説明

流動床用アンモ酸化触媒及びそれを用いたアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造方法

【課題】プロピレン等のアンモ酸化反応によるアクリロニトリル等の製造に際し、プロピレン等に対して過剰量のアンモニアが少ない条件下でアクリロニトリル等を高収率で長期安定的に生産することができる触媒の提供。
【解決手段】プロピレン等と分子状酸素とアンモニアとを反応させてアクリロニトリル等を製造する際に用い、下記一般式(1)
MoaBibCecFedefghi…(1)
(式中、EはNi等、JはMg等、GはSb等、LはK等、a〜iはそれぞれ各元素の原子比(特定の数値範囲)をそれぞれ表す。)
で表される元素組成を有し、各元素の原子比から下記式(2)、(3)により算出されるα及びβが0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を満たす酸化物と、その酸化物を担持する担体とを備える流動床用アンモ酸化触媒。
α=1.5(b+c)/(1.5d+e+f)…(2)
β=1.5d/(e+f)…(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に用いる流動床用アンモ酸化触媒、並びに、これを用いたアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとの反応である、いわゆるアンモ酸化反応によりアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する方法はよく知られている。このアンモ酸化反応に用いられる触媒も多数提案されている。
【0003】
アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に用いられる触媒には、様々な元素が適用され、その例示される成分の数も多く、多元素系の複合酸化物触媒として成分の組合せや組成の改良が進められていることが過去の文献から理解される。特許文献1には、モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄、亜鉛の他、Ni、Co、Mg、Ca、Sr、Ba、Cdから選ばれた1種以上の元素、及びNa、K、Rb、Cs、Tlから選ばれた1種以上の元素を必須成分として含有するアンモ酸化用触媒組成物が記載されている。
【0004】
元素の種類や成分濃度の範囲を規定する他、それらの元素と他の元素との関係式を導き出している例もある。モリブデン、ビスマス、鉄の他、セリウムを含み、そのビスマスとセリウムとの原子比率を、ある一定範囲に収めることを特徴とする触媒が特許文献2、特許文献3、特許文献4に開示されている。これらの開示された技術は、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造に際して、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルの高い収率を得るための方法及びアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの高い収率を得るために用いる触媒として開示されたものである。
【0005】
特許文献1〜4には、近年開発されている触媒を用いた際に得られるアクリロニトリル、メタアクリロニトリルの収率として、高い値が示されている。ただし、開示例からも明らかなように、反応における副生成物は未だに存在し、目的生成物であるアクリロニトリルやメタアクリロニトリルを製造する際に副生成物の回収や処理が伴うのも事実である。従来の技術に満足することなく、アクリロニトリルやメタアクリロニトリルを製造する上で少しでも副生成物が少ない方法、つまりは高収率を達成できる方法及び触媒が求められている。
【0006】
また、その一方で、アクリロニトリルやメタアクリロニトリルを高収率で得られる触媒が完成しても、その高収率が初期の反応性能に限られ、触媒劣化により短期に収率低下を起こすものや、形状や強度に問題があり、実用プロセスで用いることができない触媒は事実上利用できない。そのため、実用性、取扱性に優れる触媒であることも必要である。
【特許文献1】特許第3497558号公報
【特許文献2】特許第3214975号公報
【特許文献3】特許第3214984号公報
【特許文献4】特許第3838705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを高収率で得るために、原料のプロピレン等に対するアンモニアのモル比を高めて、目的生成物の収率を向上させることが知られている。原料のアンモニアは、原料のプロピレン等のニトリル化に消費される他、酸化分解して窒素に変換されたり、反応で消費されずに未反応分として残存したりする。未反応のアンモニアが残存する条件、すなわちアンモニアを過剰に使用する条件を適用した場合、目的生成物の収率は高められるものの、未反応のアンモニアを処理するために多量の硫酸が必要になったり、硫酸処理により生じる硫酸アンモニウム塩の処理がさらに必要になったりする。そのため、過剰量のアンモニアが少ない条件においても、良好な収率を示す触媒が望ましいと本発明者は考察した。
すなわち、本発明は、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのアンモ酸化反応によるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造に際して、過剰量のアンモニアが少ない条件下でアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを高収率で長期安定的に生産することができる触媒を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールを分子状酸素及びアンモニアと反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に用いる触媒として、以下に示す触媒が、高いアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの反応収率を示し、ライフ安定性、取扱性の面でも高性能を示すことを見出した。本発明者は、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に用いる触媒であって、下記一般式(1)
MoaBibCecFedefghi・・・(1)
(式(1)中、Eはニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Jはマグネシウム、亜鉛及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Gはアンチモン及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Lはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、a、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ各元素の原子比を表し、10≦a≦14、0.03≦b≦1、0.03≦c≦1、0.5≦d≦4、2≦e≦10、0≦f≦8、0≦g≦2、0.02≦h≦1であり、iは酸素以外の構成元素の原子価を満足する酸素原子の原子比を表す。)
で表される元素組成を有し、各元素の前記原子比から下記式(2)及び(3)により算出されるα及びβが0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を同時に満たす酸化物と、その酸化物を担持した担体と、を備える流動床用アンモ酸化触媒。
α=1.5(b+c)/(1.5d+e+f)・・・(2)
β=1.5d/(e+f)・・・(3)
[2] 各元素の前記原子比から下記式(4)により算出されるγが、−1≦γ≦1.5を満たす、[1]の流動床用アンモ酸化触媒。
γ=a−1.5(b+c+d)+e+f+g・・・(4)
[3] 前記担体がシリカを含有する、[1]又は[2]の流動床用アンモ酸化触媒。
[4] 前記酸化物を担持する担体を更に備え、該担体のシリカ量が30〜70質量%である、[1]〜[3]のいずれか一つの流動床用アンモ酸化触媒。
[5] 細孔分布測定において細孔直径1〜200nmの細孔の占める全細孔容積を基準として、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が20%以下である、[1]〜[4]のいずれか一つの流動床用アンモ酸化触媒。
[6] [1]〜[5]のいずれか一つの流動床用アンモ酸化触媒を用い、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造するアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流動床アンモ酸化触媒を用いれば、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのアンモ酸化反応によるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造に際して、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールに対して過剰量のアンモニアが少ない条件下でアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを高収率で長期安定的に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の流動床用アンモ酸化触媒は、下記一般式(1)で表される元素組成を有する酸化物を備える。その酸化物を構成する各元素の原子比から下記式(2)及び(3)により算出されるα及びβは、0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を同時に満たす。
MoaBibCecFedefghi・・・(1)
α=1.5(b+c)/(1.5d+e+f)・・・(2)
β=1.5d/(e+f)・・・(3)
式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Ceはセリウム、Feは鉄、Oは酸素、Eはニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Jはマグネシウム、亜鉛及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Gはアンチモン及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Lはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。a、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ各元素の原子比を表し、10≦a≦14、0.03≦b≦1、0.03≦c≦1、0.5≦d≦4、2≦e≦10、0≦f≦8、0≦g≦2、0.02≦h≦1である。iは酸化物を構成する元素(構成元素)のうち、酸素以外の構成元素の原子価を満足する酸素原子の原子比を表す。
【0012】
本実施形態の流動床用アンモ酸化触媒は、MoaBibCecFedefghの金属組成を有する。すなわち、この触媒は、モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄を必須元素とし、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、並びに、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をも必須元素として、少なくとも6種の金属元素を存在させることを特徴とする。各元素には、それぞれに役割が備わっており、その元素の持つ働きを代替できる元素、代替できない元素、働きの補助的作用をもたらす元素など、その触媒の元素構成や組成によって適宜選択的に加えた方がよい元素及び組成比率が変化する。
【0013】
例えば、セリウムはビスマスモリブデートというプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールを活性化させる酸化物の働きに作用し、その構造安定化に効果を示すと考えられており、反応安定化においても必要な元素となる。また、ニッケル、コバルトは鉄モリブデートの働き(例えば、分子状酸素を触媒の構造内に取り込み、反応で消費される格子酸素を補い、触媒が過還元されて劣化するのを抑制するという働き)を補助する役割や、モリブデン、ビスマス、鉄などの、反応に主に寄与する成分の希釈効果、分散効果、構造安定化効果があると考えられている。そして、カリウム、ルビジウム、セシウムは金属複合酸化物中に形成される酸点や反応基質の吸着点に作用して、分解活性を抑制する上で必要な成分となる。
【0014】
さらに上記必須元素に加え、下記の元素が、本発明者が提唱する組成領域において、必要に応じて使用されるべき元素として挙げられる。すなわち、マグネシウム、亜鉛、マンガンは、ニッケルやコバルトの上記役割をさらに強めたり弱めたり、安定化させたりする働きがある。アンチモンは鉄の状態変化に作用を及ぼし、リンはモリブデンのその他の金属との複合酸化物やシリカに影響を与え、組成効果の他、形状効果などの働きに作用する。
【0015】
本実施形態の触媒は、上記一般式(1)における各元素の原子比を上記式(2)及び(3)に代入した場合に、0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を同時に満たす触媒である。前述のように、各元素には、それぞれに役割が備わっており、その元素の持つ働きを代替できる元素、代替できない元素、働きの補助的作用をもたらす元素などがあると考えられる。そして、それらの各元素の働きをバランス良く有する触媒が、目的生成物を高収率で安定的に得る上で重要となる。上記式(2)で表されるαは、反応基質を活性化させる力と酸化還元を促進する力とのバランス関係を示すものであり、上記式(3)で表されるβは、酸化還元作用の強い鉄とその強さを調整する元素とのバランス関係を示すものである。よって、これらα及びβの値が、触媒性能に関するバランスの指標として重要な数値となる。
【0016】
αはプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールを活性化させる役割を持つと考えられる酸化物と、その酸化物の還元が反応によって進み過ぎないようにする働きを持つ元素との量的関係を表している。よって、αは好ましくは0.02≦α≦0.08の条件を満足し、より好ましくは0.04≦α≦0.07の条件を満足する。αが0.02未満になると、触媒の反応活性が低下し、さらにニトリル化の反応も進まなくなるため、アクリロニトリルやメタアクリロニトリルの選択率が低下し、アクリロニトリルやメタクリロニトリルの収率が低い結果となる。また、αが0.08を超えると、αが低いときのような低活性にはならないものの、反応において副生成物の一酸化炭素や二酸化炭素が増える。このことから、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールの分解活性が高くなり、アクリロニトリルやメタアクリロニトリルの収率が低い結果となる。
【0017】
一方、βは0.08≦β≦0.35の条件を満足することが好ましい。より好ましくはβが0.15≦β≦0.3の条件を満足することである。βは触媒組成における鉄元素の原子比に対する、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の原子比と、マグネシウム、亜鉛及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の原子比とを足し合せた総和の関係を表している。つまり、βは、鉄と鉄の働きをサポートする役割を担っている元素の比率が触媒性能に影響を及ぼす指標を示す。βが0.08未満であると活性が低くなりすぎる。一方、βが0.35を越えると目的生成物の収率が低下する。
【0018】
上述から明らかなように、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのアンモ酸化反応におけるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造に際して、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを高収率で得ることができ、さらに長期に反応性能の安定性を維持することを可能とするには、触媒成分の種類とその組成が重要である。すなわち、モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄を必須元素とし、ニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をも必須元素として、マグネシウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、リンなどを選択的に加えた元素組成において、各元素の原子比を上記式(2)及び(3)に代入した場合に、0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を同時に満たすことが重要となる。
【0019】
本実施形態の流動床用アンモ酸化触媒は、触媒を構成する成分の各金属元素の原子比を下記式(4)に代入した場合に、γが−1≦γ≦1.5の関係を満足することが好ましい。
γ=a−1.5(b+c+d)+e+f+g・・・(4)
γは、酸化モリブデンとして、モリブデンの複合酸化物を形成しない分のモリブデンの原子比率を表すものとして、触媒性能をさらに高める上で重要である。γが−1よりも低いとモリブデン元素との複合酸化物を形成できない金属元素の量が増え、分解活性が増加し、目的生成物の反応選択性が低下しやすくなる。一方、γが1.5よりも高くなると酸化モリブデンの量が増加し、触媒形状が悪化したり、反応時に触媒粒子から酸化モリブデンが析出し、流動性が悪化したりし、取扱性上、問題が発生しやすくなる。そのため、反応性と取扱性の両面を向上させるために、上記式(4)で計算されるγは、−1≦γ≦1.5の関係を満足することが好ましく、より好ましくは−0.5≦γ≦1の関係を満足することである。これにより、さらに耐磨耗強度、粒子形状など取扱性も良好な工業的実用性に優れた触媒になり、さらに長期に反応性能の安定性を維持できることが可能となる。
【0020】
本実施形態の触媒は上記酸化物を担持する担体を備える担持型触媒である。その担体としてはシリカを用いることが好ましい。シリカは、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアに比べそれ自体不活性であり、反応の目的生成物に対する活性触媒成分の選択性を減ずることなく、活性触媒成分である上記酸化物に対し良好なバインド作用を有する。ただし、担体は、その全部がシリカであると最も好ましいが、そのことに限定されるものではなく、触媒の形状や耐磨耗性、圧縮強度を向上させる上でジルコニア、チタニア等、通常一般的に触媒の担体に用いられる成分をシリカに対して数質量%用いることも可能である。担体におけるシリカの含有量は、担体の全質量に対して90〜100質量%であると好ましい。
【0021】
担体の全部がシリカである場合、触媒中の担体の含有量は、触媒の全質量に対して30〜70質量%であると好ましく、40〜60質量%であるとより好ましい。担体の含有量がこの範囲であると、担体をより有効に用いることができる。担体の役割として触媒の強度を上げ、実用条件下において、耐破砕性を向上させることや耐磨耗性を上げることが挙げられる。担体の含有量が30質量%よりも低くなると耐破砕性や耐磨耗性といった強度が弱くなり、実用的に使用し難くなる。一方、担体の含有量が70質量%よりも高くなると触媒の見掛比重が軽くなり、流動床触媒として実用的でなくなる傾向にある。
【0022】
触媒の見掛比重は0.85〜1.15g/ccの範囲にあることが好ましい。触媒の見掛比重が0.85g/ccを下回ると、反応器に投入する触媒がかさ高くなり、巨大な反応器の容積が必要となってくる他、反応器から外部に飛散する触媒量が増えて触媒ロスが発生しやすくなる。また、触媒の見掛比重が1.15g/ccを超えると触媒の流動状態が悪くなり、反応性能の低下に繋がる。
【0023】
本実施形態の流動床アンモ酸化触媒は、細孔分布測定において細孔直径1〜200nmの細孔の占める全細孔容積を基準として、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積、すなわち積算容積が20%以下になることが好ましい。細孔直径8nm以下の細孔の細孔容積が大きいということは、そのような小さな細孔が多いことを意味する。このような細孔分布では、反応場が増加して活性が向上するため反応に有利となり、さらに大きな細孔が多く存在する触媒に対して破砕強度も強くなるという利点もある。しかしながら、アクリロニトリル又はメタアクリロニトリルといった目的生成物の収率が低下するというマイナスの影響もある。これらのバランスを考慮して、上述のとおり、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が20%以下であると好ましい。
【0024】
本実施形態の流動床アンモ酸化触媒の平均粒径は、30〜70μmが好ましく、より好ましくは、40〜60μmである。なお、この触媒の粒径分布としては、粒子直径5〜200μmの触媒粒子の量が該触媒の全質量に対して90〜100質量%であることが好ましい。
【0025】
本実施形態の触媒は、公知の方法、例えば原料スラリーを調製する第1の工程、該原料スラリーを噴霧乾燥する第2の工程、及び第2の工程で得られた乾燥品を焼成する第3の工程を包含する方法によって得ることができる。
【0026】
第1の工程では、触媒原料を調合して原料スラリーを得るが、モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、リン、カリウム、ルビジウム、セシウムの各元素の元素源としては、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられる。特にモリブデンの原料としてはアンモニウム塩が、ビスマス、セリウム、鉄、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、マンガン、カリウム、ルビジウム、セシウムの各元素の元素源としては硝酸塩が、アンチモンの原料としては三酸化アンチモンが、リンの原料としては、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はリン酸が挙げられる。リンの原料としてはリン酸が好ましい。
【0027】
一方、担体の原料は通常用いられる担体の原料であれば特に限定されないが、担体がシリカである場合、シリカゾルを原料として用いることが好ましい。シリカゾルとしては、純度、不純物の違い、PH、粒径等、様々な種類を用いることができる。これらのうち、不純物としてアルミニウムを含むシリカゾルの場合、好ましくはケイ素100原子当たり0.04原子以下のアルミニウム、より好ましくはケイ素100原子当たり0.02原子以下のアルミニウムを含むシリカゾルを用いる。シリカのPHについては、原料スラリーの粘性に影響するため、用いる金属塩の量、PHによって適宜選択すればよい。また、シリカ粒径についても比表面積、細孔容積、細孔分布等に影響を与えるほか、触媒の破砕強度、圧縮強度、耐磨耗性などの実用性にも影響を与えるため、触媒成分、組成、調製法による違いによって適宜選択すればよい。
【0028】
例えば、本実施形態において、細孔直径1〜200nmを有する細孔の占める全細孔容積を基準として、細孔直径8nm以下の細孔容積が20%以下である触媒を得るために、シリカゾルにおけるシリカの一次粒子径の大きさを選定する方法が挙げられる。シリカの一次粒子径が比較的小さいと、細孔直径8nm以下を有する細孔の細孔容積は20%を越えやすく、また、シリカの一次粒子径が比較的大き過ぎると触媒の物理的強度が落ちる。そのため、シリカの一次粒子径が、シリカ一次粒子の平均粒子直径として20〜100nmであるシリカゾルと20nm以下であるシリカゾルとを混ぜ合わせて使用すると、上述のような細孔分布を有する触媒を得ることができる。
【0029】
原料スラリーの調合方法は例えば下記のとおりである。まず、水に溶解させたモリブデンのアンモニウム塩をシリカゾルに添加する。次に、ビスマス、セリウム、鉄、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、マンガン、カリウム、ルビジウム、セシウムなど各元素の元素源の硝酸塩を水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液をそこに加える。また、アンチモンはクエン酸、蓚酸、酒石酸及び過酸化水素などの水溶性キレート剤を使って溶解した液を用いて、リンはリン酸を用いて、適宜上記溶液を加える前又は加えた後にシリカゾルに投入することができる。このようにして原料スラリーが得られる。
【0030】
なお、上述の原料スラリーの調合方法に対して、各元素源の添加の手順を変えたり、硝酸濃度の調整やアンモニア水をスラリー(シリカゾル)中に添加してスラリーのPHや粘度を改質させたりすることができる。また、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどの水溶性ポリマーやアミン類、アミノカルボン酸類、しゅう酸、マロン酸、コハク酸などの多価カルボン酸、グリコール酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸を適宜添加することもできる。
【0031】
次に第2の工程では、上記の第1の工程で得られた原料スラリーを噴霧乾燥して触媒前駆体である球状の粒子を得る。原料スラリーの噴霧化は、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等の方法によって行うことができるが、特に遠心方式で行うことが望ましい。噴霧乾燥の熱源としては、スチーム、電気ヒーター等が挙げられ、この熱源によって加熱された空気を用いた乾燥機入口の温度は好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜300℃である。
【0032】
第3の工程では、第2の工程で得られた乾燥粒子を焼成することで所望の触媒組成物を得る。この第3の工程では、必要に応じて、例えば150〜500℃で乾燥粒子の前焼成を行い、その後好ましくは500〜730℃、より好ましくは550〜730℃の温度範囲で1〜20時間本焼成を行う。焼成は回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。
【0033】
本実施形態の触媒を用いるプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとの反応によるアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造方法は、通常用いられる流動層反応器内で行われる。原料のプロピレン、イソブテン、3級ブタノール及びアンモニアは、必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものを使用することができる。また、分子状酸素源としては、通常空気を用いるのが好ましいが、酸素を空気と混合するなどして酸素濃度を高めたガスを用いることもできる。
【0034】
分子状酸素源が空気である場合の原料ガスの組成について、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールに対するアンモニア及び空気のモル比は、(プロピレン、イソブテン又は3級ブタノール)/アンモニア/空気で、好ましくは1/(0.8〜1.4)/(7〜12)、より好ましくは1/0.9〜1.3/8〜11の範囲である。
また、反応温度は好ましくは350〜550℃、より好ましくは400〜500℃の範囲である。
反応圧力は、好ましくは微減圧〜0.3MPaの範囲である。
原料ガスと触媒との接触時間は好ましくは0.5〜20(sec・g/cc)、より好ましくは1〜10(sec・g/cc)である。
【0035】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また、各種物性の評価方法は下記に示すとおりである。
【0037】
(触媒の反応性能評価)
反応装置は外径23mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動層反応管を用いた。反応温度Tは430℃、反応圧力Pは0.15MPa、充填触媒量Wは40〜60g、全供給ガス量Fは250〜450cc/sec(NTP換算)条件とした。また、供給した原料ガスの組成は、プロピレン/アンモニア/空気のモル比を1/(0.7〜1.4)/(8.0〜11.0)とし、反応ガス中の未反応アンモニア濃度が0.5%以下、未反応酸素濃度が0.2%以下になるよう供給ガス組成を上記範囲内で適宜変更して反応を実施した。原料ガスの組成は表2、4に示す。原料供給開始より24時間後の反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析し触媒の反応性能を求めた。なお、実施例及び比較例において、接触時間及び反応成績を表すために用いた転化率、選択率、収率は、下記式で定義される。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)×P/0.10
プロピレンの転化率(%)=M/L×100
アクリロニトリルの選択率(%)=N/M×100
アクリロニトリルの収率(%)=N/L×100
ここで、Lは供給したプロピレンのモル数、Mは反応したプロピレンのモル数、Nは生成したアクリロニトリルのモル数を表す。なお、供給したプロピレンのモル数から反応ガス中のプロピレンのモル数を差し引いたモル数を、反応したプロピレンのモル数とした。
【0038】
(触媒の細孔分布測定)
ユアサ・アイオニクス社製のオートソーブ3MP装置を用い、窒素ガス吸着により触媒の細孔分布を測定した。なお、細孔径及び細孔分布はBJH法による脱着データを用い、細孔容積はP/P0,Maxでの吸着量を採用した。
【0039】
(触媒の粒子径測定)
堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−300を用いて触媒の粒子径を測定した。
【0040】
(形状観察)
日立製作所製X−650型走査型電子顕微鏡を用いて触媒の形状を観察した。
【0041】
(耐磨耗性強度測定)
“Test Method for Synthetic Fluid Cracking Catalyst”(American Cyanamid Co.Ltd.6/31−4m−1/57)に記載の方法(以下「ACC法」と称する。)に準じて、摩耗損失として触媒の耐摩耗性強度(アトリッション強度)の測定を行った。
アトリッション強度は摩擦損失で評価され、この摩耗損失は以下のように定義される。
摩耗損失(%)=R/(S−Q)×100
上記式において、Qは0〜5時間の間に外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)、Rは通常5〜20時間の間に外部に摩耗飛散した触媒の質量(g)である。Sは試験に供した触媒の質量(g)である。この摩耗損失の値が3%以下であることをもって、工業使用に適用できると判断した。
【0042】
(見掛比重測定)
ホソカワミクロンKK製パウダーテスターを用い、100ccの計量カップ容器に漏斗を通して篩った触媒を落下させ、容器が一杯になったところで、振動を与えないように表面をすり切り計量し、質量/容量(g/cc)の計算により求めた。
【0043】
(実施例1)
金属組成(仕込み比。以下同様。)がMo12.2Bi0.35Ce0.23Fe1.34Ni6.5Mg2.60.2(α=0.08、β=0.22、γ=0.22)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0044】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1008.1gに504.0gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸416.2gに40.1gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、23.2gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、128.0gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、448.2gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、158.0gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.72gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、580℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に815gの触媒を得た。
【0045】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.226cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.008cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は3.5%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は58μm、見掛比重は1.10g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.4(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.3%となり、アクリロニトリル(表2、4中、「AN」と表記。)選択率は86.3%、アクリロニトリル収率は85.7%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.8%であった。
触媒組成(金属組成、シリカ(SiO2)担体量、α、β、γ。以下同様。)と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0046】
(実施例2)
金属組成がMo12.4Bi0.15Ce0.10Fe1.51Ni6.69Mg2.670.2(α=0.03、β=0.24、γ=0.40)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0047】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1028gに514gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸419.6gに17.2gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、10.1gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、144.7gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、462.9gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、162.8gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.74gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、615℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に803gの触媒を得た。
【0048】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.218cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.004cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は1.8%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は61μm、見掛比重は0.94g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.1(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は86.2%、アクリロニトリル収率は85.5%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.9%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0049】
(実施例3)
金属組成がMo12Bi0.28Ce0.19Fe1.8Ni6.2Mg2.5Cs0.08(α=0.06、β=0.31、γ=−0.11)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0050】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gとシリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1007gに503.5gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸417.9gに32.6gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、19.5gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、174.6gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、434.2gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、154.3gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、3.72gの硝酸セシウム〔CsNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、590℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に814gの触媒を得た。
【0051】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.215cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.009cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は4.2%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は66μm、見掛比重は1.01g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.1(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.0%となり、アクリロニトリル選択率は85.4%、アクリロニトリル収率は84.5%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.5%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0052】
(実施例4)
金属組成がMo12Bi0.22Ce0.15Fe1.1Ni7.0Mg2.8Rb0.15(α=0.05、β=0.17、γ=0)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0053】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル833.3gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル615.8gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水840gに419.9gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸411.5gに21.3gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、12.8gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、89gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、408.8gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、144.1gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.36gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、675℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に802gの触媒を得た。
【0054】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.211cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.002cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は0.9%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は65μm、見掛比重は0.99g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.7(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.3%となり、アクリロニトリル選択率は86.6%、アクリロニトリル収率は86.0%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.8%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0055】
(実施例5)
金属組成がMo12Bi0.29Ce0.20Fe1.5Ni6.5Mg2.6Rb0.12(α=0.06、β=0.25、γ=−0.08)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0056】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル985.2gを準備した。次に、水1004gに502.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸417.3gに33.7gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、20.5gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、145.1gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、454.0gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、160.1gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.17gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、630℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に822gの触媒を得た。
【0057】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.248cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.002cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は0.8%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は64μm、見掛比重は0.98g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.4(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は87.3%、アクリロニトリル収率は86.6%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.7%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0058】
(実施例6)
金属組成がMo12.2Bi0.22Ce0.14Fe1.45Ni6.63Mg2.650.18(α=0.05、β=0.23、γ=0.21)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0059】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1018gに509.1gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸418.6gに25.5gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、14.3gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、139.9gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、461.7gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、162.7gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.29gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、610℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に819gの触媒を得た。
【0060】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の細孔容積が0.203cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.005cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.5%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は57μm、見掛比重は1.04g/ccという結果が得られた。次にこの触媒50gを用いて、接触時間Θ=3.3(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.1%となり、アクリロニトリル選択率は86.7%、アクリロニトリル収率は85.9%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.8%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0061】
(実施例7)
金属組成がMo12.4Bi0.24Ce0.16Fe1.52Ni6.5Mg2.6Rb0.15(α=0.05、β=0.25、γ=0.42)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0062】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1020gに510.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸417.7gに27.4gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、16.1gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、144.6gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、446.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、157.4gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、5.13gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、590℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に821gの触媒を得た。
【0063】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.220cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.006cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.7%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は60μm、見掛比重は1.00g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.5(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.4%となり、アクリロニトリル選択率は86.5%、アクリロニトリル収率は86.0%となった。さらに、このままの条件で反応を継続し、反応開始から1200時間後の反応ガスの分析を実施したところ、プロピレンの転化率は99.6%となり、アクリロニトリル選択率は86.0%、アクリロニトリル収率は85.7%となり、24時間後の性能とほとんど変化がないことを確認できた。また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.8%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0064】
(実施例8)
金属組成がMo12.3Bi0.2Ce0.08Fe0.7Ni7.75Mg2.6Rb0.08(α=0.04、β=0.10、γ=0.48)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0065】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1018gに509.1gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸417gに23.0gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、8.10gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、67gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、535.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、158.3gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、2.75gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、580℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に798gの触媒を得た。
【0066】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.224cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.005cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.2%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は55μm、見掛比重は0.96g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=5(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.5%となり、アクリロニトリル選択率は85.3%、アクリロニトリル収率は84.9%となった。また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.1%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1)
金属組成がMo13.0Bi0.73Fe0.35Ni6.23Mg4.160.07(α=0.10、β=0.05、γ=0.99)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0068】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル1666.7gを準備した。次に、水854gに427.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸409.1gに66.5gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、26.6gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、341.7gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、201.1gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、1.32gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、560℃で2時間の本焼成を施して、最終的に811gの触媒を得た。
【0069】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.192cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.052cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は27.1%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は64μm、見掛比重は1.08g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=6.0(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.3%となり、アクリロニトリル選択率は74.6%、アクリロニトリル収率は74.1%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.3%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0070】
(比較例2)
金属組成がMo12.5Bi0.3Fe2.6Ni6.2Mg2.5Cs0.070.3(α=0.04、β=0.45、γ=−0.62)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0071】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル1666.7gを準備した。次に、水834gに417.0gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸413.3gに27.8gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、200.5gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、345.2gの硝酸ニッケル〔Ni(NO3)2・6H2O〕、122.7gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、2.59gの硝酸セシウム〔CsNO3〕、5.72gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、640℃で2時間の本焼成を施して、最終的に798gの触媒を得た。
【0072】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.201cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.049cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は24.4%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は62μm、見掛比重は1.02g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=5.5(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.4%となり、アクリロニトリル選択率は82.2%、アクリロニトリル収率は81.7%となった。さらに、このままの条件で反応を継続し、反応開始から1000時間後の反応ガスの分析を実施したところ、プロピレンの転化率は98.3%となり、アクリロニトリル選択率は81.7%、アクリロニトリル収率は80.3%となり、24時間後の性能に対して低下していることがわかった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.3%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0073】
(比較例3)
金属組成がMo12Bi0.24Ce0.16Fe2.28Ni5.7Mg2.3Rb0.15(α=0.05、β=0.43、γ=0)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0074】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1014gに507.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸419gに28.1gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、16.5gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、222.8gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、402.1gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、143.0gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、5.27gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、580℃で2時間の本焼成を施して、最終的に818gの触媒を得た。
【0075】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.214cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.01cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は4.7%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は61μm、見掛比重は1.00g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.8(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は82.9%、アクリロニトリル収率は82.2%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.0%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0076】
(比較例4)
金属組成がMo12Bi0.42Ce0.1Fe2.8Ni5.61Mg1.40.25(α=0.07、β=0.60、γ=0.01)で表される金属酸化物を46質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0077】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル766.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル566.5gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水903gに451.4gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸413gに43.8gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、9.20gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、243.5gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、352.2gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、77.5gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、5.38gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、590℃で2時間の本焼成を施して、最終的に820gの触媒を得た。
【0078】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.206cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.009cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は4.4%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は69μm、見掛比重は0.96g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=3.9(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.4%となり、アクリロニトリル選択率は82.8%、アクリロニトリル収率は82.3%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.8%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0079】
(比較例5)
金属組成がMo11.5Bi1.94Ce0.34Fe1.32Ni5.27Mg1.320.2(α=0.40、β=0.30、γ=−0.49)で表される金属酸化物を46質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0080】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル766.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル566.5gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水810gに405.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸394.5gに189.5の硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、29.3gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、107.5gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、309.9gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、68.4gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.03gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、600℃で2時間の本焼成を施して最終的に807gの触媒を得た。
【0081】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.217cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.012cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は5.5%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は64μm、見掛比重は0.97g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.3(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.0%となり、アクリロニトリル選択率は83.3%、アクリロニトリル収率は82.5%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.7%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0082】
(比較例6)
金属組成がMo13.6Bi0.03Ce0.05Fe1.32Ni9.9Cs0.04(α=0.01、β=0.2、γ=1.6)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0083】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル1667gを準備した。次に、水856gに428.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸408gに2.62gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、3.85gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、96.08gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、520.3gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、1.395gの硝酸セシウム〔CsNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、600℃で2時間の本焼成を施して、最終的に788gの触媒を得た。
【0084】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.197cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.061cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は31.0%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は63μm、見掛比重は1.01g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=3.5(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は45.4%、アクリロニトリル収率は45.0%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.2%であった。
触媒組成と焼成温度を表1に、反応結果及び物性測定結果を表2に示す。
【0085】
(実施例9)
金属組成がMo12Bi0.33Ce0.22Fe1.95Ni6.2Mg2.5Sb0.3Rb0.15(α=0.07、β=0.34、γ=−0.75)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0086】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル1232gを準備した。次に、水815gに407.6gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸427.6gに31.1gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、18.3gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、153.1gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、351.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、124.9gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.23gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を上記混合液に加え、さらにそこに、8.52gの三酸化アンチモン〔Sb23〕を175gの20質量%酒石酸水溶液に溶解した液を最後に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、655℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に801gの触媒を得た。
【0087】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.209cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.006cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.9%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は62μm、見掛比重は0.90g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.3(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は85.3%、アクリロニトリル収率は84.6%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.6%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0088】
(実施例10)
金属組成がMo12Bi0.22Ce0.15Fe1.4Ni7Mg2.8Sb0.3Rb0.15(α=0.05、β=0.21、γ=−0.76)で表される金属酸化物を50質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0089】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル1232gを準備した。次に、水818gに409.0gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加え混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸429gに20.8gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、12.5gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、110.3gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、398.2gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、140.4gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.25gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を上記混合液に加え、さらにそこに、8.55gの三酸化アンチモン〔Sb23〕を176gの20質量%酒石酸水溶液に溶解した液を最後に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、670℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に821gの触媒を得た。
【0090】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.222cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.007cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は3.2%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は65μm、見掛比重は0.91g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.2(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は85.7%、アクリロニトリル収率は85.0%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.5%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0091】
(実施例11)
金属組成がMo12Bi0.3Ce0.27Fe1.7Ni6.5Mg2.60.3Rb0.1(α=0.07、β=0.28、γ=−0.81)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0092】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル985.2gに7.99gのリン酸を滴下して第1の混合液を得た。次いで、水985gに492.7gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。さらに、16.6質量%濃度の硝酸416gに34.2gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、27.1gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、161.3gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、445.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、157gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、3.41gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、620℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に797gの触媒を得た。
【0093】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.213cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.005cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.3%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は60μm、見掛比重は1.01g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=3.9(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は85.5%、アクリロニトリル収率は84.8%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.8%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0094】
(実施例12)
金属組成がMo12.4Bi0.24Ce0.16Fe1.52Ni3.9Co2.6Mg2.65Rb0.15(α=0.05、β=0.25、γ=0.37)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0095】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水1019gに509.7gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加え第2の混合液を得た。さらに、16.6質量%濃度の硝酸418gに27.4gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、16.1gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、144.4gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、267.6gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、178.5gの硝酸コバルト〔Co(NO32・6H2O〕、160.2gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、5.12gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、590℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に791gの触媒を得た。
【0096】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.199cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.007cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は3.5%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は60μm、見掛比重は1.00g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.8(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.1%となり、アクリロニトリル選択率は85.2%、アクリロニトリル収率は84.4%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.0%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0097】
(実施例13)
金属組成がMo12.5Bi0.22Ce0.09Fe1.82Ni6.17Mg1.64Zn1.0Rb0.13(α=0.04、β=0.31、γ=0.50)で表される金属酸化物を45質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0098】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル1500gを準備した。次に、水929gに464.6gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加えて混合液を得た。さらに、16.6質量%濃度の硝酸413gに22.7gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、8.18gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、156.4gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、382.7gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、89.7gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、62.8gの硝酸亜鉛〔Zn(NO32・6H2O〕、4.01gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、600℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に814gの触媒を得た。
【0099】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.206cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.051cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は24.8%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は61μm、見掛比重は0.99g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.2(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は84.7%、アクリロニトリル収率は84.0%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.2%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0100】
(比較例7)
金属組成がMo12Bi0.45Ce0.9Fe1.80Ni5Mg2Sb0.5Rb0.15(α=0.21、β=0.39、γ=−0.23)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0101】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル666.7gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル492.6gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水961gに480.4gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加えて第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸442.7gに50.0gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、88.1gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、166.6gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、334.1gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、117.8gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.99gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加え、さらにそこに、16.74gの三酸化アンチモン〔Sb23〕を344.2gの20質量%酒石酸水溶液に溶解した液を最後に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、615℃で2時間の本焼成を施して、最終的に793gの触媒を得た。
【0102】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.210cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.006cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.9%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は56μm、見掛比重は0.98g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間4.9(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は82.2%、アクリロニトリル収率は81.5%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.9%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0103】
(比較例8)
金属組成がMo12Bi0.4Ce0.26Fe2.1Ni6Mg2.40.3Rb0.1(α=0.09、β=0.38、γ=−0.84)で表される金属酸化物を40質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0104】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル985.2gに7.96gのリン酸を滴下して混合液を得た。次いで、水982gに491.2gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記混合液に加え、さらにそこに、16.6質量%濃度の硝酸416gに45.4gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、26.0gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、198.7gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、409.9gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、144.5gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、3.40gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、580℃で2時間の本焼成を施して、最終的に804gの触媒を得た。
【0105】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.221cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.004cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は1.8%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は60μm、見掛比重は1.00g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=3.6(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.3%となり、アクリロニトリル選択率は82.1%、アクリロニトリル収率は81.5%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は3.7%であって、工業使用に適用可能な強度は示さなかった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0106】
(実施例14)
金属組成がMo12Bi0.22Ce0.15Fe1.2Ni7Mg2.8Rb0.12(α=0.05、β=0.18、γ=−0.16)で表される金属酸化物を35質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0107】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル862.1gを準備した。次に、水1089gに544.7gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加えて混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸421.4gに27.7gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、16.6gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、125.9gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、530.4gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、187.0gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、4.52gの硝酸ルビジウム〔RbNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、640℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に811gの触媒を得た。
【0108】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.229cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.005cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は2.2%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は66μm、見掛比重は1.02g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.9(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は86.9%、アクリロニトリル収率は86.2%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は1.7%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0109】
(実施例15)
金属組成がMo12.2Bi0.24Ce0.16Fe1.52Ni6.5Mg2.60.19(α=0.05、β=0.25、γ=0.22)で表される金属酸化物を65質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0110】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル1083gと、シリカ一次粒子の平均粒子直径が41nmのSiO2を40.6質量%含む水性シリカゾル800.5gとを混合して第1の混合液を得た。次に、水593gに296.7gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記第1の混合液に加えて第2の混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸402.5gに16.2gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、9.51gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、85.4gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、263.8gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、93.01gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、2.64gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記第2の混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た(第1の工程)。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った(第2の工程)。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、590℃で2時間の本焼成を施して(第3の工程)、最終的に788gの触媒を得た。
【0111】
得られた触媒の一部を取り出し細孔分布を測定したところ、細孔直径1〜200nmの細孔の占める細孔容積が0.219cc、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が0.008cc/gとなり、全細孔容積に対する細孔直径80nm以下の細孔の積算容積(細孔率)は3.7%となった。また、触媒の形状は中実球であり、平均粒径は59μm、見掛比重は1.04g/ccという結果が得られた。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.1(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.4%となり、アクリロニトリル選択率は86.9%、アクリロニトリル収率は86.4%となった。
また、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は0.4%であった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0112】
(比較例9)
金属組成がMo11.2Bi0.35Ce0.35Fe0.15Ni8.92Mg2.240.13(α=0.09、β=0.02、γ=−1.24)で表される金属酸化物を80質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0113】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル2667gを準備した。次に、水315gに157.7gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加えて混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸391gに13.66gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、12.05gの硝酸セリウム〔Ce(NO33・6H2O〕、4.88gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、209.6gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、46.39gの硝酸マグネシウム〔Mg(NO32・6H2O〕、1.05gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。次に、乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、600℃で2時間の本焼成を施して、最終的に781gの触媒を得た。
この触媒の形状は中実球のもの、穴があいたもの、球体表面所々に窪みがあり歪な形状をしたものが混ざった粉体であることが確認された。また、この触媒の平均粒径を測定したところ60μmであったが、見掛比重が0.83g/ccと低い結果となった。
次に、この触媒50gを用いてプロピレンのアンモ酸化反応を行おうと試みたが、接触時間Θ=6(sec・g/cc)にしても全く反応が進まないため中止した。なお、細孔分布測定は行わなかった。
触媒組成と焼成温度を表3に、物性測定結果を表4に示す。
【0114】
(比較例10)
金属組成がMo11.6Bi1.85Fe2.05Ni6.150.3(α=0.30、β=0.50、γ=−0.40)で表される金属酸化物を25質量%のシリカ担体に担持した触媒を下記のようにして調製した。
【0115】
シリカ一次粒子の平均粒子直径が12nmのSiO2を30質量%含む水性シリカゾル833.3gを準備した。次に、水1130gに565.0gのパラモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を溶解させた液を上記水性シリカゾルに加えて混合液を得た。次いで、16.6質量%濃度の硝酸401.3gに249.8gの硝酸ビスマス〔Bi(NO33・5H2O〕、230.8gの硝酸鉄〔Fe(NO33・9H2O〕、499.9gの硝酸ニッケル〔Ni(NO32・6H2O〕、8.35gの硝酸カリウム〔KNO3〕を溶解させて得られた液を、上記混合液に加えて水性原料混合物(原料スラリー)を得た。乾燥器上部中央に設置された皿型回転子を備えた噴霧装置を用い、入口温度約250℃、出口温度約140℃の条件で上記水性原料混合物の噴霧乾燥を行った。次いで、乾燥した触媒前駆体に電気炉を用いて、空気雰囲気下、320℃で2時間の前焼成を施した後、空気雰囲気下、600℃で2時間の本焼成を施して、最終的に808gの触媒を得た。この触媒の形状は中実球であり、平均粒径を測定したところ63μmであり、見掛比重は1.10g/ccという結果になった。次に、この触媒50gを用いて、接触時間Θ=4.4(sec・g/cc)でプロピレンのアンモ酸化反応を行った。反応開始から24時間後のプロピレンの転化率は99.2%となり、アクリロニトリル選択率は80.6%、アクリロニトリル収率は80.0%となった。
ただし、上記触媒50gについてACC法に準じて耐摩耗性強度を測定したところ、摩耗損失(%)は4.2%であり、工業使用に適用可能な強度は示さなかった。
触媒組成と焼成温度を表3に、反応結果及び物性測定結果を表4に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の流動床用アンモ酸化触媒は、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールに対して過剰量のアンモニアが少ない条件下で目的生成物の収率が高く、また、工業的に使用する場合においての耐摩耗性、見掛比重、粒径等の取扱性も良く、反応安定性にも優れている。本発明の触媒を用いて流動床反応器でプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのアンモ酸化反応を行うことにより、高収率で安定的にアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造することができ、工業的に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に用いる触媒であって、下記一般式(1)
MoaBibCecFedefghi・・・(1)
(式(1)中、Eはニッケル及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Jはマグネシウム、亜鉛及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Gはアンチモン及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Lはカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表し、a、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ各元素の原子比を表し、10≦a≦14、0.03≦b≦1、0.03≦c≦1、0.5≦d≦4、2≦e≦10、0≦f≦8、0≦g≦2、0.02≦h≦1であり、iは酸素以外の構成元素の原子価を満足する酸素原子の原子比を表す。)
で表される元素組成を有し、各元素の前記原子比から下記式(2)及び(3)により算出されるα及びβが0.02≦α≦0.08、0.08≦β≦0.35を同時に満たす酸化物と、その酸化物を担持した担体と、を備える流動床用アンモ酸化触媒。
α=1.5(b+c)/(1.5d+e+f)・・・(2)
β=1.5d/(e+f)・・・(3)
【請求項2】
各元素の前記原子比から下記式(4)により算出されるγが、−1≦γ≦1.5を満たす、請求項1に記載の流動床用アンモ酸化触媒。
γ=a−1.5(b+c+d)+e+f+g・・・(4)
【請求項3】
前記担体がシリカを含有する、請求項1又は2に記載の流動床用アンモ酸化触媒。
【請求項4】
前記担体のシリカ量が30〜70質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の流動床用アンモ酸化触媒。
【請求項5】
細孔直径1〜200nmの細孔の占める全細孔容積を基準として、細孔直径8nm以下の細孔の占める細孔容積が20%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の流動床用アンモ酸化触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の流動床用アンモ酸化触媒を用い、プロピレン、イソブテン又は3級ブタノールと、分子状酸素と、アンモニアとを反応させてアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造するアクリロニトリル又はメタクリロニトリルの製造方法。

【公開番号】特開2009−285581(P2009−285581A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141457(P2008−141457)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】