説明

流体輸送用可撓管

【課題】 低温での使用にも耐え、耐屈曲性にも優れた流体輸送用可撓管を提供する。
【解決手段】 可撓管1は、主に管体であるインターロック管3、樹脂層5、耐内圧補強層7、帯状体押さえ層9、軸力補強層11、保護層13等から構成される。インターロック管3の外周部には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5は、インターロック管3内を流れる流体を遮蔽する。樹脂層5は、ポリオレフィン系組成物よりなり、(A)エチレン・プロピレン共重合体60〜90質量部、(B)ポリオレフィン、ポリジオレフィン、およびエチレン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体を除く)から成る群から選択される一つ以上の重合体が10〜40質量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温の液化二酸化炭素等の流体を輸送可能な流体輸送用可撓管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油等の高圧流体の輸送には、プラスチック層を有する流体輸送用可撓管が用いられる。流体輸送用可撓管には、可撓性および耐内圧特性等の特性が要求されている。
【0003】
このような流体輸送用可撓管としては、例えば、インターロック管の外側にプラスチック管が形成され、その外周に内圧補強層、軸力補強層を及び防食層を形成した可撓性流体輸送管がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の可撓性流体輸送管では、油の輸送に用いるために、プラスチック管としては、耐油性に優れるナイロンが用いられる。しかしながら、液化二酸化炭素等を輸送する場合には、よりコストが低く、加工性にも優れるポリエチレンを使用することができる。
【0006】
二酸化炭素は、常温でも5MPa程度で液化し、零下20℃程度であれば、2MPa程度で扱うことができるため、補強テープ等で耐内圧補強層を形成した流体輸送用可撓管を用いることができる。
【0007】
しかしながら、液化二酸化炭素を輸送するタンカ等においては、輸送する液化二酸化炭素の圧力が高いほど、より強固な耐圧構造を必要とするため、輸送設備の製造コストが極めて大きくなる。したがって、大気圧レベルでの低圧力での輸送が望まれる。
【0008】
液化二酸化炭素を大気圧程度で取り扱うためには、液化二酸化炭素を−50℃近傍から、CO2の三重点近傍の温度まで下げる必要がある。しかしながら、前述したような流体輸送用可撓管に用いられるプラスチック層としては、このような低温では脆性破壊してしまう恐れがある。このような低温にも耐えうる材料としては、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)があるが、耐屈曲性が劣るため、常に激しい繰り返し曲げを受けるような流体輸送用可撓管としては適用が困難であった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、低温での使用にも耐え、耐屈曲性にも優れた流体輸送用可撓管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明は、可撓性を有する管体と、前記管体の外周部に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の外周部に設けられた耐内圧補強層と、前記耐内圧補強層の外周部に設けられた軸力補強層と、前記軸力補強層の外周部に設けられた保護層と、を具備し、前記樹脂層は、(A)エチレン・プロピレン共重合体60〜90質量部、(B)ポリオレフィン、ポリジオレフィン、およびエチレン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体を除く)から成る群から選択される一つ以上の重合体が10〜40質量部〔ただし、(A)+(B)=100質量部〕に対し、(C)炭酸カルシウム、クレー、タルク、金属水酸化物から成る群から選択される一つ以上を0〜40質量部含有してなるポリオレフィン系組成物であることを特徴とする流体輸送用可撓管である。前記管体としては通常は、インターロック管を用いる。
【0011】
(B)成分が、ブタジエンゴムであってもよく、または(B)成分が、エチレン・酢酸ビニル共重合体であってもよい。前記保護層は樹脂製であり、前述したポリオレフィン系組成物製であってもよい。
【0012】
前記耐内圧補強層は、樹脂製の帯状体が巻きつけられて形成され、前記耐内圧補強層と前記軸力補強層との間には前記帯状体を押さえるための線状の押さえ部材が隙間なく巻きつけられた帯状体押さえ層が形成されてもよい。
【0013】
本発明によれば、低温にも耐えることができるため、液化二酸化炭素を略大気圧程度で使用することができる。また、この際においても、耐屈曲性を確保することができる。また、耐内圧補強層が、帯状体が巻きつけられて形成されるため製造が容易であり軽量である。さらに、帯状体押さえ層が形成されるため、帯状体がずれることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温での使用にも耐え、耐屈曲性にも優れた流体輸送用可撓管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】可撓管1を示す断面斜視図。
【図2】可撓管1を示す軸方向断面図。
【図3】可撓管1を示す縦断面図。
【図4】(a)は押さえ部材16aを示す図、(b)は押さえ部材16bを示す図。
【図5】二酸化炭素貯留システム20aを示す図。
【図6】二酸化炭素貯留システム20bを示す図。
【図7】二酸化炭素貯留システム20cを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態にかかる可撓管1について説明する。図1〜図3は、可撓管1を示す図で、図1は可撓管1の斜視断面図、図2は周方向断面図、図3は軸方向断面図である。可撓管1は、主に管体であるインターロック管3、樹脂層5、耐内圧補強層7、帯状体押さえ層9、軸力補強層11、保護層13等から構成される。
【0017】
インターロック管3は、可撓管1の最内層に位置し、外圧に対する座屈強度に優れ、耐食性も良好なステンレス製である。インターロック管3はテープを断面S字形状に成形させてS字部分で互いに噛み合わせて連結されて構成され、可撓性を有する。なお、インターロック管3に代えて、同様の可撓性を有し、座屈強度等に優れる管体であれば、他の態様の管体を使用することも可能である。
【0018】
インターロック管3の外周部には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5は、インターロック管3内を流れる流体を遮蔽する。なお、インターロック管3と樹脂層5との間に座床層15aを設けてもよい。座床層15aは、必要に応じて設けられ、インターロック管3の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、座床層15aは、例えば不織布等のようにある程度の厚みを有し、インターロック管3外周の凹凸のクッションとしての役割を有する。
【0019】
なお、インターロック管3の外周部に樹脂層5が設けられるとは、必ずしもインターロック管3と樹脂層5とが接触していることを要せず、例えば、座床層15aのような他層が間に挟まれて設けられたとしても、樹脂層5は、インターロック管3の「外周部に」設けられていると称する。以下の説明においては、同様にして「外周部」(または単に「外周」)なる用語を用いる。また、図2以降の図においては、座床層については図示を省略する。
【0020】
樹脂層5は、ポリオレフィン系組成物よりなり、(A)エチレン・プロピレン共重合体60〜90質量部、(B)ポリオレフィン、ポリジオレフィン、およびエチレン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体を除く)から成る群から選択される一つ以上の重合体が10〜40質量部〔ただし、(A)+(B)=100質量部〕に対し、(C)炭酸カルシウム、クレー、タルク、金属水酸化物から成る群から選択される一つ以上を0〜40質量部含有する。
【0021】
エチレン・プロピレン共重合体としては、エチレンとプロピレンの共重合体であるEPM及びエチレンとプロピレン及び非共役ジエンの3元共重合体であるEPDMが挙げられ、非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンおよびジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリジオレフィンとしては、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどの合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられる。エチレン・プロピレン共重合体以外のエチレン共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・ブチレン共重合体などの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーまたはアイオノマーが挙げられる。また、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたハロゲンを含有しない、ポリオレフィン、ポリジオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体以外のエチレン共重合体、を用いることもできる。これらのハロゲンを含有しない、ポリオレフィン、ポリジオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体以外のエチレン共重合体、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたハロゲンを含有しない、ポリオレフィン、ポリジオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体以外のエチレン共重合体は、単独でも2種類以上の併用でもよい。
【0023】
上記(B)成分を(A)成分とともに存在させることにより(A)成分単体よりも、樹脂層としての基本的な特性を損なわず、低い脆化限界温度を保持しつつ、耐屈曲性を確保することができる。(A)成分60〜90質量部に対し(B)成分は10〜40質量部((A)+(B)=100質量部)であり、好ましくは(A)成分70〜80質量部、(B)成分20〜30質量部である。(B)成分が多すぎると、耐低温特性を損なうか、あるいは伸び残率が低下する場合があり、また、(A)成分の柔軟性を損なう場合がある。(C)は、加工性の向上を目的に必要に応じて添加されるが、(A)+(B)=100質量部に対して40質量部を超えて含有させると脆化温度が高くなり低温特性を損なう。なお、加工性を考慮しなければ、(C)が0であっても、本発明の効果は得ることができる。
【0024】
本発明のポリオレフィン系組成物は、一般的に使用されている各種の樹脂やゴム、さらに、添加剤(難燃剤、酸化防止剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、架橋助剤、架橋剤、カーボンやシリカ等の補強剤、顔料など)を本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ適宜配合することができる。
【0025】
さらに、本発明における組成物は、樹脂層5として押出し被覆の後、架橋することが必要であり、ポリオレフィン組成物が架橋剤を含有するのが好ましい。
架橋剤としては、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシド)ヘキシン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1,−ジ−t−ブチルパーオキシ−シクロヘキサン等が挙げられる。その配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、2〜5質量部が適当である。
押出し被覆後の架橋処理は、水蒸気架橋方式、溶融塩架橋方式、電子線照射架橋法、化学架橋法を使用できるが、特に限定するものではない。
【0026】
樹脂層5の架橋方法としては、インターロック管3の外側に本発明のポリオレフィン系組成物を押出成形した後、160〜200℃で加熱して架橋するのが一般的である。
【0027】
樹脂層5の外周部には、耐内圧補強層7が設けられる。耐内圧補強層7は、主にインターロック管3内を流れる流体の圧送時の内圧等に対する補強層である。なお、本発明にかかる可撓管1としては、大気圧程度の圧力の液化二酸化炭素などの輸送に用いられるため、従来のような鋼製の凹型部材等を用いる必要がない。
【0028】
耐内圧補強層7は、補強帯状体が巻きつけられて形成される。補強帯状体としては、プラスチック繊維が適用でき、例えば、ポリアリレート繊維のテープが用いることができる。ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるようにショートピッチで巻きつけられる。なお、補強帯状体は複数重ねて巻きつけられてもよい。
【0029】
耐内圧補強層7の外周には、帯状体押さえ層9が設けられる。帯状体押さえ層9は、補強帯として巻きつけられた耐内圧補強層7を構成する帯状体を押さえるための層である。帯状体押さえ層9は、線状の押さえ部材が巻きつけられる。帯状体押さえ層9は、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。なお、押さえ部材については、詳細を後述する。
【0030】
帯状体押さえ層9の外周には、軸力補強層11が設けられる。軸力補強層11は、主にインターロック管3が可撓管1の軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑えるための補強層である。軸力補強層11は、平型断面形状の補強条をロングピッチで(補強条の幅に対して巻きつけピッチが十分に長くなるように)2層交互巻きして形成される。補強条は耐内圧補強層の外周において、周方向に複数配置され、ロングピッチで巻きつけられる。軸力補強層11は、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。
【0031】
なお、必要に応じて、帯状体押さえ層9と軸力補強層11の間にポリエチレン製等の樹脂テープである座床層15bを設けてもよく、また、逆向きに螺旋状に巻きつけられる2層の補強条の間に、座床層15cを設けてもよい。座床層15b、15cは、補強部材同士が可撓管1の変形に追従する際に擦れて、摩耗することを防止するためである。この場合でも、座床層の有無を問わず、帯状体押さえ層9の外周部に軸力補強層11が設けられると称する。
【0032】
軸力補強層11の外周部には、保護層13が設けられる。保護層13は、例えば海水等が補強層へ浸入することを防止するための層である。保護層13は、例えばポリエチレン製やポリアミド系合成樹脂製等が使用できるが、前述した樹脂層5と同様のポリオレフィン系樹脂を用いることが望ましい。この場合、前述した配合を有すれば、樹脂層5と同一の成分である必要はない。
【0033】
なお、軸力補強層11の外周には、必要に応じて座床層15dが設けられる。座床層15dは、軸力補強層11の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。以上のように、可撓管1を構成する各層は、それぞれ可撓管1の曲げ変形等に追従し、可撓性を有する。
【0034】
次に、押さえ部材について説明する。図4(a)は押さえ部材16aの端部近傍の斜視図である。押さえ部材16aは、中実の線状体であり、たとえばステンレスやアルミニウム合金等の金属や、繊維補強プラスチック等を用いることができる。なお、押さえ部材としては、強度、比重と可撓性等を考慮すると、外径10mmφ程度のものが使用できる。
【0035】
また、図4(b)に示すように、中空の押さえ部材16bを用いることもできる。なお、本発明においては、図4(a)に示すような中実体も、図4(b)bに示すような中空体のいずれも線状体と称する。
【0036】
図3に示すように、帯状体押さえ層9は、押さえ部材16a(16b)が互いに接するように密に巻きつけられる(すなわち、巻きつけピッチが押さえ部材の外径と略等しい)。なお、可撓管1の長手方向において、帯状体押さえ層9を構成する押さえ部材16aの種類を変化させてもよい。たとえば、部分的に、中実の押さえ部材16aを用い、他の部位には中空の押さえ部材16bを用いてもよい。また、可撓管1の長手方向に対して、押さえ部材の材質を変化させてもよい。
【0037】
押さえ部材の種類を変化させることで、可撓管1は、長手方向に対して、比重(水中重量)を変化させることができる。たとえば、可撓管1の端部近傍には、比重の軽い樹脂製の中空体である押さえ部材を用い、可撓管1の中央部近傍には、比重の大きな金属製の中実の押さえ部材を用いれば、可撓管1の端部近傍の水中重量が軽く(または浮かすことができ)、可撓管1の中央部近傍の水中重量を重くすることができる。
【0038】
表1は、押さえ部材を各種変更した場合の、可撓管の水中重量について計算した結果である。なお、表1において、FRPは繊維補強プラスチックであり、SUSはステンレスであり、アルミは耐食アルミニウム合金である。また、気中重量とは、空気中における重量であり、水中重量は、海水中での重量である。水中重量がマイナスであるのは、海水中で浮くことを示す。また、表1のNo.1は、押さえ部材がない場合の参考値である。No.1〜No.6は、帯状体押さえ層以外は同じ構造である。なお、帯状体押さえ層の材質等は、帯状体押さえ層を構成する押さえ部材の材質等を示すものである。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、押さえ部材の材質や形状(中実体または中空体)を変えることで、水中重量を変化させることができる。この際、押さえ部材のみで水中重量を調整可能であるため、他の補強層等の材質やサイズを変える必要がない。このため、水中重量の調整に際し、複雑な強度計算や耐食性等の検討を要することなく、容易に水中重量のみを調整することができる。
【0041】
次に、可撓管1の製造方法について概略を説明する。まず、あらかじめ製造されたインターロック管3の周囲に、必要に応じて座床テープが巻きつけられ、座床層15a(図1)が形成される。座床層15aが形成されたインターロック管3に対し、押出機によって、外周部に樹脂を押し出し被覆し、樹脂層5が形成される。なお、樹脂層5は前述の通り、架橋処理が施される。
【0042】
樹脂層5が形成されたインターロック管3は、さらに補強テープ巻き機等により補強帯である帯状体が短ピッチで巻きつけられ、耐内圧補強層7が形成される。耐内圧補強層7の外周には、押さえ部材が巻きつけられ、帯状体押さえ層9が形成される。
【0043】
帯状体押さえ層9の外周には、必要に応じて座床テープ等が巻きつけられ、その外周に補強条がロングピッチで巻きつけられる。補強条は、巻きつけ面(帯状体押さえ層9または座床層)の周方向に複数並列した状態から、螺旋状に巻きつけられる。さらに最外周部に押出機によって保護層13が形成され、所定長さに巻き取られる。以上により、可撓管1が製造される。
【0044】
次に、本発明にかかる可撓管1を用いた二酸化炭素貯留システムについて説明する。本発明にかかる可撓管1は、二酸化炭素の貯留システムに好適である。すなわち、可撓管1は、二酸化炭素の貯留システムに必要最低限の耐内圧特性を有し、可撓管1の海中への設置作業性等に優れる。
【0045】
図5は、二酸化炭素貯留システム20aを示す概略図である。二酸化炭素貯留システム20aは、主に、可撓管1、洋上基地27、圧入管29、注入井33等から構成される。二酸化炭素貯留システムは、工場等で発生した二酸化炭素を、輸送船25により所定海域まで搬送し、海底19に設置された注入井33から、液化された二酸化炭素を海底に注入して海底に貯留するものである。
【0046】
通常、可撓管1は、海底19に沈められ、継手23が取り付けられた端部にフロート21を接続して設置される。使用時には、輸送船25によりフロート21から可撓管1の端部(継手23)を洋上に引き上げ、継手23が輸送船25のタンク等と接続される。
【0047】
例えば、液化二酸化炭素は零下50℃以下(零下 56.6℃の三重点以上の温度)で輸送される。輸送船25からの液化二酸化炭素は、洋上基地27に圧送される。洋上基地27は、直接または一旦液化二酸化炭素を貯留した後、圧入管29を介して、注入井33により海底に液化二酸化炭素を注入する。なお、洋上基地28は、係留索31により海底に係留される。
【0048】
可撓管1は、長手方向の中央部近傍が海底19に沈められている。可撓管1の海底19との接触部には、可撓管1の外周に突起状の移動抑制部材17が設けられる。したがって、可撓管1は、海底に固定され、海流によって移動することがない。また、可撓管1が許容曲率半径以上に曲げられたり、海底に擦りつけられたりすることが防止できる。
【0049】
なお、可撓管1の設置は、可撓管1を海底に沈める必要があることから、ある程度の水中重量が必要である。水中重量が軽すぎると、海底まで沈めるのに時間を要し、また、海流等の影響を受けるためである。一方、可撓管1の端部近傍は、使用時には洋上に引き上げる必要がある。このため、水中重量が重すぎると、巻き上げに力を要する。したがって、可撓管1は、端部の水中重量が軽く(または水中で浮いてもよい)、また、可撓管1の中央部近傍は水中重量が重いことが望ましい。この際、継手23の重量等も考慮して、可撓管1の(部位による)水中重量を設定すれば良い。
【0050】
このように用いられる可撓管としては、輸送量および可撓管の運搬、繰り出し、巻取り等の作業性を考慮すると、例えば、内径が6〜10インチ程度であり、外径が200〜350mmφのものが使用できる。なお、可撓管の水中重量の調整は、押さえ部材によって容易に行うことができるため、補強層等を構成する材料に特殊なものを用いる必要がない。
【0051】
また、図6は他の実施形態を示す図であり、二酸化炭素貯留システム20bを示す図である。二酸化炭素貯留システム20bは、二酸化炭素慮竜システム20aに対し、圧入管29に代えて本発明にかかる可撓管1aを使用する点が異なる。
【0052】
可撓管1aは、洋上基地27と注入井33とを接続する。可撓管1aは中間に必要に応じてブイ35が設けられる。すなわち、可撓管1aは、海中に浮遊する。洋上基地27は、係留索31により係留されるため、海流に流されることがない。また、可撓管1aも洋上基地27と注入井33に接続されるため、海流により流されることがなく、また、潮位変化等に適応することができる。
【0053】
なお、このように使用される可撓管1aは、少なくとも中間部近傍において、前述した押さえ部材の材質および形状を適切に設定し、水中重量が略0となるようにしてもよい。可撓管1aの水中重量を適切に設定することで、洋上基地27との接続部に過剰な力が付与されることを防止することができる。
【0054】
また、図7に示す二酸化炭素貯留システム20cに適用することもできる。二酸化炭素貯留システム20cは、可撓管1が直接海底の注入井33と接続される。
【0055】
輸送船25に継手23を接続した後、輸送船25から直接液化二酸化炭素が可撓管1を介して注入井33に圧送される。なお、この場合には、可撓管1と注入井33との接続部に、注入井33からの逆流等を防止可能な構造を設けることが望ましい。
【0056】
以上、本実施の形態によれば、低温脆化温度が低く、脆化温度が零下65℃以下のため、液化炭酸ガスの使用温度程度以下の低温でも脆化することなく使用することができる。したがって、液化二酸化炭素を高圧で保持する必要がなく、簡易な構造で輸送等を行うことができる。また、この様な低温での使用に際しても、耐屈曲性に優れる。
【0057】
また、耐内圧補強層が補強帯状体の巻きつけにより形成されるため、軽量であり、また、製造も容易である。また、補強帯状体の外周に帯状体押さえ層が形成されるため、補強テープ等が可撓管の繰り返しの曲げ等によってずれることがなく、確実に押さえられる。また、この際、可撓管の可撓性に追従することができる。可撓性を有するため、設置作業性等に優れる。
【0058】
また、押さえ部材同士は密巻きされるため、押さえ部材がずれることがなく、また、コイル状に巻きつけるのみであるため、製造の容易である。
【0059】
また、押さえ部材の材質および形状を適宜設定することで、容易に可撓管の水中重量を調整することができる。したがって、可撓管の設計が容易である。また、可撓管1の長手方向の部位によって、水中重量を変化させることも容易である。したがって、可撓管1の使用態様に応じて、部分ごとに水中重量を設定することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0061】
「シートの作製」
表2に示した各成分を100〜180℃の1.7Lバンバリー及び50〜80℃の8インチロール機により約10〜20分間混練して調製した。得られたポリオレフィン系組成物をシート状に成形した後、160℃で30分間プレス加工して架橋処理し、以下の各種試験の試験シートを作製した。
なお、表2中、EPDMはエチレン・プロピレン・ジエン共重合体、BRはブタジエンゴム、EVAはエチレン・酢酸ビニル共重合体、LDPEは低密度ポリエチレンを示す。
【0062】
1)脆化温度
厚さ2mmの試験シートを用いて、JIS K 6261(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方)に準拠して衝撃脆化限界温度を測定した。衝撃脆化限界温度(脆化温度)二酸化炭素の三重点温度以下を合格(○とする。×は不合格。)とした。
【0063】
2)熱老化特性(伸び残率)
厚さ2mmの試験シートを用いて、JIS K 6257(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−熱老化特性の求め方)のA−2法に準拠して100℃96時間サンプルを加熱し、引張伸びの残率を算出した。80%以上を合格(○とする。×は不合格。)とした。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示すように、本発明の実施例1〜7の樹脂組成物は、伸び残率にも優れ、脆化温度が−65℃以下と耐低温特性に優れることから、−50℃近傍から、CO2の三重点近傍の温度で使用でき、また、材料が(A)成分を含むため、柔軟で耐屈曲性にも優れる。
【0066】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1………可撓管
3………インターロック管
5………樹脂層
7………耐内圧補強層
9………帯状体押さえ層
11………軸力補強層
13………保護層
15a、15b、15c、15d………座床層
16a、16b………押さえ部材
17………移動抑制部材
19………海底
20a、20b、20c………二酸化炭素貯留システム
21………フロート
23………継手
25………輸送船
27………洋上基地
29………圧入管
31………係留索
33………注入井
35………ブイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する管体と、
前記管体の外周部に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層の外周部に設けられた耐内圧補強層と、
前記耐内圧補強層の外周部に設けられた軸力補強層と、
前記軸力補強層の外周部に設けられた保護層と、
を具備し、
前記樹脂層は、(A)エチレン・プロピレン共重合体60〜90質量部、(B)ポリオレフィン、ポリジオレフィン、およびエチレン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体を除く)から成る群から選択される一つ以上の重合体が10〜40質量部〔ただし、(A)+(B)=100質量部〕に対し、(C)炭酸カルシウム、クレー、タルク、金属水酸化物から成る群から選択される一つ以上を0〜40質量部含有してなるポリオレフィン系組成物であることを特徴とする流体輸送用可撓管。
【請求項2】
(B)成分が、ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送用可撓管。
【請求項3】
(B)成分が、エチレン・酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送用可撓管。
【請求項4】
前記保護層は樹脂製であり、請求項1記載のポリオレフィン系組成物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項5】
前記耐内圧補強層は、樹脂製の帯状体が巻きつけられて形成され、前記耐内圧補強層と前記軸力補強層との間には前記帯状体を押さえるための線状の押さえ部材が隙間なく巻きつけられた帯状体押さえ層が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−13147(P2012−13147A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149841(P2010−149841)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】