説明

流体輸送装置

【課題】流体の輸送量を高精度に測定できる小型で安価な流体輸送装置を提供する。
【解決手段】流体11を充填したリザーバー10から延長しつつ円弧状の押圧領域21を有するチューブ20と、円弧中心に一体的に回転するカム41とカム歯車43とかなるカム車40と、チューブ内の流体を輸送するためにカムの周側面に基端部33が当接しつつ放射状に配設されて先端部32が押圧領域に当接して往復運動する複数のフィンガー(30a〜30g)と、カムの一側に同軸に積層されて動力部50によって回転するローター61を有するローター車60と、円弧中心に対して水平方向に離間する位置に回転軸R70を有してローターの回転をカムに伝達する伝達車70と、対面するカム歯車とローターのそれぞれの表面の所定位置(83,84)が軸線方向で一致したときの状態を検出するロータリーエンコーダー80とを備えた流体輸送装置1としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有するチューブを外方から圧搾することでチューブ内の流体を輸送する流体輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ごく微量の流体を低速で輸送する装置としてペリスタポンプがある。ペリスタポンプは、ステッピングモーターなどを動力源とし、その動力源によって複数のローラーを備えたローターを回転させ、ローターが複数のローラーを転動させながら柔軟なチューブに沿って回転して流体の吸い込み及び吐出をする構造である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ペリスタポンプは、チューブの径にバラツキがあると、流体の輸送精度が低下する、という問題がある。また、常時チューブをローラーで押圧しているため、チューブの弾性が劣化する、という問題もある。そこで、以下の特許文献2に記載の流体輸送装置では、一部が円弧形状に配設され弾性を有するチューブと、当該チューブの円弧中心から放射状に配設される複数のフィンガーとを備え、その複数のフィンガーが、チューブを流体の流入側から流出側へ順次閉塞するように押圧する圧搾動作を繰り返すことで流体を輸送する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−92537号公報
【特許文献2】特開2010−180739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献に開示されているような、流体の輸送路となるチューブを流入側から流出側に順次圧搾して、流体を送り出す流体輸送装置は、例えば、医療現場において、ごく微量の薬液を精度良く患者に投与する場合などに使用されている。そのため、流体の輸送量は、精密に制御されなくてはならない。すなわち、流体の輸送量を極めて正確に測定する必要がある。
【0006】
そして、これらの流体輸送装置では、回転機構を介してチューブが順次押圧される構造であるため、例えば、特開2007−333611号公報に記載されている化学分析方法のように、その回転機構の回転量をロータリーエンコーダーを用いて精密に計測することとしている。しかし、薬液を投与する用途などでは、極微量の流体を極めて遅い速度で輸送する必要がある。さらに、薬液を長い時間を掛けてゆっくり投与する場合では、装置自体を小型化して携帯可能にする必要がある。そのため、ロータリーエンコーダーには、極めて高い分解能が必要となる。また、流体輸送装置内にロータリーエンコーダーを組み込む際の位置決めにも高い精度が要求される。このように、従来の流体輸送装置では、流体の輸送量を正確に測定しようとすると、小型化や低価格化が困難となる、という問題があった。
【0007】
本発明は、大型化やコストアップを招くことなく、流体の輸送量を高精度に測定できる流体輸送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の主たる発明に対応する実施形態は、
流体が充填されるリザーバーと、
弾性を有し、リザーバーを上流側として、一端が当該リザーバーに接続されて下流側に延長するとともに、当該延長途上において、円弧状に配設された押圧領域が形成されたチューブと、
前記押圧領域の円弧中心とほぼ一致する位置に回転軸を有するカムと、
直棒状で、前記カムの回転軸側から放射状に配設されるとともに、前記回転軸側の端部が当該カムの周側面に当接することで、放射方向に往復運動する複数のフィンガーと、
円盤状のローターと、
前記ローターを回転させるための動力部と
当該ローターの回転運動を減速させつつ当該カムに伝達する減速機構と、
前記カムの回転角度位置を検出するためのロータリーエンコーダーと、
を備え、
前記複数のフィンガーは、放射外方向の端部が前記押圧領域にて前記チューブに当接するとともに、カムの回転に伴って各フィンガーがチューブの所定位置を順次押圧することで、前記リザーバー内の流体を上流から下流に輸送し、
前記減速機構を含む輪列構造は、ローター車と、一つ以上の伝達車と、カム車とから構成されているとともに、前記ローター車の一側に、前記カム車が同軸上に積層配置され、
前記ローター車は、同軸上で一体的に回転する前記ローターと当該ローターより小径のローターピニオンとからなり、
前記カム車は、同軸上で一体的に回転するカム歯車と前記カムからなり、
前記一つ以上の伝達車は、前記ローターピニオンと噛合する伝達歯車と、当該伝達歯車より小径で、前記カム歯車と噛合するピニオンとを含み、前記伝達歯車の回転運動を当該ピニオンに伝達し、
当該ローターと、前記ローター車の一側にある前記カム車の前記カム歯車とが軸線方向で対面し、
前記ロータリーエンコーダーは、前記ローターの表面の所定位置と、前記カム歯車の表面の所定位置とが軸線方向で一致した状態を検出する、
ことを特徴とする流体輸送装置。なお、本発明の他の特徴については、本明細書および添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は、本発明の参考例に係る流体輸送装置の平面図である。(B)は、当該参考例に係る流体輸送装置を構成する一部品の拡大図である。
【図2】上記参考例に係る流体輸送装置の断面図である。
【図3】上記参考例に係る流体輸送装置が内蔵するロータリーエンコーダーの一例を示す図である。
【図4】上記参考例に係る流体輸送装置が内蔵するロータリーエンコーダーのその他の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る流体輸送装置の平面図である。
【図6】上記第1の実施例に係る流体輸送装置の断面図である。
【図7】上記第1の実施例に係る流体輸送装置が内蔵するロータリーエンコーダーの概略を示す平面図である。
【図8】上記第1の実施例に係る流体輸送装置における上記カムの回転角度と流体の輸送量の関係を説明するための図である。
【図9】上記第1の実施例に係る流体輸送装置で発生する流体の逆流現象を説明するための図である。
【図10】本発明の第1および第2の実施例に係る流体輸送装置に内蔵されている電子回路のブロック構成を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係る流体輸送装置における上記カムの回転角度と流体の輸送量の関係を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係る流体輸送装置における流体の輸送速度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===本発明の実施形態について===
本発明の実施形態に対応する流体輸送装置は、上記主たる発明に対応する実施形態が備える特徴に加え、まず前記軸線方向を上下方向とするとともに、前記ローター車が前記カム車の下方に積層されていることとする。つぎに、前記ロータリーエンコーダーは、前記円盤状のローターの上下両面を連絡する孔と、前記カム歯車の下面に配置された反射板と、発光部と、受光部とを含んで構成される。最後に、前記発光部は、ローターの下面に向けて光を上方に照射し、前記受光部は、前記照射された光が前記孔を通過しつつ前記反射板にて反射されて再度発光部側に戻ってきた際に、当該反射光を受光して所定の信号を出力する、ことを特徴として備えていてもよい。
【0011】
さらに、前記ローター車と前記カム車との層間に前記伝達車が同軸上に積層されているとともに、当該伝達車の前記伝達歯車には、上下両面を連絡する孔が形成される。そして、前記ロータリーエンコーダーは、当該伝達歯車の孔をさらに含み、前記受光部は、前記照射された光が前記ローター車の孔と前記伝達車の孔の双方を通過しつつ前記反射板にて反射されて再度発光部側に戻ってきた際に、当該反射光を受光して所定の信号を出力する、ことを特徴としてもよい。
【0012】
あるいは、まず前記軸線方向を上下方向とするとともに、前記ローター車が前記カム車の下方に積層されていることとする。つぎに、前記ロータリーエンコーダーは、前記円盤状のローターの上下両面を連絡する孔と、前記カム歯車の上下両面を連絡するスリットと、発光部と、受光部とから構成される。最後に、前記発光部と、前記受光部は、前記積層状態にある前記ローターと前記カム歯車とを軸線に沿って挟持するように対面して配置され、前記受光部は、前記発光部からの照射光が前記ローターの孔と前記カム車のスリットの双方を通過してきた際に、当該照射光を受光して所定の信号を出力する、ことを特徴とすることもできる。
【0013】
さらに、前記ローター車と前記カム車との層間に前記伝達車が同軸上に積層されているとともに、当該伝達車の前記伝達歯車には、上下両面を連絡する孔が形成される。そして、前記ロータリーエンコーダーは、当該伝達歯車の孔をさらに含んで構成され、前記受光部は、前記発光部からの照射光が前記ローターの孔と、前記伝達歯車の孔と、前記カム車のスリットとを通過してきた際に、当該照射光を受光して所定の信号を出力する、ことを特徴としてもよい。
【0014】
さらに上記いずれかの特徴に加え、前記カムが一定の速度で回転するように前記動力部を制御するとともに、前記ロータリーエンコーダーからの信号に基づいて前記カムの回転角度位置を特定するための制御部を備えることを前提とする。当該制御部は、前記カムが所定の回転角度位置にあるときは、当該カムの回転速度を速めるように前記動力部を制御することで、前記カムが前記所定の回転角度にあるときは、前記押圧領域での流体移動が停止されることを特徴とする流体輸送装置としてもよい。
【0015】
===参考形態===
<概略構造>
図1は、本発明の実施形態と比較するための参考形態に係る流体輸送装置(以下、参考装置)101の構成を示す図である。図1(A)は、当該参考装置101の全体構成の透視平面図であり、図1(B)は、当該参考装置101を構成する一部品の拡大図である。また、図2に、図1におけるa−a矢視断面を示した。参考装置101は、輸送対象となる流体(例えば、水、食塩水、薬液、油類、芳香液、インクなど)11が充填されたリザーバー10、流体の流路となるチューブ20、およびこのチューブ20を流体11の流入側(以下、上流)から流出側(以下、下流)に向けて順次圧搾して流体11を下流側に輸送させるための複数のフィンガー(30a〜30g)を備えている。そして、各フィンガー(30a〜30g)に圧搾動作を付与するためのカム41、およびカム41を回転させるための駆動機構などを含んで構成されている。これらの構成が、筐体102の外殻や内部構造によって、所定の位置に配設されたり取り付けられたりしている。
【0016】
リザーバー10には、チューブ20の一端が接続されており、当該チューブ20は、下流の末端にある輸送先(図示せず)に向けて延長しており、その延長途上には円弧状に配設されている領域(押圧領域)21が設けられている。図1(B)に拡大して示したように、複数本のフィンガー(30a〜30g)は、それぞれ、直棒状の軸部31の一方の端部32が鍔状に形成され、他方の端部33が半球状に形成されている。そして、上記押圧領域21の円弧中心から放射状に等間隔となるように配置されており、鍔状の端部(以下、先端部)32がチューブ20の押圧領域21にて当接している。また、半球状の他端部(以下、基端部)33は、カム41の周側面に当接している。なお、この参考装置101では、7本のフィンガー(30a〜30g)が配置されており、最も上流にあるフィンガーを第1フィンガー30aと称し、以下、下流に向かって、第2フィンガー30b、第3フィンガー30c、…、第7フィンガー30gと称することとする。
【0017】
カム41の回転軸は、前記押圧領域21の円弧中心にほぼ一致し、また、カム41の周側面は、円筒側面に等角度間隔で四つの同形状の突起42を形成した凹凸形状であり、各フィンガー(30a〜30g)は、カム41が所定方向に回転すると、カム41周側面の突起42に基端部33が乗り上げていき、その結果、先端部32がチューブ20を押圧する。また、突起42を乗り越えると、流体11が流通しているチューブ20の内圧によって基端部33側に押し戻される。各フィンガー(30a〜30g)は、このようにして、カム41の周側面の凹凸形状に沿って往復運動する。
【0018】
駆動機構は、カム41を回転駆動させるための機構であり、動力源となる圧電アクチュエーター50と、当該圧電アクチュエーター50によって直接回転駆動される円盤状のローター61と、当該ローター61の回転数を減速させつつカム41の回転運動に変換する減速機構とを有する。
【0019】
圧電アクチュエーター50は、圧電素子を用いた振動体51の振動を利用してローター61を回転させるためのものである。振動体51は、矩形状の板材の両面に圧電素子を接着した構造であり、矩形の板材の一方の短辺側には、ローター61の周側面と接触する凸部52が設けられている。そして、圧電素子に所定の駆動信号を印加して振動体51を振動させると、この凸部52が所定の軌道を描いて振動する。例えば、振動体51が長手方向、すなわちローター61の直径延長方向に沿って伸縮する縦一次振動モードと、振動体51がその長手方向と直交する方向に屈曲する屈曲二次振動モードとを励起するように圧電素子に駆動信号を印加すると、凸部52が楕円軌道を描いて振動する。もちろん、長手方向に沿って伸縮する一次振動モードと、短辺方向に沿って伸縮する一次振動モードとを組み合わせて、凸部52を8の字の軌道を描くように振動させてもよい。また、ローター61は、板バネなどによって圧電アクチュエーター50側に付勢されている。それによって、圧電アクチュエーター50の凸部52とローター61の周側面との間に適切な摩擦力が発生し、圧電アクチュエーター50の振動が確実にローター61に伝達される。もちろん、動力源は、圧電アクチュエーター50に限らず、ローター61を直接回転させることができれば、例えば、ステッピンモーターなどであってもよい。
【0020】
減速機構は、ローター61の回転を所定の減速比でカム41に伝達する機構である。減速機構を含む輪列構造は、動力源である圧電アクチュエーター50によって直接駆動されるローター61と、そのローター61に一体的に取り付けられた、小歯車(以下、ローターピニオン)62とからなる歯車部品(以下、ローター車)160を備えている。さらに、ローターピニオン62と噛合する大歯車(以下、伝達歯車)71と、その伝達歯車71に一体的に取り付けられた小歯車(以下、ピニオン)72とで構成される歯車部品(以下、伝達車)170と、伝達車170のピニオン72と噛合する大歯車(以下、カム歯車)43にカム41が同軸に固定された歯車部品(以下、カム車)140とを有している。このような輪列構造において、例えば、ローター車160と伝達車170との減速比が8で、伝達車170とカム車140との減速比が5であれば、この減速機構の減速比は40となり、ローター61が40回転すると、カム41が1回転することになる。なお、当該参考装置101では、一つの伝達車170を備えていたが、複数の伝達車170を備えていてもよい。いずれにしても、ローターピニオン62と噛合する伝達歯車71と、カム歯車43と噛合するピニオン72とを含み、伝達歯車71の回転運動が最終的にピニオン72に伝達されてカム歯車43がローター61に対して減速されて回転すればよい。
【0021】
<流体輸送量の測定>
上述した構造の参考装置101では、カム41が所定の回転角度位置(基準位置)にあることを検出するとともに、その基準位置からの回転量を測定することで、流体11の輸送量を求めることができる。そして、基準位置にあることを検出するためには、ロータリーエンコーダーを用いる。図3に参考装置101が備えるロータリーエンコーダー180aの一例を示した。図3(A)は、カム車140をカム41側から見たときの平面図であり、図3(B)は(A)のb−b矢視断面を示している。この図3に示したように、カム歯車43にスリット183を設け、そのスリット183と、カム歯車43を上下から挟持するように配置された発光素子81と受光素子82とによってロータリーエンコーダー180aを構成する。このようなロータリーエンコーダー180aでは、発光素子81からの照射光L1がスリット183を通過すると受光素子82からその光強度に応じた信号が出力される。そして、その信号の検出時点をもって、カム41が基準位置にあるものと判定することができる。あるいは、図4に示したロータリーエンコーダー180bように、カム歯車43の表面に細線状の反射板184を取り付けておくとともに、発光素子81と受光素子82が一体化された周知のフォトリフレクター90を用い、カム歯車43の表面に向かって照射光L1を照射し、その反射光L2を受光する構成としてもよい。
【0022】
しかしながら、カム歯車43の回転状態を直接ロータリーエンコーダー(180a,180b)で検出する場合、流体11の輸送量が微量であると、カム歯車43の回転速度を極めて遅くする必要がある。そのため、受光信号の検出継続時間が長くなり、正確に位置を特定できない可能性がある。スリット183や反射板184を極めて細くして分解能を高めることも考えられるが、特に、小型化を達成しようとすると、そのカム歯車43にスリット183や反射板184を形成するための加工コストが極めて高くなる。もちろん、ロータリーエンコーダー(180a,180b)の分解能に応じて発光素子81からの照射光L1をレンズなどの光学系を用いて絞ることが必要になる。もちろん、この光学系の付加もコストアップの要因となる。また、フォトリフレクター90を取り付ける際の位置決めにも高い精度が要求される。さらに参考装置101では、カム41に同形状の四つの突起42が等間隔で形成されているため、カム41が1回転すると、第1フィンガー30aから第7フィンガー30gが順次チューブ20を圧搾する動作を4回繰り返すことになる。ここで、個別に往復運動する7本のフィンガー(30a〜30g)がそれぞれ特定の圧搾状態であるときに対応させて基準位置を設定すると、カム歯車43には、四つの微細なスリット183や反射板184を設けることになり、さらなるコストアップを招く。
【0023】
一方、カム歯車43と比較して高速回転するローター61側にロータリーエンコーダーを設ける(180a,180b)場合では、基準位置の検出継続時間が短時間であるため、微細なスリット183や反射板184が不要となり、加工コストを安価にすることができる。しかしながら、ローター61の基準位置や回転速度は検出できるものの、カム歯車43、すなわちカム41の基準位置を特定すること難しい。また、ローターピニオン62と伝達歯車71との間のバックラッシュもあり、ローター61の基準位置や回転量からカムの基準位置や回転量を特定することをさらに困難にしている。
【0024】
もちろん、カム歯車43が基準位置と、ローター61における所定の回転角度位置とが一致するようにロータリーエンコーダー(180a,180b)を配置することも考えられる。しかし、この場合は、減速機構を構成する各車(140,160,170)を組み付けた後では、各車(140,160,170)間の歯車(62−71,72−43)の噛合状態を変更できないため、参考装置101の組み立て時に、各歯車(62,71,72,43)の回転角度位置を、極めて高い精度で維持した状態で、減速機構を筐体102内に組み付ける必要がある。しかも、その組み付けは、各歯車(62,71,72,43)間のバックラッシュも考慮して設定する必要があり、実際には、ローター61の回転角度位置によってカム41の回転角度位置を特定することは極めて難しい。
【0025】
===第1の実施例===
上述したように、先に示した参考装置101では、流体11の輸送量を求めるための測定値となるカム41の基準位置やその基準位置からの回転角度を精度良く測定することが難しい。そこで、以下に、カム41の基準位置や回転量を精度良く測定でき、しかも小型で安価に提供できる流体輸送装置を本発明の実施形態として挙げ、この実施形態に係る流体輸送装置の構造を第1の実施例とする。
【0026】
図5と図6に、第1の実施例に係る流体輸送装置1の概略構造を示した。図5は、当該流体輸送装置1の平面図であり、輪列構造を主体にして示している。図6は、図5におけるc−c矢視断面に相当する図であり、輪列構造を構成する各車(40,60,70)を異なるハッチングで示している。なお、これら図5、図6、以降の図、および先に示した図1〜図4では、同様の機能を有する部材や部品などについては、同じ符号を付している。
【0027】
<輪列構造>
図5、図6に示したように、第1の実施例に係る流体輸送装置1は、参考装置101と同様に、ローター車60、伝達車70、カム車40によって構成される輪列構造と、7本のフィンガー(30a〜30g)とを備えている。もちろん、フィンガー(30a〜30g)の数は、7本に限定されない。しかしながら、輪列構造における各車(40,60,70)の配置は、参考装置101のそれとは異なっており、ローター車60の一側にカム車40が同軸上に積層されている。ここに示した例では、ここで、回転軸(R60,R40)の延長方向(軸線方向)を上下方向とすると、ローター車60の上方にカム車40が積層されている。また、伝達車70は、その回転軸R70が、カム車40およびローター車60に対して水平方向に離間するように配置されている。そして、ローター車60とカム車40の回転軸(R60,R40)は、個別に軸支されており、各車(40、60、70)における各歯車(62−71,72−43)が噛合して輪列構造が形成されていなければ、双方の車(40,60)は、互いに自由に回転する。
【0028】
ここに示した流体輸送装置1において、カム車40は、ボールベアリング44の内輪44iに固定されているとともに、ボールベアリング44の外輪44oが筐体2に固定されて、筐体2に対して回動自在となっている。また、ボールベアリング44の内輪44iの内側には、上下方向に突出するように貫通する多段円筒状の部材45が固定されている。この多段円筒状の部材(以下、円筒部材)45は、カム車40の回転軸R60を構成する部材であり、径が異なる各円筒間の境界45sは、当該円筒部材45の外周に嵌め込まれるカム歯車43やカム41、およびボールベアリング44の上下方向の取付け位置を規定している。
【0029】
各円筒間の境界45sは、例えば、円筒部材45の下端周囲にカム歯車43を同軸に固定する際に上方への移動を規制するための突起を形成したり、円筒部材45のボールベアリング44の上方に突出する部分の周囲にカム41を環装する際の座になったりする。そして、カム41は、円筒部材45の上面に螺着されてボルト46の上方にて大きくフランジによって上方から押さえつけられて、円筒部材45に強固に固定されている。それによって、カム41とカム歯車43と円筒部材45とが同じ回転軸R40上に配置されつつ、これらが一体的に回転する。
【0030】
ローター車60は、ローター61の下方にローターピニオン62が取り付けられた構造で、ローター車60の回転軸R60を構成する軸部材65がこのローター61の上方と、ローターピニオン62の下方に突出している。そして、円筒部材45の中空内部45iには、ローター車60の軸受け部材63が固定されている。軸受け部材63には、円筒部材45と同軸の軸孔64が穿設されており、この軸孔64に軸部材65の上端65uが遊嵌状態で挿入されている。軸部材65の下端65dは、筐体2に設けられた軸受け部材66に軸支されている。それによって、ローター車60とカム車40が、同軸上に積層された状態で配置されつつ、伝達車70を介さない限り互いに自由に回転可能となる。なお、ローター61は、参考装置101と同様に、その周側面が圧電アクチュエーター50の凸部52に当接しているとともに、圧電アクチュエーター50側に付勢されている。
【0031】
一方、伝達車70の回転軸R70は、積層状態にあるローター車60とカム車40に対して水平方向に離間して軸支されており、伝達車70における大きな径の伝達歯車71がローター車60のローターピニオン62に噛合し、この伝達歯車71の上方にピニオン72が同軸に配設されている。そして、ピニオン72がカム車40のカム歯車43と噛合している。それによって、圧電アクチュエーター50によって駆動されるローター61の回転運動が減速されつつカム車40に伝達される。なお、第1の実施例においても、伝達車70は、必ずしも一つである必要はない。
【0032】
<ロータリーエンコーダーの構成と構造>
上述したように、第1の実施例に係る流体輸送装置1では、その輪列構造におけるカム車40とローター車60が同軸上に積層配置されており、ローター61とカム歯車43が互いに対面している。そして、高速回転するローター61が最終的に減速されてカム歯車43をゆっくり回転させる。第1の実施例に係る流体輸送装置1は、このカム車40とローター車60との積層構造と、双方(40,60)の回転速度差とを巧妙に利用することで、カム41の基準位置や回転量を高精度に検出できるロータリーエンコーダー80を備えている。
【0033】
図7に、積層状態にあるカム車40とローター車60を下方から見たときの平面図を示した。ロータリーエンコーダー80は、図6、および図7に示したように、ローター61に形成された孔83と、カム歯車43の下面に取付けられた反射板84と、ローター61の下方に配置されたフォトリフレクター90とによって構成されている。そして、フォトリフレクター90の発光素子81からの上方への照射光L1が孔83を通過している期間に、その照射光L1が反射板84によって反射されると、その反射光L2がフォトリフレクター90の受光素子82に戻って来る。このとき受光素子82が出力する信号を検出すれば、カム41が基準位置にある、ということを特定することができる。なお、基準位置からの回転量については、たとえば、ローター61を一定の速度で回転させていれば、減速比からカム41の回転速度が計算でき、基準位置を特定した時点からの経過時間に基づいて回転量を求めることができる。そして、あらかじめ、回転量と流体11の輸送量との関係が分かっていれば、流体11の輸送量も求められる。
【0034】
このように、第1の実施例に係る流体輸送装置1は、参考装置101と同様に、カム41の回転に従動して往復運動する複数のフィンガー(30a〜30g)によってチューブ20を順次圧搾するように構成されている。ペリスタポンプと比較すると、チューブ20の断面積に多少のバラツキがあっても流体11を精度良く輸送できるとともに、常時チューブ20を圧搾していないので、チューブ20の劣化も少なく、流体輸送精度を長期間に亘って維持できる、という基本性能を有している。その上で、上述した参考装置101におけるロータリーエンコーダー(180a,180b)の加工精度や位置決め精度などに関する問題を解決するための構成と構造を備えている。
【0035】
例えば、図3や図4に示した参考装置101におけるロータリーエンコーダー(180a,180b)では、カム41の基準位置を精密に検出するために、カム歯車43の円周を480分割したときの幅に相当する分解能が必要であったとすると、その480分割した角度(0.75度)をピッチとした微細なスリット183を形成する必要があった。すなわち、スリット183自体の幅を、例えば、分解能に相当する0.75度の半分の角度とすれば、0.375度と、極めて細くする必要があった。しかも、その微細なスリット183を4箇所に等角度間隔で形成する必要もあった。
【0036】
一方、第1の実施例に係る流体輸送装置1では、カム歯車43の下面にローター車60とカム車40との減速比に応じた比較的幅の広い反射板84形成し、ローター61には、円周方向の幅が、反射板84と同程度の適宜な形状の孔83を形成すればよいことになる。そして、カム歯車43下面の反射板84とローター61のスリットとを、同軸上にある回転軸(R40,R60)から等距離となるように配置すればよい。
【0037】
具体的には、カム41の四つの突起42に対応してカム歯車43には、反射板84が4箇所に配置されており、カム車40が一回転する間に、フォトリフレクター90の直上でローター61の孔83とこの反射板84が必ず4回一致するように、カム車40とローター車60とは、カム41の突起42の個数(4個)の整数倍の減速比となることが必要となる。
【0038】
そこで、一例として、減速比を4×10=40として計算すると、ローター61が40回転するごとにカム歯車43が1回転することになる。すなわち、ローター61が10回転するごとにカム歯車43が1/4(90度)回転して、ローター61の孔83と、カム歯車43の四つの反射板84の内の一つが上下方向で位置が一致すればよい。したがって、図7において、90度の1/10の9度がピッチとなり、回転軸R40を中心としたときの反射板84の角度θを、そのピッチの半分とすれば、θ=4.5度となる。
【0039】
すなわち、参考装置101におけるスリット183の10倍の幅の大きな反射板84でよいことがわかる。そして、ローター61の孔83は、下方からの照射光L1を上方に通過させるだけでよいので、円周方向の幅が極端に大きくなければ、その大きさを厳密に設定する必要がない。本実施例では、径が反射板84の幅より僅かに大きい丸穴状であったが、形状は、スリット状、矩形状など適宜な形状としてよい。
【0040】
なお、反射板84が孔83を通して見通せる位置にあれば、反射光L2がフォトリクレクタ90の受光素子82によって検出され続けるが、減速比が大きい場合では、反射光L2は、瞬間的に検出されるため、反射光L2の検出継続時間を厳密に考慮する必要がない。もちろん、無検出状態だった反射光L2が検出された時点を持って、カム歯車43が特定の回転角度位置にあるものとしてもよい。すなわち、反射光L2が検出された瞬間以降から反射光L2が検出されなくなる時点までの間に受光素子82が出力する信号は考慮しなくてよい。そして、このような信号検出手法を用いる場合、反射板84をさらに幅広にすることも考えられる。
【0041】
このように、本実施例に係る流体輸送装置1では、反射板84は、その幅を大きくすることでき、加工が容易となる。そして、フォトリフレクター90の発光素子81からの照射光L1が孔83を透過したとき、その先に反射板84があれば、確実にその照射光L1が反射光L2として受光素子82にて受光される。もちろん、フォトリフレクター90は、ローター61の孔83に対して確実に照射光L1が入射されるように配置するだけでよく、厳密な位置合わせも不要となる。
【0042】
さらに、第1の実施例に係る流体輸送装置1の構造によれば、カム車40とローター車60が上下に積層された輪列構造を採用しているため、歯車など投影面積の大きな部品によって構成されている輪列構造の占有面積を大きく減少させることができ、流体輸送装置1をより小型にすることが可能となる。確かに、カム車40とローター車60が上下に積層されているため、上下方向のサイズが増加するかもしれないが、これらは、歯車を主体とした部品であり基本的に薄い。さらに、ローター61の周側面に圧電アクチュエーター50の凸部52当接させるために、圧電アクチュエーター50を、土台となる部材53を用いてある程度高いに位置に配置する必要があり、参考装置101でもある程度の厚さが必要となる。したがって、第1の実施例に係る流体輸送装置1では、参考装置101と比較して、水平方向のサイズが大幅に減少し、上下方向のサイズの増加を最小限に抑えることができる。
【0043】
なお、第1の実施例に係る流体輸送装置1におけるロータリーエンコーダー80は、上記の構成に限らず、カム歯車43の反射板84をスリットに代え、発光素子81と受光素子82を、積層状態にあるローター61とカム歯車43とを上下から挟持するように対面させて配置した構成であってもよい。そして、発光素子81からの照射光L1がローター61の孔83とカム歯車43のスリットの双方を透過してきたときに、その透過光を受光素子82によって検出すればよい。
【0044】
===第2の実施例===
第1の実施例として、カム41の回転基準位置や回転角度を、低コストで精度良く測定できる流体輸送装置1の構造を説明した。そして、第2の実施例では、第1の実施例の流体輸送装置1を用いて、流体11をさらに精度よく一定割合で輸送するための制御方法を挙げる。
【0045】
図8は、第1の実施例の流体輸送装置1において、ローター61を等速回転させた場合のカム41の回転角度と、第7フィンガー30gより下流側での流体11の累積輸送量との関係を示したグラフである。第1の実施例では、カム41の周側面には、4箇所に等間隔に配置された突起42が形成されており、第1フィンガー30aから第7フィンガー30gは、カム41が90度回転するごとに、順次チューブ20を圧搾して流体11を輸送する手順を1回実行する。このとき、図8に示したように、カム41がある回転角度位置にあるときを0度として、90度まで回転する1サイクルの間には、流体11が一定速度で輸送される期間(流体輸送期間)と、第1フィンガー30aから第7フィンガー30gまでが順次チューブ20を圧搾した後、第1フィンガー30aが再度チューブ20を圧搾する次のサイクルが始まるまでの間欠期間とに区分できる。さらに、間欠期間では、流体輸送期間が終了した時点での流体11の累積輸送量が維持される定常期間に続いて累積輸送量が減少する逆流期間と、その後に流体の輸送速度が流体輸送期間における速度に達するまでの復帰期間とを含む非定常期間が現れる。
【0046】
この非定常期間が現れる現象について、その原理を図9に示した。まず、図9(A)に示したように、流体輸送期間の終了後しばらくの間は、第1フィンガー30aと第7フィンガー30gがチューブ20を最大限に圧搾しているため、定常期間となる。このとき、第2フィンガー30bは、最大限に圧搾する途上にあり、最大限に近い状態でチューブ20を圧搾している。そして、カム41がさらに回転すると、図9(B)に示したように、第7フィンガー30gと第1フィンガー30aがチューブ20の圧搾状態から開放される。しかし、チューブ20の上流側では、第2フィンガー30bが、第1フィンガー30aに代わってチューブ20を最大限に圧搾するが、下流側の第7、第6フィンガー(30g、30f)は、チューブ20を圧搾していない。そのため、チューブ20の押圧領域21では、第2フィンガー30bがチューブ20をさらに圧搾することで下流に輸送される流体11の体積23よりも、第7フィンガー30gが開放されることによってチューブ20内に生じる空隙22の体積の方が大きくなる。結果的に、この空隙22と第2フィンガー30bによって輸送される流体11の体積23の差分の流体11が、第7フィンガー30gよりも下流側から上流側に向かって逆流することになり、1サイクルの末期に上述した逆流期間とそれに続く復帰期間とからなる非定常期間が現れる。
【0047】
この非定常期間の存在は、投与すべき薬液の総量のみが決まっている場合では問題がないが、時間当たり一定量の薬液を投与するような場合では問題が生じる。すなわち、ローター61を一定の速度で回転させると、投与される薬液の総量が同じであっても、間欠期間内に流体11の輸送速度が一定しない逆流期間と復帰期間とからなる非定常期間があるため、時間当たりの投与量が狂ってしまう。そこで、第2の実施例では、非定常期間では、カム41を瞬間的に高速回転させて、間欠期間中に非定常期間が生じないようにしている。
【0048】
図10に流体輸送装置1を制御するための電子回路構成の概略を例示した。内部にCPU、RAM、ROMを含んだ制御部3を主制御部として、流体11の輸送量や稼働時間などを設定するためのユーザー入力を受け付ける入力部4、流体輸送装置1の設定状態や稼働状態を音声や画像によってユーザーに通知するための出力部5、および圧電アクチュエーター50を駆動するための信号を発生する駆動回路6などを含んで構成されている。ここで、制御部3による流体輸送装置1の制御手順の一例を挙げると、制御部3は、流体輸送装置1を制御するのに必要なプログラムや、カム41における基準位置に対応する回転角度、カム41の回転角度位置と図8に示した各期間との対応関係、ローター61の回転数と駆動回路6へ送信する制御信号の対応関係、駆動機構における減速比などのデータをROMに記憶している。そして、駆動回路6を制御して所定の駆動信号を出力させ、ローター61を所定の回転速度で回転させたり、ロータリーエンコーダー80からの信号を入力することで、カム41が基準位置、すなわち特定の回転角度位置にあることを特定したりする。また、ローター61の回転速度と減速機構の減速比とからカム41の回転速度を計算しつつ、その計算値を、基準位置の検出時間間隔に基づいて補正することで、カム41の現在の回転角度位置を正確に監視している。
【0049】
そして、その監視過程で、現時点が、定常期間と非定常期間の境界に相当する回転角度位置、あるいは流体輸送期間と定常期間の境界に相当する回転角度位置であることを認知すると、駆動回路6を制御し、カム41が流体輸送期間が開始される所定の回転角度位置となるまでローター61を高速回転させる。その後、流体輸送期間に対応する回転速度となるようにローター61を減速させ、チューブ20内の流体11を、再び一定の流速で輸送させる。図11に、第2の実施例に係る流体輸送装置1におけるカム41の回転角度と流体11の累積輸送量との関係を示した。非定常期間が消失し、時間当たり一定量の流体が流体輸送期間と流体の輸送が停止状態となっている定常期間とが交互に繰り返されている。また、図12に、流体11の輸送を開始してからの経過時間と流体輸送速度との関係を示した。図12(A)は、非定常期間が存在する場合に対応し、(B)は、上記制御により非定常期間においてカム41を高速回転させた場合に対応している。(C)は、間欠期間を通してカム41を高速回転させた場合に対応している。(A)に示したように、第2の実施例に係る制御を施さないと非定常期間では流体11の輸送が完全に停止されず、その輸送速度が大きく変化する。なお、この(A)に示した例では、復帰期間では流体の輸送速度が流体輸送期間よりも遅くなっているが、この復帰期間における輸送速度や、その速度のグラフ上での折れ線形状は、当然のことながら、様々な条件(カム41の回転速度、流体11の粘度、チューブ20の弾性など)に応じて変わるため、非定常期間における流体11輸送の状態を再現性良く制御することが難しい。
【0050】
一方、(B)に示したように、第2の実施例に係る制御方法により、間欠期間を消失させると、流体11の輸送が完全に停止されて、チューブ20内の流体11は、流体輸送期間にあるときのみ、上流から下流に向かう一方向に一定の速度で輸送されている。さらに、間欠期間を通してカム41を高速回転させると、間欠期間もほぼ消失し、流体11を一定の速度を維持したまま長時間に亘って輸送することができる。
【0051】
===その他の実施例===
第1の実施例に係る流体輸送装置1では、ローター車60とカム車40が上下に積層された輪列構造を採用していた。この例に限らず、複数の伝達車70を用い、特定の伝達車70がローター車60とカム車40の間に積層された構造となっていてもよい。すなわち、その積層されている伝達車70の伝達歯車71にローター61の孔83と同様の孔を形成し、ロータリーエンコーダー80を、フォトリフレクター90と、ローター61の孔83と、伝達歯車71の孔と、カム歯車43の反射板84とで構成してもよい。
【0052】
そして、積層状態にあるローター車60と伝達車70との減速比を整数とし、発光素子81からの照射光L1を、ローター61の孔83と伝達歯車71の孔の双方を通過させるとともに、カム歯車43の反射板84に反射して戻ってきた反射光L2を検出するようにしてもよい。
【0053】
この場合は、ローター61と伝達歯車71との減速比によって、照射光L1がローター61と伝達歯車71の双方を通過する時間が極めて短くなる「シャッター効果」が得られるため、カム歯車43の反射板84の幅をさらに大きくすることもできる。たとえば、ローター車60と伝達車70との減速比を5とすると、カム歯車43の反射板84は、第1の実施例においてθ=4.5度とすれば、その5倍でよく、θ=22.5度とすることができ、反射板84を形成するための加工がさらに容易となる。
【0054】
なお、この場合も、カム歯車43の反射板84をスリットに代え、発光素子81と受光素子82を、積層状態にあるローター車60とカム車40を上下から挟持するように対面させて配置することでロータリーエンコーダーを構成し、発光素子81からの照射光が、ローター61と伝達歯車71の孔、およびカム歯車43のスリットを透過してきたときに、その光を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば、医療現場などにおいて、長時間に亘って微量の薬液を患者に投与し続けるためのポンプなどに利用するのに適している。
【符号の説明】
【0056】
1,101 流体輸送装置、2,102 筐体、3 制御部、6 駆動回路、
10 リザーバー、11 流体 20 チューブ、21 押圧領域、
30a〜30g フィンガー、40,140 カム車、41 カム、42 カム歯車、
50 圧電アクチュエーター、51 振動体、60,160 ローター車、
61 ローター、62 ローターピニオン、70,170 伝達車、71 伝達歯車、
72 ピニオン、80,180a,180b ロータリーエンコーダー、
83,183 スリット、84,184 反射板、90 フォトリフレクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が充填されるリザーバーと、
弾性を有し、リザーバーを上流側として、一端が当該リザーバーに接続されて下流側に延長するとともに、当該延長途上において、円弧状に配設された押圧領域が形成されたチューブと、
前記押圧領域の円弧中心とほぼ一致する位置に回転軸を有するカムと、
直棒状で、前記カムの回転軸側から放射状に配設されるとともに、前記回転軸側の端部が当該カムの周側面に当接することで、放射方向に往復運動する複数のフィンガーと、
円盤状のローターと、
前記ローターを回転させるための動力部と
当該ローターの回転運動を減速させつつ当該カムに伝達する減速機構と、
前記カムの回転角度位置を検出するためのロータリーエンコーダーと、
を備え、
前記複数のフィンガーは、放射外方向の端部が前記押圧領域にて前記チューブに当接するとともに、カムの回転に伴って各フィンガーがチューブの所定位置を順次押圧することで、前記リザーバー内の流体を上流から下流に輸送し、
前記減速機構を含む輪列構造は、ローター車と、一つ以上の伝達車と、カム車とから構成されているとともに、前記ローター車の一側に、前記カム車が同軸上に積層配置され、
前記ローター車は、同軸上で一体的に回転する前記ローターと当該ローターより小径のローターピニオンとからなり、
前記カム車は、同軸上で一体的に回転するカム歯車と前記カムからなり、
前記一つ以上の伝達車は、前記ローターピニオンと噛合する伝達歯車と、当該伝達歯車より小径で、前記カム歯車と噛合するピニオンとを含み、前記伝達歯車の回転運動を当該ピニオンに伝達し、
当該ローターと、前記ローター車の一側にある前記カム車の前記カム歯車とが軸線方向で対面し、
前記ロータリーエンコーダーは、前記ローターの表面の所定位置と、前記カム歯車の表面の所定位置とが軸線方向で一致した状態を検出する、
ことを特徴とする流体輸送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸線方向を上下方向とするとともに、前記ローター車が前記カム車の下方に積層されていることとして、
前記ロータリーエンコーダーは、前記円盤状のローターの上下両面を連絡する孔と、前記カム歯車の下面に配置された反射板と、発光部と、受光部とを含んで構成され、
前記発光部は、ローターの下面に向けて光を上方に照射し、
前記受光部は、前記照射された光が前記孔を通過しつつ前記反射板にて反射されて再度発光部側に戻ってきた際に、当該反射光を受光して所定の信号を出力する、
ことを特徴とする流体輸送装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ローター車と前記カム車との層間に前記伝達車が同軸上に積層されているとともに、当該伝達車の前記伝達歯車には、上下両面を連絡する孔が形成され、
前記ロータリーエンコーダーは、当該伝達歯車の孔をさらに含み、
前記受光部は、前記照射された光が前記ローター車の孔と前記伝達車の孔の双方を通過しつつ前記反射板にて反射されて再度発光部側に戻ってきた際に、当該反射光を受光して所定の信号を出力する、
ことを特徴とする流体輸送装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記軸線方向を上下方向とするとともに、前記ローター車が前記カム車の下方に積層されていることとして、
前記ロータリーエンコーダーは、前記円盤状のローターの上下両面を連絡する孔と、前記カム歯車の上下両面を連絡するスリットと、発光部と、受光部とから構成され、
前記発光部と、前記受光部は、前記積層状態にある前記ローターと前記カム歯車とを軸線に沿って挟持するように対面して配置され、
前記受光部は、前記発光部からの照射光が前記ローターの孔と前記カム車のスリットの双方を通過してきた際に、当該照射光を受光して所定の信号を出力する、
ことを特徴とする流体輸送装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記ローター車と前記カム車との層間に前記伝達車が同軸上に積層されているとともに、当該伝達車の前記伝達歯車には、上下両面を連絡する孔が形成され、
前記ロータリーエンコーダーは、当該伝達歯車の孔をさらに含んで構成され、
前記受光部は、前記発光部からの照射光が前記ローターの孔と、前記伝達歯車の孔と、前記カム車のスリットとを通過してきた際に、当該照射光を受光して所定の信号を出力する、
ことを特徴とする流体輸送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記カムが一定の速度で回転するように前記動力部を制御するとともに、前記ロータリーエンコーダーからの信号に基づいて前記カムの回転角度位置を特定するための制御部を備え、当該制御部は、前記カムが所定の回転角度位置にあるときは、当該カムの回転速度を速めるように前記動力部を制御することで、前記カムが前記所定の回転角度にあるときは、前記押圧領域での流体移動が停止されることを特徴とする流体輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24104(P2013−24104A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158730(P2011−158730)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)