説明

流体輸送駆動ユニット、および流体輸送駆動ユニットの制御プログラム

【課題】流体輸送装置において、弾性チューブの口径など流体輸送装置が備える部品の個体差により設定された吐出量の流体を正確に吐出できない場合がある。
【解決手段】流体輸送装置は、流体輸送カートリッジおよび流体輸送駆動ユニットを備える。流体輸送駆動ユニットは、装着された流体輸送カートリッジの輸送路を満たす流体を、輸送路の吐出口へ送出する駆動機構を動作させる駆動部と、流体輸送カートリッジごとに設定された特性値を受け付ける受付部と、受付部が受け付けた特性値に基づいて駆動部を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体輸送駆動ユニット、および流体輸送駆動ユニットの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カムの回転により弾性チューブを複数のフィンガーにより流体の上流側から下流側に向かって順次押圧することで、流体を弾性チューブを介して輸送する蠕動駆動方式の流体輸送装置が開示されている。
特許文献1 特開2011−111989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような流体輸送装置では、設定された吐出量の流体を弾性チューブを介して吐出している。しかしながら、弾性チューブの口径など流体輸送装置が備える部品の個体差により設定された吐出量の流体を正確に吐出できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る流体輸送駆動ユニットは、装着された流体輸送カートリッジの輸送路を満たす流体を、輸送路の吐出口へ送出する駆動機構を動作させる駆動部と、流体輸送カートリッジごとに設定された特性値を受け付ける受付部と、受付部が受け付けた特性値に基づいて駆動部を制御する制御部とを備える。
【0005】
上記流体輸送駆動ユニットにおいて、特性値は、駆動部の駆動量に対する流体の吐出量のばらつきを補正する補正値でもよい。特性値は、輸送路を構成する弾性チューブの個体差に基づくばらつきを補正する補正値でもよい。
【0006】
上記流体輸送駆動ユニットにおいて、駆動部は、弾性チューブを外部から押圧する押圧ピンを変位させるカム体であり、制御部は、補正値に基づいてカム体の回転量を制御してもよい。
【0007】
上記流体輸送駆動ユニットは、カム体を収容するとともに、カム体の回転中心に対して円弧形状を有し、流体輸送カートリッジに対する位置決めをする位置決め部を備えてもよい。上記流体輸送駆動ユニットは、弾性チューブの圧力を計測する圧力センサを備えてもよい。上記流体輸送駆動ユニットにおいて、制御部は、圧力センサの出力に基づいて駆動部を制御してもよい。
【0008】
上記流体輸送駆動ユニットは、流体輸送駆動ユニットが装着される被検体の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、制御部は、生体情報に基づいて駆動部を制御してもよい。
【0009】
上記流体輸送駆動ユニットは、無線を介して駆動部を制御するための設定条件を取得する通信部を備え、制御部は、設定条件に基づいて駆動部を制御してもよい。
【0010】
本発明に係る流体輸送駆動ユニットの制御プログラムは、装着された流体輸送カートリッジに設定された特性値を受け付ける受付ステップと、流体輸送カートリッジの輸送路を満たす流体を吐出口へ送出する駆動機構を動作させる駆動部を、受付ステップで受け付けた特性値に基づいて制御する制御ステップとをコンピュータに実行させる。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る流体輸送装置の利用形態の一例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る流体輸送装置の上面図である。
【図3】本実施形態に係る流体輸送カートリッジの内部構造の概略図である。
【図4A】切替弁における流体の切り替えについて説明するための模式図である。
【図4B】切替弁における流体の切り替えについて説明するための模式図である。
【図4C】切替弁における流体の切り替えについて説明するための模式図である。
【図4D】切替弁における流体の切り替えの変形例について説明するための模式図である。
【図5】流体輸送駆動ユニットの上面図である。
【図6A】流体輸送駆動ユニットが備えるカムの概観斜視図である。
【図6B】押圧ピンの半球面およびカム体のテーパ面について説明するための模式図である。
【図7】流体輸送駆動ユニットの機能ブロックを示す図である。
【図8】制御部による流体の吐出制御についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る流体輸送装置300の利用形態の一例を示す図である。流体輸送装置300は、例えば犬、猿などの被検体である実験用動物が装備している実験用着衣310に固定される。流体輸送装置300は、予め定められた設定条件により定められた設定吐出量ずつ薬液等の流体を実験用動物の体内へ注入する。設定条件は、吐出開始時刻、単位時間あたりの吐出量を示す吐出割合、吐出時間、吐出間隔などの条件としてプログラム化されている。また、必要に応じて設定条件は、無線通信を介して遠隔操作により変更されうる。
【0015】
流体としては、例えば、薬液、生理食塩水、栄養液などの液体に限らず、吐出させたい成分を含んだゲル、ガスなどであってもよい。また、流体輸送装置300は、中型の実験用動物またはペットが装着したまま活動できる程度の大きさであるので、装着対象は実験用動物に限らず、人体へも応用できる。流体輸送装置300を人体に装着することにより、例えば、血管、筋肉等、生体組織に対して計画的または定期的に薬液を投与できる。
【0016】
図2は、流体輸送装置300の上面図である。流体輸送装置300は、流体輸送カートリッジ100および流体輸送駆動ユニット200を備える。流体輸送装置300は、2種類の流体を選択的に吐出できる。流体輸送カートリッジ100は、流体輸送駆動ユニット200に対して着脱可能に固定される。流体輸送カートリッジ100は、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102、および流体吐出口部103を備える。第1流体注入口部101は、第1流体を収容する外部の第1リザーバーに接続される。第2流体注入口部102は、第2流体を収容する外部の第2リザーバーに接続される。流体吐出口部103は、実験用動物の体内に第1流体または第2流体を注入するための注入チューブに接続される。
【0017】
流体輸送駆動ユニット200は、カムユニット210を備える。カムユニット210は、回転駆動するカム体212およびカム体212を収納するカムカバー214を有する。カムユニット210は、第1流体または第2流体を第1流体注入口部101または第2流体注入口部102から流体吐出口部103へ導く駆動機構である。また、流体輸送駆動ユニット200のカムユニット210は、流体輸送カートリッジ100に対する位置決め部としても機能する。カムユニット210のカムカバー214は、回転中心に対して円弧形状を有し、流体輸送カートリッジ100を固定する場合に流体輸送駆動ユニット200に対して流体輸送カートリッジ100を位置決めする。
【0018】
さらに、流体輸送駆動ユニット200は、実験用動物に関する生体情報を取得するための入力端子260を備える。生体情報としては、例えば実験用動物の血圧に関する情報、心電図に関する情報である。生体情報は、流体の吐出制御に用いてよい。なお、生体情報に基づいて流体の吐出制御を行わないのであれば、入力端子260は備えなくてもよい。また、流体輸送駆動ユニット200は、流体輸送カートリッジ100を固定するための第1フック205および第2フック206を備える。第1フック205は、流体輸送カートリッジ100の第1流体注入口部101と第2流体注入口部102との間の一辺110aを固定する。第2フック206は、流体輸送カートリッジ100の流体吐出口部103が設けられる一辺110bを固定する。また、流体輸送カートリッジ100と流体輸送駆動ユニット200とはロック部154により固定される。このように、ロック部154とともに、二辺において流体輸送カートリッジ100が固定されることで、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に対して脱落することを防止できる。また、流体輸送カートリッジ100を取り外す場合には、ロック部154を解除し、例えば右手の親指で第1フック205を押さえ、かつ右手の親指以外の指で第2フック206を押さえながら、左手で流体輸送カートリッジ100を取り外すことができる。よって、流体輸送カートリッジ100を流体輸送駆動ユニット200から容易に取り外すことができる。このように、流体輸送装置300が、第1フック205、第2フック206、およびロック部154などの異なる固定機能を有することで、猿などの霊長類に流体輸送装置300が装着される場合に、霊長類の手遊びなどに起因して流体輸送カートリッジ100が脱落することを防止できる。
【0019】
図3は、流体輸送カートリッジ100の内部構造の概略図である。流体輸送カートリッジ100は、外装部材110、第1弾性チューブ111、第2弾性チューブ112、切替弁130、ねじ軸134、第3弾性チューブ113、および複数の押圧ピン140を備える。外装部材110は、第1弾性チューブ111、第2弾性チューブ112、切替弁130、ねじ軸134、第3弾性チューブ113、および複数の押圧ピン140を収容する。外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面とは反対の外向面が少なくとも透明である。また、外装部材110には、流体輸送駆動ユニット200に固定するためのロック部154が設けられている。流体輸送カートリッジ100の内向面または外向面側から見た外形は、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102および流体吐出口部103を除く部分において略矩形であり、流体輸送駆動ユニット200に対して矩形の二辺にそれぞれ固定される。その二辺は、第1流体注入口部101および第2流体注入口部102が設けられ、第1流体注入口部101と第2流体注入口部102との間の一辺110a、および流体吐出口部103が設けられる一辺110bである。外装部材110は、一辺110aに、第1フック205が固定される第1固定受け部116aを有する。また、外装部材110は、一辺110bに、第2フック206が固定される第2固定受け部116bを有する。
【0020】
第1弾性チューブ111は、外装部材110に形成された第1溝121に沿って配置され、第1流路を構成する。第1弾性チューブ111の一端は、第1流体注入口部101に接続され、他端は、切替弁130に接続される。第1弾性チューブ111は、第1リザーバーから第1流体注入口部101を介して注入された第1流体を切替弁130に輸送する。第2弾性チューブ112は、外装部材110に形成された第2溝122に沿って配置され、第2流路を構成する。第2弾性チューブ112の一端は、第2流体注入口部102に接続され、他端は、切替弁130に接続される。第2弾性チューブ112は、第2リザーバーから第2流体注入口部102を介して注入された第2流体を切替弁130に輸送する。第3弾性チューブ113は、外装部材110に形成された第3溝123に沿って配置され、第3流路を構成する。第3弾性チューブ113の一端は、切替弁130に接続され、他端は流体吐出口部103に接続される。第3弾性チューブ113は、切替弁130を介して流入された第1流体または第2流体を流体吐出口部103まで輸送する。なお、第1流体注入口部101、第2流体注入口部102、および流体吐出口部103は、簡易着脱方式の一つであるルアーロック方式のコネクタでもよい。
【0021】
切替弁130は、第1流体および第2流体のいずれか一方を流体吐出口部103に導くための機構である。切替弁130は、シリンダ131、ピストン132、並びにOリング133a、133bおよび133cを備える。シリンダ131は、第1弾性チューブ111、第2弾性チューブ112、および第3弾性チューブ113に接続される。ピストン132は、シリンダ131の内部にOリング133a、133bおよび133cを介して嵌合して、第1流体を第1弾性チューブ111から第3弾性チューブ113へ導く第1状態と、第2流体を第2弾性チューブ112から第3弾性チューブ113へ導く第2状態との間で変位する。ねじ軸134は、ピストン132の内部に嵌合され、ピストン132、並びにOリング133a、133bおよび133cとともにボールねじを構成する。ねじ軸134が軸中心に回転することに応じて、ピストン132並びにOリング133a、133bおよび133cがシリンダ131の内壁に沿って摺動し、第1状態および第2状態の間で変位する。
【0022】
ピストン132は、検知体135を備える。検知体135は、シリンダ131に形成された開口を介して、外装部材110の内向面に形成された開口から突出している。そして、流体輸送駆動ユニット200が備える位置センサが検知体135を検知することで、ピストン132の位置が検知される。検知結果は、流体輸送駆動ユニット200に提供され、流体輸送駆動ユニット200が備えるLED表示部208が検知結果を表示する。ユーザは、LED表示部208の状態を目視することで、第1流体または第2流体のいずれか一方が吐出対象の流体として選択されているかを確認できる。また、Oリング133a、133bおよび133cは、例えば、有色シリコンで構成されており、ピストン132が第1状態または第2状態にあるかを視覚的に確認するための位置マークとしても機能する。ここで、シリンダ131は、外装部材110の外向面と同様に透明である。したがって、ピストン132に設けられたOリング133a、133bおよび133cは、外装部材110の外側から目視できる。よって、ユーザは、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態で、Oリング133a、133bおよび133cを目視することで、ピストン132が第1状態または第2状態にあるかを確認できる。つまり、ユーザは、Oリング133a、133bおよび133cを目視することで、吐出対象の流体が、第1流体なのか第2流体なのかを確認できる。
【0023】
また、外装部材110は、第3溝123の流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面側の流体吐出口部103の近傍に挿通孔160を有する。挿通孔160には、第3弾性チューブ113の圧力を計測するための圧力検出用のピンが挿通される。さらに、外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に装着された場合にユニット側の位置決め部を兼ねるカムユニット210に対向する位置に、カムユニット210との位置決め部を兼ねるカム収容開口150を有する。カム収容開口150は、カムユニット210の外周に接する貫通口である。外装部材110は、流体輸送駆動ユニット200に対向する内向面の対角線上に位置する二つの角部付近に、内向面から突出している突起部115aおよび115bを有する。突起部115aおよび115bは、流体輸送駆動ユニット200に設けられた固定孔に嵌合される。これにより、流体輸送カートリッジ100と流体輸送駆動ユニット200との位置ずれが抑制される。さらに、外部部材110は、貫通口152を有する。流体輸送駆動ユニット200に設けられた凸部が貫通口152に嵌合する。
【0024】
複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113を外部から押圧して流体の輸送路を狭窄する第1位置と、狭窄しない第2位置との間で変位する押圧部の一例である。複数の押圧ピン140は、外装部材110に形成されたピン案内溝124に沿って配置される。複数の押圧ピン140は、カムユニット210の回転中心に対して放射状かつ等間隔に、第3弾性チューブ113に対して流体の輸送方向に沿って配置される。複数の押圧ピン140の先端は、カム収容開口150に対してカム収容開口150の中心方向に向かって突出している。さらに、複数の押圧ピン140の先端は、カムユニット210の収容方向に対向する半球面を有する。このように半球面を有することで、カムユニット210がカム収容開口150に収容される場合に、複数の押圧ピン140の先端とカム体212の側面との間の摩擦を低減し、複数の押圧ピン140を規定された位置に確実に配置できる。
【0025】
さらに、ピン案内溝124に配置された状態の押圧ピン140を外向面側から見た場合に、押圧ピン140の先端部分は、先細りになるようにテーパ面を有する。これにより、複数の押圧ピン140を、狭い取り付けスペースに放射状に配置できる。さらに、押圧ピン140の先端が先細り形状なので、カム体212と押圧ピン140との接触面積を小さくでき、カム体212が回転駆動する場合の摺動抵抗を低減できる。また、カム収容開口150は、カムユニット210の回転中心に対して円弧形状を有している。これにより、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態において、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とを一致させることができる。そして、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とが一致しているので、カムユニット210がカム収容開口150に収容された状態で回転駆動した場合に、流体輸送カートリッジ100がカムユニット210に対して位置ずれすることを防止できる。さらに、カム収容開口150の円弧形状の中心と、カムユニット210の回転中心とが一致しているので、カム体212の回転駆動に応じて複数の押圧ピン140のそれぞれが順次第3弾性チューブ113を均等の力で押圧できる。したがって、カム体212の駆動に応じて、正確に複数の押圧ピン140に第3弾性チューブ113を押圧させることができる。これにより、流体を設定吐出量だけ正確に吐出させることができる。
【0026】
ここで、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態において、複数の押圧ピン140は、カム体212の駆動に応じて、放射方向に沿って第3弾性チューブ113を外部から押圧して流体の輸送路を狭窄する第1位置と、狭窄しない第2位置との間で変位し、流体を上流側から下流側へ輸送する。言い換えれば、複数の押圧ピン140は、カム体212の駆動に応じて、第3弾性チューブ113を流体の上流側から下流側へ順次押圧することで第3弾性チューブ113を蠕動させて、流体を上流側から下流側へ輸送する。
【0027】
一方、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200から取り外された状態、つまり、カム収容開口150がカムユニット210を収容していない状態において、複数の押圧ピン140は、第3弾性チューブ113を押圧していない。言い換えれば、複数の押圧ピン140は、カム収容開口150がカムユニット210を収容していない状態において、第3弾性チューブ113の弾性力により流体の輸送路を狭窄しない第2位置に位置している。これにより、流体輸送装置300を使用しない場合には、流体輸送カートリッジ100を流体輸送駆動ユニット200から取り外しておくことで、第3弾性チューブ113が複数の押圧ピン140のいずれによっても押下されていない状態を維持できる。したがって、第3弾性チューブ113が複数の押圧ピン140により押下された状態が継続することで、第3弾性チューブ113の経年劣化が進行することを抑制できる。
【0028】
また、複数の押圧ピン140を押圧する駆動機構であるカムユニット210が流体輸送駆動ユニット200側に設けられている。カムユニット210は、設定された吐出量だけ流体を正確に吐出させるために正確に回転することが要求される。カムユニット210が流体輸送カートリッジ100側に設けられる場合、流体輸送カートリッジ100の装着ごとにカムユニット210を予め定められた位置に正確に固定することが要求される。しかし、カムユニット210を予め定められた位置に正確に固定することは難しい。したがって、カムユニット210を流体輸送駆動ユニット200側に設けることで、流体輸送カートリッジ100の装着ごとにカムユニット210が位置ずれすることを防止できる。これにより、流体輸送カートリッジ100の装着ごとに流体の吐出量にばらつきが生じることを防止できる。
【0029】
さらに、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に対して着脱できる。これにより、流体輸送カートリッジ100を消耗品として適宜交換できる。よって、例えば、一定回数の使用ごとに流体輸送カートリッジ100を交換することで、流体輸送カートリッジ100の清潔さを維持できる。
【0030】
図4A、図4Bおよび図4Cは、切替弁130における流体の切り替えについて説明するための模式図である。シリンダ131は、第1流路に接続される第1流路口136、第2流路に接続される第2流路口137、および第3流路に接続される第3流路口138を有する。ピストン132は、外周に沿ってOリング133aおよびOリング133bとの間に円環状の第1流路溝132a、およびOリング133bとOリング133bとの間に第2流路溝131bを有する。
【0031】
図4Aに示すように、第1流路口136、第2流路口137および第3流路口138がOリング133a、133bおよび133cにより分離され、第1流路溝132aおよび第2流路溝132bに対向する位置にない場合、第1流路および第2流路のいずれの流路も第3流路に接続されない。したがって、第1流体および第2流体のいずれの流体も第3流路に吐出されない。一方、図4Bに示すように、ピストン132並びにOリング133a、133bおよび133cがシリンダ131内を摺動して、第1流路溝132aが第1流路口136および第3流路口138に対向する位置に移動した場合、つまりOリング133aとOリング133bとの間に第1流路口136および第3流路口138が位置した場合、第1流路および第3流路が接続される。これにより、矢印181で示すように第1流体が第1流路から第3流路に吐出される。つまり、図4Bに示すピストン132並びにOリング133a、133bおよび133cの状態が、第1流体を第1弾性チューブ111から第3弾性チューブ113へ導く第1状態の一例である。また、図4Cに示すように、ピストン132がシリンダ131内を摺動して、第2流路溝132bが第2流路口137および第3流路口138に対向する位置に移動した場合、つまりOリング133bとOリング133cとの間に第2流路口137および第3流路口138が位置した場合、第2流路および第3流路が接続される。これにより、矢印182に示すように、第2流体が第2流路から第3流路に吐出される。つまり、図4Cに示すピストン132並びにOリング133a、133bおよび133cの状態が、第2流体を第2弾性チューブ112から第3弾性チューブ113へ導く第2状態の一例である。
【0032】
なお、ピストン132に設けられ、シリンダ131の外部に突出している検知体135は、図4A、図4B、図4Cに示すように、ピストン132の移動に応じて、移動する。したがって、位置センサにより検知体135の位置を検出することで、ピストン132の位置を検出することができる。なお、図4Dに示すように、切替弁130は、Oリング133a、133b、133cおよび133dを有し、ピストン132は、外周に沿ってOリング133aおよびOリング133bとの間に円環状の第1流路溝132a、およびOリング133cとOリング133dとの間に第2流路溝131bを有してもよい。また、切替弁130は、第1流路内並びに第2流路内に逆止弁構造を設けることで構成してもよい。
【0033】
図5は、流体輸送駆動ユニット200の上面図である。流体輸送駆動ユニット200の上面は、流体輸送カートリッジ100が装着される装着面202と、吐出対象の流体の情報、流体輸送駆動ユニット200の駆動状態などを表示するLED表示部208が設けられる表示面201とを含む。装着面202は、表示面201より下面側に位置する。つまり、表示面201は、装着面202により上面側に突出している。また、装着面202には、カムユニット210が突出して設けられている。さらに、装着面202には、カムユニット210の回転中心に対して円弧形状を有する凸部220が突出して設けられている。そして、装着面202に流体輸送カートリッジ100が装着された状態において、流体輸送カートリッジ100の外向面と表示面201とが略面一となる。また、流体輸送駆動ユニット200は、装着面に202に流体輸送カートリッジ100に設けられた突起部115aおよび115bが嵌合する固定孔201aおよび201bを有する。なお、流体輸送駆動ユニット200は、装着面202上にシリコンゴムなどで構成されたパキンゴムシートを有してもよい。パッキンゴムシートは、流体輸送駆動ユニット200に液体輸送カートリッジ100が装着された状態で、流体輸送駆動ユニット200の装着面と、液体輸送カートリッジ100の内向面との間におけるパッキン構造として機能する。これによりパッキンゴムシートは、流体輸送駆動ユニット200に対して防滴機能を発揮する。
【0034】
流体輸送駆動ユニット200は、駆動軸230を備える。駆動軸230は、ねじ軸134のギアに嵌合されるギア230aを有する。駆動軸230のギア230aは、流体輸送駆動ユニット200の装着面202に形成されたギア開口203から外部に露出している。流体輸送駆動ユニット200は、さらに、ピストン132の位置を検出するための位置センサ240aおよび240bを備える。位置センサ240aおよび240bは、流体輸送カートリッジ100の装着面202に形成されたセンサ開口204から外部に露出している。位置センサ240aまたは240bは、フォトインタラプタによって構成され、発光部241aまたは240bと受光部242aまたは242bとを有する。発光部241aまたは241bが発光する赤外光、可視光などの光を受光部242bまたは242bが受光する。そして、受光部242aまたは242bの光の受光状態に応じてピストン132の位置を検出する。例えば、発光部241aが発光したされた光が検知体135により妨げられて、受光部242aにより受光できない場合、ピストン132は第1状態にある。一方、発光部241bが発光した光が検知体135により妨げられて、受光部242bにより受光できない場合、ピストン132は第2状態にある。したがって、受光部242bまたは242bが光を受信しているか否かに基づいて、ピストン132が第1状態または第2状態にあるかが判断される。
【0035】
また、流体輸送駆動ユニット200は、第3弾性チューブ113の圧力を導出する圧力検出用のピン250を備える。ピン250は、装着面202から突出している。そして、流体輸送カートリッジ100が装着された場合、流体輸送カートリッジ100の外装部材110に形成された挿通孔160を介してピン250の先端は、第3弾性チューブ113に接触する。これにより、ピン250は、第3弾性チューブ113の内部圧力に対応する応力を流体輸送駆動ユニット200の内部に配置された圧力センサに伝達する。圧力センサは、応力に基づいて第3弾性チューブ113の内部を流れる流体の圧力を間接的に計測する。言い換えれば、圧力センサは、応力に基づいてポンプ吐出に伴う第3弾性チューブ113内の内部圧力を計測する。
【0036】
図6Aは、流体輸送駆動ユニット200が備えるカムユニット210の概観斜視図である。カムユニット210は、カム体212およびカムカバー214を有する。カム体212は、複数の押圧ピン140を順次押圧する。カムカバー214は、カム体212の一部分を覆う。カムカバー214は、カム開口211を有し、カム開口211からカム体212が露出している。カム体212は、カム開口211から露出した部分において、複数の押圧ピン140と接触する。流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された場合、カムカバー214の外周面213が、カム収容開口150の内周面と嵌合する。これにより、カムユニット210が流体輸送カートリッジ100に対して固定される。また、カムカバー214の外周面213は、カムカバー214の上面216に向かって外周面213の径が小さくなるテーパ面215を有する。このようにカムカバー214がテーパ面215を有することで、カムユニット210がカム収容開口150に収容され易くなる。また、カム体212の外周面は、カムカバー214のテーパ面215に沿ったテーパ面217を有する。さらに、上記の通り、複数の押圧ピン140の先端141は、カムユニット210の収容方向に対向する半球面を有する。このようにカム体212がテーパ面構造および複数の押圧ピン140が半球面構造を有することで、カムユニット210がカム収容開口150に収容される場合に、図6Bに示すように、複数の押圧ピン140がカム体212のテーパ面217に沿って押下されながら、複数の押圧ピン140が流体輸送カートリッジ100の内向面に対して平行な状態を維持しながら、カムユニット210の回転中心に対して放射状に摺動しやすくなる。これにより、流体輸送カートリッジ100の着脱を容易にできる。また、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に装着された状態において、複数の押圧ピン140を規定された位置に正確に配置できる。
【0037】
図7は、流体輸送駆動ユニット200の機能ブロックを示す図である。流体輸送駆動ユニット200は、制御部10、カム駆動部20、ピストン駆動部30、ピストン位置情報取得部40、チューブ圧力情報取得部50、生体情報取得部60、制御情報格納部70、受付部80、および双方向通信部90を備える。
【0038】
カム駆動部20は、装着された流体輸送カートリッジ100の流路を満たす流体を流体吐出口部103へ送出するカム体212を動作させる。ピストン駆動部30は、吐出させる流体を切り替える場合に、切替弁130のピストン132を摺動させるべく、駆動軸230を動作させる。カム駆動部20およびピストン駆動部30は、例えば、ステッピングモータまたはギヤードモータである。
【0039】
ピストン位置情報取得部40は、ピストン132が第1状態にあるか第2状態にあるかを示すピストン132の位置情報を取得すべく、位置センサ240aおよび240bから赤外線などの光の受光状態を取得する。チューブ圧力情報取得部50は、圧力検出用のピン250を介して第3弾性チューブ113の内部圧力に関する圧力情報を取得する。生体情報取得部60は、入力端子260を介して実験用動物の血圧に関する情報、血糖値に関する情報、心電図に関する情報などの生体情報を取得する。なお、生体情報取得部60は、無線を介して生体情報を取得してよい。制御情報格納部70は、制御部10がカム駆動部20またはピストン駆動部30にカム駆動信号またはピストン駆動信号を出力するために参照される設定条件などの制御情報を格納する。設定条件は、吐出開始時刻、単位時間あたりの吐出量を示す吐出割合、吐出時間、吐出間隔などである。設定条件は、第1流体および第2流体ごとにある。受付部80は、外部接続端子として機能し、パーソナルコンピュータなどの外部入力装置から設定条件などの入力を受け付ける。双方向通信部90は、外部の無線端末と無線を介して双方向通信する。設定条件は、双方向通信部90を介して無線により外部の無線端末から受け付けられてもよい。また、双方向通信部90は、無線により外部の無線端末に対して生体情報または設定条件に関する情報などを送信してもよい。
【0040】
制御部10は、設定条件に基づいて、吐出対象の流体の流路側にピストン132の位置を合わせるべく、ピストン駆動部30にピストン駆動信号を出力する。制御部10は、ピストン位置情報取得部40を介して取得するピストン132の位置情報に基づいてピストン132が吐出対象の流体の流路側の位置にあるかどうかを判断する。制御部10は、ピストン132が吐出対象の流路側の位置にある場合、設定条件に基づく吐出量の流体を吐出させるべく、カム駆動信号をカム駆動部20に出力する。これにより、流体輸送装置300は、2種類の流体を選択的に設定吐出量だけ吐出できる。例えば、流体輸送装置300は、2種類の薬液を選択的に吐出できる。また、流体輸送装置300は、1種類の薬液を設定吐出量だけ吐出した後、生理食塩水を設定吐出量だけ吐出することで流体輸送カートリッジ100の流体吐出口部103に接続された輸送路をフラッシングできる。
【0041】
また、制御部10は、圧力検出用のピン250並びに圧力センサにて計測された出力を、チューブ圧力情報取得部50を介して取得し、取得した出力に基づいてカム駆動部20を制御する。例えば、流体を注入している実験用動物の血管が詰まった場合には、制御部10は、流体の吐出を停止すべきである。そこで、制御部10は、チューブ圧力情報取得部50からの圧力情報に基づいて第3弾性チューブ113の圧力状態を監視する。そして、制御部10は、第3弾性チューブ113の圧力が予め定められた閾値以上となった場合、流体を注入している実験用動物の血管が詰まったなど何らかの異常が発生したと判断して、流体の吐出を停止する。
【0042】
ところで、流体輸送装置300が吐出する流体の吐出量は、流体輸送カートリッジ100に装着される第3弾性チューブ113の内径などに依存する。しかし、第3弾性チューブ113の内径は、個体差がある。また、流体輸送カートリッジ100に装着される状態によっても、それらの内径は変化する。つまり、流体輸送カートリッジ100ごとに、それらの内径は異なる。したがって、カム体212の回転量が同じでも、流体輸送装置300が吐出する流体の吐出量は、流体輸送カートリッジ100ごとに異なる。よって、流体輸送装置300が吐出する流体の吐出量の精度を維持するためには、流体輸送カートリッジ100ごとに設定条件を補正することが好ましい。
【0043】
そこで、受付部80または双方向通信部90は、装着された流体輸送カートリッジ100の特性値を受け付ける。特性値は、カム駆動部20の駆動量に対する流体の吐出量のばらつきを補正する流体輸送カートリッジ100ごとに設定された補正値である。特性値は、第3弾性チューブ113など流体輸送カートリッジ100が備える個々の部品の個体差に基づくばらつきを補正する補正値である。特性値は、流体輸送装置300を実際に駆動させ、設定された設定条件により吐出される流体の吐出量を計測し、設定吐出量と計測された吐出量との比較に基づいて設定されてもよい。カム駆動部20は、制御部10介して特性値を取得し、特性値に基づいてカム体212の回転量を補正する。これにより、制御部10からの制御項目が簡素化され、吐出量の誤差などのトラブルの発生を容易に発見できる。特性値に基づく補正値は制御部10内で生成し、制御部10がカム駆動部20に対して補正されたカム駆動信号を出力してもよい。
【0044】
例えば、設定吐出量に応じて単位時間あたりにカム駆動部20に出力すべき総パルス数が予め定められていたとする。この場合、制御部10は、設定吐出量に応じた単位時間あたりの総パルス数を特性値に基づいて補正する。そして、制御部10は、補正された総パルス数に応じたカム駆動信号をカム駆動部20であるステッピングモータに出力する。これにより、流体輸送カートリッジ100の個体差に応じて、カム体212の回転量を調整できる。よって、流体輸送カートリッジ100ごとの吐出量のばらつきを抑制できる。
【0045】
ここで、制御情報格納部70は、吐出量に応じた単位時間あたりに出力すべき総パルス数を示す吐出量関数または吐出量テーブルを格納してよい。また、制御情報格納部70は、特性値に応じた補正パルス数または補正係数を示す補正関数または補正テーブルを格納してよい。そして、受付部80が、装着された流体輸送カートリッジ100の特性値を受け付けると、制御部10は、受け付けられた特性値、吐出量関数または吐出量テーブル、および補正関数または補正テーブルに基づいて設定吐出量に応じた単位時間あたりの総パルス数を補正し、補正された総パルス数に応じたカム駆動信号をカム駆動部20に出力してよい。
【0046】
図8は、制御部10による流体の吐出制御についてのフローチャートを示す。制御部10は、受付部80を介して、設定条件、および装着された流体輸送カートリッジ100の特性値を取得する(S100)。ユーザは、例えば、流体輸送カートリッジ100に対して割り当てられた識別番号のうち特定の桁の番号を入力することで、特性値を受付部80を介して制御部10に提供してよい。次いで、制御部10は、制御情報格納部70に格納された補正関数または補正テーブルを参照して、特性値に対応する補正パルス数または補正係数を特定する(S102)。また、制御部10は、制御情報格納部70に格納された吐出量関数または吐出量テーブルを参照して、設定条件に示される設定吐出量に対応する単位時間あたりに出力すべき総パルス数を特定する(S104)。さらに、制御部10は、特定された総パルス数を、特定された補正パルス数または補正係数に基づいて補正する(S106)。例えば、制御部10は、総パルス数に対して補正パルス数を減算または加算することで、総パルス数を補正する。または、制御部10は、総パルス数に対して補正係数を乗算することで、総パルス数を補正する。あるいは、制御部10は、総パルス数を算出する吐出関数に含まれる係数に対して補正係数を、減算、加算、または乗算することで総パルス数を補正してもよい。制御部10は、補正された総パルス数に応じたカム駆動信号をカム駆動部20に出力する(S108)。これにより、流体輸送装置300が吐出する流体の吐出量の精度を維持できる。
【0047】
また、制御部10は、生体情報取得部60を介して取得した生体情報に基づいて流体の吐出を制御してよい。例えば、制御部10は、生体情報として実験用動物の血圧に関する血圧情報を定期的に取得する。そして、制御部10は、血圧情報に基づいて、実験用動物の血圧を一定に保つように、血圧を下げる薬液の吐出量、吐出タイミングを制御する。これにより、流体輸送装置300は、実験用動物の生体反応の変化に応じて薬液の投与を制御できる。生体情報は、生体電位、血流、体温、または加速度などの物理量であってもよい。また、双方向通信部90が、取得された生体情報を外部の無線端末に無線を介して配信してもよい。
【0048】
なお、本実施形態に係る流体輸送駆動ユニット200は、上述の流体の吐出に関わる各種処理を行う制御プログラムをインストールし、この制御プログラムをコンピュータに実行させることで、構成してよい。つまり、コンピュータに流体の吐出に関わる各種処理を行う制御プログラムを実行させることにより、制御部10、ピストン位置情報取得部40、チューブ圧力情報取得部50、生体情報取得部60、制御情報格納部70、および受付部80としてコンピュータを機能させることで、流体輸送駆動ユニット200を構成してもよい。また、流体輸送駆動ユニット200は、外部からの無線通信コマンドにより制御されてもよい。
【0049】
コンピュータはCPU、ROM、RAM、EEPROM(登録商標)等の各種メモリ、通信バス及びインタフェースを有し、予めファームウェアとしてROMに格納された処理プログラムをCPUが読み出して順次実行することで、流体輸送駆動ユニット200として機能する。
【0050】
以上、本実施形態に係る流体輸送装置300によれば、2種類の流体のリザーバーをセットすることができ、それぞれの流体に対して、吐出量、吐出スピード、吐出時間などの設定条件を設定できる。設定条件は、必要に応じて無線による遠隔制御により流体輸送装置300に送信できる。
【0051】
また、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200に対して着脱できる。よって、薬液などが注入される流体輸送カートリッジ100を適宜交換できるので、流体輸送カートリッジ100を常に清潔に保つことができる。そして、経年劣化に伴い弾性チューブのみを交換する場合には、弾性チューブの設置状態によって、弾性チューブのテンションが変わり、弾性チューブの内径が変わる可能性がある。しかし、本実施形態によれば、弾性チューブがすでに設置された状態の流体輸送カートリッジ100の交換により、弾性チューブの交換を実現できる。そして、流体輸送カートリッジ100ごとに設定された特性値に基づいて流体の吐出量を補正できる。よって、流体輸送カートリッジ100が備える弾性チューブの内径の個体差などにより流体の吐出量に誤差が生じることを防止できる。
【0052】
加えて、流体輸送駆動ユニット200側にカムユニット210が設けられている。よって、流体輸送カートリッジ100が流体輸送駆動ユニット200から取り外された状態では、複数の押圧ピン140がカム体212に押下されることに伴い、第3弾性チューブ113が複数の押圧ピン140により押下されることがない。したがって、第3弾性チューブ113が、複数の押圧ピン140により変形または圧迫されることにより経年劣化することを抑制できる。これより、流体の吐出量に誤差が生じることを抑制できる。
【0053】
さらに、複数の押圧ピン140の先端に半球面およびカム体212の側面にテーパ面を設けることで、流体輸送カートリッジ100の着脱を容易にできる。これにより、流体輸送カートリッジ100の交換作業を短期間で行うことができるので、実験用動物に対する負担を低減できる。これにより、流体輸送カートリッジ100の交換する場合に、実験用動物が安静状態を保つことができないことで、実験結果の精度が悪化することを防止できる。
【0054】
また、流体の切替は、流体ごとに形成された溝を有するピストン構造により実現している。よって、流体の切り替えに伴う各リザーバー内溶液のコンタミネーションの発生を防止できる。
【0055】
なお、上記の実施形態において、押圧部は、複数の押圧ピン140でなくてもよい。例えば、弾性チューブを外部から押圧して流体の輸送路を狭窄する第1位置と、狭窄しない第2位置との間で変位させる形状を有するカムを押圧ピンの代わりに用いてもよい。また、第3弾性チューブ113は直線状に配置され、直線状に配置された第3弾性チューブ113に沿って複数の押圧ピン140が直線状に配置されてもよい。この場合、複数の押圧ピン140は、円筒状の回転軸の外周に形成された螺旋状の突起部により順次押下されてよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 制御部
20 カム駆動部
30 ピストン駆動部
40 ピストン位置情報取得部
50 チューブ圧力情報取得部
60 生体情報取得部
70 制御情報格納部
80 受付部
90 双方向通信部
100 流体輸送カートリッジ
101 第1流体注入口部
102 第2流体注入口部
103 流体吐出口部
110 外装部材
111 第1弾性チューブ
112 第2弾性チューブ
113 第3弾性チューブ
130 切替弁
140 押圧ピン
150 カム収容開口
160 挿通孔
200 流体輸送駆動ユニット
205 第1フック
206 第2フック
210 カムユニット
250 ピン
300 流体輸送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された流体輸送カートリッジの輸送路を満たす流体を、前記輸送路の吐出口へ送出する駆動機構を動作させる駆動部と、
前記流体輸送カートリッジごとに設定された特性値を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記特性値に基づいて前記駆動部を制御する制御部と
を備える流体輸送駆動ユニット。
【請求項2】
前記特性値は、前記駆動部の駆動量に対する前記流体の吐出量のばらつきを補正する補正値である請求項1に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項3】
前記特性値は、前記輸送路を構成する弾性チューブの個体差に基づくばらつきを補正する補正値である請求項1または2に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項4】
前記駆動部は、前記弾性チューブを外部から押圧する押圧ピンを変位させるカム体であり、
前記制御部は、前記補正値に基づいて前記カム体の回転量を制御する請求項3に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項5】
前記カム体を収容するとともに、前記カム体の回転中心に対して円弧形状を有し、前記流体輸送カートリッジに対する位置決めをする位置決め部を備える請求項4に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項6】
前記弾性チューブの圧力を計測する圧力センサを備える請求項3から5のいずれか1項に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記圧力センサの出力に基づいて前記駆動部を制御する請求項6に記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項8】
前記流体輸送駆動ユニットが装着される被検体の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
前記制御部は、前記生体情報に基づいて前記駆動部を制御する請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項9】
無線を介して前記駆動部を制御するための設定条件を取得する通信部を備え、
前記制御部は、前記設定条件に基づいて前記駆動部を制御する請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の流体輸送駆動ユニット。
【請求項10】
装着された流体輸送カートリッジに設定された特性値を受け付ける受付ステップと、
前記流体輸送カートリッジの輸送路を満たす流体を吐出口へ送出する駆動機構を動作させる駆動部を、前記受付ステップで受け付けた前記特性値に基づいて制御する制御ステップと
をコンピュータに実行させる流体輸送駆動ユニットの制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29078(P2013−29078A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165699(P2011−165699)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(506207543)プライムテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】