説明

流動層乾燥設備及び流動層乾燥設備を用いたガス化複合発電システム

【課題】流動層乾燥設備及び流動層乾燥設備を用いたガス化複合発電システムを提供する。
【解決手段】粉砕された粉砕石炭101Aを乾燥する流動層乾燥装置102と、流動層乾燥装置102の一端側に粉砕石炭101Aを投入する石炭投入ライン120と、乾燥容器の下部に流動化ガスである流動化蒸気107を供給することで流動層111を形成する流動化ガス供給ライン121と、流動層乾燥装置102の上方から流動化ガス及び発生蒸気104を排出するガス排出ライン122と、供給された粉砕石炭101Aを加熱する加熱部である伝熱部材103と、石炭投入ライン120と異なる側の流動層111の上部近傍から加熱乾燥した微粒の乾燥炭101B F(FINE)を排出する微粒乾燥炭排出ライン123と、石炭投入ライン120と異なる側の流動層111の底部近傍から加熱乾燥した粗粒の乾燥炭101BR(ROUGH)を排出する粗粒乾燥炭排出ライン124とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭をガス化するガス化システムに適用できる流動層乾燥設備及び流動層乾燥設備を用いたガス化複合発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭ガス化複合発電設備は、石炭をガス化し、コンバインドサイクル発電と組み合わせることにより、従来型の石炭火力に比べてさらなる高効率化・高環境性を目指した発電設備である。この石炭ガス化複合発電設備は、資源量が豊富な石炭を利用可能であることも大きなメリットであり、適用炭種を拡大することにより、さらにメリットが大きくなることが知られている。
【0003】
従来の石炭ガス化複合発電設備は、一般的に、給炭装置、乾燥装置、石炭ガス化炉、ガス精製装置、ガスタービン設備、蒸気タービン設備、排熱回収ボイラ、ガス浄化装置などを有している。従って、石炭が乾燥されてから粉砕され、石炭ガス化炉に対して、微粉炭として供給されると共に、空気が取り込まれ、この石炭ガス化炉で石炭が燃焼ガス化されて生成ガス(可燃性ガス)が生成される。そして、この生成ガスがガス精製されてからガスタービン設備に供給されることで燃焼して高温・高圧の燃焼ガスを生成し、タービンを駆動する。タービンを駆動した後の排気ガスは、排熱回収ボイラで熱エネルギが回収され、蒸気を生成して蒸気タービン設備に供給され、タービンを駆動する。これにより発電が行なわれる。一方、熱エネルギが回収された排気ガスは、ガス浄化装置で有害物質が除去された後、煙突を介して大気へ放出される。
【0004】
ところで、このような石炭ガス化複合発電システム(IGCC)にて使用する石炭は、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)を用いている。
前記石炭ガス化複合発電システム(IGCC)に供給する石炭は、石炭ガス化炉内での反応性や気流搬送の観点より、微粉化する必要があり、微粉炭機として石炭ミルが用いられている。このため、原料として供給される石炭は、先ずクラッシャにより粗粉砕され、その後、乾燥機で乾燥された後、乾燥炭バンカで貯留される。次いで、石炭供給機により、石炭ミルに供給され、そこで粉砕・乾燥され、微粉炭とされ、その後、搬送ガスより搬送されて石炭ガス化炉に供給されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−279621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、乾燥機で乾燥された石炭には、微粒と粗粒とがあるが、従来では両者は一つの排出口から排出され、後流プロセスに供給されている。
特に、後流に乾燥石炭を微粉化する微粉炭機が設置されている場合には、粉砕の必要がない微粒までも供給されるために、微粉炭機の容量が必要以上に過大となるという、問題がある。
【0007】
また、近年においては、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)以外に、例えば亜瀝青炭や褐炭のように水分含有量が多く比較的低い発熱量を有する低品位の石炭(「低品位炭」又は「高水分炭」ともいう。)を用いて、ガス化することが提案されているが、この低品位炭は、水分含有量が多い(例えば水分約60%)ので、持ち込まれる水分量が多く、この水分により発電効率が低下してしまうので、低品位炭の場合には、上述した乾燥装置により低品位炭を乾燥して水分を除去し、さらに粉砕ミルにより粉砕して石炭ガス化炉に供給する場合には、機器点数が多く、システムが複雑となると共に、機器コストが高くなるという、問題がある。
【0008】
よって、石炭をガス化するガス化システムに高効率で供給することができ、コストの削減を図ることができる流動層乾燥設備の出現が切望されている。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、ガス化システムに高効率で供給することができ、コストの削減を図ることができる流動層乾燥設備及び流動層乾燥設備を用いたガス化複合発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、低品位石炭を乾燥する乾燥室を形成する流動層乾燥装置と、該流動層乾燥装置の一端側に低品位炭を投入する低品位炭投入ラインと、前記乾燥容器の下部に流動化ガスを供給することで低品位炭と共に流動層を形成する流動化ガス供給ラインと、前記流動層乾燥装置の上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出ラインと、前記流動層内に供給された低品位炭を加熱する加熱部と、前記石炭投入ラインと異なる側の流動層の上部近傍から加熱乾燥した微粒の乾燥炭を排出する微粒乾燥炭排出ラインと、前記石炭投入ラインと異なる側の流動層の底部近傍から加熱乾燥した粗粒の乾燥炭を排出する微粒乾燥炭排出ラインと、を具備することを特徴とする流動層乾燥設備にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、分離した粗粒の乾燥炭を前記低品位炭投入ライン近傍から乾燥容器内に供給する粗粒乾燥炭循環ラインを有することを特徴とする流動層乾燥設備にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の流動層乾燥設備と、前記流動層乾燥設備から供給される低品位炭が乾燥した微粒の乾燥炭を処理してガス化ガスに変換する石炭ガス化炉と、前記ガス化ガスを燃料として運転されるガスタービン(GT)と、前記ガスタービンからのタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン(ST)と、前記ガスタービン及び/又は前記蒸気タービンと連結された発電機(G)とを具備することを特徴とする石炭を用いたガス化複合発電システムにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流動層乾燥設備によれば、従来のような微粉化の微粉炭機を用いることなく、低品位炭を乾燥することだけでガス化することが可能となり、微粒と粗粒とを分離することができ、機器及びユーティリティコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に係る流動層乾燥設備の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る流動層乾燥設備の概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る石炭を用いたガス化複合発電システムの概略構成図である。
【図4】図4は、各種石炭に対するHGI指数との関係を示す図である。
【図5】図5は、乾燥炭の粒径分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る流動層乾燥設備の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1に係る流動層乾燥設備の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る流動層乾燥設備100Aは、低品位石炭(石炭)101を粉砕する粉砕機23と、該粉砕機23で粉砕された粉砕石炭101Aを乾燥する乾燥室を形成する流動層乾燥装置102と、該流動層乾燥装置102の一端側に粉砕石炭101Aを投入する低品位炭投入ライン120と、流動層乾燥装置102の下部に流動化ガスである流動化蒸気107を供給することで低品質炭と共に流動層111を形成する流動化ガス供給ライン121と、前記流動層乾燥装置102の上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出ライン122と、前記流動層111内に供給された粉砕石炭101Aを加熱する加熱部である伝熱部材103と、前記石炭の供給ライン120と異なる側の流動層111の上部近傍から加熱乾燥した微粒の乾燥炭101B F(FINE)を排出する微粒乾燥炭排出ライン123と、前記石炭投入ライン120と異なる側の流動層111の底部近傍から加熱乾燥した粗粒の乾燥炭101BR(ROUGH)を排出する粗粒乾燥炭排出ライン124とを具備するものである。また、前記ガス排出ライン122には、発生蒸気104中の粉塵を除去するサイクロン等の集塵装置105と、集塵装置105の下流側に介装され、発生蒸気104の熱を回収する熱回収システム106と、前記流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥炭101Bを冷却する冷却器31とを備えるものである。
なお、符号116は流動化ガスである流動化蒸気107を整流する整流板を図示する。
【0017】
流動層乾燥設備100Aにおいて、石炭101は、図示しない供給ホッパにより粉砕機23に供給され、粉砕され、粉砕石炭101Aとされる。この粉砕石炭101Aは、流動層乾燥装置102の図示しない投入口から内部に投入され、流動層乾燥装置102内に別に導入される流動化蒸気107により流動されて流動層111を形成する。
【0018】
伝熱部材103は、この流動層111内に配置されている。伝熱部材103内には、例えば150℃の乾燥用蒸気(過熱蒸気)Aが供給され、その高温の乾燥用蒸気(過熱蒸気)Aの潜熱を利用して粉砕石炭101Aを間接的に乾燥させるようにしている。乾燥に利用された乾燥用蒸気(過熱蒸気)Aは、例えば150℃の凝縮水Bとして流動層乾燥装置102の外部に排出されている。
【0019】
すなわち、加熱手段である伝熱部材103内面では、乾燥用蒸気(過熱蒸気)Aが凝縮して液体(水分)になるので、この際に放熱される凝縮潜熱を、粉砕石炭101Aの乾燥の加熱に有効利用している。なお、高温の乾燥用蒸気(過熱蒸気)A以外としては、相変化を伴う熱媒であれば何れでも良く、例えばフロンやペンタンやアンモニア等を例示することができる。また、伝熱部材103として熱媒体を用いる以外に電気ヒータを設置してもよい。
【0020】
伝熱部材103によって粉砕石炭101Aが乾燥される際に発生する発生蒸気104は、流動層乾燥装置102内において、流動層111の上部空間に形成されるフリーボード部Fからガス排出ライン122により流動層乾燥装置102の外部に排出される。この発生蒸気104は、石炭101が乾燥し微粉化したものが含まれているので、例えば集塵装置105により集塵して固体成分115として分離する。
この固体成分115は、流動層乾燥装置102から抜き出された微粒の乾燥炭101B Fを排出する微粒乾燥炭排出ライン123に合流され、微粒の乾燥炭101B Fと混合され、冷却器110で冷却され、その後石炭ガス化炉14に供給される。
【0021】
一方、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104は、例えば105〜110℃の蒸気であるので、熱回収システム106で熱回収された後、水処理部112で処理され、排水113として流動層乾燥設備100Aの外部に排出されている。なお、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104は、例えば、熱交換器や蒸気タービン等に適用してその熱を有効利用するようにしてもよい。
【0022】
また、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104の一部は、流動化ガス供給ライン121に介装された例えば循環ファン114により流動層乾燥装置102内に送られて、粉砕石炭101Aの流動層111を流動させる流動化蒸気107として利用される。なお、流動層111を流動化させる流動化媒体としては、発生蒸気104の一部を再利用しているが、これに限定されず、例えば窒素、二酸化炭素またはこれらのガスを含む低酸素濃度の空気を用いてもよい。
【0023】
なお、上述した流動層乾燥装置102は、伝熱部材103として、本実施例はチューブ形状の伝熱部材を例示しているが、本発明はこれに限定されず、例えば板状の伝熱部材を用いるようにしてもよい。
また、乾燥用蒸気(過熱蒸気)Aを伝熱部材103に供給して粉砕石炭101Aを間接的に乾燥させる構成を説明したが、これに限らず、粉砕石炭101Aの流動層111を流動させる流動化蒸気107により粉砕石炭101Aを直接乾燥させる構成、さらに加熱用の流動化ガスを供給して乾燥させる構成としてもよい。
【0024】
本実施例では、流動層111内で形成される微粒と粗粒との偏りの分布の性質を利用して、微粒の乾燥炭101BFを排出する微粒乾燥炭排出ライン123と、粗粒の乾燥炭101BRを排出する粗粒乾燥炭排出ライン124とを、流動層111の層上部と層底部とに設けることにより、粗粒と微粒とを分けて排出することができる。
これにより石炭ガス化炉14に供給する粒径のバラつきを抑制できる。
また、後流側に微粉炭機を設置する場合においても、粗粒のみを供給することで、後流プロセスの設備容量を低減することができる。
【0025】
本発明では、石炭の種類は特に限定されるものではなく、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)、例えば亜瀝青炭や褐炭のように水分含有量が多い(例えば50〜60%)低品位の石炭(低品位炭又は高水分炭)のいずれも適用することができる。
【0026】
なお、瀝青炭や無煙炭のように高い発熱量を有する高品位の石炭(高品位炭)を噴流床ガス化炉に適用する場合には、微粉砕機を設置することが必須であるが、例えば亜瀝青炭や褐炭のように水分含有量が多い(例えば50〜60%)低品位の石炭(低品位炭又は高水分炭)の場合には、微粉炭機を用いて微粉化せずに、乾燥した石炭101Bをそのまま石炭ガス化炉14に供給することができるので、微粉砕機の機器及びそのユーティリティコストの低減を図ることができる。
【0027】
これは、本発明で用いる例えば亜瀝青炭や褐炭のように水分含有量が多い(例えば50〜60%)低品位の石炭(低品位炭又は高水分炭)は、石炭の粉砕性の指標であるHGI(HardGroveIndex)指数が高いので、粉砕性が良好なことに起因する。
【0028】
ここで、HGIとは、一定の石炭を所定時間粉砕に掛け、所定粒度以下の重量割合を、その指数とするものである。この為数字の大きいもの程粉砕されやすい石炭となるとしている。通常はHGI指数が50前後であり、HGI指数が40以下は硬いものとされ、逆にHGI指数が60以上はもろいと判断されている。
【0029】
図4は、各種石炭に対するHGI指数との関係を示す図である。
図4より、高品位炭である瀝青炭に較べて、低品位炭である褐炭はHGI指数が80以上と高く、軟らかいものであることがわかる。
この結果、流動層111内における摩擦、衝突による粗粒の微粒化を図ることができ、微粒化率の割合を向上させるものとなる。
【0030】
図5は、乾燥炭の粒径分布の一例を示す図である。
図5の分布は、図4の褐炭Aを5mm以下の粉砕物を用いて、流動層乾燥装置102で乾燥させた際の、ふるい上の重量割合とメッシュ(μm)との関係図である。
図5に示すように、流動層乾燥装置102で乾燥させると、1000μm前後にピークを有する幅をもった粒径分布であることが判明した。
【0031】
粉砕石炭101Aの粒度は、粉砕機23の粉砕度合いによるが、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下とするのが、後流側における乾燥装置での乾燥が良好であると共に、乾燥炭101Bの搬送が良好となり、好ましい。
ここで、粉砕機23での粉砕の際における目標粒径範囲としては約2mm以下としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
また流動層乾燥装置102での乾燥度合いは、供給される粉砕石炭101Aの水分含有量により異なるが、乾燥度合いが15%以下、より好ましくは10%以下とするのが良い。これは、乾燥状態が良好であると、石炭ガス化炉でのエネルギーロスが少なくなるからである。
【0033】
図4及び図5より、低品位炭である褐炭は、水分含有量が高いものの、高品位炭よりもHGIが高いので、軟らかいものである。そして流動層乾燥装置102での乾燥により水分が除去されつつ流動化されるので、メッシュ径2000μm以下の割合が多いものとなり、そのままでも石炭ガス化炉でガス化しやすい特性を備えた乾燥炭101Bとなる。
【0034】
よって、石炭として低品位炭を用いる場合には、高品位炭のような粉砕機による微粉化処理を一切省くことができる。これにより微粉炭機の設置が不要となり、ガス化複合発電システムに供給する設備のコンパクト化を図ることができる。
【0035】
また、石炭ガス化炉14内の空塔速度は、炉内に直接供給される乾燥及び冷却された冷却乾燥炭101Bが落下しない空塔速度とすることが好ましい。これにより、乾燥炭101Bの良好なガス化が可能となる。
【実施例2】
【0036】
図2は、実施例2に係る流動層乾燥設備の概略図である。
図2に示すように、本実施例に係る流動層乾燥設備100Bは、実施例1に係る流動層乾燥設備100Aにおいて、粗粒の乾燥炭101BRを粗粒乾燥炭循環ライン125を介して、石炭投入ライン120の投入口の近傍に供給し、再度粗粒の乾燥炭101BRを流動層乾燥装置102内に投入させている。これにより、流動層111内における摩擦、衝突による粗粒の微粒化を図り、微粒化率の割合を向上させることができる。
また、乾燥された粗粒の乾燥炭101BRを供給するので、湿潤材料である粉砕石炭101Aの流動不良の防止を図ることができ、乾燥効率の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0037】
図3は、実施例3に係る石炭を用いたガス化複合発電システムの概略構成図である。
【0038】
実施例3の石炭を用いたガス化複合発電システム(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤として石炭ガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。即ち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。本実施例では、石炭ガス化炉14に供給する石炭原料として低品位炭を使用している。
【0039】
実施例3において、図3に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、原料炭である石炭101を供給する低品位炭供給設備11と、石炭101を乾燥する流動層乾燥装置102と、乾燥低品位炭(乾燥炭)101Bを供給してガス化し可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)200を生成する石炭ガス化炉14と、ガス化ガスである可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)200中のチャー101Cを回収するチャー回収装置15と、可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)200Aを精製するガス精製装置16と、精製された燃料ガス200Bを燃焼させてタービンを駆動するガスタービン設備17と、前記ガスタービン設備17からのタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator:HRSG)20で生成した蒸気により運転される蒸気タービン(ST)設備18と、前記ガスタービン設備17及び/又は前記蒸気タービン設備18と連結された発電機(G)19とを具備している。
【0040】
本実施例に係る低品位炭供給設備11は、原炭バンカ21と、石炭供給機22と、粉砕機23とを有している。原炭バンカ21は、石炭101を貯留可能であって、所定量の石炭101を石炭供給機22に投下することができる。石炭供給機22は、原炭バンカ21から投下された石炭101を例えばコンベアなどにより搬送し、粉砕機23に投下することができる。この粉砕機23は、投下された石炭101を所定の大きさに破砕し、粉砕石炭101Aとすることができる。
【0041】
流動層乾燥装置102は、低品位炭供給設備11により投入された石炭101に対して乾燥用蒸気(例えば150℃程度の過熱蒸気)Aを供給することで、この低品位炭を流動させながら加熱乾燥するものであり、石炭101が含有する水分を除去することができる。そして、この流動層乾燥装置102は、外部に取り出された乾燥済の乾燥炭101Bを冷却する冷却器31が設けられ、乾燥冷却済の乾燥炭101Bが乾燥炭バンカ34に貯留される。また、流動層乾燥装置102は、上部から取り出された発生蒸気104に同伴される乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン等の集塵装置105が設けられ、発生蒸気104から微粒の乾燥炭の粒子を分離している。なお、サイクロン等の集塵装置105で乾燥炭が分離された蒸気は、蒸気圧縮機で圧縮されてから流動層乾燥装置102に乾燥用蒸気として供給するようにしてもよい。
【0042】
流動層乾燥装置102で乾燥され、ついで冷却器31で冷却された乾燥冷却済の乾燥炭101Bは、流動層111の上部近傍から加熱乾燥した微粒の乾燥炭101B F(FINE)として排出され、微粒乾燥炭排出ライン123を介して、その後、バグフィルタ32、ビンシステム33を介して、一時乾燥炭バンカ34に貯留される。
一方、前記石炭投入ライン120と異なる側の流動層111の底部近傍から加熱乾燥した粗粒の乾燥炭101BR(ROUGH)は、粗粒乾燥炭排出ライン124を介して、別途設置した燃焼炉130に供給し、ここで燃焼され、熱回収をするようにしてもよい。
【0043】
また、実施例2に示すように、再度流動層乾燥装置102の投入口へ戻すようにしてもよい。
【0044】
石炭ガス化炉14は、乾燥炭バンカ34から供給される微粒の乾燥炭101B Fが供給可能であると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)101Cが戻されてリサイクル可能となっている。
【0045】
即ち、石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機61)から圧縮空気供給ライン41が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置42は、大気中の空気40から窒素(N2)と酸素(O2)を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン43は乾燥炭供給ライン123に接続されている。また、第2窒素供給ライン45も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン45にチャー回収装置15から回収されたチャー101Cを戻すチャー戻しライン46が接続されている。更に、酸素供給ライン47は、圧縮空気供給ライン41に接続されている。この場合、窒素(N2)は、乾燥炭101Bやチャー101Cの搬送用ガスとして利用され、酸素(O2)は、酸化剤として利用される。
【0046】
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された微粒の乾燥炭101B F、チャー101C、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、一酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)200を発生させ、この可燃性ガス200をガス化剤としてガス化反応を生じさせている。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した溶融スラグ等の異物を除去する異物除去装置48が設けられている。
本例では、石炭ガス化炉14として噴流床ガス化炉を例示しているが、本発明は、これに限定されず、例えば流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガス200のガス生成ライン49が設けられており、チャー101Cを含む可燃性ガス200が排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン49にガス冷却器を別途を設けることで、可燃性ガス200を所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
【0047】
チャー回収装置15は、集塵装置51とチャー供給ホッパ52とを有している。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された可燃性ガス200に含有するチャー101Cを分離することができる。そして、チャー101Cが分離された可燃性ガス200Aは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。チャー供給ホッパ52は、集塵装置51で可燃性ガス200から分離されたチャー101Cを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数のチャー供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0048】
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャー101Cが分離された可燃性ガス200Aに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置16は、チャー101Cが分離された可燃性ガス200Aを精製して燃料ガス200Bを製造し、これをガスタービン設備17に供給する。なお、このガス精製装置16では、チャー101Cが分離された可燃性ガス200A中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、例えばアミン吸収液等によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0049】
ガスタービン設備17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を有しており、圧縮機61とタービン63は、回転軸64により連結されている。燃焼器62は、圧縮機61から圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン66が接続され、タービン63に燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機61から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気40Aとガス精製装置16から供給された燃料ガス200Bとを混合して燃焼し、タービン63にて、発生した燃焼ガス202により回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0050】
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸64に連結されるタービン69を有しており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン63)からの排ガスライン70に設けられており、空気40と高温の排ガス203との間で熱交換を行うことで、蒸気204を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン69との間に蒸気204を供給する蒸気供給ライン71が設けられると共に、蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。従って、蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気204によりタービン69が駆動し、回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
【0051】
そして、排熱回収ボイラ20で熱が回収された排ガス205は、ガス浄化装置74により有害物質を除去され、浄化された排ガス205Aは、煙突75から大気へ放出される。
【0052】
ここで、実施例3の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
【0053】
実施例3の石炭ガス化複合発電設備10において、低品位炭供給設備11にて、原炭である石炭101が原炭バンカ21に貯留されており、この原炭バンカ21の石炭101が石炭供給機22により粉砕機23に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された粉砕石炭101Aは、流動層乾燥装置102により加熱乾燥され、乾燥によって微粒の乾燥炭101B Fと粗粒の乾燥炭101BRとに分離し、微粒の乾燥炭101B Fのみを微粒乾燥炭排出ライン123を介して抜き出した後、冷却器31により冷却されて冷却済の微粒の乾燥炭101B Fとされ、乾燥炭バンカ34に貯留される。
【0054】
乾燥炭バンカ34に貯留された微粒の乾燥炭101B Fは、空気分離装置42から供給される窒素により微粒乾燥炭排出ライン123を通して石炭ガス化炉14に供給される。また、後述するチャー回収装置15で回収されたチャー101Cが、空気分離装置42から供給される窒素によりチャー戻しライン46を通して石炭ガス化炉14に供給される。更に、後述するガスタービン設備17から抽気された圧縮空気37が昇圧機68で昇圧された後、空気分離装置42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通して石炭ガス化炉14に供給される。
【0055】
石炭ガス化炉14では、供給された微粒の乾燥炭101B F及びチャー101Cが圧縮空気(酸素)37により燃焼し、微粒の乾燥炭101B F及びチャー101Cがガス化することで、一酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)200を生成することができる。そして、この可燃性ガス200は、石炭ガス化炉14からガス生成ライン49を通して排出され、チャー回収装置15に送られる。
【0056】
このチャー回収装置15にて、可燃性ガス200は、まず、集塵装置51に供給されることで、ここで可燃性ガス200に含有するチャー101Cが分離される。そして、チャー101Cが分離された可燃性ガス200Aは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。一方、可燃性ガス200から分離した微粒のチャー101Cは、チャー供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通して石炭ガス化炉14に戻されてリサイクルされる。
【0057】
チャー回収装置15によりチャー101Cが分離された可燃性ガス200Aは、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガス200Bが製造される。そして、ガスタービン設備17では、圧縮機61が圧縮空気40Aを生成して燃焼器62に供給すると、この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気40Aと、ガス精製装置16から供給される燃料ガス200Bとを混合し、燃焼することで燃焼ガス202を生成し、この燃焼ガス202によりタービン63を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0058】
そして、ガスタービン設備17におけるタービン63から排出された排ガス203は、排熱回収ボイラ20にて、空気40と熱交換を行うことで蒸気204を生成し、この生成した蒸気204を蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気204によりタービン69を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
【0059】
その後、ガス浄化装置74では、排熱回収ボイラ20から排出された排ガス205の有害物質が除去され、浄化された排ガス205Aが煙突75から大気へ放出される。
【0060】
なお、本実施例では、石炭原料として低品位炭を使用したが、高品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 石炭ガス化複合発電設備
11 低品位炭供給設備
14 石炭ガス化炉
15 チャー回収装置
16 ガス精製装置
17 ガスタービン設備
18 蒸気タービン設備
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
100A、100B 流動層乾燥設備
101 低品位炭
101A 粉砕低品位炭(粉砕炭)
101B 乾燥低品位炭(乾燥炭)
102 流動層乾燥装置
103 伝熱部材(加熱手段)
104 発生蒸気
31 冷却器
A 乾燥用蒸気(過熱蒸気)
B 凝縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低品位石炭を乾燥する乾燥室を形成する流動層乾燥装置と、
該流動層乾燥装置の一端側に低品位炭を投入する低品位炭投入ラインと、
前記乾燥容器の下部に流動化ガスを供給することで低品位炭と共に流動層を形成する流動化ガス供給ラインと、
前記流動層乾燥装置の上方から流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出ラインと、
前記流動層内に供給された低品位炭を加熱する加熱部と、
前記石炭投入ラインと異なる側の流動層の上部近傍から加熱乾燥した微粒の乾燥炭を排出する微粒乾燥炭排出ラインと、
前記石炭投入ラインと異なる側の流動層の底部近傍から加熱乾燥した粗粒の乾燥炭を排出する微粒乾燥炭排出ラインと、を具備することを特徴とする流動層乾燥設備。
【請求項2】
請求項1において、
分離した粗粒の乾燥炭を前記低品位炭投入ライン近傍から乾燥容器内に供給する粗粒乾燥炭循環ラインを有することを特徴とする流動層乾燥設備。
【請求項3】
請求項1又は2の流動層乾燥設備と、
前記流動層乾燥設備から供給される低品位炭が乾燥した微粒の乾燥炭を処理してガス化ガスに変換する石炭ガス化炉と、
前記ガス化ガスを燃料として運転されるガスタービン(GT)と、
前記ガスタービンからのタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により運転される蒸気タービン(ST)と、
前記ガスタービン及び/又は前記蒸気タービンと連結された発電機(G)とを具備することを特徴とする石炭を用いたガス化複合発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−215326(P2012−215326A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79788(P2011−79788)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】