説明

流路ユニット、および、流路ユニットを備える画像形成装置

【課題】水平方向に吐出液を移送する管内における吐出液の沈降を解消する流路ユニットを提供する。
【解決手段】インクタンク20から、吐出ユニット30にインクを供給し、かつ循環する流路ユニットにおいて、上流側バルブ61および下流側バルブ62を閉じた印刷時における上流側主流路水平区間410aの流速よりも、上流側バルブおよび下流側バルブを開いた非印刷時の上流側主流路水平区間および下流側主流路水平区間440aの流速が速くなるように、前記各バルブ、およびポンプ50を制御する制御部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出型の画像形成装置に備えられた吐出液の循環型の流路ユニット、および、流路ユニットを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路内においてインクに含まれる成分の沈降を解消するための技術が知られている。例えば特許文献1には、インク補給管内の補給用インクを補給用インク循環管を介して補給用インク保持容器に帰還させることで、インク補給管内における顔料の沈殿や凝集の進行を軽減させ、濃度が均一なインクを補給する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−185600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルが形成されたヘッドが水平方向に複数並べて配置される場合、それらのヘッドにインクを供給する上流側の管において水平方向にインクを移送する区間が存在することが考えられる。水平方向にインクを移送する管内では、傾斜している管や鉛直方向にインクを移送する管と比較して沈降が解消されにくい。
本発明は、水平方向に吐出液を移送する管内における吐出液の沈降を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の流路ユニットは、吐出液を貯留するタンクと、タンクと接続する主流路管であって、吐出液を水平方向に移送する水平区間を含む主流路管と、主流路管から複数分岐し、それぞれが吐出液を吐出させる複数の吐出ユニットのそれぞれと接続する分岐流路管と、ポンプと、主流路管に接続するバイパス流路管と、開閉することによりバイパス流路管における吐出液の流動可否を切り替えるバルブと、バルブを閉鎖させることによりバイパス流路管を経由せずに水平区間と分岐流路管と吐出ユニットとタンクとを経由する流路において吐出液を循環させる第一制御状態と、バルブを開放させ、かつ、ポンプを動作させることによりバイパス流路管と水平区間とタンクとを経由する流路において吐出液を循環させる第二制御状態と、を切り替える制御部と、を備える。そして制御部は、第二制御状態における水平区間での吐出液の流速を、第一制御状態における水平区間での吐出液の流速よりも大きくする。
【0006】
水平区間においては、例えば鉛直方向に吐出液を移送する区間と比較すると、管内部において吐出液に含まれる個体成分であって比重が吐出液を構成する液体成分よりも大きい固体成分の沈降が解消されにくい。沈降が生じたままであると、濃度が一定でない吐出液が吐出ユニットから吐出されたり、あるいは沈降物が滞留して固形化することによって流路に詰まりが生じたりして、印刷品質が低下する。
第一制御状態は、バイパス流路管を経由させることなく水平区間と分岐流路管と吐出ユニットとタンクとを経由させる状態であって、例えば印刷実行状態が想定される。第二制御状態は、バルブを開放させ、かつ、ポンプを動作させることによりバイパス流路管と水平区間とタンクとを経由する流路において吐出液を循環させる状態である(バイパス流路と水平区間とタンク以外の流路を経由しうる状況も含む)。すなわちバルブを開放することによってバイパス流路管内を吐出液が流動可能にした状態であって、なおかつ、ポンプを動作させる状態である。ポンプの出力により水平区間における流速を上げることが可能である。また、第二制御状態は第一制御状態と比較して吐出液が流れる流路の本数が増えることから、流路全体の抵抗が小さくなり、その結果、流路内の流速を上げやすい(バルブを閉鎖した状態でポンプの出力を増加させる場合、抵抗(内圧)が上昇し、吐出ユニットからのインク漏れや管の破損等の弊害が発生しうる)。また、バイパス流路管は、吐出ユニットと接続する分岐流路管と比較すると単純な形状で構成できるため(分岐流路管は屈曲するなどして形状が複雑になりやすい)、流路抵抗を低くすることができる。なお、水平区間は主流路管に含まれる区間であり、第一制御状態と第二制御状態との双方の状態において吐出液が流動する区間である。
【0007】
本発明では、第一制御状態においても第二制御状態においても吐出液が水平に流動する水平区間での流速を、第二制御状態の方が第一制御状態の場合よりも大きくすることにより、第一制御状態よりも第二制御状態において水平区間における吐出液の沈降を解消しやすくすることができる。また、第二制御状態において流速を大きくすることにより、流路中の気泡排出性が向上し、その結果、流路内の吐出液の充填性が向上する。なお、本発明は、UVインクや、沈降が生じやすい酸化チタン含有インク,メタリックインク等を吐出液として用いる流路に適用する場合に特に有効である。
【0008】
さらに、本発明において、主流路管と分岐流路管とは、タンクから吐出ユニットに対して吐出液を供給する上流側主流路管と上流側分岐流路管と、吐出ユニットからタンクに対して吐出液を帰還させる下流側主流路管と下流側分岐流路管とを含んでおり、流路ユニットは、上流側主流路管の水平区間と接続するバイパス流路管である上流側バイパス流路管と、下流側主流路管の水平区間と接続するバイパス流路管である下流側バイパス流路管と、を備える。
この場合、上流側主流路管に含まれる水平区間や、下流側バイパス流路管に含まれる水平区間における沈降を、第二制御状態において第一制御状態よりも解消しやすくすることができる。
【0009】
さらに本発明において、制御部は、上流側バイパス流路管に備えられたバルブである上流側バルブと、下流側バイパス流路管に備えられたバルブである下流側バルブとを択一的に開放させることで、前記した第二制御状態としてもよい。
二つのバルブを択一的に開放することにより、両方を開放する場合と比較して同じポンプ出力であっても水平区間における流速を大きくすることができる。そのため、水平区間における沈降を解消しやすくすることができる。
【0010】
さらに本発明において、吐出ユニットには、吐出液を吐出させるノズルの開口が形成されたノズル面を押圧するキャップが備えられてもよい。その場合、制御部は、第二制御状態においてノズル面が押圧された場合に、第二制御状態においてノズル面が押圧されない場合よりもポンプの出力を増加させてもよい。
ノズル面がキャップによって押圧されることにより、メニスカス限界を超えるような圧力が生じる流速にしても吐出液がノズルから漏れ出ることがないため、非押圧時よりもポンプの出力を増加させて水平区間での流速を速めることができる。その結果、押圧時の方がさらに速やかに沈降を解消することができる。
【0011】
なお、本発明は、前記の吐出ユニットと流路ユニットとを備える画像形成装置の発明としても成立する。
前記した吐出ユニットと流路ユニットとを備えることにより、主流路内の沈降を解消し沈降物が滞留しにくい画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態にかかる画像形成装置を示すブロック図。
【図2】(2A)および(2B)は第一実施形態にかかる吐出ユニットを示す模式図。
【図3】第一実施形態にかかる各状態における水平区間の流速を示すグラフ。
【図4】(4A)〜(4D)は第一実施形態にかかる流路を示す模式図。
【図5】(5A)および(5B)は他の実施形態にかかる流路を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0014】
1.第一実施形態
図1は、本発明の第一実施形態にかかる画像形成装置としてのインクジェットプリンター1の主要な構成要素を示す模式図である。インクジェットプリンター1は、制御部10と、インクタンク20と、吐出ユニット30と、上流側主流路管41と、上流側分岐流路管42と、下流側分岐流路管43と、下流側主流路管44と、上流側バイパス流路管45と、下流側バイパス流路管46と、ポンプ50と、上流側バルブ61と、下流側バルブ62と、キャップ306と、を備えている。インクタンク20と吐出ユニット30と上流側主流路管41と上流側分岐流路管42と下流側分岐流路管43と下流側主流路管44と上流側バイパス流路管45と下流側バイパス流路管46とポンプ50と上流側バルブ61と下流側バルブ62とはインク(吐出液)の種類ごとに設けられる。
【0015】
制御部10は、図示しないCPUとRAMとROMとを備え、ROMに格納されている制御プログラムをCPUが実行することにより、後述するピエゾ素子やポンプやキャップやバルブの制御を行う。インクタンク20は、インクを貯留するタンクである。吐出ユニット30は水平方向に並べて複数配置されている。
【0016】
上流側主流路管41は上流側主流路410を構成している管であり、インクタンク20と接続している。複数の上流側分岐流路管42は、上流側主流路管41から下流側に分岐しそれぞれが複数の吐出ユニット30のそれぞれと接続している。上流側分岐流路管42は上流側分岐流路420を構成している。上流側分岐流路420の断面積(インクの移送方向と直交する断面の面積)は上流側主流路410の断面積よりも小さい。上流側主流路410は水平方向に配置される複数の吐出ユニット30にインクを供給するために、水平方向にインクを移送する水平区間410aを有する。
【0017】
複数の吐出ユニット30はそれぞれ下流側分岐流路管43のそれぞれと接続している。下流側分岐流路管43は下流側分岐流路430を構成している。各下流側分岐流路管43は下流側主流路管44と接続し、下流側主流路管44はインクタンク20と接続している。下流側主流路管44は下流側主流路440を構成している。下流側主流路440は、水平方向に配置された複数の吐出ユニット30と接続する下流側分岐流路430のそれぞれと合流するために、水平方向にインクを移送する水平区間440aを有する。下流側分岐流路430の断面積は下流側主流路440の断面積よりも小さい。
【0018】
吐出ユニット30から吐出されなかったインクは下流側分岐流路430と下流側主流路440を経てインクタンク20に帰還する。すなわち本実施形態においては、インクに含まれる個体成分であって、比重がインクを構成する液体成分よりも大きい固体成分が流路内において沈降することを防止するために、インクが循環するように循環流路が構成されている。
【0019】
上流側バイパス流路管45は、その上流側において上流側主流路管41の水平区間410aと接続し、下流側においてインクタンク20と接続している。上流側バイパス流路管45は上流側バイパス流路450を構成している。上流側バイパス流路管45には、上流側バイパス流路450におけるインクの流動可否を切り換える上流側バルブ61が設けられている。下流側バイパス流路管46は、上流側において上流側主流路管41と接続し、下流側において下流側主流路管44の水平区間440aと接続している。下流側バイパス流路管46は下流側バイパス流路460を構成している。下流側バイパス流路管46には、下流側バイパス流路460におけるインクの流動可否を切り換える下流側バルブ62が設けられている。上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460の断面積は分岐流路420,430の断面積よりも大きい。また、上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460は、吐出ユニット30と接続する必要がないため上流側分岐流路420や下流側分岐流路430と比較して単純な形状で構成することができる。そのため、分岐流路420,430等と比較して流路内抵抗が低い。上流側バルブ61と下流側バルブ62は、制御部10からの制御信号に応じて上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460を開放または閉鎖する電磁弁である。
【0020】
ポンプ50は、インクタンク20からインクを吸引し、上流側主流路管41にインクを移送し流路内のインクを循環させることができる。ポンプ50は、制御部10の制御に応じて出力すなわち流量を可変にすることができる。
制御部10とインクタンク20と上流側主流路管41と上流側分岐流路管42と下流側主流路管44と下流側分岐流路管43と上流側バイパス流路管45と下流側バイパス流路管46とポンプ50と上流側バルブ61と下流側バルブ62とが、流路ユニットに相当する。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、吐出ユニット30の模式図である。吐出ユニット30には共通インク室305が形成されており、共通インク室305は上流側分岐流路420と下流側分岐流路430とに接続している。また、吐出ユニット30には複数のノズル302が形成されており、各ノズル302はノズル面301に開口を形成している。ピエゾ素子303とインク室304とは、ノズル302ごとに設けられている。各インク室304は共通インク室225に接続している。上流側主流路410と上流側分岐流路420と下流側主流路440と下流側分岐流路430と上流側バイパス流路450と下流側バイパス流路460と共通インク室305とインク室304とはインクタンク20から供給されたインクで満たされている。ピエゾ素子303に駆動電圧パルスが印加されるとピエゾ素子303が機械的に変形し、インク室304に満たされたインクが加減圧されノズル302からインク滴が吐出される。
【0022】
印刷実行状態においては、吐出ユニット30がインク滴を吐出することによりインクタンク20からインクが吸引されるとともに、ポンプ50によってもインクタンク20からインクが吸引され、上流側主流路410にインクが移送される。また吐出ユニット30にはキャップ306が備えられている。キャップ306は、インクジェットプリンター1の非印刷実行時(例えばイニシャライズ動作時やメンテナンス動作時)にノズル面301に密着しノズル面301を押圧する(図2B参照)。各吐出ユニット30には、ノズル面301をキャップ306で押圧し、また、キャップ306をノズル面301から離間させ待避位置に戻すための図示しない機構が備えられている。制御部10からの制御信号に従ってキャップ機構は前述の動作を実施することができる。
【0023】
次に、印刷実行状態(第一制御状態)と非印刷実行状態(第二制御状態)とにおける制御部10の制御について説明する。非印刷実行状態における水平区間410a,440aの流速が印刷実行状態における同区間の流速よりも大きくなるようにポンプ50やバルブ61,62の制御が行われる。本実施形態では、印刷実行状態のうち基準印刷時(詳細は後述する)における水平区間410a、440aの流速を基準にする。
【0024】
基準印刷とは、ポンプ50の出力を停止させた状態で所定印刷速度および所定記録密度でドットを印刷媒体に記録することを指す。ポンプ50のポンプ機能が停止していても、ピエゾ素子303からインク滴が吐出されることで、インクタンク20からインクが吸引される。印刷速度とは、単位時間あたりに印刷する領域の面積を意味する。所定印刷速度は、画像形成装置が実現しうる最高速度であってもよいし平均速度などであってもよい。記録密度は、インク滴の大きさや単位面積あたりのドット数によって規定することができる。所定記録密度は、画像形成装置が実現しうる最高密度であってもよいし平均密度などであってもよい。本実施形態において、基準印刷とは、インクジェットプリンター1が実現しうる最速の印刷速度および最高密度で印刷し、任意の広さの領域を一つのインク色で塗りつぶすように印刷することを指す。なお、水平区間410a,440aにおける流速は、例えば管を貫通するようなマイクロ波を上流側主流路管41や下流側主流路管44に放射してインク液中の粒子の移動速度を測定することで取得することができる。あるいは流量センサーを用いて単位時間あたりの流量を取得し、当該流量と主流路410,440の断面積とから流速を取得することもできる。
【0025】
図3は、各状態における水平区間の流速を示すグラフである。基準印刷時の水平区間410aまたは水平区間440aの流速を基準流速と呼ぶ。基準印刷時に対して通常印刷時は、ピエゾ素子303のポンプ機能に加えて補助的にポンプ50のポンプ機能を用いる。通常印刷時は印刷画像データによって吐出される量が一定ではないので、ピエゾ素子によるポンプ機能だけでは水平区間の流速も変動しうる。そこで制御部10は、ピエゾ素子の吐出動作に起因する一定でない流速を、ポンプ50のポンプ機能で可変に補うことによって、水平区間の平均的な流速が基準流速となるようにポンプ50を制御する。印刷実行状態に対して非印刷実行状態(例えば通常印刷が始まる前のイニシャライズ動作時や、メンテナンス動作時等であって、ノズル302からインク滴が吐出されない状態の場合)には、制御部10はポンプ50の出力値と後述するバルブの開閉とキャップによって水平区間での流速が、印刷実行状態における水平区間の流速(すなわち基準流速)より大きくなるように各部を制御する。
【0026】
図4は、図1に示す流路を示す模式図である。図4Aは印刷実行状態(第一制御状態)におけるインクの流路を示している。制御部10は通常印刷時(図3の通常印刷時に対応)においては、上流側バルブ61と下流側バルブ62の両方を閉鎖した状態でピエゾ素子303と補助的にポンプ50を作動させる。したがって図4Aに示すように、上流側バイパス流路450と下流側バイパス流路460にはインクは流れない。インクはインクタンク20から上流側主流路410と上流側分岐流路420を経由して吐出ユニット30に供給され、ノズルから吐出される。吐出されなかったインクは下流側分岐流路430と下流側主流路440を経由してインクタンク20に帰還する。水平区間の平均的な流速が基準流速と同等となるようにポンプ50の出力が制御される。なお、ポンプ50の制御については、具体的には例えば、図3に示す各流速とするためにポンプ50に与える情報と各場面との対応関係を規定したデータが予めROM等に記憶されており、制御部10はそのデータを用いて各場面においてポンプ50の出力を制御する。制御部10はその情報を用いて各状態においてポンプ50の出力を制御する。ポンプ50に与える情報は例えば、電圧値や、ポンプが備える回転体の回転数等である。
【0027】
図4B〜図4Cは非印刷実行状態(第二制御状態)におけるインクの流路を示している。制御部10は非印刷実行時においては、キャップ306をノズル面301に押圧させた状態(図3の押圧時に対応)で、上流側バルブ61と下流側バルブ62とを択一的に開放してポンプ50を作動させる。本実施形態においては、非印刷実行状態における水平区間410a,440aにおける流速が、印刷実行状態における同区間の流速(すなわち基準流速)より大きくなるようにポンプ50が制御される。
【0028】
図4Bは上流側バルブ61を開放し下流側バルブ62を閉鎖した状態を示している。この場合インクは下流側バイパス流路460には流れない。また、インクタンク20に接続する上流側バイパス流路450に設けられた上流側バルブ61が開放されることによって、インクは、吐出ユニット30を経由する経路よりも抵抗の小さい経路である上流側バイパス流路450を経由してインクタンク20に帰還するため、上流側分岐流路420,吐出ユニット30,下流側分岐流路430,下流側主流路440においてインクはほぼ流動しない。
【0029】
図4Cは下流側バルブ62を開放し上流側バルブ61を閉鎖した状態を示している。この場合インクは上流側バイパス流路450には流れない。インクは、吐出ユニット30を経由する経路(上流側主流路410,上流側分岐流路420,吐出ユニット30,下流側分岐流路430)よりも抵抗の小さい下流側バイパス流路460,下流側主流路440を経由してインクタンク20に帰還する。上流側主流路410,上流側分岐流路420,吐出ユニット30,下流側分岐流路430においてインクはほぼ流動しない。
【0030】
このように非印刷実行状態にバイパス流路に設けられたバルブを択一的に開放する場合は両方のバルブを開放する場合と比較して、同じポンプ出力であっても上流側主流路410や下流側主流路440の流速を大きくすることができる。そのため、水平区間410aや水平区間440aの流速も大きくすることができ、水平区間440aや水平区間410aにおける沈降を解消しやすい。キャップ306によるノズル面301の押圧時には、メニスカス限界を超えるような圧力が生じる流速にしてもインクがノズル302から漏れ出ることがないため、非押圧時よりもポンプの出力を増加させて水平区間での流速を速めることができる。その結果、押圧時の方がより沈降を速やかに解消しやすい。
【0031】
なお、非印刷実行状態において制御部10は、キャップ306でノズル面301を押圧した状態で、両方のバルブを開放するようにしてもよい。両方のバルブを開放する場合は図4Dに示すように、上流側分岐流路420,吐出ユニット30,下流側分岐流路430を経由する経路より抵抗の小さい上流側バイパス流路450と下流側バイパス流路460をインクが流れる。したがってインクタンク20から吸引されたインクは上流側主流路410,上流側バイパス流路450,下流側バイパス流路460,下流側主流路440を経由してインクタンク20に帰還する。この場合、水平区間410aや水平区間440aにおける流速を大きくするために、バルブを択一的に開放する場合よりも制御部10はポンプ50の出力を増加させてもよい。
【0032】
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。図5は他の実施形態にかかる流路を示す図である。同図に示すような構成の流路であってもよい。図5の流路は、インクタンク20に接続する主流路管が構成する主流路(上流側主流路410,下流側主流路440)と、当該主流路管に接続し複数の吐出ユニット30のそれぞれに接続する複数の分岐流路管が構成する分岐流路(上流側分岐流路420,下流側分岐流路430)と、主流路に接続するバイパス流路管が構成するバイパス流路470によって構成されている。バイパス流路470にはバルブ63が備えられ、主流路にはポンプ50が備えられている。制御部10が印刷実行時においてバルブ63を閉鎖することによって吐出ユニット30にインクを供給することができる。インクの循環経路は、インクタンク20,上流側主流路410,上流側分岐流路420,吐出ユニット,下流側分岐流路430,下流側主流路440,インクタンク20である。非印刷実行時において制御部10はキャップ306をノズル面301に押圧させバルブ63を開放し、ポンプ50の出力を増加させる。そうするとインクはバイパス流路470の方を流れ、分岐流路420,430と吐出ユニット30を経由しない。この結果、水平区間410aおよび水平区間440aの流速を印刷実行時よりも速くすることができ、沈降を解消しやすくすることができる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、非印刷実行時においてキャップ306によってノズル面301を押圧してポンプ50の出力を増加させて流速を大きくしていたが、メニスカス限界を超えない圧力となる流速までであればキャップ306によってノズル面301は押圧されていなくてもよい(図3の非押圧時に対応)。
【0034】
また、前記実施形態では、第二制御状態(非印刷実行状態)の例として、通常印刷前のイニシャライズ動作時や、メンテナンス動作時を挙げたが、それらに限らない。複数のインクのうち、例えば、プリンター全体としては印刷動作時であっても、使用していないインク(インク滴を吐出していないインク)がある場合、その使用していないインクに関しては非印刷実行状態であるとして、制御部10は上述したような上流側バルブ61や下流側バルブ62の開閉制御やポンプ50の出力制御やキャップの制御を行っても良い。
なお、本明細書において、「AとBとを経由する」という記述は、AとB以外の経路も経由しうる状況を含んでいる。
【符号の説明】
【0035】
1:インクジェットプリンター、10:制御部、20:インクタンク、30:吐出ユニット、41:上流側主流路管、42:上流側分岐流路管、43:下流側分岐流路管、44:下流側主流路管、45:上流側バイパス流路管、46:下流側バイパス流路管、50:ポンプ、61:上流側バルブ、62:下流側バルブ、63:バルブ、301:ノズル面、302:ノズル、303:ピエゾ素子、304:インク室、305:共通インク室、306:キャップ、410:上流側主流路、410a:水平区間、420:上流側分岐流路、430:下流側分岐流路、440:下流側主流路、440a:水平区間、450:上流側バイパス流路、460:下流側バイパス流路、470:バイパス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出液を貯留するタンクと、
前記タンクと接続する主流路管であって、前記吐出液を水平方向に移送する水平区間を含む主流路管と、
前記主流路管から複数分岐し、それぞれが前記吐出液を吐出させる複数の吐出ユニットのそれぞれと接続する分岐流路管と、
ポンプと、
前記主流路管に接続するバイパス流路管と、
開閉することにより前記バイパス流路管における前記吐出液の流動可否を切り替えるバルブと、
前記バルブを閉鎖させることにより前記バイパス流路管を経由せずに前記水平区間と前記分岐流路管と前記吐出ユニットと前記タンクとを経由する流路において前記吐出液を循環させる第一制御状態と、前記バルブを開放させ、かつ、前記ポンプを動作させることにより前記バイパス流路管と前記水平区間と前記タンクとを経由する流路において前記吐出液を循環させる第二制御状態と、を切り替える制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第二制御状態における前記水平区間での前記吐出液の流速を、前記第一制御状態における前記水平区間での前記吐出液の流速よりも大きくする、
流路ユニット。
【請求項2】
前記主流路管と前記分岐流路管とは、前記タンクから前記吐出ユニットに対して前記吐出液を供給する上流側主流路管と上流側分岐流路管と、前記吐出ユニットから前記タンクに対して前記吐出液を帰還させる下流側主流路管と下流側分岐流路管とを含み、
前記上流側主流路管の前記水平区間と接続する前記バイパス流路管である上流側バイパス流路管と、
前記下流側主流路管の前記水平区間と接続する前記バイパス流路管である下流側バイパス流路管と、を備える、
請求項1に記載の流路ユニット。
【請求項3】
前記制御部は、前記上流側バイパス流路管に備えられた前記バルブである上流側バルブと、前記下流側バイパス流路管に備えられた前記バルブである下流側バルブとを択一的に開放させて前記第二制御状態とする、
請求項2に記載の流路ユニット。
【請求項4】
前記吐出ユニットには、前記吐出液を吐出させるノズルの開口が形成されたノズル面を押圧するキャップが備えられ、
前記制御部は、前記第二制御状態において前記ノズル面が押圧された場合に、前記第二制御状態において前記ノズル面が押圧されない場合よりも前記ポンプの出力を増加させる、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の流路ユニット。
【請求項5】
前記吐出ユニットと、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の流路ユニットと、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152972(P2012−152972A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12660(P2011−12660)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】