流動性充填材の充填方法、充填装置及びウエハ
【課題】ウエハに設けられた微細孔内に流動性充填材を、より確実に充填し得、しかも、ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供すること。
【解決手段】ウエハ7に存在する微細孔73内に流し込まれた流動性充填材9を、加圧手段1,3により加圧する工程において、ウエハ7の受圧面71に対する流動性充填材9の表面張力と、加圧手段1,3の加圧面311に対する流動性充填材9の表面張力とを互いに異ならせる。
【解決手段】ウエハ7に存在する微細孔73内に流し込まれた流動性充填材9を、加圧手段1,3により加圧する工程において、ウエハ7の受圧面71に対する流動性充填材9の表面張力と、加圧手段1,3の加圧面311に対する流動性充填材9の表面張力とを互いに異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性充填材または液状充填材(以下流動性充填材と称する)を、微細孔に充填する方法、その方法を実施する充填装置及びウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスによって代表される電子デバイスや、マイクロマシン等においては、内部に高アスペクト比を持つ微細な導体充填構造、絶縁構造又は機能構造を形成しなければならないことがある。このような場合、予め選択された充填材を微細孔内に充填することによって、導体充填構造、絶縁構造及び機能構造等を実現する技術が知られている。しかし、高アスペクト比を持つ微細孔内に、空隙や硬化後変形などを生じさせることなく、その底部まで充填材を充分に充填することは困難を極める。
【0003】
そのような技術的困難性を克服し得る先行技術として、特許文献1及び2に記載された充填方法及び装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、ウエハに存在する微細孔に溶融金属を充填し硬化させる方法であって、前記微細孔内の前記溶融金属に対し、大気圧を超える強制外力を印加したままで、前記溶融金属を冷却し硬化させる工程を含む。前記強制外力は、プレス圧、射出圧又は転圧から選択された少なくとも1種で与えられ、前記微細孔の他端側を閉じた状態で、前記微細孔の開口する開口面側から前記溶融金属に印加される。特許文献2は、特許文献1に記載された方法を実施するための充填装置を開示している。
【0005】
上述した特許文献1,2に記載された技術によれば、空隙やボイドなどを生じることなく、微細孔を充填物によって満たし得ること、微細隙間で冷却された硬化金属の凹面化を回避し得ること、及び、工程の簡素化、歩留りの向上などに寄与し得ること、等の優れた作用効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4278007号公報
【特許文献2】特許第4505540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ウエハに設けられた微細孔内に流動性充填材を、より確実に充填し得る改善された充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、充填方法、充填装置及びウエハに係る3つの態様を開示する。
【0010】
まず、本発明に係る充填方法は、ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する方法であって、前記微細孔内に流し込まれた前記流動性充填材を、加圧手段により加圧する工程を含んでおり、前記工程において、前記ウエハの受圧面に対する前記流動性充填材の表面張力と、前記加圧手段の加圧面に対する前記流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる。
【0011】
上述した方法によれば、ウエハの受圧面と、加圧手段の加圧面とで見た流動性充填材の表面張力の差を利用して、流動性充填材を、微細孔内に確実に充填することができる。その具体的態様として、ウエハの受圧面に対する表面張力を、加圧手段の加圧面に対する表面張力よりも大きくするか、または、ウエハの受圧面に対する表面張力を、加圧手段の加圧面に対する表面張力よりも小さくする2つの態様があり得る。
【0012】
一つの好ましい態様として、ウエハの受圧面を、レジスト層によって構成する場合がある。この場合のウエハは、多数の微細孔と、レジスト層とを有する。微細孔は、ウエハの厚み方向に開けられた空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、レジスト層は微細孔の開口の周りにおいてウエハ面を覆い、開口を画定している。即ち、レジスト層は、微細孔をフォトリソグラフィ工程によって形成する場合のマスクとなるフォトレジスト層である。
【0013】
このようなレジスト層は、ウエハの素面の場合と対比して、流動性充填材を凝集させる方向となる。このウエハの受圧面に対して、加圧手段の加圧面を、流動性充填材の凝集を抑制する表面性を付与する。これにより、フォトリソグラフィ工程等によって、微細孔を形成した後のウエハを用いて、流動性充填材を、微細孔内に確実に充填することができる。
【0014】
レジスト層は、化学的剥離処理等によって、その内部の流動性充填材残渣とともに、ウエハ素面から剥離できる。即ち、ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る。
【0015】
次に、上述した充填方法を実施するための本発明に係る充填装置は、第1加圧手段と、第2加圧手段とを含んでいる。第1加圧手段は、ウエハを設置する設置面を有しており、第2加圧手段は、前記第1加圧手段と組み合わされて前記ウエハを加圧する。前記第1加圧手段または第2加圧手段の少なくとも一方は、前記ウエハを加圧する加圧面に、前記流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層を有する。表面張力制御層は、流動性充填材の表面張力の作用を低減させるか、または増大させる層である。
【0016】
上述した充填装置によれば、本発明に係る充填方法を、確実に実施することができる。
本発明の方法を実施するのに用いられるウエハについては、既に述べたところである。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)ウエハに設けられた微細孔内に流動性充填材を確実に充填し得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することができる。
(b)ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る充填装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る充填装置の別の例を示す図である。
【図3】図1に示した充填装置を用いた充填工程を示す図である。
【図4】図1に示した充填装置に適用されるウエハの平面図である。
【図5】図4に示したウエハの一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図3に示した充填工程の後の工程を示す図である。
【図7】図6に示した充填工程の詳細を示す図である。
【図8】図7に示した充填工程の後の工程を示す図である。
【図9】図8に示した工程の後に採り得る工程を示す図である。
【図10】図8に示した工程の後の工程を示す図である。
【図11】加圧冷却を省略して得られた半導体ウエハ(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【図12】本発明に係る充填装置を用いて得られた半導体ウエハ(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【図13】図2に示した本発明に係る充填装置を用いた充填方法を示す図である。
【図14】図13に示した工程の後の工程を示す図である。
【図15】図13、図14の工程に適用されるウエハの一部を拡大して示す断面図である。
【図16】図14における工程を拡大して示す断面図である。
【図17】図16に示した工程の後の工程を示す図である。
【図18】図17に示した工程の後に採り得る工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明に係る充填方法を実施するのに用いられる充填装置は、第1加圧手段1及び第2加圧手段3を含む。第1加圧手段1は、ウエハ7を設置する設置面101を有している。設置面101は、その全周が凸縁102によって囲まれた状態で、その一面が開放されている。第1加圧手段1は、固定されていてもよいし、上下方向(図において)に駆動される可動体であってもよい。この実施の形態では、駆動軸103によって上下方向に駆動される可動体として説明する。
【0020】
第2加圧手段3は、第1加圧手段1と組み合わされてウエハ7に充填された流動性充填材を加圧する加圧手段を構成する。図示の第2加圧手段3は、プレス板であり、その後部側にプレス装置(図示しない)に上下方向(図において)に駆動される駆動軸301が取り付けられている。第2加圧手段3は、第1加圧手段1に対して、その開口面の側から組み合わされて、ウエハ処理室を画定する。
【0021】
第1加圧手段1に対する第2加圧手段3の組み合わせの形態は、本実施形態のように凸凹嵌合であっても、他の態様であってもよい。もっとも、その組み合わせ形態は、何れの場合も、第2加圧手段3と第1加圧手段1の間に気密性のある処理室が形成できることが好ましい。第2加圧手段3は、流動性充填材供給路302と、圧力制御路303とを備えている。流動性充填材供給路302は、図示しない流動性充填材供給装置に、例えば配管306をもって接続されている。流動性充填材供給路302は、流動性充填材の供給、停止に用いられるバルブ304が設けられている。バルブ304は、電気機械的制御によって、あるいは手動によって開閉される。
【0022】
圧力制御路303は、配管307を以て圧力制御装置(図示しない)に接続される。圧力制御路303には、バルブ305が取り付けられている。バルブ305は、処理室の内圧を加減圧するとき、電気機械的制御によって、あるいは手動によって制御される。
【0023】
本発明の特徴として、第1加圧手段1または第2加圧手段3の少なくとも一方は、ウエハ7を加圧する加圧面311に、流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層31を有する。この実施例では、表面張力制御層31は、第2加圧手段3の加圧面311を構成する。表面張力制御層31は、ウエハ7の受圧面71に対する流動性充填材の表面張力と、加圧手段3(または1)の加圧面311に対する流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる働きをする。加圧面311及び受圧面71に対する流動性充填材の表面張力の制御は、加圧面311または受圧面71の表面性、特に濡れ性を制御することによって行うことができる。これは、加圧面311または受圧面71を、互いに仕事関数の異なる材料によって構成することでもある。
【0024】
具体的には、ウエハ7の受圧面71との対比において、加圧手段の加圧面311に対する表面張力が小さくなる(加圧面311の濡れ性が高い)ようにするか、または、逆に、加圧手段の加圧面311に対する表面張力が大きくなる(加圧面311の濡れ性が低い)ようにする。
【0025】
図1は、前者の場合を示し、表面張力制御層31を、例えば、シリコンゴム等の有機材料によって構成してある。これとは異なって、第2加圧手段3の表面を粗面化してもよい。図2は、加圧面311に対する表面張力が大きくなる(加圧面311の濡れ性が低い)場合を示し、表面張力制御層31を、例えば、フッ素樹脂層によって構成した例を示している。
【0026】
次に、図1に示した充填装置を使用した流動性充填材の充填方法について、図3〜図11を参照して説明する。まず、図3に示すように、第1加圧手段1の一面に形成された設置面101にウエハ7を載置する。ウエハ7は、図4及び図5に図示するように、ウエハ7リング72によって支持されたウエハ7基板70の厚み方向に多数の微細孔73を開けたもので、厚み方向の面704は平滑な素面となっている。ウエハ7は、半導体デバイス用ウエハの他、他の電子デバイスウエハやマイクロマシン用ウエハ等、幅広く含むことができる。また、ウエハ7は、金属、合金、金属酸化物、セラミックス、ガラス、プラスチックもしくはそれらの複合材、又は、それらの積層体の別を問わず、広く用いることができる。更に、ウエハ7の外形形状は、平板状に限らず、任意の形状をとることができる。図示の平板状は、単に説明の便宜のために選択された一例に過ぎない。
【0027】
ウエハ7の物性、構造などは、対象とするデバイスの種類によって異なる。例えば、半導体デバイスの場合には、Siウエハ、SiCウエハ又はSOIウエハ等が用いられる。受動電子回路デバイスの場合には、誘電体、磁性体又はそれらの複合体の形態をとることがある。MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は光デバイスなどの製造においても、その要求に沿った物性及び構造を持つウエハ7が用いられる。
【0028】
ウエハ7において、微細孔73は、一般には、貫通孔、非貫通孔(盲孔)又はビア・ホールと称される。この微細孔73は、例えば、孔径が10μm〜60μmである。ウエハ7自体の厚みは、通常、数十μmである。したがって、微細孔73はかなり高いアスペクト比を持つことになる。
【0029】
次に、図6に図示するように、第1加圧手段1の設置面101にウエハ7を載置した状態で、第1加圧手段1または第2加圧手段3を矢印F1,F2の方向に駆動し、第1加圧手段1及び第2加圧手段3の間に、密閉された処理室Aを形成する。
【0030】
次に、圧力制御路303を介して、圧力制御装置により、処理室Aの内部圧力を、例えば真空度10-3Pa程度まで減圧する。処理室A内のガス圧は、一例であるが、0.6〜1kgf/cm2の範囲で設定することができる。このガス圧に到達するまでの昇圧−時間特性をコントロールすることにより、好適な動圧を発生させることができる。
【0031】
次に、流動性充填材供給装置(図示しない)から、配管306及び流動性充填材供給路302を介して、図7に図示するように、減圧下にある処理室Aに流動性充填材9を供給する。流動性充填材9を構成する材料は、ウエハ7の種類及びその目的に応じて、その組成分が選択される。流動性充填材9は、例えば、溶融金属であってもよいし、導電性ペーストであってもよいし、液体ガラス等を含む絶縁性流動物や、無機物を分散媒に分散させた懸濁液等であってもよい。要するに、流動性を有するものであればよい。
【0032】
微細孔73内に流動性充填材9を充填した後、図8に図示するように、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段3によって、流動性充填材9を加圧する。この加圧手段3は、ガス圧、プレス圧、射出圧、又は転圧から選択された少なくとも1種の加圧力を与える。加圧手段3として、プレス圧を印加するプレス機を採用することができるし、又は、上述した圧力制御路303に接続された圧力制御装置を加圧手段として兼用することによって、ガス圧を印加する構成とすることもできる。自然冷却、あるいは、液体窒素や液体ヘリウムなどによる強制冷却手段によって、充填された流動性充填材9を冷却し硬化させる。このとき、上述した加圧手段によって、硬化するまで流動性充填材9に圧力を与え続ける。これにより、流動性充填材9を微細孔73の底部まで充分に充填することができる。
【0033】
ここで、本発明では、ウエハ7の受圧面71と、加圧手段の加圧面311とで見た流動性充填材9の表面張力の差を利用して、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。実施例では、表面張力制御層31を、例えば、シリコンゴム等の有機材料によって構成してあるので、ウエハ7の受圧面71に対する表面張力が、加圧手段の加圧面311に対する表面張力よりも大きくなる。したがって、ウエハ7の受圧面71では流動性充填材9を凝集させる方向になるのに対し、加圧手段の加圧面311では、流動性充填材9の凝集を抑制する方向となるので、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。これを仮に、表面張力制御層31を持たず、通常は、金属面となる第1加圧手段3の加圧面で、流動性充填材9を加圧した場合には、流動性充填材9が、その有する表面張力により、ウエハ7の表面で凝集してしまい、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる困難になる。
【0034】
しかも、流動性充填材9を加圧するので、硬化後にウエハ7の上に残る充填材残渣91の厚みが非常に薄くなる。必要であれば、図9に図示するように、ヒータなどの加熱手段によって、充填材残渣91を再溶融させ、図10に図示するように、再溶融した充填材残渣91を、例えばスキージ11などの除去手段により拭き取り除去する。この後工程によれば、ウエハ7の外面を、充填材残渣91のない平坦な面となしえる。充填材残渣91は薄いので、この拭き取り操作は簡単に済む。しかも、拭き取りという簡単な操作で済み、従来と異なって、冷却後の流動性充填材9の再供給やCMP工程等が不要であるから、工程の簡素化、歩留りの向上などに寄与することができる。必要であれば、硬化工程に準じて、更に、再加圧し、その後に冷却する工程を実行してもよい。もっとも、この後工程は、充填材残渣を除去し、ウエハ7の一面を平坦化するためのものであるから、平坦化の必要がない場合には、省略することもできる。また、充填材残渣は、再溶融させずに、機械的に削除してもよい。
【0035】
次に、本発明の効果をSEM(Scanning Electron Microscope)写真によって説明する。図11は、加圧冷却を省略して得られた半導体ウエハ7(シリコンウエハ)の断面SEM写真、図12は本発明に係る充填方法及び装置によって得られた半導体ウエハ7(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【0036】
まず、図11のSEM写真と見ると、ウエハ7の微細孔73の内部に充填されている充填材(硬化金属体)の上端側に、凹面部X1が生じており、しかも、その底部にも、充填材の充填されていない空隙部X2が生じている。充填材の周囲と、微細孔73の内側面との間にも、空隙の存在が認められる。
【0037】
これに対して、図12のSEM写真を見ると、ウエハ7の微細孔73の内部に充填されている充填物(硬化金属体)9の上端面は、ウエハ7の上面に連続して連なる平坦面となっており、凹面部は認められない。充填物9の下端面は、微細孔73の底部に密接しており、底部空隙は見えない。更に、充填物9の外周面は、微細孔73の内側面に密接しており、空隙の存在は認められない。
【0038】
本発明に係る充填装置によると、上述した表面張力制御による作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。まず、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段により処理室Aに圧力を与えるから、その間、処理室A内にあるウエハ7の微細孔73内の流動性充填材9も加圧される。したがって、流動性充填材9を微細孔73の底部まで充分に充填するとともに、熱収縮による充填物の変形を抑えることができる。このため、空隙やボイドなどを生じることなく、微細孔73を充填物によって満たすことができる。
【0039】
また、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段により処理室Aに圧力を与えるから、冷却・硬化の過程において、流動性充填材9の結晶成長、特に、柱状結晶の生成が抑制され、充填物が等軸晶化される。このため、等軸晶化によって応力が小さくなり、応力に起因する基板のマイクロクラックの発生が抑制される。
【0040】
また、本発明に係る充填装置は、第1加圧手段1と第2加圧手段3を組み合わせることによって、ウエハ7を保持する処理室Aを作り出し、これとは別個独立して流動性充填材供給路302と圧力制御路303を備えるだけでよい。したがって、低コスト化と処理効率の向上とを実現しうる。
【0041】
次に、図2に示した充填装置を用いた充填方法を説明する。図2に示した充填装置は、表面張力制御層31を、例えば、フッ素樹脂層によって構成し、流動性充填材9の加圧面311で見た表面張力が大きくなるようにしたものである。この場合には、図15に示したウエハ7を準備する。図示のウエハ7は、多数の微細孔73と、レジスト層74とを有する。微細孔73は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ7の一面に開口している。レジスト層74は、微細孔73の開口の周りにおいて、ウエハ7の一面を覆い、開口を画定している。レジスト層74は、具体的には、微細孔73を形成するフォトリソグラフィ工程において用いられたフォトレジストである。
【0042】
上述したウエハ7を、図13及び図14に示すように、第1加圧手段1の設置面101にセットし、図7及び図8を参照して説明した工程を実行する。即ち、第1加圧手段1の一面に形成された設置面101にウエハ7を載置した状態で、第1加圧手段1または第2加圧手段3を矢印F1,F2の方向に駆動し、第1加圧手段1及び第2加圧手段3の間に、密閉された処理室Aを形成する。
【0043】
次に、図16に示すように、圧力制御路303を介して、圧力制御装置により、処理室A内の圧力を、例えば真空度10-3Pa程度まで減圧し、流動性充填材供給装置から、流動性充填材供給路302を介して、減圧下にある処理室Aに流動性充填材9を供給する。微細孔73内に流動性充填材9が充填された後は、図17に図示するように、微細孔73内の流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段1,3によって、流動性充填材9を加圧する。そして、冷却・硬化工程の後、第2加圧手段3を、F4の方向に後退させる。
【0044】
ここで、ウエハ7に設けられたレジスト層74は、ウエハ7の素面の場合と対比して、流動性充填材9の凝集を抑制する方向となる。一方、加圧手段3の加圧面311は、例えば、フッ素樹脂等によって構成されており、流動性充填材9の凝集を促進する方向となる。そのバランスにより、フォトリソグラフィ工程等によって、微細孔73を形成した後のウエハ7を用いて、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。
【0045】
必要であれば、レジスト層74は、図18に図示するように、化学的剥離処理等によって剥離する。レジスト層74の上に仮に充填材残渣があっても、それは、レジスト層74の剥離とともに取り払われるので、ウエハ7の面には、充填材残渣は生じない。即ち、ウエハ7上から充填材残渣を取り払い得る。レジスト層74の内部にあった流動性充填材92は残るが、それは、例えばバンプとして利用できるので、問題はない。
【0046】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様及び説明されない他の適用技術分野を想到しえることは自明である。
【符号の説明】
【0047】
1 第1加圧手段
3 第2加圧手段
31 表面張力制御層
7 ウエハ
73 微細孔
9 流動性充填材
A 処理室
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性充填材または液状充填材(以下流動性充填材と称する)を、微細孔に充填する方法、その方法を実施する充填装置及びウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスによって代表される電子デバイスや、マイクロマシン等においては、内部に高アスペクト比を持つ微細な導体充填構造、絶縁構造又は機能構造を形成しなければならないことがある。このような場合、予め選択された充填材を微細孔内に充填することによって、導体充填構造、絶縁構造及び機能構造等を実現する技術が知られている。しかし、高アスペクト比を持つ微細孔内に、空隙や硬化後変形などを生じさせることなく、その底部まで充填材を充分に充填することは困難を極める。
【0003】
そのような技術的困難性を克服し得る先行技術として、特許文献1及び2に記載された充填方法及び装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、ウエハに存在する微細孔に溶融金属を充填し硬化させる方法であって、前記微細孔内の前記溶融金属に対し、大気圧を超える強制外力を印加したままで、前記溶融金属を冷却し硬化させる工程を含む。前記強制外力は、プレス圧、射出圧又は転圧から選択された少なくとも1種で与えられ、前記微細孔の他端側を閉じた状態で、前記微細孔の開口する開口面側から前記溶融金属に印加される。特許文献2は、特許文献1に記載された方法を実施するための充填装置を開示している。
【0005】
上述した特許文献1,2に記載された技術によれば、空隙やボイドなどを生じることなく、微細孔を充填物によって満たし得ること、微細隙間で冷却された硬化金属の凹面化を回避し得ること、及び、工程の簡素化、歩留りの向上などに寄与し得ること、等の優れた作用効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4278007号公報
【特許文献2】特許第4505540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ウエハに設けられた微細孔内に流動性充填材を、より確実に充填し得る改善された充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、充填方法、充填装置及びウエハに係る3つの態様を開示する。
【0010】
まず、本発明に係る充填方法は、ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する方法であって、前記微細孔内に流し込まれた前記流動性充填材を、加圧手段により加圧する工程を含んでおり、前記工程において、前記ウエハの受圧面に対する前記流動性充填材の表面張力と、前記加圧手段の加圧面に対する前記流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる。
【0011】
上述した方法によれば、ウエハの受圧面と、加圧手段の加圧面とで見た流動性充填材の表面張力の差を利用して、流動性充填材を、微細孔内に確実に充填することができる。その具体的態様として、ウエハの受圧面に対する表面張力を、加圧手段の加圧面に対する表面張力よりも大きくするか、または、ウエハの受圧面に対する表面張力を、加圧手段の加圧面に対する表面張力よりも小さくする2つの態様があり得る。
【0012】
一つの好ましい態様として、ウエハの受圧面を、レジスト層によって構成する場合がある。この場合のウエハは、多数の微細孔と、レジスト層とを有する。微細孔は、ウエハの厚み方向に開けられた空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、レジスト層は微細孔の開口の周りにおいてウエハ面を覆い、開口を画定している。即ち、レジスト層は、微細孔をフォトリソグラフィ工程によって形成する場合のマスクとなるフォトレジスト層である。
【0013】
このようなレジスト層は、ウエハの素面の場合と対比して、流動性充填材を凝集させる方向となる。このウエハの受圧面に対して、加圧手段の加圧面を、流動性充填材の凝集を抑制する表面性を付与する。これにより、フォトリソグラフィ工程等によって、微細孔を形成した後のウエハを用いて、流動性充填材を、微細孔内に確実に充填することができる。
【0014】
レジスト層は、化学的剥離処理等によって、その内部の流動性充填材残渣とともに、ウエハ素面から剥離できる。即ち、ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る。
【0015】
次に、上述した充填方法を実施するための本発明に係る充填装置は、第1加圧手段と、第2加圧手段とを含んでいる。第1加圧手段は、ウエハを設置する設置面を有しており、第2加圧手段は、前記第1加圧手段と組み合わされて前記ウエハを加圧する。前記第1加圧手段または第2加圧手段の少なくとも一方は、前記ウエハを加圧する加圧面に、前記流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層を有する。表面張力制御層は、流動性充填材の表面張力の作用を低減させるか、または増大させる層である。
【0016】
上述した充填装置によれば、本発明に係る充填方法を、確実に実施することができる。
本発明の方法を実施するのに用いられるウエハについては、既に述べたところである。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)ウエハに設けられた微細孔内に流動性充填材を確実に充填し得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することができる。
(b)ウエハ上から充填材残渣を取り払い得る充填方法、そのための充填装置及びウエハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る充填装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る充填装置の別の例を示す図である。
【図3】図1に示した充填装置を用いた充填工程を示す図である。
【図4】図1に示した充填装置に適用されるウエハの平面図である。
【図5】図4に示したウエハの一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図3に示した充填工程の後の工程を示す図である。
【図7】図6に示した充填工程の詳細を示す図である。
【図8】図7に示した充填工程の後の工程を示す図である。
【図9】図8に示した工程の後に採り得る工程を示す図である。
【図10】図8に示した工程の後の工程を示す図である。
【図11】加圧冷却を省略して得られた半導体ウエハ(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【図12】本発明に係る充填装置を用いて得られた半導体ウエハ(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【図13】図2に示した本発明に係る充填装置を用いた充填方法を示す図である。
【図14】図13に示した工程の後の工程を示す図である。
【図15】図13、図14の工程に適用されるウエハの一部を拡大して示す断面図である。
【図16】図14における工程を拡大して示す断面図である。
【図17】図16に示した工程の後の工程を示す図である。
【図18】図17に示した工程の後に採り得る工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明に係る充填方法を実施するのに用いられる充填装置は、第1加圧手段1及び第2加圧手段3を含む。第1加圧手段1は、ウエハ7を設置する設置面101を有している。設置面101は、その全周が凸縁102によって囲まれた状態で、その一面が開放されている。第1加圧手段1は、固定されていてもよいし、上下方向(図において)に駆動される可動体であってもよい。この実施の形態では、駆動軸103によって上下方向に駆動される可動体として説明する。
【0020】
第2加圧手段3は、第1加圧手段1と組み合わされてウエハ7に充填された流動性充填材を加圧する加圧手段を構成する。図示の第2加圧手段3は、プレス板であり、その後部側にプレス装置(図示しない)に上下方向(図において)に駆動される駆動軸301が取り付けられている。第2加圧手段3は、第1加圧手段1に対して、その開口面の側から組み合わされて、ウエハ処理室を画定する。
【0021】
第1加圧手段1に対する第2加圧手段3の組み合わせの形態は、本実施形態のように凸凹嵌合であっても、他の態様であってもよい。もっとも、その組み合わせ形態は、何れの場合も、第2加圧手段3と第1加圧手段1の間に気密性のある処理室が形成できることが好ましい。第2加圧手段3は、流動性充填材供給路302と、圧力制御路303とを備えている。流動性充填材供給路302は、図示しない流動性充填材供給装置に、例えば配管306をもって接続されている。流動性充填材供給路302は、流動性充填材の供給、停止に用いられるバルブ304が設けられている。バルブ304は、電気機械的制御によって、あるいは手動によって開閉される。
【0022】
圧力制御路303は、配管307を以て圧力制御装置(図示しない)に接続される。圧力制御路303には、バルブ305が取り付けられている。バルブ305は、処理室の内圧を加減圧するとき、電気機械的制御によって、あるいは手動によって制御される。
【0023】
本発明の特徴として、第1加圧手段1または第2加圧手段3の少なくとも一方は、ウエハ7を加圧する加圧面311に、流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層31を有する。この実施例では、表面張力制御層31は、第2加圧手段3の加圧面311を構成する。表面張力制御層31は、ウエハ7の受圧面71に対する流動性充填材の表面張力と、加圧手段3(または1)の加圧面311に対する流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる働きをする。加圧面311及び受圧面71に対する流動性充填材の表面張力の制御は、加圧面311または受圧面71の表面性、特に濡れ性を制御することによって行うことができる。これは、加圧面311または受圧面71を、互いに仕事関数の異なる材料によって構成することでもある。
【0024】
具体的には、ウエハ7の受圧面71との対比において、加圧手段の加圧面311に対する表面張力が小さくなる(加圧面311の濡れ性が高い)ようにするか、または、逆に、加圧手段の加圧面311に対する表面張力が大きくなる(加圧面311の濡れ性が低い)ようにする。
【0025】
図1は、前者の場合を示し、表面張力制御層31を、例えば、シリコンゴム等の有機材料によって構成してある。これとは異なって、第2加圧手段3の表面を粗面化してもよい。図2は、加圧面311に対する表面張力が大きくなる(加圧面311の濡れ性が低い)場合を示し、表面張力制御層31を、例えば、フッ素樹脂層によって構成した例を示している。
【0026】
次に、図1に示した充填装置を使用した流動性充填材の充填方法について、図3〜図11を参照して説明する。まず、図3に示すように、第1加圧手段1の一面に形成された設置面101にウエハ7を載置する。ウエハ7は、図4及び図5に図示するように、ウエハ7リング72によって支持されたウエハ7基板70の厚み方向に多数の微細孔73を開けたもので、厚み方向の面704は平滑な素面となっている。ウエハ7は、半導体デバイス用ウエハの他、他の電子デバイスウエハやマイクロマシン用ウエハ等、幅広く含むことができる。また、ウエハ7は、金属、合金、金属酸化物、セラミックス、ガラス、プラスチックもしくはそれらの複合材、又は、それらの積層体の別を問わず、広く用いることができる。更に、ウエハ7の外形形状は、平板状に限らず、任意の形状をとることができる。図示の平板状は、単に説明の便宜のために選択された一例に過ぎない。
【0027】
ウエハ7の物性、構造などは、対象とするデバイスの種類によって異なる。例えば、半導体デバイスの場合には、Siウエハ、SiCウエハ又はSOIウエハ等が用いられる。受動電子回路デバイスの場合には、誘電体、磁性体又はそれらの複合体の形態をとることがある。MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は光デバイスなどの製造においても、その要求に沿った物性及び構造を持つウエハ7が用いられる。
【0028】
ウエハ7において、微細孔73は、一般には、貫通孔、非貫通孔(盲孔)又はビア・ホールと称される。この微細孔73は、例えば、孔径が10μm〜60μmである。ウエハ7自体の厚みは、通常、数十μmである。したがって、微細孔73はかなり高いアスペクト比を持つことになる。
【0029】
次に、図6に図示するように、第1加圧手段1の設置面101にウエハ7を載置した状態で、第1加圧手段1または第2加圧手段3を矢印F1,F2の方向に駆動し、第1加圧手段1及び第2加圧手段3の間に、密閉された処理室Aを形成する。
【0030】
次に、圧力制御路303を介して、圧力制御装置により、処理室Aの内部圧力を、例えば真空度10-3Pa程度まで減圧する。処理室A内のガス圧は、一例であるが、0.6〜1kgf/cm2の範囲で設定することができる。このガス圧に到達するまでの昇圧−時間特性をコントロールすることにより、好適な動圧を発生させることができる。
【0031】
次に、流動性充填材供給装置(図示しない)から、配管306及び流動性充填材供給路302を介して、図7に図示するように、減圧下にある処理室Aに流動性充填材9を供給する。流動性充填材9を構成する材料は、ウエハ7の種類及びその目的に応じて、その組成分が選択される。流動性充填材9は、例えば、溶融金属であってもよいし、導電性ペーストであってもよいし、液体ガラス等を含む絶縁性流動物や、無機物を分散媒に分散させた懸濁液等であってもよい。要するに、流動性を有するものであればよい。
【0032】
微細孔73内に流動性充填材9を充填した後、図8に図示するように、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段3によって、流動性充填材9を加圧する。この加圧手段3は、ガス圧、プレス圧、射出圧、又は転圧から選択された少なくとも1種の加圧力を与える。加圧手段3として、プレス圧を印加するプレス機を採用することができるし、又は、上述した圧力制御路303に接続された圧力制御装置を加圧手段として兼用することによって、ガス圧を印加する構成とすることもできる。自然冷却、あるいは、液体窒素や液体ヘリウムなどによる強制冷却手段によって、充填された流動性充填材9を冷却し硬化させる。このとき、上述した加圧手段によって、硬化するまで流動性充填材9に圧力を与え続ける。これにより、流動性充填材9を微細孔73の底部まで充分に充填することができる。
【0033】
ここで、本発明では、ウエハ7の受圧面71と、加圧手段の加圧面311とで見た流動性充填材9の表面張力の差を利用して、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。実施例では、表面張力制御層31を、例えば、シリコンゴム等の有機材料によって構成してあるので、ウエハ7の受圧面71に対する表面張力が、加圧手段の加圧面311に対する表面張力よりも大きくなる。したがって、ウエハ7の受圧面71では流動性充填材9を凝集させる方向になるのに対し、加圧手段の加圧面311では、流動性充填材9の凝集を抑制する方向となるので、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。これを仮に、表面張力制御層31を持たず、通常は、金属面となる第1加圧手段3の加圧面で、流動性充填材9を加圧した場合には、流動性充填材9が、その有する表面張力により、ウエハ7の表面で凝集してしまい、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる困難になる。
【0034】
しかも、流動性充填材9を加圧するので、硬化後にウエハ7の上に残る充填材残渣91の厚みが非常に薄くなる。必要であれば、図9に図示するように、ヒータなどの加熱手段によって、充填材残渣91を再溶融させ、図10に図示するように、再溶融した充填材残渣91を、例えばスキージ11などの除去手段により拭き取り除去する。この後工程によれば、ウエハ7の外面を、充填材残渣91のない平坦な面となしえる。充填材残渣91は薄いので、この拭き取り操作は簡単に済む。しかも、拭き取りという簡単な操作で済み、従来と異なって、冷却後の流動性充填材9の再供給やCMP工程等が不要であるから、工程の簡素化、歩留りの向上などに寄与することができる。必要であれば、硬化工程に準じて、更に、再加圧し、その後に冷却する工程を実行してもよい。もっとも、この後工程は、充填材残渣を除去し、ウエハ7の一面を平坦化するためのものであるから、平坦化の必要がない場合には、省略することもできる。また、充填材残渣は、再溶融させずに、機械的に削除してもよい。
【0035】
次に、本発明の効果をSEM(Scanning Electron Microscope)写真によって説明する。図11は、加圧冷却を省略して得られた半導体ウエハ7(シリコンウエハ)の断面SEM写真、図12は本発明に係る充填方法及び装置によって得られた半導体ウエハ7(シリコンウエハ)の断面SEM写真である。
【0036】
まず、図11のSEM写真と見ると、ウエハ7の微細孔73の内部に充填されている充填材(硬化金属体)の上端側に、凹面部X1が生じており、しかも、その底部にも、充填材の充填されていない空隙部X2が生じている。充填材の周囲と、微細孔73の内側面との間にも、空隙の存在が認められる。
【0037】
これに対して、図12のSEM写真を見ると、ウエハ7の微細孔73の内部に充填されている充填物(硬化金属体)9の上端面は、ウエハ7の上面に連続して連なる平坦面となっており、凹面部は認められない。充填物9の下端面は、微細孔73の底部に密接しており、底部空隙は見えない。更に、充填物9の外周面は、微細孔73の内側面に密接しており、空隙の存在は認められない。
【0038】
本発明に係る充填装置によると、上述した表面張力制御による作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。まず、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段により処理室Aに圧力を与えるから、その間、処理室A内にあるウエハ7の微細孔73内の流動性充填材9も加圧される。したがって、流動性充填材9を微細孔73の底部まで充分に充填するとともに、熱収縮による充填物の変形を抑えることができる。このため、空隙やボイドなどを生じることなく、微細孔73を充填物によって満たすことができる。
【0039】
また、流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段により処理室Aに圧力を与えるから、冷却・硬化の過程において、流動性充填材9の結晶成長、特に、柱状結晶の生成が抑制され、充填物が等軸晶化される。このため、等軸晶化によって応力が小さくなり、応力に起因する基板のマイクロクラックの発生が抑制される。
【0040】
また、本発明に係る充填装置は、第1加圧手段1と第2加圧手段3を組み合わせることによって、ウエハ7を保持する処理室Aを作り出し、これとは別個独立して流動性充填材供給路302と圧力制御路303を備えるだけでよい。したがって、低コスト化と処理効率の向上とを実現しうる。
【0041】
次に、図2に示した充填装置を用いた充填方法を説明する。図2に示した充填装置は、表面張力制御層31を、例えば、フッ素樹脂層によって構成し、流動性充填材9の加圧面311で見た表面張力が大きくなるようにしたものである。この場合には、図15に示したウエハ7を準備する。図示のウエハ7は、多数の微細孔73と、レジスト層74とを有する。微細孔73は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ7の一面に開口している。レジスト層74は、微細孔73の開口の周りにおいて、ウエハ7の一面を覆い、開口を画定している。レジスト層74は、具体的には、微細孔73を形成するフォトリソグラフィ工程において用いられたフォトレジストである。
【0042】
上述したウエハ7を、図13及び図14に示すように、第1加圧手段1の設置面101にセットし、図7及び図8を参照して説明した工程を実行する。即ち、第1加圧手段1の一面に形成された設置面101にウエハ7を載置した状態で、第1加圧手段1または第2加圧手段3を矢印F1,F2の方向に駆動し、第1加圧手段1及び第2加圧手段3の間に、密閉された処理室Aを形成する。
【0043】
次に、図16に示すように、圧力制御路303を介して、圧力制御装置により、処理室A内の圧力を、例えば真空度10-3Pa程度まで減圧し、流動性充填材供給装置から、流動性充填材供給路302を介して、減圧下にある処理室Aに流動性充填材9を供給する。微細孔73内に流動性充填材9が充填された後は、図17に図示するように、微細孔73内の流動性充填材9が冷却により硬化するまで、加圧手段1,3によって、流動性充填材9を加圧する。そして、冷却・硬化工程の後、第2加圧手段3を、F4の方向に後退させる。
【0044】
ここで、ウエハ7に設けられたレジスト層74は、ウエハ7の素面の場合と対比して、流動性充填材9の凝集を抑制する方向となる。一方、加圧手段3の加圧面311は、例えば、フッ素樹脂等によって構成されており、流動性充填材9の凝集を促進する方向となる。そのバランスにより、フォトリソグラフィ工程等によって、微細孔73を形成した後のウエハ7を用いて、流動性充填材9を、微細孔73内に確実に充填することができる。
【0045】
必要であれば、レジスト層74は、図18に図示するように、化学的剥離処理等によって剥離する。レジスト層74の上に仮に充填材残渣があっても、それは、レジスト層74の剥離とともに取り払われるので、ウエハ7の面には、充填材残渣は生じない。即ち、ウエハ7上から充填材残渣を取り払い得る。レジスト層74の内部にあった流動性充填材92は残るが、それは、例えばバンプとして利用できるので、問題はない。
【0046】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様及び説明されない他の適用技術分野を想到しえることは自明である。
【符号の説明】
【0047】
1 第1加圧手段
3 第2加圧手段
31 表面張力制御層
7 ウエハ
73 微細孔
9 流動性充填材
A 処理室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する方法であって、
前記微細孔内に流し込まれた前記流動性充填材を、加圧手段により加圧する工程を含み、
前記工程において、前記ウエハの受圧面に対する前記流動性充填材の表面張力と、前記加圧手段の加圧面に対する前記流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、前記ウエハの受圧面に対する前記表面張力が、前記加圧手段の加圧面に対する前記表面張力よりも大きい、方法。
【請求項3】
請求項1に記載された方法であって、前記ウエハの受圧面に対する前記表面張力が、前記加圧手段の加圧面に対する前記表面張力よりも小さい、方法。
【請求項4】
請求項3に記載された方法であって、前記ウエハは、多数の微細孔と、レジスト層とを有しており、
前記微細孔は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、
前記レジスト層は、前記微細孔の前記開口の周りにおいて前記ウエハ面を覆い、前記開口を画定している、
方法。
【請求項5】
第1加圧手段と、第2加圧手段とを含み、ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する装置であって、
前記第1加圧手段は、前記ウエハを設置する設置面を有しており、
前記第2加圧手段は、前記第1加圧手段と組み合わされて前記ウエハを加圧するものであり、
前記第1加圧手段または第2加圧手段の少なくとも一方は、前記ウエハを加圧する加圧面に、前記流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層を有する、
装置。
【請求項6】
請求項5に記載された装置であって、前記表面張力制御層は、前記表面張力の作用を低減させる層である、装置。
【請求項7】
請求項6に記載された装置であって、前記表面張力制御層は、前記表面張力の作用を増大させる層である、装置。
【請求項8】
多数の微細孔と、レジスト層とを有するウエハであって、
前記微細孔は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、
前記レジスト層は、前記微細孔の前記開口の周りにおいて、前記ウエハ面を覆い、前記開口を画定している、
ウエハ。
【請求項9】
請求項8に記載されたウエハであって、前記レジスト層は、前記微細孔を形成するフォトリソグラフィ工程において用いられたフォトレジストである、ウエハ。
【請求項1】
ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する方法であって、
前記微細孔内に流し込まれた前記流動性充填材を、加圧手段により加圧する工程を含み、
前記工程において、前記ウエハの受圧面に対する前記流動性充填材の表面張力と、前記加圧手段の加圧面に対する前記流動性充填材の表面張力とを互いに異ならせる、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、前記ウエハの受圧面に対する前記表面張力が、前記加圧手段の加圧面に対する前記表面張力よりも大きい、方法。
【請求項3】
請求項1に記載された方法であって、前記ウエハの受圧面に対する前記表面張力が、前記加圧手段の加圧面に対する前記表面張力よりも小さい、方法。
【請求項4】
請求項3に記載された方法であって、前記ウエハは、多数の微細孔と、レジスト層とを有しており、
前記微細孔は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、
前記レジスト層は、前記微細孔の前記開口の周りにおいて前記ウエハ面を覆い、前記開口を画定している、
方法。
【請求項5】
第1加圧手段と、第2加圧手段とを含み、ウエハに存在する微細孔内に流動性充填材を充填する装置であって、
前記第1加圧手段は、前記ウエハを設置する設置面を有しており、
前記第2加圧手段は、前記第1加圧手段と組み合わされて前記ウエハを加圧するものであり、
前記第1加圧手段または第2加圧手段の少なくとも一方は、前記ウエハを加圧する加圧面に、前記流動性充填材の表面張力を制御する表面張力制御層を有する、
装置。
【請求項6】
請求項5に記載された装置であって、前記表面張力制御層は、前記表面張力の作用を低減させる層である、装置。
【請求項7】
請求項6に記載された装置であって、前記表面張力制御層は、前記表面張力の作用を増大させる層である、装置。
【請求項8】
多数の微細孔と、レジスト層とを有するウエハであって、
前記微細孔は、空孔であり、少なくとも一端がウエハ面に開口しており、
前記レジスト層は、前記微細孔の前記開口の周りにおいて、前記ウエハ面を覆い、前記開口を画定している、
ウエハ。
【請求項9】
請求項8に記載されたウエハであって、前記レジスト層は、前記微細孔を形成するフォトリソグラフィ工程において用いられたフォトレジストである、ウエハ。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図11】
【図12】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−89641(P2013−89641A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226050(P2011−226050)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(504034585)有限会社 ナプラ (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(504034585)有限会社 ナプラ (55)
【Fターム(参考)】
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