。詳細な図示は省略するが、被貯蔵流体源3Sの水位は、貯蔵ユニット4の上端部より高所に位置している。したがって、被貯蔵流体路5の開閉弁5Vを開くと、被貯蔵流体源3Sの淡水3を、水頭圧によって被貯蔵流体路5を介して貯蔵ユニット4に供給することができる。
なお、被貯蔵流体路5に、被貯蔵流体源3Sの淡水3を貯蔵ユニット4に圧送する圧送ポンプを設けてもよい(図示省略)。
【0069】
図13及び図15に示すように、第5実施形態の流体貯蔵装置1は、環境流体路7を更に備えている。環境流体路7(図13及び図15において一部のみ図示)は、設置海域Sの海中から延びて複数段階にわたってツリー状に分岐している。図10に示すように、環境流体路7の最終段の枝路が、各貯留体10Aの第2貯蔵室14に接続されている。環境流体路7には、圧送ポンプ7Pが設けられている。圧送ポンプ7Pの駆動によって、海域Sの海水を貯蔵ユニット4に圧送することができる。
【0070】
図10に示すように、各貯留体10Aは、第1貯蔵室13の淡水3と第2貯蔵室14の海水2とによって、全体として常時満杯になっている。貯留体10A内の海水2と淡水3の合計貯蔵量は、海水2と淡水3の貯蔵割合に依らずに略一定である(図10及び図12参照)。淡水3の貯蔵量が増えると海水2の貯蔵量が減る。淡水3の貯蔵量が減ると海水2の貯蔵量が増える。これら淡水3及び海水2の貯蔵量の増減に応じて、内膜12が変形し、第1貯蔵室13と第2貯蔵室14の容積が変化する。図10に示すように、貯留体10Aに海水2と淡水3が半々ずつ充填されているときは、これら充填液2,3どうしの比重差によって、第1貯蔵室13が上に位置し、第2貯蔵室14が下に位置する。内膜12の上側部分は膨らみ、内膜12の下側部分は萎んでいる。図12に示すように、淡水3が貯留体10A内に満杯に充填された状態では、内膜12のほぼ全体が外膜11の内周面に接する。
【0071】
図11の二点鎖線に示すように、仮に、各貯留体10Aが他の貯留体10Aと押し合っておらず、単独で海中に配置されていたとすると、当該貯留体10Aの外周形状は円筒形である。実際には、図11の実線に示すように、集合体9における隣り合う貯留体10Aどうしが、各貯留体10A内の流体圧によって互いに押し合うことで変形し、各貯留体10Aが平面視で概略多角形になっている。上記の押し合いによって、各貯留体10Aの外膜11に働く張力を低減できる。更に、集合体9の外周面(最外周の貯留体10Aの外側を向く面)が、枠本体21に押し当てられている。更には、枠本体21がタガ22に押し当てられている。これによって、外枠20が、各貯留体10Aの流体圧と対抗する張力を担う。枠本体21を複数の膜体21aからなる複層構造にすることによって、枠本体21の耐張力強度を確保できる。個々の貯留体10Aは上下に長い筒状であっても、複数の貯留体10Aを集合させて縛り付けることで、各貯留体10Aを安定的に起立姿勢にすることができる。これによって、貯蔵ユニット4をコンパクトにできる。
【0072】
淡水3を入れる前の貯蔵ユニット4の各貯留体10Aには、第2貯蔵室14に海水2を満杯に充填しておく。そうすることで、隣接する貯留体10A,10Aどうしを互いに押し付け、かつ外枠20にて貯留体10A,10A…の集合体9を縛り付けることができる。これによって、淡水3が入っていないときでも、各貯留体10Aを起立した姿勢で安定させることができる。
【0073】
貯蔵ユニット4内の淡水3が非満杯の状態又はほとんど入っていない状態において、開閉弁5Vを開けると、供給源3Sの淡水3が、水頭圧によって、被貯蔵流体路5を経て、各貯留体10Aの第1貯蔵室13に導入される。流体路5に設けた圧送ポンプ(図示省略)によって淡水3を第1貯蔵室13に圧送することにしてもよい。第1貯蔵室13への淡水導入によって、内膜12が内部体積の増大(膨張)方向に変形し、これに伴なって、第2貯蔵室14の海水2が、環境流体路7に押し出される。この海水2が、停止中の圧送ポンプ7P内を逆流し、環境流体7の基端部から海Sに排出される。
【0074】
これによって、第1貯蔵室13が膨張し、かつ第2貯蔵室14が収縮する。貯留体10A全体としては、淡水3の注入中、常時満杯状態を維持できる。したがって、隣接する貯留体10Aとの押し付け状態を維持でき、かつ外枠20による集合体9の縛り付け状態を維持できる。この結果、淡水3の注入時でも貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。図12に示すように、淡水3が貯留体10A内に満杯に充填されたときは、ほぼ淡水3だけの圧によって上記押し付け状態及び縛り付け状態を維持でき、ひいては貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。貯留体10Aへの淡水3の充填が終了したときは、開閉弁5Vを閉じることが好ましい。
【0075】
淡水供給源3Sの淡水3が不足してきたときは、貯蔵ユニット4から淡水3を供給源3Sに補充することができる。補充の際は、開閉弁5Vを開け、かつ圧送ポンプ7Pを駆動する。これよって、海Sの海水2が環境流体路7に取り込まれ、第2貯蔵室14に導入される。この海水2の導入圧によって、内膜12が内部体積の縮小方向に変形するとともに、第1貯蔵室13内の淡水3が、被貯蔵流体路5に押し出されて、淡水供給源3Sに送出される。上記の海水2の導入及び淡水3の送出に伴なって、第1貯蔵室13が収縮するとともに、第2貯蔵室14が膨張する。貯留体10A全体としては、淡水3の送出中、常時満杯状態を維持できる。したがって、隣接する貯留体10Aとの押し付け状態を維持でき、かつ外枠20による集合体9の縛り付け状態を維持できる。この結果、淡水3の送出時でも貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。
第2貯蔵室14に溜める流体として海水2を用いることで、資材コストを低減できる。
【0076】
図16は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態は、第5実施形態の貯留体の変形態様に係る。第6実施形態の貯留体10Bは、外膜17と、第1内膜18と、第2内膜19を備えている。外膜17は、第1実施形態の外膜11と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い筒状になっている。外膜17の内部に第1内膜18と第2内膜19が収容されている。第1、第2内膜18,19は、それぞれ第1実施形態の内膜12と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い筒状(袋状)になっており、かつ上下両端部が閉じられている。第1内膜18に被貯蔵流体路6が接続され、第1内膜18の内部が第1貯蔵室13になっている。該第1貯蔵室13に淡水3が充填されている。第2内膜19に環境流体路7が接続され、第2内膜19の内部が第2貯蔵室14になっている。該第2貯蔵室14に海水2が充填されている。2つの内膜18,19の互いに接する部分が、貯留体10B内の海水2と淡水3とを隔てる隔壁を構成する。
【0077】
内膜18,19どうしは接合されておらず、互いに別体かつ分離可能になっている。各貯蔵室13,14に流体3,2が充填されることによって、内膜18,19どうしが、外膜17内において互いに押し合っている。淡水3と海水2の比重差によって、貯留体10Bの上側部分においては、第1内膜18の内部体積が大きくなり、かつ第2内膜19の内部体積が小さくなっている。また、貯留体10Bの下側部分においては、第2内膜19の内部体積が大きくなり、かつ第1内膜18の内部体積が小さくなっている。第2内膜19の上端部にフロート16が設けられ、第2内膜19の下端部に錘15が設けられている。
なお、フロート16を第1内膜18の上端部に設けてもよい。錘15を第1内膜18の下端部に設けてもよい。フロート16又は錘15を省略してもよい。
【0078】
この変形態様によれば、第2内膜19が破損したとしても、第1内膜18内の淡水3に海水2が混ざったり、第1内膜18内の淡水3が海中に漏出したりするのを回避できる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変態様を採用できる。
例えば、各貯留体10の外膜11を内部の内膜12と融着等で接合してもよい。
被貯蔵流体路5を貯留体10の下端部に接続してもよく、淡水3を貯留体10の下端部から第1貯蔵室13に注入してもよい。
環境流体路7を貯留体10の上端部に接続してもよく、海水2を貯留体10の上端部から第2貯蔵室14に注入してもよい。
外枠20の伸びやすさが膜11,12と同程度であってもよく、又は外枠20が膜11,12よりも伸びやすくてもよい。その場合でも、外枠20が最外側の貯留体10に押し当たって張力の一部を負担することで、各貯留体10の膜11,12に掛かる張力を低減できる。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第1〜第3実施形態(図1〜図6)においても、第5実施形態(図10〜図12)と同様に、貯留体10の底部に錘15を設けてもよく、貯蔵体10の上部にフロート16を設けてもよい。その場合、上記錘15の重量を、単一の貯留体10を立った姿勢で浮かせるのに要する錘の重量に比べて、小さくできる。
第1〜第4、第6実施形態(図1〜図9、図16)の装置1においても、第5実施形態(図10〜図15)と同様に複数の貯蔵ユニット4を備えていてもよい。
第1〜第4、第6実施形態(図1〜図9、図16)の装置1においても、第5実施形態(図10〜図15)と同様に、貯蔵ユニット4が繋留手段6によって海域Sに繋留されていてもよい。
被貯蔵流体3は、環境流体2より低密度の流体であればよく、淡水に限られず、更には液体に限られず、例えば石油、天然ガス等であってもよい。
環境流体2は、海水に限られず、湖水やダムの水でもよく、原油タンク内の原油でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば淡水を海中に貯蔵する淡水貯蔵技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
L 陸地
S 設置海域
1 流体貯蔵装置
2 海水(環境流体)
3 淡水(被貯蔵流体)
3S 被貯蔵流体源
4 貯蔵ユニット
5 被貯蔵流体路
5V 開閉弁
6 繋留手段
6a 被繋留部
6b 繋留ロープ
7 環境流体路
7P 圧送ポンプ
9 集合体
10 貯留体(セル)
11 外膜
11a,11b 封止端部
11c,11d 開口端部
11e 融着接合部
12 内膜(隔壁)
12a,12b 封止端部
13 第1貯蔵室
14 第2貯蔵室
15 錘
16 フロート
17 外膜
18 第1内膜(隔壁)
19 第2内膜(隔壁)
20 外枠
21 枠本体
21a 膜体
22 タガ
23,24 網
40 接合手段
41 棒状の接合部材
42 半円球状の接合部材
43 ボルト
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状の環境流体中に被貯蔵流体を環境流体から隔離して貯蔵する装置に関し、特に、環境流体よりも低密度の被貯蔵流体を貯蔵するのに適した流体貯蔵装置に関し、更に好ましくは、環境流体の液面近くに浮いた状態で配置される流体貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海、湖沼等の液体環境中に淡水、石油、天然ガス等の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置は公知である。特許文献1に記載の流体貯蔵装置は、可撓性の膜からなる貯留体を有している。貯留体は、水平方向の直径が上下方向の長さより大きな円筒形状になっている。この貯留体の内部に水が蓄えられている。貯留体は海中の海面近くに浮かんでいる。
特許文献2、3では、貯留体が内袋及び外袋の二重袋構造になっている。
特許文献2に記載の流体貯蔵装置では、貯留体の内袋及び外袋が、共に、軸長方向を上下に向けた起立姿勢の筒形状になっている。内袋の内部に被貯蔵液が蓄えられる。外袋と内袋の間には水及び空気が蓄えられる。外袋の下端部がアンカーにて水底に定着されている。
特許文献3に記載の流体貯蔵装置では、貯留体の内外の袋の中心軸に沿って注排液パイプが鉛直に設けられている。内外の袋の上端部及び下端部が上記注排液パイプに接合されている。更に、外袋の下端部と注排液パイプの下端部がそれぞれアンカーにて水底に定着されている。内袋の内部が被貯蔵液の貯蔵室になっている。外袋と内袋の袋間空間には水が溜められている。この袋間空間の水を排出しながら、被貯蔵液を貯蔵室に注入する。このとき、内袋の内部体積が増大(膨張)する。被貯蔵液の取り出し時は、袋間空間に水を圧入して内袋を圧縮することで、貯蔵室内の被貯蔵液を押し出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−33972号公報
【特許文献2】実開昭62−78694号公報
【特許文献3】実開昭62−78695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような筒状の貯留体の直径又は周長を大きくするのは、製造上又は耐張力強度上の限界がある。また、設置スペースも大きくなる。なるべく小さい設置スペースに被貯蔵流体を大量に貯蔵するには、貯留体の寸法形状を上下方向(高さ方向、深さ方向)に大きくする必要がある。しかし、筒状の貯留体の長さを大きくした場合、長さ方向が水平を向いて寝た姿勢になりやすい。被貯蔵流体が環境流体よりも低密度である場合、長い筒状(袋状)の貯留体は、環境流体の液面近くに浮いて寝た姿勢になりやすく、広い設置スペースを要する。貯留体を立った姿勢(軸長方向が上下に向いた姿勢)にするには、貯留体の下を向くべき端部に錘を付けて、浮力の約2分の1倍以上の力で下方に引っ張る必要がある。例えば、淡水を充填した周長10m、軸長10mの円筒状膜からなる貯留体を海面近くに立った姿勢で浮かせるには、4000N(400kg重)程度の下向きの引っ張り力が必要であり、それだけの力を発現する錘を設置するのは容易でなく、費用も嵩む。また、貯留体には上向きの浮力と下向きの引っ張り力とによって張力が作用するため、もしも、貯留体を構成する膜体にピンホールが空いた場合、たちまち大きな裂け目に進展しやすい。更に、上記貯留体は、2枚の平膜を重ねて4つの縁を融着したり、1枚の平膜を2つ折りにして折り目以外の3つの縁を融着したり、インフレーション製法等で両端開放の筒状に成形した膜の両端開口をそれぞれ融着したりすることによって作製されるが、貯留体に張力が作用する場合には、該貯留体を構成する膜体そのものの強度はもちろんのこと、融着部の強度をも上記張力に耐え得る大きさにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、液状の環境流体の液面近くに浮いた状態で、前記環境流体より低密度の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置において、
密封された第1貯蔵室を有する可撓性かつ筒状の複数の貯留体を、互いの軸長方向を揃えて集合させた集合体と、前記集合体を囲む外枠と、を備え、
各貯留体の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で、隣接する貯留体どうしが押し合い、かつ前記集合体の外周部が前記外枠の内周面に押し当てられることを特徴とする。
【0006】
上記の特徴を備えた流体貯蔵装置によれば、各貯留体の下を向くべき端部に錘を付けなくても、若しくは前記下を向くべき端部に付けた錘の重量が小さくても、又は前記下を向くべき端部を海底等の環境底部に固定しなくても、各貯留体を安定的に起立姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。したがって、設置スペースをコンパクトにできる。また、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。加えて、被貯蔵流体の浮力と錘の重力とに起因する張力が各貯留体に作用するのを防止でき、又は前記張力を低減できる。したがって、貯留体を構成する膜体にピンホールが形成されたとしても、それが大きな裂け目に進展するのを防止又は抑制することができる。貯留体に融着部分があっても、該融着部分の強度を必要以上に高くする必要がない。よって、貯留体の製造を容易化できる。
【0007】
前記集合体の前記軸長方向と直交する短手方向の幅が、前記集合体の軸長より大きいことが好ましく、前記集合体の軸長の2倍以上であることがより好ましい。これによって、各貯留体を確実に起立姿勢にでき、集合体の姿勢を一層確実に安定させることができる。ここで、前記集合体の前記短手方向の幅は、前記外枠の内直径のうち最も短い寸法と実質的に等しい。
【0008】
前記各貯留体が、内部を前記第1貯蔵室と、前記環境流体を溜める第2貯蔵室とに仕切り、かつ前記被貯蔵流体と前記環境流体の貯蔵割合に応じて変形する可撓性の隔壁を含み、
前記各貯留体が常時満杯になるように、ひいては前記隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態が常時維持されるように、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室に供給されるときは前記第2貯蔵室から前記環境流体が排出され、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室から排出されるときは前記環境流体が前記第2貯蔵室に供給されることが好ましい。この場合、各貯蔵体内において被貯蔵流体が相対的に上側に位置しようとし、かつ環境流体が相対的に下側に位置しようとする。したがって、被貯蔵流体の注入途中又は排出途中の段階でも、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。また、被貯蔵流体が未満杯のときでも、被貯蔵流体と環境流体を合わせると、貯留体全体としては満杯状態にできる。したがって、隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態を維持できる。この結果、集合体の集合状態を確実に維持できる。更には、第2貯蔵室に導入する流体として環境流体を用いることで、資材コストを削減できる。
【0009】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状(袋状)の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記外膜と前記内膜の間の空間が前記第2貯蔵室を構成していることが好ましい。この場合、第1貯蔵室に被貯蔵流体を供給していくと、第1貯蔵室への被貯蔵流体の注入によって、内膜の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。第2貯蔵室への環境流体の注入によって、外膜の下側部分の内部体積が増大(膨張)する。これによって、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。前記内膜は、前記隔壁を構成する。内膜の上を向くべき端部が外膜に一体に接合されていてもよい。内膜の軸長方向の両端部が外膜と接合されていてもよい。或いは、内膜の前記両端部ひいては内膜の全体が、外膜と接合されていなくてもよい。
【0010】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された2つの両端閉止の筒状(袋状)の第1内膜及び第2内膜とを含み、第1内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、第2内膜の内部空間が前記第2貯蔵室を構成していてもよい。
この場合、第1貯蔵室への被貯蔵流体の注入によって、第1内膜の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。第2貯蔵室への環境流体の注入によって、第2内膜の下側部分の内部体積が増大(膨張)する。これによって、各貯蔵体を確実に起立姿勢にすることができ、集合体の姿勢を確実に安定させることができる。この場合、前記第1、第2内膜の各々が前記隔壁を構成する。第2内膜が破損したとしても、第1内膜内の被貯蔵流体に環境流体が混ざったり、第1内膜内の被貯蔵流体が漏出したりするのを回避できる。
【0011】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていてもよい。これによって、集合体の集合状態を確実に維持できる。
【0012】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていなくてもよい。これによって、施工を一層簡易化できる。
【0013】
前記外枠が、可撓性を有する枠本体を含むことが好ましい。前記枠本体は、前記各貯留体より伸びにくいことが好ましい。これによって、各貯留体内の流体圧に起因する張力を外枠に確実に担わせることができ、その分、各貯留体に作用する張力を確実に低減できる。 前記枠本体が、複数の可撓性の膜体を積層してなることが好ましい。これによって、前記枠本体を前記各貯留体より確実に伸びにくくすることができ、前記流体圧に起因する張力を外枠に確実に担わせることができる。
【0014】
前記外枠が、前記枠本体に巻き付けられたタガを、更に含むことが好ましい。前記タガは、前記枠本体より伸びにくいことが好ましい。これによって、前記流体圧に起因する張力を外枠に一層確実に分担させることができる。
【0015】
前記各貯留体が、内部空間が前記第1貯蔵室となる両端閉止の筒状(袋状)の内膜と、前記内膜の変形を許容するようにして前記内膜を収容した筒状の外膜とを含んでいてもよい。被貯蔵流体を各内膜の第1貯蔵室(内部空間)に注入していくと、被貯蔵流体の浮力によって各内膜の一端部が上側を向き、そこに被貯蔵流体が溜まる。これによって、流体貯蔵装置は、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で安定する。したがって、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって各貯留体を確実に起立姿勢にすることができる。
【0016】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状(袋状)の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で前記内膜の周側部のほぼ全体が前記外膜の内周面に押し当てられるようになっていてもよい。これによって、被貯蔵流体の圧が外膜に伝達され、外膜に前記流体圧と対抗する張力(流体圧起因の強力)が掛かる。その分、内膜に掛かる前記流体圧起因の張力を低減できる。ひいては、被貯蔵流体を安定して貯蔵できる。
【0017】
さらに、前記外膜が前記内膜より伸びにくくてもよい。これによって、前記流体圧起因の張力が、内膜と外膜のうち、主に外膜に掛かるようにでき、内膜には張力があまり掛からないようにすることができる。したがって、内膜にピンホールが形成されたとしても、それが大きな裂け目に進展するのを確実に防止できる。ひいては、被貯蔵流体をより一層安定的に貯蔵できる。
【0018】
前記内膜が、前記貯蔵量に応じて前記外膜とは別体に変形してもよい。この場合、好ましくは、前記外膜に開口が形成されている。より好ましくは、前記外膜の軸長方向の端部が開口されている。一層好ましくは、外膜の下を向くべき端部(他端部)が開口されている。これによって、各貯留体の被貯蔵流体の貯蔵量が非満杯のときは、各内膜の上を向くべき一端部に被貯蔵流体が溜まって該一端部の内部体積が増大(膨張)する。内膜の下を向くべき他端部は、内部体積が減少(収縮)する。内膜の他端部と外膜との間には、外膜の開口を通して流入した環境流体が溜まる。したがって、流体貯蔵装置を、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、確実に安定させることができる。この結果、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって、各貯留体を確実に立った姿勢にすることができる。また、前記被貯蔵流体の貯蔵量に応じて、前記内膜が、内部体積が増減するように変形するのに伴って、環境流体が、外膜の開口を通して、外膜と内膜との間の第2貯蔵室に出入りする。したがって、外膜は、内膜の変形に拘わらず、ほぼ一定の形状を維持する。
【0019】
前記外膜が、内部の内膜と一体に前記貯蔵量に応じて変形するようになっていてもよい。この場合、被貯蔵流体の貯蔵量が少ないときは、各貯留体の内膜の上を向くべき一端部に被貯蔵流体が溜まることで、内膜及び外膜の一端部の内部体積が増大(膨張)する。一方、内膜及び外膜の他端部の内部体積は減少(収縮)する。したがって、流体貯蔵装置を、複数の貯留体の一端部どうしが環境流体の液面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、確実に安定させることができる。この結果、被貯蔵流体を各第1貯蔵室に充填することによって、各貯留体を確実に立った姿勢にすることができる。
【0020】
前記外膜の内部が密封され、かつ前記内膜と外膜との間の膜間空間(第2貯蔵室)の容積が常時ほぼゼロであってもよい。これによって、各貯留体の内膜及び外膜が被貯蔵流体の貯蔵量に応じて確実に一体的に変形するようにできる。また、内膜が破損したときでも、被貯蔵流体の流出を防止したり、被貯蔵流体の汚染を防止したりできる。
前記外膜とその内部の内膜とを接合することによって、各貯留体の内膜及び外膜が被貯蔵流体の貯蔵量に応じて一体的に変形するようにしてもよい。
【0021】
前記環境流体は、例えば海水であり、前記被貯蔵流体は、例えば淡水である。これによって、海中に淡水を貯蔵できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、筒状の各貯留体の下を向くべき端部に錘を付けなくても、又は錘の重量を小さくしても、各貯留体を立った姿勢にして、貯蔵体の集合体を環境流体の液面近くに浮いた状態で安定的に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯の状態で模式的に示す、図2のI−I線に沿う正面断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う、上記流体貯蔵装置の平面断面図である。
【図3】上記流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯の状態で模式的に示す正面断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯でない状態で模式的に示す正面断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態を示し、上記流体貯蔵装置の貯留体どうしの接合状態の変形態様を示し、図8のVII−VIIに沿う平面断面図である。
【図8】上記第4実施形態における貯留体どうしの接合状態の変形態様を示し、図7のVIII−VIIIに沿う正面断面図である。
【図9】上記第4実施形態における前記貯留体どうしの接合状態の他の変形態様を示す正面断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体及び環境流体が半々ずつ充填されている状態で模式的に示す正面断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿う、上記第5実施形態に係る流体貯蔵装置の貯留体の平面断面図である。
【図12】第5実施形態に係る流体貯蔵装置を、被貯蔵流体が満杯に充填されている状態で模式的に示す正面断面図である。
【図13】第5実施形態に係る流体貯蔵装置の全体構成を示す平面図である。
【図14】第5実施形態に係る流体貯蔵装置の、図13のXIV−XIV線に沿う正面図である。
【図15】第5実施形態に係る流体貯蔵装置における1つの貯留ユニットの平面図である。
【図16】本発明の第6実施形態に係る貯留体を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図3は、本発明の第1実施形態を示したものである。流体貯蔵装置1は、海域Sの海面近くに浮いた状態で設置されている。環境流体2は海水である。流体貯蔵装置1の貯蔵対象すなわち被貯蔵流体3は、淡水である。流体貯蔵装置1は、海水2より低密度の淡水3を海水2から隔離して海水2中に貯蔵している。装置1の上端部が海面上に出ており、装置1の上端部より下側部分が海中に配置されている。
【0025】
図1に示すように、流体貯蔵装置1は、貯蔵ユニット4と、被貯蔵流体路5を備えている。貯蔵ユニット4は、設置海域Sの海面(環境流体の液面)の近くに浮いた状態で設置されている。貯蔵ユニット4の上端部が海面上に出ており、貯蔵ユニット4の上端部より下側部分が海中に配置されている。貯蔵ユニット4は、複数の貯留体(セル)10の集合からなる集合体9と、この集合体9を囲む外枠20とを有している。集合体9を構成する貯留体10の数は、3個〜1000個程度が好ましいが、2個でもよく、1000個以上でもよい。
なお、貯蔵ユニット4は、繋留手段にて繋留してもよい(図14参照)。
【0026】
各貯留体10は、可撓性の筒状(袋状)になっている。各貯留体10の内部に淡水3を貯蔵する第1貯蔵室13が形成されている。図1及び図3に示すように、貯蔵室13の大きさ(内部体積)は、淡水3の貯蔵量に応じて増減可能(膨張収縮可能)である。筒状の各貯留体10が、軸長方向を上下に向けた起立姿勢になっている。複数の貯留体10が、軸長方向(図1において上下方向)を互いに揃えて海面に沿って集合して配置されている。隣接する貯留体10どうしが接合されている。好ましくは、集合体9ひいては貯蔵ユニット4の軸長方向と直交する幅寸法が、集合体9の軸長(図1において上下寸法)より大きく、ひいては各貯留体10の軸長より大きい。より好ましくは、集合体9の短手方向の幅(軸長方向と直交する最短寸法)が、集合体9の軸長より大きい。一層好ましくは、集合体9の短手方向の幅が、集合体9の軸長の2倍以上である。
【0027】
貯留体10の構造を更に詳述する。図1及び図2に示すように、各貯留体10は、外膜11(張力膜)と、内膜12(貯蔵膜)とを有している。外膜11は、可撓性を有し、かつ軸長方向の両端部が開口された筒状になっている。外膜11は、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。外膜11を構成する可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、外膜11は、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、外膜11は、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。低密度ポリエチレンは伸縮性に富む。外膜11が、補強繊維を樹脂膜で挟んだ複合膜にて構成されていてもよい。さらに、外膜11が複数の膜体を積層した積層膜構造になっていてもよい。
【0028】
外膜11の軸長方向は、上下方向に向けられている。外膜11の上端部11c(一端部)は、海面上に出ている。外膜11の下端部11d(他端部)は、海中に配置されている。外膜11の上下両端部11c,11dは、それぞれ開口されている。淡水充填時における開口端部11c,11dの開口面積は、外膜11の中間部の内部空間の断面積と同じ大きさであるが、これに限られず、内膜12の抜け出しを阻止する程度に開口端部11c,11dの開口度が狭くなっていてもよい。
【0029】
外膜11の軸長(図1において上下方向の寸法)ひいては貯留体10の軸長は、例えば1m〜20m程度である。外膜11の軸長は、外膜11の周長以上であることが好ましい。外膜11の軸長の上限は、流体貯蔵装置1の設置場所の水深未満ないしは50m以下であることが好ましい。外膜11の厚みは、例えば10μm〜200μm程度である。図において、外膜11の厚みは、該外膜11の周長及び軸長に対して誇張されている。外膜11の厚みは、外膜11の周長と比べて十分に小さく、外膜11の外周面の周長と外膜11の内周面の周長は実質的に等しい。
【0030】
各貯留体10の外膜11の内部に内膜12が収容されている。内膜12は、外膜11に接合されておらず、外膜11とは別体に変形可能である。外膜11は、内膜12の変形を許容する。なお、ここで言う「変形」とは、膜が、その表面積が増減するように伸び縮みすることではなく、表面積は略一定を保ちながら当該膜の形状が変化することを意味する。内膜12が、外膜11とは別体に変形可能な程度に部分的ないしは局所的に外膜11と融着等で接合されていてもよい。
【0031】
内膜12は、可撓性を有し、かつ断面円形の筒状になっている。内膜12は、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。上記可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、内膜12は、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、内膜12は、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。
【0032】
内膜12の軸長方向は、上下方向に向けられている。内膜12の上端部12a(一端部)は、海面上に出ている。内膜12の下端部12b(他端部)は、海中に配置されている。内膜12の上下両端部12a,12bは、それぞれ融着されて液密(液体が透過不能)に封止され、封止端部を構成している。これによって、内膜12の内部が密封されている。この内膜12の内部空間が、上記第1貯蔵室13となっている。内膜12は、淡水3の貯蔵量に応じて内部体積が増減(膨張収縮)するように変形する。
【0033】
内膜12の周長は、淡水3の非充填時の外膜11の周長とほぼ同じ大きさである。淡水3の非充填時において、内膜12の周長は、外膜11の周長と同じであるか、又は外膜11の周長の例えば0〜10%程度小さくてもよく、若しくは外膜11の周長の例えば0〜10%程度大きくてもよい。好ましくは、淡水3の非充填時における両膜11,12の周長差は、各膜11,12の周長と比べて無視できるほど小さい。
【0034】
内膜12の軸長(図1において上下方向の寸法)は、外膜11の軸長とほぼ同じか、少し小さく、例えば1m〜20m程度である。内膜12の軸長は、内膜12の周長以上であることが好ましい。内膜12の軸長の上限は、流体貯蔵装置1の設置場所の水深未満ないしは50m以下であることが好ましい。内膜12の厚みは、外膜11の厚みと同じであるが、外膜11の厚みより大きくてもよく、小さくてもよい。例えば、内膜12の厚みは、10μm〜200μm程度である。図において、内膜12の厚みは、該内膜12の周長及び軸長に対して誇張されている。内膜12の厚みは、内膜12の周長と比べて極めて小さく、内膜12の外周面の周長と内膜12の内周面の周長は実質的に等しい。
【0035】
内膜12を単一の膜体からなる単層構造にし、かつ外膜11を複数の膜体を積層してなる積層構造にしてもよい。内膜12の抗張力性を外膜11の抗張力性より低くし、内膜12を外膜より伸びやすくしてもよい。内膜12と外膜11とに同じ大きさの引っ張り力を印加した場合、内膜12の伸び率が、外膜11の伸び率より大きくてもよい。
【0036】
各内膜12に被貯蔵流体路5が接続されている。被貯蔵流体路5を介して、淡水3を内膜12に注入したり、内膜12内から淡水3を取り出したりすることができる。
なお、図において、被貯蔵流体路5は、内膜12の上端部に接続されているが、内膜12の下端部に接続されていてもよい。
【0037】
図3に示すように、第1貯蔵室13に被貯蔵流体3が満杯に充填されていない状態では、内膜12が外膜11の内周面から全体的又は部分的に離れ、外膜11内で動く(外膜11に対し相対変位する)ことができる。外膜11と内膜12との間には、膜間空間14Aが形成される。図1に示すように、第1貯蔵室13に被貯蔵流体3が満杯に充填された状態では、内膜12の周側部が全周にわたって外膜11の周側部の内周面に押し当てられる。このとき、膜間空間14Aの容積は殆どゼロである。
【0038】
図2に示すように、隣接する貯留体10,10の外膜11,11どうしが互いの接触部において接合されている。これによって、流体貯蔵装置1を構成する複数の貯留体10,10…が互いにくっ付いて集合体9を構成している。図3に示すように、隣接する外膜11,11どうしの接合部11eは、加熱による融着によって一体化されている。図1に示すように、この融着接合部11eは、外膜11の軸長方向の全体にわたってスジ状に延びている。融着接合部11eの幅(図1の紙面直交方向の寸法)は、1mm以上、外膜11の周長の10分の1以下であることが好ましい。
なお、融着接合部11eが、外膜11の軸長方向に離れた複数箇所だけにスポット状に形成されていてもよい。
【0039】
仮に、各貯留体10が他の貯留体10と押し合っておらず、単独で海中に配置されていたとすると、当該貯留体10の外周形状は円筒形である。実際には、図2の実線に示すように、集合体9における隣り合う貯留体10どうしが、各貯留体10内の流体圧によって互いに押し合うことで変形し、各貯留体10の膜11,12が平面視で概略多角形になっている。
【0040】
集合体9(複数の貯留体10,10…の全体)が、筒状の外枠20によって囲まれている。外枠20は、可撓性の枠本体21を含む。枠本体21は、複数(図では2つ)の膜体21aを積層した複層構造になっている。各膜体21aは、軸長方向の両端部が開口された筒状になっている。各膜体21aは、可撓性材料にて構成され、好ましくは可撓性樹脂にて構成されている。膜体21aを構成する可撓性樹脂としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等が挙げられる。好ましくは、膜体21aは、ポリエチレンを筒状に成形してなるインフレーション膜にて構成されている。より好ましくは、膜体21aは、低密度ポリエチレンのインフレーション膜にて構成されている。或いは、膜体21aが、補強繊維を樹脂膜で挟んだ複合膜であってもよい。膜体21aの数は、耐張力の観点からは多いほうが好ましいが、コストを考慮して、20個以下が好ましい。外枠20が、単一の膜体21aからなる単層構造であってもよい。
外枠20が、枠本体21を囲むタガを更に備えていてもよい(図10参照)。
【0041】
外枠20の軸長(上下方向の長さ)は、貯留体10の軸長と同程度であり、例えば1m〜20m程度である。外枠20の各膜体21aの厚みは、各膜11,12の厚みと同じか、膜11,12の厚み以上であることが好ましいが、膜11,12の厚みより小さくてもよい。外枠20全体の厚みは、各膜11,12の厚みより大きいことが好ましい。例えば、膜体21aの厚みは、10μm〜200μm程度である。図において、外枠20の厚みは、該外枠20の周長及び軸長に対して誇張されている。
【0042】
複層構造の外枠20は、全体として膜11,12より高い抗張力性を有し、膜11,12よりも伸びにくい。すなわち、膜11,12及び外枠20に同じ大きさの引っ張り力を印加した場合、外枠20の伸び率が、膜11,12の伸び率よりも小さく、かつ外膜11の伸び率よりも小さい。なお、外枠20の各膜体21aの伸びやすさは、膜11,12と同程度であってもよく、或いは、各膜体21aが膜11,12よりも伸びやすくてもよい。複数の膜体21aが合わさることで、膜11,12よりも伸びにくくなればよい。外枠20が単一の膜体21aからなる単層構造である場合、膜体21aの厚みを膜11,12の厚みより大きくしたり、膜体21aを膜11,12より高い抗張力特性を有する材質にて構成したりすることによって、外枠20を膜11,12より伸びにくくしてもよい。
【0043】
上記のように構成された流体貯蔵装置1において、淡水3の貯蔵量が殆ど空の状態では、各貯留体10の内膜12のほぼ全体がしぼんだ状態になる。外膜11は、全体的に断面円形の状態を維持する。膜間空間14Aには、外膜11の下端開口11dから流入した海水2が溜まる。外膜11の上端開口11cから海面上の空気が膜間空間14A内に入り込んでいてもよい。隣接する貯留体10の外膜11,11どうしが接合されているため、内膜12が萎んでいても、貯留体10,10…どうしがばらばらになることはなく、集合体9が集合状態を維持できる。この状態から、淡水3を被貯蔵流体路5から各第1貯蔵室13に注入していくと、淡水3は、浮力によって各第1貯蔵室13の上側部分に溜まろうとする。したがって、図3に示すように、淡水3の貯蔵量が少ないときは、各内膜12の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。一方、内膜12の下側部分の内部体積は小さいままである。外膜11の下側部分の膜間空間14Aには、海水2が残留する。このため、複数の貯留体10が海面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、貯蔵ユニット4が安定する。
【0044】
淡水3の貯蔵量が増えるにしたがって、内膜12の充満部分が下方へ進展するように、内膜12が変形する。これに伴ない、外膜11の下側部分の膜間空間14Aの海水2が、外膜11の下端開口11dから押し出され、膜間空間14Aの体積が収縮する。そして、図1に示すように、各第1貯蔵室13に淡水3を満杯に充填することで、各貯留体10を起立姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。
【0045】
したがって、貯留体10を起立姿勢にするために貯蔵ユニット4の底部に錘を付ける必要がない。よって、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。加えて、錘が無いから、各膜11,12に淡水3の浮力と錘の重力とに起因する張力が掛かることがない。錘を付けるとしても、その重量は小さくて済む。したがって、淡水3の浮力と錘の重力とに起因する張力を充分に小さくできる。
【0046】
各貯留体10の第1貯蔵室13に淡水3を満杯に充填すると、淡水3の圧によって内膜12の周側部が全周にわたって外膜11の周側部の内周面に押し当てられる。また、隣接する貯留体10,10…どうしが押し合うことで、膜11,12の断面形状が変形する。さらに、集合体9の外周部(最も外側の貯留体10の外側を向く部分)が外枠20の内周面に押し当てられる。したがって、各貯留体10の周側部の全周が、隣接する貯留体10又は外枠20に押し当てられる。これによって、各貯留体10の淡水3の圧が外枠20に伝達され、外枠20に上記淡水3の圧と対抗する張力(流体圧起因の張力)が掛かる。すなわち、外枠20は、貯蔵ユニット4全体の淡水3の圧力に対する抗力を担う。その分、各貯留体10の膜11,12に掛かる張力を低減できる。外枠20を膜11,12よりも伸びにくくすることで、外枠20が貯蔵ユニット4全体の張力の大部分を負担するようにでき、各貯留体10の膜11,12には張力が殆ど掛からないようにすることができる。したがって、膜11,12にピンホールが形成されたとしても、該ピンホールが大きな裂け目に進展するのを防止又は抑制できる。
【0047】
さらに、淡水3の充填によって内膜12のどの部分においても内圧が外圧より高圧になるようにできるから、たとえ内膜12の周側部にピンホールが形成されたとしても、海水2がピンホールを介して第1貯蔵室13内に混入するのを防止でき、第1貯蔵室13内の淡水3が汚染されるのを防止できる。また、内膜12の材質や厚みを大きな張力に耐え得るように選定ないしは設定する必要が無い。さらに、内膜12の両端の融着部分の封止強度を必要以上に高くする必要が無く、内膜12の製造時における上記部分の融着作業を簡易化できる。
【0048】
海水2中の漂流物が流体貯蔵装置1に衝突したとしても、集合体9は外枠20によって護られて損傷しにくい。特に、集合体9の内側の貯留体10は、外枠20だけでなく外側の貯留体10によっても護られることで一層損傷しにくい。したがって、貯蔵した淡水3の全量を失うのを回避できる。また、フジツボ等の固着生物の幼体は、主に外枠20の外周面に付き易い。この外枠20の外周面上で上記固着生物が成長しても、貯留体10は殆ど影響を受けない。また、淡水3の圧によって、隣接する貯留体10間の隙間を殆ど無くすことができるから、上記固着生物の幼体が貯留体10の外周面に付くのを確実に防止できる。したがって、上記固着生物によって貯留体10が破損するのを確実に防止できる。
【0049】
海水2中の漂流物が流体貯蔵装置1に衝突したとしても、内側の貯留体10は外側の貯留体10によって護られて損傷しにくいから、貯蔵した淡水3の全量を失うのを回避できる。また、フジツボ等の硬い殻を有する固着生物の幼体は、主に、最も外側に在る貯留体10の露出面に付き易い。この露出面上で上記固着生物が成長しても、貯留体10が破損するまでには至りにくい。一方、上記固着生物の幼体は内側の貯留体10には付きにくい。たとえ、上記固着生物の幼体が内側の貯留体10に付いたとしても、内側の貯留体10,10どうしの隙間は狭く、一般に栄養状態が良好でないと考えられるから、上記固着生物が成長しにくい。したがって、貯留体10が破損する可能性は小さいと考えられる。
【0050】
貯蔵ユニット4に貯蔵した淡水3を利用する際は、被貯蔵流体路5を介して各貯留体10から淡水3を取り出す。淡水3が排出されるにしたがって、内膜12が、内部体積の収縮方向に変形する。これに伴ない、外部の海水2が外膜11の下端開口11dから膜間空間14Aに流入する。したがって、内膜12の変形に拘わらず、外膜11を一定の形状に維持できる。または、外膜11の変形量を内膜12の変形量より小さくできる。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4に示す第2実施形態は、外膜11の変形態様に係る。この変形態様では、外膜11の上端部が融着(ヒートシール)等にて閉じられ、閉塞端部11aとなっている。これによって、内膜12の上端部を日光の照射や鳥の攻撃等から保護することができる。
外膜11の下端部11dは開口されている。
【0052】
外膜11の上端部11aの閉塞手段は、融着に限られない。上記閉塞手段として、例えば一対の板状の挟付部材を用い、外膜11の上端部を上記一対の挟付部材によって挟み付けて閉じ、かつ貫通ボルトにて上記一対の挟付部材を止めてもよい。外膜11の上端部は、必ずしも気密又は液密に封止する必要は無く、空気や海水の出入りを許容していてもよい。
【0053】
図5及び図6に示す第3実施形態は、外膜11の他の変形態様に係る。この変形態様では、外膜11の上端部11a及び下端部11bが、それぞれ融着によって液密に封止され、封止端部を構成している。これによって、外膜11の内部が密封されている。このため、淡水3の貯蔵量に応じて、外膜11が、内部の内膜12と一体に変形する。外膜11と内膜12との間の袋間空間の容積は、淡水3の貯蔵量に拘わらず常時ほぼゼロである。外膜11の内周面の全体が、淡水3の貯蔵量に拘わらず常時、内膜12の外周面にほぼ密着している。
なお、膜11,12の上端部11a,12aに空気抜き用の穴(図示省略)を設けてもよい。
【0054】
図6に示すように、第3実施形態において、各貯留体10における淡水3の貯蔵量が少ないときは、淡水3は、浮力によって内膜12の上側部分だけに溜まろうとする。このため、外膜11及び内膜12の上側部分の内部体積が増大(膨張)する。膜11,12の下側部分は萎んだ状態になり、不規則に変形する。したがって、貯留体10,10…どうしが海面に沿ってほぼ水平に並んだ状態で、貯蔵ユニット4が安定する。淡水3の貯蔵量が増えるにしたがって、膜11,12の充満部分が下方へ伸長するように、膜11,12が一体的に変形する。このようにして、図5に示すように、淡水3を満杯に充填したとき、各貯留体10を立った姿勢(軸長方向を上下に向けた姿勢)にすることができる。したがって、貯蔵ユニット4に錘を付ける必要がなく、施工を簡易化でき、資材費及び施工費を低減できる。錘を付ける場合であっても、その重量を充分に小さくでき、膜11,12に働く張力を小さく抑えることができる。また、外膜11が密封されているために、内部の内膜12を確実に保護できる。たとえ、内膜12にピンホールが形成されたとしても、淡水3が貯留体10から流出するのを確実に阻止できる。
【0055】
図7及び図8に示す第4実施形態は、隣接する貯留体10,10の外膜11,11どうしの接合構造の変形態様に係る。隣接する貯留体10,10どうしは、融着に代えて、接合手段40にて接合されている。接合手段40は、一対の接合部材41,41を有している。これら接合部材41は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の樹脂にて構成されている。各接合部材41は、接合手段40の軸長方向に沿って真っ直ぐ延びる棒状になっている。各接合部材41の長手方向と直交する断面形状は半円状になっている。
【0056】
各接合部材41は、対応する貯留体10の内膜12と外膜11との間に配置されている。一対の接合部材41,41の間に、隣接する貯留体10,10の外膜11,11が挟み付けられている。一対の接合部材41,41は、複数のボルト43にて連結されている。ボルト43は、塩化ビニール等の耐海水性のある樹脂製ボルトであることが望ましい。各ボルト43が外膜11を貫通している。複数のボルト43は、接合部材41の長手方向に間隔を置いて配置されている。ボルト43の配置間隔は、50mm〜1m程度が好ましい。これらボルト43を締め付けることで、接合部材41の平坦な内側面が外膜11に強く押し当てられている。これによって、接合手段40が、隣接する貯留体10,10の接合部分の張力を負担している。その分、上記接合部分の外膜11には張力があまり掛からないようにできる。接合部材41の半円筒面状の外面には内膜12が被さっている。接合部材41の外面を滑らかな曲面にすることによって、内膜12の損傷を防止できる。
【0057】
図9に示すように、接合部材は、棒状に代えて、半円球状であってもよい。複数の半円球状の接合部材42が、貯留体10の軸長方向に間隔を置いて設けられていてもよい。
或いは、図示は省略するが、一対の接合部材のうち一方が、貯留体10の軸長方向に沿って真っ直ぐ延びる棒状の接合部材41であり、他方が、貯留体10の軸長方向に間隔を置いて配置された複数の半円球状の接合部材42にて構成されていてもよい。
【0058】
図10〜図15は、本発明の第5実施形態を示したものである。図13及び図14に示すように、第5実施形態の流体貯蔵装置1は、貯蔵ユニット4を複数備えていている。装置1全体の貯蔵ユニット4の数は、1個〜10000個程度が好ましい。貯蔵ユニット4の直径は、1m〜100m程度であることが好ましく、ここでは20m程度である。各貯蔵ユニット4は、好ましくは直径が高さより大きい筒状になっている。貯蔵ユニット4の高さ(図13の紙面と直交する方向の寸法)は、0.5m〜50m程度又は設置海域Sの水深未満であることが好ましい。隣り合う貯蔵ユニット4,4どうしの間隔は、各ユニット4の直径の0.3倍から水深程度が好ましく、ここでは15m程度である。
【0059】
図14及び図15に示すように、各貯蔵ユニット4は、繋留手段6によって海域Sに繋留されている。貯蔵ユニット4の外周部には、複数の被繋留部6aが設けられている。複数の被繋留部6aは、外枠20の周方向に離れて、好ましくは等間隔置きに配置されている。図において、被繋留部6aの数は、4つであるが、5つ以上でもよく、2つ又は3つでもよい。貯蔵ユニット4に被繋留部6aが1つだけ設けられていてもよい。
【0060】
各被繋留部6aに繋留ロープ6bの一端部が繋がれている。繋留ロープ6bの他端部は、設置海域Sの海上に浮遊しているフロート6c(浮遊体)に接続されている。フロート6cは、第2繋留ロープ6dを介して海底のシンカー6eに繋がれている。シンカー6eが、海中に浮遊していてもよい。或いは、第1繋留ロープ6bが、シンカー6eに直接繋がれていてもよい。第1繋留ロープ6bが、護岸等の海中壁に繋がれていてもよい。
【0061】
図10に示すように、第5実施形態では、各貯蔵ユニット4の各貯留体10Aが、外膜11及び内膜12を有している。外膜11は、第1実施形態の膜11と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い袋状(筒状)になっている。外膜11の上端部11a及び下端部11bは、融着(ヒートシール)等によって封止されている。外膜11の内部に内膜12が収容されている。内膜12は、第1実施形態の膜12と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い袋状(筒状)になっている。内膜12の上端部12a及び下端部12bは、融着(ヒートシール)等によって封止されている。外膜11と内膜12は、何れの箇所でも接合されておらず、互いに別体になっている。
なお、膜11,12の上端部11a,12aどうしが融着等によって一体に接合されていてもよい。さらに、膜11,12の下端部11b,12bどうしが融着等によって一体に接合されていてもよい。
集合体9の隣り合う貯留体10A,10Aどうしは接合されておらず、互いに別体かつ分離可能になっている。
【0062】
図14に示すように、集合体9の幅(軸長方向と直交する方向の寸法)は、集合体9の軸長(上下方向の寸法)より大きく、好ましくは集合体9の軸長の2倍以上である。集合体9が軸長方向と直交する方向に短径と長径を有しているときは、短径すなわち集合体9の短手方向の幅が、集合体9の軸長より大きいことが好ましく、上記短手方向の幅が、集合体9の軸長の2倍以上であることがより好ましい。
【0063】
複数の貯留体10A,10A…からなる集合体9が外枠20によって囲まれている。外枠20は、枠本体21と、タガ22を含む。枠本体21は、第1実施形態と同様に、複数の可撓性の膜体21aを積層した積層膜構造になっている。複層構造の枠本体21は、貯留体10Aの各膜11,12より伸びにくい。
【0064】
図14に示すように、枠本体21の外周には、上下に離れて2つ(複数)の環状のタガ22,22が巻き付けられている。タガ22は、硬質樹脂又は金属にて構成され、枠本体21より伸びにくい。タガ22は、完全に閉じた環状であってもよく、一箇所が切り欠かれたC字環状であってもよい。C字環状のタガ22の場合、その切り欠き部がボルト等の連結具にて引き寄せられるように連結される。タガ22が、周方向に複数の円弧状のタガ部材に分割されていて、周方向に隣接するタガ部材どうしが連結具にて連結されていてもよい
【0065】
図15に示すように、集合体9の上面には上部網23が被せられている。図10に示すように、網23の外周部が外枠20の上端部に止着されている。網23によって、外枠20内の貯留体10Aが上へ抜け出るのが阻止されている。集合体9の下面には底部網24が被せられている。網24の外周部が外枠20の下端部に止着されている。網24によって、外枠20内の貯留体10Aが下へ抜け出るのが阻止されている。
【0066】
図10に示すように、各貯留体10Aの底部には錘15が設けられている。後述するように、貯留体10Aの底部には相対的に重比重の海水2が溜まり、上部には相対的に軽比重の淡水3が溜まる傾向があるから、錘15の重さは、1kg〜10kg程度で十分である。貯留体10Aの上部にはフロート16が設けられている。フロート16は、発泡スチロール等の発泡樹脂にて構成されている。錘15及びフロート16によって、貯留体10Aを確実に安定した起立姿勢にすることができる。錘15とフロート16の何れか一方を省略してもよい。錘15とフロート16の両方を省略してもよい。通常、貯留体10A内の上部には空気が溜まりやすく、この空気がフロート16の代わりになる。
【0067】
各貯留体10Aの内膜12の内部が第1貯蔵室13になっている。外膜11と内膜12の間の空間が第2貯蔵室14になっている。内膜12が、第1貯蔵室13と第2貯蔵室14を隔てる隔壁になっている。第1貯蔵室13には淡水3(被貯蔵流体)が充填されている。第2貯蔵室14には海水2(環境流体)が充填されている。
【0068】
図13及び図15に示すように、被貯蔵流体路5が、陸地Lの被貯蔵流体源3Sから延びて、複数段階にわたってツリー状に分岐している。被貯蔵流体源3Sは、雨水や地下水を蓄えた井戸、貯留池、ダム、河川等にて構成されている。なお、図13及び図15においては、流体路5の一部のみを図示する。図10に示すように、被貯蔵流体路5の最終段の枝路が、各貯蔵ユニット4の貯留体10Aの第1貯蔵室13に接続されている。詳細な図示は省略するが、被貯蔵流体源3Sの水位は、貯蔵ユニット4の上端部より高所に位置している。したがって、被貯蔵流体路5の開閉弁5Vを開くと、被貯蔵流体源3Sの淡水3を、水頭圧によって被貯蔵流体路5を介して貯蔵ユニット4に供給することができる。
なお、被貯蔵流体路5に、被貯蔵流体源3Sの淡水3を貯蔵ユニット4に圧送する圧送ポンプを設けてもよい(図示省略)。
【0069】
図13及び図15に示すように、第5実施形態の流体貯蔵装置1は、環境流体路7を更に備えている。環境流体路7(図13及び図15において一部のみ図示)は、設置海域Sの海中から延びて複数段階にわたってツリー状に分岐している。図10に示すように、環境流体路7の最終段の枝路が、各貯留体10Aの第2貯蔵室14に接続されている。環境流体路7には、圧送ポンプ7Pが設けられている。圧送ポンプ7Pの駆動によって、海域Sの海水を貯蔵ユニット4に圧送することができる。
【0070】
図10に示すように、各貯留体10Aは、第1貯蔵室13の淡水3と第2貯蔵室14の海水2とによって、全体として常時満杯になっている。貯留体10A内の海水2と淡水3の合計貯蔵量は、海水2と淡水3の貯蔵割合に依らずに略一定である(図10及び図12参照)。淡水3の貯蔵量が増えると海水2の貯蔵量が減る。淡水3の貯蔵量が減ると海水2の貯蔵量が増える。これら淡水3及び海水2の貯蔵量の増減に応じて、内膜12が変形し、第1貯蔵室13と第2貯蔵室14の容積が変化する。図10に示すように、貯留体10Aに海水2と淡水3が半々ずつ充填されているときは、これら充填液2,3どうしの比重差によって、第1貯蔵室13が上に位置し、第2貯蔵室14が下に位置する。内膜12の上側部分は膨らみ、内膜12の下側部分は萎んでいる。図12に示すように、淡水3が貯留体10A内に満杯に充填された状態では、内膜12のほぼ全体が外膜11の内周面に接する。
【0071】
図11の二点鎖線に示すように、仮に、各貯留体10Aが他の貯留体10Aと押し合っておらず、単独で海中に配置されていたとすると、当該貯留体10Aの外周形状は円筒形である。実際には、図11の実線に示すように、集合体9における隣り合う貯留体10Aどうしが、各貯留体10A内の流体圧によって互いに押し合うことで変形し、各貯留体10Aが平面視で概略多角形になっている。上記の押し合いによって、各貯留体10Aの外膜11に働く張力を低減できる。更に、集合体9の外周面(最外周の貯留体10Aの外側を向く面)が、枠本体21に押し当てられている。更には、枠本体21がタガ22に押し当てられている。これによって、外枠20が、各貯留体10Aの流体圧と対抗する張力を担う。枠本体21を複数の膜体21aからなる複層構造にすることによって、枠本体21の耐張力強度を確保できる。個々の貯留体10Aは上下に長い筒状であっても、複数の貯留体10Aを集合させて縛り付けることで、各貯留体10Aを安定的に起立姿勢にすることができる。これによって、貯蔵ユニット4をコンパクトにできる。
【0072】
淡水3を入れる前の貯蔵ユニット4の各貯留体10Aには、第2貯蔵室14に海水2を満杯に充填しておく。そうすることで、隣接する貯留体10A,10Aどうしを互いに押し付け、かつ外枠20にて貯留体10A,10A…の集合体9を縛り付けることができる。これによって、淡水3が入っていないときでも、各貯留体10Aを起立した姿勢で安定させることができる。
【0073】
貯蔵ユニット4内の淡水3が非満杯の状態又はほとんど入っていない状態において、開閉弁5Vを開けると、供給源3Sの淡水3が、水頭圧によって、被貯蔵流体路5を経て、各貯留体10Aの第1貯蔵室13に導入される。流体路5に設けた圧送ポンプ(図示省略)によって淡水3を第1貯蔵室13に圧送することにしてもよい。第1貯蔵室13への淡水導入によって、内膜12が内部体積の増大(膨張)方向に変形し、これに伴なって、第2貯蔵室14の海水2が、環境流体路7に押し出される。この海水2が、停止中の圧送ポンプ7P内を逆流し、環境流体7の基端部から海Sに排出される。
【0074】
これによって、第1貯蔵室13が膨張し、かつ第2貯蔵室14が収縮する。貯留体10A全体としては、淡水3の注入中、常時満杯状態を維持できる。したがって、隣接する貯留体10Aとの押し付け状態を維持でき、かつ外枠20による集合体9の縛り付け状態を維持できる。この結果、淡水3の注入時でも貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。図12に示すように、淡水3が貯留体10A内に満杯に充填されたときは、ほぼ淡水3だけの圧によって上記押し付け状態及び縛り付け状態を維持でき、ひいては貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。貯留体10Aへの淡水3の充填が終了したときは、開閉弁5Vを閉じることが好ましい。
【0075】
淡水供給源3Sの淡水3が不足してきたときは、貯蔵ユニット4から淡水3を供給源3Sに補充することができる。補充の際は、開閉弁5Vを開け、かつ圧送ポンプ7Pを駆動する。これよって、海Sの海水2が環境流体路7に取り込まれ、第2貯蔵室14に導入される。この海水2の導入圧によって、内膜12が内部体積の縮小方向に変形するとともに、第1貯蔵室13内の淡水3が、被貯蔵流体路5に押し出されて、淡水供給源3Sに送出される。上記の海水2の導入及び淡水3の送出に伴なって、第1貯蔵室13が収縮するとともに、第2貯蔵室14が膨張する。貯留体10A全体としては、淡水3の送出中、常時満杯状態を維持できる。したがって、隣接する貯留体10Aとの押し付け状態を維持でき、かつ外枠20による集合体9の縛り付け状態を維持できる。この結果、淡水3の送出時でも貯留体10Aの起立姿勢を保つことができる。
第2貯蔵室14に溜める流体として海水2を用いることで、資材コストを低減できる。
【0076】
図16は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態は、第5実施形態の貯留体の変形態様に係る。第6実施形態の貯留体10Bは、外膜17と、第1内膜18と、第2内膜19を備えている。外膜17は、第1実施形態の外膜11と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い筒状になっている。外膜17の内部に第1内膜18と第2内膜19が収容されている。第1、第2内膜18,19は、それぞれ第1実施形態の内膜12と同様の可撓性材料にて構成され、上下に長い筒状(袋状)になっており、かつ上下両端部が閉じられている。第1内膜18に被貯蔵流体路6が接続され、第1内膜18の内部が第1貯蔵室13になっている。該第1貯蔵室13に淡水3が充填されている。第2内膜19に環境流体路7が接続され、第2内膜19の内部が第2貯蔵室14になっている。該第2貯蔵室14に海水2が充填されている。2つの内膜18,19の互いに接する部分が、貯留体10B内の海水2と淡水3とを隔てる隔壁を構成する。
【0077】
内膜18,19どうしは接合されておらず、互いに別体かつ分離可能になっている。各貯蔵室13,14に流体3,2が充填されることによって、内膜18,19どうしが、外膜17内において互いに押し合っている。淡水3と海水2の比重差によって、貯留体10Bの上側部分においては、第1内膜18の内部体積が大きくなり、かつ第2内膜19の内部体積が小さくなっている。また、貯留体10Bの下側部分においては、第2内膜19の内部体積が大きくなり、かつ第1内膜18の内部体積が小さくなっている。第2内膜19の上端部にフロート16が設けられ、第2内膜19の下端部に錘15が設けられている。
なお、フロート16を第1内膜18の上端部に設けてもよい。錘15を第1内膜18の下端部に設けてもよい。フロート16又は錘15を省略してもよい。
【0078】
この変形態様によれば、第2内膜19が破損したとしても、第1内膜18内の淡水3に海水2が混ざったり、第1内膜18内の淡水3が海中に漏出したりするのを回避できる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変態様を採用できる。
例えば、各貯留体10の外膜11を内部の内膜12と融着等で接合してもよい。
被貯蔵流体路5を貯留体10の下端部に接続してもよく、淡水3を貯留体10の下端部から第1貯蔵室13に注入してもよい。
環境流体路7を貯留体10の上端部に接続してもよく、海水2を貯留体10の上端部から第2貯蔵室14に注入してもよい。
外枠20の伸びやすさが膜11,12と同程度であってもよく、又は外枠20が膜11,12よりも伸びやすくてもよい。その場合でも、外枠20が最外側の貯留体10に押し当たって張力の一部を負担することで、各貯留体10の膜11,12に掛かる張力を低減できる。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第1〜第3実施形態(図1〜図6)においても、第5実施形態(図10〜図12)と同様に、貯留体10の底部に錘15を設けてもよく、貯蔵体10の上部にフロート16を設けてもよい。その場合、上記錘15の重量を、単一の貯留体10を立った姿勢で浮かせるのに要する錘の重量に比べて、小さくできる。
第1〜第4、第6実施形態(図1〜図9、図16)の装置1においても、第5実施形態(図10〜図15)と同様に複数の貯蔵ユニット4を備えていてもよい。
第1〜第4、第6実施形態(図1〜図9、図16)の装置1においても、第5実施形態(図10〜図15)と同様に、貯蔵ユニット4が繋留手段6によって海域Sに繋留されていてもよい。
被貯蔵流体3は、環境流体2より低密度の流体であればよく、淡水に限られず、更には液体に限られず、例えば石油、天然ガス等であってもよい。
環境流体2は、海水に限られず、湖水やダムの水でもよく、原油タンク内の原油でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば淡水を海中に貯蔵する淡水貯蔵技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
L 陸地
S 設置海域
1 流体貯蔵装置
2 海水(環境流体)
3 淡水(被貯蔵流体)
3S 被貯蔵流体源
4 貯蔵ユニット
5 被貯蔵流体路
5V 開閉弁
6 繋留手段
6a 被繋留部
6b 繋留ロープ
7 環境流体路
7P 圧送ポンプ
9 集合体
10 貯留体(セル)
11 外膜
11a,11b 封止端部
11c,11d 開口端部
11e 融着接合部
12 内膜(隔壁)
12a,12b 封止端部
13 第1貯蔵室
14 第2貯蔵室
15 錘
16 フロート
17 外膜
18 第1内膜(隔壁)
19 第2内膜(隔壁)
20 外枠
21 枠本体
21a 膜体
22 タガ
23,24 網
40 接合手段
41 棒状の接合部材
42 半円球状の接合部材
43 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の環境流体の液面近くに浮いた状態で、前記環境流体より低密度の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置において、
密封された第1貯蔵室を有する可撓性かつ筒状の複数の貯留体を、互いの軸長方向を揃えて集合させた集合体と、前記集合体を囲む外枠と、を備え、
各貯留体の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で、隣接する貯留体どうしが押し合い、かつ前記集合体の外周部が前記外枠の内周面に押し当てられることを特徴とする流体貯蔵装置。
【請求項2】
前記集合体の前記軸長方向と直交する短手方向の幅が、前記集合体の軸長の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の流体貯蔵装置。
【請求項3】
前記各貯留体が、内部を前記第1貯蔵室と、前記環境流体を溜める第2貯蔵室とに仕切り、かつ前記被貯蔵流体と前記環境流体の貯蔵割合に応じて変形する可撓性の隔壁を含み、
前記各貯留体が常時満杯になるように、ひいては前記隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態が常時維持されるように、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室に供給されるときは前記第2貯蔵室から前記環境流体が排出され、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室から排出されるときは前記環境流体が前記第2貯蔵室に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体貯蔵装置。
【請求項4】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記外膜と前記内膜の間の空間が前記第2貯蔵室を構成していることを特徴とする請求項3に記載の流体貯蔵装置。
【請求項5】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された2つの両端閉止の筒状の第1内膜及び第2内膜とを含み、第1内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、第2内膜の内部空間が前記第2貯蔵室を構成していることを特徴とする請求項3に記載の流体貯蔵装置。
【請求項6】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で前記内膜の周側部のほぼ全体が前記外膜の内周面に押し当てられることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体貯蔵装置。
【請求項7】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の流体貯蔵装置。
【請求項8】
前記外枠が、可撓性を有する枠本体と、前記枠本体に巻き付けられたタガとを含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の流体貯蔵装置。
【請求項1】
液状の環境流体の液面近くに浮いた状態で、前記環境流体より低密度の被貯蔵流体を貯蔵する流体貯蔵装置において、
密封された第1貯蔵室を有する可撓性かつ筒状の複数の貯留体を、互いの軸長方向を揃えて集合させた集合体と、前記集合体を囲む外枠と、を備え、
各貯留体の前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で、隣接する貯留体どうしが押し合い、かつ前記集合体の外周部が前記外枠の内周面に押し当てられることを特徴とする流体貯蔵装置。
【請求項2】
前記集合体の前記軸長方向と直交する短手方向の幅が、前記集合体の軸長の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の流体貯蔵装置。
【請求項3】
前記各貯留体が、内部を前記第1貯蔵室と、前記環境流体を溜める第2貯蔵室とに仕切り、かつ前記被貯蔵流体と前記環境流体の貯蔵割合に応じて変形する可撓性の隔壁を含み、
前記各貯留体が常時満杯になるように、ひいては前記隣接する貯留体どうしの押し合い状態及び前記集合体の前記外枠への押し当て状態が常時維持されるように、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室に供給されるときは前記第2貯蔵室から前記環境流体が排出され、前記被貯蔵流体が前記第1貯蔵室から排出されるときは前記環境流体が前記第2貯蔵室に供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体貯蔵装置。
【請求項4】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記外膜と前記内膜の間の空間が前記第2貯蔵室を構成していることを特徴とする請求項3に記載の流体貯蔵装置。
【請求項5】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された2つの両端閉止の筒状の第1内膜及び第2内膜とを含み、第1内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、第2内膜の内部空間が前記第2貯蔵室を構成していることを特徴とする請求項3に記載の流体貯蔵装置。
【請求項6】
前記各貯留体が、筒状の外膜と、前記外膜の内部に収容された両端閉止の筒状の内膜とを含み、前記内膜の内部空間が前記第1貯蔵室を構成し、前記第1貯蔵室に前記被貯蔵流体を充填した状態で前記内膜の周側部のほぼ全体が前記外膜の内周面に押し当てられることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体貯蔵装置。
【請求項7】
前記隣接する貯留体どうしが接合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の流体貯蔵装置。
【請求項8】
前記外枠が、可撓性を有する枠本体と、前記枠本体に巻き付けられたタガとを含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の流体貯蔵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−107701(P2013−107701A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9824(P2012−9824)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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