説明

流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】液体貯留手段の着脱を行ってもフィルター上に気泡が残留するのを抑制することができる流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体貯留手段20に設けられた供給部23が接続されて、前記液体貯留手段20から前記供給部23を介して液体が供給される流路311が開口する取付部316を有する流路部材30であって、前記取付部316には、前記流路311の開口を覆い、当該取付部316の前記供給部23側の面に固定されたフィルター317が設けられており、該フィルター317には、前記供給部23側に開口すると共に当該フィルター317の縁部に達する溝部318が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路が設けられた流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。このインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、インク滴をノズル開口から吐出するヘッド本体と、ヘッド本体が固定されると共に、インクが貯留されたインクカートリッジ(液体貯留手段)が着脱可能に設けられて、インクカートリッジからのインクをヘッド本体に供給する流路部材と、を具備するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1によれば、インクカートリッジに多孔質材料などで形成された圧接体からなる供給部を設け、この供給部を流路部材に設けられたフィルターに圧接することで、インクカートリッジと流路部材とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流路部材に液体貯留手段を装着し、液体貯留手段の供給部と流路部材のフィルターとを接続する際に、供給部とフィルターとの間に挟まれた気体がフィルター上に気泡として残留してしまうという問題がある。
【0006】
そして、フィルター上に気泡が存在すると、フィルターの有効面積が狭くなり、圧力損失が大きくなって、インク滴の吐出不良が発生してしまうという問題がある。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他のデバイスに用いられる流路部材においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体貯留手段の着脱を行ってもフィルター上に気泡が残留するのを抑制することができる流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体貯留手段に設けられた供給部が接続されて、前記液体貯留手段から前記供給部を介して液体が供給される流路が開口する取付部を有する流路部材であって、前記取付部には、前記流路の開口を覆い、当該取付部の前記供給部側の面に固定されたフィルターが設けられており、該フィルターには、前記供給部側に開口すると共に当該フィルターの縁部に達する溝部が設けられていることを特徴とする流路部材にある。
かかる態様では、液体貯留手段の供給部を取付部に取り付ける際に、フィルターと供給部との間の気体を溝部を介して外部に排出することができる。
【0010】
ここで、前記フィルターが、前記供給部と前記取付部との間に亘って設けられていることが好ましい。これによれば、溝部が供給部と取付部との間の領域の端部にまで設けられることになり、供給部とフィルターとの間の気体を溝部を介して外部にさらに確実に排出することができる。
【0011】
また、前記溝部が、前記フィルターの中央部から前記縁部に亘って設けられていることが好ましい。これによれば、フィルターの中央部が流路側に撓んだとしても、最も気体が気泡として残りやすい中央部から溝部を介して外部に気体を排出することができる。
【0012】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、液体貯留手段の供給部とフィルターとの間に気体が気泡として残留することによる圧力損失の増大によって液滴の噴射不良が発生するのを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液滴の吐出不良を抑制して信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体貯留手段の供給部とフィルターとの間に気体が気泡として残留することによる圧力損失の増大によって液滴の噴射不良が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図及び拡大図である。
【図3】実施形態1に係るフィルターの平面図および断面図である。
【図4】実施形態1に係るシール部材の斜視図である。
【図5】実施形態1に係るインクカートリッジを流路部材に装着する方法を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係るインクカートリッジを流路部材に装着する方法を示す要部を拡大した断面図である。
【図7】実施形態1の流路部材の比較例におけるインクカートリッジを流路部材に装着する方法を示す要部を拡大した断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るフィルターの変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドの分解した斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの断面図及びその要部を拡大した図である。
【0017】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、液体としてインクを貯留した液体貯留手段であるインクカートリッジ20が着脱される流路部材30と、流路部材30に固定されたヘッド本体40と、を具備する。
【0018】
流路部材30は、流路部材本体310と、流路部材本体310に設けられたシール部材330と、を具備する。
【0019】
流路部材本体310は、内部に液体であるインクが通過する流路311が設けられ、流路311が開口する一方面にはインクカートリッジ20が装着されるカートリッジ装着部312が設けられている。本実施形態では、カートリッジ装着部312には、4つのインクカートリッジ20が装着されるようになっている。
【0020】
カートリッジ装着部312は、周囲を壁部313で囲まれており、壁部313の相対向する一対の壁面のうち、一方の壁面には厚さ方向に貫通した第1係合穴314が設けられている。また、第1係合穴314が設けられた壁面に相対向する他方の壁面には、厚さ方向に貫通した第2係合穴315が設けられている。
【0021】
これら第1係合穴314及び第2係合穴315に詳しくは後述するインクカートリッジ20の第1係合爪24及び第2係合爪25が係合することで、カートリッジ装着部312にインクカートリッジ20が固定される。
【0022】
なお、本実施形態では、カートリッジ装着部312には4つのインクカートリッジ20が装着されるため、各インクカートリッジ20の間には仕切り板313aが設けられている。
【0023】
また、流路部材本体310のカートリッジ装着部312には、円柱状に突出した取付部316が設けられている。本実施形態では、カートリッジ装着部312に4つのインクカートリッジ20が固定されるため、取付部316も4個設けられている。この取付部316には、先端面に開口する流路311が設けられた円筒形状を有しており、流路311が開口する突出した先端面には流路311の開口を覆うフィルター317が設けられている。
【0024】
ここで、フィルター317について図3を参照して詳細に説明する。なお、図3は、フィルターの平面図及びそのA−A′線断面図である。
【0025】
図3に示すように、フィルター317は、液体であるインク中に含まれる異物や気泡を除去するためのものであり、例えば、金属や樹脂等の繊維を細かく編むことで複数の微細孔が形成されたシート状のものや、金属や樹脂等の板状部材に複数の微細孔を貫通させたものなどを用いることができる。なお、フィルター317は、不織布等を用いてもよく、その材料は特に限定されるものではない。
【0026】
このフィルター317は、円盤形状を有し、取付部316の先端面と略同じ面積で設けられている。すなわち、フィルター317の周縁部は、取付部316の周縁部と略同じ位置まで設けられている。また、フィルター317には、インクカートリッジ20が取り付けられる面側に開口する溝部318が設けられている。本実施形態の溝部318は、フィルター317の中央部から周縁部に亘って連続して設けられている。また、溝部318は、本実施形態では、断面がV字形状となるように形成されており、溝部318の幅(開口幅)は、フィルター317の中央部から周縁部に向かって徐々に漸大して設けられている。なお、溝部318は、インクカートリッジ20側、すなわち、流路部材本体310とは反対側に開口していれば、その形状は特に限定されず、断面が矩形状や円形状などであってもよい。
【0027】
このように、フィルター317に、インクカートリッジ20の供給部23が接触する面側に開口する溝部318を設けることによって、詳しくは後述するが、流路部材30にインクカートリッジ20を装着した際に、インクカートリッジ20の供給部23とフィルター317との間の気体をフィルター317の溝部318を介して外部に排出することができる。ちなみに、ここで言う外部とは、フィルター317と供給部23との間の外側のことである。
【0028】
このため、フィルター317の溝部318は、フィルター317の周縁部にまで延設されて、溝部318の内部がフィルター317の周縁部に開口しているのが好ましい。このように溝部318をフィルター317の周縁部まで延設することで、フィルター317上の気体を、溝部318を介してフィルター317の外側に排出され易くすることができる。また、フィルター317の溝部318は、取付部316の流路311が開口する先端面の周縁部にまで延設されているのが好ましい。このように溝部318を取付部316の先端面の周縁部まで延設することで、取付部316の先端面とインクカートリッジ20の供給部との間の領域の外側に気体を排出し易くすることができる。本実施形態では、フィルター317を取付部316の先端面と略同じ面積とし、フィルター317の周縁部と取付部316の周縁部とを同じ位置としたため、溝部318をフィルター317の周縁部まで延設することで、同時に溝部318は取付部316の先端面の周縁部にまで延設されることになり、気泡の排出性を向上することができる。
【0029】
また、本実施形態では、溝部318をフィルター317の中央部から周縁部に向かってその幅(開口幅)が徐々に漸大するようにしたため、さらに気体の排出性を向上することができる。
【0030】
このようなフィルター317が設けられた取付部316の周囲には円環状のシール用溝部319が設けられており、このシール用溝部319内にシール部材330が設けられている。
【0031】
ここで、シール部材330について図4を参照して詳細に説明する。なお、図4は、シール部材を示す斜視図である。
【0032】
図4に示すように、シール部材330は、ゴムやエラストマーなどの可撓性材料で形成されており、平板状の第1シール部331と、円筒形状を有する第2シール部332と、第2シール部332よりも大きな内径を有する円筒形状の第3シール部333と、を具備する。
【0033】
第2シール部332は、取付部316の周囲に嵌合する円筒形状を有する。また、第3シール部333は、第2シール部332よりも大きな内径を有する円筒形状を有する。そして、第1シール部331は第2シール部332の一端部と一体的に接続されて第2シール部332の内部と連通する貫通孔334が設けられている。また、第1シール部331は、外周で第3シール部333の一端部と一体的に接続されている。すなわち、シール部材330は、流路部材本体310側に向かって開口するC字形状を有する。
【0034】
このようなシール部材330は、取付部316の外周に嵌合して取り付けられる。このとき、第1シール部331は、第2シール部332の上端(インクカートリッジ20側の端部)と第3シール部333の上端とに支持されるため、第1シール部331はインクカートリッジ20からの押圧によって第2シール部332と第3シール部333との間で流路部材本体310側に向かって凸となるように撓み変形し易くなっている。
【0035】
ここで、図1及び図2に示すように、流路部材30に着脱されるインクカートリッジ20は、内部にインク(液体)が貯留された中空箱形状を有する。
【0036】
また、インクカートリッジ20の底面には、円筒形状のリブ21が設けられており、リブ21の内部には、インクカートリッジ20の内部のインクを流路部材30に供給する供給口22が設けられている。この供給口22の内部には、供給部23が設けられている。供給部23は、流路部材30のフィルター317に圧接して、インクカートリッジ20内のインクを流路部材30の流路311に供給するためのものである。このような供給部23としては、例えば、綿状パルプ、高分子吸水ポリマー、ウレタンフォーム等の多孔質材料や不織布などを用いることができる。
【0037】
また、インクカートリッジ20には、流路部材本体310の壁部313に設けられた第1係合穴314に挿入される第1係合爪24と、第1係合爪24とは反対面側に設けられて流路部材本体310の壁部313に設けられた第2係合穴315に挿入される第2係合爪25とが設けられている。
【0038】
第2係合爪25は、インクカートリッジ20の側面の供給部23側に一端部が固定されて、他端部側が自由端となるように、インクカートリッジ20に一体的に形成されたものである。これにより、第2係合爪25は、インクカートリッジ20の側面に向かって弾性変形可能となっている。
【0039】
ここで、このようなインクカートリッジ20を流路部材30に装着する方法について図5を参照して詳細に説明する。なお、図5は、本発明の実施形態1に係るインクカートリッジを流路部材に装着する方法を示す断面図であり、図6は、図5の要部を拡大した図であり、図7は、実施形態1に係る流路部材の比較例となる流路部材を用いたインクカートリッジの装着方法を示す要部を拡大した断面図である。
【0040】
まず、図5(a)に示すように、インクカートリッジ20の第1係合爪24側を先に流路部材本体310の壁部313の内部に斜めに挿入し、第1係合爪24を第1係合穴314に挿入する。
【0041】
このとき、図6(a)に示すように、インクカートリッジ20の供給部23の流路部材本体310側の面の周縁部側がフィルター317の表面(インクカートリッジ20側の面)に斜めに接触する。これにより、供給部23とフィルター317との間隔が狭い領域と広い領域との間にインクのメニスカス(液面)が形成される。
【0042】
次に、図5(b)に示すように、インクカートリッジ20の第1係合爪24を第1係合穴314に挿入した状態で、第1係合爪24を支点としてインクカートリッジ20を回転させることで、インクカートリッジ20を壁部313の内部に挿入する。このとき、第2係合爪25は、流路部材本体310の壁部313に押圧されて弾性変形し、元に戻ろうとする弾性力によって第2係合爪25は第2係合穴315に挿入される。これにより、インクカートリッジ20は、流路部材30のカートリッジ装着部312に固定される。
【0043】
このようにインクカートリッジ20を流路部材30に装着することで、図6(b)に示すように、インクカートリッジ20のリブ21がシール部材330の第1シール部331に当接し、第1シール部331を流路部材本体310側に撓み変形させて、リブ21の内部が封止される。
【0044】
また、インクカートリッジ20を流路部材30に装着することで、図6(b)に示すように、供給部23のフィルター317側の全面がフィルター317に接触する。このとき、供給部23とフィルター317との間に気体(空気)が介在しても、供給部23が徐々にフィルター317に接触する面積を増やす際にインクのメニスカスが移動し、フィルター317と供給部23との間の気体はフィルター317に設けた溝部318を介して外側に排出される。
【0045】
すなわち、供給部23とフィルター317とを面接触させたとしても、供給部23とフィルター317との間の気体は、フィルター317の溝部318によって供給部23とフィルター317との間の外側に排出されるため、供給部23とフィルター317との間に気体による気泡が発生するのを抑制することができる。ちなみに、本実施形態の溝部318は、フィルター317の中央部から周縁部に亘って設けられているが、供給部23はフィルター317に第1係合穴314側から徐々に接触し、最終的に第2係合穴315側が接触するため、溝部318は中央部から第2係合穴315側の周縁部に亘って設けるのが好ましい。これにより、供給部23とフィルター317との接触によって移動するインクのメニスカスによって、気体を溝部318を介して効率よく外部に排出することができる。もちろん、溝部318の方向は、上述したものに限定されず、溝部318を中央部から第1係合穴314側の周縁部に亘って設けたとしても、供給部23とフィルター317との間の気体を溝部318を介して外部に排出することができる。
【0046】
このように、液体貯留手段であるインクカートリッジ20の着脱時に、供給部23とフィルター317との間に気泡が滞留するのを抑制することができるため、気泡によってフィルター317が覆われてフィルター317の有効面積が減少し、圧力損失が大きくなってインク滴の吐出不良が発生するのを抑制することができる。
【0047】
ちなみに、フィルター317に溝部318が設けられていない場合、図7に示すように、供給部23のフィルター317側の全面がフィルター317に接触した際に、供給部23とフィルター317との間に気体が気泡となって滞留してしまう。このように供給部23とフィルター317との間に気泡が存在すると、気泡がフィルター317の有効面積を減少させて、圧力損失が大きくなり、インク滴の吐出不良が発生してしまう。
【0048】
また、本実施形態では、液体貯留手段であるインクカートリッジ20の着脱時に、供給部23とフィルター317との間に気泡が滞留するのを抑制することができるため、インク滴に含まれる気体がフィルター317によって捕獲されたとしても、インク滴の吐出不良が発生するまでにフィルター317上の気泡が成長する時間を長くすることができる。したがって、フィルター317上の気泡をノズル開口からインク滴と共に吸引して排出するクリーニング動作を行う頻度を減少させることができ、インクの無駄な消費を抑制することができる。
【0049】
なお、このような流路部材30のカートリッジ装着部312とは反対面側にはヘッド本体40が固定される。
【0050】
ヘッド本体40は、流路部材30に固定される面とは反対側に、液体としてインク滴を吐出するノズルが開口する液体噴射面が設けられている。また、ヘッド本体40の図示しない内部にはノズルに連通すると共に流路部材30の流路に連通する液体流路と、液体流路内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段等が設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって液体流路の容積を変化させて液体流路内のインクに圧力変化を生じさてノズルからインク滴を吐出させるものや、液体流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0051】
このようなインクジェット式記録ヘッドで10は、インクカートリッジ20からのインクを流路部材30を介してヘッド本体40に供給し、圧力発生手段によって液体流路内のインクに圧力変化を生じさせることで、ノズルからインク滴が吐出される。
【0052】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述した物に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上述した実施形態1では、溝部318をフィルター317の中央部から周縁部に亘って設けるようにしたが、溝部318の位置及び数については特にこれに限定されるものではない。例えば、溝部318をフィルター317の周縁部から中央部を通って周縁部まで連続して設けるようにしてもよく、また溝部318を複数設けてもよい。ここで、図8に、本発明の他の実施形態に係るフィルターの平面図を示す。
【0054】
図8に示すように、フィルター317には、中央部から周縁部に亘って設けられた溝部318が3つ設けられている。つまり、溝部318はフィルター317に放射状に広がるように設けられている。このように複数個の溝部318を設けることによって、さらに気体の排出性を向上することができる。
【0055】
また、上述した一実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0056】
図9に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数のインクジェット式記録ヘッド10は、インク供給手段を構成するインクカートリッジ20が着脱可能に設けられ、このインクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。このインクジェット式記録ヘッド10は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0057】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0058】
さらに、上述した例では、流路部材30を具備するインクジェット式記録ヘッド10について説明したが、インクジェット式記録ヘッド10以外の部分に流路部材30が設けられたインクジェット式記録装置にも本発明は適用することができる。具体的には、インクが貯留された液体貯留手段であるインクタンクが、キャリッジ3に搭載されずに、装置本体4に固定されて、インクタンクとヘッド本体40とをチューブ状の供給管で接続するインクジェット式記録装置の場合、例えば、インクタンクを設置する場所に上述した流路部材30が設けられていてもよい。
【0059】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0060】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0061】
また、本発明は液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に搭載される流路部材に限定されず、その他のデバイスに搭載される流路部材についても適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20 インクカートリッジ(液体貯留手段)、 23 供給部、 30 流路部材、 40 ヘッド本体、 310 流路部材本体、 311 流路、 312 カートリッジ装着部、 316 取付部、 317 フィルター、 318 溝部、 330 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯留手段に設けられた供給部が接続されて、前記液体貯留手段から前記供給部を介して液体が供給される流路が開口する取付部を有する流路部材であって、
前記取付部には、前記流路の開口を覆い、当該取付部の前記供給部側の面に固定されたフィルターが設けられており、
該フィルターには、前記供給部側に開口すると共に当該フィルターの縁部に達する溝部が設けられていることを特徴とする流路部材。
【請求項2】
前記フィルターが、前記供給部と前記取付部との間に亘って設けられていることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
【請求項3】
前記溝部が、前記フィルターの中央部から前記縁部に亘って設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の流路部材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−94976(P2013−94976A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236933(P2011−236933)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】