説明

流動性測定装置及び流動性測定方法

【課題】多面的な情報を含んだ粉粒体の流動性測定装置及び流動性測定方法。
【解決手段】本発明の流動性測定装置は、評価対象である粉粒体を収容する収容部材と、排出口と、収容部材に振動を付与する振動器2と、振動測定器3と、粉粒体の重量を測定する天秤装置4とからなり、コンピューター5は、所定上昇率の振幅加速度の振動を前記振動器で発生させ、所定時間経過後、所定下降率の振幅加速度の振動を前記振動器2で発生させて前記収容部材に振動を付与するように指令すると共に、前記振動測定器3と前記天秤装置4からのデータを取得し、単位時間あたりの粉粒体の流量データを演算し、演算された単位時間あたりの粉粒体の流量データから、粉粒体の流動性を評価するための評価値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレットを成型する前段階におけるMOX原料などの粉粒体の流動性を測定・評価するための流動性測定装置及び流動性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本原子力研究開発機構では、高速増殖炉サイクルの実用化研究開発を実施しており、高速増殖炉用MOX燃料製造技術として、簡素化ペレット法の研究開発を行っている。このような高速増殖炉用MOX燃料の製造においては、まず、使用済燃料再処理工程より受け入れた硝酸プルトニウム及び硝酸ウラニルの混合溶液をマイクロ波加熱脱硝によって、粉末状で平均粒子径がおよそサブミクロン〜ミクロンオーダー程度のPuO2及びUO3等の混合粉末を得る。次に、これを焙焼・還元によってPuO2及びUO2の混合粉末とし、さらに造粒することで平均粒子径およそ数100ミクロン程度のMOX原料粉末とする。
【0003】
上記のようにして得られたMOX原料粉末は、成型用金型に充填された上で、ペレットに成型されるが、成型用金型に充填する際のMOX原料粉末の流動性は、成型体の製造効率および品質に影響することが知られている。そこで、MOX原料粉末などの粉粒体の流動性を簡便かつ適格に評価する技術に対するニーズがあるが、このようなニーズに応える技術としては、例えば、特許文献1に記載された振動細管式の粉粒体流動性評価装置が知られている。
【特許文献1】WO2006/115145 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の流動性評価装置では、粉粒体の流動性の評価を行う際に、振動器によって管の振動加速度を上昇させたり下降させたりしたときにおける粉粒体の流動性の特徴を抽出するものではなく、粉粒体の流動性の評価の一側面を抽出するのみで問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、評価対象である粉流体を収容する収容部材と、前記収容部材に設けられる流出口と、前記収容部材に振動を付与する振動器と、前記収容部材の振動の振幅を測定する振動測定器と、前記収容部材の前記流出口から落下する粉流体の重量を測定する天秤装置と、前記振動器に対して所定の周波数及び振幅の振動を発生させる指令を行うと共に、前記振動測定器と前記天秤装置からのデータを取得し、単位時間あたりの粉流体の流動量データを演算する演算装置と、からなる流動性測定装置において、前記演算装置は、所定上昇率の振幅加速度の振動を前記振動器で発生させ、所定時間経過後、所定下降率の振幅加速度の振動を前記振動器で発生させて前記収容部材に振動を付与するように指令すると共に、前記振動測定器と前記天秤装置からのデータを取得し、単位時間あたりの粉流体の流動量データを演算し、演算された単位時間あたりの粉流体の流動量データから、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流動性測定装置において、前記演算装置は、前記単位時間あたりの粉流体の流動量データから、所定数のデータを選択し、選択されたデータから1次回帰線を求めることによって、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の流動性測定装置において、前記演算装置は、前記単位時間あたりの粉流体の流動量データから、最大値を求めることによって、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、粉流体を収容する収容部材に、所定上昇率の振幅加速度の振動を所定時間与え、この後、所定下降率の振幅加速度の振動を与え、与えた振動によって前記収容部材から流出する粉粒体の重量を計量し、計量された粉粒体の重量に基づいて、単位時間あたりの粉流体の流動量データを求め、求められた流動量データから所定数のデータを選択し、選択されたデータから1次回帰線を求めることによって粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする流動性測定方法である。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、粉流体を収容する収容部材に、所定上昇率の振幅加速度の振動を所定時間与え、この後、所定下降率の振幅加速度の振動を与え、与えた振動によって前記収容部材から流出する粉粒体の重量を計量し、計量された粉粒体の重量に基づいて、単位時間あたりの粉流体の流動量データを求め、求められた流動量データから最大値を求めることによって粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする流動性測定方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流動性測定装置及び流動性測定方法によれば、振動器によって管の振動加速度を上昇させたり下降させたりしたときにおける粉粒体の流動性の特徴を抽出するものであるので、より多面的な情報を含んだ粉粒体の流動性の評価値を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る流動性測定装置の模式的な構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流動性測定装置におけるコンピューター5による処理のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る流動性測定装置のコンピューター5処理の際に用いる振動加速度の上昇率・下降率のプロフィールの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る流動性測定装置によって作成される単位時間あたりの流量(質量流量)の推移のグラフの例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る流動性測定装置における流量最大値の演算例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る流動性測定装置における流量特性値の演算例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る流動性測定装置における質量流量の推移パターンを示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る流動性測定装置を実証テストする上で利用したサンプルのリストである。
【図9】本発明の実施形態に係る流動性測定装置を実証テストする上で利用したサンプルのリストである。
【図10】第1のサンプル粒子及び第2のサンプル粒子のSEM写真を示す図である。
【図11】第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)の流動性プロファイルを示す図である。
【図12】第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の流動性プロファイルを示す図である。
【図13】流量特性値と微粒子の割合の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の流動性測定装置及び流動性測定方法について適宜図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る流動性測定装置の模式的な構成を示す図である。本発明の流動性測定装置及び流動性測定方法は、粉粒体を収容する収容部材に振動を与え、この与えた振動の振幅と、与えた振動によって収容部材から排出された粉粒体の重量などに
基づいて粉粒体の流動性を評価するための評価値を演算する装置・方法である。本実施形態に係る流動性測定装置は図1に示すように、主として、粉粒体流動部1と、振動器2と、レーザー振動測定器3と、電子天秤装置4と、演算装置であるコンピューター(演算装置)5とから構成されている。
【0013】
粉粒体流動部1は、管11と、この管11が略垂直(鉛直方向Gと略平行)となるように支持する水平ロッド12と、この水平ロッド12を支持するスタンド13とを備えて構成されている。
【0014】
管11は、粉流体を収容する収容部材であり、例えば、評価対象の粉流体を貯めるためのホッパー部111と、流動する粉粒体が通過する管部112とを備えてなる。ホッパー部111は、粉粒体を投入することができるように投入口1111が上端に開口しており、粉粒体を排出する排出口1112へ粉粒体がスムーズに流れるように投入口1111から排出口1112へ径が小さくなる漏斗形状となっている。管部112は、ホッパー部111の排出口1112に上方端の流入口1121が接続され、下方端に内径がより小さい細管部1122が形成されている。管11は、管部112の上方端で水平ロッド12に支持されている。
【0015】
振動器2は、コントローラー20からの制御信号に応じて所定の周波数及び(X−X方向の)振幅で、管11に振動を与える装置であり、振動を生成する振動器本体21と、この振動器本体21で生成した振動を伝達する振動伝達部材22とを備えている。振動器本体21は、例えば、電磁式バイブレーターや静電式バイブレーター、電歪式バイブレーター、振動モーターなどを適宜用いることができる。また、振動器本体21は、圧電素子を備えて構成される圧電発音式バイブレーターでもよい。圧電発音式バイブレーターでは、振動の振幅と周波数(振動数)とを独立に制御することができるので、周波数を予め設定された所定の周波数に固定しながら振幅を容易に連続的に変化させることができる利点がある。振動伝達部材22は、細管部1122が形成される側における管部112の下方端に接続され、振動器本体21で発生した振動が管11に伝搬される。
【0016】
レーザー振動測定器3は、管11の振幅を測定してその測定した振幅をコンピューター5に出力する装置であり、例えばレーザー振動測定器本体31と、プローブ32とからなる。レーザー振動測定器本体31は、プローブ32にレーザー光を排出口1123の近傍の細管部1122に集光して照射させると共にその反射光をレンズに通して光位置検出素子上にスポットを結ばせ、予め設定されたサンプリング間隔(例えば1秒毎)でその反射光のスポットの位置を検出し、三角測量の原理により対象物までの変位量を求めることにより振幅を演算し、その演算結果をコンピューター5に出力する。本実施形態では、粉粒体が排出される管11の排出口1123の近傍は、振動の開放端となることから、このようにレーザー振動測定器3は、管11の排出口1123の近傍における細管部1122の振幅を測定してその測定結果をコンピューター5に出力するように配置される。
【0017】
電子天秤装置4は、ホッパー部111から管部112を通過して排出された粉粒体の重量を測定してその測定した重量をコンピューター5に出力する装置である。電子天秤装置4は、重量を測定すべき測定対象を載せる秤量台41が管11の排出口1123の下方に配置される。そして、電子天秤装置4は、管部11から排出された粉粒体を秤量台41で受けて、予め設定された所定のサンプリング間隔(例えば1秒毎)でその重量を測定して、この測定した重量をデジタルでコンピューター5に出力する。
【0018】
コンピューター5は、振動器2が所望の振動の周波数及び振幅を与えるべく、コントローラー20に制御指令信号を発すると共に、レーザー振動測定器3で測定した振幅及び電子天秤装置4によって測定された重量に基づいて粉粒体の流動性を評価する評価値を演算
する装置である。このようなコンピューター5としては、汎用のパーソナルコンピュータを用いることができる。先の評価値などの演算結果については、コンピューター5から信号に基づいて表示装置51が表示を行うようになっている。
【0019】
次に、以上のように構成される本発明の実施形態に係る流動性測定装置による粉粒体の流動性に関する評価値を測定する方法について説明する。流動性測定装置で評価値を測定する場合は、ユーザーはまず、コンピューター5、レーザー振動測定器3及び電子天秤装置4を起動してコンピューター5に振動器2の振動の周波数をセットすると共に管11のホッパー部111に測定対象の粉粒体を投入口より投入することによって測定の準備を行う。そして、ユーザーはコンピューター5に測定開始を指示する。
【0020】
測定開始の指示を受けると、コンピューター5は、振動器2に所定の周波数及び振幅で所定時間だけ振動器2を振動させるようにコントローラー20に指令し、振動器2によって管11に振動を与える。また、振動器2の振動開始とほぼ同時に排出口1123に設けられたシャッター(不図示)が開き、粉粒体の排出が開始される。レーザー振動測定器3は所定のサンプリング間隔で管11の振動の振幅を測定し、この測定した管11の振幅をコンピューター5に出力する。また、電子天秤装置4は、所定のサンプリング間隔で排出された粉粒体の重量を測定し、この測定した粉粒体の重量をコンピューター5に出力する。レーザー振動測定器3及び電子天秤装置4から出力されたデータは、不図示のコンピューター5の記憶部などに記憶される。
【0021】
粉粒体の排出が終了すると、コンピューター5は上記記憶部に記憶したレーザー振動測定器3からの出力及び電子天秤装置4からの出力に基づいて、単位時間あたりの流量のグラフを作成し、この作成したグラフを表示装置51に出力する。
【0022】
次に、本発明の流動性測定装置が粉粒体の流動性を測定するときにおけるコンピューター5の処理動作について説明する。図2は本発明の実施形態に係る流動性測定装置におけるコンピューター5による処理のフローチャートを示す図であり、また、図3はコンピューター5による処理の際に用いる振動加速度の上昇率・下降率のプロフィールの一例を示す図である。
【0023】
本実施形態におけるコンピューター5処理を実行する前には、ユーザーはあらかじめ初期設定として、振動加速度の上昇率及び下降率、そして振動加速度を上昇から下降に反転させる時間である折り返し時間の3つパラメータをセットする。図3は振動加速度の上昇率として8.3[m/s2]を、また振動加速度の下降率として−8.3[m/s2]を、折り返し時間として30[sec]をセットした場合のプロフィールを示している。測定においては、振動加速度を下降させて、振動加速度が0となったときに測定を終了する。また、上記のような振動加速度の上昇率及び下降率、折り返し時間に係るパラメータは、測定しようとする粉粒体の種類や量などに基づいて任意に設定することが可能である。
【0024】
上記のようにユーザーがパラメータをセットし、評価対象である粉粒体をホッパー部111にセットし、コンピューター5に測定開始を指示すると、コンピューター5はステップS100から測定を開始する。
【0025】
ステップS100で、コンピューター5によって測定処理が開始されると、続いて、ステップS101においては、振動器2により一定周波数で、設定されている上昇率の振動加速度の振動が管11に付与されるように、コントローラー20に対して指令を行う。本実施形態における流動性測定装置では、一定の周波数としては280kHzを採用している。
【0026】
続く、ステップS102では、レーザー振動測定器3によってサンプリングされた振幅データ、及び、電子天秤装置4によってサンプリングされた重量データを取得して、記憶部に記憶する。
【0027】
次のステップS103では、初期設定で設定されている折り返し時間が経過したか否かが判定され、判定結果がYESであるときにはステップS104に進み、NOであるときには再びステップS102に戻る。
【0028】
ステップS104では、振動器2により一定周波数で、設定されている下降率の振動加速度の振動が管11に付与されるように、コントローラー20に対して指令を行う。ここでも一定周波数としては280kHzを採用している。
【0029】
続く、ステップS105では、レーザー振動測定器3によってサンプリングされた振幅データ、及び、電子天秤装置4によってサンプリングされた重量データを取得して、記憶部に記憶する。
【0030】
次のステップS103では、初期設定で設定されている折り返し時間が経過したか否かが判定され、判定結果がYESであるときにはステップS106に進み、NOであるときには再びステップS105に戻る。
【0031】
ステップS106では、測定が終了したか否かが判定される。測定の終了は、振動加速度が0となったときである。ステップS106における判定の結果がYESであるときには、ステップS107に進み、NOであるときには再びステップS105に戻りループする。
【0032】
ステップS107では、コンピューター5は、取得された電子天秤装置4の重量データに基づいて、単位時間あたりの流量の推移のグラフを作成し、ステップS108では、粉粒体の流動性を評価する評価値を演算して、ステップS109で測定処理を終了する。
【0033】
上記ステップS107及びステップS108についてより詳細に説明する。ステップS107によって作成される単位時間あたりの流量(質量流量)の推移のグラフの例を図4に示す。コンピューター5は、取得された電子天秤装置4の重量データに基づいて、流量データとして(時間、質量流量)形式のデータセットである(D1,D2,D3,・・・D31,D32)を演算する。このようなデータセットに基づいてコンピューター5は図3に示すようなグラフを作成して表示装置51に表示する。
【0034】
次に、ステップS105についてより詳細に説明する。ステップS108では、粉粒体の流動性を評価する評価値が演算されるが、このような評価値は流量データとして演算されたデータセット(D1,D2,D3,・・・D31,D32)から演算される。
【0035】
本実施形態に係る流動性測定装置では、粉粒体の流動性を評価するための評価値として(1)流量最大値、(2)流量特性値(Y軸切片値)の2つの評価値を演算するものであり、以下それぞれの評価値の演算方法について説明する。
【0036】
図5は本実施形態に係る流動性測定装置における流量最大値の演算例を示す図である。流動性測定装置で演算される評価値の(1)流量最大値は、流量データのデータセット(D1,D2,D3,・・・D31,D32)から求められた最大値(この例では、D8のときの質量流量値)である。
【0037】
図6は本実施形態に係る流動性測定装置における流量特性値(Y軸切片値)の演算例を
示す図である。これまでに説明したように、測定における後半は振動加速度を下降させつつ取得するが、振動加速度を下降させているときのデータセット(D18,D19,D20,・・・D31,D32)から1次回帰線Lを求める。(2)の流量特性値(Y軸切片値)は、この1次回帰線LとY軸との交点(図示矢印の点)の質量流量値として求めるものである。振動加速度下降時において、粉粒体の流れは、振動加速度がゼロになっても停止しない。このような振動加速度下降時に取得されたデータ、すなわち、Y軸切片値は粉粒体の流動特性を評価するのみ非常に有意なものと考えられる。
【0038】
なお、この例では、振動加速度を下降させているときのデータセットの全てのデータを選択して1次回帰線Lを求めるようにしたが、最初の2つの流量データと、最後の2つの流量データとを除外して選択したデータセットに基づいて1次回帰線Lを求めるようにしたが、振動加速度下降時に取得されるどの流量データを選択するかはこのような例に限定されるものではない。例えば、取得されるデータセットの最後5つのデータから1次回帰線を求めるようにしてもよい。
【0039】
以上のように、本発明の流動性測定装置によれば、振動器2によって管11の振動加速度を上昇させたり下降させたりしたときにおける粉粒体の流動性の特徴を抽出するものであり、従来より多面的な情報を含んだ粉粒体の流動性の評価値(流量最大値及びY軸切片値)を得ることが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る流動性測定装置においては、粉粒体の充填性に関連する情報を取得することが可能である。図7は本実施形態に係る流動性測定装置における質量流量の推移パターンを示す図である。図7(A)は第1の質量流量の推移パターンを示す図であり、図7(B)は第2の質量流量の推移パターンを示す図であり、共に図4に示すような取得データを模式的にグラフ化したものである。
【0041】
第1の質量流量の推移パターンは振動加速度を上昇させているときに取得されたデータと、振動加速度を下降させているときに取得されたデータとの一部が略一致しているときのパターンであり、このような場合の推移パターンはヒステリシスがないものとして定義する。第2の質量流量の推移パターンは振動加速度を上昇させているときに取得されたデータと、振動加速度を下降させているときに取得されたデータとが乖離しているときのパターンであり、このような場合の推移パターンはヒステリシスがあるものとして定義する。
【0042】
本実施形態に係る流動性測定装置で取得される推移パターンにヒステリシスがない場合、すなわち、振動加速度を下降させているときにおいても粉粒体の流動性が上昇時と同様によい場合には、振動加速度を上昇させている間に管11内の粉粒体は、充填しにくかったり、或いは、充填したとしても流動性が変わらなかったりする特徴点を有するものであると判断することが可能である。これとは逆に、本実施形態に係る流動性測定装置で取得される推移パターンにヒステリシスがある場合には、すなわち、振動加速度を下降させているときには、粉粒体の流動性が上昇時に比べて減少する場合には、振動加速度を上昇させている間に管11内の粉粒体は充填しやすく、この充填によって流動性が減少する特徴点を有するものであると判断することが可能である。
【0043】
ここで、本実施形態に係る流動性測定装置で今回、データを取得する上で利用したサンプルのプロファイルについて説明する。図8及び図9は本発明の実施形態に係る流動性測定装置を実証テストする上で利用したサンプル粉粒体のリストである。本実施形態に係る流動性測定装置でデータ取得する上で、第1のサンプル粒子として粉砕ZrO2粒子を、また、第2のサンプル粒子として造粒WO3粒子を用いており、第1、第2のサンプル粒子それぞれで小粒径(粒径45μm以下のもの)と大粒径(粒径106〜250μm)との
混合割合を変えて、それぞれ8種類のサンプルを用意した。
【0044】
第1のサンプル粒子であるZrO2粒子は粉砕機で粉砕したものであり、第2のサンプル粒子であるWO3粒子は転動造粒機で製造したものである。これらの粒子を45μm以下および106から250μmの2つの粒径範囲に分級して先のようなサンプル粒子を準備した。図10は、第1のサンプル粒子及び第2のサンプル粒子のSEM写真を示している。粉砕ZrO2粒子には角があり、造粒WO3粒子は円形である。106−250μmのZrO2とWO3粒子のゆるみかさ密度は、それぞれ2.9×103と2.7×103kg/m3であり、焙焼、還元および造粒したMOX粒子(2.6×103kg/m3)と同程度である。以下、本実施形態に係る流動性測定装置で測定した結果に対する考察を行う。
【0045】
<第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)の流動性について>
図11は、第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)の流動性プロファイルを示している。丸い点は振動加速度を増加させて測定したプロファイルを示している。振動しない時の質量流量はゼロであり、振動加速度がある値を超えると質量流量は増加し始める。これは、粒子の静止摩擦や付着に関係している、流動開始振動加速度である。流動開始振動加速度は、プロファイルの最も急勾配な接線がX軸と交わる点から求めることができる。測定結果から、流動開始振動加速度は微粒子の割合が増加するに従って増加することがわかる。振動加速度が流動開始振動加速度を超えると、質量流量は急激に増加し、その後ゆるやかに増加する。Z50に関しては、粒子の流量が比較的小さいため、急激な増加は見られない。
【0046】
三角の点は振動加速度を減少させて測定したプロファイルを示している。Z0、Z5、10、およびZ30に関しては、振動加速度がゼロになっても、粒子の流れは止まらなかった。したがって、流れが止まる流動停止振動加速度を求めることはできなかった。Z50に関しては、測定中に流れが停止し、流動停止振動加速度は流動開始振動加速度よりも小さいことがわかった。これらの測定結果により、粒子の流れの系は、粒子の充填状態と構造によるヒステリシスを有することがわかる。また、Z100に関しては、測定中に粒子の排出は観測されなかった。
【0047】
振動加速度が大きい場合の質量流量は、振動加速度を増加させて測定しても、減少させて測定しても変化はなく、粒子が流れる限りは、ヒステリシスはほとんど無いことがわかる。
【0048】
<第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の流動性について>
図12は、第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の流動性プロファイルを示している。丸の点は、振動加速度を上昇させて測定した流動性プロファイルを示している。全てのサンプルの質量流量は、測定開始と同時に立ち上がり、流動開始振動加速度に差は見られない。振動加速度が流動開始振動加速度を超えると、質量流量は鋭く増加し、その後の高い振動加速度では、僅かに減少するか、ほぼ一定の値を保つ。
【0049】
三角の点は、振動加速度を減少させながら測定した流動性プロファイルを示している。粒子の流れは、振動加速度がゼロになっても停止しなかった。振動加速度を上昇させても、下降させて測定しても、質量流量はほとんど同じであるが、この図では多少のヒステリシスが見られる。
【0050】
粒子の動摩擦に関連する質量流量は、粒子の流動性を評価するのに便利なファクターである。質量流量のキャラクタリゼーションのために、振動加速度の上昇又は下降の条件にしたがって、二つの方法を提案したい。一つの特性値は、振動加速度を上昇させながら測定した流動性プロファイルの最大値であり、もう一つの特性値は、振動加速度を下降させ
ながら測定したプロファイルの近似直線のy軸切片である。これらが先に説明した(1)流量最大値、(2)流量特性値(Y軸切片値)の2つの評価値である。
【0051】
図13は、流量特性値と微粒子の割合の関係を示している。二つの測定カーブは、微粒子の割合が増加するに従って減少し、両カーブの特徴は似ている。それゆえ、二つの流量特性値は、動摩擦に関連した流動性の評価に利用できる。
【0052】
<第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)と第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の流動性プロファイルの違いについて>
第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)に関しては、微粒子の混合割合は二つの特性値、すなわち流動開始振動加速度と流量特性値に影響する。第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)に関しては、微粒子の混合割合は流量特性値には影響するが、流動開始振動加速度には違いが見られなかった。第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)と第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)間の粒子流動挙動の相違は、粒子形状と表面状態の違いによる静止摩擦によって引き起こされていると思われる。第1のサンプル粒子(粉砕ZrO2粒子)は粉砕して準備したものであり、粒子形状は不定形であるが、第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)は造粒して転動造粒で製造したものであるため、粒子形状は丸い。そのため、第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の静止摩擦係数は大幅に減少している。静止摩擦係数が小さい事実にも関わらず、流量特性値により、第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)の動摩擦に関係する流動性が評価できたのは注目するに値する。簡素化ペレット法で使用されているMOX粒子は丸い形状をしており、MOX粒子の流動性は第2のサンプル粒子(造粒WO3粒子)に似ていると期待される。
【0053】
以上、本発明の流動性測定装置及び流動性測定方法によれば、振動器によって管の振動加速度を上昇させたり下降させたりしたときにおける粉粒体の流動性の特徴を抽出するものであるので、より多面的な情報を含んだ粉粒体の流動性の評価値を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・粉粒体流動部、11・・・管、111・・・ホッパー部、1111・・・投入口、1112・・・排出口、1121・・・流入口、1122・・・細管部、1123・・・排出口、112・・・管部、12・・・水平ロッド、13・・・スタンド、2・・・振動器、20・・・コントローラー、21・・・振動器本体、22・・・振動伝達部材、3・・・レーザー振動測定器、31・・・レーザー振動測定器本体、32・・・プローブ、4・・・電子天秤装置、41・・・秤量台、5・・・コンピューター、51・・・表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象である粉流体を収容する収容部材と、
前記収容部材に設けられる流出口と、
前記収容部材に振動を付与する振動器と、
前記収容部材の振動の振幅を測定する振動測定器と、
前記収容部材の前記流出口から落下する粉流体の重量を測定する天秤装置と、
前記振動器に対して所定の周波数及び振幅の振動を発生させる指令を行うと共に、前記振動測定器と前記天秤装置からのデータを取得し、単位時間あたりの粉流体の流動量データを演算する演算装置と、からなる流動性測定装置において、
前記演算装置は、所定上昇率の振幅加速度の振動を前記振動器で発生させ、所定時間経過後、所定下降率の振幅加速度の振動を前記振動器で発生させて前記収容部材に振動を付与するように指令すると共に、
前記振動測定器と前記天秤装置からのデータを取得し、単位時間あたりの粉流体の流動量データを演算し、演算された単位時間あたりの粉流体の流動量データから、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする流動性測定装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記単位時間あたりの粉流体の流動量データから、所定数のデータを選択し、選択されたデータから1次回帰線を求めることによって、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする請求項1に記載の流動性測定装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記単位時間あたりの粉流体の流動量データから、最大値を求めることによって、粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする請求項1に記載の流動性測定装置。
【請求項4】
粉流体を収容する収容部材に、所定上昇率の振幅加速度の振動を所定時間与え、この後、所定下降率の振幅加速度の振動を与え、与えた振動によって前記収容部材から流出する粉粒体の重量を計量し、計量された粉粒体の重量に基づいて、単位時間あたりの粉流体の流動量データを求め、求められた流動量データから所定数のデータを選択し、選択されたデータから1次回帰線を求めることによって粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする流動性測定方法。
【請求項5】
粉流体を収容する収容部材に、所定上昇率の振幅加速度の振動を所定時間与え、この後、所定下降率の振幅加速度の振動を与え、与えた振動によって前記収容部材から流出する粉粒体の重量を計量し、計量された粉粒体の重量に基づいて、単位時間あたりの粉流体の流動量データを求め、求められた流動量データから最大値を求めることによって粉流体の流動性を評価するための評価値を演算することを特徴とする流動性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58885(P2011−58885A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207263(P2009−207263)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)