説明

流動食品パッケージを製造するために使用する自己設定式誘導シーリング装置

ヒートシール用シート状包装材(3)のチューブ(2)から流動食品パッケージ(7)を製造するために使用する誘導シーリング装置(10)。シーリング装置(10)は、交流パワー信号(S(ω))を供給する信号源(12)と、交流パワー信号(S(ω))を受信して、包装材(3)をヒートシールするための電流を包装材(3)中に誘起するように動作する誘導子(13)と、信号源(12)と誘導子(13)との間に接続されたインピーダンス整合回路(11’)とを有する。インピーダンス整合回路(H’)は、交流パワー信号を受信する一対の入力端子(11.1、11.2)と、入力端子(11.1、11.2)に接続された第1のライン(23)および第2のライン(24)と、第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に並列接続されて、各々が直列に接続された容量性素子(C1−C4)および制御スイッチ(SW1−SW4)を含み、各制御スイッチ(SW1−SW4)が第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に対応する容量性素子(C1−C4)を接続するように選択的に機能する複数の容量性モジュール(21.1−21.4)を有する可変容量ステージ(21)と、制御スイッチ(SW1−SW4)の動作状態を制御するように構成された制御ステージ(22)とを有する。各々の制御スイッチ(SW1−SW4)は、制御ステージ(22)からそれぞれ対応する制御信号を受信する一対の入力端子(SWa、SWb)を有しており、各々の制御スイッチ(SW1−SW4)の入力端子(SWa、SWb)の1つ(SWb)は、第2のライン(24)に接続されており、また各々の制御スイッチ(SW1−SW4)は、更に制御スイッチ(SW1−SW4)の他方の入力端子(SWb)に接続された制御端子と、それぞれ対応する容量性素子(C1−C4)を介して第1のライン(23)に接続された第1の電流導通端子と、第2のライン(24)に接続された第2の電流導通端子と、を有する一本の双方向制御スイッチ素子(IGBT)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に連続的に流動製品で満たされるシート状包装材チューブを横断部分でシールすることによって流動食品パッケージを製造するために使用する誘導シーリングに関する。更に詳細には、本発明は、電流および電圧の位相を再調整して、シーリング操作の間に誘導子への電力転送を最適化するための自己設定式誘導シーリング装置に使用する進歩したインピーダンス整合回路に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
既知のように、多くの流動食品(例えば、果実又は野菜のジュース、殺菌又はUHT(超高温処理)されたミルク、ワイン等)が、滅菌された包装材を含むパッケージに入れられて販売されている。
【0003】
このタイプのパッケージの典型的な例は、Tetra Brik Aseptic(R)(テトラ・ブリック・アセプティック(登録商標))として周知の流動食品用の平行六面体のパッケージであり、これは、積層されたストリップ状包装材を折り曲げてシールすることによって形成される。
【0004】
積層された包装材は、例えば、紙のような繊維材料で作られた層を含み、この層の両面がポリエチレンなどのヒートシール樹脂材料で覆われている。例えば、UHTミルクなどの長期保存食品のための無菌パッケージの場合、最終的にパッケージ内部の食品に接触する包装材の側面は、アルミニウム薄膜やEVOH膜のような酸素を通さない材料を含む層を有しており、それが更にヒートシール樹脂材料の1又は複数の層で覆われている。
【0005】
既知のように、この種のパッケージは、図1に示されたタイプの完全自動化された包装機で製造されており、その機械では、連続した縦形チューブ2が包装材のウエブ3から形成される。ウエブは、包装機1において、例えば、過酸化水素溶液などの殺菌剤を塗布することによって滅菌される。この殺菌剤は、例えば、加熱して蒸発させることで後に包装材の表面から除去される。この滅菌されたウエブ3は、密封された無菌環境内に保管され、長手方向で折り曲げられシールされることでチューブ2の形に形成される。
【0006】
チューブ2は、次に、流量制御用のソレノイド・バルブ5を備え、チューブ2の中に延びる充填パイプ4によって、滅菌された、あるいは、滅菌処理された流動食品で下方へ向かって充填され、既知の装置によって長手方向の経路Aに沿って加工ステーション6に送られ、そこで二対の掴み具によって等間隔の横断部分に沿って掴まれる。更に詳細には、それらの対の掴み具は、チューブ2に対して連続的に繰り返して働いて、チューブ2の包装材をシールし、横断部分のシーリング・ストリップによって互いにつながった連続した枕形パック7のストリップを形成する。
【0007】
枕形パック7は、関係するシーリング・ストリップを切断することによって互いに分離され、最終的な折り曲げステーションまで搬送されて、そこで機械的に折り曲げられて完成品の平行六面体に整形される。
【0008】
障壁材料としてのアルミニウム層を備えた滅菌パッケージの場合には、チューブは、通常、誘導シーリング装置によって長手方向および横方向にシールされる。この装置は、アルミニウム層中に寄生電流を誘起し、ヒートシール樹脂材料を局所的に溶融させる。更に詳細には、横断部分でシールするために、各対の掴み具の一方は、非導電性の材料を含む母材と、母材のフロント・シートに収容された誘導子とを含み、他方の掴み具は、例えばゴムのような柔軟な材料を含む圧力パッドを備えている。
【0009】
関係する掴み具の対がチューブを掴むとき、誘導子には、樹脂被覆材料をヒートシールすることによってチューブ断面をシールするための電力が供給される。電力が供給されると、誘導子は、パルス磁場を発生し、それが縦形チューブの作成される元となる包装材のアルミニウム・シート中に寄生電流を誘起して、ヒートシール樹脂被覆材料を局所的に溶融させる。
【0010】
更に詳細には、誘導シーリング装置は、誘導子に加えて、連続的又はパルス状の交流パワー信号を供給する信号源を含み、また信号源と誘導子との間に挿入されて電力転送を最適化するためのインピーダンス整合回路を含む。更に詳細には、インピーダンス整合回路は、信号源によって供給される電圧と電流との間に、誘導子のリアクティブ・インピーダンスによって誘起される位相シフト(角度)を除去又は最小化するように構成されており、それによって信号源によって供給される無効電力を最小化し、有効電力を最大化する。
【0011】
交流パワー信号は、都合のよいことに、およそ535kHzの周波数の正弦波電圧および公称で540Vの数百ボルト付近のピーク振幅を有している。また、信号源は、電流と電圧(両方とも出力において測定)との間の位相がゼロに近いときに、約2500ワットの最大電力を供給する。
【0012】
既知の整合回路は、通常、誘導性−容量性のものであって、通常は選択的に並列接続されたキャパシタの数によって定義される可変容量を有する容量性素子が、通常は変圧器によって定義される誘導性素子に対して並列に接続されている。容量性素子の合計容量と誘導性素子の合計インダクタンスとは、信号源からの出力電流および電圧の位相を再調整するように、すなわち、電流と電圧との間の位相がゼロに近くなるように選択される。
【0013】
位相調整は、信号源に接続される電気的負荷に依存し、更に、電気的負荷は、包装機の動作状態、例えば、製造されるパックの量や、採用された誘導子のタイプ、包装機の製造能力および速度等に依存するため、位相調整は、それに従ってインピーダンス整合回路に働きかけることによって電気的負荷の変動に実時間で適応するように調節される。更に詳細には、パッケージ製造の間に、都合のよいことに信号源に統合された制御ステージは、詳細には説明しないが既知の方法によって信号源からの電圧と電流との間の位相などの電気的パラメータおよび/又は信号源から見たインピーダンス、すなわち、インピーダンス整合回路の入力インピーダンスを測定し、信号源の電流と電圧との間の位相を除去又は最小化するようにインピーダンス整合回路に要求される合計の容量を決定する。その後で、制御ステージは、キャパシタの並列接続構成を修正して信号源から見た容量を調節させる制御信号を発生させてインピーダンス整合回路に供給する。
【0014】
既存の誘導シーリング装置は、例えば、出願人による欧州特許第EP−B1−1 620 249号および参考のために図2に示されたそれの回路アーキテクチャ中に述べられている。ここで、10は、誘導シーリング装置全体を示し、11は、インピーダンス整合回路を、12は、信号源を、そして13は、誘導子を示す。
【0015】
更に詳細には、インピーダンス整合回路11は、
・使用時に信号源12がそこに接続される2つの入力端子11.1、11.2であって、そこには、信号源によって供給される交流パワー信号S(ω)が存在する2つの入力端子11.1、11.2と、
・使用時にそれに対して誘導子13が接続される2つの出力端子11.3、11.4と、
・インピーダンス整合回路11のそれぞれ対応する入力端子11.1、11.2に接続された第1のラインおよび第2のライン24と、
・第1のライン23と第2のライン24との間に接続された等価キャパシタCeqによって図2に模式的に示された固定容量ステージ26と、
・第1のライン23と第2のライン24との間に並列接続された図示の例では4個である複数の容量性モジュール21.1、21.2、21.3、21.4によって定義される可変容量ステージ21であって、各々の容量性モジュールは、直列接続されたキャパシタC1、C2、C3、C4と制御スイッチSW1、SW2、SW3、SW4とを含み、各制御スイッチは、個別に選択的に駆動されて対応するキャパシタを第1と第2のライン23、24との間に接続するようになった可変容量ステージ21と、
・第1のライン23と第2のライン24との間に接続された一次巻線25.1と、出力端子11.3、11.4に接続された二次巻線25.2とを有する変圧器25と、
・スイッチSW1−SW4の動作状態(オン/オフ)を制御するための制御ステージ22であって、詳細に説明しないが既知の方法によって信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相を測定して、電流と電圧との間の位相を除去又は最小化するためにインピーダンス整合回路11に要求される目的容量を決定し、また第1のラインと第2のラインとの間のキャパシタC1−C4の接続構成を修正するための対応する制御信号を発生させてスイッチSW1−SW4に供給して、可変容量ステージ21の容量、従って信号源12から見た等価容量を調節するように構成された制御ステージ22と、
を含む。
【0016】
インピーダンス整合回路11のより詳細な回路図が図3に示されているが、これは、本発明の明瞭な理解のために分かり易くするために必要なパーツのみを示しており、図2のインピーダンス整合回路のそれらに対応するコンポネント・パーツを同じ参照符号で示している。
【0017】
更に詳細には、図3のインピーダンス整合回路11で、
・入力端子11.1、11.2は、4対の端子で定義されており、その一対は、使用時に信号源12(図示されていない)に接続され、別の一対は、使用時に変圧器25(図示されていない)の一次巻線25.1の中間ソケットの対応する一対に接続されて仕様の変圧器比を実現しており、
・固定容量ステージ26では、図2の等価キャパシタCeqは、3つのキャパシタC5、C6、C7によって定義されており、
・可変容量ステージ21では、各制御スイッチSW1−SW4は、
−制御ステージ22によって供給される、それぞれ対応する制御信号が使用時に供給される一対の入力端子SWa、SWbと、
−図示の例では、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタである一対のパワー・トランジスタ、IGBT1、IGBT2であって、ゲート端子を互いに接続され、エミッタ端子を互いに接続され、コレクタ端子の1つを第1のライン23に、他方を対応するキャパシタC1−C4を介して第2のライン24に接続されており、また各パワー・トランジスタは、そのパワー・トランジスタに並列接続された対応するフリーホイール・ダイオードD1、D2を有し、それらのアノードは、エミッタ端子に、またカソードは、コレクタ端子に接続されている一対のパワー・トランジスタと、
−制御スイッチSW1−SW4の入力端子SWa、SWbと2つのパワー・トランジスタとの間に挿入され、制御スイッチSW1−SW4の入力端子SWaとSWbとの間に直列接続された抵抗Rとツェナー・ダイオードZおよびツェナー・ダイオードZに並列接続された並列RC型フィルタ・ネットワークFによって定義されたバイアスおよびフィルタ・モジュール27であって、更に詳細には、ツェナー・ダイオードZは、抵抗Rを介して制御スイッチSW1−SW4の第1の入力端子SWaに接続されたカソードと、制御スイッチSW1−SW4の第2の入力端子SWbに接続されたアノードと、を有しており、制御スイッチSW1−SW4の第2の入力端子SWbは、次に制御スイッチSW1−SW4のトランジスタIGBT1、IGBT2のエミッタ端子につながれ、抵抗Rとツェナー・ダイオードZとの間の中間ノードは、それぞれ対応する制御スイッチSW1−SW4のトランジスタIGBT1、IGBT2のゲート端子に接続されているバイアスおよびフィルタ・モジュール27と、
を含む。
【0018】
パッケージ製造プロセスの間に、制御ステージ22は、信号源12からの電圧と電流との間の位相を測定し、その位相を除去又は最小化するためにインピーダンス整合回路11に要求される合計容量を決定し、次に適切な制御信号を発生させて、容量性モジュール21.1−21.4がトランジスタIGBT1、IGBT2のオン/オフ構成、従って可変容量ステージ21のキャパシタC1−C4の並列接続構成を得るようにする。これは、信号源12から見た合計容量を、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相を除去又は最小化するための量だけ修正する。
【0019】
更に、交流パワー信号の1周期の間に、第1のライン23と第2のライン24との間に、固定容量ステージ26のキャパシタC5−C7に対して並列になるように選択的に接続された可変容量ステージ21のキャパシタC1−C4には、交流パワー信号の正の半波の間に対応するトランジスタIGBT1とトランジスタIGBT2のフリーホイール・ダイオードD2とを流れ、また交流パワー信号の負の半波の間に対応するトランジスタIGBT2とトランジスタIGBT1のフリーホイール・ダイオードD1とを流れる電流がそれぞれ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第EP−B1−1 620 249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
(発明の開示)
広く用いられているものの、図3のインピーダンス整合回路は、出願人の意見では、回路の多くの利点から導かれる利益を完全に享受することを阻害するいくつかの欠点を有する。
【0022】
更に詳細には、出願人の観察によれば、インピーダンス整合回路のアーキテクチャ、特にトランジスタIGBT1、IGBT2のエミッタ端子が対応する制御スイッチの入力端子に接続されて、それに対して制御ステージで生成された制御信号が供給されるという事実が与えられた場合、エミッタ端子の電位もまた、特に制御ステージによって生成された制御信号に依存することになり、交流パワー信号が供給される第1のラインと第2のラインとに対して浮遊状態となる。この結果、制御ステージによって制御スイッチSW1−SW4に供給される制御信号は、インピーダンス整合回路1のコンポネント・パーツが搭載されている基板から電気的に絶縁および分離され、1kVの絶縁、すなわち、交流パワー信号に対して最大で1kVだけ浮遊できる24ボルトの制御電圧を供給するDC−DC変換器を含む別の付加的電子基板によって発生させる必要がある。
【0023】
出願人によって実行されたテストによれば、インピーダンス整合回路基板の極く近傍にある電子基板の動作を妨害する電磁場によって引き起こされる電磁的両立性(電磁環境適合性)の問題が明らかになった。
【0024】
出願人は、また固定容量ステージのキャパシタのかなり大きい容量と、IGBTトランジスタの導通時の電力損失とによって主として引き起こされる重要な電流吸収現象およびそれに伴うジュール効果熱放散現象を観察した。
【0025】
最後に、出願人は、より大きい容量構成からより小さい容量構成へ切り替わるときのインピーダンス整合回路の或る種の反応の鈍さを観察しており、それが主として制御ステージのDC−DC変換器が可変容量ステージの制御スイッチをターン・オフするときの遅さに起因することに気づいている。
【0026】
本発明の1つの目的は、既存装置の上述の欠点を解消するように設計された誘導シーリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に従えば、シート状の包装材のチューブを横断部分でシールすることによって流動食品パッケージを製造するために使用される誘導シーリング装置が提供される。また添付の請求項に請求されているように、ヒートシール用シート状包装材のチューブから流動食品のシールされたパッケージを連続的に製造するための包装機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】分かり易くするためにパーツを取り外した状態で、包装材のチューブから流動性食品の滅菌シールされたパッケージを製造するための包装機を示す外観図。
【図2】図1の包装機で使用される既知の自己設定型誘導シーリング装置の回路図。
【図3】図2の誘導シーリング装置の一部を構成するインピーダンス整合回路の回路図。
【図4】図2に示されたタイプの誘導シーリング装置に使用される本発明に従うインピーダンス整合回路の回路図。
【図5】図4のインピーダンス整合回路の動作フロー・チャート。
【図6a】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【図6b】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【図6c】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【図7a】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【図7b】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【図7c】図4のインピーダンス整合回路に関するテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好適な非限定的実施の形態について、添付図面を参照しながら一例を挙げて説明することにする。
【0030】
(発明の詳細な説明)
図4は、図2に示されたタイプの誘導シーリング装置に使用するための本発明に従うインピーダンス整合回路の回路図を示す。更に詳細には、図4のインピーダンス整合回路は、図3のものと類似しており、従って以下で図3の回路と異なる点についてのみ、図3のインピーダンス整合回路のそれらに対応するコンポネント・パーツと同じ参照符号を用いて説明する。
【0031】
更に詳細には、図4に11’として示された本発明に従うインピーダンス整合回路は、図3のインピーダンス整合回路11と次のような点で異なる。
・入力端子11.1および11.2は、一対の端子によって示され、それらは、第1のライン23および第2のライン24に接続されており、それらの間には、信号源12(図示されていない)と変圧器25(図示されていない)の一次巻線25.1の両方が使用時に接続されていること。2つの入力端子11.1、11.2の1つ、特に第2のライン24につながるほうは、アースに接続されていること、
・固定容量ステージ26は、第1のライン23と第2のライン24との間に接続された5個のキャパシタC9、C10、C11、C12、C13を含むこと、
・可変容量ステージ21では、2つの入力端子の1つ、図示された例では、入力端子SWbは、アースされた第2のライン24に接続され、各制御スイッチSW1−SW4は、1つのパワー・トランジスタによって示されていることであり、図示の例では、ゲート端子が対応するバイアスおよびフィルタ・モジュールFに接続され、エミッタ端子が第2のライン24に接続され、コレクタ端子が対応するキャパシタC1−C4を介して第1のライン23に接続された絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタIGBTによって示されていること。各トランジスタIGBTは、トランジスタIGBTに並列接続されたフリーホイール・ダイオードDを有しており、IGBTのアノードがトランジスタIGBTのエミッタ端子に、カソードがコレクタ端子に接続されていること。
【0032】
実際の使用時には、交流パワー信号の1周期の間に、第1のラインと第2のラインとの間に固定容量ステージ26のキャパシタに対して選択的に並列接続された可変容量ステージ21のキャパシタには、交流パワー信号の正の半波の間に対応するトランジスタIGBTを通って流れ、交流パワー信号の負の半波の間に対応するトランジスタIGBTのフリーホイール・ダイオードDを通って流れる電流がそれぞれ供給される。
【0033】
可変容量ステージ21のキャパシタC1−C4の容量は、都合のよいことに、インピーダンス整合回路11’の単調な合計容量を実現するように選ばれる。図6a、6b、6cのテーブルは、固定および可変容量ステージ26、21のキャパシタ容量および合計容量についての3つの例を示す。図7a、7b、7cのテーブルは、可変容量ステージおよびインピーダンス整合回路11’の容量変化および合計容量についての3つの例を、パワー・トランジスタのオープン/クローズ構成の変化(2進数符号化)と一緒に示している。
【0034】
上で述べたように、制御ステージ22は、トランジスタIGBTが可変容量ステージ21のキャパシタC1−C4の並列接続構成を得るために適切な制御信号を発生させる。これは、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相を除去するためのものである。
【0035】
更に詳細には、制御ステージ22は、図5のフロー・チャートを参照して以下で説明するように、トランジスタIGBTのオン/オフ構成に適応するための適応アルゴリズムを組み込まれている。
【0036】
適応アルゴリズムは、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相を以下の4つの異なる閾値、
・それぞれPNSおよびPNLと表示され、それぞれ小さい負の位相シフトおよび大きい負の位相シフト、例えば−15°および−25°を表す第1および第2の閾値、
・それぞれPPSおよびPPLと表示され、それぞれ小さい正の位相シフトおよび大きい正の位相シフト、例えば+15°および+25°を表す第3および第4の閾値、
と比較することに基づく。
【0037】
更に詳細には、例えば約20msの初期の待ち時間t1のあと(ブロック100)、制御ステージ22は、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相が第1の閾値PNSより小さいか否かを判断する(ブロック110)。もしそうであれば(ブロック110のYES出力)、制御ステージ22は、制御スイッチSW1−SW4を制御して、可変容量ステージ21の合計容量を、図7a、7b、7cのテーブルの制御スイッチSW1−SW4のオープン/クローズの2進数構成の1単位に対応する量だけ減少させる(ブロック120)。
【0038】
制御ステージ22は、次に、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相が第2の閾値PNLよりも小さいか否かを判断する(ブロック130)。もしそうでなければ(ブロック130のNO出力)、それは、第1の閾値PNSと第2の閾値PNLとの間の位相に対応するが、例えば、約5msの待ち時間t2のあとで、ブロック110から再び動作が開始される(ブロック150)。逆の場合(ブロック130のYES出力)、制御ステージ22は、制御スイッチSW1−SW4を制御して、可変容量ステージ21の合計容量を、制御スイッチSW1−SW4のオープン/クローズの2進数構成の1単位に対応する量だけ更に減少させる(ブロック140)。このあとで、この場合にも、ブロック110から再び動作が開始される。
【0039】
信号源12によって供給される電圧と電流との間に位相が第1の閾値PNSよりも大きい場合(ブロック110のNO出力)、制御ステージ22は、それが第3の閾値PPSよりも大きいか否かを判断する(ブロック160)。もしそうでなければ(ブロック160のNO出力)、再びブロック150から動作が開始される。逆の場合(ブロック160のYES出力)、制御ステージ22は、制御スイッチSW1−SW4を制御して、可変容量ステージ21の合計容量を、制御スイッチSW1−SW4のオープン/クローズの2進数構成の1単位に対応する量だけ増加させる(ブロック170)。
【0040】
制御ステージ22は、次に、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相が第4の閾値PPLより大きいか否かを判断する(ブロック180)。もしそうでなければ(ブロック180のNO出力)、それは、第3の閾値PPSと第4の閾値PPLとの間の位相に対応するが、再びブロック150から動作が開始される。逆の場合(ブロック180のYES出力)、制御ステージ22は、制御スイッチSW1−SW4を制御して、可変容量ステージ21の合計容量を、制御スイッチSW1−SW4のオープン/クローズの2進数構成の1単位に対応する量だけ更に増加させる(ブロック190)。このあとで、再びブロック150から動作が開始される。
【0041】
上の動作によって、信号源12によって供給される電圧と電流との間の位相がかなり大きい(−25°より小さいか、+25°より大きい)場合、可変容量ステージ21の合計容量は、各々の反復操作において、電圧と電流との間の位相が過剰でない(−25°と−15°との間にあるか、+15°と+25°との間にある)場合に増減される量の2倍だけ増加又は減少される。
【0042】
本発明に従うインピーダンス整合回路11’の特徴は、以上の説明から明らかであろう。
【0043】
特に、本発明に従うインピーダンス整合回路11’において、トランジスタIGBT1−IGBT4のエミッタ端子は、第2のライン24に接続されており、エミッタ端子の電位は、もはやアースから浮遊しておらず、事実上アース電位にあるため、インピーダンス整合回路11’のすべての電子コンポネントは、制御ステージ22のそれらも含めて、同じ電子基板上に搭載できる。
【0044】
このことは、数多くの顕著な効果を与える。1つは、インピーダンス整合回路11’基板の極く近傍にある電子基板の動作を妨害する電磁場放射の減少である。これは、主としてパワー・トランジスタの個数削減および関連する接続トラック長縮小に起因するので、インピーダンス整合回路11’のアーキテクチャが簡略化される。更に、既存のインピーダンス整合回路11にあっては、制御ステージ22のコンポネント・パーツおよびインピーダンス整合回路11’のその他のコンポネント・パーツをそれぞれ搭載した2つの電子基板を接続する電気配線が不要となることにも起因する。
【0045】
更に、電子基板上の与えられた占有面積に対して、パワー・トランジスタの個数を減らすことによって、固定容量ステージ26がより多数のキャパシタを含むことができ、それらは、各々、固定容量ステージ26の与えられた合計容量に対して図3のキャパシタよりも小さい容量を有することになり、従って電流吸収現象およびジュール効果熱放散現象を低減させる。
【0046】
最後に、パワー・トランジスタの個数を減らすことは、可変容量ステージ21がより大きい容量からより小さい容量の構成に切り替わる速度を増大させる。
【0047】
明らかなように、ここに説明した本発明に従うインピーダンス整合回路11’に対して、添付の請求項によって定義される本発明の範囲から外れることなく、変更を施すことができる。
【0048】
特に、パワー・トランジスタは、ここに説明したものと異なるものでも構わない。また固定容量ステージ26および可変容量ステージ21のキャパシタの個数、従って制御ステージ22の制御モジュールの個数は、ここに説明したものと異なるものでも構わない。
【0049】
更に、固定容量ステージ26を排除することも可能であり、インピーダンス整合回路11’の合計容量は、可変容量ステージ21のみによって得ることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール用シート状包装材(3)のチューブ(2)から流動食品パッケージを製造するために使用する誘導シーリング装置(10)であって、
交流パワー信号(S(ω))を発生させるように構成された信号源(12)と、
前記交流パワー信号(S(ω))を受信するように前記信号源(12)に接続され、シート状包装材(3)をヒートシールするために前記シート状包装材(3)中に電流を誘起するように動作する誘導子(13)と、
前記信号源(12)と前記誘導子(13)との間に接続されたインピーダンス整合回路(11’)と、
を含み、
前記インピーダンス整合回路(11’)は、
使用時に前記交流パワー信号を受信するように構成された一対の入力端子(11.1、11.2)と、
前記インピーダンス整合回路(11’)の前記入力端子(11.1、11.2)にそれぞれ接続された第1のライン(23)および第2のライン(24)と、
前記第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に接続された少なくとも1つの容量性モジュール(21.1−21.4)を含み、また互いに直列に接続された容量性素子(C1−C4)および制御スイッチ(SW1−SW4)を含む可変容量ステージ(21)であって、前記制御スイッチ(SW1−SW4)は、前記第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に前記容量性素子(C1−C4)を接続するように選択的に動作する可変容量ステージ(21)と、
前記制御スイッチ(SW1−SW4)の動作状態を制御するように構成された制御ステージ(22)と、
を含み、
前記制御スイッチ(SW1−SW4)は、
使用時に前記制御ステージ(22)から制御信号を受信するように構成された一対の入力端子(SWa、SWb)であって、前記入力端子(SWa、SWb)の1つ(SWb)は、前記第2のライン(24)に接続されている一対の入力端子(SWa、SWb)と、
前記容量性素子(C1−C4)を介して前記第1のライン(23)に接続された第1の電流導通端子と、前記第2のライン(24)に接続された第2の電流導通端子と、前記制御スイッチ(SW1−SW4)の前記入力端子(SWa、SWb)に接続されて前記制御ステージ(22)から前記制御信号を受信するための制御端子とを有するシングル双方向制御スイッチ素子(IGBT)と、
を含むことを特徴とする誘導シーリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記可変容量ステージ(21)は、前記第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に並列接続された複数の前記容量性モジュール(21.1−21.4)を含む前記誘導シーリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の誘導シーリング装置(10)であって、更に、
前記第1のライン(23)と第2のライン(24)との間に接続された少なくとも1つの容量性素子を含む固定容量ステージ(26)、
を含む前記誘導シーリング装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記双方向制御スイッチ素子は、パワー・トランジスタ(IGBT)と、前記パワー・トランジスタ(IGBT)に並列接続されたダイオード(D)とを含む前記誘導シーリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記パワー・トランジスタは、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)を含む前記誘導シーリング装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記制御スイッチ(SW1−SW4)は、更に、
前記制御スイッチ(SW1−SW4)の前記対の入力端子(SWa、SWb)と前記双方向制御スイッチ素子(IGBT)との間に接続されたバイアスおよびフィルタ・モジュール(27)、
を含む前記誘導シーリング装置。
【請求項7】
請求項6に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記バイアスおよびフィルタ・モジュール(27)は、前記制御スイッチ(SW1−SW4)の前記入力端子(SWa、SWb)間に直列接続された抵抗(R)およびツェナー・ダイオード(Z)と、前記ツェナー・ダイオード(Z)に並列接続されたフィルタ・ネットワーク(F)とを含み、ツェナー・ダイオード(Z)は、前記抵抗(R)を介して前記制御スイッチ(SW1−SW4)の前記第1の入力端子(SWb)に接続されたカソードと、前記制御スイッチ(SW1−SW4)の前記第2の入力端子(SWa)に接続されたアノードと、を有しており、前記抵抗(R)と前記ツェナー・ダイオード(Z)との間の中間ノードは、それぞれ対応する制御スイッチ(SW1−SW4)の前記制御端子に接続されている前記誘導シーリング装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記制御ステージ(22)は、
前記信号源(12)のインピーダンス整合を示す量を測定する、
前記量を、インピーダンス整合のそれぞれの程度を示す複数の閾値と比較する、
前記量が第1および第2の閾値(PNL、PPL)によって定義される第1の範囲内にあるとき、第1の量だけ前記可変容量ステージ(21)の容量を修正するように前記可変容量ステージ(21)の制御スイッチ(SW1−SW4)の動作状態を制御する、
前記量が前記第1の範囲外にあるとき、第1の量よりも大きい第2の量だけ前記可変容量ステージ(21)の容量を修正するように前記可変容量ステージ(21)の制御スイッチ(SW1−SW4)の動作状態を制御する、
ように構成されている前記誘導シーリング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記信号源(12)のインピーダンス整合を示す量の測定は、
前記信号源(12)によって供給される電圧と電流との間の位相の測定、
を含む前記誘導シーリング装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記第2の量は、前記第1の量の2倍である前記誘導シーリング装置。
【請求項11】
請求項8から10の何れか1項に記載の誘導シーリング装置(10)であって、前記可変容量ステージ(21)の容量は、前記量が前記第1の範囲内にあり、また第3および第4の閾値(PNS、PPS)によって決められる第2の範囲外にあるとき、前記第1の量だけ修正される前記誘導シーリング装置。
【請求項12】
ヒートシール用シート状包装材のチューブ(2)から流動食品のシールされたパッケージ(7)を連続的に製造するための包装機(1)であって、前記包装機(1)は、請求項1から11の何れか1項に記載の誘導シーリング装置(10)を含む包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【公表番号】特表2010−535677(P2010−535677A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520573(P2010−520573)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060650
【国際公開番号】WO2009/021979
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】