説明

流体軸受式回転装置およびこれを備えた記録再生装置

【課題】流体軸受式回転装置において、軸受の寿命とラジアル荷重、偏心率、オイルせん断仕事関数、回転数等との関係を考慮して、適正な寿命を確保することが可能な流体軸受式回転装置を提供する。
【解決手段】流体軸受式回転装置は、スリーブの軸受穴に軸が相対的に回転自在に挿入され、軸の外周面またはスリーブの内周面の少なくとも一方に動圧発生溝を有するラジアル軸受面が設けられている。(1)式により表されるオイルせん断仕事関数をWと定義した場合、1/Wの値が10000以上になるよう構成されている。 W=P×L×Ep ・・・・・・(1) Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3・・・(2) Ep=P/(Fs×C) ・・・・・・・・・(3)Fsは剛性相当関数、Epは偏心率相当関数、Pはラジアル軸受1個毎の負荷、Lはラジアル軸受1個あたりの軸方向の長さ、Cはラジアル軸受の半径方向隙間、ηは絶対粘度、ωは角速度、Dは軸直径である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧流体軸受を使用した流体軸受式回転装置およびこれを備えた記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回転するディスクを用いた記録装置等は、そのメモリ容量が増大し、またデータの転送速度が高速化しているため、これらに使用される記録装置の軸受には、常にディスク負荷を高精度に回転させるための高い性能と信頼性とが要求される。そこで、これら回転装置として高速回転に適した流体軸受式回転装置が一般的に用いられている。
【0003】
流体軸受式回転装置は、軸とスリーブとの間に潤滑剤であるオイルを介在させ、動圧発生溝によって回転時にポンピング圧力を発生させることで、軸をスリーブに対して非接触の状態で回転させることができる。このため、回転中に軸とスリーブとの間に機械的な摩擦が生じないことから、安定して高速回転させることが可能になる。
【0004】
以下、図11を参照しながら、従来の流体軸受式回転装置の一例について説明する。
従来の流体軸受式回転装置は、図11に示すように、スリーブ21、軸22、スラスト板24、オイル25、ベース26、ハブロータ27、コイルが巻回されたステータ28およびロータ磁石29を備えている。
【0005】
軸22は、フランジ23と一体化しており、スリーブ21の軸受穴21Cに回転可能な状態で挿入される。フランジ23は、スリーブ21の凹部21Dに収納される。軸22の外周面またはスリーブ21の内周面の少なくともいずれか一方には、動圧発生溝21A,21Bが形成されている。一方、フランジ23のスリーブ21との対向面およびフランジ23とスラスト板24との対向面には、動圧発生溝23A,23Bが形成されている。スラスト板24は、スリーブ21に固着されており、軸受隙間は袋状になっている。各動圧発生溝21A,21B,23A,23Bの付近の軸受隙間は、少なくともオイル25によって充填されており、また、スリーブ21と軸22とによって形成される袋状の軸受隙間全体についても、必要に応じてオイル25によって充填されている。
【0006】
ベース26には、スリーブ21が固定されている。そして、ステータ28が、ロータ磁石29に対向するようにベース26に固定される。
一方、ハブロータ27は、軸22に固定されており、ロータ磁石29、ディスク30、スペーサ32、クランパー31およびネジ33が固定される。
【0007】
ここで、以上のような構成の従来の流体軸受式回転装置の動作について説明すれば以下の通りである。
すなわち、上記従来の流体軸受式回転装置では、ステータ28に巻回されたコイルに通電されると回転磁界が発生し、ロータ磁石29に回転力が付与される。これにより、ロータ磁石29は、ハブロータ27、軸22、フランジ23、ディスク30、スペーサ32、クランパー31、ネジ33とともに回転を開始する。これらの部材が回転すると、動圧発生溝21A,21B,23A,23Bは、軸受隙間に充填されたオイル25をかき集め、軸22とスリーブ21の間、およびフランジ23とスリーブ21およびスラスト板24との間にポンピング圧力を発生させる。
【0008】
これにより、軸22をスリーブ21とスラスト板24に対して非接触の状態で回転させることができ、図示しない磁気ヘッドまたは光学ヘッドによって、回転するディスク30に対してデータの記録再生を行うことができる。
【特許文献1】特許第2506836号公報
【特許文献2】特許第1748817号公報
【特許文献3】特開平1−120418号公報
【特許文献4】特開昭62−140271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の流体軸受式回転装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、図11において、スリーブ21と軸22との間には、数μmの微小な隙間が確保されており、一方、フランジ23とスリーブ21またはスラスト板24との間には、数μmから数十μmの充分な隙間が確保されている。しかし、従来の流体軸受式回転装置では、高温条件下(例えば、70℃)において高速で長時間、連続的に回転させると、オイルが軸受回転によりせん断力を受けて劣化することで、短時間でコスレが生じたり、軸受が焼き付いたりするおそれがある。
【0010】
ここで、1万rpm用に設計された流体軸受式回転装置を2倍速の2万rpmで連続回転させた場合の実験結果を図12に示す。
ここでは、この流体軸受式回転装置の寿命は、1万回転の時に比べて約40パーセント悪化していることが分かる。
【0011】
また、ラジアル荷重が110グラムになるように設計された流体軸受式回転装置において、このラジアル荷重を2倍にして連続運転した場合の実験結果を図13に示す。
ここでは、この流体軸受式回転装置は、ラジアル軸受荷重が2倍になってもコスレが生じることなく、非接触回転を維持しているにも関らず、実験結果として得られた寿命時間は約50パーセント悪化した。
【0012】
以上の実験結果から分かるように、従来の流体軸受式回転装置のラジアル流体軸受は、70℃前後の高温の条件下において、高荷重で長期間の運転を行うと、やがてオイルが劣化して軸受が故障するおそれがある。そして、これら流体軸受式回転装置の寿命に関し、従来から温度と軸受寿命との関係については、アレニウスの反応速度論に則り高温になるほど軸受の寿命は短くなることは既に証明されている。しかし、ラジアル荷重、偏心率、オイルせん断仕事関数、回転数等と軸受の寿命との関係については理論的に解明されていなかった。
【0013】
本発明の課題は、流体軸受式回転装置において、軸受の寿命とラジアル荷重、偏心率、オイルせん断仕事関数、回転数等との関係を考慮して、適正な寿命を確保することが可能な流体軸受式回転装置およびこれを備えた記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明に係る流体軸受式回転装置は、軸受穴を有するスリーブと、スリーブの軸受穴に相対的に回転可能な状態で挿入される軸と、スリーブおよび軸のうち、回転する側に取り付けられたハブロータと、軸の外周面およびスリーブ内周面の少なくとも一方に動圧発生溝を有するラジアル軸受面と、を備えている。そして、下記(1)式によって表わされるオイル(潤滑剤)せん断仕事関数をWとした場合、1/Wの値が10000以上になるように構成されている。
【0015】
W=P×L×Ep ・・・・・・(1)
Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 ・・・(2)
Ep=P/(Fs×C) ・・・・・・・・(3)
W:オイル(潤滑剤)せん断仕事関数
Fs:剛性相当関数
Ep:偏心率相当関数
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/s(=2・π・f/60)]
D:軸直径 [m]
f:回転数 [rev/min]
L:ラジアル軸受1個当たりの長さ [m]
C:ラジアル軸受の半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受1個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
ここでは、流体軸受式回転装置の潤滑剤(例えば、オイル等。以下、オイルと示す)が高温(例えば、約70℃程度)、高速連続回転においてせん断を受けて劣化が進むことで、オイルが蒸発しやすくなったり充分な油膜強度が得られなくなったりして流体軸受が短時間で損傷しないように、潤滑剤のせん断仕事関数(以下、オイルせん断仕事関数と示す)の逆数を示す関係式が満たすべき一定の条件としてその下限値(10000以上)を設定している。
【0016】
ここで、オイルせん断仕事関数Wの逆数1/Wとラジアル軸受寿命比率との関係を示すグラフによれば、オイルせん断仕事関数Wの逆数1/Wが下限値として設定した10000以下の場合には、オイルせん断仕事関数が大きくなり過ぎて、ラジアル軸受寿命比率が15000以下となってしまう。この結果、オイルが軸受の回転によって受けるせん断力が大きくなることで、オイルの蒸発や油性の低下によって軸受に焼き付けが生じ、製品寿命が短くなってしまう。
【0017】
よって、上記条件式を満たすように構成された流体軸受式回転装置によれば、高温の条件下において、高速で連続回転させた場合でも、長寿命な流体軸受式回転装置を実現できるという効果を奏する。
【0018】
第2の発明に係る流体軸受式回転装置は、第1の発明に係る流体軸受式回転装置であって、1/Wの値が65000以下になるように構成されている。
ここでは、オイルのせん断仕事関数の逆数を示す関係式が満たすべき一定の条件として、その上限値(65000以下)を設定している。
【0019】
ここで、1/Wを大きくする、すなわち、オイルせん断仕事関数Wを小さくするためには、オイルせん断を軽くしながら流体軸受の剛性や回転精度を維持するために、軸受隙間や軸受面積を大きくする必要がある。この場合には、低温の条件下では、オイルの粘性抵抗が大きいために、モータの消費電流が大きくなってしまう。また、軸受の剛性や回転精度を維持するために部品を大きくしつつ高精度に加工すると、部品コストが上昇してしまう。
【0020】
これにより、軸受の寿命に関して過剰品質となることを防止して、生産性、生産コスト、低温での性能等が損なわれることを回避することができる。
第3の発明に係る流体軸受式回転装置は、軸受穴を有するスリーブと、スリーブの軸受穴に相対的に回転可能な状態で挿入される軸と、スリーブおよび軸のうち、回転する側に取り付けられたハブロータと、軸の外周面およびスリーブ内周面の少なくとも一方に動圧発生溝を有するラジアル軸受面と、を備えている。そして、下記(4)式によって表わされるオイルせん断相当関数をEとした場合、1/Eの値が0.00001以上になるように構成されている。
【0021】
E=Ep×ω×ω ・・・・・・(4)
Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 ・・・(5)
Ep=P/(Fs×C) ・・・・・・・・(6)
W:オイル(潤滑剤)せん断仕事関数
Fs:剛性相当関数
Ep:偏心率相当関数
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/s(=2・π・f/60)]
D:軸直径 [m]
f:回転数 [rev/min]
L:ラジアル軸受1個当たりの長さ [m]
C:ラジアル軸受の半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受1個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
ここでは、流体軸受式回転装置の潤滑剤(例えば、オイル等。以下、オイルと示す)が、高温(例えば、約70℃程度)、高速連続回転においてせん断を受けて劣化が進むことで、オイルが蒸発しやすくなったり充分な油膜強度が得られなくなったりして流体軸受が短時間で損傷しないように、オイルのせん断仕事関数の逆数を示す関係式が満たすべき一定の条件としてその下限値(0.00001以上)を設定している。
【0022】
ここで、オイルせん断相当関数Eの逆数1/Eとラジアル軸受寿命比率との関係を示すグラフによれば、オイルせん断仕事関数Eの逆数1/Eが下限値として設定した0.00001以下の場合には、オイルせん断仕事関数が大きくなり過ぎて、ラジアル軸受寿命比率が15000以下となってしまう。この結果、オイルが軸受の回転によって受けるせん断力が大きくなることで、オイルの蒸発や油性の低下によって軸受に焼き付けが生じ、製品寿命が短くなってしまう。
【0023】
よって、上記条件式を満たすように構成された流体軸受式回転装置によれば、高温の条件下において、高速で連続回転させた場合でも、長寿命な流体軸受式回転装置を実現できるという効果を奏する。
【0024】
第4の発明に係る流体軸受式回転装置は、第3の発明に係る流体軸受式回転装置であって、1/Eの値が0.00013以下になるように構成されている。
ここでは、オイルのせん断仕事関数の逆数を示す関係式が満たすべき一定の条件として、その上限値(0.00013)を設定している。
【0025】
ここで、1/Eを大きくする、すなわち、オイルせん断仕事関数Eを小さくするためには、オイルせん断を軽くしながら流体軸受の剛性や回転精度を維持するために、軸受隙間や軸受面積を大きくする必要がある。この場合には、低温の条件下では、オイルの粘性抵抗が大きいために、モータの消費電流が大きくなってしまう。また、軸受の剛性や回転精度を維持するために部品を大きくしつつ高精度に加工すると、部品コストが上昇してしまう。
【0026】
これにより、軸受の寿命に関して過剰品質となることを防止して、生産性、生産コスト、低温での性能等が損なわれることを回避することができる。
第5の発明に係る流体軸受式回転装置は、第1から第4の発明に係る流体軸受式回転装置であって、ラジアル軸受面とスリーブまたは軸との間に形成される半径方向における隙間は、1μm以上であって、略一定である。
【0027】
ここでは、ラジアル軸受面とスローブまたは軸との間に形成される隙間の大きさに関して、その下限値を設定している。
ここで、上記隙間の大きさが、1μm未満である場合には、軸の外周面やスリーブの内周面の加工精度や表面粗さによっては、軸受の寿命に対して悪い影響を及ぼすおそれがある。
【0028】
これにより、上記1μm以上という条件をさらに満たすことで、軸の外周面やスリーブの内周面の加工精度や表面粗さに関わらず、常に安定した寿命を確保することができる
第6の発明に係る流体軸受式回転装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る流体軸受式回転装置であって、軸とスリーブとの間に形成される隙間には潤滑剤が保持され、ラジアル軸受面に隣接する位置に、その対向面との間の隙間がラジアル軸受面より大きい潤滑剤溜まり部が形成されている。そして、潤滑剤溜まり部の容積は、ラジアル軸受面とスリーブまたは軸との隙間の容積の10%以上である。
【0029】
ここでは、軸とスリーブとの間において、ラジアル軸受面に隣接するように形成される潤滑剤溜まり部(以下、オイル溜まり部と示す)の容積の大きさを、ラジアル軸受面とスリーブとの間の隙間の容積によって特定している。
【0030】
一般にこの種の流体軸受装置では軸とスリーブの間の形成される隙間のオイル量に比べ隣接するオイルやグリス等の潤滑剤の溜まり量は100%以上の多くの量を確保していた。これに対して、本発明の流体軸受式回転装置においては、オイルせん断仕事を低減することでオイルの劣化が少ないため、オイル溜まり量は10%以上あれば充分に流体軸受装置の信頼性を保証することができる。すなわち、本発明の流体軸受式回転装置においては、オイル溜まり部の容積は、ラジアル軸受面とスリーブまたは軸との隙間の容積の10%から100%の範囲内であれば充分に信頼性の高い流体軸受式回転装置を得ることができる。
【0031】
これにより、オイル溜まり部の容積の大きさを、ラジアル軸受面とスリーブとの間の隙間の容積に対して上記数値範囲内に設定することで、高温の条件下において、高速で連続回転させた場合でも長寿命な流体軸受式回転装置を得ることができる。
【0032】
第7の発明に係る記録再生装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る流体軸受式回転装置を備えている。
これによれば、性能や品質の低下を防止しつつ、記録再生装置を長寿命化することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の流体軸受式回転装置によれば、高温条件下において高速で連続回転させた場合でも、オイル等の潤滑剤がせん断を受けて劣化が進むことでオイル等の潤滑剤が蒸発しやすくなったり充分な油膜強度が得られなくなったりすることで流体軸受が短時間で損傷することを防止して、油膜切れのない長寿命な流体軸受式回転装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一実施形態に係る流体軸受式回転装置15について、図1および図3を用いて説明すれば以下の通りである。
[流体軸受式回転装置15の構成]
本実施形態に係る流体軸受式回転装置15は、図1に示すように、スリーブ1、軸2、スラスト板4、オイル(潤滑剤)5、ベース6、ハブロータ7、コイルが巻回されたステータ8およびロータ磁石9を備えている。
【0035】
軸2は、フランジ3と一体化しており、スリーブ1の軸受穴1Cに回転可能な状態で挿入されている。
フランジ3は、軸2の下端部に取り付けられており、スリーブ1の凹部1Dに収納されている。
【0036】
また、軸2の外周面またはスリーブ1の内周面の少なくともいずれか一方には、動圧発生溝1A,1Bが形成されている。一方、フランジ3のスリーブ1との対向面およびフランジ3とスラスト板4との対向面には、動圧発生溝3A,3Bが形成されている。
【0037】
スラスト板4は、スリーブ1に固着されており、軸受隙間は袋状になっている。
スリーブ1の開口部には、図3に示すように、スリーブ1または軸2に対して円周状の溝を加工して設けたオイル溜まり(潤滑剤溜まり部)1Eが形成されている。
【0038】
図1に示す各動圧発生溝1A,1B,3A,3Bの付近の軸受隙間は、少なくともオイル5によって充填されており、また、スリーブ1と軸2からなる袋状の軸受隙間の全体およびオイル溜まり1Eについても、必要に応じてオイル5によって充填されている。
【0039】
ハブロータ7は、軸2に固定されており、ロータ磁石9、ディスク10、スペーサ12、クランパー11、ネジ13が固定される。一方、ベース6には、スリーブ1が固定されており、ステータ8がロータ磁石9に対向するようにベース6に対して固定される。
【0040】
<流体軸受式回転装置15の動作>
ここで、以上のような構成を備えた流体軸受式回転装置15の動作について説明する。
本実施形態の流体軸受式回転装置15では、ステータ8に巻回されたコイルに通電されると回転磁界が発生し、ロータ磁石9に回転力が付与される。そして、ロータ磁石9は、ハブロータ7、軸2、フランジ3、ディスク10、スペーサ12、クランパー11、ネジ13とともに回転を開始する。
【0041】
動圧発生溝1A,1B,3A,3Bでは、この回転によりオイル5をかき集め、軸2とスリーブ1の間、およびフランジ3とスリーブ1およびスラスト板4の間にポンピング圧力を発生させる。
【0042】
これにより、軸2をスリーブ1とスラスト板4に対して非接触の状態で回転させ、図示しない磁気ヘッドまたは光学ヘッドを用いることで、ディスク10に対してデータの記録再生を行うことができる。
【実施例1】
【0043】
以上のような構成を備えた流体軸受式回転装置15の一実施例について、図1〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
ここで、流体軸受式回転装置では、軸受の高温、高速連続回転の条件下においては軸受隙間を充填しているオイルがせん断を受けて劣化が進み、オイルが劣化することでオイルの分子が引き千切られて、蒸発したり、充分な油膜強度が得られなくなったりして、流体軸受が短時間で損傷するとの仮説を立てた。
【0044】
これは、オイルせん断仕事関数(潤滑剤せん断仕事関数)と軸受寿命との関係が、図2に示すグラフのような関係になると仮説を立てたものである。すなわち、オイルに加えられるせん断仕事が一定範囲内に設定された流体軸受式回転装置であれば、高温、高速連続回転を行った場合でも長寿命になるという仮説である。
【0045】
オイルのせん断仕事による劣化を防ぐためには、第1に、オイルがせん断される現象を解明してせん断仕事を一定値以下に収めることでオイルに対するせん断仕事量を軽減することが考えられる。さらに、第2に、オイルせん断仕事関数への影響が大きくまた部品の加工精度の影響を受けるラジアル軸受の半径方向における隙間を一定値以上に規定して、オイルせん断仕事関数と機械的なコスレを軽減すること、第3に、オイル溜まり部の油量(容積)を一定以上として油量不足を防止すること等が考えられる。
【0046】
また、本実施例では、上記実施形態に係る流体軸受式回転装置15において、スリーブ1と軸2の間のラジアル軸受隙間の大きさと、流体軸受の実際の寿命比率(H)とは、図5に示すグラフのような関係となる。
【0047】
すなわち、ラジアル軸受面とスリーブ1(または軸2)との間の半径方向における隙間は、小さいほど流体軸受の剛性は高まり、外力が加わった場合の強度が高まるが、一方で半径方向における隙間(C)が1μm未満の場合には、軸2の外周面の加工精度や、スリーブ1の内周面の加工精度や表面粗さが悪い影響を及ぼす。従って、ラジアル軸受隙間は1μm以上に設定されていることは、流体軸受式回転装置の長寿命化を図る上で好ましい。
【0048】
ここで、図3および図4に示すスリーブ1と軸2とによって形成される十分小さい隙間に動圧発生溝1Aを形成し、段部の無いほぼストレートな隙間がラジアル軸受面とその対向面(スリーブ1または軸2)との間に形成される構成において、図4に示すハブロータ7側の隙間の大きさ(図中Lr)とこのハブロータ7側に隣接するオイル溜まり部1Eの大きさ(図中Lo)との比率と、流体軸受式回転装置の寿命との関係を図6に示す。
【0049】
図6に示すグラフによれば、ハブロータ7側のオイル溜まり部1Eの容積が、ほぼストレートでハブロータ7側に位置するラジアル軸受隙間の容積の10%以上あれば良好であることを示している。
【0050】
ここで、従来の流体軸受式回転装置のように、オイルせん断仕事関数やラジアル軸受隙間の設定に際し何の配慮もされていない場合には、このオイル溜まり量は100%以上を必要とする場合がある。しかし、本実施例のように、オイルせん断仕事関数やラジアル軸受隙間の設定を考慮している場合には、オイルが強いせん断を受けないため、図6に示すように少量のオイル溜まりがあれば充分である。このように、本実施例の流体軸受式回転装置では、従来よりも少量のオイル量で済むために、流体軸受式回転装置に対して衝撃荷重が加えられた場合でも、オイルがこぼれてしまうことを回避することができる。
【0051】
なお、ラジアル軸受面としては、図1に示すように、ストレート部分が1つで軸受長さがLrのもの以外にも、例えば、図4に示すように、動圧発生溝1Aと動圧発生溝1Bとが軸2の径小部2Aによって2つに分断されてストレート部分が2つある場合には、図6に示すオイル量とは、ハブロータ7側のラジアル軸受面(図中Lr)におけるオイル量を意味するものとする。
【0052】
次に、オイルせん断仕事関数を一定値以下にしてせん断仕事を軽減させるためのオイルせん断仕事関数の条件を数式によって定義した。
第1式は、オイルせん断仕事関数Wは、ラジアル軸受部の発熱量と速度の影響を受け、または軸受の剛性の影響を受けるという仮説である。第2式は、オイルせん断仕事関数Wが、軸受の偏心率の影響を受けるというもの、そして、第3式は、オイルせん断仕事相当関数Wが、第3式の剛性相当関数および第2式の偏心率相当関数のそれぞれの影響を受けるというものである。
【0053】
これらを数式で表すと、
第1式 : オイルせん断仕事関数W=P×L×Ep
第2式 : 偏心率相当関数Ep=P/(Fs×C)
第3式 : 剛性相当関数Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/s(=2・π・f/60)]
f:回転数 [rev/min]
D:軸直径 [m]
L:ラジアル軸受1個当たりの軸方向における長さ [m]
C:ラジアル軸受の半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受1個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
次に、オイルせん断仕事関数(W)の逆数(1/W)と流体軸受式回転装置の実際の寿命実績値(H)との相関を図7に示す。なお、図7から逆数(1/W)と流体軸受式回転装置の寿命(H)とは充分に実験結果に合致しており、相関が認められることが実証できている。
【0054】
以上の事実から、図7に示すように、オイルせん断仕事関数(W)の逆数(1/W)の数値を10000から65000の範囲内になるように設定することで、オイルが回転せん断で劣化しない流体軸受式回転装置が得られる。なお、軸受寿命の観点からは、過剰品質にならない範囲で、65000にできる限り近い数値になるように1/Wの数値が設定されていることが好ましい。
【0055】
ここで、上記数値範囲の下限値(10000)の根拠としては、1/Wの数値が10000より小さい場合には、オイルせん断仕事関数が大きくなり過ぎて、軸受の寿命を短くしてしまうことにある。
【0056】
具体的には、1/Wが下限値である10000未満の場合には、オイルが軸受の回転により大きなせん断力を受けることで、オイルが蒸発したりオイルの油性を損ねて軸受が焼き付いてしまう。この結果、1/Wが下限値である10000以上になるように構成された流体軸受式回転装置では、約5万時間(約5年間に相当)の連続使用が可能であるのに対して、1/Wが10000未満の流体軸受式回転装置では、約3000〜8000時間の連続使用によって軸受部分が焼きついてしまい、寿命が約1/10〜1/5程度まで短くなってしまう。
【0057】
一方、上限値(65000)の根拠としては、1/Wの数値が65000より大きい場合には、過剰寿命であり、生産性、コスト、低温での性能、等を損なうおそれがあることにある。
【0058】
具体的には、1/Wが上限値である65000を超えた場合には、装置の寿命に関しては充分である。しかし、オイルせん断仕事関数Wを小さくする、すなわちオイルせん断を軽くしながら流体軸受の剛性や回転精度を維持するためには軸受隙間を広げつつ、軸受面積を大きく設計することになるが、この場合、低温では、オイルの粘性抵抗が大きくなってモータ消費電流が約1.2〜2.0倍となり、商品としての要求性能が満たされなくなってしまう。さらに、オイルせん断仕事関数Wを小さくするために、軸受隙間を広げ、かつ軸受面積を大きくした上で同等の軸受剛性を確保しようとすると、寸法の大きな軸受部品を高精度に加工して組み立てることになるので、部品コストが高くなってしまう。
【0059】
また、ラジアル軸受部の摩擦トルクの大きさを表すラジアル摩擦相当関数と、オイルせん断仕事関数(W)の逆数(1/W)との関係を図8に示す。ここでは、逆数(1/W)を大きく設定しすぎると、ラジアル軸受寿命は長くなるがラジアル摩擦トルクが大きくなるという欠点が生じる。なお、ラジアル摩擦相当関数とは、軸受面積と回転数とに比例し、軸受隙間の大きさに反比例する関数であるが、ここでは詳しい説明を省略する。
【0060】
次に、具体的な数値を挙げて、実際にオイルせん断仕事関数Wの逆数を算出する。
図1に示す流体軸受式回転装置15において、
70℃におけるオイルの粘度η=0.0041[N・S/m^2]、
角速度ω=565.2[rad/s(=2×π×5400/60)]、
軸直径D=0.000299[m]、
上側のラジアル軸受1個当たりの長さL=0.0023[m]、
ラジアル軸受の半径方向における隙間C=0.00000309[m]、
上側ラジアル軸受の軸受長さの中央部に加えられる負荷P=0.343[N]
とすると、上記第1式〜第3式より、
剛性相当関数Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 =3710000
偏心率相当関数Ep=P/(Fs×C) =0.0299
オイルせん断仕事関数W=P×L×Ep =0.0000236
1/W=42400
となる。
【0061】
この計算結果を図7に示すグラフに当てはめてみると、この流体軸受式回転装置は70℃において約4万時間という十分な寿命を有すると推定される。
なお、本実施例では、軸2の材質としてステンレス鋼、高マンガンクロム鋼、または炭素鋼を使用している。また、スリーブ1の材質としては、ステンレス鋼、銅合金、またはそれらの表面に無電解ニッケルメッキまたはDLCコーティングした材料を使用している。さらに、ラジアル軸受面の表面粗さが0.01〜1.60μmの範囲内になるように加工した材料を使用している。
【0062】
また、軸受材料にメッキを施さない銅合金を使用する場合には、オイルと銅成分とが化学反応を起して劣化を早め、流体軸受装置の寿命が10%程度短くなる場合がある。しかし、本発明で定義するオイルせん断仕事関数Wには、これらのパラメータについては考慮していないものとする。
【0063】
なお、上述した図4に示す流体軸受式回転装置において、上下2つのラジアル軸受に対して加えられるそれぞれのラジアル荷重の値が不明な場合には、以下の方法により求めることができる。
【0064】
すなわち、本発明に係る流体軸受式回転装置において回転体となる、軸2、フランジ3、ハブロータ7、ロータ磁石9、ディスク10、スペーサ12、クランパー11およびネジ13を一体のまま取り出し、任意の位置Qに充分細い糸を取り付け、自然状態で吊り下げた状態の構成を図10に示す。このように回転体に相当する部分を吊り下げることで、軸中心と糸の延長線との交点となる重心位置を求めることができる。一般に、この方法は糸釣法と呼ばれている。
【0065】
これにより、図10に示すように、上側軸受長さの中央部に加えられる負荷Puは、
Pu=P×(S1/(S1+S2))
という関係式に基づいて求めることができる。
【0066】
一方、下側軸受長さの中央部に加えられる負荷Plは、
Pl=P−Pu
という関係式に基づいて求めることができる。
【0067】
以上のように、回転体となる部材の重心の位置を求めることで、上下2つのラジアル軸受のそれぞれ1個ずつに加えられるラジアル荷重値を求めることができる。これにより、図4に示す流体軸受式回転装置のように、ラジアル軸受隙間が2箇所ある場合でも、上記第1式のPにPlまたはPuの値を当てはめてオイルせん断仕事関数Wを算出することができる。
【0068】
なお、図9に示すように、先に定義した剛性相当関数Fsについては、ラジアル軸受寿命実績時間Hとの間において、あまり強い相関関係は示していない。一方、図2に示すようにオイルせん断仕事関数Wの逆数1/Wについては、軸受寿命Hとの間で強い相関関係を有する。
【0069】
また、本実施例において、軸とスリーブ間の隙間に注入されたオイルは70℃における粘度が寿命に影響を与える。本実施例では、潤滑剤としてエステル系オイルを用いているが、オイルの主成分がフッソオイル、シリコンオイル、オレフィンオイルの潤滑剤を用いた場合には、流体軸受式回転装置の寿命に多少の影響がある。しかし、これらの影響は約15パーセント以下であることを別途実験により確認しているため、本実施例において定義するオイルせん断仕事関数Wについては、これらのパラメータは考慮に入れていないものとする。なお、潤滑剤としては、高流動性グリスを用いることができ、さらにイオン性液体を用いることも可能と考えられる。
【0070】
以上のように、このラジアル軸受面の半径方向における隙間は、1.0μm以上であり、隙間が変化する段部の無いほぼストレートな隙間となっている。そして、軸とスリーブとで形成される隙間には潤滑剤が保持され、ラジアル軸受面のハブロータ7側に隣接してラジアル軸受面のそれより大きい隙間を有するオイル溜まり部を有している。また、そのオイル溜まり部の容積は、ラジアル軸受面の隙間容積の10%以上となるように構成されている。
【0071】
これにより、ラジアル流体軸受のオイルせん断仕事関数(W)の逆数(1/W)の数値を10000から65000の範囲内にすることで、オイルが回転せん断で劣化しない長寿命な流体軸受式回転装置を得ることができる。
【実施例2】
【0072】
以上のような構成を備えた流体軸受式回転装置15の他の実施例について、実施例1と同じく、図1〜図6、図10、図14〜図17を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施例では、実施例1において説明したオイルせん断仕事関数(W)の代わりに、オイルせん断相当関数(E)を用いて、上記仮説の検証を行った。
【0073】
すなわち、オイルせん断相当関数(E)と軸受寿命との関係が、図2に示すグラフのような関係になると仮説を立てたものである。すなわち、オイルに加えられるせん断仕事が一定範囲内に設定された流体軸受式回転装置であれば、高温、高速連続回転を行った場合でも長寿命になるという仮説である。
【0074】
オイルのせん断による劣化を防ぐためには、第1に、オイルがせん断される現象を解明してせん断を一定値以下に収めることでオイルに対するせん断量を軽減することが考えられる。さらに、第2に、オイルせん断相当関数への影響が大きくまた部品の加工精度の影響を受けるラジアル軸受の半径方向における隙間を一定値以上に規定して、オイルせん断仕事関数と機械的なコスレを軽減すること、第3に、オイル溜まり部の油量(容積)を一定以上として油量不足を防止すること等が考えられる。
【0075】
また、本実施例でも、上記実施例1と同様に、上記実施形態に係る流体軸受式回転装置15において、スリーブ1と軸2の間のラジアル軸受隙間の大きさと、流体軸受の実際の寿命比率(H)とは、図5に示すグラフのような関係となる。
【0076】
すなわち、実施例1においても説明したように、ラジアル軸受面とスリーブ1(または軸2)との間の半径方向における隙間は、小さいほど流体軸受の剛性は高まり、外力が加わった場合の強度が高まるが、一方で半径方向における隙間(C)が1μm未満の場合には、軸2の外周面の加工精度や、スリーブ1の内周面の加工精度や表面粗さが悪い影響を及ぼす。従って、ラジアル軸受隙間は1μm以上に設定されていることは、流体軸受式回転装置の長寿命化を図る上で好ましい。
【0077】
実施例1でも説明した図6に示すグラフによれば、ハブロータ7側のオイル溜まり部1Eの容積が、ほぼストレートでハブロータ7側に位置するラジアル軸受隙間の容積の10%以上あれば良好であることを示している。
【0078】
ここで、従来の流体軸受式回転装置のように、オイルせん断相当関数やラジアル軸受隙間の設定に際し何の配慮もされていない場合には、このオイル溜まり量は100%以上を必要とする場合がある。しかし、本実施例のように、オイルせん断相当関数やラジアル軸受隙間の設定を考慮している場合には、オイルが強いせん断を受けないため、図6に示すように少量のオイル溜まりがあれば充分である。このように、本実施例の流体軸受式回転装置では、従来よりも少量のオイル量で済むために、流体軸受式回転装置に対して衝撃荷重が加えられた場合でも、オイルがこぼれてしまうことを回避することができる。
【0079】
なお、ラジアル軸受面としては、図1に示すように、ストレート部分が1つで軸受長さがLrのもの以外にも、例えば、図4に示すように、動圧発生溝1Aと動圧発生溝1Bとが軸2の径小部2Aによって2つに分断されてストレート部分が2つある場合には、図6に示すオイル量とは、ハブロータ7側のラジアル軸受面(図中Lr)におけるオイル量を意味するものとする点についても、上記実施例1と同様である。
【0080】
次に、オイルせん断相当関数を一定値以下にしてせん断を軽減させるためのオイルせん
断相当関数の条件を数式によって定義した。
第4式は、オイルせん断相当関数Eは、ラジアル軸受部の偏心率と速度の影響を受けるという仮説である。第5式は、オイルせん断相当関数Eが、軸受の剛性または発熱量の影響を受けるというもの、そして、第6式は、オイルせん断相当関数Eがオイルのせん断または発熱量の影響を受けるというものである。
【0081】
これらを数式で表すと、
第4式 : オイルせん断相当関数E=Ep×ω×ω
第5式 : 偏心率相当関数Ep=P/(Fs×C)
第6式 : 剛性相当関数Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/s(=2・π・f/60)]
f:回転数 [rev/min]
D:軸直径 [m]
L:ラジアル軸受1個当たりの軸方向における長さ [m]
C:ラジアル軸受の半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受1個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
次に、オイルせん断相当関数(E)の逆数(1/E)と流体軸受式回転装置の実際の寿命実績値(H)との相関を図14に示す。なお、図14から逆数(1/E)と流体軸受式回転装置の寿命(H)とは充分に実験結果に合致しており、相関が認められることが実証できている。
【0082】
以上の事実から、図14に示すように、オイルせん断相当関数(E)の逆数(1/E)の数値を0.00001以上になるように設定することで、オイルが回転せん断で劣化しない流体軸受式回転装置が得られる。なお、軸受寿命の観点からは、過剰品質にならない範囲で、0.00013以下にできる限り近い数値になるように1/Eの数値が設定されていることが好ましい。
【0083】
ここで、上記1/Eの数値範囲の下限値(0.00001)の根拠としては、1/Eの数値が0.00001より小さい場合には、オイルせん断相当関数が大きくなり過ぎて、軸受の寿命を短くしてしまうことにある。
【0084】
具体的には、1/Eが下限値である0.00001未満の場合には、オイルが軸受の回転により大きなせん断力を受けることで、オイルが蒸発したり、オイルの油性を損ねて軸受が焼け付いてしまう。この結果、1/Eが下限値である0.00001以上になるように構成された流体軸受式回転装置では、約5万時間(約5年間に相当)の連続使用が可能であるのに対して、1/Eが0.00001未満の流体軸受式回転装置では、約3000〜8000時間の連続使用によって軸受部分が焼け付いてしまい、寿命が約1/10〜1/5程度まで短くなってしまう。
【0085】
図14において1/Eの数値が0.00001以下では急激に変化している。このような条件ではオイルに加えられるせん断が多き過ぎ、オイルの分子構造に許容値以上のストレスがかかり、オイルが短時間に劣化しているものと推察される。実際に軸受の寿命試験を行い、その累積故障率のデータを収集した一事例を図17に示している。図17の縦軸は流体軸受式回転装置の累積故障率であり、横軸は総回転時間(H)であるが、図17においても、1/Eの値が0.00001以下では、グラフが著しく(不連続に)左側に位置することが示されている。これらのデータを基に1/Eの数値が0.00001の場合に流体軸受式回転装置の寿命が変化することを見い出したものである。
【0086】
一方、上限値(0.00013)の根拠としては、1/Eの数値が0.00013より大きい場合には、過剰寿命であり、生産性、コスト、低温での性能、等を損なうおそれがあることにある。
【0087】
具体的には、1/Eが上限値である0.00013を超えた場合には、装置の寿命に関しては充分である。しかし、オイルせん断相当関数Eを小さくする、すなわちオイルせん断を軽くしながら流体軸受の剛性や回転精度を維持するためには軸受隙間を広げつつ、軸受面積を大きく設計することになるが、この場合、低温では、オイルの粘性抵抗が大きくなってモータ消費電流が約1.2〜2.0倍となり、商品としての要求性能が満たされなくなってしまう。
【0088】
詳細には、これら流体軸受式回転装置は図示しない駆動用のLSI(集積回路)によりステータ8に電流が供給され、回転磁界が発生してロータ磁石9に回転力が与えられるが、1/Eが0.00013を超えると図示しない駆動用のLSIの能力を超え、ステータ8電流が供給できなくなり、正常な回転数が得られなくなる場合もあった。
【0089】
さらに、オイルせん断相当関数Eを小さくするために、軸受隙間を広げ、かつ軸受面積を大きくした上で同等の軸受剛性を確保しようとすると、寸法の大きな軸受部品を高精度に加工して組み立てることになるので、部品コストが高くなってしまう。
【0090】
また、ラジアル軸受部の摩擦トルクの大きさを表すラジアル摩擦相当関数と、オイルせん断相当関数(E)の逆数(1/E)との関係を図15に示す。ここでは、逆数(1/E)を大きく設定しすぎると、ラジアル軸受寿命は長くなるがラジアル摩擦トルクが大きくなるという欠点が生じる。なお、ラジアル摩擦相当関数とは、軸受面積と回転数とに比例し、軸受隙間の大きさに反比例する関数であるが、ここでは詳しい説明を省略する。
【0091】
次に、具体的な数値を挙げて、実際にオイルせん断相当Eの逆数を算出する。
図1に示す流体軸受式回転装置15において、
70℃におけるオイルの粘度η=0.0035[N・S/m^2]、
角速度ω=439.6[rad/s(=2×π×4200/60)]、
軸直径D=0.000299[m]、
ラジアル軸受1個当たりの長さL=0.00115[m]、
ラジアル軸受の半径方向における隙間C=0.00000309[m]、
上側ラジアル軸受の軸受長さの中央部に加えられる負荷P=0.196[N]
とすると、上記第4式〜第6式より、
剛性相当関数Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 =616000
偏心率相当関数Ep=P/(Fs×C) =0.103
オイルせん断相当関数E=P×L×Ep =19900
1/E=0.00005
となる。
【0092】
この計算結果を図14に示すグラフに当てはめてみると、この流体軸受式回転装置は70℃において約4万時間という十分な寿命を有すると推定される。
なお、本実施例でも、上記実施例1と同様に、軸2の材質としてステンレス鋼、高マンガンクロム鋼、または炭素鋼を使用している。また、スリーブ1の材質としては、ステンレス鋼、銅合金、またはそれらの表面に無電解ニッケルメッキまたはDLCコーティングした材料を使用している。さらに、ラジアル軸受面の表面粗さが0.01〜1.60μmの範囲内になるように加工した材料を使用している。
【0093】
また、軸受材料にメッキを施さない銅合金を使用する場合には、オイルと銅成分とが化学反応を起して劣化を早め、流体軸受装置の寿命が10%程度短くなる場合がある。しかし、本発明で定義するオイルせん断相当関数Eには、これらのパラメータについては考慮していないものとする。
【0094】
なお、上述した図4に示す流体軸受式回転装置において、上下2つのラジアル軸受に対して加えられるそれぞれのラジアル荷重の値が不明な場合には、上記実施例1と同様に、以下の方法により求めることができる。
【0095】
すなわち、本発明に係る流体軸受式回転装置において回転体となる、軸2、フランジ3、ハブロータ7、ロータ磁石9、ディスク10、スペーサ12、クランパー11およびネジ13を一体のまま取り出し、任意の位置Qに充分細い糸を取り付け、自然状態で吊り下げた状態の構成を図10に示す。このように回転体に相当する部分を吊り下げることで、軸中心と糸の延長線との交点となる重心位置を求めることができる。一般に、この方法は糸釣法と呼ばれている。
【0096】
これにより、図10に示すように、上側軸受長さの中央部に加えられる負荷Puは、
Pu=P×(S1/(S1+S2))
という関係式に基づいて求めることができる。
【0097】
一方、下側軸受長さの中央部に加えられる負荷Plは、
Pl=P−Pu
という関係式に基づいて求めることができる。
【0098】
以上のように、回転体となる部材の重心の位置を求めることで、上下2つのラジアル軸受のそれぞれ1個ずつに加えられるラジアル荷重値を求めることができる。これにより、図4に示す流体軸受式回転装置のように、ラジアル軸受隙間が2箇所ある場合でも、上記(4)式のPにPlまたはPuの値を当てはめてオイルせん断相当関数Eを算出することができる。
【0099】
なお、図16に示すように、先に定義した剛性相当関数Fsについては、ラジアル軸受寿命実績時間Hとの間において、あまり強い相関関係は示していない。一方、図2に示すようにオイルせん断相当関数Eの逆数1/Eについては、軸受寿命Hとの間で強い相関関係を有する。
【0100】
また、本実施例において、軸とスリーブ間の隙間に注入されたオイルは70℃における粘度が寿命に影響を与える。本実施例では、潤滑剤としてエステル系オイルを用いているが、オイルの主成分がフッソオイル、シリコンオイル、オレフィンオイルの潤滑剤を用いた場合には、流体軸受式回転装置の寿命に多少の影響がある。しかし、これらの影響は約15パーセント以下であることを別途実験により確認しているため、本実施例において定義するオイルせん断相当関数Eについては、これらのパラメータは考慮に入れていないものとする。なお、潤滑剤としては、高流動性グリスを用いることができ、さらにイオン性液体を用いることも可能と考えられる。
【0101】
以上のように、このラジアル軸受面の半径方向における隙間は、1.0μm以上であり、隙間が変化する段部の無いほぼストレートな隙間となっている。そして、軸とスリーブとで形成される隙間には潤滑剤が保持され、ラジアル軸受面のハブロータ7側に隣接してラジアル軸受面のそれより大きい隙間を有するオイル溜まり部を有している。また、そのオイル溜まり部の容積は、ラジアル軸受面の隙間容積の10%以上となるように構成されている。
【0102】
これにより、ラジアル流体軸受のオイルせん断相当関数(E)の逆数(1/E)の数値を0.00001から0.00013の範囲内にすることで、オイルが回転せん断で劣化しない長寿命な流体軸受式回転装置を得ることができる。
【0103】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0104】
(A)
上記実施形態および実施例では、軸2が回転し、スリーブ1が袋状に密封されている軸受の構造を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0105】
例えば、米国特許第5112142号(HYDRODYNAMIC BEARING)の図1に示すように、軸の両端が固定されスリーブが回転可能な軸受回転装置に対して本発明を適用することも可能である。
【0106】
この場合には、上記実施形態の図1および図4に示す記号Lrに相当する、段部を持たない略ストレートな軸受隙間を有しており、そのラジアル軸受面のオイル量に対して、上部または下部のいずれか一方に連接するオイル溜まりを持つ流体軸受回転装置であればよい。
【0107】
(B)
上記実施形態および実施例では、軸2が回転し、スリーブ1が袋状に密封された軸受の構造を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
例えば、特許第3155529号(「流体動圧軸受を備えたモータ及びこのモータを備えた記録ディスク駆動装置」)の図2に示すように、軸の上側にハブロータが固定され、軸の下側にリング形状の部材が取り付けられ、このリング形状の部材周辺がラジアル軸受面に隣接するオイル溜まりを有しており、ハブロータの下面とスリーブの上面が対向してスラスト軸受面を形成しておりハブロータと軸のコーナ部にスリーブの面取りとスラスト軸受面の内側にラジアル軸受面に隣接するオイル溜まりを有する軸受回転装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0109】
(C)
上記実施形態および実施例では、ラジアル軸受面上部において軸2の周りにオイル溜まりと、ラジアル軸受面の下部において軸2とフランジ3のコーナ部に、軸方向に上方に伸びるオイル溜まりを設けた軸受の構造を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0110】
例えば、特開2004−36892号公報に示すように、ラジアル軸受面の上部に軸に略直角方向に伸びるオイル溜まりを設けた流体軸受回転装置であっても本発明を適用することは可能である。
【0111】
また、特開昭57−137820号公報に記載されているように、ラジアル軸受面に循環穴が設けられた流体軸受式回転装置に対しても同様に、本発明を適用することが可能である。
【0112】
(D)
上記実施例1では、ラジアル軸受のオイルせん断仕事関数Wと流体軸受寿命Hとの関係について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、スラスト軸受部に関しても、同様の仮説と理論とを構築することで説明することが可能と考えられる。
【0113】
(E)
上記実施例2では、ラジアル軸受のオイルせん断相当関数Eと流体軸受寿命Hとの関係について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、スラスト軸受部に関しても、同様の仮説と理論とを構築することで説明することが可能と考えられる。
【0114】
(F)
上記実施形態では、本発明を流体軸受式回転装置に適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0115】
例えば、図18に示すように、上記構成を有する流体軸受機構40、流体軸受式回転装置41を搭載しており、記録ヘッド42によって記録ディスク10に記録された情報を再生したり、記録ディスク10に対して情報を記録したりする記録再生装置43に対して本発明を適用することもできる。
【0116】
これにより、性能や品質を低下させることなく、信頼性の高い記録再生装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、オイルが回転せん断によって劣化しない長寿命な流体軸受式回転装置を得ることができることから、ディスク式記録再生装置等に搭載される流体軸受式回転装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体軸受式回転装置の構造を示す断面図。
【図2】流体軸受式回転装置における軸受の寿命とオイルせん断仕事関数との関係を示すグラフ。
【図3】図1の流体軸受式回転装置の開口部付近の構成を示す拡大図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る流体軸受式回転装置のラジアル軸受隙間付近の構成を示す拡大図。
【図5】流体軸受式回転装置のラジアル軸受隙間と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図6】流体軸受式回転装置のオイル溜まり油量比と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図7】流体式回転軸受装置におけるオイルせん断仕事関数の逆数と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図8】流体軸受式回転装置におけるラジアル摩擦相当関数とオイルせん断仕事関数との関係を示すグラフ。
【図9】流体軸受式回転装置の剛性相当関数と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図10】図1の流体軸受式回転装置の重心位置を示す解説図。
【図11】従来の流体軸受式回転装置の構成を示す断面図。
【図12】図11の従来の流体軸受式回転装置における回転数と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図13】図11の従来の流体軸受式回転装置におけるラジアル荷重と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図14】流体式回転軸受装置におけるオイルせん断相当関数の逆数と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図15】流体軸受式回転装置におけるラジアル摩擦相当関数とオイルせん断相当関数との関係を示すグラフ。
【図16】流体軸受式回転装置の剛性相当関数と軸受寿命との関係を示すグラフ。
【図17】本発明に係る流体軸受式回転装置の軸受の累積故障率と時間の関係を示すグラフ。
【図18】本発明に係る流体軸受式回転装置を備えた記録再生装置の構成図。
【符号の説明】
【0119】
1、21 スリーブ
1A,1B 動圧発生溝
1E オイル溜まり
2,22 軸
3,23 フランジ
3A,3B 動圧発生溝
4,24 スラスト板
5,25 オイル
6,26 ベース
7,27 ハブロータ
8,28 ステータ
9,29 ロータ磁石
10,30 ディスク
11,31 クランパー
12,32 スペーサ
13,33 ネジ
15 流体軸受式回転装置
21C 軸受穴
21D 凹部
21A,21B 動圧発生溝
23A,23B 動圧発生溝
40 流体軸受機構
41 流体軸受式回転装置
42 記録ヘッド
43 記録再生装置
E オイルせん断相当関数
W オイルせん断仕事関数(潤滑剤せん断仕事関数)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受穴を有するスリーブと、
前記スリーブの軸受穴に相対的に回転可能な状態で挿入される軸と、
前記スリーブおよび前記軸のうち、回転する側に取り付けられたハブロータと、
前記軸の外周面およびスリーブ内周面の少なくとも一方に動圧発生溝が形成されたラジアル軸受面と、
を備えており、
下記(1)式によって表わされるオイル(潤滑剤)せん断仕事関数をWとした場合、1/Wの値が10000以上になるように構成されている流体軸受式回転装置。
W=P×L×Ep ・・・・・・(1)
Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 ・・・(2)
Ep=P/(Fs×C) ・・・・・・・・(3)
W:オイル(潤滑剤)せん断仕事関数
Fs:剛性相当関数
Ep:偏心率相当関数
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/S(=2・π・f/60)]
D:軸直径 [m]
f:回転数 [rev/min]
L:ラジアル軸受1個当たりの長さ [m]
C:ラジアル軸受半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受一個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
【請求項2】
前記1/Wの値が65000以下になるように構成されている、
請求項1に記載の流体軸受式回転装置。
【請求項3】
軸受穴を有するスリーブと、
前記スリーブの軸受穴に相対的に回転可能な状態で挿入される軸と、
前記スリーブおよび前記軸のうち、回転する側に取り付けられたハブロータと、
前記軸の外周面およびスリーブ内周面の少なくとも一方に動圧発生溝が形成されたラジアル軸受面と、
を備えており、
下記(4)式によって表わされるオイル(潤滑剤)せん断相当関数をEとした場合、1/Eの値が0.00001以上になるように構成されている流体軸受式回転装置。
E=Ep×ω×ω ・・・・・・(4)
Fs=(η×ω×D^2×L^2)/C^3 ・・・(5)
Ep=P/(Fs×C) ・・・・・・・・(6)
E:オイル(潤滑剤)せん断相当関数
Fs:剛性相当関数
Ep:偏心率相当関数
η:70℃における絶対粘度 [N・S/m^2]
ω:角速度 [rad/S(=2・π・f/60)]
D:軸直径 [m]
f:回転数 [rev/min]
L:ラジアル軸受1個当たりの長さ [m]
C:ラジアル軸受半径方向における隙間 [m]
P:ラジアル軸受一個毎の軸受長さの中央部に加えられる負荷 [N]
【請求項4】
前記1/Eの値が0.00013以下になるように構成されている、
請求項1に記載の流体軸受式回転装置。
【請求項5】
前記ラジアル軸受面と前記スリーブあるいは前記軸との間に形成される半径方向における隙間は、1μm以上であって、略一定である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の流体軸受式回転装置。
【請求項6】
前記軸と前記スリーブとの間に形成される隙間には潤滑剤が保持され、前記ラジアル軸受面に隣接する位置に、その対向面との間の隙間が前記ラジアル軸受面より大きい潤滑剤溜まり部が形成されているとともに、
前記潤滑剤溜まり部の容積は、前記ラジアル軸受面と前記スリーブまたは前記軸との隙間の容積の10%以上である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流体軸受式回転装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の流体軸受式回転装置を備えた記録再生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−247885(P2007−247885A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205229(P2006−205229)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】