説明

流動性ポリアルキレンカーボネートジオール及びその製造方法

【課題】高い結晶性と高い融点並びに溶融粘度といった物性を改善した流動性ポリアルキレンカーボネートジオール、及び前記製造時に反応速度の影響を受けることなく、簡便な方法で、所望の組成比のものを合成することが可能な流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(A)及び式(B)で示される繰り返し単位の分子構造を有することを特徴とする流動性ポリアルキレンカーボネートジオールである。


(式中、aは、へプタメチレンカーボネート基の繰り返し単位の個数を示す。)


(式中、nは、メチレン基の繰り返し単位の個数を示し、7を除く2〜12の整数である。bは、前記n個のメチレン基を有するアルキレンカーボネート基の繰り返し単位の個数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温付近でも良好な流動性を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンや熱可塑性エラストマー等のソフトセグメントとして、耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性、材料強度等に優れた素材、またはその合成原料として注目されている。
しかしながら、例えば、1,6−ヘキサンジオールや1,9−ノナンジオールのような汎用の直鎖状アルキレンジオールを用いて製造したポリアルキレンカーボネートジオールは、高い結晶性、高い融点、及び高い溶融粘度を物性として有するものが多く、そのハンドリングの悪さや反応時の不均一性等の加工性の悪さがしばしば問題となっている。
そのため、これらのポリアルキレンカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する場合、例えば高温にてこれらのポリアルキレンカーボネートジオールを一旦溶融させたり、多量の溶媒に溶解させたりして使用する等の煩雑な操作や工程を行って、上記の物性に起因する問題をこれまで解消していた。
【0003】
一方、近年、汎用の直鎖状アルキレンジオールが有する前記物性を改善する目的で、例えば、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖状のアルキレンジオールを使用したポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
特に、特許文献2及び3に記載のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールは、部分的に導入された側鎖の影響でアルキレン主鎖が不規則的な配座となるため、結晶化傾向を効果的に低下し、その結果、融点も低下するため、室温下でも非晶質で流動性を示すことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−336140号公報
【特許文献2】特開2000−290342号公報
【特許文献3】特開2003−183376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3には、特許文献2に記載の2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとをジオール成分として使用してポリアルキレンカーボネートジオールを製造するとき、直鎖の1,6−ヘキサンジオールと分岐鎖状アルキレン基を有する2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオールとでは、カーボネート化合物とのエステル交換反応において、大きな反応速度の差があり、従って、実際には目的とする組成比のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールを製造することが非常に困難であることが記載されている。
【0007】
そこで、本発明は、高い結晶性と高い融点並びに溶融粘度といった物性を改善した流動性ポリアルキレンカーボネートジオール、及び前記製造時に反応速度の影響を受けることなく、簡便な方法で、所望の組成比のものを合成することが可能な流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、へプタメチレン基を有するカーボネート構造を繰り返し単位として有するポリアルキレンカーボネートジオールを合成原料の一成分として用いることで、高い結晶性、高い融点、及び溶融粘度を改善した流動性ポリカーボネートジオールを製造できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、下記式(2Ak)で示される少なくとも1種のポリアルキレンカーボネートジオールとを反応させることを特徴とするポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法である。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
また、本発明は、上記製造方法により、製造されるポリアルキレンカーボネートジオールの中で、特に、下記式(A)及び式(B)で示される繰り返し単位の分子構造を有することを特徴とする流動性ポリアルキレンカーボネートジオールである。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、高い結晶性と高い融点及び溶融粘度等の物性を改善した流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを提供することができる。
従って、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを、例えば、塗料や接着剤等の構成材料として使用した場合、これを溶解させるために多量の溶媒を使用することもなく、或いはこれを加熱して融解させて使用するような煩雑な作業が省略できる。その結果、屋外や狭い作業空間等の不便な作業環境等であっても問題なく使用することができる。即ち、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、従来のポリアルキレンカーボネートジオールと比べて、幅広い適応範囲を有する材料であるが、特に本発明の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを主成分とするポリウレタン製造用ポリアルキレンカーボネートジオールとして有用である。
また、本発明によれば、前記流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、例えば、2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖状アルキレンジオールを使用していないため、前記の反応速度の偏りによる組成比のバラつきを気にすることなく、更に所望の分子量の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを簡便な方法で製造することが可能な製造方法を提供することができる。
更に、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールを、例えば、25%以上含有させれば、良好に耐吸水性を改善することから、例えば、吸水による寸法変化や機械的強度の低下等を抑制し、高い保存安定性を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールにおいて、「流動性」とは、通常の作業環境温度下、具体的には、室温付近である温度30℃から、それ以上の温度条件では、もはや結晶状態でなく、非晶質(例えば、粘性物、液状物等)の状態を示していることを示す。
【0017】
<<流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法>>
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、エステル交換触媒の存在下、所定の割合の下記式(1)で示されるポリへプタメチレンカーボネートジオールと、所定の割合の下記式(2Ak)で示される1種以上のポリアルキレンカーボネートジオールとを反応させることにより製造される。
【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
式(2Ak)中、Akは、置換基を有していても良い、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基を示すが、具体的には、直鎖状のアルキレン基が好適に使用される。
【0021】
従って、本発明において好適な流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、エステル交換触媒の存在下、所定の割合の下記式(1)で示されるポリへプタメチレンカーボネートジオールと、所定の割合の下記式(2)で示される1種以上のポリアルキレンカーボネートジオールとを反応させることにより製造される。
【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
また、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、エステル交換触媒の存在下又は非存在下、1,7−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール以外の少なくとも1種以上のジオール、及び炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル又は炭酸メチルエチル等のカルボニル化合物を、反応温度90〜250℃にて、副生するアルコールを常圧下又は減圧下で留去させながら合成を行う方法によって製造することができる。その際、未反応の炭酸ジアルキルを留去させた後、余分なジオールを留去させるか、もしくは不足したジオールを追加して反応させることによって、目的とする組成比や分子量の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを得ることができる。
【0025】
次に、本発明において使用されるポリアルキレンカーボネートジオール、及びエステル交換触媒等の種類、使用量並びに反応条件等について示す。
【0026】
<式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール>
(入手方法、又は製造方法)
本発明において、合成原料として使用される式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールは、分子末端に水酸基を有するポリカーボネートジオールである。その入手方法としては、例えば、所望の分子量を有するポリヘプタメチレンカーボネートジオールの市販品を購入して使用することもできるが、別途、例えば、Polymer Reviews Vol.9(1964)9〜20ページを参照し、下記反応式<1>に従って、カルボニル化合物としての式(3)で示される炭酸エステル化合物又はホスゲンと1,7−ヘプタメチレンジオールから製造し、使用することもできる。
【0027】
【化9】

【0028】
式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールの製造方法として、より詳しくは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネート等の炭酸エステル化合物又はホスゲン等のカルボニル化合物と1,7−ヘプタンジオールとを、後述する本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造にも使用するエステル交換触媒の存在下又は非存在下にて、反応温度90〜250℃で反応させる方法が挙げられる。ここで、カルボニル化合物として炭酸エステル化合物を使用した場合は、更に必要に応じて反応中に副生するアルコールを常圧下又は減圧下にて留去させながら、所望の分子量に達するまで、反応状態を適宜確認する等して行い、所望の分子量の式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールを製造する。なお、目的とする分子量の確認は、例えば、反応中、反応溶液をサンプリングし、これをH−NMRスペクトルやゲル透過クロマトグラフィー等で測定する等の方法によって行われる。
【0029】
上記の反応終了後、例えば、未反応の式(3)で示される炭酸エステル化合物又はホスゲンと1,7−ヘプタンジオールを除く操作等の後処理を行うことにより、目的とする式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールが取得される。なお、その際、使用したエステル交換触媒については、全部又は一部を除いても、或いは全く除かなくても、どちら場合であってもよい。更に、エステル交換触媒を含有した場合、得られたポリへプタメチレンカーボネートジオール1モル(分子量は数平均分子量を使用)中のエステル交換触媒の含有量は、好ましくは0.001〜30ミリモル、より好ましくは0.001〜15ミリモル、特に好ましくは0.003〜8ミリモルである。上記の範囲の含有量であれば、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールを、本発明に係る製造方法の合成原料として使用した場合においても、所望の数平均分子量の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを得ることが可能であり、かつ、例えば、得られた流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを、ポリウレタンの合成原料として使用した場合においても、得られるポリウレタンの物性に影響を与えることは少ないことがわかっている。
【0030】
(分子量)
本発明において使用される式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールの分子量は、その数平均分子量が、好ましくは500〜5000、より好ましくは500〜3000、さらに好ましくは1000〜3000、特に好ましくは1000〜2500である。なお、分子量は、例えば、H−NMRスペクトルから算出される数平均分子量であっても、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:標準物質;ポリスチレン)から算出される数平均分子量であっても、またその他の算出法による数平均分子量であってもよい。しかしながら、本発明では、製造物の構造確認を併せて行うことができることから、H−NMRスペクトルから算出される数平均分子量を用いている。
【0031】
<式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオール>
本発明において、合成原料として使用される式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールは、分子末端に水酸基を有するポリカーボネートジオールである。式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールにおいて、nは、メチレン基(−CH−)の繰り返し単位の個数で7を除く2〜12を示し、好ましくは2〜6、8及び9、より好ましくは4〜6、特に好ましくは4又は5の整数である。なお、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法においては、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールを複数種使用してもよい。
【0032】
(入手方法又は製造方法)
式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの入手方法としては、例えば、所望のアルキレン基、分子量を有するポリアルキレンカーボネートジオールの市販品を購入して使用することもできるが、前記同様に、所望のアルキル鎖のジオール化合物から、前記反応式<1>と同様の方法で取得してもよい。
【0033】
(分子量)
本発明において使用される式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの分子量は、その数平均分子量が、好ましくは500〜5000、より好ましくは500〜3000、特に好ましくは1000〜2500である。なお、分子量は、例えば、H−NMRスペクトルから算出される数平均分子量であっても、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:標準物質;ポリスチレン)から算出される数平均分子量であっても、いずれの値であってもよい。従って、式(2)で示されるポリアルキレンンカーボネートジオールにおけるアルキレンカーボネート基の繰り返し単位数bは、上記分子量を満足する実数を示す。
【0034】
(式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの使用量)
本発明において、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールは、2種類以上を使用してもよいが、好ましくは1種類の式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールを使用する。
その使用量は、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、1種以上の式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとの比(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール(モル数):式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオール(モル数))が、好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは5:95〜95:5、特に好ましくは15:85〜85:15が一般的である。なお、モル数の算出には、数平均分子量を使用する。
より具体的には、本発明のポリアルキレンカーボネートジオールが流動性を示す温度範囲は、使用する式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの種類並びに個数、メチレン基の数(n)、及び使用量によって異なる。そこで、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールのうち、より好適な流動性を示す、前記「より好ましいポリアルキレンカーボネートジオール」の場合について、その使用量を、以下にそれぞれ例示する。ここで、前記「より好ましいポリアルキレンカーボネートジオール」とは、式(2)において、メチレン基数(n)が4〜6であるポリアルキレンカーボネートジオールを示す。但し、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールに使用される式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールは、メチレン基数(n)が4〜6であるポリアルキレンカーボネートジオールに限定されるものではない。
【0035】
<ポリブチレンカーボネートジオール:メチレン基数;n=4>
本発明において、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリブチレンカーボネートジオールを使用する場合、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、式(2)で示されるポリブチレンカーボネートジオールの比(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール(モル数):式(2)で示されるポリブチレンカーボネートジオール(モル数))は、通常1:99〜99:1、好ましくは5:95〜75:25、より好ましくは25:75〜75:25である。なお、モル数の算出には、前記数平均分子量を使用する。
【0036】
<ポリペンタメチレンカーボネートジオール:メチレン基数;n=5>
本発明において、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリペンタメチレンカーボネートジオールを使用する場合、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、式(2)で示されるポリペンタメチレンカーボネートジオールの比(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール(モル数):式(2)で示されるポリペンタメチレンカーボネートジオール(モル数))は、通常1:99〜99:1、好ましくは5:95〜75:25、より好ましくは5:95〜71:29である。なお、モル数の算出には、前記数平均分子量を使用する。
【0037】
<ポリヘキサメチレンカーボネートジオール:メチレン基数;n=6>
本発明において、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールを使用する場合、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、式(2)で示されるポリヘキサメチレンカーボネートジオールの比(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール(モル数):式(2)で示されるポリヘキサメチレンカーボネートジオール(モル数))は、通常1:99〜99:1、好ましくは23:77〜75:25、より好ましくは48:52〜73:27である。なお、モル数の算出には、前記数平均分子量を使用する。
【0038】
<エステル交換触媒>
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法において、使用されるエステル交換触媒は、通常使用されるエステル交換触媒を使用するのであれば、特に制限されない。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ハフニウム等の金属を含む、無機金属化合物又は有機金属化合物が使用される。更に、反応の進行状態等必要に応じて助触媒として、例えば、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。なお、これらの触媒は単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記エステル交換触媒として、好ましくはテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等の炭素数4〜40のアルコキシ又はアリールオキシチタン化合物;ジブチルチンオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等の炭素数2〜40の有機スズ化合物;トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム等の炭素数3〜30の有機アルミニウム化合物が使用され、より好ましくはテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等の炭素数4〜40のアルコキシ若しくはアリールオキシチタン化合物、又はジブチルチンオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等の炭素数2〜40の有機スズ化合物、更に好ましくはテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等の炭素数4〜40のアルコキシ又はアリールオキシチタン化合物、特に好ましくはテトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタンからなる群より選ばれる1種以上のアルコキシ又はアリールオキシチタン化合物が使用される。
【0040】
(エステル交換触媒の使用量)
前記エステル交換触媒は、単独で使用しても、又は複数種使用してもよく、その(合計)使用量は、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオール1モル(分子量は、H−NMR測定で得られた数平均分子量を使用)に対して、好ましくは0.001〜5ミリモル、より好ましくは0.001〜3ミリモル、特に好ましくは0.003〜1ミリモルである。
【0041】
<反応溶媒>
本発明に係る製造方法において、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと1種以上の式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとの反応は、無溶媒で行うことも、又は別途反応溶媒を使用して行うこともできる。本発明に係る製造方法において使用される反応溶媒は、反応を阻害するものでなければ、特に制限されない。このような反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。なお、この反応溶媒は単独でも2種以上併用して使用してもよい。また、反応溶媒の使用量は、反応の進行を遅くしたり、又は停止させたりする量でなければ特に制限されず、必要に応じて適宜決められる。
【0042】
<反応条件>
(反応装置)
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法は、エステル交換触媒の存在下、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと1種以上の式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとを、反応溶媒の存在下又は非存在下、減圧下及び/又は不活性ガス気流下にて、加熱しながら攪拌等により混合させて行う、エステル交換による重合反応である。また、その製造方式は、例えば、バッチ方式、連続方式等いずれも方式も可能である。
また、使用される反応機器として、具体的には、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が挙げられるが、特に限定されない。なお、これらの重合機器は単独もしくは組み合わせて使用してもよい。更に、これらの重合機器の材質についても特に制限はなく、通常ステンレススチール、ニッケル、又はグラスライニング等から適宜選んで使用される。
【0043】
(反応温度、反応圧力)
本発明に係る製造方法における反応温度は、好ましくは50〜350℃、更に好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜250℃、特に好ましくは150〜200℃である。この範囲の反応温度で製造を行うことにより、室温付近でも良好な流動性を発現し、高いハンドリング性を有する本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールが得られる。また、反応圧力は、特に制限されないが、通常、1.33kPa(10mmHg)〜101.33kPa(大気圧下)で行うことが好ましい。
【0044】
<<本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオール>>
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、分子末端に水酸基を有するポリカーボネートジオールである。
更に、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、通常の作業環境温度下、具体的には、温度30℃以上という、通常であれば室温以上の温度条件下では結晶状態ではないポリアルキレンカーボネートジオールを示す。
【0045】
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、上記の方法で得られ、下記式(A)と1種以上の下記式(B)で示される分子構造を繰り返し単位として含むポリアルキレンカーボネートジオールであって、より具体的には、少なくとも温度30℃以上で流動性を示すポリアルキレンカーボネートジオール共重合体である。
【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
式(B)で示される分子構造において、nは、メチレン基(−CH−)の繰り返し単位の個数で7を除く2〜12を示し、好ましくは2〜6、8及び9、より好ましくは4〜6、特に好ましくは4又は5の整数である。
【0049】
本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールにおいて、その流動性を示し始める温度は、式(B)で示される分子構造のアルキレンカーボネート成分の総数、その種類(具体的には、メチレン基(n)の数)、及びそれらの含有比率で異なる。
【0050】
次に、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、より好適な流動性を示す、前記「より好ましいポリアルキレンカーボネートジオール」を使用して製造される流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの式(A)と式(B)の含有比率について、以下にそれぞれ示す。なお、前記「より好ましいポリアルキレンカーボネートジオール」とは、メチレン基数(n)が4〜6であるポリアルキレンカーボネートジオールを示し、また、式(A)と式(B)の含有比率は、後述のH−NMRスペクトル測定から算出される。
【0051】
<n=4;ポリブチレンカーボネートジオールを使用して製造される流動性ポリアルキレンカーボネートジオール>
前記式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリブチレンカーボネートジオール(式(2)におけるメチレン基数:n=4)を使用して製造した場合、下記式(A)及び式(B)の繰り返し単位の分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(以下、PCD−A−B4と称することがある)が得られる。
【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
前記PCD−A−B4における上記式(A)と式(B)の含有比率(式(A):式(B))は、通常1:99〜99:1であるが、特に、温度30℃以上にて流動性を示すためには、好ましくは5:95〜75:25、より好ましくは25:75〜75:25である。
【0055】
<n=5;ポリペンタメチレンカーボネートジオールを使用して製造される流動性ポリアルキレンカーボネートジオール>
前記式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリペンタメチレンカーボネートジオール(式(2)におけるメチレン基数:n=5)を使用して製造した場合、下記式(A)及び式(B)の繰り返し単位の分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(以下、PCD−A−B5と称することがある)が得られる。
【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
前記PCD−A−B5における上記式(A)と式(B)の含有比率(式(A):式(B))は、通常1:99〜99:1であるが、特に、温度30℃以上にて流動性を示すためには、好ましくは5:95〜75:25、より好ましくは5:95〜71:29である。
【0059】
<n=6;ポリヘキサメチレンカーボネートジオールを使用して製造される流動性ポリアルキレンカーボネートジオール>
前記式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールとして、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(式(2)におけるメチレン基数:n=6)を使用して製造した場合、下記式(A)及び式(B)の繰り返し単位の分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(以下、PCD−A−B6と称することがある)が得られる。
【0060】
【化16】

【0061】
【化17】

【0062】
前記PCD−A−B6における上記式(A)と式(B)の含有比率((式(A):式(B))は、通常1:99〜99:1であるが、特に、温度30℃以上にて流動性を示すためには、好ましくは23:77〜75:25、より好ましくは48:52〜73:27である。
【0063】
(本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの粘度)
本発明の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、室温以上で液状物であることが好ましい。ここで、本発明願における「室温」とは、30℃付近の温度を示し、また「液状物」とは、例えば、30℃付近の温度で非晶質の状態であることを示す。特に、本発明のポリへプタメチレンカーボネートジオールを用いた流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、温度50℃で測定した粘度が20kPa・s以下である物質のことをいい、17kPa・s以下が好ましく、12kPa・s以下が特に好ましい。
より具体的には、本発明の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの粘度は、例えば、式(B)で示される分子構造のアルキレンカーボネート成分の総数、その種類(具体的には、メチレン基(n)の数)、数平均分子量等で異なる。例えば、数平均分子量2000の本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの粘度を後述のE型粘度計(測定温度:50℃)にて測定した場合、7〜17kPa・s程度であれば、適度な粘弾性が必要な材料分野における原料等として好適であり、また、数平均分子量1000の本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの粘度については、1.3〜2.0kPa・s程度であれば、液だれ、液ムラ等の改善が必要な塗料、接着剤等の材料分野等における好適な構成成分として期待される。
【0064】
(本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの分子量(数平均分子量)
そこで、この性状を示す本発明の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの分子量(数平均分子量)は、好ましくは500〜5000、より好ましくは500〜3000、さらに好ましくは1000〜3000、特に好ましくは1000〜2500である。なお、分子量は、例えば、H−NMRスペクトルから算出される数平均分子量であっても、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:標準物質;ポリスチレン)から算出される数平均分子量であっても、またその他の算出法による数平均分子量であってもよい。しかしながら、本発明では、製造物の構造確認も併せて行うことができることから、H−NMRスペクトルから算出される数平均分子量を用いている。なお、数平均分子量が500未満の場合には、脆く機械強度が小さいポリウレタンしか得られず、5000を越える場合、得られるポリウレタンの力学的性能が不十分となるので好ましくない。
【0065】
本発明に係る製造方法で得られる新規な流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、上記の含有比率にて、良好な流動性を示すが、特に好ましくは、PCD−A−B4又はPCD−A−B5を用いた場合であって、上記の好適な含有比率のものである。これらの流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、より低コストで製造できるために経済的で、かつコート剤やポリウレタン等の各種ポリマー材料の合成原料等の用途が多種多様であり工業的にも非常に有用な化合物である。例えば、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールをポリウレタンジオールの合成原料として用いた場合、弾性回復性、柔軟性に優れたポリウレタンとなることが期待されている。
【実施例】
【0066】
次に、実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び参考例に限定されるものではない。
【0067】
<原料合成:ポリアルキレンカーボネートジオール>
まず、合成原料である数平均分子量2000の1,4−ブタンジオールから製造されたポリブチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C4と称することがある)、数平均分子量2000の1,5−ペンタンジオールから製造されたポリペンタメチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C5と称することがある)及び数平均分子量2000の1,7−ヘプタンジオールから製造されたポリへプタメチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C7と称することがある)は、それぞれ、下記参考例1乃至3に記載の方法にて合成した。また、数平均分子量2000の1,6−へキサンジオールから製造されたポリヘキサメチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C6と称することがある)は、市販品(「UH−200」宇部興産(株)製)を使用し、その測定データを参考例4とした。また、数平均分子量1000のポリへプタメチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C7−1000と称することがある)は、下記参考例5に記載の方法にて合成した。更に数平均分子量1000の1,6−へキサンジオールから製造されたポリヘキサメチレンカーボネートジオール(以下、PCD−C6−1000と称することがある)は、市販品(「UH−100」宇部興産(株)製)を使用し、その測定データを参考例6とした。
【0068】
<ポリアルキレンカーボネートジオールの数平均分子量>
H−NMRの測定)
本発明で得られた流動性ポリアルキレンカーボネートジオール、及び参考例で合成された合成原料としてのポリアルキレンカーボネートジオールは、それぞれ、重クロロホルムに溶解してNMR測定用サンプルを調整し、これをFT−NMR AL−300(日本電子株式会社製)を用いて、H−NMRスペクトルの測定をノンデカップリングで行った。
【0069】
(繰り返し単位の分子構造の数の算出)
繰り返し単位の分子構造の数は、「高分子の核磁気共鳴(高分子学会高分子実験学編集委員会編 共立出版 283ページ)」を参照して算出する。
より具体的には、上記で得られたH−NMRスペクトルデータより、分子末端の水酸基に隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMR法での化学シフトの値(δ:ppm):3.50〜3.80ppm)の積分値を1とした場合における、分子鎖中のカーボネート基に隣接するメチレン部位の水素原子(H−NMR法での化学シフトの値(δ:ppm):4.00〜4.30ppm)の積分値の比が、前記式(1)、式(2)、式(2Ak)、式(A)、式(B)、式(B)、式(B)又は式(B)中に示される繰り返し単位の分子構造数、a、b、bAk、b、b又はbとして示される。
【0070】
(数平均分子量の算出)
本発明で得られた流動性ポリアルキレンカーボネートジオール、及び参考例で合成された合成原料としてのポリアルキレンカーボネートジオールの数平均分子量は、前記にて算出された繰り返し単位の分子構造数、a、b、bAk、b、b又はbと繰り返し単位の分子量の積に末端の分子量を加味して算出される。更に、例えば、前記PCD−A−B4、PCD−A−B5、PCD−A−B6等の共重合体である流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの場合は、合成原料の仕込み比を換算して、数平均分子量を算出する。
【0071】
<熱的挙動の測定>
本発明で得られた流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの融点、及びガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC、測定温度範囲:−100〜150℃)で測定した。
【0072】
<粘度の測定>
本発明で得られた流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの粘度は、E型粘度計(東京計器製)を用い、JIS K1557−5に準じて測定した。
【0073】
参考例1:(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールの合成:PCD−C7)
減圧脱水処理(0.4kPa、内温100℃にて30分間)を行った、攪拌装置、精留装置、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器(内容積300mL)に、不活性ガス下、1,7−ヘプタンジオール158.6g(純度98%、1.2モル)、炭酸ジメチル105.9g(1.18モル;1,7−ヘプタンジオール1モルに対して0.98当量)及びテトラブトキシチタン(Ti(OBu))20mg(1,7−ヘプタンジオール1gに対して126ppm相当)を混合し、内温98〜99℃にて約1時間還流させた。次に、炭酸ジメチルと反応で生成するメタノールとを留去させながら内温が190℃となるまで昇温し、引き続き、内圧を20kPaまで減圧にして1時間留去を続けた。
その後、更に留去を続けながら、内圧を0.4kPaまで徐々に減圧し、反応温度を内温が210℃となるまで昇温させて、適宜、反応溶液をサンプリングしながら、H−NMRにて目的の数平均分子量(例えば2000)付近となっていることを確認したところを反応終点とした。
反応終了後、得られた反応溶液を冷却し、白色固体として、目的とするポリヘプタメチレンカーボネートジオール(PCD−C7)143.3gを得た。得られたPCD−C7の分析値を下記表1に示す。
【0074】
参考例2:(式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの合成:n=5、PCD−C5)
参考例1における1,7−ヘプタンジオールの代わりに、1,5−ペンタンジオールを用いた以外は参考例1と同様の方法を行い、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオール(n=5、PCD−C5)を製造した。得られたPCD−C5については、参考例1と同様に、H−NMRスペクトル分析から数平均分子量を求め、また示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定した。結果を下記表1に示す。
【0075】
実施例1:(PCD−C7とPCD−C5からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成;繰り返し単位の分子構造(A)と(B)の含有比率=50:50)
攪拌装置、加熱装置、温度計を備えた50ml反応容器に、参考例1で合成した数平均分子量2000のポリへプタメチレンカーボネートジオール(PCD−C7)8.28gと参考例2で合成した数平均分子量2000のポリペンタメチレンカーボネートジオール(PCD−C5)6.81gとを加え、不活性ガス雰囲気下、内温180℃で8時間ほど加熱攪拌した。反応終了後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、無色透明の液体として、ヘプタメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−A−B5)15gを得た。
【0076】
得られたPCD−A−B5は、H−NMRスペクトル分析から数平均分子量を求め、また示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定した。結果を下記表1に示す。
【0077】
実施例2〜11:(PCD−C7とPCD−C5からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
前記実施例1におけるPCD−C7とPCD−C5の仕込み量を、PCD−C7/PCD−C5=5/95(実施例2)、10/90(実施例3)、15/85(実施例4)、22/78(実施例5)、25/75(実施例6)、45/55(実施例7)、60/40(実施例8)、65/35(実施例9)、71/29(実施例10)及び75/25(実施例11)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応させて、ヘプタメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−A−B5)を合成した。得られたPCD−A−B5を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表1に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点及び粘度の測定方法は、前記の通りである。
【0078】
【表1】

【0079】
参考例3:(式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの合成:n=4、PCD−C4)
参考例1における1,7−ヘプタンジオールの代わりに、1,4−ブタンジオールを用いた以外は参考例1と同様の方法を行い、式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオール(n=4、PCD−C4)を製造した。得られたPCD−C4については、参考例1と同様に、H−NMRスペクトル分析から数平均分子量を求め、また示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定した。結果を下記表2に示す。
【0080】
実施例12〜14:(PCD−C7とPCD−C4からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
参考例2で合成したPCD−C5の代わりに、参考例3で合成した数平均分子量2000のポリブチレンカーボネートジオール(PCD−C4)を用い、その仕込み量を、PCD−C7/PCD−C4=25/75(実施例12)、50/50(実施例13)及び75/25(実施例14)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応させて、ヘプタメチレンカーボネート及びブチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−A−B4)を合成した。得られたPCD−A−B4を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表2に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点及び粘度の測定方法は、前記の通りである。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例15〜18(PCD−C7とPCD−C6からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
参考例2で合成したPCD−C5の代わりに、数平均分子量が2000のポリ(ヘキサメチレン)カーボネートジオール(「UH−200」宇部興産(株)製:PCD−C6)を用い、その仕込み量を、PCD−C7/PCD−C6=23/77(実施例15)、48/52(実施例16)、73/27(実施例17)及び75/25(実施例18)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応させて、ヘプタメチレンカーボネート及びヘキサメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−A−B6)を合成した。得られたPCD−A−B6を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表3に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点、及び粘度の測定は、前記の通りである。
【0083】
参考例4(式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの物性測定:n=6、PCD−C6)
数平均分子量2000のPCD−C6(「UH−200」宇部興産(株)製)を用い、実施例1と同様の方法で、数平均分子量、融点、ガラス転移点、及び粘度を測定した。その結果を下記表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
参考例5(式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールの合成:PCD−C7−1000)
減圧脱水処理(0.4kPa、内温100℃にて30分間)を行った攪拌装置及び温度計を備えた反応容器(内容積200mL)に、不活性ガス下、数平均分子量2084のポリヘプタメチレンカーボネートジオール30.73g(但し、エステル交換触媒が含有した量)、数平均分子量1895のポリヘプタメチレンカーボネートジオール49.36g(但し、エステル交換触媒が含有した量)及び1,7−ヘプタンジオール5.57gを加え、内温195〜200℃で4時間加熱攪拌し、反応溶液をサンプリングしたところ、H−NMRにて目的の数平均分子量(1000)付近となっていることを確認したので、反応を終了した。反応終了後、得られた反応溶液を濃縮後、室温まで冷却し、白色固体として、目的とするポリヘプタメチレンカーボネートジオール85.34gを得た。
【0086】
得られたPCD−C7−1000については、参考例1と同様に、H−NMRスペクトル分析から数平均分子量を求め、また示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定した。結果を下記表4に示す。
【0087】
実施例19〜21:(数平均分子量1000のPCD−C7と数平均分子量1000のPCD−C6からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
PCD−C7とPCD−C6の代わりに、参考例5で合成した数平均分子量1000のポリヘプタメチレンカーボネートジオール(PCD−C7−1000)と数平均分子量1000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(「UH−100」宇部興産(株)製:PCD−C6−1000)を用い、その仕込み量を、PCD−C7−1000/PCD−C6−1000=23/77(実施例19)、48/52(実施例20)、73/27(実施例21)とした以外は、実施例15〜18と同様の方法で反応させて、ヘプタメチレンカーボネート及びヘキサメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−A−B6−1000)を合成した。得られたPCD−A−B6−1000を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表4に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点及び粘度の測定は、前記の通りである。
【0088】
参考例6(式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールの物性測定:n=6、PCD−C6−1000)
数平均分子量1000のPCD−C6(「UH−100」宇部興産(株)製)を用い、H−NMRスペクトル分析から数平均分子量を求め、また示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定した。結果を下記表4に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
上記表1〜4より、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、いずれも室温付近、例えば、温度30℃以上では溶融状態を示す液状物である。
【0091】
比較例1〜3(PCD−C6とPCD−C5からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
参考例1で合成した数平均分子量2000のポリへプタメチレンカーボネートジオール(PCD−C7)の代わりに数平均分子量が2000のポリ(ヘキサメチレン)カーボネートジオール(「UH−200」宇部興産(株)製:PCD−C6)を用い、その仕込み量を、PCD−C6/PCD−C5=23/77(比較例1)、47/53(比較例2)、60/40(比較例3)とした以外は、実施例1と同様の方法で反応させて、ヘキサメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−B6−B5)を合成した。得られたPCD−B6−B5を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表5に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点、及び粘度の測定は、前記の通りである。
【0092】
【表5】

【0093】
比較例4〜6(PCD−C6とPCD−C4からなる流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの合成)
参考例1で合成した数平均分子量2000のポリへプタメチレンカーボネートジオール(PCD−C7)の代わりに数平均分子量が2000のポリ(ヘキサメチレン)カーボネートジオール(「UH−200」宇部興産(株)製:PCD−C6)を用い、その仕込み量を、PCD−C6/PCD−C4=25/75(比較例4)、50/50(比較例5)、75/25(比較例6)とした以外は、実施例12〜14と同様の方法で反応させて、ヘキサメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートの分子構造を有する流動性ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD−B6−B4)を合成した。得られたPCD−B6−B4を実施例1と同様の方法で分析した。結果を下記表6に示す。なお、表中、数平均分子量、融点、ガラス転移点、及び粘度の測定は、前記の通りである。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例22〜23、比較例3〜4(ポリ(アルキレン)カーボネートジオールの吸水性測定)
実施例6で製造したPCD−C7/PCD−C5=25/75(数平均分子量:1985)と、PCD−C6(「UH−200」宇部興産(株)製)と参考例2で合成したPCD−C5とから実施例1と同様の方法で合成したPCD−C6/PCD−C5=25/75(数平均分子量:2000)とを、それぞれ30mLガラス製円筒状サンプル管(表面積:5.3cm)に加え、これらを検体乾燥器に入れ、内圧0.4kPa、内温120℃にて3時間ほど脱水処理し、耐吸水性測定用のサンプルを調製した。次に、これらのサンプルを、湿度90%以上、内温5℃(実施例22、比較例3)、又は25℃(室温)(実施例23、比較例4)の環境下で、一定期間静置して保存し、吸水量について調べた。結果を表7、表8にそれぞれ示す。なお、各サンプル中の水分量の経時変化は、カールフィッシャー水分測定装置を用いて測定した。
【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
上記表7、表8より、本発明に係る流動性ポリアルキレンカーボネートジオールは、式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールの含有量を、わずか25%しか含有してしなくても、耐吸水性を良好に改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、粘度特性やハンドリング性に優れた新規な流動性アルキレンカーボネートジオールに関する。本発明の流動性アルキレンカーボネートジオールは、温度30℃以上で液状物等の液体であり、例えば、塗料、接着剤等の構成材料又はポリウレタン等のポリマーの合成原料或いは添加物として用いた場合、別途溶媒の使用量を削減し、或いは加熱等の操作をすることも少なく条件で使用できることから、例えば、これを用いたポリウレタン製品設計上の選択や適応範囲を広げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)及び式(B)で示される繰り返し単位の分子構造を有することを特徴とする流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【化1】

【化2】

【請求項2】
式(B)中のnが4〜6である請求項1記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【請求項3】
H−NMRスペクトル分析から算出される数平均分子量が1000〜2500である請求項1又は2記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【請求項4】
式(B)において、nが5であって、更に式(A)及び式(B)含有比率(式(A)/式(B))が5/95〜75/25である請求項3記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【請求項5】
式(B)において、nが4であって、更に式(A)及び式(B)含有比率(式(A)/式(B))が25/75〜75/25である請求項3記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【請求項6】
式(B)において、nが6であって、更に式(A)及び式(B)含有比率(式(A)/式(B))が23/77〜75/25である請求項3記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオール。
【請求項7】
式(1)で示されるポリヘプタメチレンカーボネートジオールと、式(2Ak)で示される少なくとも1種のポリアルキレンカーボネートジオールとを反応させることを特徴とする流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法。
【化3】

【化4】

【請求項8】
式(2Ak)が、下記式(2)で示されるポリアルキレンカーボネートジオールである、請求項7記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法。
【化5】

【請求項9】
H−NMRスペクトル分析から算出される流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの数平均分子量が1000〜2500である請求項8記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法。
【請求項10】
式(2)において、nが4〜6である請求項7乃至9いずれか記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至6いずれか記載の流動性ポリアルキレンカーボネートジオールを主成分とするポリウレタン製造用ポリアルキレンカーボネートジオール。

【公開番号】特開2013−35911(P2013−35911A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171524(P2011−171524)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】