説明

流体輸送コンテナ

【課題】高粘性流体であっても、中央部のみでなく周辺部からも同時に排出でき、内装体が出入用口部を塞がずに最後まで排出できる流体輸送コンテナを提供する。
【解決手段】容器本体1を底部10a及び側面下部領域10bを含む下部体10と、シール状態に固着された可撓性シート材よりなる上部体20とにより構成し、下部体10を、流体が通過可能な多孔体よりなる内壁12と、板材により形成した外壁13との二重壁構造とし、内外壁12,13間に流体が流通できる間隙Sを保有し、外壁13における底部に流体の出入用口部11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてグリース等の高粘性流体の輸送に好適に使用される流体輸送コンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばグリース等の油脂類、印刷インキ、接着剤、塗料、マヨネーズ等の流動性食品その他の各種の粘性の高い所謂粘稠物である高粘性流体の輸送に使用するコンテナとしては、金属製やプラスチック製のタンクが一般に使用されていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、この種のタンクはかなり高価であり、また輸送先からの返送時の空タンクの輸送や空タンクの保管効率が劣る上、繰り返し使用するためのタンク内面や排出用管の洗浄が面倒なものであった。
【0004】
そのため、近年、可撓性を有する合成樹脂フィルム等よりなる袋体を剛性のある折り畳みや分解が可能な外枠と組み合わせて使用し、該袋体を1回の使用で廃棄するようにして、洗浄を簡略化した液体コンテナが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
この場合、前記粘性の低い液体の輸送においては、液体の流動性を利用して充填及び排出を容易に行うことができるが、粘性の高い前記のような高粘性流体の場合には、流体自体の流動性だけでは充填及び排出が行われ難いものである。そのため、例えば、底部に有する出入用口部からポンプの圧送力により高粘性流体を充填しあるいは排出することが行われている。
【0006】
ところで、ポンプによる圧送力で底部の出入用口部から高粘性流体を排出するようにした場合、高粘性流体の出入用口部に近い部分から前記ポンプにより吸引されて排出されることで、内部流体の上面(液面)では中央部から陥没し、これに伴って袋体の天部が中央部から引き込まれ、該袋体の一部が出入用口部に吸い込まれたりして、該口部を塞ぎ、その結果、高粘性流体の排出が阻害されることがあり、特に、袋体内の周辺部では流体が充分に排出されずに残存するおそれがある。
【0007】
そのため、内装体の出入用口部に取着した筒状の排出体に、液体を通過させる長孔を有するフランジ筒を内方上向きに突設しておくことにより、袋体が出入用口部に吸い込まれて該口部を完全に塞ぐことになるのを防止するようにしたコンテナ用の内袋が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3769653号公報
【特許文献2】特許第3769653号公報
【特許文献3】特開2004−182275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように出入用口部に対する袋体の密着を防いで完全に塞がないようにするだけでは、ポンプによる吸引により内部の高粘性流体が出入用口部の近辺から排出されることに変わりがないため、合成樹脂フィルム等の可撓性の袋体が前記排出体の外周面に吸着された場合に流体の排出を阻害するおそれがある上、袋内の周辺部の流体の排出促進には殆ど効果がなく、周辺部に流体が残存するおそれもある。このような問題は、高粘性流体の粘度が高い場合ほど顕著である。
【0009】
また、前記提案のコンテナ用の内袋は、全体が合成樹脂フィルム等よりなる袋体よりなるものであるため、内容物の高粘性流体が排出されて減少するのに伴って、該袋体が幾重にも重なって畳まれた状態になり、流体が益々排出され難くなって、流体の残量が多くなる。
【0010】
本発明は、前記の問題点を解決するためになしたものであり、特に、輸送対象の流体を収納する容器本体の構造、特には少なくとも底部を含む下部体の構造を工夫して、収納される流体が粘性の高い所謂高粘性流体であっても、出入用口部付近の中央部のみでなく周辺部からも同時に排出でき、しかも、最後まで殆ど残さずに流体を排出することができる流体輸送コンテナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する本発明の流体輸送コンテナは、流体を収納する容器本体と、該容器本体を支持する外枠とからなる流体輸送コンテナであって、前記容器本体は、少なくとも底部を含んでなる下部体と、該下部体の上部にシール状態に固着された可撓性シート材よりなる上部体とからなり、前記下部体は、前記少なくとも底部の全域にわたって流体が通過可能な多孔体よりなる内壁と非通液性の板材よりなる外壁との二重壁構造をなし、前記内外壁間に流体が流通できる間隙を保有するとともに、前記外壁における底部に流体の出入用口部が設けられてなることを特徴とする。
【0012】
この流体輸送コンテナは、主としてグリース等の粘性の高い高粘性流体を収納して輸送するのに使用する。この使用において、前記容器本体における下部体の出入用口部より、内部の高粘性流体をポンプの圧送力で吸引して排出する際、前記容器本体における二重壁構造の下部体の内外壁間の間隙を通じて、前記ポンプによる吸引力が少なくとも底部の全域に及び、内部の流体が多孔体よりなる内壁を通して該底部の全域で略同時に吸引されて前記内外壁間の間隙から出入用口部に流れ排出される。
【0013】
また、収容されている流体が高粘性流体であっても、前記の排出によりその上面(液面)が全体的に降下するように減少するため、可撓性シート材よりなる上部体が局部的に吸い込まれることがない上、内部の流体の残量が少なくなって前記上部体が前記内壁に密着しても、外壁に形成された出入用口部を塞いでしまう虞がなく、該出入用口部から内外壁間の間隙を通じて吸引排出作用が最後まで確実に行われる。しかも、上部体のみが可撓性シート材よりなるものであるため、該上部体が前記内壁に沿うよう畳まれても重なりが少ないこともあって、該上部体に付着する残量も少なくなる。
【0014】
前記の流体輸送コンテナにおいて、前記容器本体の下部体は、底部と側面下部領域を含んでなり、該底部と側面下部領域の全域にわたって流体が通過可能な多孔体よりなる内壁と非通液性の板材により形成された外壁との二重壁構造をなし、内外壁間に流体が流通できる間隙を保有した構成とすることができる。
【0015】
この場合、高粘性流体を吸引して排出する際には、前記ポンプによる吸引力が底部だけでなく側面下部領域にも及び、底部及び側面下部領域の全域で内部の流体が吸引されることになって、出入用口部から遠い周辺部でも流体の吸引排出が不足なく行われる。そのため、容器本体内の流体の排出が全体として均一化し、流体減少に伴う流体上面の降下も平均化し、可撓性シート材よりなる上部体が部分的に流体内に引き込まれることもない。
【0016】
前記の流体輸送コンテナにおいて、前記下部体の内壁を構成する多孔体が、高粘性流体が通過できる開孔が全域にわたって多数形成されている多孔板又は網体よりなるものとする。これにより、内部の流体が高粘性流体であっても、底部の全域あるいは底部と側面下部領域の全域で同時に流体排出を行うことができる。また、前記多孔体よりなる内壁が、外壁に対し脱着可能に設けられてなるものであると、該内壁を取り外すことにより下部体内外壁を容易に洗浄できることになる。
【0017】
前記の流体輸送コンテナにおいて、前記下部体の外壁の底部が前記出入用口部に向かって傾斜した漏斗状をなし、前記内壁が前記外壁との対応形状をなして前記出入用口部を覆うように設けられてなるものが好ましい。すなわち、内部の流体の排出の際に、ポンプの圧送力で前記出入用口部より吸引することにより、前記下部体の内壁の略全面にわたって存する開孔から送出される流体を、該出入用口部に導いて確実に効率よく排出することができる。
【0018】
また、前記流体輸送コンテナにおいて、前記容器本体は、前記下部体が周縁部において外枠における下部の底受枠により受支されることにより支持されてなるものが好ましい。これにより、前記容器本体を外枠内に所定の高さ位置に安定性よく支持でき、また、該容器本体を外枠に対し脱着可能に設けることも容易に可能になる。
【0019】
前記流体輸送コンテナにおいて、前記下部体の外壁の出入用口部には、流体の充填及び排出用管を連結可能な筒状の口部材が取着されてなるものが好ましい。これにより、前記充填及び排出用管を容易に連結できる。また、該充填及び排出用管を取り外すことにより、洗浄も容易になる。
【0020】
前記流体輸送コンテナにおいて、前記上部体は、可撓性シート材の下端部が、前記下部体の上端部に付設した枠部材に対しパッキンを介してシール状態を保持するように固定されてなるものとするのが好ましい。これにより、下部体に、可撓性シート材による上部体をシール状態に確実に固着して使用することができる。また、上部体が損傷したときは該上部体のみを取り換えることにより、下部体を半永久的に使用することができる。
【0021】
前記流体輸送コンテナにおいて、前記外枠は、少なくとも前記容器本体の上部体の四方の側面を覆う側板が設けられてなるものとする。これにより、前記容器本体の可撓性シート材よりなる上部体を、外部より支え、かつ保護できる。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明の流体輸送コンテナによれば、容器本体の底部を含む下部体、あるいは底部と側面下部領域を含む下部体を、流体が通過可能な多孔体よりなる内壁と非通液性の板材よりなる外壁との二重壁構造にして、内外壁間に流体が流通できる間隙を保有し、外壁における底部に流体の出入用口部を設けたことにより、収納された内部の流体が粘性の高い高粘性流体であっても、出入用口部付近の中央部のみでなく周辺部からも同時に排出できて、流体排出をスムーズに行うことができる。しかも、内部流体の減少に伴って、流体上面が全体として略均等に降下し、これに追従して可撓性シート材よりなる上部体が下部体に沿うように畳まれても前記出入用口部に吸い込まれることがなく、最後まで殆ど残さずに流体を排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る流体輸送コンテナAの組み立て状態の概略を示す断面図、図2は同上の出入用口部付近の拡大断面図、図3は容器本体の下部体と上部体の連結部と下部体を受支する部分の拡大断面図、図4は容器本体の一部を切り欠いた断面で示す斜視図、図5は外枠の一部を切り欠いた斜視図、図6は流体排出が終了間近の状態の断面図である。
【0025】
本発明に係る流体輸送コンテナAは、輸送対象の流体、例えば高粘性流体を収納する容器本体1と、該容器本体1を支持する外枠3とよりなり、通常、前記外枠3の下部にはパレット部4が一体に設けられている。
【0026】
前記容器本体1は、図4に示すように、金属等の剛性を有する素材により形成され、かつ少なくとも底部10aを含んでなる下部体10、好ましくは底部10aとこれに連続する側面下部領域10bを含んでなる下部体10と、前記下部体10の上端部にシール状態に固着された非通液性の可撓性シート材よりなる上部体20とから構成されてなり、前記下部体10の底部10aに出入用口部11が設けられている。符号5は前記出入用口部11に連結された流体の充填及び排出用管である。
【0027】
前記上部体20は、側面上部領域20bと天部20aとの有天筒状をなしており、天部20aの一部にキャップ付きの空気抜き用の口部21が設けられている。この上部体20を構成する非通液性の可撓性シート材としては、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂フィルムの単層もしくは複層のシートのほか、これらのシートを繊維で補強した形態のターポリン等の防水性シート、あるいはこれらと他の素材シートとの組み合わせよりなる複合シート、あるいはゴム製の袋材等の非通液性で可撓性のある各種のシート材を用いることができ、特に繰り返し使用に耐えるシート材を用いるのが好ましい。
【0028】
前記下部体10は、内外二重壁構造をなし、このうち内壁12は、少なくとも底部10aよりなる下部体、好ましくは図のように前記底部10aと側面下部領域10bとよりなる下部体10の全域にわたって輸送対象の高粘性流体が通過可能な多孔体、すなわち、流体が通過できる開孔を多数有する多孔体よりなり、また、外壁13は、ステンレス鋼板やその他の金属製等の適度に剛性を有する板材により液密に形成されてなり、前記内外壁12,13間に高粘性流体が通過できる所要の間隙Sを有している。前記間隙Sは、前記内壁12を構成する多孔体の開孔率や流体の粘性等によっても異なるが、例えば10〜30mm好ましくは15〜25mm程度とする。
【0029】
前記内壁12は、前記外壁13の内面に対し脱着可能にかつ前記間隙Sを保有するように取り付けられている。その手段として、前記外壁13の内面における底部及び側面下部領域における所要個所にスペーサーとしての役目をなすナット部材14を溶接等の手段により固設しておいて、該ナット部材14に対し内壁12を貫通して螺合するボルト等のネジ部材15により前記内壁12を固定しており、前記ネジ部材15を抜脱することにより内壁12を外壁13から分離できるようになっている。前記内壁12は、多孔体により一体に形成しておくこともできるが、外壁13に対する分離を容易にするため、底部と四面の側面下部領域等の複数部分に分割構成しておくのが望ましい。
【0030】
前記内壁12を構成する多孔体としては、輸送対象の流体、特には高粘性流体が通過できる開孔12aが全域にわたって多数形成されているパンチングメタル等の多孔板又は網体が好適に用いられる。中でも、パンチングメタル等の丸孔や角孔の縦横の少なくとも一方向の並列、あるいは千鳥並列、長孔の並列、異形孔の並列等による金属製の多孔板が特に好適に用いられる。もちろん、他の素材の多孔板、金属製の網体、簾状網体、剛性のある合成樹脂材の網体、その他の種々の多孔板や網体を用いることができる。
【0031】
前記多孔体の開孔12aの開孔率、すなわち孔径や配列ピッチ等については、輸送対象の流体の粘性等に応じて適宜設定できる。例えば、開孔12aが直径10〜40mmの丸孔のパンチングメタルの場合、並列ピッチ20〜50mm、孔間隔5〜30mmとする。もちろん、前記以外の開孔径や配列による実施も可能である。前記多孔体の開孔率は、下部体の全面にわたって同一である必要はなく、中央部と周辺部で開孔率を異ならせる等、部分的に開孔率を異ならせることができる。
【0032】
前記外壁13の底部における中央部に前記出入用口部11が設けられている。図の場合、前記外壁13は、底部が前記出入用口部11に向かって四方から逆四角錐状に傾斜した漏斗状をなしており、また、前記多孔体よりなる内壁12は、前記外壁13と対応形状をなしてかつ前記出入用口部11を該口部との間に前記間隙Sを保ったまま全体を覆うように設けられている。すなわち、前記下部体10の底部10aが漏斗状をなし、流体排出時に前記内壁12を通過する流体が前記出入用口部11に流れ込み易くなっている。なお、前記底部10aの傾斜角度は、流体の流れ効果等を考慮して適宜設定できるが、傾斜角度が大きくなるほど収納効率が悪くなり、また傾斜角度が小さくなるほど流れ効果が得られなくなるので、実施上は前記出入用口部11を有する中央部に対する傾斜確度を15°〜45°、好ましくは20°〜30°とする。
【0033】
前記出入用口部11には、図2に拡大して示すように、前記充填及び排出用管5を接続するための筒状の接続用口部材16が溶接等の手段により一体的に取設されており、該口部材16の筒端部と、前記充填及び排出用管5の管端部とが、クランプ式の連結手段7により、パッキン(図示省略)を介して突き合わせ状態にして液密に連結されるようになっている。前記充填及び排出用管5は、エルボ形の管体51に開閉バルブ52を備えるとともに、圧送用のポンプを備える他の配管やホース等(図示せず)が接続可能な口金具53を備えてなる。前記充填及び排出用管5は、前記口部材16に連結されてパレット部4上に押さえ部材を含む取付具6により固定される。
【0034】
前記下部体10の側面下部領域10bの立ち上がりの高さHは、容器本体1内の周辺部での流体の排出効果等を考慮して、容器本体1の側面高さの1/2以下の範囲で、内部の流体が略完全に排出された状態において、前記上部体20を構成するシート材が内壁12の内面全体に沿って接した状態になるように適宜設定できるが、実施上は、前記上部体20のシート材が前記内壁12の内面に沿って接した状態において過度の重なりを生じないように、前記容器本体1の側面高さの1/5以上でかつ1/2以下に設定しておくのが好ましい。
【0035】
すなわち、前記下部体10の前記内壁12を構成する多孔体の開孔12aにより少なくとも底部10aの全域において同時に排出できるため、前記下部体10の側面下部領域10bの底部周縁からの立ち上がりの高さHが、容器本体1の側面高さの1/5より低くても、流体の均等排出の効果は得られるが、側面下部領域10bの高さHが余り低くなると、可撓性シート材よりなる上部体20が、内部流体の排出により内壁に沿って密着した状態において余裕があり過ぎて重なりが増加することになるので、前記の範囲とするのがより好ましい。
【0036】
前記上部体20を下部体10の上端部に対して液密に固着する手段として、図3に拡大して示すように、下部体10の側面下部領域10bの上端部、特に外壁13の上端部に取付用枠部材18が溶接手段により固設され、該枠部材18の上面にゴム等のシール材19を配して、上部体20を構成する可撓性シート材の下端部22を前記シール材19と押さえ用枠部材23との間に挟み込んで、長さ方向に所定のピッチ間隔(例えば50mm間隔)でネジ締結手段24により締結しており、該ネジ締結手段24による締め付けを解除することにより取り外すことができ、上部体20を構成するシート材の取り換えが可能になっている。前記のネジ締結手段24として、図の場合は、前記枠部材18にネジ軸部24aを突設し、このネジ軸部24aに対して前記シール材19及びシート材の下端部22並びに押さえ用枠部材23を、それぞれに有する係合孔の部分で嵌め合せてナット24bにより締め付けるように設けている。他の種々の固定手段、例えば接着手段あるいはリベット式の止め手段等を利用して固着することができる。
【0037】
前記の容器本体1は、剛性のある下部体10の部分で外枠3に一体的に組み込んで構成しておくことも、また、前記下部体10の周縁部を外枠3における下部の底受枠31により受支するようにして、外枠3に対して脱着可能に設けることもできる。図示する実施例は、前記容器本体1を外枠3に対し組み込んで脱着可能に構成した場合を示している。
【0038】
図の実施例において、前記外枠3は、前記パレット部4上において、前記容器本体1の下部体10を受支する底受枠31と、該底受枠31の上に連結されて前記容器本体1の上部体20の四方側面を覆う側板32a,32b,32c,32dと、組み立てられた前記側板上に脱着可能に被着される上蓋としての上枠33とからなる。
【0039】
前記底受枠31は、パレット部4の四隅部に立設された支持柱34の所要高さ位置において四方側面に沿って前記支持柱31,31間に横桟状の受枠部材35が架渡されて枠状をなしている。そして、前記受枠部材35が、図3に拡大して示すように、内側下部より内方向きに、前記下部体10の底部10aの傾斜に対応して斜めに突出する受板部35aを有する断面略L字状をなしており、該受板部35aにより、外枠3内に上方より落とし込まれセットされる容器本体1の下部体10を周縁部で受支できるようになっている。
【0040】
図の場合、前記支持柱34が受枠部材35より上方に延び、その上端部に設けられた側枠部36が、前記のように受支される容器本体1の下部体10の上端部と略同高さにあるように設けられている。記受板部35aは、前記下部体10の底部10aの出入用口部11を除く略全面を受支するように設けることもできるが、前記下部体10が金属等の剛性素材であれば、前記底部10aの略全面を受支する必要はなく、図示するように下部体10の周縁部を受支するようにして実施することができる。
【0041】
いずれにしても、前記のように容器本体1の下部体10を底受枠31上に受支する場合は、受支した下部体10のガタつきや浮き上がりを抑制するように、前記下部体10を外枠3に係止する係脱可能なロック手段(図示省略)を設けておくのが望ましい。
【0042】
前記外枠3の四方の側板32a,32b,32c,32dは、それぞれ枠部材の内方に金属板や合成樹脂板、あるいはパーティクルボード等の各種のボード類その他の剛性を有する板材が内面を形成するように張設されたパネル体よりなり、前記容器本体1の上部体20を外部より支える役目を果たすように設けられている。前記各側板32a,32b,32c,32dは、それぞれ前記底受枠31の上部に連結されて立設され、かつ隣接する側板同士が相互に連結されて、平面矩形に組み立てられる。前記各側板32a,32b,32c,32dは、通常、前記底受枠31に対し分離可能に連結される。
【0043】
図の場合、四面の側板32a,32b,32c,32dのうちの1面、例えば正面より見て左右一方の側板32bは、前記側枠部36に対しヒンジ部37を介して外側に折曲可能に連結されて開放できるように設けられており、該容器本体1のセット作業や洗浄あるいは容器本体1の上部体20の取り換え作業等を、前記の開放部分から行えるようになっている。
【0044】
なお、前記各側板32a,32b,32c,32dについては、前記容器本体1の下部体10の上端部とほぼ同高さ位置にある側枠部36に対して順次高さを変えて内側へ折曲可能に連結して、輸送先からの空のコンテナの返送あるいは保管等の際には、容器本体1をセットした状態のままで嵩低く折り畳んでおけるように構成することもできる。また、前記各側板32a,32b,32c,32dは、前記底受枠31の側枠部36を省略して、前記受枠部材35の上に連結されて、底受枠31の側面を覆うように設けて実施することもできる。
【0045】
上記の構成による流体輸送コンテナAは、グリース、印刷インキ、接着剤、塗料、マヨネーズ等の流動性食品その他の各種の流体、特には粘性の高い高粘性流体を輸送するのに使用するものであり、二重壁構造の下部体10とその上に連結した可撓性シート材よりなる上部体20とよりなる容器本体1を、予め所定の形状に組み立てた外枠3内に装入し、前記下部体10の周縁部を外枠3の底受枠31に有する受枠部材35で受支するようにセットする。前記下部体10の底部10aにおける出入用口部11に有する口部材16には、充填及び排出用管5をクランプ式の連結手段7により液密に連結して、取付具6によりパレット部4上に固定しておく。
【0046】
輸送対象の流体、特に高粘性流体の充填は、前記充填及び排出用管5に接続した配管に備える圧送用ポンプ(図示せず)により圧送し前記容器本体1内に充填し収納する。このとき、ポンプにより圧送される流体は、容器本体1の二重壁構造をなす下部体10の底部10aに有する出入用口部11から二重壁の内壁12と外壁13との間に入り、内外壁12,13間の間隙Sを通じて周辺部に拡がり、底部10a及び側面下部領域10bの全域において、多孔体よりなる内壁12の開孔12aを通じて容器本体1内に送り込まれ充填される。この充填作用に伴って、折り畳まれた状態にあった可撓性シート材よりなる上部体20が外枠3の四方側面の側板32a,32b,32c,32dに沿うように膨らみ、ついには充填された流体(図示省略)により図1のように膨らんだ状態に保持される。
【0047】
そして、輸送先において、内容物の流体を排出する際、前記充填及び排出用管5に接続した配管に備える圧送用ポンプの吸引力で送出を行う。このとき、前記ポンプの吸引力で、容器本体1の下部体10に有する出入用口部11から流体が吸引されると、このポンプによる吸引力が二重壁構造の内外壁12,13間の間隙Sにより少なくとも底部10aの全域、実施例の場合は側面下部領域10bの全域にまで及び、内部の流体が前記多孔体よりなる内壁12の開孔12aを通じて同時に一斉に吸引されて、前記内外壁間の間隙から出入用口部に流れ排出される。
【0048】
そのため、収容されている流体が高粘性流体であっても、前記の排出により、前記容器本体1内における流体の上面(液面)が全体的に略同時に降下するように減少し、この流体上面の降下に追従して、可撓性シート材よりなる上部体20の天部20aが潰れるように降下するが、可撓性シート材よりなる上部体20が局部的に吸い込まれることがない。その上、内部の流体の上面が前記下部体10の側面下部領域10bの高さより低くなり残量が少なくなるのに伴って、前記上部体20が下部体10の側面下部領域10b及び底部10aの内面に沿うように吸引されて密着するが、この際、下部体10の内壁12の全域で吸引されることになるため、仮に、一部が内壁12の一部に密着して一部の開孔12aを塞ぐことがあっても、外壁13に形成された出入用口部11を塞ぐことはない。それゆえ、前記出入用口部11から内外壁12,13間の間隙Sを通じて他の開孔12aより吸引排出作用が行われ、その結果、最後まで流体排出を良好に行うことができ、流体が殆ど残存することがない。
【0049】
なお、前記の流体輸送コンテナAを繰り返し使用する場合、収容する流体に応じて前記容器本体1内を洗浄して再使用することも、また洗浄せずに再使用することもできる。例えば、グリース等の場合は、前記容器本体1内を洗浄せずに繰り返し使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、グリース、印刷インキ、接着剤、塗料、マヨネーズ等の流動性食品その他の粘性の高い高粘性流体の輸送に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る流体輸送コンテナAの組み立て状態の概略を示す断面図である。
【図2】同上の出入用口部付近の拡大断面図である。
【図3】容器本体の下部体と上部体の連結部及び下部体を受支する部分の拡大断面図である。
【図4】容器本体の一部を切り欠いた断面で示す斜視図である。
【図5】外枠の一部を切り欠いた斜視図である。
【図6】流体排出が終了間近の状態の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
A…流体輸送コンテナ、1…容器本体、3…外枠、4…パレット部、5…充填及び排出用管、6…取付具、7…連結手段、10…下部体、10a…底部、10b…側面下部領域、11…出入用口部、12…内壁、12a…開孔、13…外壁、14…ナット部材、15…ネジ部材、16…口部材、18…枠部材、19…シール材、20…上部体、20a…天部、20b…側面上部領域、21…空気抜き用の口部、22…可撓性シート材の下端部、23…押さえ用枠部材、24…ネジ締結手段、24a…ネジ軸部、24b…ナット、31…底受枠、32a,32b,32c,32d…側板、33…上枠、34…支持柱、35…受枠部材、35a…受板部、36…側枠部、37…ヒンジ部、51…管体、52…開閉バルブ、53…口金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収納する容器本体と、該内容器本体を支持する外枠とからなる流体輸送コンテナであって、
前記容器本体は、少なくとも底部を含んでなる下部体と、該下部体の上部にシール状態に固着された可撓性シート材よりなる上部体とからなり、
前記下部体は、前記少なくとも底部の全域にわたって流体が通過可能な多孔体よりなる内壁と非通液性の板材よりなる外壁との二重壁構造をなし、前記内外壁間に流体が流通できる間隙を保有するとともに、前記外壁における底部に流体の出入用口部が設けられてなることを特徴とする流体輸送コンテナ。
【請求項2】
前記容器本体の下部体は、底部と側面下部領域を含んでなり、該底部と側面下部領域の全域にわたって流体が通過可能な多孔体よりなる内壁と非通液性の板材により形成された外壁との二重壁構造をなし、内外壁間に流体が流通できる間隙を保有する請求項1に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項3】
前記下部体の内壁を構成する多孔体が、高粘性流体が通過できる開孔が全域にわたって多数形成されている多孔板又は網体である請求項1又は2に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項4】
前記多孔体よりなる内壁が、外壁に対し脱着可能に設けられてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項5】
前記下部体の外壁の底部が前記出入用口部に向かって傾斜した漏斗状をなし、前記内壁が前記外壁との対応形状をなして前記出入用口部を覆うように設けられてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項6】
前記容器本体は、前記下部体が周縁部において外枠における下部の底受枠により受支されることにより支持されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項7】
前記下部体の外壁の出入用口部には、流体の充填及び排出用管を連結可能な筒状の口部材が取着されてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項8】
前記上部体は、可撓性シート材の下端部が、前記下部体の上端部に付設した枠部材に対しパッキンを介してシール状態を保持するように固定されてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。
【請求項9】
前記外枠は、少なくとも前記容器本体の上部体の四方の側面を覆う側板が設けられてなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の流体輸送コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−154908(P2009−154908A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333963(P2007−333963)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(591123573)株式会社共立物流システム (7)
【Fターム(参考)】