説明

流路部材、ピペットチップ及び液体供給装置

【課題】液体流路内の液体の液量を一定にすることができる流路部材、ピペットチップ及び液体供給装置を提供する。
【解決手段】ピペットチップ72の開口部80が挿入可能な2つの開口部54Aを有する液体流路55の開口部54Aにピペットチップ72の開口部80を密着させるために、液体流路55の各開口部54Aに受部59を設けており、この受部59は、ピペットチップ72を開口部54Aに対向する位置に位置決めして開口部54Aに案内する第1〜第4内壁部(59A〜59D)を有し、これら内壁部(59A〜59D)の開口部54Aに接触しない位置に、第4内壁部59Aとピペットチップとの間に外部空気を導入するための空気導入用溝94を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出、吸入する供給管を用いて流路内の液体の入出を行なう液体流路を構成する流路部材、供給管の先端に装着されるピペットチップ、及び供給管と流路部材とを用いた液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ピペットチップを用いて、液体を供給したり吸入したりすることが行われている。例えば、特許文献1では、測定装置において被検体の固定された流路にセンシング物質を含んだ試薬を供給する際、2本のピペットチップを用い、流路の入口及び出口にそれぞれのピペットチップの先端を差し込み、入口側のピペットチップから試薬を吐出すると共に、出口側のピペットチップにより流路内のバッファ液を吸入している。
【0003】
特許文献1のように、流路に2本のピペットチップの先端を差し込んで液体の供給を行う場合、送液圧バランスの乱れや流路部材の寸法誤差等に起因して、液体流路ピペットチップを引き抜いた後の液面高さが不安定になることがある。
【0004】
液面が高くなる状態のまま送液を何度も繰り返すと、送液する毎に液面が累積的に高くなる場合があり、液体流路から液体があふれ出ることも考えられる。
【0005】
液体流路からの液体のあふれ出しを防止すべく、ピペットチップの引き抜き後に、液体を吸入することも考えられるが、液体流路内の液体まで吸い込んでしまう場合があり、液面高さを一定にすることは困難である。
【特許文献1】特開2006−064514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、液体流路内の液体の液量を一定にすることができる流路部材、ピペットチップ及び液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、先端に設けられた開口部から液体及び気体を吸入及び吐出可能な供給管の前記開口部が挿入可能な2つの口部を有し、前記供給管により内部の液体が供給及び排出される液体流路と、前記供給管を前記液体流路の前記口部に密着させるために前記液体流路の各口部に設けられた受部と、前記受部に設けられ、前記供給管を前記口部に対向する位置に位置決めしながら前記口部に案内するために前記供給管の先端の形状に応じた形状とされた案内部と、前記案内部の前記口部に接触しない位置に設けられ、前記案内部に外部空気を導入するための空気導入部と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、案内部の口部に接触しない位置に空気導入部を設けて、外部空気を導入するようにしているので、空気導入部の配設位置まで供給管の開口部を引き抜いた状態で供給管による液体の吸入を実行することにより、開口部近傍に液体が存在する場合は液体が供給管に吸入されると共に、開口部近傍に液体が存在しない場合には空気導入部を介して導入された外部空気が供給管に吸入される。
【0009】
したがって、外部空気が導入されない場合には液体流路内部の液体まで供給管に吸入される恐れがあったが、本発明によれば、開口部近傍の液体だけを効率よく吸入できるので、液体流路内の液体の液量を一定にすることができる。
【0010】
なお、前記空気導入部は、請求項2の発明のように、前記受部の内面に形成された切り欠きとしてもよいし、請求項3の発明のように、前記受部に形成され、当該受部の内部と外部とを連通する孔としてもよい。
【0011】
一方、請求項4の発明は、液体を吐出または吸入するための開口部が形成され、液体流路に挿入される筒状の先端部と、外周が前記先端部よりも大径の筒状とされ、前記先端部との間に外周段差部を構成する本体部と、前記先端部に設けられ、前記液体流路の内壁と先端部との間に外部空気を導入するための空気導入部と、を備えている。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、ピペットチップに空気導入部を設けているので、ピペットチップを液体流路から引き抜いて浮かせた状態でピペットチップ内に液体を吸入することにより、開口部近傍に液体が存在する場合は液体が供給管に吸入されると共に、開口部近傍に液体が存在しない場合には空気導入部を介して導入された外部空気が供給管に吸入される。
【0013】
したがって、外部空気が導入されない場合には液体流路内部の液体まで供給管に吸入される恐れがあったが、本発明によれば、開口部近傍の液体だけを効率よく吸入できるので、液体流路内の液体の液量を一定にすることができる。
【0014】
請求項5の発明は、先端に設けられた開口部から液体及び気体を吸入及び吐出可能な供給管と、前記供給管の前記開口部が挿入可能な2つの口部を有し、前記供給管により内部の液体が供給及び排出される液体流路と、前記供給管を前記液体流路の前記口部に密着させるために前記液体流路の各口部に設けられた受部と、前記受部に設けられ、前記供給管を前記口部に対向する位置に位置決めしながら前記口部に案内するために前記供給管の先端の形状に応じた形状とされた案内部と、前記案内部の前記口部に接触しない位置に設けられ、前記案内部に外部空気を導入するための空気導入部と、を備えている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、案内部の口部に接触しない位置に空気導入部を設けて、外部空気を導入するようにしているので、空気導入部の配設位置まで供給管の開口部を引き抜いた状態で供給管による液体の吸入を実行することにより、開口部近傍に液体が存在する場合は液体が供給管に吸入されると共に、開口部近傍に液体が存在しない場合には空気導入部を介して導入された外部空気が供給管に吸入される。
【0016】
したがって、外部空気が導入されない場合には液体流路内部の液体まで供給管に吸入される恐れがあったが、本発明によれば、開口部近傍の液体だけを効率よく吸入できるので、液体流路内の液体の液量を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の流路部材、ピペットチップ及び液体供給装置によれば、液体流路内の液体の液量を一定にすることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明に係る送液装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。本発明に係る測定スティック上にタンパクTaを固定し、このタンパクTaへ試料Aを供給して信号変化を検出することにより、相互作用を測定する。
【0020】
図1〜図3に示すように、バイオセンサー10は、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、冷蔵部46、測定スティックストック部48及びラジエータ60を備えている。
【0021】
ラジエータ60は、金属製の薄板が積層されて内部に流路が構成されており、流路に温調水を流して、温調水と筐体内の空気との熱交換を行っている。ラジエータ60には、ラジエータ送風ファン62が設けられている。ラジエータ送風ファン62により、ラジエータ60で熱交換された空気が、筐体内部へ送り込まれる。ラジエータ60には、循環ホース66が連結されている。これにより、筐体内部の温度が調整される。
【0022】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0023】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップ72(同図では図示省略)を保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0024】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、バッファ液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファ液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップ72が挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0025】
バッファ供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に冷蔵部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファ液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。冷蔵部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。冷蔵部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0026】
測定スティックストック部48には、測定スティック収容プレート48Pがセットされている。測定スティック収容プレート48Pには、測定チップとしての測定スティック50が複数本収納されている。
【0027】
測定スティックストック部48と測定部30との間には、測定スティック搬送機構49が備えられている。測定スティック搬送機構49は、測定スティック50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定スティック50が載せられる搬送用レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定スティック50が測定スティック搬送機構49により測定スティック収容プレート48Pから搬送用レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0028】
測定スティック50は、図4及び図5に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0029】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。
【0030】
プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の測定面には、金属膜57が形成されている。金属膜57の表面には、タンパクTaを金属膜57上に固定化するための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが固定される。
【0031】
この誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0032】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送用レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0033】
流路部材54は、図5に示すように、6個のベース部材54Aを備えている。ベース部材54Aの各々には4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部材54Aは、3個のベース部材54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成することができる。弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保することができる。
【0034】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0035】
ベース部材54Aには、図6及び図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。ベース部材54Aは、底面が誘電体ブロック52の測定面(上面)と密着されることにより、流路溝54Cと誘電体ブロック52の測定面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。1個のベース部材54Aには、2本の液体流路55が構成される。
【0036】
なお、流路部材54は、不図示の測定スティック押さえ部材によって誘電体ブロック52に押圧されることにより誘電体ブロック52に密着させられるので、液体流路55の密閉性が確保される。
【0037】
また、流路溝54Cの端部の各々は、円筒部材54Bの中空部と1対1に連通されている。これにより、図7に示すように、各液体流路55の一端には、当該液体流路55に試料を供給する供給口53Aが、他端には、当該液体流路55から試料を排出させるための排出口53Bが、それぞれ形成される。
【0038】
上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされており、上面側が円筒中心に向けて低くなるテーパー状であることが好ましい。
【0039】
保持部材56と流路部材54とは、同一金型内で異材料同士を組み合わせて成形する、いわゆる二色成形法(ダブルモールド)によって一体成形されている。
【0040】
ここで、1の流路部材により形成される2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定され、参照流路55Rの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定されない状態で測定が行われる。
【0041】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図6に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。
【0042】
光ビームL1、L2は、図7に示すように、ベース部材54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0043】
図8には、分注ヘッド20の構成が示されている。同図に示されるように、分注ヘッド20には、12本の分注管20Aが備えられている。分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、液体流路55の供給口53A及び排出口53Bにそれぞれ1本ずつ対応させて使用される。また、一対の液体流路55A、55Rには、共通の分注管20Aが用いられる。
【0044】
なお、各分注管20Aの先端は、ピペットチップ72が着脱可能に構成されている。分注管20Aに取り付けられたピペットチップ72は、必要に応じて交換される。
【0045】
また、分注ヘッド20は、図1及び図3に示すように、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bの駆動によるボールねじ22Aの回転により、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42B、試料セット部40B、バッファ供給部44B、冷蔵部46及び測定部30に対向する位置に移動可能に構成されている。
【0046】
さらに、図8に示されるように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。同図に示されるように、鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファ供給部44Bにセットされたバッファプレート44P及び測定部30にセットされた測定スティック50にアクセス可能となっている。
【0047】
図9に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続されている。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0048】
なお、第1モータ27C及び第2モータ28Cは、後述する制御部70と電気的に接続されており、制御部70により駆動が制御される。
【0049】
試料やバッファ液などの液体の供給時には、分注ヘッド20を、冷蔵部46、試料セット部40A、バッファ供給部44B上へ移動させ、第1モータ27Cをそれぞれ駆動して一対の分注管20Aの一方(計6本)に取り付けられたピペットチップ72内に試料やバッファ液を吸入する。このときの吸入量は、一対の液体流路55A、55Rに供給するため、液体流路2本分の量である。そして、試料やバッファ液を吸入した6本の分注管20A側のピペットチップ72を、測定スティック50の測定流路55A側の供給口53Aに挿入すると共に、分注管20Aの各対の他方の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップ72を測定流路55Aの排出口53Bに挿入する。そして、第1モータ27Cと第2モータ28Cとを同時に駆動して、供給口53A側の分注管20Aから半量の液体を吐出すると共に排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより液体の入換えが行われる。続いて、当該一対の分注管20Aを参照流路55R側の供給口53A及び排出口53Bに挿入し、同様にして第1モータ27Cと第2モータ28Cとを駆動して、参照流路55R内の液体を吸入しながらピペットチップ72の残り半量の液体を供給することにより、液体の入換えが行なわれる。
【0050】
図10には、測定部30の構成が示されている。同図に示されるように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。なお、同図では、測定スティック50の誘電体ブロック52と流路部材54以外の部材は省略されている。
【0051】
光学定盤32には、Y方向から見て、上部中央の水平平面で構成される定盤レール部32A、定盤レール部32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、定盤レール部32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。定盤レール部32Aには、Y方向に沿って測定スティック50がセットされる。
【0052】
光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定スティック50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。この光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。
【0053】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが射出される。光源34Aから射出された光ビームLは、レンズユニット34Bを介して2本の光ビームL1、L2となる。この2本の光ビームは、それぞれ光学定盤32上に配置される誘電体ブロック52の一対の測定領域E1と参照領域E2に対応する位置に入射される。なお、光源34Aとしては、角度広がりを有する光を射出可能な光源が適用され、発散状態の光ビームLを射出させる構成とされている。
【0054】
発散状態の光ビームL1、L2は、測定領域E1及び参照領域E2において、金属膜57と誘電体ブロック52との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。
【0055】
このとき、金属膜57に照射された照射光L1及び照射光L2は、金属膜57に微弱なエネルギー波(エバネッセント波)を生じさせると共に、誘電体ブロック52に接触する金属膜57の表面に粗密波(表面プラズモン)を生じさせる。このエバネッセント波及び表面プラズモンの波長が一致すると共鳴して、金属膜57に照射された照射光L1及びL2の各々に含まれる特定の入射角度の光において反射光が減衰する(表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance))。
【0056】
エバネッセント波は、金属膜57における物質間の相互作用によって変化する。また、光の屈折率の二乗によって示される誘電率は、このエバネッセント波に影響するので、金属膜57表面で引き起こされる生理活性物質と検体物質との間の相互作用は、誘電率に差異を生じさせ、これが表面プラズモンに影響し、共鳴角度の変化、すなわち屈折率の変化、として捉えることができる。
【0057】
したがって、金属膜57表面における生理活性物質と、供給された検体溶液に含まれる検体物質と、との間で相互作用が生じると、金属膜57表面の誘電率が変わり、屈折率(共鳴の角度)が変化する。このため、金属膜57上に工程された生理活性物質上に、選択的に異なる検体(検体溶液)を供給することで、屈折率の変化を経時的に測定し、分子間相互作用を解析することができる。
【0058】
そこで、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。これにより、誘電体ブロック52と金属膜57との界面で全反射された照射光L1及び照射光L2の各々は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bで受光される。金属膜57に入射される照射光L1及び照射光L2は角度広がりを持っているため、受光部36に入射される光もまた角度広がりを有している。CCD36Bでは、受光した光を光電変換することによって得られた光検出信号を、主制御部71へ出力する。
【0059】
主制御部71は、信号処理部38と、制御部70と、メモリ17と、を含んで構成されている。信号処理部38、メモリ17、上記モータ22B、モータ24A、第1モータ27C、及び第2モータ28Cは、制御部70に信号授受可能に接続されている。制御部70は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピュータで構成されている。メモリ17には、各種処理ルーチンや各種処理で用いる制御パラメータ等が予め記憶されると共に、各種処理において発生したデータ等が適時記憶される。
【0060】
信号処理部38は、CCD36Bから入力された光検出信号に基づいて、測定領域E1及び参照領域E2における屈折率情報を求め、制御部70へ出力する。
【0061】
なお、測定時において照射光Lは、誘電体ブロック52の一対の測定領域E1と参照領域E2と、の各々に入射されることから、信号処理部38には、誘電体ブロック52の複数の測定領域E1と参照領域E2(図4〜図7では6個の測定領域E1と6個の参照領域E2)からの光検出信号が入力され、制御部70には、各々の参照領域E2及び各々の測定領域E1における屈折率情報が出力される。
【0062】
信号処理部38では、入力された各光検出信号を分析することによって、各測定領域E1及び参照領域E2における照射光L1及び照射光L2各々における前記全反射減衰の生じる入射角(金属膜57と誘電体ブロック52との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する入射角)としての全反射減衰角θspを求める。
【0063】
そして、求めた全反射減衰角θspから、上記金属膜57と誘電体ブロック52との界面で生じた表面プラズモンの波数を求めることによって、各測定領域E1と、各参照領域E2の誘電率が求められる。誘電率が求められると、誘電率は屈折率の二乗であることから、測定領域E1及び参照領域E2各々における屈折率の屈折率情報が求められ、さらに、測定領域E1の屈折率情報を、参照領域E2の屈折率情報によって補正することにより、各測定領域E1における検定物質の屈折率情報を得る。
【0064】
この屈折率情報が制御部70に出力されると、制御部70では、入力された各屈折率情報に基づいて検体溶液注の検体物質と生理活性物質との相互作用(例えば、結合量)を求める。
【0065】
ここで、図11には、ピペットチップ72の一例が示されている。同図に示されるように、ピペットチップ72は、略円錐状の筒とされ、保持部73、本体部74、及び先端部78で構成されている。先端部78は円筒状とされ、挿入方向の最先端に液体を吐出または吸入する開口部80が構成されている。本体部74は、先端部78より外周が大径の円錐筒状とされ、先端部78との間に外周段差部76が構成されている。外周段差部76は、先端部78側が小径のテーパー状とされている。保持部73は、本体部74よりも外周が大径とされ、本体部74との間に保持段差部73Aが構成されている。保持段差部73Aは、不図示の保持孔の構成された上面板を有するピペットチップストッカー42Pにピペットチップ50を保持する際に用いられる部分である。
【0066】
図12には、測定部30にセットされた測定スティック50の液体流路55内に液体85が満たされた状態で液体流路55内の液体を液体90に置換する際のピペットチップ72及び液体流路の断面図が示されている。なお、同図では、ピペットチップ72は分注ヘッド20のZ方向移動により、受部59に挿入される。
【0067】
同図に示されるように、受部59は、流路部材54の開口部54Aから液体流路外部方向に向かって開口面積が広くなっている。受部59の内壁は、流路部材54の開口部54側から第1内壁部59A、第2内壁部59B、第3内壁部59C及び第4内壁部59Cに分けることができる。第1内壁部59Aは、ピペットチップ72の挿入方向(Z方向)長さが、ピペットチップ72の先端部78よりも僅かに短く、先端部78の外径よりも僅かに大径とされ、先端部78に沿った形状とされている。
【0068】
第2内壁部59Bは、第1内壁部59Aと連続しており、ピペットチップ72の外周段差部76に沿って流路部材54の開口部54Aから遠くなるほど大径となるテーパー状とされている。第3内壁部59Cは、第2内壁部59Bと連続され、ピペットチップ72の外形に応じて開口部54Aから遠くなるほど大径となるテーパー状とされている。なお、第2内壁部59B及び第3内壁部59Cについては、第1内壁部59Aと同様、先端部78の外径よりも僅かに大径とされている。
【0069】
第4内壁部59Dは、第3内壁部59Cと連続され、開口部54Aから遠くなるほどさらに大径となるテーパー状とされている。なお、この第4内壁部59Dについては、ピペットチップ72の外形に応じた形状ではない。
【0070】
ピペットチップ72を受部59に挿入する際には、受部59の最上部を構成する第4内壁部59D及び第3内壁59Cがテーパー状とされているので、ピペットチップ72の差し込み位置が多少ずれても、ピペットチップ72の先端部78側からスムーズに受部59の中央へ誘い込むことができる。また、第2内壁59Bもテーパー状とされているので、ピペットチップ72の先端部78と第2内壁59Bとの接触による衝撃を小さくすることができ、先端部78をスムーズに液体流路55の開口部54Aに対向する位置に案内することができる。
【0071】
図13には、ピペットチップ72が受部59に挿入され、開口部54A方向に押圧された状態が示されている。同図に示されるように、ピペットチップ72を受部59に挿入して開口部54A方向に押圧すると、軟質材料で構成された流路部材54Aの上端部分が変形して、ピペットチップ72の先端部78が食い込み、外周段差部76と第2内壁部59Bとが当接する。また、第1内壁部59Aはピペットチップ72の先端部51に沿った形状とされているので、受部59に挿入されたピペットチップ72の開口部80は液体流路55の出入口53と連通される位置に配置される。このようにして、ピペットチップ72の開口部80と液体流路55の出入口53との間の上下方向、及び、面方向の位置決めが行われ、ピペットチップ72の内部と液体流路55との間で液体を吐出、吸入するための連通路が構成される。この状態で、一方のピペットチップ72から液体90を吐出すると共に、他方のピペットチップ72で液体流路55内の液体85を吸入することにより、液体流路55内の液体を置換することができる。
【0072】
ここで、液体流路55内部の液体置換が完了すると、ピペットチップ72は受部59から引き抜かれる。このとき、吐出側と吸入側のピペットチップ72の圧力バランスや、液体流路55の寸法誤差等によっては、液面が流路部材54の開口部54Aよりも高くなる場合がある。この状態で液体置換を連続して行なうと、液面高さが累積的に高くなり、受部59から液体があふれ出る場合がある。
【0073】
図14には、流路部材54の開口部54Aからあふれ出た液体をピペットチップ72に吸入する場合のピペットチップ72と受部59との関係の一例が示されている。同図に示されるように、ピペットチップ72によって開口部54A付近の液体を吸入するためには、ピペットチップ72の開口部80が開口部54A付近にある必要がある。このとき、ピペットチップ72の先端部78と受部59の第1内壁部59Aとの間には僅かな隙間があるだけで、空気の入り込む隙間はほとんどなく、ほぼ密閉された状態となっている。このため、ピペットチップ72には、空気は吸入されず、液体のみが吸入されることになる。しかし、流路部材54の開口部54Aからあふれ出た液体は微量であるため、吸入量の調整は困難であり、開口部54A内部の液体まで吸入してしまう恐れがある。
【0074】
そこで、本実施の形態では、受部59に、図15乃至図17に示されるような空気導入溝94を設けている。
【0075】
図15は、1つの受部59をZ方向からみた上面図である。同図に示されるように、受部59の第1内壁部59Aの対向する2箇所に、空気導入用溝94としての切り欠きが設けられている。同図に示されるように、空気導入用溝94によって、第1内壁部59Aの一部が削り取られたような形状となっており、これにより、ピペットチップ72の先端部78と第1内壁部59Aとの間の一部に空間ができる。
【0076】
図16には、図15のI−I断面図を含むピペットチップ72、受部59及び流路部材54の関係の一例がそれぞれ示されている。各図に示されるように、空気導入用溝94は、第1内壁部59AのZ方向全域に亘る溝ではなく、第1内壁部59Aの流路部材54側(下側)は、ピペットチップ72の外形に応じた円筒状とされている。
【0077】
これは、同図に示されるように、液体流路55内部の液体を置換する際に、ピペットチップ72と第1内壁部59Aとの間の密閉性を向上させることを目的としている。
【0078】
図17には、流路部材54の開口部54A付近の液体をピペットチップ72により吸入する際のピペットチップ72、受部59及び流路部材54の関係が一例として示されている。同図に示されるように、ピペットチップ72の開口部80を空気導入用溝94の配設位置まで引き上げた状態で、ピペットチップ72内部への吸入を開始する。これにより、開口部80近傍の液体が空気導入用溝94から導入された空気と共にピペットチップ72内部に吸入されると共に、開口部80近傍に液体がなくなると、空気導入用溝94から導入された空気のみがピペットチップ72内部に吸入される。したがって、吸入する量を調整しなくても、ピペットチップ72のZ方向位置の調整だけで開口部54A内部の液体まで吸入することなく開口部54Aの付近の液体だけを効率よく吸入することができる。
【0079】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0080】
バイオセンサー10において、検体物質と生理活性物質との相互作用の測定指示が不図示の操作部等を介して入力されると、1本の測定スティック50が測定部30へセットされる。
【0081】
この測定スティック50の測定部30へのセットとは、制御部70が、1本の測定スティック50を測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから測定部30へ移動してセットするように駆動部49Dを制御することによって行われる。このように測定部30にセットされることにより、測定スティック50は、測定チップ搬送機構49により定盤レール部32Aに搬送されて、測定対象とする測定流路55Aの測定領域E1及び参照流路55Rの参照領域E2各々に、光ビームL1、光ビームL2が入射される位置に配置される。
【0082】
光出射部34から1本の誘電体ブロック52の複数の測定領域E1と参照領域E2各々に光ビームL1及び光ビームL2各々が照射されることにより、信号処理部38には、複数の測定領域E1と複数の参照領域E2各々から強度分布情報が入力される。
【0083】
このとき、制御部70では、分注ヘッド20を制御して、測定部30にセットされた測定スティック50の液体流路55内の液を、順次置換する。
【0084】
図18には、液置換時の制御部70による分注ヘッド20の制御手順がフローチャートとして示されている。
【0085】
まず、ステップ140では、新たに液体流路55内に送液する液体をピペットチップ72内に吸入すべく、送液する液体90の種類に応じて試料プレート40P又はバッファプレート44Pの配設位置に分注ヘッド20を移動させる。すなわち、モータ22Bを駆動して分注ヘッド20をX方向移動させると共に、モータ24Aを駆動して分注ヘッド20をZ方向移動させ、各プレートPにセットされた液体90を吸入可能な位置まで移動させる。
【0086】
次のステップ142では、第1モータ27Cを駆動して試料プレート40P又はバッファプレート44Pにセットされている液体90を送液側のピペットチップ72に吸入し、その後にステップ144に移行する。
【0087】
ステップ144では、測定スティック50の上方に分注ヘッド20を移動させ、その後にステップ146に移行して、測定スティック50の受部59にピペットチップ72の開口部80を挿入し、その後にステップ148に移行して、第1モータ27Cの駆動による送液及び第2モータ28Cの駆動による吸入を実行して、液体流路55内の液体85の置換を行なう。
【0088】
次のステップ150では、開口部54A付近にあふれ出た受部59の液体の吸入を行なう。すなわち、モータ24Aの駆動によるZ方向移動によってピペットチップ72の開口部80を空気導入用溝94の配設位置まで引き上げ、その後に第1モータ27Cの駆動による送液及び第2モータ28Cの駆動による吸入を実行する。
【0089】
なお、開口部54A付近にあふれ出た液体の吸入処理は、送液側、吸入側の両方のピペットチップ72により実行してもよいし、送液側のピペットチップ72だけにより実行するようにしてもよい。
【0090】
次のステップ152では、分注ヘッド20を所定の待機位置まで移動させ、その後に本液置換処理を終了する。
【0091】
なお、液置換処理の終了後は、必要に応じて、ピペットチップ72の交換や、吸入した液体の廃棄等の処理が適宜実行される。
【0092】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、ピペットチップ72の開口部80が挿入可能な2つの開口部54Aを有する液体流路55の開口部54Aにピペットチップ72の開口部80を密着させるために、液体流路55の各開口部54Aに受部59を設けており、この受部59は、ピペットチップ72を開口部54Aに対向する位置に位置決めして開口部54Aに案内する第1〜第4内壁部(59A〜59D)を有し、これら内壁部(59A〜59D)の開口部54Aに接触しない位置に、第4内壁部59Aとピペットチップとの間に外部空気を導入するための空気導入用溝94を設け、外部空気を導入するようにしているので、空気導入用溝94の配設位置までピペットチップ72の開口部80を引き抜いた状態でピペットチップ72による液体の吸入を実行することにより、開口部80近傍に液体が存在する場合は液体がピペットチップ72に吸入されると共に、開口部80近傍に液体が存在しない場合には空気導入用溝94を介して導入された外部空気がピペットチップ72に吸入される。
【0093】
したがって、外部空気が導入されない場合には液体流路55内部の液体までピペットチップ72に吸入される恐れがあったが、本実施の形態では、開口部80近傍の液体だけを効率よく吸入できるので、液体流路55内の液体の液量を一定にすることができる。
【0094】
また、本実施形態では前述のように、ピペットチップ72を液体流路55内に差し込まず、第1内壁部59A内へピペットチップ72の先端部78を挿入して、第2内壁部59Bに外周段差部76を当接させることにより位置決めを行い、液体流路54の開口部54Aにピペットチップ72の開口部80を配置して液体の供給を行う。したがって、ピペットチップ72を液体流路54に差し込んで液体を供給する場合に生じる、抜き差しによる先端部78の劣化が抑制される。
【0095】
また、ピペットチップ72を液体流路54へ差し込まないので、液体流路54が押し広げられることがなく、注入量を安定させることができ、ピペットチップ72を引き抜いた後の液面高さをほぼ一定にすることができる。
また、流路部材54が軟質材料で構成され、ピペットチップ72の先端部78により押圧されて変形するので、ピペットチップ72と受部59とを密着させることができる。
【0096】
なお、本実施形態では、流路部材54を軟質材料で構成し、ピペットチップ72をこれよりも硬質の材料で構成した例について説明したが、流路部材54を硬質材料で構成し、ピペットチップ72を軟質材料で構成して、ピペットチップ72側を変形させてもよい。
【0097】
また、ピペットチップ72を液体流路54へ差し込まないので、ピペットチップ72が液体流路54に差し込まれたままになり、分注管20Aから外れてしまうということも防止することができる。
【0098】
なお、本実施の形態では、1つの受部59に対して2つの空気導入用溝94を設ける形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、図19(A)〜(C)に示されるように、空気導入用溝94の個数は受部59の寸法や分注ヘッド20の吸入力等を含む装置の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0100】
また、本実施の形態では、受部59の内壁に空気導入用溝94としての切り欠きを設ける形態について説明したが、受部59(第1内壁部59A)の内側に空気を導入できるものであればよい。
【0101】
例えば、図20に示されるように、受部59の第1内壁部59Aと保持部材56の外部とを連通する空気導入用管96を設けてもよい。なお、当該空気導入用管96の数についても、上記空気導入用溝94と同様、装置の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0102】
さらに、上記実施の形態では、受部59の形状を変更することにより受部59の第1内壁部59Aとピペットチップ72の先端部78の間に空気を導入する形態について説明したが、ピペットチップ72側の形状を変更するようにしてもよい。
【0103】
例えば、図21(A)〜(C)に示されるように、ピペットチップ72の先端部78から本体部74にかけて空気導入用切り欠き98を設けて、受部59の第1内壁部59Aとピペットチップ72の先端部78の間に空気を導入することもできる。
【0104】
なお、上記実施の形態に係るバイオセンサー10の構成や処理の流れ等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の上面図である。
【図3】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の側面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の測定スティックの斜視図である。
【図5】本発明に係る実施形態の測定スティックの分解斜視図である。
【図6】本発明に係る実施形態の測定スティックの測定領域及び参照領域へ照射光が入射している状態を示す模式図である。
【図7】本発明に係る実施形態の測定スティックの1の流路部材を下側からみた図である。
【図8】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る実施の形態のバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図10】本発明に係る実施の形態のバイオセンサーの光学測定部付近の構成とバイオセンサーの電気的構成を示す概略図である。
【図11】ピペットチップの斜視図である。
【図12】受部にピペットチップを挿入する際の液体流路及びピペットチップの内部の状態を示す断面図である。
【図13】受部にピペットチップを挿入した状態を示す断面図である。
【図14】受部にピペットチップを浮かせて挿入した状態を示す断面図である。
【図15】本発明に係る実施の形態の受部の上面図である。
【図16】本発明に係る実施の形態の受部にピペットチップを挿入した状態を示す空気導入用溝部分の断面図である。
【図17】本発明に係る実施の形態の受部にピペットチップを浮かせて挿入した状態を示す空気導入用溝部分の断面図である。
【図18】本発明に係る実施の形態の液置換処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】本発明に係る実施の形態のバリエーションの一例を示す上面図である。
【図20】本発明に係る他の形態の受部及びピペットチップを示す断面図の一例である。
【図21】本発明に係る更に他の形態のピペットチップの断面図の一例である。
【符号の説明】
【0106】
10 バイオセンサー
20 分注ヘッド
20A 分注管(供給管)
22B モータ
24A モータ
27 第1ポンプ
27C 第1モータ
28 第2ポンプ
28C 第2モータ
30 測定部
50 測定スティック
54 流路部材
54A 開口部(口部)
55 液体流路
56 保持部材
59 受部(案内部)
72 ピペットチップ(供給管)
74 本体部
76 外周段差部
78 先端部
80 開口部
94 空気導入用溝(空気導入部)
96 空気導入用管(空気導入部)
98 空気導入用切り欠き(空気導入部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に設けられた開口部から液体及び気体を吸入及び吐出可能な供給管の前記開口部が挿入可能な2つの口部を有し、前記供給管により内部の液体が供給及び排出される液体流路と、
前記供給管を前記液体流路の前記口部に密着させるために前記液体流路の各口部に設けられた受部と、
前記受部に設けられ、前記供給管を前記口部に対向する位置に位置決めしながら前記口部に案内するために前記供給管の先端の形状に応じた形状とされた案内部と、
前記案内部の前記口部に接触しない位置に設けられ、前記案内部に外部空気を導入するための空気導入部と、
を備えた流路部材。
【請求項2】
前記空気導入部は、前記受部の内面に形成された切り欠きであることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
【請求項3】
前記空気導入部は、前記受部に形成され、当該受部の内部と外部とを連通する孔であることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
【請求項4】
液体を吐出または吸入するための開口部が形成され、液体流路に挿入される筒状の先端部と、
外周が前記先端部よりも大径の筒状とされ、前記先端部との間に外周段差部を構成する本体部と、
前記先端部に設けられ、前記液体流路の内壁と先端部との間に外部空気を導入するための空気導入部と、
を備えたピペットチップ。
【請求項5】
先端に設けられた開口部から液体及び気体を吸入及び吐出可能な供給管と、
前記供給管の前記開口部が挿入可能な2つの口部を有し、前記供給管により内部の液体が供給及び排出される液体流路と、
前記供給管を前記液体流路の前記口部に密着させるために前記液体流路の各口部に設けられた受部と、
前記受部に設けられ、前記供給管を前記口部に対向する位置に位置決めしながら前記口部に案内するために前記供給管の先端の形状に応じた形状とされた案内部と、
前記案内部の前記口部に接触しない位置に設けられ、前記案内部に外部空気を導入するための空気導入部と、
を備えた液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−232951(P2008−232951A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75469(P2007−75469)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】