説明

流速制御

液体試料を準備位置で準備し、例えばHPLCカラム内で処理する。試料を準備し、装置内を通る流速より実質的に小さい流速で装置へと輸送する。好ましくは、準備位置から、及び装置内において試料を駆動する、可変流速で作動する流体供給源によって、異なる流速を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年5月20日出願の米国特許出願第10/441640号明細書(整理番号14377)の一部継続出願である。また、本出願は、同一出願人による同時係属出願である2002年9月17日出願の米国出願第10/246284号、同一出願人による同時係属出願である2002年5月24日出願の米国出願第10/155474号の一部継続出願の米国公開第2003/0052007号明細書(整理番号14017−3)、同一出願人による同時係属中である、2001年8月29日出願の米国出願第09/942884号の一部継続出願である、米国公開第2002/01953444号明細書(整理番号14017−2)明細書、2001年6月13日出願の米国仮出願第60/298147号明細書(整理番号14017)の優先権を主張する米国公開第2002/0189947号明細書(整理番号14017−1)にも関連している。上記の各出願の全開示内容を、参照により本出願に包含する。
【0002】
背景技術
本発明は、システムを通って流れる液体試料の流速の制御に関する。
多くの工程では、液体試料を準備し、充填路により処理装置へ試料を流し、装置内に試料を流す。特に重要なこの種の装置は、液体クロマトグラフィ(LC)カラムであり、これは、混合物の成分の分離、同定、精製及び定量に広く用いられている。この種のさらに別の装置には、検出器及び反応チャンバが含まれる。前記工程においては、液体試料の容積を減少させることによって、重要な潜在的利益が得られる。例えば、高速LC(HPLC)では、通常、直径2.0から10mm、例えば約4.6mmのカラムが用いられ、一方、マイクロカラムLC(μLC)では、通常、直径2.0mm以下のカラム及び容積500nL未満の試料が用いられる。しかし、試料容積を減少させると、試料の容積を正確に制御し、試料の望ましい正方形パルス形状を得ることがますます難しくなる。したがって、試料を準備して、従来のHPLCカラムへと輸送するためのシステムは、μLCシステムでの使用には十分でない。これまで、μLCシステムのための注入バルブ及び方法を開発する試みが行われてきた。例えば、Vissersら、J. of Chrom A、746、1頁(1996)、Bakalyarら、J. Chrom. A、762、167頁、(1997)及びFosterら、J. Chrom. A、869、231頁(2000)、並びに、VICI Valco Instruments、Rheodyne及びUpchurch Scientificにより市販されているバルブを参照されたい。このバルブの設計は、外部試料ループと内部試料ループの両方を含む。ロータに設けられた溝がループとして機能する内部試料ループを有するバルブを用いることによって、一般に100nL未満の注入容積が達成される。さらに大きな容積は、内部ループ又はバルブポートと接続された外部ループによって達成できる。
【0003】
発明の概要
液体試料を処理するための装置を、満足のいく時間で満足のいく結果が得られるように選択された流速で作動させ、液体試料を従来のように準備して、同じ又はより大きな流速で試料準備位置から装置へと輸送する。本発明によれば、試料を準備し、試料が装置を通って流れる流速よりも実質的に小さな流速で装置へと運ぶと、改善された結果が得られることが分かった。このような結果の改善は、特に、試料を試料準備位置で準備し、そこから吐出する際の試料の分散を減少させたことによるものと考えられる。流速が小さいことにより、同じように準備された複数の試料の均一性も向上させることができる。
【0004】
第1の好ましい態様では、本発明は液体試料の処理方法を提供し、本方法は、
(A)充填速度で、試料を試料準備位置から処理装置へと流し、好ましくは、試料を試料準備位置内でも流すこと、及び
(B)処理速度で、処理装置内に試料を流すこと
を含み、試料準備位置内での流れ及び/又は試料準備位置から装置への試料の流れの少なくとも一部における前記充填速度は、処理装置内の試料の流れの少なくとも一部における処理速度より実質的に小さく、好ましくは処理速度の0.75倍、例えば0.01から0.75倍、特に0.1から0.75倍より小さい。
【0005】
第2の好ましい態様では、本発明は液体試料を処理するための設備を提供し、本装置は、
(1)液体試料準備位置、
(2)液体試料処理装置、
(3)準備位置から装置への試料充填路、及び
(4)試料準備位置に接続された流速が可変の作動流体供給部
を有し、作動流体供給部は、試料準備位置内、及び試料準備位置から処理装置においては充填速度で、且つ充填速度よりも実質的に大きな処理速度で処理装置内を試料が流れるように作動させることができる。
【0006】
第3の好ましい態様では、本発明は液体試料の準備方法を提供し、本方法は、
(A)作動流体入口及び試料出口を有する試料リザーバ内に試料組成物を配置すること、及び
(B)制御された充填速度で作動流体入口に作動流体を供給することにより、試料組成物からなる試料を、制御された時間で試料出口から吐出すること
を含み、
(1)制御された充填速度が500nL/分未満、例えば100nL/分未満であること、
(2)試料の容積が100nL未満、例えば50nL未満であること、
(3)制御された時間が、1〜30秒、特に2〜10秒、例えば2〜5秒であること、及び
(4)試料リザーバが、作動時間が60〜500、例えば80〜200、例えば約100ミリ秒であるバルブ内に設けられているか、又はそのバルブに接続された試料ループであること
のうち少なくとも1つを特徴とする。
【0007】
本発明を添付図面において説明する。これらの図面は概略的なものであり、その縮尺比は正確なものではない。
【0008】
発明の詳細な説明
上記の発明の概要、発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲、ならびに添付図面において、本発明の特定の特徴について説明する。このような特徴は、例えば、構成要素、要素、装置、設備、システム、ステップ及び実施形態を含む。本明細書における発明の開示は、このような特定の特徴の全ての可能な組合せを含むと理解されたい。例えば、1つの特定の特徴が、特定の実施形態、特定の図面又は特定の請求項と関連して開示されている場合、その特徴は、可能な範囲内で、別の特定の実施形態、図面及び請求項に関連して、並びに本発明で一般的に、使用することもできる。本出願に係る発明は、ここで具体的に記述されないが、ここに具体的に記述された特徴と同一、同等又は類似の機能を提供する特徴を使用することを含む。
【0009】
本明細書において使用する、「有する」、「備える」、及び「含む」という表現、並びにこれと文法的に同等の表現は、別の特徴が任意に存在するということを意味する。例えば、構成要素A、B及びCを「有する」設備は、構成要素A、B及びCのみを含んでいるか、又は構成要素A、B及びC以外に1つ以上の別の要素を含んでいる。2つ以上の規定されたステップを含む方法を説明する際、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除き、それらの規定されたステップは任意の順序で又は同時に行うことができ、さらにこの方法は、規定された任意のステップの前、規定された2つのステップの間、又は規定された全てのステップの後に行われる1つ以上の別のステップを含むことが可能である。また、本明細書において数の前に「少なくとも」という語を使用する場合、その数字で始まる範囲(規定される変数に応じて、上限を有する場合と有さない場合がある)の始点を意味する。例えば、「少なくとも1」は、1又は1より大きいことを意味し、「少なくとも80%」は、80%又は80%より大きいことを意味する。本明細書で、範囲が、「(第1の数)から(第2の数)」又は「(第1の数)〜(第2の数)」で示されている場合、これは、この範囲の下限が第1の数であり、上限が第2の数であることを意味する。例えば、「8から20個の炭素原子」又は「8〜20個の炭素原子」は、下限が炭素原子8個であり、上限が炭素原子20個である範囲を意味する。本明細書中に示される数字は、その内容及び表現に適する許容範囲で解釈されるべきである。「複数の」及び「複数」という語は、2つ以上を意味するために使用される。
【0010】
本明細書で「1つの」又は「その」特徴と記述する場合、或いは特に数を示さずに記述する場合、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような特徴が1又は複数あり得ると理解されたい。本明細書で第1の特徴及び/又は第2の特徴と記述する場合、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除いて、このような表現は、これらの特徴を規定するために便宜上使用されるものであり、これらの特徴のいずれか又は両方が存在しうること、及び両方の特徴が存在する場合には、それらの特徴が同じでも異なってもよいことを意味する。
【0011】
2つ以上の構成要素(又は部品又は部分等)について記述する場合、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除き、その構成要素は、互いに分離していてもよいし、単一構造の統合された部品であってもよいし、2つ以上の特定の構成要素として機能する単一の構成要素であってもよい。
【0012】
試料
本発明では、あらゆる液体試料を使用することができる。しかし、試料が、以下の特徴の少なくとも1つを有している場合、本発明の利点が最も明らかとなる。
(1)試料が、処理装置中で分離され、及び/又は分析され、及び/又は反応する1つ以上の要素(既知又は未知)を含む。
(2)試料の容積が、500nL未満、例えば100nL未満、50nL未満又は10nL未満、例えば1.2〜43nL、例えば20nLである。
(3)試料は、ほぼ理想的な正方形パルスを示す試料である。
(4)試料に対し、ゲルろ過クロマトグラフィ及び別の定組成分離を含め、わずかしか保持されない成分によるHPLC分離を行う。
【0013】
液体試料は、試料源から任意の方法で準備することができる。このための多くの方法が知られている。これら多くの公知の方法では、試料ループ又は別の試料リザーバを試料源で充填し、所望の量(リザーバの容量の一部でも全部でもよい)の試料をリザーバから吐出する。例えば、シリンジを用いて試料をリザーバ内に注入することによって、又はリザーバ内へと試料を吸引する(例えば真空にするためのシリンジを用いる)ことによって、又は試料を(例えばオンラインのモニタリングシステムの一部として)リザーバ内にポンピングすることによって、試料をリザーバ内に導入することができる。
【0014】
リザーバは、完全に充填することもできるし、試料源の既知の容積で部分的に充填することもできる。リザーバを完全に充填する場合、好ましくは、試料源の一部が無駄になるまで充填を行い、これによりリザーバを確実に一杯にする。リザーバを部分的に充填する場合、試料がリザーバの縁まで到達しないように試料源から既知の容積の試料で充填するのが好ましい。特定の方法は、内部試料ループ及び外部試料ループを有するバルブの使用を含む。ロータに設けられた溝がループとして機能するバルブは、100nL未満の容積の試料を準備するために特に有用である。このようなバルブとしては、例えば、Rheodyne、Valco Instruments及びUpchurch Scientificより入手可能なバルブ、及び米国特許第6290909号明細書及び米国特許公開第2002/0194909号明細書に記載のバルブが挙げられる。これらの明細書の開示内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0015】
試料は、好ましくは作動流体の圧力によって試料リザーバから駆動され、この作動流体は、所望の容積の試料を吐出するのに所定の時間に亘ってリザーバを通して導かれる。このような規定の時間に亘る吐出(移動注入、一時的注入又はタイムスライス注入とも呼ばれる)は、例えば空圧式又は電子式に作動するバルブを用いて行うことができる。リザーバが、試料源からの既知容積の試料で部分的に充填された場合、通常、全試料が吐出される(試料の両端部ではいくらかの作動流体が共に吐出される)。リザーバが完全に充填されている場合、通常、吐出される試料の容積はリザーバの容積より小さい。
【0016】
作動流体
試料は、好ましくは、試料後方の作動流体の圧力によって、試料準備位置内、試料準備位置から処理装置へ、さらに処理装置内で駆動される。したがって、作動流体は、この作動流体が通過する設備の様々な部品に不都合な影響を与えない流体である。よって、処理装置がLCカラムである場合、作動流体はLCシステム内において移動相である。
【0017】
作動流体は、単一の化合物又は複数の化合物の混合物であってよく、同じ又は異なる作動流体を供給する単一又は複数の供給源から供給することができる。複数の供給源がある場合、試料と接触する前にその出力の全てを混合することができる。別の態様では、1つ以上の供給源からの作動流体を使用して、充填速度で試料を吐出することができ、さらに、1つ以上の別の供給源からの作動流体を使用して、処理速度で試料を駆動することができる。異なる供給源からの作動流体の混合は、拡散により、或いは受動的又は能動的な装置によって行うことができる。
【0018】
作動流体を供給するために、1つ以上の可変流速源を使用することが好ましい。好ましくは、流速の供給は連続的に可変であり、1から100000nL/分の流速を5000psi(cm当たり350kg)まで、又はそれより高い背圧に提供することができ、その応答時間は秒のオーダーである。このような供給源には多くのものが知られており、それらは例えば、直接動電式ポンプ、動電式流速制御装置、液圧式増幅器付きを備えるか又は備えない電空式ポンプ、ならびに機械式に作動可能なポンプである。例えば米国特許第5942093号明細書を参照することができ、この文献を参照により本出願に組み込む。特に、低い流速では、能動的な流速フィードバック制御がない場合、送りねじポンプ及びそれに類似の容積形ポンプでは十分ではないだろう。供給源が1以上存在する場合、それら供給源は同一でも異なっていてもよい。
【0019】
所望の流速を確実に維持するために、作動流体、例えば組成物、温度、圧力及び混合比についての情報を、流速計、熱電対等によって得ることができ、可変速度作動流体供給源を調節する制御装置に伝達することができる。このようにして、逆止弁の漏れ、ポンプシール部の漏れ、機械的シールの変形、構成要素の熱膨張及び作動流体の圧縮のような変数を考慮に入れることができる。適切な制御装置、流速計、熱電対等は周知である。制御装置は、例えば、PIDサーボループ制御装置とすることができ、別個のアナログ及び/又はデジタル回路、専用のマイクロプロセッサ又はプログラム制御されたコンピュータを含むことができる。流速計は、例えば、Enokssonら、J. MEMS、6、119〜125(1997)、米国特許第6386050号明細書、又はCarvalhoら、Appl. Opt.、33、6073〜7(1994)に開示されているものが挙げられ、これらの文献の開示内容を参照により本出願に組み込む。流速計は、好ましくは、全ての望ましい流速(例えば10から100000nL/分)において連続的な信号を提供し、その信号バンド幅は1Hzより大きく、好ましくは10Hzより大きい。好ましい流速計は毛細管を有し、それを横切る圧力降下が、望ましい流速での入力圧力の少なくとも5%であり、さらに、毛細管を横切る圧力降下を測定する少なくとも1つの圧力センサ(好ましくは、容積10000nL未満の圧力変換器)を有している。
【0020】
処理装置
試料は、任意の装置で処理することができる。しかし、装置が、内径2mm未満の導管、例えばμLCカラムを有している場合、本発明の利点が最も明らかとなる。
【0021】
流速
ここでは、試料が、試料準備位置内を通って流れる速度、及びこの試料準備位置から処理装置へと流れる速度を充填速度と呼ぶ。また、試料が処理装置を通って流れる速度を処理速度と呼ぶ。
【0022】
試料が試料準備位置内を移動し、(例えば試料ループ及びそれに接続するバルブを通って)試料準備位置から出て行く際の充填速度が、それに続いて試料が装置へ輸送される間の充填速度が与えるよりも大きな影響を試料の分散に与える場合が多いことが分かっている。このことは、準備位置における試料の流路が比較的複雑であることに起因しうる。したがって、充填速度は、少なくとも試料が試料準備位置を出発するまでは、比較的小さいことが望ましい。その時間は、例えば0.5から30秒の時間とすることができる。最適な結果を得るために、試料が処理装置に流入する直前まで、比較的小さな充填速度が維持されることが望ましい。その時間は、例えばさらに0.5から30秒とすることができる。
【0023】
したがって、試料が試料準備位置内を通過して試料準備位置から装置へと流れる時間の少なくとも第1の部分(例えば少なくとも始めの50%)では、充填速度は、試料が処理装置内を通って流れる時間の少なくとも一部(例えば少なくとも50%)における処理速度の、0.75倍以下、例えば0.005から0.75倍であり、好ましくは0.01から0.75倍、例えば0.1から0.75倍である。多くの場合、充填速度は、処理速度の0.05から0.75倍、好ましくは0.1から0.5倍である。充填速度及び処理速度の少なくとも一方が実質的に一定であることが好ましいが、必須ではない。
【0024】
比較的小さい速度から処理速度にほぼ等しい(5%以内)速度へと充填速度を上昇させるのにかかる時間は、好ましくは5秒未満、特に1秒未満である。流速の変化は、漸次的に又は段階的に行うことができる。充填速度から処理速度への変化は、時限式に、又は例えば光学的、電子的もしくは電気化学的センサによって引き起こすことができる。
【0025】
処理装置、例えば内径2mm未満の導管を有する装置内では、処理速度は通常100000nL/分未満である。例えば、HPLCシステムでは、充填速度は通常50〜500nL/分、例えば100nL/分であり、処理速度は通常1000から30000nL/分、例えば1000から15000又は3000から4000nL/分である。例として、内径200〜400ミクロンの導管を有する処理装置では、充填速度は500〜4000nL/分であり、処理速度は4000〜30000nL/分である。内径50〜200ミクロンの導管を有する処理装置では、充填速度は25〜500nL/分であり、処理速度は100〜4000nL/分である。
【0026】
図1〜3に、本発明の一実施態様を示す。第1及び第2の可変流速作動流体供給源20A及び20Bはそれぞれ、流速計24A及び24Bによって測定される流速で作動流体を供給する。回転弁12は、6つの外部ポート12A〜12Fを有している。作動流体供給源の出力は結合してポート12Aに供給する。ポート12Bは、充填導管181を介してμLCカラム18に接続されており、カラム18の出力は検出器26へ流入する。ポート12C及び12Fは試料ループ30に接続されており、その試料ループ30は、図2及び図3に示すようにバルブの内部又はバルブの外部にある。ポート12Dは、廃液ラインに接続されている。ポート12Eは、試料源28に接続されている。制御装置22は、流速計からの入力を用いて、バルブ12、及び供給源20A及び20Bの運転を制御し、これにより、後述するように、設備は所望のプログラムを操作する。
【0027】
バルブ12は、試料注入位置(図2)又は試料充填位置(図3)をとることができる。注入位置では、充填導管181内に予め充填された試料がカラム18内に注入される。よって、図2に示すように、
(i)ポート12A及び12Bが接続され、混合された作動流体が、充填導管181内に既に存在する試料を駆動してカラム18及び検出器26を通過させ、試料が処理速度で流れ、
(ii)ポート12Eと12F、及びポート12Cと12Dが接続することにより、試料ループ30が試料源28からの試料で少なくとも部分的に充填される。
充填位置では、図3に示すように、ポート12Aと12Fとが接続され、ポート12Cと12Bとが接続され、ポート12D及び12Eが隔離されているので、混合された作動流体が、充填速度で、試料ループからの試料を充填導管181内に充填する。
【実施例】
【0028】
実施例1
本実施例では3種類で一組の実験を行い、同一の試料を、20nLの内部試料ループを有するバルブから、それぞれ一定の流速3000、1300及び540nL/分で吐出した。試料の組成は、チオ尿素をメタノール及び水50/50の混合物に混ぜた2mMの溶液であり、作動流体は、メタノール及び水50/50の混合物であった。バルブを出た直後に試料が毛細管を通る際に、吐出された各試料の吸収度を測定した。測定された吸収度を図4に示す。この図4では、吸収度(任意の単位)を縦軸に表し、容積(nL)を横軸に表している。3000、1300及び540nL/分の流速に対する計算された分散は、それぞれ1080、530及び280nLであった。これらの結果は、試料を試料準備位置から吐出するのに小さな流速を用いることの利点を示している。
【0029】
実施例2
本実施例では6種類で一組の実験を行い、実施例1と同一の試料材料及び作動流体を使用して、250nLの内部試料ループを有するバルブから、540nL/分の一定の速度で、それぞれ2、4、6、8、12及び40秒の時間にわたり試料を吐出した。バルブを出た直後に試料が毛細管を通過する際に、各吐出試料の吸収度を測定した。相対吸収度を図5に示す。図5では、相対吸収度を縦軸に、容積(nL)を横軸に表している。始めの5つの試料の半値全幅は、それぞれ29、41、58、112及び270nLであった。40秒の注入でループの全容積分が吐出され、その結果により完全なループ注入からの分散テールが示されている。
【0030】
実施例3
この実施例では、図1〜3に示す装置を使用した。バルブは、250nLの外部試料ループを有するValco CN2バルブであり、コンピュータ制御下で空圧式に作動させた。分離カラムは、長さ150mm、内径0.3mmであり、直径3ミクロンの固定相(Phenomenax Luna C18)を充填した。検出器は、容積約45nL、通路長約4mmであった。試料は、ウラシル、アセトフェノン、プロピオフェノン及びブチロフェノンと、メタノール55%及び水45%のバッファとの混合物であった。各流体供給源中の作動流体は、メタノール及び水の55/45パーセント混合物であった。
容積25nLの試料を、流速500nL/分で3秒の時間に亘って吐出し、試料がカラム内に注入される前に4000nL/分に流速を上昇させた。9つの分離についてのクロマトグラフの結果を重ね合わせたものを図6に示す。図6では、吸収度(mAU)を縦軸に、時間(秒)を横軸に表している。ピーク高さの相対標準偏差は、1%未満であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す別の図である。
【図3】本発明の実施形態を示すさらに別の図である。
【図4】実施例1に示す実験の結果を示す図である。
【図5】実施例2に示す実験の結果を示す図である。
【図6】実施例3に示す実験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の処理方法であって、
(A)充填速度で、試料準備位置内に、及び試料準備位置から処理装置へと、試料を流すステップ、及び
(B)処理速度で、処理装置内に試料を流すステップ
を含み、充填速度が、試料準備位置内の試料の流れ及び試料準備位置から装置への試料の流れの少なくとも一部において、処理装置を通る試料の流れの少なくとも一部における処理速度よりも実質的に小さい、方法。
【請求項2】
充填速度が処理速度の0.75倍未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充填速度が処理速度の0.1から0.5倍である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(A)中の充填速度が実質的に一定であり、ステップ(B)中の処理速度が実質的に一定であり、充填速度から処理速度へと試料が流れる速度が上昇する速度変化期間があり、その長さが5秒未満、好ましくは1秒未満である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
処理速度が100マイクロリットル/分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
処理装置が、内径が2mm以下のμLCカラムを有している、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
試料の容積が、500nL未満、好ましくは100nL未満である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(A)及び(B)において、試料は、可変流速作動流体供給部からの作動流体の圧力によって流れる、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって液体試料を処理する設備であって、
(1)液体試料準備位置、
(2)液体試料の処理装置、
(3)準備位置から装置への試料充填路、及び
(4)試料充填路に接続された可変流速作動流体供給部
を備えることにより、試料が充填速度で試料準備位置内を通過して試料準備位置から処理装置へと流れるように、且つ充填速度よりも実質的に大きな処理速度で処理装置内を流れるように、作動流体供給部を作動させることができる設備。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法によって処理できる液体試料の準備方法であって、
(a)作動流体入口及び試料出口を有する試料リザーバ内に試料組成物を配置するステップ、及び
(b)制御された充填速度で作動流体を作動流体入口に供給することにより、制御された時間で、出口を通して試料組成物からなる試料を試料吐出するステップ
を含み、
(1)制御された充填速度が、500nL/分未満、例えば100nL/分未満であること、
(2)試料の容積が、100nL未満、例えば50nL未満であること、
(3)制御された時間が、1〜30秒、特に2〜10秒、例えば2〜5秒であること、及び
(4)試料リザーバが、作動時間が60〜500、例えば80〜200、例えば約100ミリ秒であるバルブ内の、又はバルブに接続する試料ループであること
のうち少なくとも1つを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−504479(P2007−504479A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533249(P2006−533249)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015838
【国際公開番号】WO2004/112960
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(503459408)エクシジェント テクノロジーズ, エルエルシー (12)