説明

流路切替装置

【課題】簡単な構成及び制御で、導入部から3つ以上の放出部の内のいずれか1つの放出部に択一的に流体を流すことができる流路切替装置を提供すること。
【解決手段】流路切替装置1は、内外に連通する導入部11b及び第1から第3の放出部11c〜11eを有するケース11と、ケース11内に収容され、駆動回転軸14の回転駆動に連動して回転し、その回転角に応じて第1から第3の放出部11c〜11eの内のいずれか1つを導入部11bと連通させるとともに他の2つを遮蔽する切替プレート20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用洗浄装置の一部として用いられる流路切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、フロントウィンドや車載カメラのレンズ等の洗浄対象に対して単一のタンクや単一のポンプにて洗浄液を噴射するために、その流路上に弁を有した分岐部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような分岐部を備えた車両では、単一のタンクや単一のポンプを備えた構成でありながら、スイッチ操作によって分岐部の弁を切替えることで2つの洗浄対象のいずれか一方に洗浄液を噴射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−182080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では洗浄対象として車載カメラのレンズ等が追加されるなど、洗浄対象が増加傾向にあり、例えば、フロントウィンド、リアウィンド、及び車載カメラのレンズ等を含む3つ以上の洗浄対象を有することがある。そして、このような場合では、複数の前記弁を設けるとともに、それらをそれぞれ制御することが考えられるが、その場合、構成及び制御が複雑となってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、簡単な構成及び制御で、導入部から3つ以上の放出部の内のいずれか1つの放出部に択一的に流体を流すことができる流路切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、内外に連通する導入部及び3つ以上の放出部を有するケースと、前記ケース内に収容され、駆動回転軸の回転駆動に連動して回転し、その回転角に応じて3つ以上の前記放出部の内のいずれか1つを前記導入部と連通させるとともに他の前記放出部を遮蔽する切替部材とを備えたことを要旨とする。
【0007】
同構成によれば、切替部材が駆動回転軸の回転駆動に連動して回転され、その回転角に応じて3つ以上の放出部の内のいずれか1つが導入部と連通されるとともに他の放出部が遮蔽される。よって、簡単な構成及び制御で、導入部から3つ以上の放出部の内のいずれか1つの放出部に択一的に流体を流すことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流路切替装置において、前記切替部材はその回転軸線方向に移動可能に設けられ、前記切替部材をその回転軸線方向であって前記ケース内における前記放出部の開口側に付勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、切替部材は、付勢手段によって、その回転軸線方向であってケース内における放出部の開口側に付勢されるため、選択されていない放出部の開口を良好に遮蔽することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の流路切替装置において、前記放出部毎に対応した位置から前記駆動回転軸を回転させると前記付勢手段の付勢力に抗して前記切替部材を前記回転軸線方向に移動させる係合機構部を備えたことを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、係合機構部は、放出部毎に対応した位置から駆動回転軸を回転させると前記付勢手段の付勢力に抗して切替部材を回転軸線方向に移動させて切替部材と放出部の開口とが離間されるため、切替部材の回転時に該切替部材が放出部の開口と摺接し続けることがない。その結果、摺接による摩耗を抑制することができるとともに、駆動回転軸を駆動するモータの負荷を低減することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の流路切替装置において、前記駆動回転軸と前記切替部材とは、回転方向に遊びを持たせた遊嵌部を介して連結されたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、駆動回転軸と切替部材とは、回転方向に遊びを持たせた遊嵌部を介して連結されるため、放出部毎に対応した位置から駆動回転軸を回転させる際に、切替部材が回転を開始する前に切替部材を放出部の開口から離間する方向にスムーズに移動させることができる。よって、切替部材の回転初期時においても該切替部材が放出部の開口と摺接することがなく、摺接による摩耗をより抑制することができるとともに、前記モータの負荷をより低減することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流路切替装置において、前記ケース内における前記放出部の開口の全周には、前記切替部材側に突出した弾性シール部材が設けられたことを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、ケース内における放出部の開口の全周には、切替部材側に突出した弾性シール部材が設けられるため、選択されていない放出部の開口と切替部材との隙間の発生を抑えることができ、選択されていない放出部を良好に遮蔽することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流路切替装置において、前記放出部は3つであり、前記切替部材の回転角を、3つの前記放出部の内の中央の放出部と前記導入部とを連通させる角度に付勢するための中央位置付勢手段を備えたことを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、切替部材の回転角を、3つの放出部の内の中央の放出部と導入部とを連通させる角度に付勢するための中央位置付勢手段を備えるため、例えば、駆動回転軸を駆動するモータの非通電時には常に中央の放出部と導入部とを連通させた状態とすることができる。そして、駆動回転軸を一方に回転(正回転)させると一方の放出部と導入部とを連通させ、駆動回転軸を他方に回転(逆回転)させると他方の放出部と導入部とを連通させるといったことが可能となる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の流路切替装置において、前記ケースと前記切替部材には、該切替部材の回転する角度の範囲を、3つの前記放出部の内の一方の端の放出部と前記導入部とが連通される角度から他方の端の放出部と前記導入部とが連通される角度までとするように、互いに係合する回転範囲規制部が設けられたことを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、回転範囲規制部によって、切替部材の回転する両終端位置が、一方の端の放出部と導入部とが連通される位置と他方の端の放出部と導入部とが連通される位置とに決められることから、駆動回転軸の角度制御を行う必要がない。即ち、単純な制御(非通電、又は正回転通電、又は逆回転通電)で、導入部から3つの放出部の内のいずれか1つに択一的に流体を流すことが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構成及び制御で、導入部から3つ以上の放出部の内のいずれか1つの放出部に択一的に流体を流すことができる流路切替装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態における流路切替装置の分解斜視図。
【図2】一実施形態における流路切替装置の断面図。
【図3】一実施形態におけるケースと切替プレートの関係を説明するための説明図。
【図4】一実施形態における流路切替装置の動作を説明するための説明図。
【図5】一実施形態における流路切替装置の動作を説明するための説明図。
【図6】一実施形態におけるケースとカムリングの関係を説明するための説明図。
【図7】(a)一実施形態におけるカムピンの斜視図。(b)一実施形態におけるカムリングの斜視図。
【図8】一実施形態における切替プレートの一状態を説明するための説明図。
【図9】一実施形態における切替プレートの一状態を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を車両用洗浄装置の一部として具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1及び図2に示す流路切替装置1は、車両に取り付けられ、単一の図示しないタンクからの洗浄液を洗浄対象としての図示しないフロントウィンド、リアウィンド、及び車載カメラ(リアビューカメラ)のレンズのいずれか1つに噴射するために、タンクと各ノズルとの流路(ホース)上に設けられるものである。
【0023】
流路切替装置1は、ケース11と、3つの弾性シール部材12と、ケースカバー13と、駆動回転軸14と、一体回転プレート15と、一対の中央付勢コイルばね16と、カムピン17と、カムリング18と、遊嵌係合部材19と、切替部材としての切替プレート20と、付勢手段としてのコイルばね21と、シールリングSとを備える。尚、本実施の形態では、一対の中央付勢コイルばね16が中央位置付勢手段を構成している。
【0024】
ケース11は、略有底筒状に形成され、その底部(図1及び図2中、上部)11aに内外に連通する1つの導入部11b及び第1から第3の放出部11c〜11eが形成されている。導入部11b及び第1から第3の放出部11c〜11eは、底部11aにおいて90°間隔未満に配置され(図6参照)、それぞれ底部11aから軸線方向の両方(ケース11の内外)に突出するように略円筒状に形成されている。尚、ケース11外における導入部11bには、前記タンク内の洗浄液を送給するポンプに接続されたホースが接続されることになる。又、ケース11外における第1の放出部11cにはフロントウィンド用ノズルに接続されたホースが接続され、ケース11外における第2の放出部11dにはリアウィンド用ノズルに接続されたホースが接続され、ケース11外における第3の放出部11eにはカメラレンズ用ノズルに接続されたホースが接続されることになる。
【0025】
又、ケース11内における第1から第3の放出部11c〜11eには、図2及び図6に示すように、円筒状の弾性シール部材12が外嵌されている。弾性シール部材12は、ゴム材又はエラストマー材よりなり、第1から第3の放出部11c〜11eの開口の全周に設けられるとともに、その開口端11z(図2参照)よりもケース11の内側(図2中、下側)に僅かに突出するように設けられている。言い換えると、弾性シール部材12は、その軸線方向長さが、ケース11内に突出した第1から第3の放出部11c〜11eの長さよりも僅かに長く設定されて、第1から第3の放出部11c〜11eにそれぞれ外嵌されている。
【0026】
又、図2に示すように、ケース11における開口端部には、該開口端部を略閉塞するようにケースカバー13が固定される。ケースカバー13は、略円盤状に形成され、その中央部に貫通孔13aが形成されている。この貫通孔13aには、ケース11の内外に延びる駆動回転軸14が挿通される。尚、本実施の形態の駆動回転軸14は、流路切替装置1の駆動源であるモータM(図1参照)のモータ回転軸と連結されて該モータ回転軸と一体回転するものであるが、モータMのモータ回転軸と一体のもの(モータ回転軸そのもの)としてもよい。
【0027】
又、ケースカバー13における内部側(ケース11の内部側)平面上には、図1に示すように、一対の固定側係合片13bが立設されている。
前記駆動回転軸14の中央部には、一体回転プレート15が圧入によって固定されている。一体回転プレート15における前記ケースカバー13の対向面上には、図1に示すように、一対の回転側係合片15aが立設されている。
【0028】
そして、固定側係合片13bと回転側係合片15aとの間には、図1及び図3に示すように、中央付勢コイルばね16が挟持されるように配置される。これにより、一体回転プレート15及び駆動回転軸14は、ケースカバー13及びケース11に対して常に同じ回転角度(後述する中央角度位置と対応した角度)となるように付勢されている。尚、一体回転プレート15の外周と前記ケース11の内周との間には、図2に示すように、一体回転プレート15を境にした回転軸線方向の両室を水密に区画するようにシールリングSが設けられている。
【0029】
又、駆動回転軸14の先端には、図1及び図2に示すように、カムピン17が圧入によって固定されている。カムピン17には、図7(a)に示すように、駆動回転軸14を中心として180°の対向した位置で対をなし軸線方向(前記ケースカバー13側)に突出する1対の係合凸部17aが形成されている。そして、各係合凸部17aの周方向両側面には、傾斜面17bが形成されている。
【0030】
又、図1及び図2に示すように、ケース11内において、前記カムピン17と軸線方向に対向する位置には、カムリング18がケース11に対して回転不能且つ軸線方向に移動可能に設けられている。カムリング18は、図7(b)に示すように、その周方向の一部に径方向外側に延出した外延部18aを有し、図6に示すように、その外延部18aが前記第1の放出部11c(その弾性シール部材12)と第2の放出部11d(その弾性シール部材12)との間に配置されることでケース11に対して回転不能とされている。又、カムリング18には、図7(b)に示すように、駆動回転軸14を中心として180°の対向した位置で対をなす3対の係合凹部18bが形成されている。この係合凹部18bは、前記係合凸部17aが嵌る形状に形成され、その周方向両側面(内側面)には、前記傾斜面17bと同様に傾斜した傾斜面18cが形成されている。
【0031】
又、駆動回転軸14には、前記一体回転プレート15と前記カムピン17との間において、図2に示すように、遊嵌係合部材19が圧入によって固定されている。遊嵌係合部材19は、図1及び図3に示すように、その周方向の一部に径方向外側に延出した外延係合部19aを有する。そして、ケース11内において遊嵌係合部材19と軸線方向に一致する位置には、切替プレート20が配置されている。
【0032】
切替プレート20は、図1及び図3に示すように、略円盤状に形成され、その中央部に係合貫通孔20aが形成されている。この係合貫通孔20aの周方向の一部には、図3に示すように、前記外延係合部19aの周方向幅よりも同幅が僅かに広いプレート係合部20bが切り欠き形成されている。そして、切替プレート20の係合貫通孔20aに前記遊嵌係合部材19が嵌挿され、プレート係合部20b内に外延係合部19aが配置されることで、遊嵌係合部材19(駆動回転軸14)と切替プレート20とが回転方向に遊びを持たせた状態で駆動連結されている。尚、本実施の形態では、前記係合貫通孔20a(プレート係合部20b)と前記遊嵌係合部材19(外延係合部19a)が遊嵌部を構成している。
【0033】
又、図2に示すように、ケース11内において、切替プレート20と前記一体回転プレート15との間には、コイルばね21が圧縮された状態で配置されている。これにより、切替プレート20は、回転軸線方向であってケース11内における前記第1から第3の放出部11c〜11eの開口側(開口端11z側)に付勢され、前記弾性シール部材12に押圧接触されている。又、切替プレート20は、前記カムリング18と軸線方向に当接し、カムリング18もコイルばね21の付勢力によって軸線方向のカムピン17側に付勢されることになる。
【0034】
そして、切替プレート20には、図3〜図5に示すように、その回転角に応じて第1から第3の放出部11c〜11eの内のいずれか1つを導入部11bと連通させるとともに他の2つを遮蔽するように設定された長孔20c及び円孔20dが形成されている。詳しくは、まず図3に示すように、切替プレート20の回転角が中央角度位置にある状態では、長孔20c及び円孔20dによって導入部11bと第1の放出部11cが(ケース11の内部空間K(図2参照)を介して)連通されるとともに切替プレート20の平面によって第2及び第3の放出部11d,11eが遮蔽されるように設定されている。又、図4に示すように、切替プレート20の回転角が前記中央角度位置から一方に回転した第1位置にある状態では、長孔20cによって導入部11bと第2の放出部11dが(ケース11の内部空間K(図2参照)を介して)連通されるとともに切替プレート20の平面によって第1及び第3の放出部11c,11eが遮蔽されるように設定されている。又、図5に示すように、切替プレート20の回転角が前記中央角度位置から他方に回転した第2位置にある状態では、長孔20cによって導入部11bと第3の放出部11eが(ケース11の内部空間K(図2参照)を介して)連通されるとともに切替プレート20の平面によって第1及び第2の放出部11c,11dが遮蔽されるように設定されている。尚、本実施の形態の長孔20cは、具体的には、約90°の範囲に亘って円弧形状に形成されている。又、本実施の形態では、図4及び図5に示すように、切替プレート20が前記第1位置から第2位置の範囲内で回転(回動)するように、切替プレート20の外縁に凸部20eが形成されるとともに、ケース11の内周面に凸部20eと周方向に係合するストッパ部11fが形成されている。即ち、本実施の形態では、切替プレート20の外縁に形成された凸部20eとケース11の内周面に形成されたストッパ部11fとが、切替プレート20の回転する角度の範囲を、前記第1位置の角度から前記第2位置の角度までとするように、互いに当接して係合する回転範囲規制部とされている。
【0035】
又、ここで、前記中央角度位置、前記第1位置、及び前記第2位置の各状態においては、前記カムピン17の係合凸部17aが前記カムリング18の係合凹部18b(3対の内の1対)に嵌るように設定されている。尚、図8は、前記中央角度位置の状態であって、カムピン17の係合凸部17aが前記カムリング18の係合凹部18b(3対の内の中央の1対)に嵌った状態を示している。
【0036】
次に、上記のように構成された流路切替装置1の作用について説明する。
まずモータMの非通電時においては、中央付勢コイルばね16の作用により、一体回転プレート15及び駆動回転軸14は、ケースカバー13及びケース11に対して常に同じ回転角度(中央付勢コイルばね16の付勢力が釣り合っている中立位置)とされ、図3及び図8に示すように、切替プレート20が前記中央角度位置とされる。よって、モータの非通電時には常に中央の第1の放出部11cと導入部11bとを連通させた状態とすることができる。
【0037】
次に、切替プレート20が中央角度位置にある状態でモータMを一方に通電(正回転通電)すると、駆動回転軸14が一方に回転(正回転)駆動され、その回転駆動に連動して切替プレート20が一方に回転し、図4に示すように、凸部20eと一方のストッパ部11fとが係合(当接)して前記第1位置に配置される。よって、第2の放出部11dと導入部11bとを連通させた状態とすることができる。ここで、この切替動作について詳述すると、まず駆動回転軸14と共にカムピン17が回転を開始すると、前記傾斜面17b,18cの作用により、コイルばね21の付勢力に抗して前記カムリング18及び切替プレート20が(一体回転プレート15側に)移動する。次に、駆動回転軸14が前記遊嵌部(係合貫通孔20aと遊嵌係合部材19)の遊び分回転が進むと、切替プレート20が回転を開始し、以後、切替プレート20が駆動回転軸14と一体回転し凸部20eと一方のストッパ部11fとが係合することで切替プレート20が前記第1位置に配置される。尚、図9は、切替プレート20が前記中央角度位置と前記第1位置との間にある状態であって、カムリング18及び切替プレート20が一体回転プレート15側に移動してカムピン17の係合凸部17aがカムリング18の係合凹部18bと非係合となっている状態を示している。又、ここで、駆動回転軸14を中央角度位置(又は第1位置又は第2位置)から回転させるときは、コイルばね21の付勢力に抗して前記係合凸部17aと前記係合凹部18bとが係合状態から離脱させる(非係合状態とする)ことで切替プレート20が駆動回転軸14の軸線方向に移動される。これにより、切替プレート20と各放出部(第1から第3の放出部11c〜11e)の開口部とが離間して切替プレート20と各放出部(第1から第3の放出部11c〜11e)とが非接触状態で切替プレート20が回転される。即ち、本実施の形態では、コイルばね21や係合凸部17aや係合凹部18b等が、上記のように駆動回転軸14を回転させる際に切替プレート20と各放出部(第1から第3の放出部11c〜11e)とを非接触状態とする係合機構部を構成している。
【0038】
又、切替プレート20が中央角度位置にある状態でモータMを他方に通電(逆回転通電)すると、駆動回転軸14が他方に回転(逆回転)駆動され、その回転駆動に連動して切替プレート20が他方に回転し、図5に示すように、凸部20eと他方のストッパ部11fとが係合して前記第2位置に配置される。よって、第3の放出部11eと導入部11bとを連通させた状態とすることができる。尚、この切替動作の詳細は前記第1位置に配置される動作と同様(回転方向が異なるのみ)となる。
【0039】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)切替プレート20が駆動回転軸14の回転駆動に連動して回転され、その回転角に応じて第1から第3の放出部11c〜11eの内のいずれか1つが導入部11bと連通されるとともに他の2つが遮蔽される。よって、簡単な構成及び制御で、導入部11bから第1から第3の放出部11c〜11eの内のいずれか1つに択一的に流体を流すことができる。その結果、例えば、本実施の形態のように単一のタンクや単一のポンプを備えた車両において、簡単な構成及び制御で、フロントウィンド、リアウィンド、及び車載カメラのレンズのいずれか1つに択一的に洗浄液を噴射させることができる。
【0040】
(2)切替プレート20は、コイルばね21によって、その回転軸線方向であってケース11内における第1から第3の放出部11c〜11eの開口側に付勢されるため、選択されていない第1から第3の放出部11c〜11eの開口を良好に遮蔽することができる。
【0041】
(3)第1から第3の放出部11c〜11e毎に対応した位置(中央角度位置又は第1位置又は第2位置と対応した位置)から駆動回転軸14を回転させるとコイルばね21の付勢力に抗して切替プレート20を駆動回転軸14の軸線方向に移動させる係合機構部(コイルばね21や係合凸部17aや係合凹部18b等)を備える。よって、前記係合機構部は、中央角度位置又は第1位置又は第2位置と対応した位置から駆動回転軸14の軸線方向に駆動回転軸14を回転させるとコイルばね21の付勢力に抗して切替プレート20を移動させる、例えば、傾斜面17b,18cを有したものとすることで、切替プレート20が第1から第3の放出部11c〜11eの開口(詳しくは弾性シール部材12)から離間する方向に移動される。そのため、切替プレート20の回転時に該切替プレート20が前記開口(詳しくは弾性シール部材12)と摺接し続けることがない。その結果、摺接による摩耗を抑制することができるとともに、駆動回転軸14を駆動するモータMの負荷を低減することができる。
【0042】
(4)駆動回転軸14と切替プレート20とは、回転方向に遊びを持たせた遊嵌部(係合貫通孔20aと遊嵌係合部材19)を介して連結されるため、切替プレート20が回転を開始する前に切替プレート20を第1から第3の放出部11c〜11eの開口(詳しくは弾性シール部材12)から離間する方向にスムーズに移動させることができる。よって、切替プレート20の回転初期時においても該切替プレート20が前記開口(詳しくは弾性シール部材12)と摺接することがなく、摺接による摩耗をより抑制することができるとともに、前記モータMの負荷をより低減することができる。
【0043】
(5)ケース11内における第1から第3の放出部11c〜11eの開口の全周には、切替プレート20側に突出した弾性シール部材12が設けられるため、選択されていない開口と切替プレート20との隙間の発生を抑えることができ、第1から第3の放出部11c〜11eの内の選択されていない2つを良好に遮蔽することができる。
【0044】
(6)切替プレート20の回転角を、中央の第1の放出部11cと導入部11bとを連通させる角度(中央角度位置)に付勢するための中央付勢コイルばね16を備えるため、例えば、駆動回転軸14を駆動するモータMの非通電時には常に中央の第1の放出部11cと導入部11bとを連通させた状態とすることができる。そして、駆動回転軸14を一方に回転(正回転)させると第2の放出部11dと導入部11bとを連通させ、駆動回転軸14を他方に回転(逆回転)させると第3の放出部11eと導入部11bとを連通させるといったことが可能となる。
【0045】
(7)回転範囲規制部(凸部20eとストッパ部11f)によって、切替プレート20の回転する両終端位置が、第2の放出部11dと導入部11bとが連通される第1位置と第3の放出部11eと導入部11bとが連通される第2位置とに決められることから、駆動回転軸14の角度制御を行う必要がない。即ち、即ち、単純な制御(非通電、又は正回転通電、又は逆回転通電)で、導入部11bから第1から第3の放出部11c〜11eの内のいずれか1つに択一的に流体を流すことが可能となる。
【0046】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、切替プレート20をその回転軸線方向であってケース11内における第1から第3の放出部11c〜11eの開口側に付勢する付勢手段(コイルばね21)を備える構成としたが、選択されていない第1から第3の放出部11c〜11eの開口を遮蔽することができれば、付勢手段を備えていない構成としてもよい。又、ケース11内における第1から第3の放出部11c〜11eの開口の全周には、切替プレート20側に突出した弾性シール部材12が設けられるとしたが、弾性シール部材12を備えていない構成としてもよい。尚、この場合、例えば、前記開口と切替プレート20との軸方向のずれがないように高精度な寸法精度や組み付け精度が必要となる。又、付勢手段はコイルばね21と同様の機能を有する他の付勢手段に変更してもよい。
【0047】
・上記実施の形態では、駆動回転軸14と切替プレート20とは、回転方向に遊びを持たせた遊嵌部(係合貫通孔20aと遊嵌係合部材19)を介して連結されるとしたが、これに限定されず、単純に一体回転するように連結した構成としてもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、切替プレート20の回転角を、中央の第1の放出部11cと導入部11bとを連通させる角度(中央角度位置)に付勢するための中央位置付勢手段(中央付勢コイルばね16)を備えるとしたが、中央位置付勢手段を備えていない構成としてもよい。尚、この場合、駆動回転軸14の角度制御(中央角度位置での停止制御)が可能なモータMとして、駆動回転軸14の角度制御を行う必要がある。又、中央位置付勢手段は中央付勢コイルばね16と同様の機能を有する他の中央位置付勢手段に変更してもよい。
【0049】
・上記実施の形態では、中央位置付勢手段(中央付勢コイルばね16)を一対の中央付勢コイルばね16としたが、これに限定されず、1つの中央付勢コイルばね16の一端を一体回転プレート15の回転側係合片15aに係止すると共に、他端をケースカバー13の固定側係合片13bに係止して、モータMが一方に回転するときに中央付勢コイルばね16が圧縮状態となり、他方へ回転するときは伸長状態(引っ張り状態)となることで、1つの中央付勢コイルばね16の自然状態を付勢力が釣り合っている中立位置としてもよい。このようにすると、構造が簡単でしかも部品点数も低減できる。
【0050】
・上記実施の形態では、放出部の数を3つ(第1から第3の放出部11c〜11e)としたが、これに限定されず、4つ以上の放出部を有した流路切替装置としてもよい。尚、この場合、切替プレート20の孔(長孔20c及び円孔20d)のパターンを放出部の配置に応じて変更する必要がある。
【0051】
・上記実施の形態では、流路切替装置1を車両用洗浄装置の一部として用いられるものとしたが、これに限定されず、他の装置に用いられるものとしてもよい。又、気体の流路切替装置として具体化してもよい。
【符号の説明】
【0052】
11…ケース、11b…導入部、12…弾性シール部材、14…駆動回転軸、16…中央付勢コイルばね(中央位置付勢手段)、17a…係合機構部の一部を構成する係合凸部、17b,18b…係合機構部の一部を構成する係合凹部、18c…傾斜面、19…遊嵌部の一部を構成する遊嵌係合部材、20…切替プレート(切替部材)、20a…遊嵌部の一部を構成する係合貫通孔、21…係合機構部の一部を構成するコイルばね(付勢手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外に連通する導入部及び3つ以上の放出部を有するケースと、
前記ケース内に収容され、駆動回転軸の回転駆動に連動して回転し、その回転角に応じて3つ以上の前記放出部の内のいずれか1つを前記導入部と連通させるとともに他の前記放出部を遮蔽する切替部材と
を備えたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流路切替装置において、
前記切替部材はその回転軸線方向に移動可能に設けられ、
前記切替部材をその回転軸線方向であって前記ケース内における前記放出部の開口側に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流路切替装置において、
前記放出部毎に対応した位置から前記駆動回転軸を回転させると前記付勢手段の付勢力に抗して前記切替部材を前記回転軸線方向に移動させる係合機構部を備えたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流路切替装置において、
前記駆動回転軸と前記切替部材とは、回転方向に遊びを持たせた遊嵌部を介して連結されたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流路切替装置において、
前記ケース内における前記放出部の開口の全周には、前記切替部材側に突出した弾性シール部材が設けられたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流路切替装置において、
前記放出部は3つであり、
前記切替部材の回転角を、3つの前記放出部の内の中央の放出部と前記導入部とを連通させる角度に付勢するための中央位置付勢手段を備えたことを特徴とする流路切替装置。
【請求項7】
請求項6に記載の流路切替装置において、
前記ケースと前記切替部材には、該切替部材の回転する角度の範囲を、3つの前記放出部の内の一方の端の放出部と前記導入部とが連通される角度から他方の端の放出部と前記導入部とが連通される角度までとするように、互いに係合する回転範囲規制部が設けられたことを特徴とする流路切替装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−79685(P2013−79685A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220202(P2011−220202)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】