説明

流体部品をクランプする装置

或る部品が硬質で脆い材料からなり、局部的に増大した応力によって破壊され得るならば、流体圧の下に該部品を維持するときには特別な注意が払われなければならない。本発明によれば、例えばシリコンまたはガラスからなる一つのこのような流体部品が、前記部品の外部形状に適合され且つ支持体の内部形状に適合された形状を有するシリコーンゴムからなる弾性体モールドの中に配置される。前記弾性体モールドは、その加圧側において、前記流体部品に向ってベベル加工される。前記支持体の組立ての際に、前記弾性体モールドは、相手方部品の突起によって変形され、均一に分布した内部応力を受け、その後に前記弾性体モールドは前記流体部品をその全高さに亘って取囲む。前記浮遊支持体は、許容できない如何なる局部的応力ピークおよび前記部品の如何なる変形も防止する。流体圧力が非常に小さい値から数百バールへと繰返し変動するとしても、当該支持体は流体からシールされる。該支持体は、小型の実施形態において、ガラスまたはシリコンからなる流体部品に特に適している。前記支持体は、医療技術の分野において、例えば噴射剤を伴わずにエアロゾルまたはミストを発生させるための小型噴霧器のノズルのために、および医薬的に活性な物質を含有する液体の無針皮下注射のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体部品、特にノズルを特に高圧領域にクランプするための装置に関する。特別な興味は、微細加工された部品,特に微細加工により製造されるべき微細ノズルのためのホルダにある。このようなノズルは、例えば、吸入に使用される噴射剤を含まない医薬エアロゾルを発生させるためのネブライザーにおいて使用される。
本発明の目的は、耐磨耗性で、硬質且つ一般に脆い材料からなる流体部品のクランピングを更に改善し、またホルダの信頼性を向上することである。
【背景技術】
【0002】
10μm未満のノズル孔を有する微細加工ノズルが、例えばWO94/07607およびWO99/16530に記載されている。それにより発生された吸入可能な液滴は、噴霧される液体の圧力が5MPa(50バール)〜40MPa(400バール)のときに約5μmの平均直径を有する。このノズルは、シリコンおよびガラスの薄いシートから作製されてよい。該ノズルの外径はミリメータ範囲内にある。典型的なノズルは、例えば、2枚のシートで製造された1.1mm×1.5mm×2.0mmの直方体からなっている。流体部品をクランプする本発明の装置を使用できる、噴射剤を含まないエアロゾルを発生させるためのネブライザーが、WO91/14468またはWO97/12687から公知である。
【0003】
流体部品の用語は、加圧流体に曝される部品であって、その圧力が該部品の内部(例えばノズルの孔)にも存在する部品を意味する。このような部品は、該部品の材料が許容不能な程度に崩壊または変形しないで機械的な力に耐え得るときには、それを硬質材料のホルダの中に圧入することによって耐圧気密性に維持されることができる。高圧においては、変形可能な材料(例えば銅)または大きな力でプレスできる硬質材料のシールが用いられる。脆い材料でできた部品の場合、該部品を耐圧気密にクランプするための既知の方法は、著しい労力および大きな注意を必要とする。この方法でクランプされた流体部品のサービス寿命を、何等かの信頼性をもって予測することは不可能である。
【0004】
米国特許第3,997,111号は、高速液体ジェットを発生させて、これを材料の切断、穿孔または加工に用いる液体ジェット切断装置を開示している。ノズル本体は円筒形であり、例えばサファイアまたはコランダムからなっている。設置リングがノズルキャリアの環状凹部の中に圧入され、ノズルキャリアに対してノズル本体をシールする。
【0005】
米国特許第4,313,570号は、水ジェット切断装置のためのノズルホルダを開示しており、ここではノズル本体が弾性材料のリングで取囲まれ、次いでホルダの凹部の中に装着される。この凹部は真直ぐな円筒形の形態である。該リングの断面は矩形である。凹部の外表面、並びにリングの外表面および内表面は、ノズル本体の軸に対して同心円的に配置され、相互に平行に且つノズル本体の軸に対して平行に配置される。
【0006】
WO97/12683は、流体圧力に曝される流体部品をクランプするための装置であって、耐磨耗性かつ硬質で、従って一般的に脆い材料からなる部品に適しており、また当該部品において材料の過大な局部的歪み応力を生じない装置を開示している。この流体部品は、該部品とその低圧側で接触するホルダの中に配置される。該流体部品は弾性体成形部品によって取囲まれ、その外部形状はホルダの内部形状に適合され、またその内部形状は流体部品の外部形状に適合される。この弾性部品は、前記流体部品の全外周を取囲む。該弾性部品の少なくとも一つの自由表面は、加圧流体に露出される。前記ホルダは内部に突起を有しており、その下に前記弾性体成形部品が押込まれるようになっている。前記弾性体成形部品においては、低い流体圧力でも充分に大きく、且つ弾性体成形部品に空間的に均一に分布した内部歪み応力を発生させるのは困難であることが立証されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この公知の装置は、中圧および高圧の流体に実質的に一定に曝されるときに、実質的に耐圧気密性であることが示されている。高いピーク値と非常に低い値との間で変動する交互に変化する流体圧に曝されるときには、この公知の装置は長期間の使用のために改良が必要とされる。
【0008】
従って、長期の使用において、鋭く変動する流体圧による負荷に曝されるときにも信頼性のある耐漏れ性を有する、流体部品をクランプするための装置を提供する問題が生じている。この必要とされる部品は、製造が安価で、且つ比較的容易に組立てできるものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題は、本発明に従って、変化する流体圧に長期間曝される流体部品をクランプルするための装置であって、その中に流体部品が配置されるホルダを備えた装置によって解決される。該ホルダは、前記流体部品とその低圧側で接触する。当該装置は、流体部品をその全外周を覆って取囲む弾性体成形部材を具備する。該弾性体成形部材の外部形状は前記ホルダの内部形状に適合され、また該弾性体成形部材の内部形状は前記流体部品の外部形状に適合される。この弾性体成形部材は、加圧流体に露出される少なくとも一つの自由表面を有している。前記ホルダは、高圧端を嵌合部材に固定されると共に、
当該装置の組立て前には、前記弾性体成形部材は、その流体圧に面する側が前記流体部品に向って斜めに面取りされ、
前記嵌合部材には、外部形状が前記ホルダの内部形状に適合され環状突起が設けられ、前記嵌合部材を用いて前記ホルダを組立てた後には、前記突起が前記ホルダの中に突出して前記弾性体成形部材を変形させ、その結果、前記弾性体成形部材に均一に分布された内部歪み応力が発生され、
前記嵌合部材上の容積は、前記面取り領域において前記弾性体成形部材から失われる容積に適合され、
前記ホルダを前記嵌合部材と共に組立てた後には、変形されて内部歪み応力を受けた前記弾性体成形部材が嵌合部材までの空間を殆ど全部満たす。
【0010】
前記弾性体成形部材は、その高圧端において凹部へと斜めに面取りされる。この面取りは、高圧端における実線(例えば円形、楕円系または矩形でよい)上の前記弾性体成形部材のカバー表面で開始する。該面取り面は、例えば一定の傾斜角度を有してよく、または該傾斜角度は方位角によって変化してもよい。後者の場合、直方体の流体力学部品の長編側に向う角度が、該直方体の流体力学部品の短辺側に向う角度よりも小さい方が好ましい。前記弾性体成形部材における面取り面と凹部との交線は、一定のレベルで延出してよく、または該交線は湾曲してもよい。
【0011】
前記嵌合部材上の突起は、好ましくは環状で且つ一定の幅であってよい。該突起の外部形状は、好ましくは前記ホルダの内部形状に適合される。更に、前記突起の内部形状は、前記流体部品の外部形状に適合されてよい。前記嵌合部材上の突起は、その外周上で一定の幅および一定の高さを有してよく、或いは、該突起は幅および/または高さが変動してもよい;例えば、直方体の流体部品の対向する二つの長辺側に位置する二つの領域において、直方体の流体部品の対向する二つの短辺側に位置する二つの領域におけるよりも高くてよい。この方法において、前記弾性体成形部材は、前記ホルダおよび嵌合部材が合体されるときに、幾つかの領域において異なる程度に変形してよく、前記弾性体成形部材における内部歪み応力の空間分布に影響してよい。弾性体成形部材における内部歪み応力は、その圧縮によってではなく、実質的に該弾性体成形部材の変形によって生じる。前記弾性体成形部材の変形、および前記弾性体成形部材における歪み応力の分布は、有限要素法(FEM)によって決定することができる。
【0012】
前記弾性体成形部材は、好ましくは射出成形部材として構成される。プレエラストマーが、泡のない状態で、ホルダおよび流体部品の外形に適合されたモールドの中に投入される。この種の弾性体成形部材は、或る程度、圧縮不能な液体のように挙動する。それは、ホルダおよび流体部品の中に正確にフィットする。該弾性体成形部材は、圧力端において流体圧に露出されるだけであり、ホルダおよび流体部品に当接する側では露出されない。弾性体成形部材は、流体部品に対する圧力補償を可能にする。弾性体成形部材は、低圧側に向う自由表面を有していない。弾性体成形部材は、例えば天然ゴム、またはシリコーンゴム、ポリウレタン、エテン−プロペンゴム(PEDM)、フッ素ゴム(FKM)、もしくはニトリル−ブタジエンゴム(NBR)のような合成ゴム、または対応するゴムからなっていてよい。
【0013】
流体部品は、耐磨耗性の硬質で一般に脆い材料[例えばシリコン、ガラス、セラミックス、宝石(例えばサファイア、ルビー、ダイアモンド)]、または耐磨耗性の硬質表面を備えた延性材料、例えばプラスチック、化学的にメタライズされたプラスチック、銅、硬質クロムメッキされた銅、青銅、アルミニウム、鋼、硬化表面を備えた鋼、物理的気相成長(PVD)または化学的気相成長(CVD)により製造された耐磨耗性表面[例えば窒化チタン(TiN)または金属および/またはプラスチック上の多結晶ダイアモンド]からなっていてよい。流体部品は、一つのピースまたは多くのピースで作製されてよく、これらピースは異なる材料からなってよい。流体部品はキャビティー、空隙またはチャンネル構造を含んでよい。空隙の中には、例えばフィルターまたは抗蒸発手段として作用する微細構造が存在してよい。チャンネルは、アトマイザーノズルのためのノズルチャンネルであってよい。アトマイザーノズルは、1以上のノズルチャンネルを含んでよく、それらの軸は相互に平行にまたは相互に傾斜して伸びてよい。例えば、二つのノズルチャンネルが存在し、それらの軸が一つの平面内にあり且つノズルの外側で交差するならば、発生する二つの流体ジェットはこれら軸の交叉点において合体して、流体は噴霧される。
【0014】
ホルダは、実際のところ、望ましい何れかの材料(好ましくは金属またはプラスチック)からなっていてよく、回転体または他の何れかの形態であってよい。ホルダは、例えばポット形状の回転体であってよく、これはその蓋の末端から始まる回転対称の凹部を含み、その軸は該回転体の軸に一致する。この凹部は、円筒形または円錐台の形状であってよく、該円錐台の直径の大きい端部は前記ホルダの蓋端に位置する。前記凹部の外表面は、ホルダの内部形状を形成する。それは、モールド体として、キャスティング体として、または材料を除去するように加工することによって(例えば機械加工、エッチング、腐蝕、削除により)製造されてよい。
嵌合部材は、金属またはプラスチックからなるものであってよい。
【0015】
前記弾性モールド体および前記流体部品を含むホルダは、前記嵌合部材と共に組立てられる。弾性体成形部材の面取りを含む側は、嵌合部材に面している。前記ホルダの縁部は前記嵌合部材上に載置される。前記流体部品は、好ましくは前記弾性体成形部材がホルダの凹部の中に挿入される前に、前記弾性体成形部材の中に押込まれてよい。前記ホルダは、前記嵌合物に対するネジ止め、糊漬け、溶接、カシメ、キャスティングまたはプレス嵌合またはスナップ嵌合によって、前記嵌合部材に取り付けられてよい。前記ホルダは、好ましくはユニオンナットによって前記嵌合部材に固定されてよい。
【0016】
好ましい実施形態において、前記嵌合部材は、それが前記ホルダに結合される領域における回転体として形成されてよい。高圧下にある流体は、例えば同軸的な嵌合部材のチャンネルを通して、前記ホルダに導かれる。流体は、流体部品におけるチャンネルに導入され、前記ホルダの基部領域にあるその低圧端において、流体部品を出て行く。流体圧力は弾性体成形部材上のデッドスペース容積内で作用する。本発明による装置は、以下の利点を有する。
【0017】
弾性体成形部材内の歪み応力は、ホルダの内部に形成された環状突起(組立ての際に弾性体成形部材がその下に押し込められる)によって既知の実施形態のホルダで生じる歪み応力よりも、空間的により均一に分布される。
弾性体成形部材内の歪み応力は、該成形部材自身の材料の性質だけでなく、前記面取りの結果として歪み応力のない前記弾性体成形部材から除去された容積に対する、前記嵌合部材上の突起容積の比率によって調節され得る。
流体部品は、歪み応力下にある前記弾性体成形部材によって、その完全な高さまで取囲まれる。
【0018】
本発明による装置は、最大圧力(40MPa以上)と最小圧力(約0.1MPa)の間の大きな差で変動する圧力での長期の使用において、耐圧気密性である。
内部歪み応力を受けた変形した弾性体成形部材と、前記ホルダに対面する嵌合部材の間のデッドスペース容積を小さく維持することができる。それは同時に、前記ホルダが前記嵌合部材に接合されるときの許容差を均等化するように働く。
前記ホルダを前記嵌合部材に接合する際の前記弾性体成形部材の制御された変形は、前記弾性体成形部材が前記流体部品の開口部を通し膨張するのを防止する。
【0019】
流体部品をクランプするための本発明による装置は、例えば、小型化された高圧アトマイザー(例えばW091/12687による)において、無針注射器(例えばW001/64268による)または眼科医薬製剤(例えばW003/002045による)の適用において使用される。この種の装置を用いて投与される医薬液体には、溶媒中に溶解された医薬物質が含まれてよい。適切な溶媒には、例えば、水、エタノール、またはそれらの混合物が含まれる。医薬物質の例には、ベロテック(berotec;フェノテロール臭素酸塩)、アトロベント (Atrovent;臭化イプラトロピウム)、ベロデュアル(Berodual;フェノテロール臭素酸塩と臭化イプラトロピウムの組合せ)、 サルブタモール(またはアルブテロール)、1−(3,5−ジヒドロキシ−フェニル−2−[[1−(4−ヒドロキシ−ベンジル)エチル]−アミノ]−エタノール−臭素酸塩)、コンビベント(Combivent)、オキシベント(Oxivent;臭化オキシトリピウム)、Ba679(臭化チオトロピウム)、BEA2180(ジ−(2−チエニル)グリコール酸−トロペノレスター)、フルニソリド(Flunisolid)、ブデソニド(Budesonid)等が含まれる。W097/01329またはW098/27959の中に例が見られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による装置を、図面を参照して、更に充分に説明する。
図1aは、凹部(2)を設けたポット形状のホルダ(1)を断面斜視図で示している。該ホルダの底部には、開口部(3)が設けられている。
図1bは、弾性体成形部材(4)、並びに二つの部分で構成され且つ弾性体成形部材の中に挿入されている直方体の流体部品(5)を、断面斜視図で示している。これら二つの部品の接触表面に、ノズル孔(6)まで延びるノズル構造が設けられる。高圧端における弾性体成形部材(4)の頂部表面は、弾性体成形部材の軸に対して垂直な環状領域(7)を形成している。弾性体成形部材の面取り面(8)は、該弾性体成形部材の頂部表面で始まって、流体部品の外部表面にまで延びる。
図1cは、孔(10)およびその弾性体成形部材に面する側に環状突起(11)を備えた嵌合部材(9)を、断面斜視図で示している。
【0021】
図2は、嵌合部材(21)上の突起(11)のもう一つの実施形態を、斜視図で示している。突起(11)は、対角線上で対向する二つの領域(22a,22b)が、対角線上で対向する二つの領域(23a,23b)よりも高い。ホルダが嵌合部材に結合されるときに、より高い領域(22a,22b)は、領域(23a,23b)よりも、弾性体成形部材を大きく変形させる。
【0022】
図3a、図4a、および図5aは、垂直に見た弾性体成形部材を示している。図3b、図4b、および図5bは、弾性体成形部材を通る断面を示している。弾性体成形部材は、立方体形状の流体部品のための立方体形状の凹部(31)を含んでいる。図3bの断面は、図3aにおける線A−Aに沿っており、線A−Aは、凹部(31)の長辺に対して垂直に延びている。図4bの断面は、図4aにおける線B−Bに沿っており、線B−Bは凹部(31)の短辺に対して垂直に延びている。図5bの断面は、図5aにおける線C−Cに沿っており、線C−Cは凹部(31)に対して対角線的に延びている。面取り面(8)と凹部(31)との交叉線(32)は、一定のレベルを延びている。面取り面(8)の傾斜角度(当該部品の主軸から測定)は、図3bにおいて最も大きく、図5bにおいて最も小さく、また図4bにおける傾斜角度は中間の値を有する。
【0023】
図6は、流体容器に装着されるホルダを通る断面を示している。ホルダ(1)は、その凹部の中に、流体部品(5)を備えた弾性体成形部材(4)を含んでいる。嵌合部材(9)が、ホルダの端部に配置される。嵌合部材(9)の突起(11)は、ホルダ(1)の凹部の中に突出し、弾性体成形部材(4)を変形させている。流体にさらされる弾性体成形部材の表面(61)は凸状であるが、変形した弾性体は流体部品のノズル構造にまでは広がらない。点線(64a)および(64b)は、該ホルダを組立てる前の面取り形成部(4)の輪郭を示している。デッドスペース容積(63)は、該ホルダを組立てる際の許容差を均等化するように働く;それは最小限に低減されている。該ホルダは、ユニオンナット(62)によって、嵌合部材(9)および流体のためのハウジング65に固定される。
【0024】
流体の流れ方向は矢印によって示されている。当該ホルダの低圧側端部は、ノズル孔(6)を含む表面に位置する。流体の高圧は、流体部品(5)のチャンネル構造内、デッドスペース容積(63)内、嵌合部材(9)の孔(10)内、および流体を収容するハウジング内で作用する。
【0025】
図7a、図7bおよび図7cは、本発明によるホルダを、斜線を付した断面で示しており、また図8a、図8bおよび図8cは、従来技術による実施形態を、斜線を付した断面で本発明と比較している。
図7aは、本発明によるホルダを組立てる前の面取り加工した弾性体成形部材(4a)を、その中に挿入された流体部品(5)と共に示している。この弾性体成形部材は、その外縁では流体部品と同じ高さであるが、凹部の流体部品と接触する領域ではそれよりも低い。弾性体成形部材はまだ未変形のままであり、内部歪み応力下にはない。図7bは、リング(71)を挿入して、弾性体成形部材に変形を生じさせ、弾性体成形部材の中に内部歪み応力を生じさせた後の状況を示している。この変形した弾性体成形部材は、流体部品の頂部縁にまで延出する。該弾性体成形部材の凸部は、流体部品の高さを越えて突出することは殆どない。図7cは、ホルダを組立てた後の、変形した弾性体成形部材を示している。挿入された突起(11)が、弾性体成形部材を変形させている。変形した弾性体成形部材と嵌合部材のベースの間には、小さいデッドスペース容積(63)が存在している。
【0026】
図8aは、従来技術によるホルダを組立てる前の(面取り加工なしの)弾性体成形部材(74a)を、その中に挿入された流体部品(5)と共に示している。この弾性体成形部材は、流体部品よりも低い。弾性体成形部材は未変形であり、内部歪み応力下にはない。図8bは、弾性体成形部材がホルダから落下するのを防止し、またはホルダの内側に摺動するのを防止するが、弾性体成形部材を変形させないリング(71)を追加した後の状態を示している。図8cは、環状突起(11)が設けられた嵌合部材(9)を使用して、ホルダを組立てた後の未変形の弾性体成形部材を示している。図8cのデッドスペース容積は、図7cにおけるデッドスペース容積(63)よりも大きい。
【実施例】
【0027】
実施例:小型アトマイザの搭載
この装置は、外径6.0mmおよび高さ2.6mmの鋼製の円筒形ホルダからなっている。それは円錐台形状の凹部を含んでおり、該円錐台の基部の内径は4.0mmである。該ホルダの底部は、直径08mmの穴を含んでいる。ホルダの底部は、前記孔の近傍において0.4mmの厚さを有している。
【0028】
シリコーンゴム製の弾性体成形部材の外形は円筒形状である。該円筒形は、それがホルダの中に挿入される前には、直径が4.2mmで、その外表面上の高さは2.1mmである。それは、幅1.3mmで長さ2.8mmの対称に配置された凹部を含んでおり、該凹部は弾性体成形部材を軸方向に貫通する。
【0029】
弾性体成形部材は、その高圧端において、凹部に向って斜めに面取りされている。該面取り面は、直径3.2mmの円に亘って前記円筒形のカバー表面で開始する。該面取り面は、矩形凹部に向って異なる傾斜で延出し、前記凹部との交叉線においては0.7mmの一定の深さになる。
【0030】
流体部品は、アトマイザーのノズルとして構成される。該ノズルは2枚のシリコーンシートで作製され、幅1.4mm、長さ2.7mmおよび高さ2.1mmである。これらシートの接触表面において、該ノズルには、微細加工されたフィルターおよび微細加工された蒸発装置が設けられている。流体がノズルを出て行く側において、凹部は二つのチャンネルに合流し、その各々は幅8μm、深さ6μmおよび長さ約200μmである。二つのチャンネルの軸は一つの平面内にあり、相互に約90℃で傾斜している。この二つのノズル孔は、アトマイザーノズルの外側で相互に約100μmだけ離間している。
【0031】
実質的に円筒形の嵌合部材には、ホルダに面した側に環状突起が設けられている。この突起は、3.15mmの外径、2.9mmの内径、および0.6mmの一定の高さを有している。該嵌合部材は、直径0.4mmの軸方向の孔を有している。
【0032】
当該装置は、ユニオンナットによって嵌合部材に固定される。嵌合部材は、噴霧される液体を収容する容器の一部である。液体は、小型高圧ピストンポンプによって、約15マイクロリットルの量で容器からアトマイザーノズルへと輸送される。
【0033】
アトマイザーノズル内の液体圧力のピーク値は、約65MPa(650バール)であり、噴霧の終了後には低下して、事実上正常な空気圧(約0.1MPa)に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1a】図1aは、凹部(2)を設けたポット形状のホルダ(1)を断面および斜視図で示している。
【図1b】図1bは、弾性体成形部材(4)と、二つの部分で構成され且つ弾性体成形部材の中に挿入された直方体の流体部品(5)を、断面および斜視図で示している。
【図1c】図1cは、孔(10)およびその弾性体成形部材に面する側に環状突起(11)を備えた嵌合部材(9)を、断面および斜視図で示している。
【図2】図2は、嵌合部材(21)上の突起(11)のもう一つの実施形態を、斜視図で示している。
【図3a】図3aは、垂直に見た弾性体成形部材を示している。
【図3b】図3bは、図3aのA−A線に沿って弾性体成形部材を通る断面を示している。
【図4a】図4aは、垂直に見た弾性体成形部材を示している。
【図4b】図4bは、図4aのB−B線に沿って弾性体成形部材を通る断面を示している。
【図5a】図5aは、垂直に見た弾性体成形部材を示している。
【図5b】図5bは、図5aのB−B線に沿って弾性体成形部材を通る断面を示している。
【図6】図6は、流体容器上に装着されるホルダを通る断面を示している。
【図7a】図7aは、本発明によるホルダを斜線を付した断面で示している。
【図7b】図7bは、本発明によるホルダを斜線を付した断面で示している。
【図7c】図7cは、本発明によるホルダを斜線を付した断面で示している。
【図8a】図8aは、従来技術による実施形態を、斜線を付した断面で本発明と比較している。
【図8b】図8bは、従来技術による実施形態を、斜線を付した断面で本発明と比較している。
【図8c】図8cは、従来技術による実施形態を、斜線を付した断面で本発明と比較している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化する流体圧に曝される流体部品をクランプルする装置であって、
該装置は、その中に流体部品が配置されるホルダを備え、該ホルダは前記流体部品とその低圧側で接触し、また該装置は、前記流体部品をその全外周を覆って取囲む弾性体成形部材を備え、該弾性体成形部材の外部形状は前記ホルダの内部形状に一致し、また該弾性体成形部材の内部形状は前記流体部品の外部形状に一致し、前記弾性体成形部材は加圧流体に露出される少なくとも一つの自由表面を有し、前記ホルダは高圧端において嵌合部材に固定されると共に、
当該装置の組立て前に、前記弾性体成形部材は、その流体圧に面する側が前記流体部品に向けて斜めに面取りされ、
前記嵌合部材には環状突起が設けられ、その外部形状は前記ホルダの内部形状に適合され、前記嵌合部材と共に前記ホルダを組立てた後には、前記突起は前記ホルダの中に突出して前記弾性体成形部材を変形させ、その結果として、前記弾性体成形部材に均一に分布した内部歪み応力が発生され、
前記嵌合部材上の容積は、前記面取り領域において前記弾性体成形部材から失われる容積に適合され、
前記ホルダを前記嵌合部材と共に組立てた後に、変形されて内部歪み応力を受ける前記弾性体成形部材は、嵌合部材までの空間を殆ど全部満たす、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記弾性体成形部材と前記弾性体成形部材の凹部との交叉曲線が、一定のレベルで広がる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記嵌合部材の突起の外部形状が、前記ホルダの内部形状に適合される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記嵌合部材の突起は環状であり、一定の幅および一定の高さを有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記嵌合部材の突起は環状であり、その幅がその周囲に亘って変化する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記嵌合部材の突起は環状であり、その高さがその周囲に亘って変化する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
微細化された高圧噴霧器のための噴霧器ノズルとして構築され、且つ弾性体成形部品でその全外周を覆って取囲まれた流体部品をクランプするための装置の使用であって、該装置の組立て前には、前記弾性体成形部材はその前記流体圧に露出される側において前記流体部品に向って斜めに面取りされており、前記使用は、医薬的に活性な物質を含有する流体を噴霧するためのものである使用。
【請求項8】
液体を、肺に投与されるエアロゾルに噴霧するため、
請求項7に記載の装置の使用。
【請求項9】
微細化された無針注射器のための注射器ノズルとして構築され、且つ弾性体成形部品でその全外周を覆って取囲まれた流体部品をクランプするための装置の使用であって、該装置の組立て前には、前記弾性体成形部材はその前記流体圧に露出される側が前記流体部品に向って斜めに面取りされており、前記使用は、医薬的に活性な物質を含有する流体を無針皮下注射するためのものである使用。
【請求項10】
微細化された噴霧器のための噴霧器ノズルとして構築され、且つ弾性体成形部品でその全外周を覆って取囲まれた流体部品をクランプするための装置の使用であって、該装置の組立て前には、前記弾性体成形部材はその前記流体圧に露出される側において前記流体部品に向って斜めに面取りされており、前記使用は、眼科的医薬製剤を投与するためのものである使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公表番号】特表2007−517646(P2007−517646A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548173(P2006−548173)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014764
【国際公開番号】WO2005/065836
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】