説明

流体静力学的支持部材を備えた油膜軸受

そのロールネック上に設けられたロールネックスリーブ(3)が、ロールチョック(2)内に設けられた軸受ブッシュ(5)により取囲まれている、ロールネック(4)用の油膜軸受(1)であって、この場合、軸受ブッシュ(5)が実質的に共通の軸方向ライン内に設けられており、内側に設けられている少なくとも二つの流体静力学的凹部(9,9’)を備え、この流体静力学的凹部が、逆止弁(18)を介して、及び軸受ブッシュ(5)内で延びている孔(6,6‘)を介して加圧手段を供給可能であり、そしてこの場合、孔(6,6‘)内の絞り弁(15,15’)が、軸受ブッシュ(5)内におけるロールネック(4)あるいはロールネックスリーブ(3)が間違った状況にあった場合でも、最適な流体静力学的軸受を保証する油膜軸受(1)は、軸受の流体静力学的機能が費用のかからない方法で確実に果たされており、絞り弁(15,15’)の検査を簡単に行うことができるように検討されていなければならない。その目的で、少なくとも二つの孔(6,6‘)が、接続ブロック(12)と接続していること、絞り弁(15,15’)が接続ブロック(12)内に収容されていること、そして接続ブロック(12)に逆止弁(18)が所属していることを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのロールネック上に設けられたロールネックスリーブが、ロールチョック内に設けられた軸受ブッシュにより取囲まれている、ロールネック用の油膜軸受であって、
この場合、軸受ブッシュが実質的に共通の軸方向ライン内に設けられており、内側に設けられている少なくとも二つの流体静力学的凹部を備え、この流体静力学的凹部が、逆止弁を介して、及び軸受ブッシュ内で延びている孔を介して加圧手段を供給可能であり、
そしてこの場合、孔内の絞り弁が、軸受ブッシュ内におけるロールネックあるいはロールネックスリーブが間違った状況にあった場合でも、最適な流体静力学的軸受を保証する油膜軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
このような様式の油膜軸受は公知である。油膜軸受は通常軸受ブッシュ内において、180°だけ移動可能な二つの圧力領域を備えている。この圧力領域には各々、二つの流体静力学的凹部が軸方向でずらして並べた状態で設けられている。この際運転中の圧力領域の流体静力学的凹部は、圧力領域の範囲における磨耗により、最適な流体静力学的特性がもはや保証されない程度まで長く使用される。それに引き続いて、ロールチョック内の軸受ブッシュは180°だけ回転することができ、したがって第二圧力領域の別の流体静力学的凹部がどちらも使用できるようになる。両圧力領域の二つの流体静力学的凹部の各々に向う孔の中には、絞り弁が内蔵されている。絞り弁は軸受ブッシュの肉厚がわずかであることと、そのことにより生じる孔の直径が極めて小さいことの理由から、かなりフィリグリー加工(filigran)を施してある。約200〜2000バールでもって加圧媒体に接した状態で、圧力ポートから到来する圧力媒体を、圧力領域の両流体静力学的凹部まで、できるだけ均一に分配するように、絞り弁は用いられる。
【0003】
軸受ブッシュ内のロールネックスリーブの傾斜状態により、圧力領域の流体静力学的凹部の一つが、途中で露出した場合、露出した流体静力学的凹部から比較的多くの圧力媒体が流出する。それによりこの流体静力学的凹部内において、大きな圧力低下が生じる。絞り弁によりこの軸受凹部内の圧力低下はほどほどに保持される。両流体静力学的凹部の間に生じる、異なる圧力により、傾斜状態に反作用する補正モーメントが形成される。
【0004】
したがってこのような油膜軸受の場合、フィリグリー加工が施されており、かつ極めて高価な四つの絞り弁が軸受ブッシュ内に収納されている。しかしながら四つの絞り弁のうち二つは使用される。絞り弁は軸受ブッシュの孔内に収納されているので、完全な軸受が取外された場合、絞り弁のうちの一つを検査することができ、かつ場合によっては絞り弁のうちの一つを交換することができるにすぎない。したがって、サービスマンは軸受ブッシュ内の孔にアクセスする。絞り弁はかなりフィリグリー加工が施されているので、特に供給される油が十分ろ過されていない場合、絞り弁は簡単に詰まることがある。絞り弁が詰まると流体静力学的機能は役に立たない。予防検査は上記の理由から、かなり費用をかけることによってのみ可能である。
【0005】
流体静力学的凹部に向う孔はどちらも、逆止弁から供給できるように、軸受ブッシュ内で一つに集められている。このため公知の軸受ブッシュの場合、接続部に役立っているその縁部領域内において、極めて費用が高い肉盛り溶接を介してカラーが設けられており、このカラー内において、実質的に半径方向に延びており、かつ交差する孔により、孔はどちらも互いに接続している。交差孔の交差点には、逆止弁が軸方向で接続している。
【0006】
軸受ブッシュの区画された取付けスペースにより制限されて、逆止弁を軸受ブッシュに接続することも、運転中の不具合の理由であることが多い。逆止弁のネジ止め部の緩みにより誘発されえる漏洩が容易に生じる。加圧手段を流体静力学的凹部内でとどめておくのに使用される逆止弁の緩みは、例えば高圧ホースが逆止弁まで運転不具合により加圧手段を全く供給しない場合においても、例えば区画された取付けスペース内の逆止弁の欠陥組立てにより生じることがある。四つの軸受は圧力システムにより供給されるので、逆止弁が漏洩すると、四つの軸受全てにおいて流体静力学は成立しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底をなす課題は、軸受の流体静力学的機能を費用のかからない方法で確実に果たし、かつ絞り弁の検査を難なく行うことができるように、本発明による油膜軸受を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、押圧領域の少なくとも二つの孔が、接続ブロックと接続していること、接続ブロックが絞り弁を収容していること、そして接続ブロックに逆止弁が所属していることが提案される。
【0009】
絞り弁を軸受ブッシュから取り出すことにより、そして絞り弁を接続ブロック内に導入することにより、今や絞り弁は、軸受ブッシュの孔の限定された直径にはもはや依存しない領域内に組み込まれる。本発明により、公知の絞り弁に比べてさらに大きい絞り弁が使用され、この絞り弁は費用をかけずに製造されており、かつそれほど容易には詰まらない。さらに逆止弁はもはや軸受ブッシュの区画された取付け空域内では取付けられず、接続ブロックに取付けられ、したがって逆止弁の接続部は、良好にアクセス可能であり、かつ組立ての際場所は十分あるので、組立てミスが起こることは全くなく、したがって漏洩が起こることも全くない。接続ブロックはロールチョックに自由にアクセス可能に固定されているのは有利であり、したがって絞り弁を検査するために、もはや軸受を解体する必要は全く無い。
【0010】
少なくとも二つの流体静力学的凹部へ案内する、少なくとも二つの押圧領域の孔は、高圧接続部を介して、及び頑丈な導管を介して接続ブロックに接続している。この場合、逆止弁の組立て及び分解を恒久的に行う必要は全くない。なぜなら絞り弁の検査がこのシステムの外側で行われるからである。
【0011】
二本の高圧導管を接続することにより、軸受ブッシュ内で孔を交差接続することはなくなる。したがって、ストリップのコストの高い肉盛り溶接も同様になくなる。
【0012】
導管は管体から成り、この管体は大きい圧力に耐え、かつあり得る軸受クリアランスを均衡化するために、弾性的に変形可能である。そのために管体は例えばループの形で敷設されてもよく、したがって管体はその頑丈な構造にもかかわらず、接続ブロックを保持するロールチョックと軸受ブッシュの間の相対運動を均衡化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、実施例により以下に詳しく説明する。
【実施例】
【0014】
図1は油膜軸受1を示しており、この油膜軸受はロールチョック2内に内蔵されており、かつロールネック4上に設けられているロールネックスリーブ3と、ロールチョック2内に固定された軸受ブッシュ5とから成る。
【0015】
軸受ブッシュ5内には、部分的に相前後している二本の孔6,6‘が設けられており、この二本の孔は、外側縁部から、流体静力学的凹部9,9’内で終わっている半径方向孔8,8’まで延在している。
【0016】
軸受ブッシュ5には、高圧接続部10,10‘が設けられており、この高圧接続部には頑丈な導管11,11’が取付けられている。導管は接続ブロック12へ案内され、ここで同様に高圧接続部13,13‘により固定されている(図2参照)。接続ブロック12はネジ14,14’を介してロールチョック2に固定されている。
【0017】
図3は導管11,11‘を示しており、この導管は高圧接続部13,13‘を介して接続ブロック12に接続している。接続ブロック12内には絞り弁15,15’が設けられている。絞り弁は容易にアクセス可能なプラグ16,16’を除去した後、検査あるいは交換の目的で接続ブロックから簡単に取り出すことができる。接続ブロック12内には、絞り弁が使用できるように十分場所が設けられている。この絞り弁は、これまで軸受ブッシュの孔内で使用された絞り弁のようにフィリグリー加工を施して構成されていない。単に二つの絞り弁が設けられているにすぎない。軸受ブッシュ5が180°だけ回転すると、ただ高圧接続部10,10‘が外れるにすぎない。保持ボルト17(図1参照)を外した後、軸受ブッシュ5を180だけ回し、180°だけ回された孔を高圧接続部10,10’と接続する。それにより、二つの絞り弁を削減できる。通常の四つの絞り弁の代わりに、絞り弁はわずか二つだけ必要であるにすぎない。
【0018】
図3はさらに逆止弁18を示しており、この逆止弁は同様にブロック12に容易にアクセス可能に固定されている。容易にアクセスし易いことにより、逆止弁18を組立てる際の組立てミスはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による油膜軸受を示す図である。
【図2】接続ブロックと油膜軸受の接続を示す図である。
【図3】逆止弁を備えた接続ブロックを示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 油膜軸受
2 ロールチョック
3 ロールネックスリーブ
4 ロールネック
5 軸受ブッシュ
6 孔
7 縁部
8 半径方向孔
9 流体静力学的凹部
10 高圧接続部
11 導管
12 接続ブロック
13 高圧接続部
14 ネジ
15 絞り弁
16 プラグ
17 保持ボルト
18 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのロールネック上に設けられたロールネックスリーブ(3)が、ロールチョック(2)内に設けられた軸受ブッシュ(5)により取囲まれている、ロールネック(4)用の油膜軸受(1)であって、
この場合、軸受ブッシュ(5)が実質的に共通の軸方向ライン内に設けられており、内側に設けられている少なくとも二つの流体静力学的凹部(9,9’)を備え、この流体静力学的凹部が、逆止弁(18)を介して、及び軸受ブッシュ(5)内で延びている孔(6,6‘)を介して加圧手段を供給可能であり、
そしてこの場合、孔(6,6‘)内の絞り弁(15,15’)が、軸受ブッシュ(5)内におけるロールネック(4)あるいはロールネックスリーブ(3)が間違った状況にあった場合でも、最適な流体静力学的軸受を保証する油膜軸受(1)において、
少なくとも二つの孔(6,6‘)が、接続ブロック(12)と接続していること、絞り弁(15,15’)が接続ブロック(12)内に収容されていること、そして接続ブロック(12)に逆止弁(18)が所属していることを特徴とする油膜軸受。
【請求項2】
接続ブロック(12)が、ロールチョック(2)に自由にアクセス可能に固定されていることを特徴とする請求項1記載の油膜軸受。
【請求項3】
孔(6,6‘)と接続ブロック(12)が、高圧接続部(10,10’;13,13‘)と接続していること、及び
高圧接続部(10,10’)が、接続ブロック(12)の高圧接続部(13,13‘)と頑丈な導管(11,11’)を介して互いに接続していることを特徴とする請求項1または2記載の油膜軸受。
【請求項4】
導管(11,11’)が、2000バール以上の圧力に耐える管体から成り、この管体が偶発的な相対運動を均衡化するために、軸受ブッシュ(5)とロールチョック(2)の間で弾性的に変形可能であるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の油膜軸受。
【請求項5】
逆止弁(12)および/または絞り弁(15,15‘)が、接続ブロック(12)に交換可能に所属していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の油膜軸受。
【請求項6】
カラーのない軸受ブッシュ(5)が使用されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の油膜軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−533916(P2007−533916A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522247(P2006−522247)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007435
【国際公開番号】WO2005/017377
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・デマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】