説明

流動床式焼却炉の給じん装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、流動床式焼却炉にごみを供給するための給じん装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の給じん装置は、例えば、実開平6−14731号公報(公報1)、特開昭48−99873号公報(公報2)、特開昭61−11519号公報(公報3)及び実開昭62−204136号公報(公報4)などに記載のごとく、この発明の実施例を示す図1を参照して説明すると、流動床式焼却炉Aに付設され、ごみaを収納するホッパ1の下部にスクリューフィーダ2を設けたものであり、ホッパ1にごみaを満たした状態で、フィーダ2によりごみaを流動床式焼却炉Aに送り込む。
【0003】このとき、フィーダ2のスクリュー2aによりごみaが圧縮されて塊状となるため、上記各公報に記載のごとく、そのフィーダ2の押出口3に対向して、回転刃4を設け、この回転刃4により押出された塊状のごみaを解砕し、細かいごみa’として炉Aに送り込み、安定した燃焼を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この給じん装置において、ホッパ1に投入されるごみaは、その性状が一定ではないため、フィーダ2から押出されるごみaの圧縮度及び量も一定ではない。このため、公報3、4に示すように、回転刃4が定位置に固定であると、その回転刃4の能力以上のごみaが押出された際、ごみaが解砕されず、塊状の状態で、フィーダ2の押出口3の前側に残って塞ぐ現象が生じる。このようになれば、給じん装置は停止し、その閉塞現象を解消させて再駆動させることとなる。この間、炉Aにはごみa’が送り込まれないこととなり、作業能率の低下を招くうえに、燃焼状態の変化を来たす等の問題が生じる。
【0005】公報1記載の回転刃は後退可能となっているが、その後退作用は明確ではなく、上記閉塞状態が生じた場合、又は修理等の場合に後退させるものと考えられる。
【0006】公報2記載の回転刃は空気シリンダにより進退可能となっているが、炉Aが正圧で駆動されるために、その圧の外部への漏れを防止するため、進行してフィーダの押出口を閉じる作用をなすものである。また、そのシリンダ内への印加圧を、塊状のごみaの押出しにより回転刃に加わる圧力によって定める旨の記載はあるが、これは、ホッパ1に投入されるごみaの性状に対応して一定値に決定する旨と考えられる。
【0007】すなわち、従来の回転刃は、所定位置に固定されているか、又は進退可能であってもフィーダ2から押出されるごみaの圧縮度、量に対応した作用をなすものはない。その対応した作用をなせば、フィーダ2の閉塞のみならず、解砕作用も均一化して安定した燃焼を行い得る。
【0008】この発明は、フィーダから押出されるごみの圧縮度、量に対応して回転刃が解砕作用をなすようにすることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、この発明は、まず、上記回転刃を、上記スクリューフィーダからのごみ押出し圧に応じて、フィーダ押出口の対向方向に進退するようにしたのである。
【0010】このようにすれば、ごみの性状などにより、圧縮度、量が変わり、押出し圧が高くなると、回転刃は後退して、そのごみ押出し受圧の減少作用を行って、自己の解砕作用の維持をつづけ、安定した細かい解砕済のごみを炉に送り込む。このため、回転刃とフィーダの間でごみの閉塞状態も生じにくく、安定した燃焼作用を得ることができる。押出し圧が平常に戻れば、回転刃は定位置に復帰する。
【0011】つぎに、この発明は、上記回転刃におけるごみ押出し受圧を一定となるようにしたのである。このようにすれば、回転刃の解砕作用は一定化し、より安定した解砕済ごみが炉に送り込まれることとなって、より安定した燃焼作用を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】上記発明の実施形態としては、上記回転刃を有する台を、その回転刃の進退方向に移動自在に設け、前記台にシリンダのピストンロッドを連結して、その台をシリンダにより前記進退方向に移動可能とし、シリンダには所定の空気圧を印加して、回転刃におけるごみ押出し受圧を一定となるようにした構成を採用し得る。
【0013】回転刃にシリンダ印加圧に基づく一定圧以上のごみ押出し圧が加わると、ピストンロッドにその押出し圧が加わるため、ピストンロッドは台とともに後退する。ピストンロッドが後退すると、シリンダ内の圧力は上昇するが、その圧力は、所定圧を維持する、例えばリリーフ弁で逃がされて、シリンダ内は常に所定の空気圧が維持される。また、ごみ押出し圧は回転刃が後退することにより、その受圧が下がる。このため、回転刃は常に一定のごみ押出し受圧で解砕作用をなすこととなる。
【0014】
【実施例】図1乃至図3に一実施例を示し、この実施例も従来と同様に、負圧で駆動される流動床焼却炉Aへのごみ投入路Bの基枠10上に備えられている。この基枠10にはホッパ1が備えられて、このホッパ1の下部にスクリューフィーダ2が設けられている。ホッパ1には超音波レベル計(図示せず)が取付けられており、このレベル計により、常時ホッパ1内のごみ貯留量を一定以上に保つようにごみ送り込みコンベア(図示せず)が制御される。この作用により、ごみaによるシール性の確保及び上流機器の電力消費低減がなされる。
【0015】上記フィーダ2は2本のスクリュー2a、2aを有し、この両スクリュー2a、2aは、図3(b)に示すように大きさの異なる歯車20a、20bが噛み合い、同図(a)矢印方向に異なる速度で回転してホッパ1内のごみaを投入路Bに供給する。このとき、フィーダ2の電動機は可変速であり、中央操作盤における手動操作又は自動制御器からの入力信号によってスクリュー2aの回転速度が制御されて、炉A内の負荷に応じたごみaを供給する。
【0016】また、ホッパ1にはごみ押し込み用プッシャ5が備えられており、このプッシャ5はエアシリンダ51とそのピストンロッドの押し込み棒52とからなる。図1鎖線のごとく、このプッシャ5は押し込み棒52を進行させて、図2、図3(a)のごとく、ごみaを両スクリュー2a、2a間に押し込み、スクリュー2a、2aに確実に喰い込ませる。プッシャ5の駆動は、逆止弁付流量調整弁53を介し電動切換弁54により圧縮空気をシリンダ51に給排することにより行う。
【0017】フィーダ2のごみ押出口3には回転刃4が対向して設けられており、この回転刃4は周囲4等分位に放射状の羽根4aを有するものであり、この羽根4aの回転により、押し出されたごみaを解砕する。
【0018】回転刃4の軸41は基枠10上の台車42に回転自在に支持され、この台車42上の電動機43により、スプロケット44、チェーン45を介して回転刃4が所要の速度で回転される。台車42に代えて、基枠10上を摺動する架台ともし得る。図中、43aはギヤボックスである。
【0019】基枠10には台車42の後方にエアシリンダ6が設置され、このエアシリンダ6のピストンロッド61が台車42に連結されており、このピストンロッド61の進退により、台車42が移動して、回転刃4がフィーダ2の押出口3に対し接離する。エアシリンダ6には、逆止弁付流量調整弁62、リリーフ弁63を介し電動切換弁64により圧縮空気が給排され、この切換えにより、ピストンロッド61が進退する。図中、65は圧力計、66はサイレンサである。
【0020】リリーフ弁63の設定圧は、回転刃4が所定位置(図1実線)においてごみaを円滑に解砕するごみ押出し受圧の最大値に対応するように実験等により適宜に決定する。例えば、0.5〜1.0kg/cm2 の範囲で、0.8kg/cm2程度とする。このため、フィーダ2からのごみ圧縮度、量が増して回転刃4への押出しごみ圧がリリーフ弁63の設定圧によるごみ押出し受圧より高くなると、シリンダ6内の圧が上昇するため、リリーフ弁63はその圧を逃がし、これによってピストンロッド61は後退して、台車42が矢印のごとく動き、回転刃4が押出口3から離れてフィーダ2からのごみ押出し受圧を低下させて設定圧と均り合った位置で停止する。ごみ押出し圧が低下すれば、台車42が前進して回転刃4を押出口3に接近させ、設定圧と均り合った位置又は実線位置で停止する。
【0021】すなわち、リリーフ弁63の作用により、回転刃4は、フィーダ2からのごみ押出し圧に応じて、その対向方向後側の所要位置に後退して、自己の受ける押出しごみ圧(ごみ押出し受圧)を一定にされて解砕作用をなす。フィーダ2と回転刃4の間にごみの閉塞状態が続き、ごみ押出し受圧が許容範囲以上となれば、その検出信号、例えば電動機43の負荷電流が所要値以上となった検出信号によって、切換弁64により、シリンダ6への圧縮空気の入れ換えを行って、ピストンロッド61を最大ストローク後退させて、その閉塞状態の解消を図る。
【0022】なお、フィーダ2からのごみ押出し圧が高まったとき、ピストンロッド61の進退量の検出等によりそのことを検出して、回転刃4の回転数を上げることにより、解砕作用を促進させることもできる。このフィーダ2からのごみ押出し圧に応じて回転数を上昇させる機能は単独に設けても、この発明に係る回転刃4の進退機能と併用して設けることもできる。
【0023】また、上記エアシリンダ6に代えて、図4に示す、ばねダンパー6aを採用し得る。この場合、ばね圧に応じて回転刃4の進退度合が決定される。
【0024】
【発明の効果】この発明は、フィーダから押し出されるごみの圧縮度、量に対応して回転刃が進退して、円滑なごみ解砕作用を行い得るようにしたので、ごみの閉塞状態が生じにくく、安定した燃焼作用を担保し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の概略正面図
【図2】同実施例の概略平面図
【図3】(a)、(b)ともに同実施例の要部切断側面図
【図4】他の実施例の要部概略正面図
【符号の説明】
1 ごみホッパ
2 スクリューフィーダ
2a スクリュー
3 スクリューフィーダ押出口
4 回転刃
5 ごみ押し込みプッシャ
6 回転刃進退用エアシリンダ
42 回転刃支持台車
43 回転刃用電動機
51 プッシャ用エアシリンダ
52 プッシャ用押し込み棒
61 ピストンロッド
63 ごみ押出し受圧設定用リリーフ弁
a ごみ
a’ 解砕ごみ
A 流動床式焼却炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ごみaを収容するホッパ1の下部に流動床式焼却炉Aに前記ごみaを供給するスクリューフィーダ2を設けるとともに、このスクリューフィーダ2の押出口3に対向して、押出されるごみaを解砕する回転刃4を設けた給じん装置において、上記回転刃4は、上記スクリューフィーダ2からのごみ押出し圧に応じて、上記対向方向に進退することを特徴とする流動床式焼却炉の給じん装置。
【請求項2】 上記回転刃4におけるごみ押出し受圧を一定となるようにしたことを特徴とする請求項1記載の流動床式焼却炉の給じん装置。
【請求項3】 上記回転刃4を有する台42を、その回転刃4の進退方向に移動自在に設け、前記台42にシリンダ6のピストンロッド61を連結して、その台42をシリンダ6により前記進退方向に移動可能とし、前記シリンダ6には所定の圧力を印加して回転刃4におけるごみ押出し受圧を一定となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の流動床式焼却炉の給じん装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3074263号(P3074263)
【登録日】平成12年6月2日(2000.6.2)
【発行日】平成12年8月7日(2000.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−185365
【出願日】平成9年7月10日(1997.7.10)
【公開番号】特開平11−29204
【公開日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【審査請求日】平成11年6月16日(1999.6.16)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【参考文献】
【文献】特開 昭48−99873(JP,A)
【文献】特開 平1−92113(JP,A)
【文献】特開 昭61−263501(JP,A)
【文献】特開 昭61−11519(JP,A)
【文献】特開 昭53−20668(JP,A)
【文献】実開 昭62−204136(JP,U)
【文献】実開 昭52−102865(JP,U)
【文献】実開 平6−14731(JP,U)
【文献】実開 昭62−112433(JP,U)