説明

流路構造

【課題】液体が凍結により膨張したものとしても多層基板の破損を抑えられるようにする。
【解決手段】薄板102にはスリット121が形成され、薄板102が薄板101と薄板103との間に挟持された状態でこれらに接合されることで、スリット121が塞がれている。薄板102と薄板103との間には弾性膜104が挟まれている。弾性膜104はスリット121の部分において撓んでおり、その撓んだ部分141がスリット121に張り込んでいる。スリット121による内部空間が弾性膜104によって上下2つの領域122,123に区切られている。一方の領域122は、水が流れる流路である。他方の領域123には、空気等の気体が満たされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、腕時計、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等といった小型電子機器がめざましい進歩・発展を遂げている。電子機器の電源として一次電池又は二次電池を用いるのが一般的であるが、エネルギー利用効率のよい燃料電池を電子機器の電源に用いるための研究開発が行われている。
【0003】
また、燃料電池を使用するためには、各種の周辺機器が必要となる。周辺機器としては、改質器、一酸化炭素除去器、燃焼器、水冷器、ポンプ等がある。燃料電池及び各種の周辺機器の間を燃料、水、反応物、生成物等が流れるようにするために、流路が必要となる。流路には、多層基板が用いられる。即ち、多層基板の各薄板には、一又は複数のスリット及び一又は複数の貫通孔が形成され、これら薄板が積層されることによってスリット及び貫通孔が連なって、所定の流路が構成されている。燃料電池や各種の周辺機器は多層基板に搭載され、多層基板の内部の流路によって燃料、水、反応物、生成物等が燃料電池または各種の周辺機器の間を送られる。
【特許文献1】特開2005−32609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池、各種周辺機器及び多層基板を用いた燃料電池システムが氷点下の環境で使用されると、多層基板の内部に残留した水が凍結する。水は凍結により膨張するから、膨張による荷重が多層基板の内部から多層基板に作用し、多層基板が破損するおそれがある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、液体が凍結により膨張したものとしても多層基板の破損を抑えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、
流体を流す空間内に弾性膜が配置され、前記空間が前記弾性膜によって2つの領域に区切られ、前記2つの領域のうち一方の領域にガスが満たされ、他方の領域に液体が流れることを特徴とする流路構造が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
流体を流す空間内に蛇腹状膜が配置され、前記空間が蛇腹状膜によって2つの領域に区切られ、前記2つの領域のうち一方の領域にガスが満たされ、他方の領域に液体が流れることを特徴とする流路構造が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
液体が流れる液体流路、ガスが流れるガス流路及び前記ガス流路から前記液体流路に通じる連通路が形成され、
前記連通路に電磁弁が設けられていることを特徴とする流路構造が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流路の内部に残存する液体が凍結したものとしても、流路構造の破損を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、燃料電池システム1の概略構成を示したブロック図である。
この燃料電池システム1は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳、携帯無線機その他の電子機器に取り付けられるものである。
【0011】
燃料電池システム1は、本体モジュール2と、カートリッジ3と、を有する。本体モジュール2は電子機器に搭載されている。カートリッジ3は電子機器に対して着脱可能とされ、カートリッジ3が電子機器に装着されるとカートリッジ3が本体モジュール2に接続される。
【0012】
カートリッジ3は、燃料貯蔵部4、水貯蔵部5、気液分離膜6及び濾過部7を有する。
燃料貯蔵部4には、燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル等)が貯蔵されている。水貯蔵部5には、水が貯蔵されている。
気液分離膜6が水貯蔵部5に設けられ、カートリッジ3外から水貯蔵部5内に導入された気体が気液分離膜6を透過するが、水貯蔵部5内の液体が気液分離膜6を透過しない。気液分離膜6を透過した気体は外部に排出される。気液分離膜6としては、多孔質の4フッ化エチレン樹脂を用いるとよい。
濾過部7は、水貯蔵部5から排出される水を濾過して、その水に含まれる異物を捕捉するものである。濾過部7は、イオン交換樹脂及び多孔質膜を有する。
【0013】
本体モジュール2は、水供給ポンプ11、流量制御バルブ12,13、加湿器14,15、エアポンプ31、流量制御バルブ32〜34、燃料供給ポンプ51、気化器52、改質器53、CO除去器54、触媒燃焼器55、断熱容器56、燃料電池57、触媒燃焼器58及び熱交換器59等を有する。
【0014】
カートリッジ3が本体モジュール2に装着されると、濾過部7が水供給ポンプ11に接続され、燃料貯蔵部4が燃料供給ポンプ51に接続され、水貯蔵部5が流路67を介して熱交換器59に接続される。
【0015】
燃料供給ポンプ51は流路60を介して気化器52に接続され、気化器52が流路61を介して改質器53に接続されている。改質器53の下流にCO除去器54が設けられ、これら改質器53及びCO除去器54が大気圧より十分低圧の断熱容器56内に収容されている。断熱容器56内においては改質器53の下流にCO除去器54が接続されている。断熱容器56内には触媒燃焼器55も収容され触媒燃焼器55の燃焼熱が断熱容器56外に放出することを抑制している。CO除去器54は流路62を介して加湿器14に接続されている。加湿器14は流路63を介して燃料電池57のアノードに接続されている。燃料電池57のアノードは流路64を介して触媒燃焼器55に接続されている。触媒燃焼器55は流路65を介して触媒燃焼器58に接続されている。触媒燃焼器58は流路66を介して熱交換器59に接続されている。
【0016】
エアポンプ31は流路35を介して流量制御バルブ32に接続されている。流量制御バルブ32は流路36を介してCO除去器54に接続されている。また、エアポンプ31は流路37を介して流量制御バルブ34に接続されている。流量制御バルブ34は流路40を介して加湿器15に接続されている。加湿器15は流路41を介して燃料電池57のカソードに接続されている。燃料電池57のカソードの下流の流路42は、流路65に合流している。また、エアポンプ31は流路38を介して流量制御バルブ33に接続されている。流量制御バルブ33の下流の流路39は流路64に合流している。
【0017】
水供給ポンプ11は流路16を介して流量制御バルブ12に接続されているとともに、流路17を介して流量制御バルブ13に接続されている。流量制御バルブ12の下流の流路18は、流路60に合流している。流量制御バルブ13は、流路19を介して加湿器14に接続されているとともに、流路21を介して加湿器15に接続されている。加湿器14、15のそれぞれの下流の流路20,22は流路67に合流している。
【0018】
水供給ポンプ11は、水貯蔵部5内の水を気化器52及び加湿器14,15に向けて送液するものである。流量制御バルブ12は、水供給ポンプ11から気化器52に流れる水の流量を制御するものである。流量制御バルブ13は、水供給ポンプ11から加湿器14,15に流れる水の流量を制御するものである。流量制御バルブ12,13には、流量センサが併設され、流量センサによって水の流量が検出される。
【0019】
エアポンプ31は、外部の空気をCO除去器54、加湿器15及び触媒燃焼器55に向けて送るものである。流量制御バルブ32は、エアポンプ31からCO除去器54に流れる空気の流量を制御するものである。流量制御バルブ33は、エアポンプ31から触媒燃焼器55に流れる空気の流量を制御するものである。流量制御バルブ34は、エアポンプ31から加湿器14に流れる空気の流量を制御するものである。流量制御バルブ32〜34には流量センサが併設され、流量センサによって空気の流量が検出される。
【0020】
燃料供給ポンプ51は、燃料貯蔵部4内の燃料を気化器52に向けて送液するものである。燃料がメタノールの場合、燃料供給ポンプ51によって気化器52に送られる燃料と、水供給ポンプ11によって気化器52に送られる水との混合比(モル比)は、燃料が1に対して、水が1.2〜1.8である。そのような混合比になるよう、流量制御バルブ12によって水の流量が調整される。
【0021】
気化器52は、燃料と水を加熱して気化させるものである。気化器52で気化した燃料と水の混合気が、改質器53に流れる。
改質器53は、気化器52から送られた燃料を水素に改質するものである。具体的には、気化器52から送られた燃料と水の混合気が改質器53の内部を流れて、燃料と水が触媒層によって反応し、水素、二酸化炭素等が生成される。また、微量な一酸化炭素も数千から数万ppmの濃度で生成される。燃料貯蔵部4に貯蔵された燃料がメタノールである場合、改質器53では、次式(1)、(2)のような反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
2+CO2→H2O+CO …(2)
改質器53で生成された生成ガスがCO除去器54に送出される。
【0022】
CO除去器54においては、改質器53から送られた生成ガスと、エアポンプ31から送られた空気が混合される。CO除去器54は、生成ガスのうち一酸化炭素を選択的に酸化させ、それにより一酸化炭素を除去するものである。CO除去器54を経た生成ガスは加湿器14に送出される。加湿器14は、CO除去器54から流れてきた生成ガスを、水供給ポンプ11から流れてきた水によって加湿するものである。加湿器14を経た生成ガスは燃料電池57のアノードに送出される。加湿器14を経た水は流路20、流路67を順に通って水貯蔵部5に送出される。
【0023】
加湿器15は、エアポンプ31から流れてきた空気を、水供給ポンプ11から流れてきた水によって加湿するものである。加湿器15を経た空気は燃料電池57のカソードに送出される。加湿器15を経た水は流路22、流路67を順に通って水貯蔵部5に送出される。
【0024】
燃料電池57は、アノード、電解質膜及びカソード等を有する。この燃料電池57は、アノードに供給された生成ガス中の水素と、カソードに供給された空気中の酸素とを電気化学反応させて、電気を生成するものである。電解質膜が固体高分子型電解質膜である場合、アノードでは次式(3)のような反応が起こり、カソードでは次式(4)のような反応が起こる。
2→2H++2e- ・・・(3)
2H++1/2O2+2e-→H2O ・・・(4)
カソードを通過した空気は流路42、流路65を順に通って触媒燃焼器58に送られる。アノードでは生成ガス中の全ての水素が反応するのではなく、未反応の水素もあり、アノードに供給された水素の20%程度が未反応である。アノードを通過した生成ガスは、触媒燃焼器55に送られる。
【0025】
触媒燃焼器55は、生成ガス中の水素等の酸化・燃焼をさせ、それにより燃焼熱を生成するものである。触媒燃焼器55で生成された熱は、改質器53及びCO除去器54の加熱に用いられる。改質器53及びCO除去器54の加熱効率を高めるべく、また、改質器53及びCO除去器54の温度分布を適切に保つべく、改質器53、CO除去器54及び触媒燃焼器55は剛性を有する断熱容器56内に収容されている。断熱容器56内が真空圧に保たれ、それにより断熱がなされる。また、改質器53、CO除去器54及び触媒燃焼器55は、電熱ヒータ73によって加熱される。電熱ヒータ73は、金属薄膜(例えば、金、白金)からなる。電熱ヒータ73の電気抵抗と温度の関係には線形性があり、電熱ヒータ73がサーミスタとしても機能する。電熱ヒータ73は、起動時に触媒燃焼器55が改質器53及びCO除去器54を所望の温度に加熱できない場合の加熱手段や、触媒燃焼器55が安定して加熱している定常運転時の温度の微調整を行うための補助加熱手段として用いられる。
【0026】
触媒燃焼器55を経た生成ガスは、流路65を通って触媒燃焼器58に送られる。触媒燃焼器58は、生成ガス中の水素等の酸化・燃焼をさせ、それにより水素を問題がない程度の低濃度となるように除去するものである。
【0027】
触媒燃焼器58を経た生成ガスは、流路66を通って熱交換器59に送られる。熱交換器59は、外部と燃焼によって加熱された生成ガスの熱交換を行うことによって、生成ガスを冷却するものである。これにより、生成ガス中の水(水蒸気)が液化する。液化した水と生成ガスは、流路67を通って水貯蔵部5に送られる。熱交換器59から水貯蔵部5に送られる水と生成ガスには、加湿器14,15から送られてきた水が混合される。
【0028】
水貯蔵部5においては液化した水が貯蔵される。一方、生成ガス(液化しなかった水、二酸化炭素等)は、気液分離膜6を通過して外部に排出される。
【0029】
本体モジュール2には制御回路70、蓄電部71及びインターフェース72が設けられている。制御回路70は、水供給ポンプ11、燃料供給ポンプ51及び流量制御バルブ12,13,32,33,34等を制御するものである。蓄電部71は、燃料電池57で生成された電気を蓄電するものである。インターフェース72は、制御回路70と電子機器の制御部との間でデータ転送を行うものである。
【0030】
図1において、流路16〜22には、液体状の水が流れる。流路35〜42には、空気が流れる。流路60〜66には、燃料、水、生成物又は空気が流れる。流路67には、液体状の水、気体状の生成物及び空気等が流れる。
【0031】
図2は、燃料電池システム1の外観を示した斜視図である。
図2に示すように、この燃料電池システム1は多層基板100を有する。多層基板100の上に流量制御バルブ12,13,32,33,34、断熱容器56及び燃料電池57が搭載されている。上述したように、断熱容器56の内部に改質器53、CO除去器54及び触媒燃焼器55が収容されている。
【0032】
多層基板100の下面にはエアポンプ31及び2つのカートリッジ3が取り付けられている。エアポンプ31は多層基板100に対して固定されているが、カートリッジ3は多層基板100から取り外すことができる。
【0033】
図1に示された燃料供給ポンプ51、気化器52、加湿器14,15、触媒燃焼器58、熱交換器59及び水供給ポンプ11も多層基板100に取り付けられている。
【0034】
多層基板100は、複数枚のセラミック等の薄板を積層してこれらを接合したものである。ここで、図1に示された流路16〜22、流路35〜42及び流路60〜67は、図2に示された多層基板100に形成されている。即ち、多層基板100の各薄板には、一又は複数のスリット及び一又は複数の貫通孔が形成され、これら薄板が積層されるとこれらスリット及び貫通孔が連なって、これらスリット及び貫通孔が流路16〜22、流路35〜42及び流路60〜67になって、図1に示すような経路が多層基板100に形成される。
【0035】
以下、多層基板100を用いた流路構造の各例について具体的に説明する。
【0036】
<第一例>
図3は、多層基板100のうち連続して積層された三枚の薄板101,102,103を示した断面図である。
図3に示すように、薄板102にはスリット121が形成され、薄板102が薄板101と薄板103との間に挟持された状態でこれらに接合されることで、スリット121が塞がれている。薄板102と薄板103との間には弾性膜104が挟まれている。弾性膜104はスリット121の部分において撓んでおり、その撓んだ部分141がスリット121に張り込んでいる。そのため、スリット121による内部空間が弾性膜104によって上下2つの領域122,123に区切られている。弾性膜104は、氷点下においても弾性力を失わない材料で構成されている。領域123の容積は、内部に液体が満たされている状態の領域122の容積の10%以上、好ましくは25%以上である。
【0037】
一方の領域122は、水等の液体が流れる流路である。つまり、図1に示された流路16〜22、60は、いずれも領域122と同じ構造になっている。他方の領域123には、空気等の気体が満たされ、液体は混入されていない。
【0038】
図1に示された燃料電池システム1の停止時においては、水供給ポンプ11、燃料供給ポンプ51等が停止する。水供給ポンプ11が停止すると、流路16〜22に流れていた水が流路16〜22内に滞留し、燃料供給ポンプ51が停止すると、流路60に流れていた燃料が流路16〜22内に滞留する。流路20、22は、流路67に連結している。カートリッジ3が本体モジュール2から取り外されたとき、水貯蔵部5に連結していた流路67の一端が開放されるが、より外側に位置する流路67の開放された一端から冷気が伝搬しはじめるため、流路67もしくは流路20、22では、まず先に開放された一端側から内部の水が氷結してしまい、一端が閉塞された後からより内側が氷結し膨張してしまう恐れがある。したがってカートリッジ3が本体モジュール2から外れた状態でも、外れていない状態でも、周囲の気温が氷点下まで低下すると、流路16〜22、60内の液体が凍結して膨張する。液体が水の場合、凍結に伴って約9%だけ膨張する。そうすると、弾性膜104が伸び、領域122の体積が大きくなるが、領域123内の気体が圧縮して領域123内の体積が小さくなる。領域123の小さくなる量は領域123の全体の体積の一部に過ぎないので、圧縮された気体は三枚の薄板101,102,103を破損するだけの応力が生じない。流路16〜22、60内の液体が温度上昇によって膨張する場合にも同様の作用が生じる。このように、領域123が隙間としてスリット121に存在しているから、領域123内に滞留した液体が凍結による膨張又は温度上昇による熱膨張をしても、部分141が伸張し領域123内の体積を拡張するので、薄板101〜103に大きな負荷を与えないようにすることができる。そのため、多層基板100の破損を抑えることができる。それゆえ、燃料電池システム1の停止時において、領域122に不凍液等を投入しなくても済む。
【0039】
なお、領域123は密閉された空間であってもよいし、多層基板100の表面から外部に通じていてもよい。また、領域123が、図1に示された流路35〜42、流路61〜67の何れかであってもよい。
【0040】
<第二例>
図4は、多層基板100のうち連続して積層された三枚の薄板201,202,203を示した断面図である。
図4に示すように、薄板202にはスリット221が形成され、薄板202が薄板201と薄板203との間に挟持された状態でこれらに接合されることで、スリット221が塞がれている。スリット221の内側には弾性膜204が設けられている。弾性膜204の両側が固着材205によってスリット221の内壁に固着されている。スリット221は、弾性膜204によって薄板203側の領域222と薄板201側の領域223に区切られている。図1に示された流路16〜22、60は、いずれも領域222と同じ構造になっており、その領域222には水等の液体が流れる。他方の領域223には、空気等の気体が満たされている。領域223が隙間として存在しているから、領域222内の水等の液体の凍結による膨張又は液体の熱膨張が生じても、薄板201〜203に大きな負荷を与えないようにすることができる。そのため、氷点下や高温の環境に燃料電池システム1または本体モジュール2を曝しても、多層基板100の破損を抑えることができる。それゆえ、燃料電池システム1の停止時において、領域222に不凍液等を投入しなくても済む。
【0041】
なお、領域223は密閉された空間であってもよいし、多層基板100の表面から外部に通じていてもよい。また、領域223が、図1に示された流路35〜42、流路61〜67の何れかであってもよい。
【0042】
<第三例>
図5は、多層基板100のうち連続して積層された四枚の薄板301,302,303,304を示した断面図である。
図5に示すように、薄板302にはスリット321が形成され、薄板303にもスリット331が形成されている。スリット321とスリット331が重なるようにして薄板302,303が接合されている。薄板302,303が薄板301と薄板304との間に挟持された状態でこれらに接合されることで、スリット321,331が塞がれている。
【0043】
スリット331の幅がスリット321の幅よりも狭く、スリット321,331の両側が段325となっている。スリット331の内側において、弾性膜304がスリット321を覆っている。弾性膜304はスリット331の両側の段325に接合されている。弾性膜304によって、スリット321による内部領域322とスリット331による内部領域323が仕切られている。図1に示された流路16〜22、60は、いずれも内部領域322と同じ構造になっており、その領域322には水等の液体が流れる。他方の領域323には、空気等の気体が満たされている。領域323が隙間として存在しているから、図6に示すように領域322内の水等の液体の凍結による膨張又は液体の熱膨張が生じても、薄板301〜304に大きな負荷を与えないようにすることができる。そのため、氷点下や高温の環境に燃料電池システム1または本体モジュール2を曝しても、多層基板100の破損を抑えることができる。それゆえ、燃料電池システム1の停止時において、領域322に不凍液等を投入しなくても済む。
【0044】
なお、領域323は密閉された空間であってもよいし、多層基板100の表面から外部に通じていてもよい。また、領域323が、図1に示された流路35〜42、流路61〜67の何れかであってもよい。
【0045】
<第四例>
図7は、多層基板100のうち連続して積層された四枚の薄板401,402,403,404を示した断面図である。
図7に示すように、薄板402にはスリット421が形成され、薄板403にもスリット431が形成されている。スリット421とスリット431が重なるようにして薄板402,403が接合されている。薄板402,403が薄板401と薄板404との間に挟持された状態でこれらに接合されることで、スリット421,431が塞がれている。
【0046】
スリット431の幅がスリット421の幅よりも狭く、スリット421,431の両側が段425となっている。スリット431の内側において、蛇腹状膜404がスリット421を覆っている。蛇腹状膜404はスリット431の両側の段425に接合されている。蛇腹状膜404によって、スリット421による内部領域422とスリット431による内部領域423が仕切られている。図1に示された流路16〜22、60は、いずれも領域422と同じ構造になっており、その領域422には水等の液体が流れる。他方の領域423には、空気等の気体が満たされている。領域423が隙間として存在しているから、図8に示すように領域422内の水等の液体の凍結による膨張又は液体の熱膨張が生じても、薄板401〜404に大きな負荷を与えないようにすることができる。そのため、氷点下や高温の環境に燃料電池システム1または本体モジュール2を曝しても、多層基板100の破損を抑えることができる。それゆえ、燃料電池システム1の停止時において、内部領域422に不凍液等を投入しなくても済む。
【0047】
なお、領域423は密閉された空間であってもよいし、多層基板100の表面から外部に通じていてもよい。また、領域423が、図1に示された流路35〜42、流路61〜67の何れかであってもよい。
【0048】
<第五例>
図9は、多層基板100を示した断面図である。
図9に示すように、多層基板100には流路501が形成されている。この流路501は、多層基板100の何れかの薄板(最上層、最下層の薄板を除く。)に形成されたスリットからなるものである。流路501は図1に示された流路16〜22の何れかであり、その流路501には水等の液体が流れる。
【0049】
また、流路502の層とは別の層において、流路502が多層基板100に形成されている。この流路502は、多層基板100の何れかの薄板(最上層、最下層の薄板を除く。)に形成されたスリットからなるものである。流路502は図1に示された流路35〜40の何れかであり、その流路502には空気が流れる。
【0050】
多層基板100には連通路503が形成され、連通路503が流路501,502に通じている。連通路503は、流路501の層と流路502の層との間の薄板を貫通した貫通孔からなる。多層基板100の内部にはマイクロバルブ510が設けられ、連通路503がマイクロバルブ510によって開閉される。マイクロバルブ510はノーマリークローズ型のバルブである。
【0051】
また、マイクロバルブ510は電磁弁であり、特に電磁ソレノイド式の弁である。
具体的には、マイクロバルブ510は、弁体511、バネ512、ロッド513、プランジャ514及びコイル515等を有する。弁体511とプランジャ514がロッド513によって連結され、プランジャ514の周囲にコイル515が巻装されている。バネ512によって弁体511、プランジャ514及びロッド513が付勢され、弁体511が連通路503に押し出され、連通路503が弁体511によって閉塞されている。
【0052】
図1に示された燃料電池システム1の動作時においては、水供給ポンプ11、燃料供給ポンプ51等が作動している。この際、コイル515には電流が流れず、弁体511がバネ512によって押し出されて、図9に示すように、連通路503が閉塞されている。
【0053】
図1に示された燃料電池システム1がその後停止する際には、水供給ポンプ11、燃料供給ポンプ51が停止するが、エアポンプ31は未だ停止しない。そして、コイル515に電流が流れると、図10に示すように、弁体511が引き込み、連通路503が開放される。そうすると、エアポンプ31によって送風された空気が連通路503を通って流路502に流れ込み、液体520に気泡521が生じる。
【0054】
その後、コイル515の電流が止まると、バネ512によって弁体511が押し出されて、再び図9に示すように、連通路503が弁体511によって閉塞される。そして、エアポンプ31も停止する。
【0055】
この状態において、周囲の気温が低下し、液体520が凍結する。液体520が凍結に伴って膨張すると、気泡521が圧縮されるから、多層基板100に大きな負荷を与えないようにすることができる。そのため、液体520が凍結等によって膨張しても、多層基板100の破損を抑えることができる。それゆえ、燃料電池システム1の停止時において、流路501に不凍液等を投入しなくても済む。
【0056】
なお、マイクロバルブ510がノーマリーオープン型である場合でも、マイクロバルブ510の開閉タイミングは上記の場合と同様である。
【0057】
また、図11、図12に示すようにマイクロバルブ510の弁体511が連通路503に対して平行な方向に進退するように、マイクロバルブ510が縦置きになって多層基板100に設けられていてもよい。この場合、弁体511の横断面積が連通路503の横断面積よりも大きいので、弁体511が押し出された場合に連通路503が弁体511によって閉塞される。また、弁体511の縦断面積が流路502の縦断面積よりも小さいので、弁体511が押し出された場合に流路502は弁体511によって完全には閉塞されない。
【0058】
なお、領域123,223,323,423は密閉された空間であってもよいし、多層基板100の表面から外部に通じていてもよい。また、領域123,223,323,423が、図1に示された流路35〜42、流路60〜67の何れかであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】燃料電池システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】燃料電池システムを示した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図6】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図8】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図9】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図10】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図11】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【図12】本発明の実施形態における流路構造を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 燃料電池システム
16〜22 流路
35〜42 流路
100 多層基板
101〜103、201〜203、301〜304、401〜404 薄板
104、204、304 弾性膜
121、221、321、331、421、431 スリット
122、222、322、423 領域
123、223、323、423 領域
404 蛇腹状膜
501 流路
502 流路
503 連通路
510 マイクロバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流す空間内に弾性膜が配置され、前記空間が前記弾性膜によって2つの領域に区切られ、前記2つの領域のうち一方の領域にガスが満たされ、他方の領域に液体が流れることを特徴とする流路構造。
【請求項2】
流体を流す空間内に蛇腹状膜が配置され、前記空間が蛇腹状膜によって2つの領域に区切られ、前記2つの領域のうち一方の領域にガスが満たされ、他方の領域に液体が流れることを特徴とする流路構造。
【請求項3】
液体が流れる液体流路、ガスが流れるガス流路及び前記ガス流路から前記液体流路に通じる連通路が形成され、
前記連通路に電磁弁が設けられていることを特徴とする流路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−65799(P2010−65799A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234412(P2008−234412)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】