説明

流路切換弁およびそれを用いた流動性材料の吐出制御装置

【課題】グリス等の流動性材料を液だれの発生がなく、サックバックの必要性を生じさせることなく、シール性や応答性に優れ、高精度の定量吐出制御をなし得る流路切換弁や吐出制御装置を提供する。
【解決手段】流路切換弁13は、注入室15aと外側弁座面21が形成された注入側部15と、内側弁座面24が形成された仕切り部材22が設けられた吐出側部16とを有している。吐出室16aに連通する吐出制御ブロック32には吐出ロッド36により容積が膨張収縮する制御流路33が形成されている。弁体25は、制御流路33内にグリスGを充填するときには内側弁座面24を閉じ外側弁座面21を開く、一方、制御流路33内のグリスGを吐出室16aに吐出するときには外側弁座面21を閉じ内側弁座面24を開く。グリスGは制御流路33に供給された後に吐出室16aに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリスや液体等の流動性材料を吐出具に供給する供給流路に設けられる流路切換弁、およびそれを用いた吐出制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品や機械部品を被塗布部材としてこれらにグリス等の潤滑油が塗布されることがある。一方、電子部品を製造する工程においては、被加工部材を被塗布部材として薬液等の液体が塗布されることがある。潤滑油や液体等の非圧縮性の流動性材料を被塗布部材に吐出するために吐出装置が通常使用されている。吐出装置は流動性材料が収容された容器と吐出ノズルとの間に配置されて使用される。従来の吐出装置には、電磁弁が組み込まれた流路切換形態があるが、吐出装置には電磁弁等の部材が組み込まれているので、吐出装置は重量が大きく複雑な構造となっている。このため、従来の吐出装置はX,Yの2軸方向に駆動装置を用いて移動させるようにしたり、据え付け台に吐出装置を固定して被塗布物を移動させるようにしたりしている。
【0003】
吐出装置としては、ポンプ部材を弾性変形させてポンプ動作させるようにしたタイプがあるが、このタイプの吐出装置も構造が複雑となってしまう。ダイヤフラム等の弾性変形するポンプ部材を有する従来の吐出装置は、比較的吐出量が多い場合には好適であるが、1gあるいはそれ以下の微量の流動性材料を被塗布部材に塗布するには高精度に吐出量を制御することが困難であった。
【0004】
電気製品や機械部品に対して塗布される流動性材料の塗布量は、被塗布部材によって相違しており、上述のように流動性材料を1g以下の塗布量とする場合もあれば、それよりも多量の流動性材料を塗布する場合がある。
【0005】
潤滑油等の流動性材料を高精度で吐出具に向けて供給するために、容器内の流動性材料を制御流路内に充填注入し、制御流路内から吐出具に向けて流動性材料を吐出する構造の吐出装置が発明者により考えられた。そのような吐出装置とするには、流動性材料が収容された容器と吐出ノズルとの間の案内流路に制御流路を分岐させることになるので、三方弁を流路切換弁して使用することになる。特許文献1には、流路を切り換えるための三方弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−147625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるように、球形状の弁体を有する三方弁は、弁箱内に形成されたガイド溝により弁体を移動させるようにしているので、ポートの開閉動作を行うには弁体を長い距離移動させる必要がある。このため、ポートを開閉したいタイミングと実際に弁体がポートの開閉を終了するまでの間に応答遅れが発生してしまう。それによって、吐出ノズルからの液だれが発生したり、サックバックの必要性が生じたり、流路内を流れる液体の量が多くなるため制御された量の液体(微少量)を1つの流路から他の流路に案内することが困難となる。
【0008】
本発明の目的は、グリス等の流動性材料を液だれの発生がなく、サックバックの必要性を生じさせることなく、シール性や応答性に優れ、高精度の定量吐出制御をなし得る流路切換弁や吐出制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流路切換弁は、流動性材料を吐出具に案内する案内流路を切り換える流路切換弁であって、圧縮空気で加圧された流動性材料が供給される注入室および当該注入室に連なる円筒形状の外側弁座面と、前記外側弁座面の径方向内方に配置され内側の吐出室と外側の供給室とを仕切る円筒形状の仕切り部材と、前記仕切り部材の先端側部に設けられ前記外側弁座面との間で弁室を区画する内側弁座面と、前記供給室に連通するとともに吐出ロッドによって容積変化する制御流路が形成された吐出制御ブロックと、前記弁室内に配置され前記内側弁座面を開閉する基部、および当該基部に一体に設けられ弾性変形によって前記外側弁座面を開閉する環状フランジ部を有する弁体とを有し、前記環状フランジ部が弾性変形して前記外側弁座面から離れ前記注入室から前記制御流路へ流動性材料が流れ、前記基部が前記内側弁座面に当接して前記吐出口への流動性材料の流れを止める充填動作と、前記環状フランジ部の弾性変形が復元して前記外側弁座面に接し前記外側弁座面を閉鎖するバランス動作と、前記吐出ロッドが前記制御流路の容積を小さくして前記注入室の圧力よりも前記制御流路の圧力が高まったときには、前記弁体の前記基部が前記内側弁座面から離れて前記制御流路から前記吐出室の吐出動作とを行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の流動性材料の吐出制御装置は、流動性材料を吐出具に吐出する流動性材料の吐出制御装置であって、圧縮空気で加圧された流動性材料が供給される注入室および当該注入室に連なる円筒形状の外側弁座面と、前記外側弁座面の径方向内方に配置され内側の吐出室と外側の供給室とを仕切る円筒形状の仕切り部材と、前記仕切り部材の先端側部に設けられ前記外側弁座面との間で弁室を区画する内側弁座面と、前記供給室に連通するとともに吐出ロッドによって容積変化する制御流路が形成された吐出制御ブロックと、前記吐出制御ブロックに設けられ、前記吐出ロッドを往復動する吐出手段と、前記弁室内に配置され前記内側弁座面を開閉する基部、および当該基部に一体に設けられ弾性変形によって前記外側弁座面を開閉する環状フランジ部を有する弁体とを有し、前記環状フランジ部が弾性変形して前記外側弁座面から離れ前記注入室から前記制御流路へ流動性材料が流れ、前記基部が前記内側弁座面に当接して前記吐出口への流動性材料の流れを止める充填動作と、前記環状フランジ部の弾性変形が復元して前記外側弁座面に接し前記外側弁座面を閉鎖するバランス動作と、前記吐出ロッドが前記制御流路の容積を小さくして前記注入室の圧力よりも前記制御流路の圧力が高まったときには、前記弁体の前記基部が前記内側弁座面から離れて前記制御流路から前記吐出室の吐出動作とを行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の流動性材料の吐出制御装置は、前記吐出手段は前記吐出ロッドが往復動自在に収容された駆動ケースを有し、流動性材料が充填された前記制御流路を上下方向に向かせて前記吐出制御ブロックを配置した状態のもとで前記制御流路内に前記吐出ロッドを挿入し、前記制御流路内から流動性材料をオーバーフローさせて前記駆動ケースが前記吐出制御ブロックに取り付けられることを特徴とする。本発明の吐出制御装置は、前記吐出手段は前記吐出ロッドを駆動する駆動ロッドと当該駆動ロッドを軸方向に往復動自在に収容する駆動ケースとを有し、前記駆動ロッドの移動ストロークを調整するストローク調整部材を前記駆動ケースに設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の流路切換弁は、一次側の圧力が制御流路側の圧力よりも高い場合には一次側と制御流路とを連通させ、制御流路と二次側流路を遮断する充填動作を行う。一次側の圧力と制御流路側の圧力が同じになると、一次側と制御流路を遮断し、制御流路と二次側を遮断するバランス状態となる。制御流路側の圧力が一次側よりも高くなると、一次側と制御流路を遮断した状態を保ちながら制御流路と二次側とを連通させて吐出動作を行う。特に、バランス状態から吐出動作に移行する際には、制御流路側の圧力が一次側の圧力よりもわずかに高くなるだけで、弁体の基部が内側弁座面を開放する。したがって、制御流路のわずかな容積変化に応じて流動性材料を二次側へ吐出させることができる。
【0013】
本発明の流路切換弁は、バランス状態から吐出動作に移行する際の弁体の移動量が非常に少ないので、吐出量が僅かであっても、吐出精度を高精度に設定することができる。
【0014】
本発明の吐出制御装置は、小さく高感度の流路切換弁を有しているので小型軽量とすることができ、吐出装置を移動手段で自動的に移動させることなく、作業者が手動によって被塗布部材に流動性材料を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】グリスの吐出装置を示す正面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】(A)〜(C)はそれぞれ図2に示された弁体の開閉状態を示す図1の一部拡大断面図である。
【図4】組立手順を示すグリスの吐出装置の一部省略断面図である。
【図5】グリスの吐出装置の変形例を示す一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すグリスの吐出装置10は、収納容器11内に収容された流動性材料としてのグリスGを、吐出具としての吐出ノズル12に供給するために使用される。シリンジと言われる収納容器11は流路切換弁13の一次側に取り外し自在に連結され、流路切換弁13の二次側に接続される吐出配管14の先端部は吐出ノズル12となっている。
【0017】
図2に示されるように、流路切換弁13は円筒形状の注入側部15と、円筒形状の吐出側部16とを有し、それぞれの注入側部15と吐出側部16の内部には、グリスGを案内する案内流路が貫通形成されている。注入側部15と吐出側部16は、外径が相互にほぼ同一であり、ジョイント部17に形成された取付孔に嵌合されて同軸となってジョイント部17に取り付けられている。図2に示す流路切換弁13は、注入側部15と吐出側部16とジョイント部17を組み合わせることによりバルブケース18が構成されている。ただし、これらの部分を有するバルブケース18を一体に形成するようにしても良く、例えば、吐出側部16とジョイント部17の2つの部分を一体に形成するようにしても良い。
【0018】
注入側部15には注入室15aが形成されており、この注入室15aには収納容器11からその内部のグリスGが供給される。吐出側部16には吐出室16aが形成されており、この吐出室16aは吐出ノズル12に連通される。
【0019】
注入側部15には注入室15aに括れ部19を隔てて連なる円筒形状の外側弁座面21が形成されている。吐出側部16には外側弁座面21の径方向内方に配置される円筒形状の仕切り部材22が設けられている。この仕切り部材22は先端側部が注入側部15の内部に入り込んで外側弁座面21と径方向に対向しており、仕切り部材22はその内側の吐出室16aと外側の環状の供給室17aとに仕切るとともに外側弁座面21との間で供給室17aに連なる弁室23を形成している。弁室23には注入室15aが連通している。
【0020】
仕切り部材22の先端の開口端面は径方向の内側弁座面24となっている。注入側部15の括れ部19と外側弁座面21との間はテーパ面19aとなっており、内側弁座面24は弁室23を隔ててテーパ面19aに対向している。
【0021】
弁室23内には弁体25が配置されており、弁体25は中央部の基部25aと、この基部25aの外側の環状フランジ部25bとを有し、弁体25はゴム材料により一体に成形されている。基部25aは内側弁座面24に接触する位置と離れる位置とに移動して内側弁座面24を開閉し、環状フランジ部25bは弾性変形して外側弁座面21を開閉する。
【0022】
外側弁座面21と円筒状の仕切り部材22は同軸状に配置されている。従って、仕切り部材22の先端側部に設けられる内側弁座面24も外側弁座面21に対して同軸となっている。弁体25は図2,図3(A)(B)(C)に示すように軸対称となっており、外側弁座面21と円筒状の仕切り部材22と内側弁座面24に対して同軸状に配置されている。これらの同軸配置により、弁体25の環状フランジ部25bと基部25aはそれぞれ確実に外側弁座面21と内側弁座面24を閉じることができる。
【0023】
流路切換弁13の注入側部15には、収納容器11が取り外し自在に装着されるホルダー26が取り付けられている。一方、吐出側部16には吐出ノズル12の吐出配管14が接続される継手27が取り付けられている。
【0024】
流路切換弁13のバルブケース18を構成するジョイント部17には、仕切り部材22の外側の環状の供給室17aに連通する連通孔28が形成されており、この連通孔28は供給室17aおよび吐出室16aに対して中心軸が直角となっている。ジョイント部17には連通管31の一端部がねじ結合され、連通管31の他端部は吐出制御ブロック32にねじ結合されている。吐出制御ブロック32は連通管31によりバルブケース18に連結されている。吐出制御ブロック32には注入側部15と平行な方向に延びる制御流路33が形成されており、この制御流路33内には収納容器11内のグリスGが注入室15a、弁室23,供給室17a、連通孔28および連通管31内の貫通孔31aを介して充填される。連通管31とジョイント部17の間をシールするために、シール部材34aがナット35aによりジョイント部17の端面に締結されている。連通管31と吐出制御ブロック32の間をシールするために、シール部材34bがナット35bにより吐出制御ブロック32の端面に締結されている。
【0025】
収納容器11内のグリスGを制御流路33内に充填し、充填されたグリスGを制御流路33内から吐出室16aを介して吐出ノズル12に供給するために、吐出制御ブロック32には制御流路33内を往復動する吐出ロッド36が設けられている。この吐出ロッド36は吐出制御ブロック32に取り付けられる駆動ケース37内に組み込まれている。
【0026】
駆動ケース37は円筒部37aとこの基端部側の底壁部37bと先端部側の装着筒部37cとを有している。装着筒部37cには、吐出制御ブロック32に設けられた雄ねじ38aにねじ結合される雌ねじ38bが設けられている。円筒部37a内に設けられたスリーブ41には摺動部材42aが軸方向に往復動自在に挿入されており、この摺動部材42aの一端部には駆動ケース37の底壁部37bから外部に突出する駆動ロッド42が設けられている。吐出ロッド36は摺動部材42aに設けられており、駆動ロッド42を軸方向に駆動すると、吐出ロッド36が軸方向に駆動される。このように、駆動ロッド42とこれを往復動自在に収容する駆動ケース37は、吐出ロッド36を往復動する吐出手段となっている。駆動ケース37の先端部内にはカバー43が組み込まれており、カバー43の端壁部43aを吐出ロッド36が貫通して吐出制御ブロック32の制御流路33内に入り込んでいる。
【0027】
カバー43の端壁部43aと摺動部材42aの間には、圧縮コイルばね44が装着されている。この圧縮コイルばね44からなるばね部材により、吐出ロッド36には制御流路33内から離れる後退方向のばね力が加えられている。吐出ロッド36が後退移動して制御流路33内から外部に突出する方向に移動すると、制御流路33の容積が拡大する。これに対し、吐出ロッド36をばね力に抗して前進移動させ制御流路33内に吐出ロッド36を進入させると、制御流路33の容積が縮小する。吐出ロッド36と吐出制御ブロック32との間をシールするために、吐出制御ブロック32にはシール材45が装着されている。シール材45は止めリング46により抜けが防止されている。
【0028】
上述したグリスの吐出装置10を用いて被塗布物に対してグリスGを塗布する操作は、X,Yの2軸方向に移動する図示しない支持台に吐出装置10を据え付けて行うようにしても良く、被塗布物を移動させて固定された支持台に据え付けられた吐出装置10によりグリスGを塗布するようにしても良い。さらには、作業者が吐出装置10を手に持って塗布作業を行うようにしても良い。
【0029】
吐出装置10を支持台に取り付けるために、駆動ケース37の円筒部37aに形成された雄ねじ部にはナット47がねじ結合されており、このナット47により固定される図示しないブラケットにより支持台に吐出装置10が取り付けられる。収納容器11内のグリスGが確実に注入室15aに供給されるように、収納容器11にはその上端部から圧縮空気が図1において矢印で示すように供給されるようになっている。
【0030】
上述した吐出装置10により吐出ノズル12から被塗布物にグリスGを塗布するには、まず、駆動ロッド42が下端まで押し下げられて吐出ロッド36が制御流路33に入りきった状態から、収納容器11内のグリスGを制御流路33内に充填する。充填動作は、圧縮コイルばね44により吐出ロッド36を後退移動させて制御流路33の容積を膨張させることで行われる。また、吐出ロッド36の径が大きい場合には圧縮コイルばね44がなくても、収納容器11のグリスGに加えられる圧縮空気の圧力で吐出ロッド36を後退移動して、以下の充填動作が行われる。この充填動作のときには、注入室15aから弁室23にかけて圧力が連通孔28から制御流路33にかけての圧力よりも高いので、図3(A)に示されるように、弁体25の基部25aが内側弁座面24に密着してこれを閉じ、環状フランジ部25bが弾性変形して外側弁座面21から離れてこれを開くことになる。制御流路33へのグリスGの充填動作においては、収納容器11内には圧縮空気の圧力が加えられているので、吐出ロッド36の充填ストロークに対応した量のグリスGが制御流路33内に充填される。
【0031】
この状態のもとで、吐出ロッド36が後退限位置まで後退移動して停止すると、注入室15aと供給室17aの圧力が釣り合ったバランス状態となる。このバランス状態となると、環状フランジ部25bが弾性力で元の形に戻って外側弁座面21に密着してこれを閉じるバランス動作が行われる。図2は吐出ロッド36を後退限位置まで駆動して制御流路33内へのグリスGの充填が完了したバランス動作状態を示す。
【0032】
次いで、吐出ノズル12に向けて制御流路33内のグリスGを吐出供給するには、吐出ロッド36を前進移動させて制御流路33を収縮させる。この供給動作は、吐出装置10を自動的に作動させるときには、図示しない空気圧シリンダ等の往復動機構により駆動ロッド42を前進移動させることにより行う。一方、手動で吐出装置10を駆動する場合には、作業者が手作業で駆動ロッド42を押し込むことにより供給動作が行われる。いずれの駆動方式においても、制御流路33内へのグリスGの供給量は、駆動ロッド42の前進移動ストロークにより定まる。
【0033】
吐出ロッド36を前進移動させて供給動作が行われると、吐出ロッド36による制御流路33内のグリスGの圧力が注入室15a内のグリスGの圧力よりも高くなるので、弁体25の環状フランジ部25bは外側弁座面21に密着してこれを閉じた状態が維持される。一方、弁体25は、環状フランジ部25bを外側弁座面21に摺動させながら注入室15a側へわずかに移動し、その移動によって基部25aは内側弁座面24からわずかに離れてこれを開く。これにより、制御流路33内のグリスGは吐出室16a、継手27、および吐出配管14を通って吐出ノズル12から被塗布物に対して吐出される。
【0034】
図3(B),図3(C)はいずれもグリスを吐出ノズル12から吐出させるグリス供給動作が行われているときの弁体25の開閉状態を示す。弁体25の基部25aの開度、つまり基部25aと内側弁座面24との間の隙間は、環状フランジ部25bがその弾性復元力により外側弁座面21を閉じた状態のもとで、制御流路33からの吐出室16aに向けて供給されるグリスGの流量に応じて変化することになる。図3(B)は制御流路33から吐出ノズル12に供給されるグリスGの供給速度が比較的速い場合を示し、図3(C)は供給されるグリスGの供給速度が比較的遅い場合を示す。このように、弁体25は軸方向移動により内側弁座面24を開閉する基部25aと、弾性変形と弾性復元により外側弁座面21を開閉するとともに基部25aの開度に応じて外側弁座面21を摺動接触する環状フランジ部25bとを有しているので、グリスGの吐出速度が遅い場合でも吐出ロッド36の供給動作ストロークに応じた量のグリスGを吐出ノズル12に供給することができる。
【0035】
吐出ロッド36は、収納容器11内のグリスGを制御流路33内に充填するときには、コイルばね44のばね力により後退移動される。この後退移動時には収納容器11内に加えられる圧縮空気の圧力により注入室15aにはグリスGに充填方向の圧力が加えられているので、ばね力を大きくすることなく、吐出ロッド36を後退限位置まで移動させることができる。
【0036】
吐出ロッド36は駆動ケース37内に組み込まれている。駆動ケース37の装着筒部37cの雌ねじ38bを吐出制御ブロック32の雄ねじ38aにねじ結合することにより、吐出ロッド36が組み込まれた駆動ケース37を吐出制御ブロック32に取り付けることができる。図4は駆動ケース37を吐出制御ブロック32に取り付ける直前の状態を示す図であり、グリスGが連通管31の貫通孔31aを介して制御流路33内に充填された状態のもとで、装着筒部37cの雌ねじ38bを雄ねじ38aにねじ結合させる。つまり、初めて吐出装置10を使用する際には、制御流路33を上向きにし、駆動ケース37を取り外した状態で収納容器11をホルダー26に取り付け、わずかな圧力の圧縮空気でグリスGを注入室15aに供給し、バルブケース18,連通管31,シール材45,止めリング46まで充填する。グリスGは止めリング46からわずかに盛り上がった状態とする。これにより、これらの中に入っていた空気を止めリング46の口元から大気に放出し、エア抜きが完了する。エア抜きが完了したところに図4に示すように駆動ケース37を取り付けると、止めリング46からわずかに盛り上がったグリスG内に吐出ロッド36は入って行くので、空気が制御流路33内に入り込むことがない。
【0037】
装着筒部37cを吐出制御ブロック32に取り付けるときに、装着筒部37cの内部つまり雌ねじ38bの内部に入り込んでいる空気を排出するために、装着筒部37cには排気孔51が形成されている。さらに、カバー43の端壁部43aには排出される空気を案内するために排気ガイド溝52が径方向に形成されている。このように、駆動ケース37を吐出制御ブロック32に取り付ける際には、装着筒部37cには排気孔51が形成されており、端壁部43aの外面には排気ガイド溝52が形成されているので、駆動ケース37を吐出制御ブロック32に取り付ける時には、空気が制御流路33内に入り込むことを防止できる。また、吐出ロッド36はコイルばね44により引っ込んだ状態となっているので、その操作を容易に行うことができる。
【0038】
図5はグリスの吐出装置の変形例を示す一部省略断面図であり、図5にはグリスの吐出装置における図4と同様の部分が示されている。
【0039】
この吐出装置においては、駆動ケース37の円筒部37aに形成されたおねじ部には、円筒形状のストローク調整部材53がねじ結合されている。このストローク調整部材53は回転により駆動ケース37の軸方向任意に位置決めすることができ、ナット47をストローク調整部材53に締め付けると、ストローク調整部材53は所定の位置で固定される。駆動ロッド42にはストローク調整部材53の端面に当接する大径のストッパ54が設けられている。駆動ロッド42の往復動ストロークは、ストローク調整部材53の端面とストッパ54の距離により設定され、駆動ロッド42の往復動ストロークにより吐出ロッド36の往復動ストロークが設定される。このように、制御流路33内へのグリスGの供給量は、駆動ロッド42の前進移動ストロークにより定まることになる、したがって、ストローク調整部材53の駆動ケース37に対する軸方向位置を調整することによって、吐出ロッド36によるグリスGの供給量を調整することができる。
【0040】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
11 収納容器
12 吐出ノズル
13 流路切換弁
15 注入側部
15a 注入室
16 吐出側部
16a 吐出室
17 ジョイント部
17a 供給室
18 バルブケース
21 外側弁座面
22 仕切り部材
23 弁室
24 内側弁座面
25 弁体
25a 基部
25b 環状フランジ部
31 連通管
31a 貫通孔
32 吐出制御ブロック
33 制御流路
36 吐出ロッド
37 駆動ケース
37c 装着筒部
42 駆動ロッド
44 圧縮コイルばね
46 止めリング
51 排気孔
52 排気ガイド溝
G グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性材料を吐出具に案内する案内流路を切り換える流路切換弁であって、
圧縮空気で加圧された流動性材料が供給される注入室および当該注入室に連なる円筒形状の外側弁座面と、
前記外側弁座面の径方向内方に配置され内側の吐出室と外側の供給室とを仕切る円筒形状の仕切り部材と、
前記仕切り部材の先端側部に設けられ前記外側弁座面との間で弁室を区画する内側弁座面と、
前記供給室に連通するとともに吐出ロッドによって容積変化する制御流路が形成された吐出制御ブロックと、
前記弁室内に配置され前記内側弁座面を開閉する基部、および当該基部に一体に設けられ弾性変形によって前記外側弁座面を開閉する環状フランジ部を有する弁体とを有し、
前記環状フランジ部が弾性変形して前記外側弁座面から離れ前記注入室から前記制御流路へ流動性材料が流れ、前記基部が前記内側弁座面に当接して前記吐出口への流動性材料の流れを止める充填動作と、
前記環状フランジ部の弾性変形が復元して前記外側弁座面に接し前記外側弁座面を閉鎖するバランス動作と、
前記吐出ロッドが前記制御流路の容積を小さくして前記注入室の圧力よりも前記制御流路の圧力が高まったときには、前記弁体の前記基部が前記内側弁座面から離れて前記制御流路から前記吐出室の吐出動作とを行うことを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
流動性材料を吐出具に吐出する流動性材料の吐出制御装置であって、
圧縮空気で加圧された流動性材料が供給される注入室および当該注入室に連なる円筒形状の外側弁座面と、
前記外側弁座面の径方向内方に配置され内側の吐出室と外側の供給室とを仕切る円筒形状の仕切り部材と、
前記仕切り部材の先端側部に設けられ前記外側弁座面との間で弁室を区画する内側弁座面と、
前記供給室に連通するとともに吐出ロッドによって容積変化する制御流路が形成された吐出制御ブロックと、
前記吐出制御ブロックに設けられ、前記吐出ロッドを往復動する吐出手段と、
前記弁室内に配置され前記内側弁座面を開閉する基部、および当該基部に一体に設けられ弾性変形によって前記外側弁座面を開閉する環状フランジ部を有する弁体とを有し、
前記環状フランジ部が弾性変形して前記外側弁座面から離れ前記注入室から前記制御流路へ流動性材料が流れ、前記基部が前記内側弁座面に当接して前記吐出口への流動性材料の流れを止める充填動作と、
前記環状フランジ部の弾性変形が復元して前記外側弁座面に接し前記外側弁座面を閉鎖するバランス動作と、
前記吐出ロッドが前記制御流路の容積を小さくして前記注入室の圧力よりも前記制御流路の圧力が高まったときには、前記弁体の前記基部が前記内側弁座面から離れて前記制御流路から前記吐出室の吐出動作とを行うことを特徴とする流動性材料の吐出制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の流動性材料の吐出制御装置において、前記吐出手段は前記吐出ロッドが往復動自在に収容された駆動ケースを有し、流動性材料が充填された前記制御流路を上方向に向かせて前記吐出制御ブロックを配置した状態のもとで前記制御流路内に前記吐出ロッドを挿入し、前記制御流路内から流動性材料をオーバーフローさせて前記駆動ケースが前記吐出制御ブロックに取り付けられることを特徴とする吐出制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の流動性材料の吐出制御装置において、前記吐出手段は前記吐出ロッドを駆動する駆動ロッドと当該駆動ロッドを軸方向に往復動自在に収容する駆動ケースとを有し、前記駆動ロッドの移動ストロークを調整するストローク調整部材を前記駆動ケースに設けることを特徴とする流動性材料の吐出制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53684(P2013−53684A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192486(P2011−192486)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】