説明

流動層における粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法

【課題】流動層の粉塵爆発性を評価することが可能な粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法を提供する。
【解決手段】粉塵爆発試験装置1は、その下部にガス導入口11が設けられ、その上部にガス排出口12が設けられた縦型円筒状の流動層容器1と、前記ガス導入口11と配管で接続され、流動層容器10内に被検ガスを供給するガス供給手段40と、被検粉体と被検ガスとからなる流動層に着火する点火電極21と、前記流動層容器10に設けられた覗き窓17から粉塵爆発の有無を確認するためのデジタルカメラ22と、を有し、前記流動層容器10内には、前記ガス導入口11の上部に設けられ、被検粉体を載置し被検ガスを通気するガス分散板Z、を有することを特徴とする粉塵爆発試験装置。該粉塵爆発試験装置1を使用することによって、流動層における粉塵爆発性を評価することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層における粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法に関する。更に詳しくは、室温以上の温度域にて、被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体の粉塵爆発性を評価方法として、JIS規格(非特許文献1および2参照)に、「可燃性粉じんの爆発圧力及び圧力上昇速度の測定方法」および「可燃性粉じんの爆発下限濃度測定方法」が規定されている。
また、これを準用した形式で、密閉容器内で粉体を吹き上げることで気密性を確保し、任意の酸素濃度下において試験を行う方法が知られている(非特許文献3および4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JIS Z 8817 (2002年) 「可燃性粉じんの爆発圧力及び圧力上昇速度の測定方法」
【非特許文献2】JIS Z 8818 (2002年) 「可燃性粉じんの爆発下限濃度測定方法」
【非特許文献3】中央労働災害防止協会編「粉じん爆発の防止対策」33ページ(1989年)
【非特許文献4】上原陽一、小川輝繁監修 テクノシステム「防火・防爆対策技術ハンドブック」484ページ(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、反応容器内の粉体材料にガスを連続的に供給することによって形成した流動層を利用する化学プロセスがある。流動層ではガス流により粉体の流動状態が高密度で維持されているが、このような流動層を利用する化学プロセスでは、可燃性あるいは支燃性のある粉体材料や供給ガスを使用することが多く、これらの爆発安全性の評価が必要となる。
しかしながら、上記公知の技術による粉塵爆発試験装置では、流動層の爆発安全性の評価を行うことができない。
【0005】
かかる状況下、本発明の目的は、流動層の粉塵爆発性を評価することが可能な粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、化学プロセスにおいて触媒を原料ガスによって流動化させると同時に反応を起こす流動層反応器を応用することにより、粉塵爆発性のある粉体を流動化させ、粉塵爆発が起こり得る状態とし、これに着火源を与えることにより粉塵爆発試験が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は、先ず、被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する粉塵爆発試験装置であって、
その下部にガス導入口が設けられ、その上部にガス排出口が設けられた縦型円筒状の流動層容器と、前記ガス導入口と配管で接続され、流動層容器内に被検ガスを供給するガス供給手段と、被検粉体と被検ガスとからなる流動層に着火する着火手段と、粉塵爆発の有無を観察するための観察手段と、
を有し、
前記流動層容器内には、
前記ガス導入口の上部に設けられ、被検ガスを通気するガス分散板、
を有する粉塵爆発試験装置に係るものである。
【0008】
この構成によれば、ガス供給手段より被検ガスを、流動層容器のガス導入口から噴出させることによって、流動層容器内におけるガス導入口の上部に設けられた前記ガス分散板上の被検粉体は、被検ガスの流れに乗って、流動層容器内に吹き上げられることにより被検粉体と被検ガスからなる流動層が形成される。該流動層に着火手段により着火して流動層が粉塵爆発を起こすか否かを観察手段にて観察することにより、被検粉体および被検ガスの爆発性を評価することができる。
【0009】
本発明において被検粉体とは、支燃性ガスと混合した場合に、着火により粉塵爆発をおこす可能性のある検査用の試料粉体をいい、例えば、石松子やアルミニウムの粉体が挙げられる。また、被検ガスとは、被検粉体と混合した場合に、着火により粉塵爆発をおこす可能性のある検査用の試料ガスをいう。被検ガスとしては、支燃性を示す可能性のあるガスが挙げられ、酸素含有ガスや亜酸化窒素、フッ素、塩素、ハロゲン化珪素等が挙げられる。
なお、本発明の粉塵爆発試験装置は、流動層容器内に被検ガスを供給するガス供給手段を備えている。被検ガスは、酸素含有ガスの場合は、通常圧縮空気を圧縮アルゴン等の不活性ガスで所定濃度に希釈調整して供給される。また、被検ガスが四塩化珪素のような常温で液体のものは、適当な容器に液体の被検ガス成分を貯留し、そこにアルゴン等の不活性ガスを供給してバブリングすることにより、不活性ガスに同伴される形で供給することができる。なお、バブリングによる被検ガス成分は、容器温度を調節することによって、所定濃度に調整して供給される。
【0010】
本発明の粉塵爆発試験装置は、被検粉体と被検ガスからなる流動層を形成し、着火により、流動層が粉塵爆発を起こすための流動層容器(以下、単に「容器」ということがある。)を備えている。この容器は、流動層を形成し、粉塵爆発をおこさせるに十分な容積を有する必要がある。
流動層容器としては、縦型円筒状の耐熱耐圧容器が好適に使用される。容器の材質は、耐熱耐圧の容器を構成するものであれば良いが、腐食性の被検粉体や被検ガスを使用する場合に備え、耐腐食性のある材質が好適に使用される。一般には、ステンレス、ニッケル合金等が用いられる。
【0011】
この容器には、その下部にガス導入口が設けられ、その上部にガス排出口が設けられている。ガス導入口からは被検ガスが導入され、ガス排出口からは被検ガスや被検粉体等が排出される。
また、この容器の下部には、前記ガス導入口の上部に設けられ、被検粉体を載置(セット)し被検ガスを通気するガス分散板を備えている。被検粉体は、試験に際し、予めガス分散板上に載置し、その後容器にガス分散板を取り付けても良いが、後述のような粉体供給手段を設置することが好ましい。ガス分散板は、被検粉体を載置すると共に、被検ガスを導入し、被検粉体の吹き上げによる流動層を形成する機能を有している。このガス分散板は、そのため通気性を有する必要があり、例えば、穿孔した金属板、焼結合金やポーラスセラミックスからなる板状物が使用される。
【0012】
次に、容器は、上記のように流動層を形成し、粉塵爆発を起こさせる為に縦型円筒状のものが使用されるが、より好ましくは、流動層を形成し易くするために小径部と大径部とからなるように構成される。小径部と大径部の長さと直径は被検粉体の載置量や流動層形成の為のガス量等により、適宜決定される。
【0013】
更に、容器には、容器内が粉塵爆発の衝撃によって過剰圧力になった際に破裂する破裂板を備えていることが望ましい。破裂板は、容器の上端部近辺に設けられており、容器の許容圧力に達する場合に破裂し、圧力を逃がすことができる。なお、破裂設定圧力は、容器のいずれかの部分が破裂に至るときに破裂板位置に到達する圧力より低い圧力にする必要がある。
破裂板の材質としては、特に限定されないが、例えば、ニッケルやニッケル合金等が挙げられる。
【0014】
本粉塵爆発試験装置は、前記流動層容器を所定温度に加熱する加熱手段を有することが好ましい。流動層容器内の被検ガスを通気するガス分散板上に被検粉体を載置して、加熱手段によって流動層容器の加熱を行うことにより、流動層容器が、所定の温度に保持される。その状態にて、評価を行うことによって高温での流動層の爆発安全性の評価をおこなうことができる。
加熱手段は、直接、間接的に容器を加熱できれば何れでも良く、電気炉等の公知の環状炉や電磁誘導による加熱炉が使用される。
【0015】
また、前記ガス供給手段が、被検ガスを所定の温度に加熱する予備加熱手段を備えていることが好ましい。
高温での測定の場合、流動層容器内に供給される被検ガスが、常温のままであると、流動層容器内の温度が低下して、正確な設定温度での測定が困難となる。この予備加熱手段を備えることにより、被検ガスを流動層容器での試験温度に相応する所定の温度に加温することができ、より測定の正確性が向上する。
また、流動層容器を加熱しない場合であっても、四塩化珪素のような常温で液体の被検ガスの場合、該被検ガスが、配管内にて結露することを防止することができる。このことにより、正確な温度の被検ガスを供給することができ、試験毎に同等な流動層を形成できるため、試験結果のばらつきが減少する。
【0016】
また、本発明の粉塵爆発試験装置は、被検粉体と被検ガスとからなる流動層に着火する着火手段と、粉塵爆発の有無を観察するための観察手段とを備えている。
着火手段としては、ハルトマン式装置など従来の粉塵爆発試験装置にも使用されている公知の放電可能な電極を使用できる。
また、観察手段としては、デジタルカメラ等の撮影機器が挙げられる。具体的には、流動層容器に石英などの耐熱性の覗き窓を取り付け、デジタルカメラ等にて動画を撮影することによって間接的に粉塵爆発の有無を観察することができる。
【0017】
更に、本発明の粉塵爆発試験装置は、その内部雰囲気が不活性ガスで置換され、外気と接触することなく被検粉体を流動層容器内部のガス分散板に供給する粉体供給手段を有することが好ましい。例えば、被検粉体の仕込み用ポットを設置し、不活性ガスでポット内を加圧してバルブを開くことにより被検粉体を効率良く容器内へ移動させることができる。
【0018】
また、本発明の粉塵爆発試験装置は、ガス排出口と配管で接続され、容器から被検ガスに同伴排出された被検粉体を回収する固気分離手段を備えていることが望ましい。
固気分離手段としては、サイクロン、バグフィルタ、チャンバーなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
特に、前記固気分離手段が、回収した被検粉体を流動層容器に戻す機構を有すると、回収した未反応の被検粉体を、再度粉体爆発試験に供することができる。
【0019】
同様に、破裂板が破裂した際に容器外に噴出する被検粉体および被検ガスを収容する緊急放出手段を備えていることが好ましい。この緊急放出手段としては、窒素等の不活性ガスでシールしたドラム等が適宜使用できる。
【0020】
次に、本発明の粉塵爆発試験方法について説明する。
本発明の粉塵爆発試験方法は、被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する方法であって、100℃以上400℃以下の設定温度に保持された流動層容器内に被検ガスを供給することによって、前記容器内に予め載置した被検粉体の吹き上げを行って流動層を形成し、該流動層へ着火することにより粉塵爆発が発生するか否かを観察する粉塵爆発試験方法に係るものである。
【0021】
本発明の粉塵爆発試験方法は、上述の本発明の粉塵爆発試験装置を使用して行うことができる。特に測定温度の正確性をより高める観点からは、被検ガスが、前記容器内に供給された際に、前記設定温度となるように予め加熱されていることが好ましい。
また、本発明の粉塵爆発試験方法において、前記粉塵雲における被検粉体の密度が、粉塵爆発が起こる一般的な密度である、10g/m3以上1000g/m3以下にて試験されることが望ましい。
なお、流動層における被検粉体の密度は、別途透明な樹脂などで作製した、流動層容器と同型の可視化容器を用い、(被検粉体の仕込量)/(流動層が形成される部分の体積)によって決定することができ、流動層が形成される部分の体積は、被検粉体の仕込量や被検ガスの供給量、圧力などの条件を変化させた際に、容器内にて舞い上がる被検粉体の高さを測定して算出される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、流動層における粉塵爆発性を評価することが可能となり、可燃性あるいは支燃性のある粉体材料や供給ガスからなる流動層を利用する化学プロセスにおける事前に確実な安全性評価を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る粉塵爆発試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、被検粉体としてアルミニウム粉体、被検ガスとして四塩化ケイ素を使用した本発明の実施の形態について、図面を用いて具体的に説明する。
【0025】
本発明の実施形態に係る粉塵爆発試験装置1は、流動層容器10と、流動層容器10を所定の温度に加熱する電気炉20と、粉体供給手段30と、ガス供給手段40と、固気分離手段50、緊急放出手段60とを備える。
【0026】
図1において、流動層容器10は、ステンレス(SUS310)製の縦型筒状の耐熱耐圧の容器であり、小径部10aと大径部10bとからなる。
【0027】
小径部10aは、被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する流動層部位であり、本実施形態では、内径6.2cm、高さH1が58cmである。
小径部10aの端側は先端に向かって断面積が減少していく錘状に形成されており、その先端にはガス導入口11が設けられている。ガス導入口11は、配管を介してガス供給手段40と接続している。また、小径部10aの側部には、粉体再送口16が設けられており、配管を介して固気分離手段50を構成するサイクロン51と接続している。
【0028】
大径部10bは、流動層から上部へ飛んだ粉末を落下しやすくし、また粉塵爆発の衝撃を緩和する部位であり、本実施形態においては内径9.7cm、高さH2が132cmである。
大径部10bの上部側面には、ガス排出口12と粉体仕込み口15が設けられている。
ガス排出口12は、配管を介して固気分離手段50を構成するサイクロン51と接続しており、粉体仕込み口15は、配管を介して粉体供給手段30を構成する粉体仕込みポット31と接続している。
【0029】
また、大径部10bの上端部13にはフランジ等により蓋が取り付けられている。上端部13は配管を介して緊急放出手段60を構成する不活性ドラム61と接続している。なお、上端部13近傍下部には、破裂板14が取り付けられており、流動層容器10は、略密閉された状態となっている。
破裂板14は、粉塵爆発によって流動層容器10の許容圧力未満に設定した破裂板作動圧力を超える場合に破裂し、圧力を逃がすとともに、排出された被検ガスや被検粒子等を緊急放出手段60に回収することができる。
【0030】
電気炉20は、流動層容器10を加熱する加熱手段であり、所定の温度に容器を保持することができる。なお容器内の温度、特に流動層が形成される部位温度は、熱電対(図示せず。)等により検出し、電気炉とリンクして容器内の温度がコントロールされる。
【0031】
図1に示すように流動層容器10内の小径部10aにおけるガス導入口11の上方には、ガス分散板Zが配置されている。このガス分散板Zは、厚み数cm程度のガス通気性のポーラスセラミックスからなり、粉体爆発試験に際し、被検粉体はガス分散板Zの上に載置される。
【0032】
小径部10aにおけるガス分散板Zの上部の約28.5cmには、粉塵に着火するための点火電極21が配置されている。
本実施形態の点火電極21は、+極と−極との絶縁を慎重に図ることによって同方向から両極間位置関係の固定された両極を挿入することを可能にしている。そのため、容器1内で両極の位置関係を調整する煩雑さを除去することができると共に、測定の再現性が向上する。
また、小径部10aにおける点火電極21の反対側には石英製の覗き窓17(14.3mmφ)が形成されている。
この覗き窓17によって、流動層容器10の小径部10a内を観察できるようになっている。そこで、観察手段としてのデジタルカメラ22を配置し、電気炉に設けられた貫通孔20aを介して覗き窓17から動画撮影することによって、流動層容器10内を経時観察することができる。なお、粉塵爆発が起こると明るく光るため、撮影した動画から粉塵爆発の有無を容易に判断可能である。
【0033】
粉体供給手段30は、粉体仕込みポット31と、粉体仕込み口15と粉体仕込みポット31を接続する粉体用配管P1と、粉体用配管P1に設けられた粉体用バルブVpとからなる。
粉体仕込みポット31は、ガスボンベ42から分配したアルゴンガスにより置換されている。被検粉体は、粉体用バルブVpを開閉することにより、粉体用配管P1を介して被検粉体が流動層容器10内に供給される。そのため、外気(空気)と接触することなく被検粉体を流動層容器10の内部に被検粉体を供給することができる。
【0034】
ガス供給手段40は、四塩化ケイ素を水浴41aにより温度制御可能な液体貯留槽41と、アルゴン用のガスボンベ42と、予備加熱手段としてのヒータ43a,43bとを備えている。
なお、本実施形態では、被検ガスとして液体である四塩化ケイ素を使用しているため、液体貯留槽41を設けてバブリングによって被検ガス(四塩化ケイ素)を流動層容器10に供給するが、気体の被検ガスを使用する場合には、その被検ガスのガスボンベをアルゴン用のガスボンベ42に並列に接続すればよい。
また、ガスボンベ42からの配管は分岐しており、液体貯留槽41を介さず直接に流動層容器10にアルゴンを供給することができるため、バブリングによって被検ガス(四塩化ケイ素)の濃度を所定の濃度に希釈することもできる。
液体貯留槽41と、ガス導入口11との接続する配管およびガスボンベ42と流動層容器10とを直接接続する配管には、ヒータ43a,43bが設置されており、配管内部に流れるガスを設定温度に加熱することができる。
【0035】
固気分離手段50は、ガス排出口12と配管で接続されたサイクロン51と、サイクロン51の後段に設けられたバグフィルタ52と、サイクロン51と粉体再送口16を接続する返送用の粉体用配管P2から構成される。
サイクロン51は、前記流動層容器10から被検ガスに同伴排出された被検粉体を回収するための設備であり、その後段のバグフィルタ52は、サイクロン51にて回収できずに被検ガス気流と共に排出される微細径の被検粉体を回収するための設備である。
サイクロン51で回収された被検粉体は、粉体用配管P2に設けられた粉体用バルブVpを開放することにより、粉体用配管P2を介して流動層容器10に戻すことができる。
なお、固気分離手段50を構成する、サイクロン51、バグフィルタ52および粉体用配管P2は、ガスの濃縮を防止するため、220℃程度に加熱することができる。
【0036】
一方、緊急放出手段60は、不活性ドラム61と、該不活性ドラム61と流動層容器10とを接続する配管からなり、その内部は窒素ボンベ62より供給された窒素によりシールされている。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
図1に示した粉塵爆発試験装置1に、被検粉体として、粒径d50 = 33 μmの球状アルミニウム粉体60 gを粉体仕込みポット31より流動層容器10内に仕込んだ。
被検ガスとして、露点−30℃以下に除湿された空気を希釈することなく、40 l/min(Nor)の流量で流通させることにより、アルミニウム粉体と空気とからなる流動層を形成し、該流動層に対し、点火電極21により放電し、点火を行った。
試験状態はデジタルカメラ22の動画撮影機能によって記録し、全て遠隔制御によって実験を実施することによって実験者の安全性をより確実なものとした。実験後、動画を確認することによって爆発と判定した。
【実施例2】
【0039】
図1に示した粉塵爆発試験装置1に、被検粉体として、粒径d50 = 33 μmの球状アルミニウム粉体5 gを予め流動層容器10内に仕込み、該容器加熱用の2つ割型の電気炉20で200℃へ昇温した。
被検ガスとして、液体貯留槽41に四塩化珪素を53℃に保持した状態で0.69 l/min(Nor)のアルゴンガスでバブリングし、同時に30 l/min(Nor)のアルゴンガスを流通させることにより希釈し、予備加熱用のヒータ43aにより200℃に昇温して容器に供給することにより、アルミニウム粉体と四塩化珪素とからなる流動層を形成し、該流動層に対し、点火電極21を用いて放電し、点火を行った。試験状態はデジタルカメラ22の動画撮影機能によって記録し、全て遠隔制御によって実験を実施することによって実験者の安全性をより確実なものとした。実験後、動画を確認することによって爆発しなかったことを判定した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、高温における粉塵爆発性を評価することが可能な粉塵爆発試験装置および粉塵爆発試験方法が提供される。
【符号の説明】
【0041】
1 粉塵爆発試験装置
10 流動層容器
10a 小径部
10b 大径部
11 ガス導入口
12 ガス排出口
13 上端部
14 破裂板
15 粉体仕込み口
16 粉体再送口
17 覗き窓
20 電気炉
20a 貫通孔
21 点火電極
22 デジタルカメラ
30 粉体供給手段
31 粉体仕込みポット
40 ガス供給手段
41 液体貯留槽
41a 水浴
42 ガスボンベ(アルゴン)
43a,43b ヒータ
50 固気分離手段
51 サイクロン
52 バグフィルタ
60 緊急放出手段
61 不活性ドラム
62 ガスボンベ(窒素)
Z ガス分散板
Vp 粉体用バルブ
Vg ガスバルブ
FC ガス流量コントローラー
1,P2 粉体用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する粉塵爆発試験装置であって、
その下部にガス導入口が設けられ、その上部にガス排出口が設けられた縦型円筒状の流動層容器と、前記ガス導入口と配管で接続され、流動層容器内に被検ガスを供給するガス供給手段と、被検粉体と被検ガスとからなる流動層に着火する着火手段と、前記流動層容器に設けられた覗き窓から粉塵爆発の有無を観察するための観察手段と、
を有し、
前記流動層容器内には、
前記ガス導入口の上部に設けられ、被検ガスを通気するガス分散板、
を有することを特徴とする粉塵爆発試験装置。
【請求項2】
前記流動層容器を所定の温度に加熱する加熱手段を備える請求項1記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項3】
前記ガス供給手段が、被検ガスを所定の温度に加熱する予備加熱手段を備える請求項1または2記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項4】
前記流動層容器が、小径部と大径部とからなる請求項1から3のいずれかに記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項5】
その内部雰囲気が不活性ガスで置換され、外気と接触することなく被検粉体を流動層容器内部のガス分散板に供給する粉体供給手段を有する請求項1から4のいずれかに記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項6】
さらに、前記ガス排出口と配管で接続され、前記流動層容器から被検ガスに同伴排出された被検粉体を回収する固気分離手段を備えた請求項1から5のいずれかに記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項7】
前記固気分離手段が、回収した被検粉体を流動層容器に戻す機構を有する請求項6記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項8】
流動層容器が、その上端部近辺に破裂板を備えた請求項1から7のいずれかに記載の粉塵爆発試験装置。
【請求項9】
被検粉体と被検ガスとからなる流動層の爆発性を試験する方法であって、100℃以上400℃以下の設定温度に保持された流動層容器内に被検ガスを連続的に供給することによって、前記容器内に予め載置した被検粉体の吹き上げを行って流動層を形成し、該流動層へ着火することにより粉塵爆発が発生するか否かを観察することを特徴とする粉塵爆発試験方法。
【請求項10】
被検ガスが、前記容器内に供給された際に、前記設定温度となるように予め加熱されている請求項9記載の粉塵爆発試験方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−220814(P2011−220814A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89889(P2010−89889)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】