説明

流路内の種を分析するための非感熱液状媒体

【課題】流路内の種の分離、分析もしくは精製のための非感熱液状分離媒体として特に有利であるポリマー群の使用を提案する。
【解決手段】本発明は、流路内で種を分析、精製もしくは分離するための、いくつかのポリマーセグメントからなる少なくとも1つのポリマーを含む、非感熱性の液状媒体に関する。本発明は、該ポリマーが不規則なブロックコポリマーもしくは不規則な櫛様ポリマー型であり、異なる化学的もしくは位相的性質を有するポリマーセグメント間で平均して少なくとも3つの接合点を有することに特徴づけられる。さらに本発明は、非感熱性の分離媒体を用いて種を分析、精製もしくは分離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「分離媒体」(“separating medium”)として知られる流体において種(species)を移行することが必要である方法により、種を分析、分離および精製する方法の領域に関する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの寸法がサブミリメートル、そして通常20μm〜200μmである流路(channels)もしくは細管(capillaries)(ここでは、以下、微小流路(microchanneles)という)内で種を分離するのに適した分離媒体を提案することに特に関する。本発明は、とくに、細管電気泳動、クロマトグラフィー、または微小流路において使用されるいかなる方法(細管電気泳動および細管クロマトグラフィー、微小流体系、ならびに「チップ実験室」(“chip laboratories”))によっても、生物学的巨大分子(biological macromolecules)を分離もしくは分析する方法に関する。
【0003】
以下に、「微小流体系」(“microfluid system”)という表現は、流体および/または流体に含まれる種が、少なくとも1つの寸法がサブミリメートルである流路もしくは一連の流路内で移動される系をいい、そして「細管電気泳動(CE)」(“capillary electrophoresis(CE)”)は種の輸送が電場の作用により行なわれる微小流体系をいう。
【0004】
CEおよび微小流体系は従来のゲル電気泳動法よりも高い分離能(resolutions)で比較的速い分離を可能にし、対流防止(anticonvective)媒体を必要とせず、そしてそれらの性質は液状媒体中でイオン分離を実施するのに広く使用されている。現在では、CEにより実施される生物学的な巨大分子の分離の大多数は、必要なときはいつでも置換され得る利点を有する、結合された線状水溶性ポリマーの分離能を用いる。
【0005】
多くの非架橋ポリマーが、流路内、特に細管電気泳動において、種を分離するための媒体として提案されている。所定の用途のための最良の選択はいくつかのパラメータに依存する。たとえば、それらのサイズに応じて被検体の分離のために、媒体が十分に抵抗性の位相的障害物を被検体に与えることが必要である(Viovyら、Electrophoresis,1993,14,322)。これは高度に結合され、そして比較的粘性のある分離媒体を含む。さらに、分離媒体中に存在するポリマーは被検体との引力相互作用を受けないことが必要である。この理由はこの種類の相互作用はある被検体の減速およびさらなる分散をもたらすからである(H.Zhouら、HPCE 2000,Saarbrucken 20〜24/2/2000)。このように、DNA塩基配列決定について、またはタンパク分離について、マトリックスがもっと疎水性を有すると不十分な結果が得られることがよく知られている。
【0006】
さらに、分離媒体としてコポリマーを使用することが文献で提案されている。MenchenのWO94/07133において、細管電気泳動における分離媒体として、「規則的」(“regular”)といわれるブロックコポリマー型のコポリマーを含む媒体を使用することが提案されている。それらはポリマー間に重複濃度よりも高い濃度で、選ばれた本質的な均一な長さの親水性セグメントならびに多数の規則的に間隔をおかれた疎水性セグメントを有するので「規則的」である。これらの媒体はせん断を低下させる(shear−thinning)利点を有する。すなわち、それらは、高圧下で細管に導入され得るが、同時に外部圧力なしで固体位相障害物を示す。不幸にも、この原理にもとづいて使用され得る媒体は合成するのが困難であり、そのことはそれらを高価にし、意図され得る構造の型を制限する。さらに、これらのポリマーは比較的疎水性であり、たとえばDNA塩基配列決定のためにそれらの性能品質は並みである。
【0007】
さらに、分離媒体として感熱媒体を使用することも提案され、その粘度は温度の増加時に大いに変化する。この種類の媒体は、低粘度の状態での第1の温度で細管に該媒体を注入すること、ならびにゲル電気泳動(特にアガロースを用いる)で通常実施されるように、良好な分離効率を示す比較的高い粘度の状態での第2温度で分離することを可能にする利点を有する。特許出願WO94/10561およびWO95/30782は、温度を上昇させることによりもっと容易な注入を可能にする媒体を特に提案する。事実上、該特許出願は、高温で容積を減少させ(低粘度の不連続粒子の希釈溶液をもたらす)、そして低温で膨潤して分離流路を完全に充たす(このように媒体にゲル性と良好な分離性能を付与する)ことが可能なミクロゲルを本質的に記載する。特許出願WO98/10274自体は、少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む分子分離媒体を提案し、それは第1の温度で溶液であり、第2の温度でゲル型状態である。記載される媒体は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン(POE−POP−POE)族、もっと具体的にはPOE99−POP69−POE99(指数は各ブロックのモノマー数を示す)(商標「Pluronic F127」)の、低分子量(典型的には20,000未満)のトリブロックポリマーを含む。低温で、トリブロック系の末端の2つのPOEセグメントは水溶性であり、そして、コポリマーの低分子量を付与され、その溶液は高濃度まで比較的非粘性である。温度を約15〜25℃上昇させることにより、中央のPOPセグメントはもっと疎水性になり、そしてこれらのポリマーは会合してゲル型状態になる。しかし、このメカニズムは電気泳動においていくつかの難点を示す。第1に、それは15g/100mLもしくは20g/100mLより大きい、高いポリマー濃度でのみ、良好な電気泳動分離特性を与え、それは高い摩擦および長い移行時間をもたらす。さらに、温度の変化速度の関数としての特性の依存は結果の再現性をランダムにする。最後に、多くの用途および多くの装置について、流路の充填段階および分離段階の間で温度を変化させることは不都合、もしくは不可能でさえある。
【0008】
Modabhushiの米国特許第5,552,028、WO95/16910およびWO95/16911において、さらに、スクリーニング媒体、および壁吸着特性を有するポリマー(2置換アクリルアミドポリマー型で、5,000〜1,000,000の分子量を有する)からなる表面相互作用成分を含む分離媒体を使用することも提案されている。これらのマトリックス、もっと具体的にはポリジメチルアクリルアミド(PDMA)は、電気浸透を低下し、ある用途で、たとえば塩基配列決定で、良好な分離特性をもたらすことを可能にする。しかし、それらは比較的疎水性であり、ある用途、たとえばDNA塩基配列決定についてその性能の質を制約し、そして他の用途、たとえばタンパク分離について、もっと有害でさえある。さらに、それらは遅い分離をもたらす。
【0009】
したがって、数多くの研究および提案されたシステムにもかかわらず、コスト、分離効率、壁との相互作用の低減、および使用の便利さの種々のすべての観点に最適な媒体は、上述のすべての用途については現時点では入手し得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、流路内の種の分離、分析もしくは精製のための非感熱液状分離媒体として特に有利であるポリマー群の使用をまさに提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
さらに詳しくは、本発明の主題は、流路内の種を分析、精製もしくは分離するための非感熱液状媒体であり、いくつかのポリマーセグメントからなる少なくとも1つのポリマーを含み、該ポリマーは不規則ブロックコポリマー型または不規則な櫛型(comb)ポリマー型であり、そして異なる化学的もしくは位相的(topological)性質のポリマーセグメントの間に設けられた平均して少なくとも3つの接合点を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】不規則な序列ブロックコポリマーの概略図。太線は1種類の化学的性質に相当し、そして細線はもう1つの種類の化学的性質に相当する。
【図1b】不規則な、櫛型ポリマーの概略図。太線は1種類の化学的性質に相当し、そして細線はもう1つの種類の化学的性質に相当する。
【図1c】不規則な、櫛型コポリマーの概略図。太線は1種類の化学的性質に相当し、そして細線はもう1つの種類の化学的性質に相当する。
【図2】未処理細管、および分離媒体として、Na TAPS 100mM、EDTA 2mM、尿素緩衝液7Mを用いて(そこではポリアクリルアミド型の市販ホモポリマー(分子量700,000〜1,000,000)5%が溶解される)、ABI310機械(Perkin Elmer)で50℃において得られる、Pharmacia Biotech50〜500bpサイザーの分離を示す、対照の電気泳動図。種々のピークに相当するDNAサイズは塩基数として図に示される。
【図3】BE Biosystemsから市販の分離媒体「POP6」で、図2における同一の条件下での分離を示す、対照の電気泳動図。
【図4】Na TAPS 100mM、EDTA 2mM、尿素7Mの分離媒体(そこでは例2に記載されるP(AM−PDMA)−2 櫛型コポリマー5%が溶解される)を用いて、図2におけるのと同一の条件下での分離を示す電気泳動図。種々のピークに相当するDNAサイズは塩基数として図に示される。
【図5】分離媒体として以下のものを用いて、ABI310機械(Perkin−Elmer)で50℃において得られる1塩基〜500塩基で異なるピーク間で計算される分離能の比較: a:PE Biosystemsから市販の分離媒体「POP6」. b:Na TAPS 50mM、EDTA 2mM、尿素緩衝液7M、そこでは線状アクリルアミド(分子量700,000〜1,000,000)5%が溶解されている。 c:同一の緩衝液、そこでは本発明による不規則ブロックコポリマーである例2に記載されるP(AM−PDMA)−2が5%溶解されている。
【図6】線状アクリルアミド(LPA)の、ならびに本発明によるコポリマーである、例2により調製されたポリ(AM−PDMA)−1、例4により調製されたポリ(AM−PDMA)−2、および例5により調製されたポリ(AM−PDMA)−3の3%溶液の粘度。
【図7】線状アクリルアミド(LPA)の、市販ポリマー(POP5)の、ならびに本発明によるコポリマーである、例2により調製されたポリ(AM−PDMA)−1、例4により調製されたポリ(AM−PDMA)−2、および例5により調製されたポリ(AM−PDMA)−3の3%および5%での溶液における、DNA電気泳動分離時に得られる分離能。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的のために、「ポリマー」(“polymer”)という用語は一連の巨大分子からなり、そしてある特性、たとえば分子量、多分散性、化学組成およびミクロ構造により特徴づけられる生成物を示す。多分散性はこの分野で親しまれている質量平均の意味で、巨大分子の分子量分布を特徴づける。「ミクロ構造」(“microstructure”)という用語は、巨大分子の化学組成の一部を形成するモノマーが巨大分子内で配置される仕方を意味する。
【0014】
本発明によれば、「液体」(“liquid”)という用語は、「ゲル」(“gel”)とは対照的に、それがニュートン流体か粘弾性かで、以下のことが可能である、いかなる濃縮された媒体をも意味する。
【0015】
本発明において、2官能もしくは多官能架橋剤の存在下でモノマーの共重合から得られるゲルは本発明の範囲から除かれる。この理由は、それらの架橋状態を与えられると、それらのゲルは固体もしくは弾性があり、したがって液体ではないからである。特に、それらは細管への導入に適さない。
【0016】
本発明による液状媒体は非感熱性である。すなわち、それはその固化点+10℃と沸点−10℃の間で粘度の急激な変化を示さない。「急激な変化」(“sudden change”)は20℃以下の温度範囲にわたってファクター2以上の変動を意味する。
【0017】
本発明の目的のために、「分離方法」(“separation method”)という表現は試料中に含まれる種のすべてもしくはいくつかを分離、精製、同定もしくは分析するいかなる方法も包含する。この場合、液体は「分離媒体」(“separating medium”)といわれ、それにより、分離プロセスの過程で分離される種、もしくは少なくともそれらのいくらかを通過させる。
【0018】
「種」(“species”)という用語は、粒子、細胞小器官もしくは細胞、分子もしくは巨大分子、そして特に生物学的巨大分子、たとえば核酸(DNA,RNAもしくはオリゴヌクレオチド)、合成もしくは化学修飾により得られる核酸類縁体、タンパク、ポリペプチド、グリコペプチドおよび多糖類を示すのが通常である。分析的方法において、該種は通常「被検体」(“analytes”)といわれる。
【0019】
本発明は界面動電(electrokinetic)分離法の場合に特に有利である。
「界面動電分離」(“electrokinetic separation”)という用語は、電場の作用により媒体中で種を移行させることにより混合物中に含まれる種のすべて、もしくはいくらかを分離するいかなる方法も包含するものである。それは、たとえば電気クロマトグラフィーにおいて、媒体自体の変位により、またはミセル電気クロマトグラフィーの場合にミセルのような会合種の変位により、または直接もしくは間接的作用の組み合わせにより、電場が直接的もしくは間接的に電解液へのモータ作用を及ぼすかどうかにかかわらない。電場の該作用が非電気源のもう一つのモータ作用に結合されるいかなる分離法も本発明による界面動電分離と考えられる。したがって、「チップ」(“chips”)の細管電気泳動もしくは電気泳動は、「界面動電」(“electrokinetic”)といわれる。
【0020】
有利には、特に界面動電の場合には、液体は電解質からなる。
本発明の目的のために、「電解液」(“electrolyte”)という用語はイオンを伝導し得る液体をいう。最も一般的には、この媒体は緩衝された水性媒体、たとえばリン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ホウ酸塩、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、ヒスチジン、リジン等にもとづく緩衝液である。電気泳動で使用され得る緩衝液の数多くの例は当業者に知られており、そしてそれらの多くは、Sambrookらの「Molecular Cloning:a laboratory manual」(Cold Spring Harbor Lab,New York,1989)に記載されている。しかし、いかなる種類の電解液も本発明に関して使用され得、特に水性−有機溶媒、たとえば水−アセトニトリル、水−ホルムアルデヒドもしくは水−尿素混合物、または極性有機溶媒、たとえば例としてN−メチルホルムアミドである。かなりの割合の尿素および/またはホルムアミドを含むアルカリ性pHでの水性緩衝液からなる「配列決定緩衝液」(“sequencing buffer”)電解液は本発明に関して特に有用である。
【0021】
「流路」(“channel”)という用語は、1つ以上の固体壁により境界づけられるいかなる容積をも示し、少なくとも2つのオリフィスを有し、流体を含み、またはそれを流体が通過するように意図されている。
【0022】
本発明は少なくとも1つの流路を含む系で特に有利であり、その少なくとも1つの寸法はサブミリメートルであり、たとえば細管界面動電分離系、微小流体系、そしてもっと一般的には微小流路(microchannels)を用いて種を分離するための系である。
【0023】
好適な変形により、本発明は、少なくとも4つの接合点、好ましくは4〜100の接合点数、もっと好ましくは4〜40の接合点数を平均で有するポリマーを含む溶液を、液体分離媒体として使用することに関する。
【0024】
「接合点」(“junction point”)は、たとえばブロックコポリマーの場合に、著しく異なる化学的性質を有する両方の2つのポリマーセグメントを結合する点、またはたとえば櫛型ポリマーの場合に、同一もしくは異なる化学的性質を有する2つより多いポリマーセグメントの間の架橋点を意味する。例として、3つの側枝を有する櫛型ポリマーは3つの接合点および7つの別個のポリマーセグメントを有する。同様に、A−B−A−B型の序列ブロックコポリマーは3つの接合点および4つの別個のポリマーセグメントを有する。
【0025】
本発明の目的のために、「ポリマーセグメント」(“polymer segment”)および「セグメント」(“segment”)という用語は、線状で共有結合して一緒に結合され、そして所定の種類の化学的組成に属する、すなわち、特に溶媒和、固体壁との相互作用、ある分子への特異的親和性、もしくはそれらの特性の組み合わせに関して、特定の全体的物理化学的性質を有するような一連のモノマーをいう。
【0026】
本発明のためにポリマーセグメントの例は、すべてが同一であるモノマーのコポリマー(ホモポリマーセグメント)内の、または2,3よりも多いモノマーの距離にわたって有意の組成相関を有さないコポリマー(ランダムコポリマー型のセグメント)内の配列により与えられる。本発明によるポリマーはいくつかの「異なる」ポリマーセグメントから構成される。化学的性質および/または位相、すなわちたとえば側枝に相対する骨格等の互いに関連するセグメントの空間分布において異なる2つのポリマーセグメントは、本発明の目的のため異なる。
【0027】
第1の好適な変形によれば、本発明によるポリマーは不規則なブロックコポリマー型である。
【0028】
本発明の目的のために、「ブロックコポリマー」(“block copolymer”)は、共有結合的に一緒に結合された、いくつかのポリマーセグメントからなり、そして少なくとも2つの異なる種類の化学組成に属するコポリマーをいう。このように、線状ブロックコポリマー内の2つの隣接するポリマーセグメントは、必然的に有意に異なる化学的性質を有する。ブロックコポリマーは、各セグメントが同一組成で同一サイズのホモポリマーのものに匹敵する物理化学的性質、特に溶媒和を、分離媒体内で有するのに十分な数のモノマーを含むという事実により定義される。これは、種々の種類のモノマーが本質的にランダムな順序で互いに続き、そして考慮中のそれぞれの種のホモポリマーのものとは位置的にすべてにわたって異なる性質を鎖に与えるようなランダムコポリマーと対比される。このブロック特性を得るのに要求されるホモポリマーセグメントのサイズは、モノマーおよび電解液の種類に応じて変動し得るが、該セグメントの骨格に沿う数十の原子であるのが通常である。ある大きさで、物理化学的性質、特に溶媒和に有意の変動をセグメント毎に生じるに十分な化学組成の差異を有するポリマーセグメントを該ブロックコポリマー内で区別することが可能である限り、本発明の意味の範囲内で、セグメント自体のすべてもしくはいくつかがランダム型のコポリマーからなるブロックコポリマーを製造することが可能であることを留意すべきである。特に、本発明の意味における「ポリマーセグメント」として考慮されるために、ポリマーの一部は骨格に沿って少なくとも10原子を含まなければならない。
【0029】
この変形の1つの好適な態様にしたがって、本発明によるポリマーは不規則な序列のブロックコポリマー型である。
本発明の目的のために、「序列ブロックコポリマー」は、少なくとも2つの化学的種類に属し、線状に一緒に結合されているポリマーセグメントからなるブロックコポリマーを意味する。
【0030】
第2の好適な変形によれば、本発明によるポリマーは不規則な櫛型ポリマー型である。
【0031】
本発明の目的のために、「櫛型ポリマー」(“comb polymer”)という用語は、ある化学的性質の線状骨格および同一もしくは異なる化学的性質を有する「側枝」(“side branches”)として知られるポリマーセグメントを有するポリマーを示し、そのセグメントは線状であるが骨格より有意に短かく、そしてそれらの末端の1つにより該骨格に共有結合的に結合されている。櫛型ポリマーにおいて、骨格を構成するポリマーセグメントおよび側枝を構成するポリマーセグメントは位相的性質を異にする。もし櫛型ポリマーの側枝を構成するポリマーセグメントと骨格を構成するポリマーセグメントも化学的性質が異なると、そのポリマーは「櫛型ポリマー」の特徴と「ブロックコポリマー」の特徴を同時に有する。「櫛型コポリマー」として知られるこのようなポリマーは、一連の(a subset of)櫛型ポリマーを構成し、そしてもちろん本発明に関して使用され得る。
【0032】
いうまでもなく、本発明により媒体中でブロックコポリマーと櫛型ポリマーを組み合わせて使用することも期待され得る。
【0033】
本発明によるポリマー中に存在する所定の化学的もしくは位相的種類のポリマーセグメントの数は平均値として理解され、それは該数においてある多分散性を有する多数の分子の集団の事項であると理解される。
【0034】
本発明の説明において、他に言及がなければ、すべての分子量、およびすべての鎖もしくはすべてのポリマーセグメントについてのすべての平均値、たとえば平均分子量、もしくは骨格に沿った平均原子数、接合点の数、もしくは櫛型ポリマーの場合におけるグラフトの平均数は、ポリマー物理学における通常の意味の範囲での質量平均として理解される。
【0035】
本発明により考慮中のすべてのポリマー、すなわちブロックコポリマーもしくは櫛型ポリマーは、不規則型である有利な特徴をさらに有し、すなわち、その組成の1部を形成する少なくとも1種類の化学的もしくは位相的性質を有するすべてのセグメントは少なくとも1.5、そして好ましくは1.8より大きい多分散性を有する。
【0036】
本発明によるポリマーの組成の1部を形成する1種類のポリマーセグメントの多分散性は、該ポリマーの組成の1部を形成するこの種類のすべてのセグメントに引継がれる、該セグメントの分子量の平均値(ポリマー物理化学の通常の意味における質量平均)であると理解される。
【0037】
不規則な櫛型ポリマーの1つの好適な変形は、少なくとも1.5の、そして好ましくは1.8より大きい側枝の多分散性を示すことにある。
【0038】
不規則な櫛型ポリマーのもう1つの好適な変形は、少なくとも1.5の、そして好ましくは1.8より大きい、2つの側枝の間に含まれる骨格のセグメントの多分散性を示すことにある。
【0039】
もう1つの好適な態様において、本発明によるポリマー組成の1部を形成する化学的もしくは位相的性質の種類を有するそれぞれのセグメントは、少なくとも1.5の、そして好ましくは1.8より大きい多分散性を示す。
1つの好適な態様によれば、本発明によるポリマーの多分散性は1.5より大きく、そして好ましくは1.8より大きい。
【0040】
本発明により媒体中で使用される櫛型ポリマーもしくはコポリマー中に存在する異なるポリマーセグメントの長さおよび数、ならびにその化学的性質は、本発明に関して有意に変動し得、そして該媒体の性質は、実施例の説明でさらに詳しく示されるように、所望の用途に依存して広く変動され得る。
【0041】
1つの好適な態様によれば、本発明によるポリマーは、50,000より大きい、好ましくは300,000より大きい、もっと好ましくは1,000,000より大きい、そしてなお好ましくは3,000,000より大きい分子量(質量平均)を有する。
【0042】
1つの好適な態様によれば、本発明による該ポリマーは該流路の壁に対して分離媒体内で有意の親和性を示す。
【0043】
特に好適な1態様は、本発明によるポリマー中に、壁に対して特異的な親和性を分離媒体中で示す少なくとも1種類のポリマーセグメント、および該媒体中で壁に対してほとんどもしくは全く親和性を示さない少なくとも1種類のポリマーセグメントを与えることにある。
【0044】
この種類のポリマーセグメントの存在は、本発明による媒体に、流路の壁上への種の吸着および/または電気浸透を低減させる。
【0045】
特に、流路内で種を伴うすべての方法に関する1つの問題は、該流路の壁上への該種の吸着である。この問題は、小さな流路および生物学的巨大分子の場合に特に悪化され、後者は両性であることが多い。試料もしくは流体に含まれる種の壁上へのこの吸着の現象は、分析法の場合に、ある被検体を阻止し、付加的な分散を創出し、そして分離能の損失という結果になる。この吸着は、その後に該流路に導入されるのが望ましい流体にも影響し得る、流路の壁のある量の汚染をさらに生じさせ得る。
【0046】
特に界面動電分離法に関するもう1つの制約は、電気浸透、すなわち細管もしくは流路の壁での電荷の存在により分離媒体の全体としての移動である。この移動は時間により変動しやすく、そして不均一であるので、測定の再現性および分離能には有害である。それは化学的構造により細管の表面上に存在し得る電荷により引起されるが、分離されるべき試料、特にタンパクに最初に含まれる電荷を帯びた種の壁への吸着により創出もしくは増加され得る。
【0047】
分離媒体内で壁に対する特異的親和性を示す少なくとも1つの種類のポリマーセグメントを含む種類の本発明によるポリマーは、この種類の多数のセグメントの存在のために、そして該セグメントの比較的高い平均分子量のために、高い吸着エネルギーを有し、したがって永続する態様で電気浸透を低減させる。さらに、本発明によるポリマーは、その構造に、該媒体中で壁に対してほとんどもしくは全く親和性を示さないポリマーセグメントも含むので、分離能に有害である過度に疎水性の性質を避け、そして壁から被検体をより効率的にはね返す。
【0048】
通常、壁に対する親和性を示さないポリマーセグメントの種類は、分離媒体中で良好な溶解性を示すポリマーからなる。しかし、該媒体において溶解性であるが、それにもかかわらずその中で壁に対して特定の親和性を示すポリマーがあり得る。分離媒体が水性溶液であるとき、壁に対して親和性を有さないセグメントは非常に親水性のセグメントであるのが通常である。一方、親和性を有するセグメントは、比較的非親水性であるか、もしくは疎水性でさえある。いうまでもなく、壁の性質および分離媒体の性質に依存して、他のもっと特異的な種類の親和性が使用され得る。
【0049】
本発明を実施するのに最適なコポリマーは、特に、壁に対する特異的な親和性を有するすべてのセグメントが、該コポリマーの全平均モル質量(molar mass)の2質量%〜80質量%、そして好ましくは5質量%〜30質量%、またはモノマーのモル数でコポリマー全組成の3%〜85%、そして好ましくは5%〜50%を示すものである。
【0050】
被検体が生物学的巨大分子であるとき、特に有利な、もう一つの好適な態様は、1つ以上の被検体に対して特異的な親和性を示す本発明によるポリマーを用いることである。
【0051】
この親和性は、ある被検体に対して特異的な親和性を示すことのできるポリマーセグメントを該ポリマーの構造に組入れることにより得られ得る。このようなポリマーセグメントは、たとえば、あるいは排他的でない態様で(in a nonexhaustive manner)、たとえばポリヌクレオチドもしくはポリペプチドのような異なるモノマーの予め定められた配列からなり得る。この親和性は、本発明によるポリマーに、天然もしくは変性タンパク、タンパク分画もしくはタンパク複合体、あるいは酸性もしくは塩基性基、および/またはルイス酸もしくはルイス塩基型の基を結合させることによっても得られ得る。
【0052】
本発明によるコポリマーにより構成され得る種々の構造の例として、該コポリマーのすべてもしくはいくつかは詳しくは次のようなものであると言及され得る:
− 不規則な序列ブロックコポリマー。この場合、1つの好適な変形は、ポリマーに沿って、壁に対する特異的親和性を有するセグメントと、壁に対する親和性を低減したもしくは全く有さないセグメントを交互にすることにある。さらに、ポリマーに沿って、ある被検体に対して特異的な親和性を示すセグメントと、該被検体に対して親和性を低減したもしくは全く示さないセグメントを交互にすることも意図され得る。
− 不規則な櫛型コポリマーの形態。この場合、1つの好適な変形は次のように特徴づけられる。すなわち、該ポリマーは、櫛型ポリマーの形態にあり、その骨格は壁に対して特異的な親和性を示すいくつかのポリマーセグメントからなり、そしてその側枝は壁に対する親和性を低減された、もしくは全く示さないポリマーセグメントからなる。あるいは、該ポリマーは、櫛型ポリマーの形態にあり、その側枝は壁に対して特異的な親和性を示すポリマーセグメントからなり、そしてその骨格は壁に対する親和性を低減された、もしくは全く示さないポリマーセグメントからなる。さらに、これらのポリマーは、櫛型ポリマーの形態であり得て、ある側枝はある被検体に対して特異的な親和性を示すポリマーセグメントからなり、そしてその骨格はこれらの被検体に対する親和性を低減された、もしくは全く示さないポリマーセグメントからなる。
【0053】
いうまでもなく、いくつかの種類の上述の好適な変形が、2種より多い異なる種類のポリマーセグメントを組み合わせることにより、もしくは異なるコポリマーの混合物の形態で、一緒に組み合わされる系も、本発明の範囲内である。このように、たとえば壁に対して親和性を示すポリマーセグメント、ある被検体に対し特異的な親和性を示すポリマーセグメントもしくは基、および壁もしくは被検体のいずれかに対して特異的な親和性を示さないポリマーセグメントを、本発明によるコポリマー内で組み合わせることができる。さらに、例として、壁に対して親和性を示すポリマーセグメント、および壁もしくは被検体のいずれにも特異的な親和性を示さないポリマーセグメントを含むブロックコポリマーと、ある被検体に対し特異的な親和性を示すポリマーセグメントもしくは基、および壁もしくは被検体のいずれにも特異的な親和性を示さないポリマーセグメントを含むポリマーを、本発明による媒体内で組み合わせることもできる。
【0054】
本発明の好適な1態様において、所定の種類の化学的もしくは位相的性質のすべてのポリマーは平均で骨格に沿って75より多い、好ましくは210より多い原子数を有するか、または1,500より大きい、好ましくは4,500より大きい分子量を有する。
もっと好適な態様によれば、種々の種類のセグメントは、骨格に沿って75より大きい、好ましくは210より大きい平均原子数、または1,500より大きい、好ましくは4,500より大きい分子量を有する。
【0055】
好適な1態様によれば、分離媒体は、本発明による少なくとも1つのポリマーが0.1wt%〜20wt%、そして好ましくは1wt%〜6wt%の割合で溶解される液体からなる。
【0056】
ブロックコポリマーもしくは櫛型ホモポリマーを使用することは、本発明を実施するのに特に有利であり、そこでは少なくとも1種類のセグメントが、ポリエーテル、たとえばポリグリコール酸のようなポリエステル、たとえばポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンもしくはポリオキシエチレンのようなポリオキシアルキレン型の溶解性ランダムホモポリマーおよびコポリマー、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリオキサゾリン、ポリスチレンスルホネート、ならびに置換もしくは非置換のアクリルアミド、メタクリルアミド、およびアリルポリマーおよびコポリマーから選ばれるポリマーからなる。
【0057】
水性分離媒体中で、壁に対して親和性をほとんどもしくは全く示さないポリマーセグメントの種類の典型例として、最も具体的には、ポリアクリルアミドおよびポリアクリル酸、ポリアクリロイルアミノプロパノ−ル、水溶性アクリルおよびアリルポリマーおよびコポリマー、デキストラン、ポリエチレングルコール、多糖類、およびたとえばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはヒドロキシメチルセルロースのような種々のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリオキサゾリン、ポリスチレンスルホネート、およびヒドロキシル基をもつポリマー類、ならびに上述の誘導体のランダムコポリマーのすべてが挙げられ得る。
【0058】
いうまでもなく、分離媒体に溶解性である他のポリマーセグメントも、該流体の性質、流路の壁の性質、特定の用途、および所望の構造のブロックポリマーへの導入の容易さに応じて、本発明により使用され得る。
【0059】
水性溶媒に溶解し得る、もしくはし得ず、そして壁に対して特定の親和性をそこで示し得るポリマーセグメントの典型例として、ジメチルアクリルアミド、アルキル基でN−置換されたアクリルアミド、アルキル基でN,N−二置換されたアクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、上述のアクリル誘導体同志、または該誘導体と他のアクリル誘導体のコポリマー、アルカン類、フルオロ誘導体、シラン類、フルオロシラン類、ポリビニルアルコール、オキサゾリン誘導体を含むポリマーおよびコポリマー、さらに通常、炭素−炭素結合、エーテルオキシド基およびエポキシド基の組合せを有するポリマー、ならびにこれらの化合物のランダムコポリマーのすべてが挙げられ得る。
【0060】
多くの種類のポリマーセグメントが、当業者に知られているすべての種類のポリマーから、特に水性媒体に溶解性であるポリマーから、意図される電解液に応じて、本発明によるポリマーを構成するポリマーセグメントを形成するために選定され得る。参照は、書籍である「Polymer Handbook 」(Brandrupt & Immergut,John Wiley,New York)についてなされ得る。
【0061】
本発明によるポリマーは天然もしくは合成であり得る。微細構造に関して許容する多様性および調節のための1つの好適な変形によれば、本発明によるポリマーは合成ポリマーである。
【0062】
本発明にとくに適切なものは次のとおりである:
− 櫛型コポリマー型のコポリマーであり、その骨格は、デキストラン、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノールもしくは(N,N)−ジメチルアクリルアミド型であり、その上に、アクリルアミド、置換アクリルアミドもしくは(N,N)−ジメチルアクリルアミド(DMA)型、またはDMA/アリルグリシジルエーテル(AGE)コポリマー型、またはオキサゾリンもしくはオキサゾリン誘導体のホモポリマーもしくはコポリマーの側セグメントがグラフトされているコポリマー;
− 不規則な序列コポリマー型の非感熱コポリマーであり、その骨格に沿って、ポリオキシエチレン型のセグメントおよびポリオキシプロピレン型のセグメントの交互変化、またはポリオキシエチレン型のセグメントおよびポリオキシブチレン型のセグメントの交互変化、またはより一般的にポリエチレンのセグメントおよびポリエーテル型のセグメント(それらはポリオキシエチレンよりも疎水性である)の交互変化を有するコポリマー;
− 不規則な序列ブロックポリマー型のコポリマーであり、その骨格に沿って、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノールもしくはジメチルアクリルアミド型のセグメント、および一方では(N,N)−ジメチルアクリルアミド(DMA)型、またはDMA/アリルグリシジルエーテル(AGE)コポリマー型、またはオキサゾリンもしくはオキサゾリン誘導体のホモポリマーもしくはコポリマーのセグメントの交互変化を有するコポリマー;
− 不規則な櫛型ポリマー型のポリマーであり、その骨格は、アガロース、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)、もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型のもの、DMA/AGEランダムコポリマー型のもの、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体のもの、デキストランのもの、メチルセルロースのもの、ヒドロキシエチルセルロースのもの、変性セルロースのもの、多糖のもの、またはエーテルオキシド型のものであり、そしてその上にアガロース、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)、もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型の側セグメント、DMA/AGEランダムコポリマー型の側セグメント、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体の側セグメント、デキストランの側セグメント、メチルセルロースの側セグメント、ヒドロキシエチルセルロースの側セグメント、変性セルロースの側セグメント、多糖の側セグメント、またはエーテルオキシド型の側セグメントがグラフトされているポリマー;
− 不規則な櫛型コポリマー型のコポリマーであり、その骨格は、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイアルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)、もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型のもの、DMA/AGEランダムコポリマー型のもの、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体のもの、デキストランのもの、アガロースのもの、メチルセルロースのもの、ヒドロキシエチルセルロースのもの、変性セルロースのもの、多糖のもの、またはエーテルオキシド型のものであり、そしてアルキル鎖、芳香族誘導体、フルオロアルキル、シランまたはフルオロシランのような短鎖疎水性側セグメントを担持するコポリマー。
【0063】
大部分の用途において、本質的に中性である本発明のポリマーを使用するのが好ましいことが留意されるべきである。しかし、特定の用途、特に電荷および疎水性部分を含む種の吸着を避けるために、意図的に荷電された、好ましくは該種の電荷と逆の電荷を帯びた本発明によるポリマーを選定するのが有用であり得る。
【0064】
本発明により使用されるコポリマーの調製に関して、それは従来のいかなる重合もしくは共重合法によっても実行され得る。調製法の選択は、コポリマーに望まれる構造、すなわち櫛型もしくは線状構造、ならびに構成される種々のブロックの化学的性質を考慮することによりなされるのが通常である。
【0065】
これらの調製法の変形の典型例として、該ポリマーが得られる次の方法がとくに挙げられ得る:
− 同一もしくは異なるモノマーの、同一もしくは異なる巨大モノマーの、または同一もしくは異なるモノマーおよび巨大モノマーの混合物の、重縮合、イオンもしくはフリーラジカル重合もしくは共重合、または
− 同一もしくは異なる化学的性質を有する線状もしくは分枝ポリマー骨格上のいくつかのポリマーセグメントをグラフトすることによる。
【0066】
好適には、本発明により使用されるコポリマーのすべてもしくはいくつかは、
−a:末端の少なくとも1つに反応性基を含むモノマーもしくは巨大モノマーの共重合、または
−b:構造に少なくとも1つの反応性基を含む巨大モノマーの共重合、
により得られ得る。
【0067】
本発明の目的のために、「反応性基」(”reactive function)という用語は、この基を持つ分子が共重合を妨害することなく共重合反応時に巨大分子に組入れられることを可能にする基を意味する。
【0068】
上述の規定および好適な態様の助けにより、当業者は、1つの用途もしくは他の用途に望ましい分離特性に応じて、該ポリマーの構造、性質および調製法を適合させることにより、本発明によるコポリマーを調製することができる。
【0069】
さらに、本発明の主題は、試料に含まれる種を分離、分析および/または同定する方法であり、次の工程を実施することを特徴とする:
a/本発明よる分離媒体を分離装置の流路に充填すること、
b/該種を含む該試料を該流路の一端に導入すること、
c/試料に含まれる特定の種を移動させるように意図された外部フィールド、特に電場を用いること、ならびに
d/試料の導入点とは異なる流路に沿った点で、該種を回収すること、またはそれらの通過を検出すること。
【0070】
1つの好適な変形において、細管充填段階と分析段階の間の温度を変える必要はない。
特定の用途に関して、分離溶媒は、本発明によるポリマーの外に、他の成分、特に種もしくは壁と相互作用する成分を含有し得る。この種類の成分の多くは当業者に知られている。
【0071】
本発明において、単独で用いられた本発明によるポリマーで得られたものに比べて性能を向上させるために、不規則なブロックコポリマー型のポリマーと、立体的相互作用により、もしくは親和性により被検体と相互作用し得る他のポリマーを、分離媒体中で組み合わせることができる。この場合に、本発明による特に好適なポリマーは、これらのポリマーが単独で使用されるときよりも大きい、壁に対する特異的な親和性を示すポリマーセグメントの質量分率を有するものである。この分率は20%〜80%であり得る。
【0072】
さらに本発明の主題は、分子もしくは巨大分子種、特にたとえば核酸(DNA、RNAもしくはオリゴヌクレオチド)、合成もしくは化学修飾により得られる核酸類縁体、タンパク、ポリペプチド、グリコペプチドおよび多糖類のような生物学的巨大分子、有機分子、合成巨大分子、もしくはたとえば鉱物粒子、ラテックス(latices)、細胞もしくは細胞小器官のような粒子から選ばれる種を分離、精製、ろ過もしくは分析するための、本発明による分離媒体の使用である。
【0073】
電気泳動分析法の場合に、本発明はDNA塩基配列決定に特に有用であり、それについては、最小限のバンド幅が得られることを可能にする。さらに、タンパク、プロテオグリカンもしくは細胞を分離するのに特に好適であり、それについては、壁上への吸着の問題が特に不利であり、解決が特に困難である。
有利なことには、本発明の媒体は、少なくとも1つの寸法がサブミリメートルのサイズである流路に使用され得る。
【0074】
装置に関して、本発明の媒体は微小流体系について特に有利である。なぜなら、永続的な処理を得るために流路表面に対して良好な親和性を示すブロック、ならびに分離されるべき種に対して良好な反発を示すブロックを、該種と該流路の化学的性質とにかかわりなく、ポリマー内で種々のブロックの最適の種類を選択することにより組み合わせることを、それが可能にするからである。
【0075】
本発明による媒体およびこれらの媒体を用いる分離法は、電気泳動分離および診断用途、遺伝子の型検出(gene typing)、および大流量スクリーニング、品質管理のために、または製品中の遺伝学的に変成された生物の存在を検出するために、特に有利である。
【0076】
実際に、本発明に関して考慮中の分離媒体が構成されるポリマーはいくつかの点で有利であることがわかる。
【0077】
第1に、「ブロックポリマー」の性質を示すそれらの能力は、異なる化学的性質のポリマーに属するが、ホモポリマーもしくはランダムコポリマーに必ずしも結合され得ないような特性をそれらに組み合わせることができる。このように、それらは、第1に分離されるべき種に応じて、そして第2に分離が実施される流路の化学的性質に応じて、分離媒体の化学的性質をもっと柔軟に適合させることができる。こうして、それらは、たとえばPDMS(ポリジメチルシロキサン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリイミドのようなポリマーもしくはエラストマー、またはたとえばガラス、セラミックス、ケイ素、ステンレス鋼、もしくはチタンのような鉱物材料からなる流路を用いる用途、ならびに壁が溶融シリカで作成される流路を使用するより伝統的な用途の双方に特に有利である。
【0078】
従来技術のブロックコポリマーと比べて、本発明によるポリマーは、分離能(resolution)の点で優れた性能をさらに示し、それはその不規則な性質、すなわち、本発明によるポリマーの一部を形成するポリマーセグメントの多分散性に関与しているのであろう。従来技術で用いられている一連のブロックコポリマーは、規則的に間隔をあけたセグメントを含有し、および/または選択された本質的に均一な長さ(すなわち低い多分散性)を有するコポリマーを意図的に含むので、この特徴は特に驚くべきことである。さらに、本発明によるポリマーにおけるセグメントのこの多分散性は、配合におけるコストおよび柔軟性の点でさらに利点を示す。なぜなら、そのような多分子セグメントを含有するポリマーはもっと効率的であるばかりでなく、調製するのがもっと容易であるからである。特に、それらは高い分子量で調製され得る。
【0079】
壁に対する種の電気浸透もしくは相互作用の減少が望まれる用途において、本発明によるポリマーは、壁に対する有意の親和性を示す数多くのポリマーセグメントの構造の存在のために、高い吸着エネルギーを有し、そして永続的な態様で種の電気浸透および吸着を低減させることができる。
【0080】
最後に、線状骨格の、そして多数の接合点の組合せは、本発明による分離媒体に、局部的な規模でゲルの性質をいくらか付与しそうであるが、それは分離効率の点で有利であり、同時に、大きな規模において、特に線状ポリマーにも匹敵し得る流動性に関して、それらを保護する。
【実施例】
【0081】
以下に示す図および例は、本発明の非制限的な例示として表される。
例1: 本発明によるコポリマーの調製のために10,000の領域の分子量を有する機能化PDMA巨大モノマーの調製
1)PDMAの重合
N,N−ジメチル−アクリルアミド(DMA)のフリーラジカル重合が純水中で実施された。開始剤はレドックスカップルであり、それについて酸化剤は過硫酸カリウムK(KPS)であり、そして還元剤はアミノエタンチオールAET・HClである。開始反応は次のとおりである。
+2Cl,NH−CHCH−SH→2KHSO+2Cl,NH−CH−CH−S
AET・HClも転移剤(transfer agent)として作用し、鎖長を調節させる。
手順
DMA0.18モルおよび水200mLが、三つ口フラスコに入れられ、その上に凝縮器が取付けられ、そして窒素注入口を備える。ついで、混合物は攪拌され、水浴で29℃に加熱される。窒素の散布が開始される。45分後に、水20mLに予め溶解されたAET・HCl 0.61g(0.0054モル)が添加され、ついで最小量の水に溶解された過硫酸カリウム(KPS)0.0018モルが添加される。混合物は3時間、攪拌される。ついで溶液は濃縮され、凍結乾燥される。
【0082】
ポリマーを単離するために、沈殿が次の手順にしたがって実施される:
得られた固体はメタノール100mLに再溶解される。存在する塩化水素は、溶液に滴下して配合されるKOH0.0054モル(すなわちメタノール約25mLに溶解された0.30g)を添加することにより中和される。生成される塩であるKClが沈殿し、ろ過により分取される。そして、回収されるろ液は濃縮され、エーテル4Lに滴下して注がれる。沈殿ポリマーはNo.4燒結漏斗によりろ過して回収される。ついで固体はベーンポンプ(vane−pump)真空下で乾燥される。質量収率は約50%である。
【0083】
上述のプロトコールは、「PDMA」として知られるアミノポリマーを生成させ、開始剤/モノマー比R=0.03およびA=0.01に相当し、ここで
=[R−SH]/[NIPAM]、およびA=[KPS]/[NIPAM]
である。
2)アミノPDMAの変性
合成されたPNIPAM巨大分子は鎖末端にアミン基を含み、これらの鎖は開始剤であるアミノエタンチオールAET・HClに由来する。
【0084】
アミン基のアクリル酸との反応により、ビニル二重結合は次の反応スキームにしたがって鎖末端に結合される:
【0085】
【化1】

【0086】
手順:
塩化メチレン50mL、アクリル酸1.5g(0.021モル)、PDMA9gおよびジシクロへキシルカルボジイミド(DCCI)(0.021モル)が100mLビーカーに入れられる。
【0087】
反応媒体は1時間攪拌される。アクリル酸はPDMAに対し大過剰であるので(アクリル酸の量はPDMAの量の約20倍である)、すべてのアミノ基は変性されている。ついで混合物はNo.4燒結漏斗でろ過され、DCCIの変換から得られる副生物である沈殿したジシクロへキシルウレアを除去する。精製はエーテルからの沈殿により実施される。
【0088】
鎖端にアリル基を有する巨大モノマーPDMA−1は、このようにして質量収率約70%で得られる。
このようにして調製され、SEC(立体排除クロマトグラフィー)により測定される巨大モノマーの平均モル質量(molar mass)および多分散性は、それぞれ15,000のオーダーおよび2である。
【0089】
例2: アクリルアミド骨格およびPDMAグラフトを有し、分子量1,500キロダルトンのコポリマーP(AM−PDMA)−1の調製
アミノPDMA(0.4g)およびアクリルアミド(2.8g)の共重合が、室温で水50mL中で4時間実施され、同時にアルゴンで強く脱気される。使用される開始剤は、過硫酸アンモニウム((NH)[モノマーの量の0.075モル%]/二亜硫酸ナトリウム(Na)(モノマーの量の0.0225モル%)のレドックスカップルである。得られるコポリマーはアセトンからの沈殿により精製され、そして真空下に乾燥される。その分子量は1,500キロダルトンであり、そしてその多分散性M/Mは約2である。プロトンNMRで測定された巨大モノマーの配合度は約6%であり、骨格上の側枝の平均数約6に相当する。
【0090】
使用されるフリーラジカル重合法のために、側鎖を構成する巨大モノマーは、分子間の衝突により偶然に決定されるランダムな位置(ランダム分布)でポリマー鎖に組込まれる。この重合法は、およそ指数関数の形(exponential shape)の、2つの側枝の間に骨格のポリマーセグメントの分子量分布をもたらし、そして1.8を大きく超える骨格の該ポリマーセグメントの多分散性をもたらす。
【0091】
例3: 種々の分離媒体中のNa TAPS100mM,EDTA2mM,尿素緩衝液7Mで、50℃でABI310機械(Perkin Elmer)において、一本鎖DNA(50〜500bpサイザー(sizer)、Pharmacia Biotech)について得られた分離特性
本発明による分離媒体P(AM−PDMA)−2が、側枝を有さない同一のポリマー骨格に対して(PAM,図2および5)、さらに線状PDMAにもとづく商業的製品に対しても(POP6、図3および5)分離能を改良することが、視覚的に(図4)、そして分離能測定(図5)によりもっと定量的に観察される。分離時間も低減され、それは本発明による媒体の付加的な利点でもある。大きな部分のアクリルアミドおよび比較的小さな部分のPDMAを含む本発明によるこのポリマーが、本発明を特徴づける該部分の特定の配置および結合点の存在のために、ホモポリマー形態におけるそれぞれの該成分のものに比べて優れた性質を有することは、意外であるが有利である。
【0092】
例4: アクリルアミド骨格およびPDMAグラフトを含み、分子量約3,000キロダルトンのコポリマーP(AM−PDMA)−2の調製
調製は((NH)の濃度(モノマーの量の0.075モル%の代わりの0.1モル%)および(Na)の濃度(モノマーの量の0.0225モル%)および(Na)の濃度(モノマーの量の0.0225モル%の代わりの0.015モル%)を除けば、例2に記載されたのと同一である。図6に示される粘度は、結合された(interlocked)ポリマーについての分子量の関数として粘度の3次依存関係を用いて、P(AM−PDMA)−1のものから開始して、約3,000キロダルトンの分子量を評価することを可能にする。
【0093】
例5: PDMAグラフトを有する、分子量約30,000のコポリマーP(AM−PDMA)−3の調製
第1段階において、分子量30,000の巨大モノマーが、0.03の代わりに0.015に設定される比Roを除けば、例1に記載されるように調製される。この巨大モノマーは、ついで例4に記載されるプロトコールに従ってアクリルアミドと重合される。
【0094】
例6: 例2、4および5に記載されるポリマー、およびさらに線状アクリルアミドホモポリマーで得られる3%溶液の粘度測定
この例で、各ポリマーが3g/100mLの率で精製水(MilliQ)に導入された。対応する各溶液の粘度が、Rheocalcソフトウェア(Sedexim,Muizon,F)により運転されるBrookfield DV3コーンプレートレオメータにより測定された。選ばれたせん断速度は1℃/分の温度勾配で10(1/s)である。本発明によるコポリマーが感熱性の性質を有さず(それらの粘度は、温度とともに小さく均一な低下を示す)、そして適度の粘度を有することが、図6で観察される。さらに、コポリマーの構造および性質が重合条件を調節することにより変動され得ることも観察される。
【0095】
例7: 例2,4および5に記載されるコポリマーに基づく本発明による媒体中で、ならびに比較のために線状ポリアクリルアミド(LPA)および市販の分離媒体「POP5」(Applied Biosystems)中で、一本鎖DNAフラグメントの電気泳動分離
分離条件は、試料が100〜1,500塩基の「サイザー」(BioVenture,米国)であることを除いて、例4のものと同一である。配列決定に最も有利な範囲(フラグメントサイズ600〜1,000)において、本発明によるコポリマーにもとづく媒体、とくに3%の分離媒体における質量濃度に相当するものは、従来技術のポリマーで得られたものよりも著しく優れる分離能をもたらすことが、図7で観察される。0.3〜0.5のオーダーの分離能が1塩基内でDNAの配列決定をするのに十分であることを考慮すると、本発明による媒体は800塩基より大きい長さを読み取ることを可能にするはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのポリマーセグメントからなる少なくとも1つのポリマーを含む、流路内の種を分析、精製もしくは分離するための非感熱液状媒体であって、該ポリマーが不規則ブロックコポリマー型または不規則な櫛型ポリマー型であり、そして異なる化学的もしくは位相的性質のポリマーセグメント間に設けられた、平均して少なくとも3つの接合点を有することを特徴とする、非感熱液状媒体。
【請求項2】
該ポリマーの組成の1部を形成する、少なくとも1種類の化学的もしくは位相的性質を有するすべてのセグメントが、少なくとも1.5の多分散性を有することを特徴とする、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
該ポリマーの組成の1部を形成する、それぞれの種類の化学的もしくは位相的性質を有するセグメントが、少なくとも1.5の多分散性を有することを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の媒体。
【請求項4】
該多分散性が1.8より大きいことを特徴とする、請求項2もしくは3に記載の媒体。
【請求項5】
該ポリマーが、50,000より大きい、そして好適には300,000より大きい平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項6】
該ポリマーが該流路の壁に対する特異的な親和性を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項7】
該ポリマーが、分離媒体内で壁に対する特異的な親和性を示す少なくとも1種類のポリマーセグメント、ならびに該媒体内で壁に対してほとんどもしくは全く親和性を示さない少なくとも1種類のポリマーセグメントを有することを特徴とする、請求項6に記載の媒体。
【請求項8】
壁に対する特異的な親和性を示すすべてのセグメントが、該ポリマーの平均全モル質量の2質量%〜80質量%を示すことを特徴とする、請求項6もしくは7に記載の媒体。
【請求項9】
ポリマーが1つ以上の被検体に対して特異的な親和性を示すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項10】
ポリマーが決定された配列のヌクレオチドもしくはポリペプチドを担持することを特徴とする、請求項9に記載の媒体。
【請求項11】
ポリマーが、タンパク、タンパク画分、タンパク複合体および/または酸もしくは塩基の基に結合されている、請求項9に記載の媒体。
【請求項12】
少なくとも1種類の化学的もしくは位相的性質のすべてのポリマーセグメントが、平均で、75より多い、好ましくは210より多い原子数を有するか、または1,500より大きい、好ましくは4,500より大きい分子量を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項13】
該ポリマーを構成する種々の種類のポリマーセグメントが、平均で、75より大きい、好ましくは210より大きい平均原子数、または1,500より大きい、好ましくは4,500より大きい分子量を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項14】
ポリマーが平均して4〜100の接合点の数を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項15】
ポリマーが平均して少なくとも4つのポリマーセグメントを含むブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項16】
ポリマーが平均して少なくとも2つの側鎖を含む櫛型ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項17】
ポリマーが、ポリエーテル、たとえばポリグリコール酸のようなポリエステル、たとえばポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンもしくはポリオキシエチレンのようなポリオキシアルキレン型の溶解性ランダムホモポリマーおよびコポリマー、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリオキサゾリン、ポリスチレンスルホネート、ならびに置換もしくは非置換アクリルアミド、メタクリルアミド、およびアリルポリマーおよびコポリマーから選ばれる少なくとも1種類のセグメントを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項18】
該ポリマーが:
− 櫛型コポリマー型のコポリマーであり、その骨格は、デキストラン、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノールもしくは(N,N)−ジメチルアクリルアミド型であり、その上に、アクリルアミド、置換アクリルアミドもしくは(N,N)−ジメチルアクリルアミド(DMA)型、またはDMA/アリルグリシジルエーテル(AGE)コポリマー型、またはオキサゾリンもしくはオキサゾリン誘導体のホモポリマーもしくはコポリマーの側セグメントがグラフトされているコポリマー;
− 不規則な序列コポリマー型の非感熱コポリマーであり、その骨格に沿って、ポリオキシエチレン型のセグメントおよびポリオキシプロピレン型のセグメントの交互変化、またはポリオキシエチレン型のセグメントおよびポリオキシブチレン型のセグメントの交互変化、またはポリエチレンのセグメントおよびポリエーテル型のセグメント(それらはポリオキシエチレンよりも疎水性である)の交互変化を有するコポリマー;
− 不規則な序列ブロックポリマー型のコポリマーであり、その骨格に沿って、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノールもしくはジメチルアクリルアミド型のセグメント、および一方では(N,N)−ジメチルアクリルアミド(DMA)型、またはDMA/アリルグリシジルエーテル(AGE)コポリマー型、またはオキサゾリンもしくはオキサゾリン誘導体のホモポリマーもしくはコポリマーのセグメントの交互変化を有するコポリマー;
− 不規則な櫛型ポリマー型のポリマーであり、その骨格は、アガロース、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)、もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型のもの、DMA/AGEランダムコポリマー型のもの、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体のもの、デキストランのもの、メチルセルロースのもの、ヒドロキシエチルセルロースのもの、変性セルロースのもの、多糖のもの、またはエーテルオキシド型のものであり、そしてその上に、アガロース、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)、もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型の側セグメント、DMA/AGEランダムコポリマー型の側セグメント、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体の側セグメント、デキストランの側セグメント、メチルセルロースの側セグメント、ヒドロキシエチルセルロースの側セグメント、変性セルロースの側セグメント、多糖の側セグメント、またはエーテルオキシド型の側セグメントがグラフトされているポリマー;
− 不規則な櫛型コポリマー型のコポリマーであり、その骨格は、アクリルアミド、置換アクリルアミド、アクリル酸、アクリロイルアミノエタノール、ジメチルアクリルアミド(DMA)もしくはアリルグリシジルエーテル(AGE)ポリマー型のもの、DMA/AGEランダムコポリマー型のもの、オキサゾリンおよびオキサゾリン誘導体のもの、デキストランのもの、アガロースのもの、メチルセルロースのもの、ヒドロキシエチルセルロースのもの、変性セルロースのもの、多糖のもの、またはエーテルオキシド型のものであり、そしてアルキル鎖、芳香族誘導体、フルオロアルキル、シランまたはフルオロシランのような短鎖疎水性側セグメントを担持するコポリマー、
から選ばれる少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項19】
分子もしくは巨大分子種、核酸型の生物学的巨大分子、それらの合成類縁体、タンパク、ポリペプチド、グリコペプチドおよび多糖類、有機分子、合成巨大分子、またはたとえば鉱物粒子、格子、細胞もしくは細胞小器官のような粒子から選ばれる種を分離、精製、ろ過もしくは分析するための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項20】
少なくとも1つの寸法がサブミリメートルである流路における、請求項19に記載の使用、または請求項1〜18のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項21】
界面動電分離のための、請求項19もしくは20に記載の使用、または請求項1〜18のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項22】
診断、遺伝子検出および高流量スクリーニング、品質管理のため、または製品における遺伝学的に変性された生物の存在を検出するための、請求項19〜21のいずれか一項に記載の使用、または請求項1〜18のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項23】
試料に含まれる種を分離、分析および/または同定する方法であって、
a/請求項1〜18のいずれか一項に記載の分離媒体を分離装置の流路に充填すること、
b/該種を含む該試料を該流路の一端に導入すること、
c/試料に含まれる特定の種を移動させるように意図された外部フィールドを用いること、ならびに
d/試料の導入点とは異なる流路に沿った点で、該種を回収、または該種の通過を検出すること
を含むことを特徴とする、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−98304(P2012−98304A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−10033(P2012−10033)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2002−506100(P2002−506100)の分割
【原出願日】平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願人】(500056471)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】