説明

流動層乾燥装置

【課題】流動層乾燥装置において、流動層間での湿潤燃料の移動不良を抑制することで乾燥効率の向上を可能とする。
【解決手段】原炭投入口102と乾燥炭排出口103を有する乾燥容器101と、乾燥容器101の下部に流動化蒸気を供給することで原炭と共に流動層Sを形成する流動化蒸気供給部104と、流動層Sの原炭を加熱する伝熱管106と、流動層Sを原炭の流動方向に複数に分割すると共に下部に原炭の通過開口部116,117を形成する仕切板114,115と、通過開口部116,117の高さ(開口面積)を調整可能な調整板121,122と、流動層S1の下部の圧力P1を検出可能な圧力センサ125aと、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が予め設定された所定圧力より高くなったときに通過開口部116の通過不良を判定して調整板121,122により通過開口部116,117の高さを高くする制御装置126とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化蒸気または流動化ガスにより被乾燥物を流動させながら乾燥させる流動層乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電設備は、石炭をガス化し、コンバインドサイクル発電と組み合わせることにより、従来型の石炭火力に比べてさらなる高効率化・高環境性を目指した発電設備である。この石炭ガス化複合発電設備は、資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであり、適用炭種を拡大することにより、さらにメリットが大きくなることが知られている。
【0003】
従来の石炭ガス化複合発電設備は、一般的に、給炭装置、乾燥装置、石炭ガス化炉、ガス精製装置、ガスタービン設備、蒸気タービン設備、排熱回収ボイラ、ガス浄化装置などを有している。従って、石炭が乾燥されてから粉砕され、石炭ガス化炉に対して、微粉炭として供給されると共に、空気が取り込まれ、この石炭ガス化炉で石炭が燃焼ガス化されて生成ガス(可燃性ガス)が生成される。そして、この生成ガスがガス精製されてからガスタービン設備に供給されることで燃焼して高温・高圧の燃焼ガスを生成し、タービンを駆動する。タービンを駆動した後の排気ガスは、排熱回収ボイラで熱エネルギが回収され、蒸気を生成して蒸気タービン設備に供給され、タービンを駆動する。これにより発電が行なわれる。一方、熱エネルギが回収された排気ガスは、ガス浄化装置で有害物質が除去された後、煙突を介して大気へ放出される。
【0004】
ところで、このような石炭ガス化複合発電設備にて使用する石炭は、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)だけでなく、亜瀝青炭や褐炭のように比較的低い発熱量を有する低品位の石炭(低品位炭)がある。この低品位炭は、持ち込まれる水分量が多く、この水分により発電効率が低下してしまう。そのため、低品位炭の場合には、上述した乾燥装置により石炭を乾燥して水分を除去してから粉砕して石炭ガス化炉に供給する必要がある。
【0005】
このような石炭を乾燥する乾燥装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された多室型流動層分級装置は、風箱の上側に多孔板型ガス分散板を介して流動層を備え、この室を仕切板で乾燥室と分級室とに仕切り、仕切板の下側に連絡通路を形成し、風箱に乾燥用熱風等としての役割と分級用気体としての役割を有する流動化ガスを供給可能とし、分級室内に供給されるガスの風量を調整して分級粒子径を制御すると共に、乾燥室内に供給されるガスの風量及び/又は温度を調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−197854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の多室型流動層分級装置では、流動層を仕切板で乾燥室と分級室とに仕切り、仕切板の下側に連絡通路を形成することで、この連絡通路により分級を行っている。ところが、上述したような低品位炭は、高品位炭に比べて水分量が多いことから、乾燥しにくい。そのため、乾燥装置における石炭の滞留時間を適正に制御することが重要となる。この場合、仕切板の下部の隙間を狭くするほうが好ましいが、一方で、この隙間が狭すぎると、流動層における石炭の高さが拡大して流動不安定や飛散粒子の増加などを招いてしまう。このため、石炭の供給条件に応じた隙間の最適化が重要である。なお、特許文献1には、仕切板の下部の隙間を調整するものが記載されているが、この調整は事前に行うものであり、また、バックミキシングの発生を防止するものである。また、低品位炭の乾燥に水蒸気を利用した場合には、投入直後の原料粒子に水蒸気が凝縮し、凝集粒子を形成し、流動不良を発生させてしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、流動層間での湿潤燃料の移動不良を抑制することで乾燥効率の向上を可能とする流動層乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の流動層乾燥装置は、一端側の湿潤燃料投入部から湿潤燃料を投入可能であると共に他端側の乾燥物排出部から湿潤燃料が加熱乾燥された乾燥物を排出可能な中空形状をなす乾燥容器と、前記乾燥容器の一部に流動化蒸気または流動化ガスを供給することで湿潤燃料と共に流動層を形成する流動化蒸気または流動化ガス供給部と、前記流動層の湿潤燃料を加熱する加熱部と、前記流動層を湿潤燃料の流動方向に複数に分割すると共に湿潤燃料の通過開口部を形成する仕切板と、前記通過開口部を通過する湿潤燃料の通過量を調整可能な通過量調整装置と、前記通過開口部における湿潤燃料の通過不良を検出する通過不良検出装置と、前記通過不良検出装置が湿潤燃料の通過不良を検出したときに前記通過量調整装置により湿潤燃料の通過量を増加させる制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
従って、仕切板により流動層を湿潤燃料の流動方向に複数に分割して仕切板に湿潤燃料の通過開口部を形成し、通過開口部における湿潤燃料の通過不良を検出したときに、湿潤燃料の通過量を増加させることで、通過開口部における湿潤燃料の通過不良を早期に解消し、湿潤燃料の乾燥効率を向上することができる。
【0011】
本発明の流動層乾燥装置では、前記通過量調整装置は、前記通過開口部の開口面積を調整可能な調整板を有することを特徴としている。
【0012】
従って、通過開口部の開口面積を調整可能な調整板を設けることで、通過開口部を通過する湿潤燃料の通過量を容易に調整することができる。
【0013】
本発明の流動層乾燥装置では、前記通過不良検出装置は、前記流動層における前記通過開口部の近傍の圧力または温度偏差が予め設定された所定幅より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴としている。
【0014】
従って、流動層における通過開口部の近傍の圧力または温度偏差が所定幅より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することで、流動層に圧力センサや温度センサを設けるだけで、通過開口部の通過不良を判定することができ、製品コストの増加を抑制することができる。
【0015】
本発明の流動層乾燥装置では、前記通過不良検出装置は、前記流動層の高さが予め設定された所定高さより高くなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴としている。
【0016】
従って、流動層の高さが所定高さより高くなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することで、流動層の高さを検出することで、容易に通過開口部の通過不良を判定することができる。
【0017】
本発明の流動層乾燥装置では、前記通過不良検出装置は、前記複数の流動層の高さの偏差が予め設定された所定偏差より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴としている。
【0018】
従って、複数の流動層の高さの偏差が所定偏差より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することで、各流動層の高さを検出することで、容易に通過開口部の通過不良を判定することができる。
【0019】
本発明の流動層乾燥装置では、前記通過量調整装置は、前記通過開口部に設けられたロータリバルブの回転数を調整可能な調整装置を有することを特徴としている。
【0020】
従って、通過開口部に設けられたロータリバルブの回転数を調整可能とすることで、通過開口部を通過する湿潤燃料の通過量を容易に調整することができる。
【0021】
本発明の流動層乾燥装置では、前記制御装置は、前記通過量調整装置により湿潤燃料の通過量を増加させても湿潤燃料の通過不良が解消されないときには、湿潤燃料の投入量減少処理、乾燥物排出量の増加処理、流動化蒸気または流動化ガスの供給量増加処理、加熱部による加熱温度の上昇処理のいずれかを実行することを特徴としている。
【0022】
従って、通過開口部における湿潤燃料の通過不良が解消されないときに、各種処理を実行することで、確実に通過開口部の通過不良を解消することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の流動層乾燥装置によれば、流動層を湿潤燃料の流動方向に複数に分割すると共に湿潤燃料の通過開口部を形成する仕切板と、通過開口部を通過する湿潤燃料の通過量を調整可能な通過量調整装置と、通過開口部における湿潤燃料の通過不良を検出する通過不良検出装置と、通過不良検出装置が湿潤燃料の通過不良を検出したときに通過量調整装置により湿潤燃料の通過量を増加させる制御装置とを設けるので、通過開口部における湿潤燃料の通過不良を早期に解消し、湿潤燃料の乾燥効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る流動層乾燥装置を表す概略側面図である。
【図2】図2は、実施例1の流動層乾燥装置を表す概略背面図である。
【図3】図3は、実施例1の流動層乾燥装置における隙間高さの制御方法を表す概略図である。
【図4】図4は、実施例1の流動層乾燥装置が適用された石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。
【図6】図6は、本発明の実施例3に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施例4に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流動層乾燥装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1に係る流動層乾燥装置を表す概略側面図、図2は、実施例1の流動層乾燥装置を表す概略背面図、図3は、実施例1の流動層乾燥装置における隙間高さの制御方法を表す概略図、図4は、実施例1の流動層乾燥装置が適用された石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【0027】
実施例1の石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。即ち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤燃料として低品位炭を使用している。
【0028】
実施例1において、図4に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17、蒸気タービン設備18、発電機19、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20を有している。
【0029】
給炭装置11は、原炭バンカ21と、石炭供給機22と、クラッシャ23とを有している。原炭バンカ21は、低品位炭を貯留可能であって、所定量の低品位炭を石炭供給機22に投下することができる。石炭供給機22は、原炭バンカ21から投下された低品位炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ23に投下することができる。このクラッシャ23は、投下された低品位炭を所定の大きさに破砕することができる。
【0030】
流動層乾燥装置12は、給炭装置11により投入された低品位炭に対して乾燥用蒸気(過熱蒸気)を供給することで、この低品位炭を流動させながら加熱乾燥するものであり、低品位炭が含有する水分を除去することができる。そして、この流動層乾燥装置12は、下部から取り出された乾燥済の低品位炭を冷却する冷却器31が設けられ、乾燥冷却済の乾燥炭が乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12は、上部から取り出された蒸気から乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン33と乾燥炭電気集塵機34が設けられ、蒸気から分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ32に貯留される。なお、乾燥炭電気集塵機34で乾燥炭が分離された蒸気は、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として供給される。
【0031】
微粉炭機13は、石炭粉砕機であって、流動層乾燥装置12により乾燥された低品位炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。即ち、微粉炭機13は、乾燥炭バンカ32に貯留された乾燥炭が石炭供給機36により投下され、この乾燥炭を所定粒径以下の低品位炭、つまり、微粉炭とするものである。そして、微粉炭機13で粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ37a,37bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。
【0032】
石炭ガス化炉14は、微粉炭機13で処理された微粉炭が供給可能であると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)が戻されてリサイクル可能となっている。
【0033】
即ち、石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機61)から圧縮空気供給ライン41が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン43に微粉炭供給ホッパ38a,38bからの給炭ライン44a,44bが接続されている。また、第2窒素供給ライン45も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン45にチャー回収装置15からのチャー戻しライン46が接続されている。更に、酸素供給ライン47は、圧縮空気供給ライン41に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
【0034】
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置48が設けられている。この場合、石炭ガス化炉14は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガスのガス生成ライン49が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン49にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
【0035】
チャー回収装置15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを有している。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0036】
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置16は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備17に供給する。なお、このガス精製装置16では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0037】
ガスタービン設備17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を有しており、圧縮機61とタービン63は、回転軸64により連結されている。燃焼器62は、圧縮機61から圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン66が接続され、タービン63に燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機61から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気とガス精製装置16から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン63にて、発生した燃焼ガスにより回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0038】
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸64に連結されるタービン69を有しており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン63)からの排ガスライン70に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に、蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。従って、蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が駆動し、回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0039】
そして、排熱回収ボイラ20で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置74により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突75から大気へ放出される。
【0040】
ここで、実施例1の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0041】
実施例1の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭装置11にて、原炭(低品位炭)が原炭バンカ21に貯留されており、この原炭バンカ21の低品位炭が石炭供給機22によりクラッシャ23に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された低品位炭は、流動層乾燥装置12により加熱乾燥された後、冷却器31により冷却され、乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12の上部から取り出された蒸気は、乾燥炭サイクロン33及び乾燥炭電気集塵機34により乾燥炭の粒子が分離され、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として戻される。一方、蒸気から分離された乾燥炭の粒子は、乾燥炭バンカ32に貯留される。
【0042】
乾燥炭バンカ32に貯留される乾燥炭は、石炭供給機36により微粉炭機13に投入され、ここで、細かい粒子状に粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭バグフィルタ37a,37bを介して微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される微粉炭は、空気分離装置42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を通して石炭ガス化炉14に供給される。また、後述するチャー回収装置15で回収されたチャーが、空気分離装置42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を通して石炭ガス化炉14に供給される。更に、後述するガスタービン設備17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離装置42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通して石炭ガス化炉14に供給される。
【0043】
石炭ガス化炉14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この可燃性ガスは、石炭ガス化炉14からガス生成ライン49を通して排出され、チャー回収装置15に送られる。
【0044】
このチャー回収装置15にて、可燃性ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、ここで可燃性ガスからこのガスに含有するチャーが分離される。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。一方、可燃性ガスから分離した微粒チャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通して石炭ガス化炉14に戻されてリサイクルされる。
【0045】
チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスは、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。そして、ガスタービン設備17では、圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給すると、この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製装置16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン63を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0046】
そして、ガスタービン設備17におけるタービン63から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ20にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0047】
その後、ガス浄化装置74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0048】
以下、上述した石炭ガス化複合発電設備10における流動層乾燥装置12について詳細に説明する。
【0049】
流動層乾燥装置12は、プラグフロー式の乾燥装置であって、図1及び図2に示すように、乾燥容器101と、原炭投入口102と、乾燥炭排出口103と、流動化蒸気(流動化ガス)供給部104(104a,104b,104c)と、ガス排出口105と、伝熱管(加熱部)106,107,108とを有している。
【0050】
乾燥容器101は、中空箱型形状をなしており、一端側に原炭を投入する原炭投入口102が形成される一方、他端側の下部に原炭を加熱乾燥した乾燥物を排出する乾燥炭排出口103が形成されている。この場合、原炭投入口102や乾燥炭排出口103を乾燥容器101の端部に1つずつ設けたが、複数であってもよい。この場合、乾燥容器101は、石炭供給機22(図4参照)により原炭投入口102から内部への原炭供給量を調整することができる。また、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103に設けられた図示しないロータリバルブの回転数を調整することで、原炭排出量を調整することができる。
【0051】
また、乾燥容器101は、下部に底板101aから所定距離をあけて複数の開口を有する分散板109が設けられることで、風箱110が区画されている。そして、乾燥容器101は、この底板101aに風箱110を介して分散板109の上方に流動化蒸気(過熱蒸気)を供給する流動化蒸気供給部104(104a,104b,104c)が設けられている。更に、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103側の天井板101bに流動化蒸気及び発生蒸気を排出するガス排出口105が形成されている。
【0052】
この乾燥容器101は、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化蒸気供給部104から風箱110及び分散板109を通して流動化蒸気が供給されることで、この分散板108の上方に所定厚さの流動層Sが形成されると共に、この流動層Sの上方にフリーボード部Fが形成される。
【0053】
そして、乾燥容器101は、内部が原炭の流動方向の上流側に設けられた第1乾燥室111と、この第1乾燥室111より下流側に設けられた第2乾燥室112と、原炭の流動方向の最も下流側に設けられた第3乾燥室113とで構成されている。
【0054】
詳細に説明すると、乾燥容器101は、複数(本実施例では、2個)の仕切板114,115により流動層Sが原炭の流動方向に複数に分割され、各仕切板114,115により原炭の通過開口部116,117が形成されている。この各仕切板114,115は、原炭の流動方向に直交する鉛直方向に沿って配置されると共に、原炭の流動方向に所定間隔で配置されており、左右の端部が乾燥容器101の内壁面に取付けられている。そして、各仕切板114,115は、鉛直方向の中間部に所定の高さ(開口面積)を有する通過開口部116,117が確保されており、上端部が流動層Sより上方に延出するように位置し、下端部が分散板109に接触している。なお、この通過開口部116,117は、ほぼ同じ高さに設定されている。
【0055】
このように乾燥容器101は、各仕切板114,115が設けられることで、第1乾燥室111と第2乾燥室112と第3乾燥室113に区画され、各乾燥室111,112,113は、この仕切板114,115の上方で連通されている。この場合、第1乾燥室111は、フリーボード部F1と流動層S1が形成され、原炭の初期乾燥を行う領域となっており、第2乾燥室112は、フリーボード部F2と流動層S2が形成され、原炭の中期乾燥を行う領域となっており、第3乾燥室113は、フリーボード部F3と流動層S3が形成され、原炭の後期乾燥を行う領域となっている。この場合、各乾燥室111,112,113は、床面積がほぼ同様となるように設定されているが、原炭の含水量などに応じて最適な比率に設定してもよい。
【0056】
また、風箱110は、3つの乾燥室111,112,113に対応するように、仕切部材118,119により3つの風箱110a,110b,110cに区画され、この3つの風箱110a,110b,110cに対応するように3つの流動化蒸気供給部104a,104b,104cが設けられている。即ち、各仕切部材118,119は、各仕切板114,115の下方に配置されている。そして、流動化蒸気供給部104a,104b,104cは、図示しない流動化蒸気供給管が連結されており、この流動化蒸気供給管に設けられ流量調整弁の開度を調整することで、風箱110a,110b,110cに供給する流動化蒸気量を調整することができる。
【0057】
即ち、乾燥容器101は、その室内において、供給された原炭が押し出し流れとなるようにプラグフロー方式として構成されている。この押し出し流れとは、流動層Sにおいて、原炭が流動方向に拡散しないように、この原炭を流動方向に押し出す流れである。
【0058】
また、乾燥容器101は、各乾燥室111,112,113にて、外部から乾燥容器101を貫通して各流動層S1,S2,S3内を循環する複数の伝熱管106,107,108が配置されている。この伝熱管106,107,108は、各流動層S1,S2,S3内に埋設されるように位置し、内部を流れる過熱蒸気により各流動層S1,S2,S3の原炭を加熱して乾燥することができる。この場合、伝熱管106,107,108は、供給される過熱蒸気の圧力を変更することで、その温度を調整することができる。
【0059】
従って、第1乾燥室111に供給された原炭は、ここで流動化蒸気により流動されると共に、伝熱管106により加熱されることで乾燥される。そして、第1乾燥室111で初期乾燥された原炭は、仕切板114の下部の通過開口部116を通って第2乾燥室112に移動され、ここで、伝熱管107により加熱されることで中期乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥された原炭は、仕切板115の下部の通過開口部117を通って第3乾燥室113に移動され、ここで、伝熱管108により加熱されることで後期乾燥される。
【0060】
これにより、各乾燥室111,112,113の流動層S1,S2,S3を形成する原炭は、この流動層S1,S2,S3間を上流側から通過開口部116,117を通って順に移動することで、押し出し流れとすることができ、流動方向に拡散させることなく乾燥される。
【0061】
ところで、本実施例の流動層乾燥装置12は、通過開口部116,117を通過する原炭の通過量を調整可能な通過量調整装置として、この通過開口部116,117の高さ(開口面積)を調整可能な調整板121,122が設けられており、各調整板121,122は、仕切板114,115に対して昇降可能となっている。即ち、図3に示すように、仕切板114は、上部仕切板114aと下部仕切板114bから構成され、上部仕切板114aと下部仕切板114bの間に通過開口部116,117が設けられている。調整板121は、仕切板114における部仕切板114a下部平面部に密着するように配置され、幅方向の各端部が乾燥容器101の内壁面に設けられた図示しないガイドにより上下移動自在に支持されている。駆動装置(駆動モータ)123は、乾燥容器101の下部に固定され、駆動軸に一体に連結されたねじ軸124が調整板121に螺合している。
【0062】
従って、駆動装置123を駆動してねじ軸124を回転することで、仕切板114に対して調整板121を上下に移動することができる。即ち、駆動装置123を駆動してねじ軸124により調整板121を上昇すると、通過開口部116の高さを広げることができ、一方、駆動装置123を駆動してねじ軸124により調整板121を下降すると、通過開口部116の高さを狭めることができる。
【0063】
また、本実施例の流動層乾燥装置12は、通過開口部116における原炭の通過不良を検出する通過不良検出装置として圧力センサ125a,125bが設けられると共に、この圧力センサ125a,125bの検出結果を入力する制御装置126が設けられている。この制御装置126は、圧力センサ125a,125bの検出結果に基づいて通過開口部116における原炭の通過不良を検出し、原炭の通過不良を検出したときには、調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げることで、原炭の通過量を増加させるようにしている。
【0064】
具体的には、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の高さが高くなり、流動層S1の下部の圧力、つまり、圧力センサ125aが検出した圧力P1が高くなる。一方、フリーボード部F1の圧力、つまり、圧力センサ125bが検出した圧力P0は、流動層S1の高さに拘わらずほぼ一定である。従って、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が予め設定された所定圧力より高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。この場合、流動層乾燥装置12の形態に応じて、流動層S1の下部の適正圧力が相違することから、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1と、圧力センサ125bが検出したフリーボード部F1の圧力P0との偏差が予め設定された所定偏差より高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。
【0065】
なお、ここでは、通過開口部116に設けられた調整板121について詳細に説明したが、通過開口部117に設けられた調整板122も同様の構成となっており、駆動装置や圧力センサなどが設けられており、制御装置126により制御可能となっている。また、上述の説明では、制御装置126が圧力センサ125a,125bの検出結果に基づいて通過開口部116における原炭の通過不良を検出するように構成したが、この場合、制御装置126が圧力センサ125a,125bの検出結果に基づいて通過開口部116における原炭の通過不良の発生が予測されるときに、調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施例の流動層乾燥装置12は、制御装置126が調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げても原炭の通過不良が解消されないときには、原炭の投入量減少処理、乾燥物排出量の増加処理、流動化蒸気の供給量増加処理、伝熱管106による加熱温度の上昇処理のいずれかを実行するようにしている。
【0067】
ここで、実施例1の流動層乾燥装置12の全体の作動について説明する。
【0068】
流動層乾燥装置12において、図1及び図2に示すように、乾燥容器101に対して、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化蒸気供給部104から分散板109を通して流動化蒸気が供給されることで、この分散板109の上方に所定厚さの流動層S1、S2,S3が形成される。原炭は、流動化蒸気により流動層S1、S2,S3を乾燥炭排出口103側に移動し、このとき、伝熱管106,107,108から熱を受けることで加熱されて乾燥される。
【0069】
即ち、原炭投入口102から原炭が供給されると、まず、第1乾燥室111では、流動化蒸気供給部104aから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管106から熱を受けることで、流動層S1で流動しながら乾燥される。次に、第1乾燥室111で初期乾燥が終了した原炭は、仕切板114の通過開口部116を通って第2乾燥室112に流動する。この第2乾燥室112では、流動化蒸気供給部104bから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管107から熱を受けることで、流動層S2で流動しながら乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥が終了した原炭は、仕切板115の通過開口部117を通って第3乾燥室113に流動する。この第3乾燥室113では、流動化蒸気供給部104cから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管108から熱を受けることで、流動層S3で流動しながら乾燥される。このように原炭は、流動層S1,S2,S3にて、伝熱管106,107,108により加熱されながら、供給される流動化蒸気により流動し、押し出し流れとなって流動方向に拡散することなく乾燥される。
【0070】
その後、原炭が乾燥された乾燥炭は、乾燥炭排出口103から外部に排出され、流動層Sで原炭が加熱乾燥されることで発生した蒸気は、流動化蒸気と共に上昇し、乾燥炭排出口103側に流れ、ガス排出口105から外部に排出される。
【0071】
このとき、例えば、第1乾燥室111では、圧力センサ125a,125bが流動層S1の下部の圧力P1とフリーボード部F1の圧力P0を検出し、制御装置126に出力している。制御装置126は、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が所定圧力より高いかどうか、具体的には、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1と、圧力センサ125bが検出したフリーボード部F1の圧力P0との偏差が所定偏差より高いかどうかを判定している。ここで、制御装置126は、流動層S1の下部の圧力P1が所定圧力より高い、つまり、流動層S1の下部の圧力P1とフリーボード部F1の圧力P0との偏差が所定偏差より高いと判定されたら、通過開口部116が通過不良であると判定する。
【0072】
そして、制御装置126は、駆動装置123により調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げることで、原炭の通過量を増加させる。なお、調整板121の上昇量は、予め設定された所定量に設定されており、例えば、所定時間の経過後に通過開口部116の通過不良が解消されないときは、再び、調整板121を同量、または、それより少ない量だけ上昇して通過開口部116の高さを広げ、原炭の通過量を増加させる。
【0073】
このように実施例1の流動層乾燥装置にあっては、原炭投入口102と乾燥炭排出口103を有する乾燥容器101と、乾燥容器101の下部に流動化蒸気を供給することで原炭と共に流動層Sを形成する流動化蒸気供給部104と、流動層Sの原炭を加熱する伝熱管106と、流動層Sを原炭の流動方向に複数に分割すると共に下部に原炭の通過開口部116,117を形成する仕切板114,115と、通過開口部116,117の高さを調整可能な調整板121,122と、流動層S1の下部の圧力P1を検出可能な圧力センサ125aと、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が予め設定された所定圧力より高くなったときに通過開口部116の通過不良を判定して調整板121,122により通過開口部116,117の高さを高くする制御装置126とを設けている。
【0074】
従って、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の下部の圧力P1が高くなることから、この流動層S1の下部の圧力P1が所定圧力より高くなったときに、通過開口部116,117の通過不良を判定し、調整板121,122を上昇させて通過開口部116,117の高さを高くしており、通過開口部116,117における原炭の通過不良を早期に解消し、原炭の乾燥効率を向上することができる。
【0075】
また、実施例1の流動層乾燥装置では、流動層S1の下部の圧力P1が所定圧力より高くなったときに、通過開口部116,117の通過不良を判定することで、流動層Sに圧力センサ125a,125bを設けるだけで、通過開口部116,117の通過不良を判定することができ、製品コストの増加を抑制することができる。
【実施例2】
【0076】
図5は、本発明の実施例2に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
実施例2において、図5に示すように、仕切板114は、通過開口部116の高さを調整可能な調整板121が設けられており、駆動装置123によりねじ軸124を回転することで、仕切板114に対して調整板121を上下に移動し、通過開口部116の高さを調整することができる。
【0078】
また、本実施例では、圧力センサ125a,125b,125cが設けられると共に、この圧力センサ125a,125b,125cの検出結果を入力する制御装置126が設けられている。この制御装置126は、圧力センサ125a,125b,125cの検出結果に基づいて流動層S1の高さを求め、流動層S1の高さが予め設定された所定高さより高くなったときに、原炭の通過不良と検出し、原炭の通過不良を検出したときには、調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げることで、原炭の通過量を増加させるようにしている。
【0079】
この場合、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の高さが高くなり、流動層S1の下部の圧力、つまり、圧力センサ125aが検出した圧力P1が高くなる。一方、フリーボード部F1の圧力、つまり、圧力センサ125bが検出した圧力P0は、流動層S1の高さに拘わらずほぼ一定である。また、圧力センサ125aから所定高さH0だけ上昇した位置に圧力P2を圧力センサ125cにより検出することで、流動層S1における所定高さあたりの圧力上昇量Pa(P2−P1)がわかる。従って、下記数式より流動層S1の高さHを推定することができる。
H=(P2−P0)/Pa×H0
そして、制御装置126は、流動層S1の高さHが所定高さより高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。そして、駆動装置123により調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げることで、原炭の通過量を増加させる。
【0080】
なお、この制御装置126は、圧力センサ125a,125b,125cの検出結果に基づいて流動層S1の高さを求めることができることから、同様にして、流動層S2の高さを求め流動層S1,S2の高さの偏差が予め設定された所定偏差より大きくなったときに、原炭の通過不良と判定するようにしてもよい。
【0081】
このように実施例2の流動層乾燥装置にあっては、流動層S1の圧力を検出可能な圧力センサ125a,125cと、フリーボード部F1の圧力を検出可能な圧力センサ125bと、各圧力センサ125a,125b,125cが検出した流動層S1の圧力Pに基づいて流動層S1の高さを求め、この流動層S1の高さが予め設定された所定高さより高くなったときに通過開口部116の通過不良を判定して調整板121により通過開口部116の高さを高くする制御装置126とを設けている。
【0082】
従って、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の高さが高くなることから、この流動層S1の高さが所定高さより高くなったときに、通過開口部116,117の通過不良を判定し、調整板121を上昇させて通過開口部116の高さを高くしており、通過開口部116における原炭の通過不良を早期に解消し、原炭の乾燥効率を向上することができる。
【実施例3】
【0083】
図6は、本発明の実施例3に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0084】
実施例3において、図6に示すように、仕切板114は、通過開口部116の高さを調整可能な調整板121が設けられており、駆動装置123によりねじ軸124を回転することで、仕切板114に対して調整板121を上下に移動し、通過開口部116の高さを調整することができる。
【0085】
また、本実施例では、通過開口部116における原炭の通過不良を検出する通過不良検出装置として温度センサ131a,131bが設けられると共に、この温度センサ131a,131bの検出結果を入力する制御装置126が設けられている。この制御装置126は、温度センサ131a,131bの検出結果に基づいて通過開口部116における原炭の通過不良を検出し、原炭の通過不良を検出したときには、調整板121を上昇して通過開口部116の高さを広げることで、原炭の通過量を増加させるようにしている。
【0086】
具体的には、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の下部での原炭の流動が少なくなり、流動層S1の下部の温度、つまり、温度センサ131aが検出した温度T1が高くなる。一方、流動層S1の上部での原炭の流動は流動化蒸気によりほぼ一定である。従って、温度センサ131aが検出した流動層S1の下部の温度T1が予め設定された所定圧力より高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。この場合、流動層乾燥装置12の形態に応じて、流動層S1の下部の適正温度が相違することから、温度センサ131aが検出した流動層S1の下部の圧力T1と、温度センサ131bが検出した流動層S1の上部の圧力T2との偏差が予め設定された所定偏差より高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。
【0087】
このように実施例3の流動層乾燥装置にあっては、流動層S1の下部の温度を検出可能な圧力センサ131aと、温度センサ131aが検出した流動層S1の下部の温度が予め設定された所定温度より高くなったときに通過開口部116の通過不良を判定して調整板121により通過開口部116の高さを高くする制御装置126とを設けている。
【0088】
従って、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の下部の温度が高くなることから、この流動層S1の下部の温度が所定高さより高くなったときに、通過開口部116の通過不良を判定し、調整板121を上昇させて通過開口部116の高さを高くしており、通過開口部116における原炭の通過不良を早期に解消し、原炭の乾燥効率を向上することができる。
【0089】
なお、上述した実施例1から3では、本発明の通過量調整装置として、通過開口部116,117の高さを調整可能な調整板121,122を設け、駆動装置123及びねじ軸124により昇降可能としたが、ねじ軸を中空形状とすると共に不活性ガス供給管を連結し、ねじ軸に形成された多数の穴からこの不活性ガスを噴出するようにすることで、ねじ軸に付着する原炭を排除し、駆動不良を抑制することができる。
【実施例4】
【0090】
図7は、本発明の実施例4に係る流動層乾燥装置を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0091】
実施例4において、図7に示すように、通過開口部116を通過する原炭の通過量を調整可能な通過量調整装置として、この通過開口部116にロータリバルブ141が設けられており、このロータリバルブ141は駆動装置(調整装置)142によりその回転数が調整可能となっている。従って、駆動装置142によりロータリバルブ141を回転することで、流動層S1の原炭を通過開口部116から流動層S2に強制的に移動することができる。即ち、駆動装置142によりロータリバルブ141の回転数を調整することで、流動層S1から通過開口部116を通して流動層S2に移動する原炭量を調整することができる。
【0092】
また、本実施例では、通過開口部116における原炭の通過不良を検出する通過不良検出装置として圧力センサ125aが設けられると共に、この圧力センサ125aの検出結果を入力する制御装置126が設けられている。この制御装置126は、圧力センサ125aの検出結果に基づいて通過開口部116における原炭の通過不良を検出し、原炭の通過不良を検出したときには、ロータリバルブ141の回転数を上昇することで、通過開口部116における原炭の通過量を増加させるようにしている。
【0093】
具体的には、制御装置126は、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が予め設定された所定圧力より高くなったときに、通過開口部116が通過不良であると判定する。そして、原炭の通過不良を検出したときには、ロータリバルブ141の回転数を上昇して通過開口部116における原炭の通過量を増加させる。
【0094】
このように実施例4の流動層乾燥装置にあっては、流動層Sを原炭の流動方向に複数に分割すると共に下部に原炭の通過開口部116を形成する仕切板114と、通過開口部116に設けられたロータリバルブ141と、流動層S1の下部の圧力P1を検出可能な圧力センサ125aと、圧力センサ125aが検出した流動層S1の下部の圧力P1が予め設定された所定圧力より高くなったときに通過開口部116の通過不良を判定してロータリバルブ141の回転数を上昇する制御装置126とを設けている。
【0095】
従って、通過開口部116に原炭が詰まって閉塞すると、流動層S1の下部の圧力P1が高くなることから、この流動層S1の下部の圧力P1が所定圧力より高くなったときに、通過開口部116の通過不良を判定し、ロータリバルブ141の回転数を上昇しており、通過開口部116における原炭の通過不良を早期に解消し、原炭の乾燥効率を向上することができる。
【0096】
なお、上述した各実施例では、乾燥容器101内を3つの乾燥室111,112,113に区画したが、2つの乾燥室または4つ以上の乾燥室としてもよい。また、乾燥容器101の形状、原炭投入口102、乾燥炭排出口103、流動化蒸気供給部104、ガス排出口105、伝熱管106,107,108の各構成や配置は、各実施例に限定されるものではなく、流動層乾燥装置12の設置場所や用途などに応じて適宜変更が可能である。
【0097】
また、上述した各実施例では、湿潤燃料として低品位炭を使用したが、高品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0098】
また、上述した各実施例では、乾燥容器101内に流動化蒸気を供給するものとして説明したが、流動化ガスとして空気などを適用してもよい。また、仕切板114,115における鉛直方向の中間部に通過開口部116,117を設けたが、仕切板114,115における鉛直方向の下部に通過開口部116,117を設けてもよく、通過開口部116,117の位置に限定されるものではない。更に、通過開口部116,117に対して、調整板121,122を下降することでその高さを狭くしたが、調整板121,122を上昇することでその高さを狭くしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
11 給炭装置
12 流動層乾燥装置
13 微粉炭機
14 石炭ガス化炉
15 チャー回収装置
16 ガス精製装置
17 ガスタービン設備
18 蒸気タービン設備
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
101 乾燥容器
102 原炭投入口
103 乾燥炭排出口
104 流動化蒸気供給部
105 ガス排出口
106,107,108 伝熱管(加熱部)
111 第1乾燥室
112 第2乾燥室
113 第3乾燥室
114,115 仕切板
116,117 通過開口部
121,122 調整板(通過量調整装置)
123 駆動装置
124 ねじ軸
125a,125b,125c 圧力センサ(通過不良検出装置)
126 制御装置
131a,131b 温度センサ(通過不良検出装置)
141 ロータリバルブ(通過量調整装置)
142 駆動装置(調整装置)
F,F1,F2,F3 フリーボード部
S,S1,S2,S3 流動層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側の湿潤燃料投入部から湿潤燃料を投入可能であると共に他端側の乾燥物排出部から湿潤燃料が加熱乾燥された乾燥物を排出可能な中空形状をなす乾燥容器と、
前記乾燥容器の一部に流動化蒸気または流動化ガスを供給することで湿潤燃料と共に流動層を形成する流動化蒸気または流動化ガス供給部と、
前記流動層の湿潤燃料を加熱する加熱部と、
前記流動層を湿潤燃料の流動方向に複数に分割すると共に湿潤燃料の通過開口部を形成する仕切板と、
前記通過開口部を通過する湿潤燃料の通過量を調整可能な通過量調整装置と、
前記通過開口部における湿潤燃料の通過不良を検出する通過不良検出装置と、
前記通過不良検出装置が湿潤燃料の通過不良を検出したときに前記通過量調整装置により湿潤燃料の通過量を増加させる制御装置と、
を備えることを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項2】
前記通過量調整装置は、前記通過開口部の開口面積を調整可能な調整板を有することを特徴とする請求項1に記載の流動層乾燥装置。
【請求項3】
前記通過不良検出装置は、前記流動層における前記通過開口部の近傍の圧力または温度偏差が予め設定された所定幅より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴とする請求項1または2に記載の流動層乾燥装置。
【請求項4】
前記通過不良検出装置は、前記流動層の高さが予め設定された所定高さより高くなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の流動層乾燥装置。
【請求項5】
前記通過不良検出装置は、前記複数の流動層の高さの偏差が予め設定された所定偏差より大きくなったときに湿潤燃料の通過不良と判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の流動層乾燥装置。
【請求項6】
前記通過量調整装置は、前記通過開口部に設けられたロータリバルブの回転数を調整可能な調整装置を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の流動層乾燥装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記通過量調整装置により湿潤燃料の通過量を増加させても湿潤燃料の通過不良が解消されないときには、湿潤燃料の投入量減少処理、乾燥物排出量の増加処理、流動化蒸気または流動化ガスの供給量増加処理、加熱部による加熱温度の上昇処理のいずれかを実行することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の流動層乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108699(P2013−108699A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255564(P2011−255564)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】