流量センサ
【課題】センサ内を流通する流れの圧力測定時の空気圧縮ノイズを低減するよう構成された流量センサである。
【解決手段】該流量センサは、呼吸器側端部と患者側端部との間に配設されたスロート部を備えた中空管状部材を含んで構成される。前記スロート部には流量制限器が配設され、該流量制限器は、流れの中の差圧を測定するよう構成される。前記呼吸器側端部にはバッフルが配設され、該バッフルは、前記流量制限器の両端部に位置する圧力タップにおける非軸流を最小限とするよう構成される。前記患者側端部は、呼気が前記患者側端部から前記呼吸器側端部へ流れる際に、前記圧力タップを横切る流れの均一化を促進する流動障害物を含む。前記流量センサは、空気圧縮ノイズを0.1LPM未満に制限して、正確な流量測定が行われ、吸気及び呼気の相が、0.2LPMの呼吸流量でトリガされる。
【解決手段】該流量センサは、呼吸器側端部と患者側端部との間に配設されたスロート部を備えた中空管状部材を含んで構成される。前記スロート部には流量制限器が配設され、該流量制限器は、流れの中の差圧を測定するよう構成される。前記呼吸器側端部にはバッフルが配設され、該バッフルは、前記流量制限器の両端部に位置する圧力タップにおける非軸流を最小限とするよう構成される。前記患者側端部は、呼気が前記患者側端部から前記呼吸器側端部へ流れる際に、前記圧力タップを横切る流れの均一化を促進する流動障害物を含む。前記流量センサは、空気圧縮ノイズを0.1LPM未満に制限して、正確な流量測定が行われ、吸気及び呼気の相が、0.2LPMの呼吸流量でトリガされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の人工呼吸システムに関し、詳細には、患者の呼吸流量の測定精度を改善した2方向流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式人工呼吸器は、呼吸サイクルの吸気及び呼気の各相で補助することにより患者の呼吸を手助けするために使用される。ある装置では、機械式人工呼吸器はY字状接続器を介して患者に接続することができる。該Y字状接続器はさらに、ペーシェント接続部に接続されたペーシェントチューブを介して、患者の気道に流体的に接続される。Y字状接続器の1本の脚に、呼気バルブを連結して備えていてもよい。
【0003】
前記呼気バルブは、呼吸サイクルの呼吸の相に応じて開閉が切り換えられる。吸気相では、人工呼吸器から患者へ圧縮されたガスが送られるように、呼気バルブが閉じる。呼気相では、患者が息を大気中へ吐き出せるように、呼気バルブが開く。呼気相で大気圧より上昇した背圧を付与するため、呼吸終末陽圧(PEEP)バルブを、呼気バルブと組み合わせて使用するようにした呼吸器装置もある。
【0004】
人工呼吸器から患者へ供給される圧縮ガスの流量、及び患者から呼気バルブへ吐き出される呼気ガスの流量を計測するため、流量センサが使用される。ガス流量計測用としてごく一般的な技術の1つに、差圧検出がある。差圧式流量センサは、センサを通るガス流の中に配設された流量制限器を含み、該流量制限器の通過によって生じる圧力降下(差圧)を測定することができる。2方向式流量センサは、流量制限器の両側にある圧力タップの上下流間に測定される差圧の関数として、各方向の流量を測定することができる。測定される差圧は、実際に求められる流量と相関する。
【0005】
前記ペーシェント接続部が、機械式人工呼吸器から患者へ圧縮ガスを運ぶ気管内チューブとして与えられる場合もある。該気管内チューブは、通常は比較的小径である。小径の気管内チューブを、標準サイズ用の大径の流量センサ接続部に一致させて接続するため、気道アダプタが使用される。流量センサは、できるだけ患者の近くに配置するのが好ましく、先行技術に係る装置には、流量センサをY字状接続器と一体化したもの以外に、Y字状接続器と患者の接合部との間に配置できるようにしたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
相対的に小径の気管内チューブと大径の流量センサとのサイズの相違により、患者の呼気が、比較的高速高圧な噴流となって気管内チューブから流出し、流量センサに流入する。この気管内チューブからの人為的に高速高圧化された噴流は、流量センサ内で前記流量制限器の圧力タップに衝突する。この人為的な高速高圧噴流により、与えられた流量に対応する差圧の測定値が、実際に求められた流量と差圧との関係から求められる測定値に比較して、人為的に高められることとなる。その結果、流量測定値が人為的に高められる。
【0007】
前記高圧噴流によって生じる人為的に流速が高められる問題を解決すべく、先行技術に係る人工呼吸システムでは、気管内チューブから流量センサまでの距離を約6インチ(約152.4mm)ほど増加させている。この流量センサと気管内チューブ間の距離の増加により、高圧噴流が流量制限器の圧力タップに衝突する前に、流量センサ内部で、より均等に分散されるようになる。この方法では、流量センサの横断面と交差する流速が比較的一定となるため、圧力測定値がより正確になると考えられる。残念ながら、前記流量センサから気管内チューブまでの距離を増加すると、呼吸量つまり患者の気道のデッドスペースも同時に増大する。この増加したデッドスペースにより、以前に吐き出した呼気を再呼吸(吸入)してしまうことになる。
【0008】
流量測定に関する別の問題として、吸気相において吸気流に生じる空気圧縮ノイズによって、流量センサでの圧力測定値が不正確となりうることがある。この種の空気圧縮ノイズは、流量センサの呼吸器側端部(患者側端部の反対側)に乱流,振動など非対称な流動状態を含みうる。空気圧縮ノイズを含みうるバイアス流を伴って運転するよう構成された人工呼吸システムがある。例えば、発明者Devriesの米国特許第6,102,038号に開示されたものと同種の人工呼吸システムは、前記呼気バルブが開かれ又は閉じることによって前記Y字状接続器を介して循環するバイアス流を伴って運転する。
【0009】
多くの用途で、前記バイアス流の流量は、通常約2〜10リットル/分(LPM)の範囲であり、流量センサに、該センサの精度を低下させる空気圧縮ノイズが発生しうる。バイアス流中の空気圧縮ノイズは、流量センサの入口での非対称な流動状態によって生成されうる。より詳細には、前記Y字状接続器の形状のため、バイアス流は、非軸方向に流量センサに流入して該センサに渦流や軸を横切る軸交差流を生成し、その結果、流量センサの圧力タップにおける圧力測定が不正確となってしまう。
【0010】
前記流量センサで検出された圧力は、機械式人工呼吸器の呼気バルブを、患者により開始される吸気相及び呼気相に応じてサイクル駆動させるために使用される。特に、新生児患者や小児患者の場合は、バイアス流中の空気圧縮ノイズを最小限に抑制して吸気相及び呼気相開始時の0.2LPMの流量が空気圧縮ノイズによって乱されないようにすることが望ましい。これに関しては、この種の空気圧縮ノイズが0.1LPM以下に維持されるのが望ましい。
【0011】
以上のように、新生児患者や小児患者への使用に適した流量センサに係る技術が必要とされている。より詳細には、患者により開始される呼吸サイクル毎の吸気相及び呼気相が、適正な流量でトリガされるように減少した空気圧縮ノイズで作動できる流量センサ用の技術が必要とされている。さらには、小径の気管内チューブに付属して使用することができる流量センサに係る技術が必要とされている。
【0012】
好ましくは、流量センサを、呼気の際、気管内チューブから排出される高圧噴流によって人為的に高められた圧力の測定を排除できるように構成される。さらに、流量センサは、患者がCO2を再呼吸するのを防止するため、デッドスペースを最小限とするように構成されることが望ましい。最終的に、呼吸時の空気流抵抗を最小限としつつ、呼吸器側端部での空気圧縮ノイズの悪影響を解消できる流量センサに係る技術が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した機械式人工呼吸器用流量センサに関する要求は、2方向流量センサを提供する本発明によって、具体的に対処される。流量センサは、呼吸時に患者に送られる圧縮ガスの流量を測定するため、機械式人工呼吸器に付属して使用できるように構成されている。機械式人工呼吸器は、在来のY字状接続器を介して患者に接続できる。Y字状接続器は、呼気バルブ及び呼吸終末陽圧(PEEP)バルブの少なくとも一方に流体的に接続することもできる。流量センサは、詳細には、空気圧縮ノイズを約0.1リットル/分(LPM)に制限して、患者により開始される呼気及び吸気の各相が、約0.2LPMの呼吸流量でトリガされるように構成されている。流量センサは、Y字状接続器と一体に形成してもよいが、Y字状接続器とは別部品として設けてもよい。流量センサは、ペーシェントチューブに接続されてもよく、該チューブが気管内チューブなどのペーシェント接続部に接続されてもよい。
【0014】
最も広義には、流量センサは、差圧測定用の流量制限器を備えた細長い中空管状部材を含んで構成される。流量センサは、前記中空状部材の一方の端部にバッフル、及び他方の端部に流動障害物の少なくとも一方を含んでもよい。バッフルは、詳細には人工呼吸器からのバイアス流に特徴的な非軸流を真っ直ぐに整流できるように構成される。流動障害物は、気管内チューブと同一軸上に配設されるのが好ましく、それにより、患者の呼気の際に該気管内チューブから排出される高圧噴流は分散され、呼気流量が測定される流量制限器に達する前に均一な流速分布となる。
【0015】
前記管状部材は、機械式人工呼吸器に接続される呼吸器側端部と、患者の気道に接続される患者側端部を含む。該管状部材は、気管内チューブが接続された在来の気道アダプタに接合されてもよく、また、内表面を規定し中心軸を有する孔を備えた円筒状としてよい。前記孔は、呼吸器側端部と患者側端部との間に配設されたスロート部で横断面積を減少させてもよい。前記スロート部は、患者側端部に流入する呼気ガスを、呼気流量が測定される流量制限器に達する前に狭窄している。
【0016】
前記流量制限器は、スロート部に径方向に配設されて該スロート部を二等分する。ここで、流量制限器は、前記中心軸を横切って取り付けられる。流量制限器は、軸方向両端部に配設された一対の圧力タップを含む。各圧力タップは、好ましくは中心軸に対して対称的に配置されるタップ高さを規定する。各圧力タップは、対応する一対の外側圧力ポートに、分離した流体通路を介して流体的に接続される。
【0017】
前記圧力ポートは、圧力チューブや接続器を介するなどにより圧力トランスデューサに流体的に接続して、差圧を流量に変換できる。検出した圧力は、吸気流量及び呼気流量の測定に使用される。前記流量制限器は、好ましくは中心軸に合わせて得られるアスペクト比を有する対称的な空気力学的横断面形状を有する。
【0018】
前記バッフルは、前記孔内の呼吸器側端部に配設され、中心軸から径方向外側に延び、かつ、中心軸に合わせて軸方向に配列された複数のベーンを含んで構成される。バッフルは、前記圧力タップで非軸流を最小限に抑制する大きさ及び形状とするのが好ましい。これに関して、バッフルは、流量センサに流入するバイアス流の角度特性を真直状とするように形成されている。該バイアス流は、流れにおける差圧が測定され、その後、流量に変換される流量制限器に達する前に、前記ベーンによって真直化される。これに関して、バッフルは、圧力測定精度を高めるため、流量制限器での軸交差流を抑制する。
【0019】
各ベーンは、好ましくは呼吸器側端部と反対側の端部においてバッフルの径方向内側(すなわち中心軸付近)に形成されたノッチを含む。該ベーンのノッチは、全体としてバッフルの共通の圧力リリーフ機構を構成する。該圧力リリーフ機構は、隣接するベーン通路間の差圧(すなわちベーン間の差圧)を最小限に抑えることができるように形成される。この方法において、呼吸器側端部からの流れは、均一な流速分布を有し、流量制限器における圧力測定の精度を確保するのが好ましい。
【0020】
流量センサの反対側の端部には、前記孔内の患者側端部とスロート部との間に流動障害物が配設される。該流動障害物は、該障害物が前記孔を二等分するように中心軸を横切って取り付けられる(つまり、孔内側に径方向に配置される)のが好ましい。また、軸方向から視て、流動障害物を流量制限器に対して直角乃至垂直に向けるのが好ましい。
【0021】
さらに、流動障害物は、ダイアモンド形状や涙滴形状などの空気力学的横断面とするのが好ましい。また、圧力タップでの圧力測定の精度を改善するため、流動障害物をスロート部で孔を横切る流速の均一化を助長する形状とするのが好ましい。また、流動障害物は、気管内チューブから排出された高速高圧な噴流が直接圧力タップに衝突して誤った圧力測定が行われるのを防止できる障害物高さを有するのが好ましい。
【0022】
流量センサは、特に機械式人工呼吸器に付属して使用することができるように構成され、新生児の人口呼吸に要求されるような比較的小流量の0.2LPMで、患者により開始される呼吸サイクルの吸気相及び呼気相がトリガされるために、好ましくは、空気圧縮ノイズが0.1LPM未満に維持されるように構成される。
本明細書に記載した上記及びその他の特徴乃至利点は、以下の説明及び図によって、より明確に理解されるであろう。以下で同様の部分には同様の番号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る流量センサの分解組立斜視図で、さらに、前記気管内チューブに流体的に接続する気道アダプタを示す。
【図2】前記流量センサを、その患者側端部側から見た斜視図である。
【図3】前記流量センサの縦断面図で、呼吸器側端部に配設されたバッフル、患者側端部に配設された流動障害物及び前記バッフルと流動障害物間に介装された流量制限器を示す。
【図4A】前記流量センサ及びアダプタの縦断面図で、これらの間の内部接続状態を示す。
【図4B】前記流量センサの側断面図で、呼吸器側端部に形成されたテーパ部、及び前記流動障害物と流量制限器との関係を示す。
【図5】前記流量センサの平断面図で、前記流動障害物の横断面及び前記流量制限器の軸方向の横断面を示す。
【図6】呼吸器側端部における前記流量センサの一方の端面図で、バッフルを構成する等角度間隔に配設された複数のベーンを示す。
【図7】図4Bの7−7断面の軸方向断面図で、前記流量制限器の圧力タップを示す。
【図8】図4Bの8−8断面の軸方向断面図で、前記患者側端部での外周フランジを示す。
【図9】前記流量センサの縦断面図で、患者側端部の流動障害物の流れを示す。
【図10】前記流量センサの縦断面図で、前記流れが呼吸器側端部でスパイラル状に流入する状態、及び前記バッフルによる流れの直進化作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面について説明すると、図示されているのは本発明の好ましい実施形態を明らかするためのものであり、同一のものに限定するためのものではない。図1及び図2は、特に、流量センサを通る流れの圧力を検出するのに適した2方向流量センサの斜視図である。該流量センサ10は、比較的小径(小内径76)な気管内チューブ16としてのペーシェントチューブ14に内部接続することができるようにしたものが示されている。アダプタ70は、流量センサ10の一方の端部に形成された環状溝68に、該アダプタ70を挿入する等により、流量センサ10に摩擦で係合される。
【0025】
前記気管内チューブ16は、大人用にも使用できるように比較的大径とすることもできる。気管内チューブ以外の代替形状のペーシェントチューブ14を、流量センサに付属して使用してもよい。ペーシェントチューブ14は、どのような形状であれ、患者の気道に接続して流量センサ10に通じることができるように構成される。流量センサ10は、ペーシェントチューブ14の形状によらず、センサ通過流量の高精度な測定を容易に行うことができるように構成される。
【0026】
流量センサ10は、患者側端部26に流動障害物64を含む。流動障害物64の各端部には、一対の圧力タップ44a,44bがある。前記流動障害物64は、呼気の際に気管内チューブ16から排出された高速高圧な噴流と一直線状となる方向に、向きを特定される。この点に関して、流動障害物64は、前記高圧噴流を分散して、患者側端部26の圧力タップ44bにおける流量センサ10の比較的大きな横断面と公差する流速を、略均一となるように、特に適した形状に構成される。この方法では、流動障害物64によって、呼気流量の高精度な測定を容易に行うことができる。
【0027】
特に図1を参照して説明すると、流量センサ10は、一対の接続器54を含んでよく、該接続器54は、流量センサ10の外側に形成された対応する一対の圧力チューブコネクタ52の開口部と係合する大きさ及び形状に形成される。各圧力チューブコネクタ52は、流量制限器38の軸方向両端部に配設された対応する圧力タップ44a、44bに流体的に接続される。以下に詳述するように、差圧は、流量制限器38の圧力タップ44aと44bとの間で測定される。
【0028】
圧力測定値は、前記接続器54から延びる一対の圧力チューブを介して、圧力トランスデューサ、又はその他圧力変換装置に供給できる。当技術分野で周知のように、圧力トランスデューサは、参照テーブルの使用等によって流量を測定するのに使用することができる。圧力タップ44a、44bでの圧力測定値を表す電気信号を生成するため、流量情報が使用される。前記電気信号は、患者により開始された吸気と呼気とに応じて、然るべきタイミングで機械式人工呼吸器12(図示省略)、及び呼気バルブ若しくはPEEPバルブ(図示省略)をサイクル駆動乃至起動するのに使用できる。
【0029】
図1〜図10に示される流量センサ10は、呼吸器側端部24と患者側端部26とを有する。呼吸器側端部24は、Y字状接続器(図示せず)を介するなどによって、人工呼吸器12に流体的に接続される。流量センサ10は、前記Y字状接続器と一体化してもよいが、該センサの患者に近い側の端部などにY字状接続器を流体的に接続する別部品として設けることもできる。これについては、流量センサ10は、発明者DeVries等による米国特許第6,102,038号に開示された人工呼吸システムに対して使用できるように構成され、その開示された全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。流量センサ10の患者側端部26は、図1及び図2に示されたアダプタ70及び気管内チューブ16を介する等により、患者の気道に流体的に接続される。追加的に、流量センサ10を前記米国特許第6,102,038号に開示されたタイプなどのように、Y字状接続器に一体に組み込んでもよい。流量センサ10及びY字状接続器を、例えば、射出成形などにより、一体構造に形成してもよい。
【0030】
流量センサ10は、概して、内部を貫通して延びる孔20を備えた細長い中空管状部材18に形成される。前記孔20は、内表面28を含み、かつ、孔20を通って延びる縦軸乃至中心軸22を規定する。孔20の呼吸器側端部24に、バッフル56を配設できる。前記バッフル56は、概して、呼吸器側端部24に至る非軸流を最小限に制限し、あるいは整流化することによって空気圧縮ノイズを減少させる大きさ及び形状の複数のベーン58を含んで構成される。既述したように、人工呼吸器12は、Y字状接続器内に相当量の戻り流を生成しつつ人工呼吸器12からY字状接続器へ通過するバイアス流を生成するように形成される。
【0031】
既述したように、前記バイアス流には、非軸流方向において呼吸器側端部24に流入する渦巻き状又は捩れ状の流れが含まれる。前記バッフル56が無い場合は、前記非軸バイアス流は、直交流方向に呼吸器側端部24の圧力タップ44aに当たり、その結果、誤った差圧測定が行われてしまう。重要なのは、呼吸器側端部24で孔20に流入する傾斜した流れや渦巻き流を減少させ、あるいは最小限に抑えることにより、流量制限器38に到達する際には軸方向に整流されているように、前記バッフル56を特定の大きさ又は形状に形成することである。
【0032】
図3を参照すると、前記流動障害物64は、孔20内に流量制限器38の患者側端部26と隣接して配設されている。既述したように、前記流動障害物64は、空気力学的な横断面形状とするのが好ましい。流動障害物64はまた、図9に最も良く示されているように、気管内チューブ16から排出される高圧噴流に対して略直線状に並ぶように配設されるのが好ましい。流動障害物64は、患者の呼気流の圧力測定を高精度に行えるようにするため、患者側端部26の圧力タップ44bと交差する呼気流が一定速度となるのを助長する。
【0033】
図4A〜8を参照すると、管状部材18の孔20は、呼吸器側端部24と患者側端部26との間に、スロート部36を含んでもよい。該スロート部36は、図示のように呼吸器側端部24及び患者側端部26の少なくとも一方の横断面積より小さな横断面積を有している。ここで、前記管状部材18は、図示及び説明したが、概して筒状乃至空洞の管状部材18であること、管状部材18を、代替しうる様々な形状及び形態としてもよいことに留意すべきである。例えば、孔20は、横断面形状が長円形、四角形、その他の形状であってもよい。しかし、円形断面にすれば、前記流量センサを通る流量特性が望ましい特性となり、流量制限器38での圧力測定の精度が高められる。
【0034】
前記流量制限器38は、スロート部36内に径方向に配設され、スロート部36を二等分する。その際、流量制限器38は、中心軸22を横切って取り付けられる。また、流量制限器38は、該流量制限器38の下流側で乱流の発生を最小限に抑えるように構成されるのが好ましい。当然であるが、流量制限器38の上流端部及び下流端部とは、流れの方向によって決まる。例えば、呼吸器側端部24に流入する流れについては、上流側は呼吸器側端部24に近い側であるのに対し、流量制限器38の下流側は患者側端部26に近い側である。
【0035】
反対に、前記気管内チューブ16などから患者側端部26に流入する流れについては、流量制限器38の上流端部は、患者側端部26に隣接して配置されるのに対し、流量制限器38の下流端部は、呼吸器側端部24に隣接して配置される。便利なことには、本流量センサ10は、2つの方向(すなわち、双方向)の流れを測定する機能を有する。流量制限器38の上流側は高圧であるのに対し、下流側は低圧である。上流端と下流端との間の圧力の差は、流速の二乗と差圧との間の既知の関係に基づく流量に相関して求めてよいが、実験的に求めることもできる。
【0036】
図4A及び4Bを参照すると、前記流量制限器38は、その両端部に一対の圧力タップ44a,44bを含む。各圧力タップ44a,44bは、流量制限器38の軸方向両端部に沿って通常のオリフィス乃至溝として形成されている。圧力タップ44a,44bは、対応する一対の流体通路48を介して、管状部材18外壁の一対の外側圧力ポート50に流体的に接続される。図7で明らかなように、前記流体通路48は、圧力タップ44a,44bから圧力ポート50まで上方に延び、該圧力ポート50内で、接続器54が圧力タップ44a,44bでの圧力を前記圧力トランスデューサに流体的に伝達する。図4Bに最も良く示されるように、各圧力タップ44a,44bは、タップ高さ46を規定する。このタップ高さ46は、孔20の中心軸22に対して対称的に設定されるのが好ましく、かつ、流動障害物64の障害物高さ66以下とするのが好ましい。
【0037】
一旦図5に戻って参照すると、流量制限器38は、前記流れの乱れを最小限に抑えるため、空気力学的な形状を有するのが好ましい。例えば、流量制限器38は、ダイアモンド、長円など横長の形状を有し、又は、その他の適切な横断面形状を有し、流動抵抗を増大させると同時に圧力測定精度を減少させる乱流の発生を最小限に抑えることが好ましい。
【0038】
図2,3,4B及び6を参照すると、前記バッフル56は、孔20内の呼吸器側端部24に配設されている。図から明らかなように、バッフル56は、中心軸22から径方向外側に延びる複数のベーン58を含んで構成されている。各ベーン58は、中心軸22に略軸方向に合わせて配設される。ベーン58は、中心軸22から孔20の内表面まで径方向外側に延びる。バッフル56は、圧力タップ44a,44bでの非軸流を最小限に抑える大きさ及び形状とするのが好ましい。これに関して、バッフル56は、流量センサ10に流入する傾斜した流れや渦巻き流を真っ直ぐに整流する。
【0039】
バッフル56は、該バッフル56無しでは誤った差圧の測定がなされる可能性がある流量制限器38での軸交差流を最小限に抑制するのに特に適応した形に形成される。8個のベーンが図示されているが、バッフル56を構成するベーンの数は、何個でもよい。例えば、呼吸器側端部24の孔20を二等分する一対のベーン58を対角線上に配置して、バッフル56を構成してもよい。代替として、4個のベーンを好ましくは相互に直角(90度)をなす方向に向けて配設して、バッフル56を構成してもよい。さらに好ましくは、8個のベーンを、図示のように互いに等しい角度間隔で配設して、バッフル56を構成してもよい。
【0040】
図4Bを参照すると、孔20は、バッフル56に隣接した位置に、呼吸器側端部24からスロート部分36に向かう方向に孔20が径方向内側に傾斜するテーパ部分30を含むことができる。これに関しては、呼吸器側端部24に流入する流れが、スロート36に向かって流れるにしたがって収縮する。前記テーパ部30は、孔20の先端部間に1個のテーパ部を配設してもよく、又は、テーパ部30を、傾斜が漸次急となる第1及び第2のテーパ32,34を含んで構成してもよい。
【0041】
図4Bに最も良く示される一実施形態においては、第1テーパ32は、参照符合θ1で示されるように約2°までの半角度(中心軸に対する角度)を有することができる。第2テーパ34は、第1テーパ32から軸方向内方に配設され、好ましくは、参照符合θ2で示される半角度(中心軸に対する角度)を、約12°と約16°との間とするのが好ましい。第1及び第2テーパ32,34とスロート部36との間の遷移区間では、ノイズを生成する渦や乱流を発生する流れの乱れを回避するため、滑らかに変化する径を有することが好ましい。
【0042】
各ベーン58は、径方向内側で(中心軸に沿って)、かつ、呼吸器側端部24と反対側に形成されたノッチ60を含むのが好ましい。該ノッチ60は、孔20の第2テーパ34の領域あたりに形成され、あらゆるベーン58流路における局部的な高圧は、該ノッチ60を介してあらゆる差圧(ベーン間の差圧)を放出することによって解除することができる。これに関して、圧力リリーフ機構62は、圧力タップ44a,44bの領域での空気圧縮ノイズ及び交差流を減少して、圧力測定精度を改善する。
【0043】
さらに図4Bを参照すると、患者側端部26と流量制限器38との間に介装された流動障害物64が示されている。流動障害物64は、中心軸22を横切って取り付けられるが、軸方向から視て、流量制限器38に対して垂直に向けられる。流動障害物64は、孔20を二等分し、好ましくは軸方向を空気力学的断面とする。該空気力学的断面形状は、中心軸に合わせて得られるアスペクト比を有することが好ましい。空気力学的断面形状は、図示のようなダイアモンド形状でもよいが、その他の代替形状でもよい。例えば、流動障害物64は、涙滴形の軸方向断面を有し、その前縁が患者側端部26に面し、後縁が呼吸器側端部24に面する。
【0044】
さらに、軸方向から視て、流動障害物64を流量制限器38と一列に配列されることが考えられる。しかし、軸方向から視て、流動障害物64が流量制限器38に対して直角乃至垂直である図示のような配置の方がより好ましい。かかる配置では、孔20の断面を横切る流速が、より均一化されることが明らかである。
【0045】
特に図4B及び9を参照すると、流動障害物64は、障害物高さ66を規定する。該障害物高さ66は、圧力タップ44a,44bの各タップ高さ46と少なくとも同一高さであることが好ましく、図9に示すように気管内チューブ16から放出された高圧噴流が分散することにより、高圧噴流が圧力タップ44a,44bに直接衝突する場合よりも均一な流速分布が得られる。既述のように、圧力タップ44a,44bに高圧噴流が当たる以上、障害物高さ66が、圧力タップ44a,44bの各タップ高さ46以上に設定されなければ、正確な流量測定を行えないであろう。
【0046】
一旦図8に戻ると、流量センサ10の患者側端部26における軸方向断面が示され、患者側端部26に、標準サイズのアダプタ70と係合させるための環状溝68を示す。既述のように、この種のアダプタ70は、流量センサ10に繋がる各種サイズのペーシェントチューブ(すなわち、気管内チューブ16)に取り付けて用いる一般に入手可能な気道アダプタ70でよい。図4Bから明らかなように、アダプタ70は、環状溝68に摩擦係合される大きさ及び形状を有した円筒状の延長部材72を含む。
【0047】
図10に最も良く示されているように、人工呼吸器12の運転中、患者が吸い込む吸気相では、人工呼吸器12からの流れ(例えば、バイアス流)が呼吸器側端部24に入る。前記バイアス流は、人工呼吸器からY字状接続器までの湾曲した流体通路によって引き起こされる振動,乱流又は非対称流などの空気圧縮ノイズを含みうる。人工呼吸器12からの流れは、中心軸22から径方向外側に延びるベーン58を通り抜ける。
【0048】
既述したように、前記ベーン58は、正確な圧力測定を確保するため、圧力タップ44a,44bでの非軸流を真っ直ぐに整流するのに好ましい大きさ及び形状とする。ベーン58の前記ノッチ60によって全体が形成された圧力リリーフ機構62は、ベーン58間に生じるあらゆる差圧を、吸気流が流量制限器38に到達する前に、放出即ち均圧化させる特定の大きさ及び形状に形成される。吸気流は、その後、図4Aに示されたような気管内チューブ16を経由して患者まで移動する。
【0049】
図9に示されるように、呼気相において、呼気ガスは気管内チューブ16から高圧噴流となって放出される。該高圧噴流が、流量センサ10の患者側端部26に入ると、流動障害物64は流れの分散を引き起こす。前記流動障害物64は、好ましくは、流量制限器38の各圧力タップ44a,44bのタップ高さ46と少なくとも同一高さを有し、前記高圧噴流が圧力タップ44a,44bに直接衝突するのを最小限に抑制し、又は排除する。障害物高さ66とタップ高さ46との間の幾何学的関係によって、人為的に高めの流量測定値となることが防止される。
【0050】
代わりに、流動障害物64は、呼気を患者側端部26から流入して呼吸器側端部から流出する際に、圧力タップ44a,44bにおいて孔20を横切る流れの流速分布の均一化を助長する。好都合なことに、流動障害物64を設けることにより、ペーシェント接続部におけるデッドスペースを減少させる流量センサ10を形成することが可能となる。過剰なデッドスペースが機械式人工呼吸器にとって望ましくないことは既述したとおりである。
【0051】
実施形態方法で示された上述の説明は、本発明を限定するものではない。上記説明によれば、当業者は、本明細書に開示された発明の範囲又は趣旨を逸脱することなく、異なる態様を考え出すであろう。さらに、本明細書に開示された実施形態の特徴は、単独又は相互に組み合わせを変えて使用することができ、かつ、本明細書中に記載した特定の組み合わせに限定されるものでもない。
このように、特許請求の範囲は、説明された実施形態に限定されるものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の人工呼吸システムに関し、詳細には、患者の呼吸流量の測定精度を改善した2方向流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式人工呼吸器は、呼吸サイクルの吸気及び呼気の各相で補助することにより患者の呼吸を手助けするために使用される。ある装置では、機械式人工呼吸器はY字状接続器を介して患者に接続することができる。該Y字状接続器はさらに、ペーシェント接続部に接続されたペーシェントチューブを介して、患者の気道に流体的に接続される。Y字状接続器の1本の脚に、呼気バルブを連結して備えていてもよい。
【0003】
前記呼気バルブは、呼吸サイクルの呼吸の相に応じて開閉が切り換えられる。吸気相では、人工呼吸器から患者へ圧縮されたガスが送られるように、呼気バルブが閉じる。呼気相では、患者が息を大気中へ吐き出せるように、呼気バルブが開く。呼気相で大気圧より上昇した背圧を付与するため、呼吸終末陽圧(PEEP)バルブを、呼気バルブと組み合わせて使用するようにした呼吸器装置もある。
【0004】
人工呼吸器から患者へ供給される圧縮ガスの流量、及び患者から呼気バルブへ吐き出される呼気ガスの流量を計測するため、流量センサが使用される。ガス流量計測用としてごく一般的な技術の1つに、差圧検出がある。差圧式流量センサは、センサを通るガス流の中に配設された流量制限器を含み、該流量制限器の通過によって生じる圧力降下(差圧)を測定することができる。2方向式流量センサは、流量制限器の両側にある圧力タップの上下流間に測定される差圧の関数として、各方向の流量を測定することができる。測定される差圧は、実際に求められる流量と相関する。
【0005】
前記ペーシェント接続部が、機械式人工呼吸器から患者へ圧縮ガスを運ぶ気管内チューブとして与えられる場合もある。該気管内チューブは、通常は比較的小径である。小径の気管内チューブを、標準サイズ用の大径の流量センサ接続部に一致させて接続するため、気道アダプタが使用される。流量センサは、できるだけ患者の近くに配置するのが好ましく、先行技術に係る装置には、流量センサをY字状接続器と一体化したもの以外に、Y字状接続器と患者の接合部との間に配置できるようにしたものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
相対的に小径の気管内チューブと大径の流量センサとのサイズの相違により、患者の呼気が、比較的高速高圧な噴流となって気管内チューブから流出し、流量センサに流入する。この気管内チューブからの人為的に高速高圧化された噴流は、流量センサ内で前記流量制限器の圧力タップに衝突する。この人為的な高速高圧噴流により、与えられた流量に対応する差圧の測定値が、実際に求められた流量と差圧との関係から求められる測定値に比較して、人為的に高められることとなる。その結果、流量測定値が人為的に高められる。
【0007】
前記高圧噴流によって生じる人為的に流速が高められる問題を解決すべく、先行技術に係る人工呼吸システムでは、気管内チューブから流量センサまでの距離を約6インチ(約152.4mm)ほど増加させている。この流量センサと気管内チューブ間の距離の増加により、高圧噴流が流量制限器の圧力タップに衝突する前に、流量センサ内部で、より均等に分散されるようになる。この方法では、流量センサの横断面と交差する流速が比較的一定となるため、圧力測定値がより正確になると考えられる。残念ながら、前記流量センサから気管内チューブまでの距離を増加すると、呼吸量つまり患者の気道のデッドスペースも同時に増大する。この増加したデッドスペースにより、以前に吐き出した呼気を再呼吸(吸入)してしまうことになる。
【0008】
流量測定に関する別の問題として、吸気相において吸気流に生じる空気圧縮ノイズによって、流量センサでの圧力測定値が不正確となりうることがある。この種の空気圧縮ノイズは、流量センサの呼吸器側端部(患者側端部の反対側)に乱流,振動など非対称な流動状態を含みうる。空気圧縮ノイズを含みうるバイアス流を伴って運転するよう構成された人工呼吸システムがある。例えば、発明者Devriesの米国特許第6,102,038号に開示されたものと同種の人工呼吸システムは、前記呼気バルブが開かれ又は閉じることによって前記Y字状接続器を介して循環するバイアス流を伴って運転する。
【0009】
多くの用途で、前記バイアス流の流量は、通常約2〜10リットル/分(LPM)の範囲であり、流量センサに、該センサの精度を低下させる空気圧縮ノイズが発生しうる。バイアス流中の空気圧縮ノイズは、流量センサの入口での非対称な流動状態によって生成されうる。より詳細には、前記Y字状接続器の形状のため、バイアス流は、非軸方向に流量センサに流入して該センサに渦流や軸を横切る軸交差流を生成し、その結果、流量センサの圧力タップにおける圧力測定が不正確となってしまう。
【0010】
前記流量センサで検出された圧力は、機械式人工呼吸器の呼気バルブを、患者により開始される吸気相及び呼気相に応じてサイクル駆動させるために使用される。特に、新生児患者や小児患者の場合は、バイアス流中の空気圧縮ノイズを最小限に抑制して吸気相及び呼気相開始時の0.2LPMの流量が空気圧縮ノイズによって乱されないようにすることが望ましい。これに関しては、この種の空気圧縮ノイズが0.1LPM以下に維持されるのが望ましい。
【0011】
以上のように、新生児患者や小児患者への使用に適した流量センサに係る技術が必要とされている。より詳細には、患者により開始される呼吸サイクル毎の吸気相及び呼気相が、適正な流量でトリガされるように減少した空気圧縮ノイズで作動できる流量センサ用の技術が必要とされている。さらには、小径の気管内チューブに付属して使用することができる流量センサに係る技術が必要とされている。
【0012】
好ましくは、流量センサを、呼気の際、気管内チューブから排出される高圧噴流によって人為的に高められた圧力の測定を排除できるように構成される。さらに、流量センサは、患者がCO2を再呼吸するのを防止するため、デッドスペースを最小限とするように構成されることが望ましい。最終的に、呼吸時の空気流抵抗を最小限としつつ、呼吸器側端部での空気圧縮ノイズの悪影響を解消できる流量センサに係る技術が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した機械式人工呼吸器用流量センサに関する要求は、2方向流量センサを提供する本発明によって、具体的に対処される。流量センサは、呼吸時に患者に送られる圧縮ガスの流量を測定するため、機械式人工呼吸器に付属して使用できるように構成されている。機械式人工呼吸器は、在来のY字状接続器を介して患者に接続できる。Y字状接続器は、呼気バルブ及び呼吸終末陽圧(PEEP)バルブの少なくとも一方に流体的に接続することもできる。流量センサは、詳細には、空気圧縮ノイズを約0.1リットル/分(LPM)に制限して、患者により開始される呼気及び吸気の各相が、約0.2LPMの呼吸流量でトリガされるように構成されている。流量センサは、Y字状接続器と一体に形成してもよいが、Y字状接続器とは別部品として設けてもよい。流量センサは、ペーシェントチューブに接続されてもよく、該チューブが気管内チューブなどのペーシェント接続部に接続されてもよい。
【0014】
最も広義には、流量センサは、差圧測定用の流量制限器を備えた細長い中空管状部材を含んで構成される。流量センサは、前記中空状部材の一方の端部にバッフル、及び他方の端部に流動障害物の少なくとも一方を含んでもよい。バッフルは、詳細には人工呼吸器からのバイアス流に特徴的な非軸流を真っ直ぐに整流できるように構成される。流動障害物は、気管内チューブと同一軸上に配設されるのが好ましく、それにより、患者の呼気の際に該気管内チューブから排出される高圧噴流は分散され、呼気流量が測定される流量制限器に達する前に均一な流速分布となる。
【0015】
前記管状部材は、機械式人工呼吸器に接続される呼吸器側端部と、患者の気道に接続される患者側端部を含む。該管状部材は、気管内チューブが接続された在来の気道アダプタに接合されてもよく、また、内表面を規定し中心軸を有する孔を備えた円筒状としてよい。前記孔は、呼吸器側端部と患者側端部との間に配設されたスロート部で横断面積を減少させてもよい。前記スロート部は、患者側端部に流入する呼気ガスを、呼気流量が測定される流量制限器に達する前に狭窄している。
【0016】
前記流量制限器は、スロート部に径方向に配設されて該スロート部を二等分する。ここで、流量制限器は、前記中心軸を横切って取り付けられる。流量制限器は、軸方向両端部に配設された一対の圧力タップを含む。各圧力タップは、好ましくは中心軸に対して対称的に配置されるタップ高さを規定する。各圧力タップは、対応する一対の外側圧力ポートに、分離した流体通路を介して流体的に接続される。
【0017】
前記圧力ポートは、圧力チューブや接続器を介するなどにより圧力トランスデューサに流体的に接続して、差圧を流量に変換できる。検出した圧力は、吸気流量及び呼気流量の測定に使用される。前記流量制限器は、好ましくは中心軸に合わせて得られるアスペクト比を有する対称的な空気力学的横断面形状を有する。
【0018】
前記バッフルは、前記孔内の呼吸器側端部に配設され、中心軸から径方向外側に延び、かつ、中心軸に合わせて軸方向に配列された複数のベーンを含んで構成される。バッフルは、前記圧力タップで非軸流を最小限に抑制する大きさ及び形状とするのが好ましい。これに関して、バッフルは、流量センサに流入するバイアス流の角度特性を真直状とするように形成されている。該バイアス流は、流れにおける差圧が測定され、その後、流量に変換される流量制限器に達する前に、前記ベーンによって真直化される。これに関して、バッフルは、圧力測定精度を高めるため、流量制限器での軸交差流を抑制する。
【0019】
各ベーンは、好ましくは呼吸器側端部と反対側の端部においてバッフルの径方向内側(すなわち中心軸付近)に形成されたノッチを含む。該ベーンのノッチは、全体としてバッフルの共通の圧力リリーフ機構を構成する。該圧力リリーフ機構は、隣接するベーン通路間の差圧(すなわちベーン間の差圧)を最小限に抑えることができるように形成される。この方法において、呼吸器側端部からの流れは、均一な流速分布を有し、流量制限器における圧力測定の精度を確保するのが好ましい。
【0020】
流量センサの反対側の端部には、前記孔内の患者側端部とスロート部との間に流動障害物が配設される。該流動障害物は、該障害物が前記孔を二等分するように中心軸を横切って取り付けられる(つまり、孔内側に径方向に配置される)のが好ましい。また、軸方向から視て、流動障害物を流量制限器に対して直角乃至垂直に向けるのが好ましい。
【0021】
さらに、流動障害物は、ダイアモンド形状や涙滴形状などの空気力学的横断面とするのが好ましい。また、圧力タップでの圧力測定の精度を改善するため、流動障害物をスロート部で孔を横切る流速の均一化を助長する形状とするのが好ましい。また、流動障害物は、気管内チューブから排出された高速高圧な噴流が直接圧力タップに衝突して誤った圧力測定が行われるのを防止できる障害物高さを有するのが好ましい。
【0022】
流量センサは、特に機械式人工呼吸器に付属して使用することができるように構成され、新生児の人口呼吸に要求されるような比較的小流量の0.2LPMで、患者により開始される呼吸サイクルの吸気相及び呼気相がトリガされるために、好ましくは、空気圧縮ノイズが0.1LPM未満に維持されるように構成される。
本明細書に記載した上記及びその他の特徴乃至利点は、以下の説明及び図によって、より明確に理解されるであろう。以下で同様の部分には同様の番号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る流量センサの分解組立斜視図で、さらに、前記気管内チューブに流体的に接続する気道アダプタを示す。
【図2】前記流量センサを、その患者側端部側から見た斜視図である。
【図3】前記流量センサの縦断面図で、呼吸器側端部に配設されたバッフル、患者側端部に配設された流動障害物及び前記バッフルと流動障害物間に介装された流量制限器を示す。
【図4A】前記流量センサ及びアダプタの縦断面図で、これらの間の内部接続状態を示す。
【図4B】前記流量センサの側断面図で、呼吸器側端部に形成されたテーパ部、及び前記流動障害物と流量制限器との関係を示す。
【図5】前記流量センサの平断面図で、前記流動障害物の横断面及び前記流量制限器の軸方向の横断面を示す。
【図6】呼吸器側端部における前記流量センサの一方の端面図で、バッフルを構成する等角度間隔に配設された複数のベーンを示す。
【図7】図4Bの7−7断面の軸方向断面図で、前記流量制限器の圧力タップを示す。
【図8】図4Bの8−8断面の軸方向断面図で、前記患者側端部での外周フランジを示す。
【図9】前記流量センサの縦断面図で、患者側端部の流動障害物の流れを示す。
【図10】前記流量センサの縦断面図で、前記流れが呼吸器側端部でスパイラル状に流入する状態、及び前記バッフルによる流れの直進化作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面について説明すると、図示されているのは本発明の好ましい実施形態を明らかするためのものであり、同一のものに限定するためのものではない。図1及び図2は、特に、流量センサを通る流れの圧力を検出するのに適した2方向流量センサの斜視図である。該流量センサ10は、比較的小径(小内径76)な気管内チューブ16としてのペーシェントチューブ14に内部接続することができるようにしたものが示されている。アダプタ70は、流量センサ10の一方の端部に形成された環状溝68に、該アダプタ70を挿入する等により、流量センサ10に摩擦で係合される。
【0025】
前記気管内チューブ16は、大人用にも使用できるように比較的大径とすることもできる。気管内チューブ以外の代替形状のペーシェントチューブ14を、流量センサに付属して使用してもよい。ペーシェントチューブ14は、どのような形状であれ、患者の気道に接続して流量センサ10に通じることができるように構成される。流量センサ10は、ペーシェントチューブ14の形状によらず、センサ通過流量の高精度な測定を容易に行うことができるように構成される。
【0026】
流量センサ10は、患者側端部26に流動障害物64を含む。流動障害物64の各端部には、一対の圧力タップ44a,44bがある。前記流動障害物64は、呼気の際に気管内チューブ16から排出された高速高圧な噴流と一直線状となる方向に、向きを特定される。この点に関して、流動障害物64は、前記高圧噴流を分散して、患者側端部26の圧力タップ44bにおける流量センサ10の比較的大きな横断面と公差する流速を、略均一となるように、特に適した形状に構成される。この方法では、流動障害物64によって、呼気流量の高精度な測定を容易に行うことができる。
【0027】
特に図1を参照して説明すると、流量センサ10は、一対の接続器54を含んでよく、該接続器54は、流量センサ10の外側に形成された対応する一対の圧力チューブコネクタ52の開口部と係合する大きさ及び形状に形成される。各圧力チューブコネクタ52は、流量制限器38の軸方向両端部に配設された対応する圧力タップ44a、44bに流体的に接続される。以下に詳述するように、差圧は、流量制限器38の圧力タップ44aと44bとの間で測定される。
【0028】
圧力測定値は、前記接続器54から延びる一対の圧力チューブを介して、圧力トランスデューサ、又はその他圧力変換装置に供給できる。当技術分野で周知のように、圧力トランスデューサは、参照テーブルの使用等によって流量を測定するのに使用することができる。圧力タップ44a、44bでの圧力測定値を表す電気信号を生成するため、流量情報が使用される。前記電気信号は、患者により開始された吸気と呼気とに応じて、然るべきタイミングで機械式人工呼吸器12(図示省略)、及び呼気バルブ若しくはPEEPバルブ(図示省略)をサイクル駆動乃至起動するのに使用できる。
【0029】
図1〜図10に示される流量センサ10は、呼吸器側端部24と患者側端部26とを有する。呼吸器側端部24は、Y字状接続器(図示せず)を介するなどによって、人工呼吸器12に流体的に接続される。流量センサ10は、前記Y字状接続器と一体化してもよいが、該センサの患者に近い側の端部などにY字状接続器を流体的に接続する別部品として設けることもできる。これについては、流量センサ10は、発明者DeVries等による米国特許第6,102,038号に開示された人工呼吸システムに対して使用できるように構成され、その開示された全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。流量センサ10の患者側端部26は、図1及び図2に示されたアダプタ70及び気管内チューブ16を介する等により、患者の気道に流体的に接続される。追加的に、流量センサ10を前記米国特許第6,102,038号に開示されたタイプなどのように、Y字状接続器に一体に組み込んでもよい。流量センサ10及びY字状接続器を、例えば、射出成形などにより、一体構造に形成してもよい。
【0030】
流量センサ10は、概して、内部を貫通して延びる孔20を備えた細長い中空管状部材18に形成される。前記孔20は、内表面28を含み、かつ、孔20を通って延びる縦軸乃至中心軸22を規定する。孔20の呼吸器側端部24に、バッフル56を配設できる。前記バッフル56は、概して、呼吸器側端部24に至る非軸流を最小限に制限し、あるいは整流化することによって空気圧縮ノイズを減少させる大きさ及び形状の複数のベーン58を含んで構成される。既述したように、人工呼吸器12は、Y字状接続器内に相当量の戻り流を生成しつつ人工呼吸器12からY字状接続器へ通過するバイアス流を生成するように形成される。
【0031】
既述したように、前記バイアス流には、非軸流方向において呼吸器側端部24に流入する渦巻き状又は捩れ状の流れが含まれる。前記バッフル56が無い場合は、前記非軸バイアス流は、直交流方向に呼吸器側端部24の圧力タップ44aに当たり、その結果、誤った差圧測定が行われてしまう。重要なのは、呼吸器側端部24で孔20に流入する傾斜した流れや渦巻き流を減少させ、あるいは最小限に抑えることにより、流量制限器38に到達する際には軸方向に整流されているように、前記バッフル56を特定の大きさ又は形状に形成することである。
【0032】
図3を参照すると、前記流動障害物64は、孔20内に流量制限器38の患者側端部26と隣接して配設されている。既述したように、前記流動障害物64は、空気力学的な横断面形状とするのが好ましい。流動障害物64はまた、図9に最も良く示されているように、気管内チューブ16から排出される高圧噴流に対して略直線状に並ぶように配設されるのが好ましい。流動障害物64は、患者の呼気流の圧力測定を高精度に行えるようにするため、患者側端部26の圧力タップ44bと交差する呼気流が一定速度となるのを助長する。
【0033】
図4A〜8を参照すると、管状部材18の孔20は、呼吸器側端部24と患者側端部26との間に、スロート部36を含んでもよい。該スロート部36は、図示のように呼吸器側端部24及び患者側端部26の少なくとも一方の横断面積より小さな横断面積を有している。ここで、前記管状部材18は、図示及び説明したが、概して筒状乃至空洞の管状部材18であること、管状部材18を、代替しうる様々な形状及び形態としてもよいことに留意すべきである。例えば、孔20は、横断面形状が長円形、四角形、その他の形状であってもよい。しかし、円形断面にすれば、前記流量センサを通る流量特性が望ましい特性となり、流量制限器38での圧力測定の精度が高められる。
【0034】
前記流量制限器38は、スロート部36内に径方向に配設され、スロート部36を二等分する。その際、流量制限器38は、中心軸22を横切って取り付けられる。また、流量制限器38は、該流量制限器38の下流側で乱流の発生を最小限に抑えるように構成されるのが好ましい。当然であるが、流量制限器38の上流端部及び下流端部とは、流れの方向によって決まる。例えば、呼吸器側端部24に流入する流れについては、上流側は呼吸器側端部24に近い側であるのに対し、流量制限器38の下流側は患者側端部26に近い側である。
【0035】
反対に、前記気管内チューブ16などから患者側端部26に流入する流れについては、流量制限器38の上流端部は、患者側端部26に隣接して配置されるのに対し、流量制限器38の下流端部は、呼吸器側端部24に隣接して配置される。便利なことには、本流量センサ10は、2つの方向(すなわち、双方向)の流れを測定する機能を有する。流量制限器38の上流側は高圧であるのに対し、下流側は低圧である。上流端と下流端との間の圧力の差は、流速の二乗と差圧との間の既知の関係に基づく流量に相関して求めてよいが、実験的に求めることもできる。
【0036】
図4A及び4Bを参照すると、前記流量制限器38は、その両端部に一対の圧力タップ44a,44bを含む。各圧力タップ44a,44bは、流量制限器38の軸方向両端部に沿って通常のオリフィス乃至溝として形成されている。圧力タップ44a,44bは、対応する一対の流体通路48を介して、管状部材18外壁の一対の外側圧力ポート50に流体的に接続される。図7で明らかなように、前記流体通路48は、圧力タップ44a,44bから圧力ポート50まで上方に延び、該圧力ポート50内で、接続器54が圧力タップ44a,44bでの圧力を前記圧力トランスデューサに流体的に伝達する。図4Bに最も良く示されるように、各圧力タップ44a,44bは、タップ高さ46を規定する。このタップ高さ46は、孔20の中心軸22に対して対称的に設定されるのが好ましく、かつ、流動障害物64の障害物高さ66以下とするのが好ましい。
【0037】
一旦図5に戻って参照すると、流量制限器38は、前記流れの乱れを最小限に抑えるため、空気力学的な形状を有するのが好ましい。例えば、流量制限器38は、ダイアモンド、長円など横長の形状を有し、又は、その他の適切な横断面形状を有し、流動抵抗を増大させると同時に圧力測定精度を減少させる乱流の発生を最小限に抑えることが好ましい。
【0038】
図2,3,4B及び6を参照すると、前記バッフル56は、孔20内の呼吸器側端部24に配設されている。図から明らかなように、バッフル56は、中心軸22から径方向外側に延びる複数のベーン58を含んで構成されている。各ベーン58は、中心軸22に略軸方向に合わせて配設される。ベーン58は、中心軸22から孔20の内表面まで径方向外側に延びる。バッフル56は、圧力タップ44a,44bでの非軸流を最小限に抑える大きさ及び形状とするのが好ましい。これに関して、バッフル56は、流量センサ10に流入する傾斜した流れや渦巻き流を真っ直ぐに整流する。
【0039】
バッフル56は、該バッフル56無しでは誤った差圧の測定がなされる可能性がある流量制限器38での軸交差流を最小限に抑制するのに特に適応した形に形成される。8個のベーンが図示されているが、バッフル56を構成するベーンの数は、何個でもよい。例えば、呼吸器側端部24の孔20を二等分する一対のベーン58を対角線上に配置して、バッフル56を構成してもよい。代替として、4個のベーンを好ましくは相互に直角(90度)をなす方向に向けて配設して、バッフル56を構成してもよい。さらに好ましくは、8個のベーンを、図示のように互いに等しい角度間隔で配設して、バッフル56を構成してもよい。
【0040】
図4Bを参照すると、孔20は、バッフル56に隣接した位置に、呼吸器側端部24からスロート部分36に向かう方向に孔20が径方向内側に傾斜するテーパ部分30を含むことができる。これに関しては、呼吸器側端部24に流入する流れが、スロート36に向かって流れるにしたがって収縮する。前記テーパ部30は、孔20の先端部間に1個のテーパ部を配設してもよく、又は、テーパ部30を、傾斜が漸次急となる第1及び第2のテーパ32,34を含んで構成してもよい。
【0041】
図4Bに最も良く示される一実施形態においては、第1テーパ32は、参照符合θ1で示されるように約2°までの半角度(中心軸に対する角度)を有することができる。第2テーパ34は、第1テーパ32から軸方向内方に配設され、好ましくは、参照符合θ2で示される半角度(中心軸に対する角度)を、約12°と約16°との間とするのが好ましい。第1及び第2テーパ32,34とスロート部36との間の遷移区間では、ノイズを生成する渦や乱流を発生する流れの乱れを回避するため、滑らかに変化する径を有することが好ましい。
【0042】
各ベーン58は、径方向内側で(中心軸に沿って)、かつ、呼吸器側端部24と反対側に形成されたノッチ60を含むのが好ましい。該ノッチ60は、孔20の第2テーパ34の領域あたりに形成され、あらゆるベーン58流路における局部的な高圧は、該ノッチ60を介してあらゆる差圧(ベーン間の差圧)を放出することによって解除することができる。これに関して、圧力リリーフ機構62は、圧力タップ44a,44bの領域での空気圧縮ノイズ及び交差流を減少して、圧力測定精度を改善する。
【0043】
さらに図4Bを参照すると、患者側端部26と流量制限器38との間に介装された流動障害物64が示されている。流動障害物64は、中心軸22を横切って取り付けられるが、軸方向から視て、流量制限器38に対して垂直に向けられる。流動障害物64は、孔20を二等分し、好ましくは軸方向を空気力学的断面とする。該空気力学的断面形状は、中心軸に合わせて得られるアスペクト比を有することが好ましい。空気力学的断面形状は、図示のようなダイアモンド形状でもよいが、その他の代替形状でもよい。例えば、流動障害物64は、涙滴形の軸方向断面を有し、その前縁が患者側端部26に面し、後縁が呼吸器側端部24に面する。
【0044】
さらに、軸方向から視て、流動障害物64を流量制限器38と一列に配列されることが考えられる。しかし、軸方向から視て、流動障害物64が流量制限器38に対して直角乃至垂直である図示のような配置の方がより好ましい。かかる配置では、孔20の断面を横切る流速が、より均一化されることが明らかである。
【0045】
特に図4B及び9を参照すると、流動障害物64は、障害物高さ66を規定する。該障害物高さ66は、圧力タップ44a,44bの各タップ高さ46と少なくとも同一高さであることが好ましく、図9に示すように気管内チューブ16から放出された高圧噴流が分散することにより、高圧噴流が圧力タップ44a,44bに直接衝突する場合よりも均一な流速分布が得られる。既述のように、圧力タップ44a,44bに高圧噴流が当たる以上、障害物高さ66が、圧力タップ44a,44bの各タップ高さ46以上に設定されなければ、正確な流量測定を行えないであろう。
【0046】
一旦図8に戻ると、流量センサ10の患者側端部26における軸方向断面が示され、患者側端部26に、標準サイズのアダプタ70と係合させるための環状溝68を示す。既述のように、この種のアダプタ70は、流量センサ10に繋がる各種サイズのペーシェントチューブ(すなわち、気管内チューブ16)に取り付けて用いる一般に入手可能な気道アダプタ70でよい。図4Bから明らかなように、アダプタ70は、環状溝68に摩擦係合される大きさ及び形状を有した円筒状の延長部材72を含む。
【0047】
図10に最も良く示されているように、人工呼吸器12の運転中、患者が吸い込む吸気相では、人工呼吸器12からの流れ(例えば、バイアス流)が呼吸器側端部24に入る。前記バイアス流は、人工呼吸器からY字状接続器までの湾曲した流体通路によって引き起こされる振動,乱流又は非対称流などの空気圧縮ノイズを含みうる。人工呼吸器12からの流れは、中心軸22から径方向外側に延びるベーン58を通り抜ける。
【0048】
既述したように、前記ベーン58は、正確な圧力測定を確保するため、圧力タップ44a,44bでの非軸流を真っ直ぐに整流するのに好ましい大きさ及び形状とする。ベーン58の前記ノッチ60によって全体が形成された圧力リリーフ機構62は、ベーン58間に生じるあらゆる差圧を、吸気流が流量制限器38に到達する前に、放出即ち均圧化させる特定の大きさ及び形状に形成される。吸気流は、その後、図4Aに示されたような気管内チューブ16を経由して患者まで移動する。
【0049】
図9に示されるように、呼気相において、呼気ガスは気管内チューブ16から高圧噴流となって放出される。該高圧噴流が、流量センサ10の患者側端部26に入ると、流動障害物64は流れの分散を引き起こす。前記流動障害物64は、好ましくは、流量制限器38の各圧力タップ44a,44bのタップ高さ46と少なくとも同一高さを有し、前記高圧噴流が圧力タップ44a,44bに直接衝突するのを最小限に抑制し、又は排除する。障害物高さ66とタップ高さ46との間の幾何学的関係によって、人為的に高めの流量測定値となることが防止される。
【0050】
代わりに、流動障害物64は、呼気を患者側端部26から流入して呼吸器側端部から流出する際に、圧力タップ44a,44bにおいて孔20を横切る流れの流速分布の均一化を助長する。好都合なことに、流動障害物64を設けることにより、ペーシェント接続部におけるデッドスペースを減少させる流量センサ10を形成することが可能となる。過剰なデッドスペースが機械式人工呼吸器にとって望ましくないことは既述したとおりである。
【0051】
実施形態方法で示された上述の説明は、本発明を限定するものではない。上記説明によれば、当業者は、本明細書に開示された発明の範囲又は趣旨を逸脱することなく、異なる態様を考え出すであろう。さらに、本明細書に開示された実施形態の特徴は、単独又は相互に組み合わせを変えて使用することができ、かつ、本明細書中に記載した特定の組み合わせに限定されるものでもない。
このように、特許請求の範囲は、説明された実施形態に限定されるものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流通する流れの圧力を検出する2方向流量センサであって、
呼吸器側端部と患者側端部を備え、かつ、中心軸で孔を規定し、該孔が前記呼吸器側端部と前記患者側端部との間に配設されたスロート部を含む、中空管状部材と、
前記スロート部を二等分すると共に、各々タップ高さを規定する一対の圧力タップを含む、流量制限器と、
前記患者側端部に配設され、前記圧力タップにおいて前記孔を横切る流速の均一化を助長する形状を有した流動障害物と、
を含んで構成される流量センサ。
【請求項2】
前記流動障害物は、軸方向から視て、前記流量制限器に対して垂直方向に配設される請求項1に記載の流量センサ。
【請求項3】
前記各圧力タップのタップ高さは、前記中心軸に対して対称的である請求項1に記載の流量センサ。
【請求項4】
前記流動障害物は、ダイアモンド形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項5】
前記流動障害物は、涙滴形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項6】
前記流量制限器は、横長形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項7】
前記流量制限器は、ダイアモンド形状の軸方向断面を有する請求項6に記載の流量センサ。
【請求項8】
前記流動障害物は、前記タップ高さ以上の大きさ及び形状を有した障害物高さを規定する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項9】
Y字状接続器に一体に形成される請求項1に記載の流量センサ。
【請求項10】
内部を流通する流れの圧力を検出する2方向流量センサであって、
呼吸器側端部と患者側端部を備え、かつ、中心軸で孔を規定し、該孔が前記呼吸器側端部と前記患者側端部との間に配設されたスロート部を含む、中空管状部材と、
前記スロート部を二等分すると共に、各々タップ高さを規定する一対の圧力タップを含む、流量制限器と、
前記孔内の呼吸器側端部に配設され、前記圧力タップにおける非軸流を最小限とする大きさ及び形状を有したバッフルと、
を含んで構成される流量センサ。
【請求項11】
径方向に向けてベーンが配設される請求項10に記載の流量センサ。
【請求項12】
前記バッフルは、相互に等角度間隔に配設されたベーンを8個まで含んで構成される請求項11に記載の流量センサ。
【請求項13】
前記各ベーンが径方向内側にノッチを含み、ノッチ全体で圧力リリーフ機構を構成する請求項10に記載の流量センサ。
【請求項14】
前記孔は、前記バッフルに隣接して配設され、前記呼吸器側端部から前記患者側端部に向かう方向に沿って径方向内側に傾斜するテーパ部を含む請求項10に記載の流量センサ。
【請求項15】
前記各圧力タップのタップ高さは、中心軸に対して対称的である請求項10に記載の流量センサ。
【請求項16】
機械式人工呼吸器に付属して使用され、かつ、空気圧縮ノイズが約毎分0.1リットル(LPM)未満に維持される形状を有する請求項10に記載の流量センサ。
【請求項17】
Y字状接続器に一体に形成される請求項10に記載の流量センサ。
【請求項1】
内部を流通する流れの圧力を検出する2方向流量センサであって、
呼吸器側端部と患者側端部を備え、かつ、中心軸で孔を規定し、該孔が前記呼吸器側端部と前記患者側端部との間に配設されたスロート部を含む、中空管状部材と、
前記スロート部を二等分すると共に、各々タップ高さを規定する一対の圧力タップを含む、流量制限器と、
前記患者側端部に配設され、前記圧力タップにおいて前記孔を横切る流速の均一化を助長する形状を有した流動障害物と、
を含んで構成される流量センサ。
【請求項2】
前記流動障害物は、軸方向から視て、前記流量制限器に対して垂直方向に配設される請求項1に記載の流量センサ。
【請求項3】
前記各圧力タップのタップ高さは、前記中心軸に対して対称的である請求項1に記載の流量センサ。
【請求項4】
前記流動障害物は、ダイアモンド形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項5】
前記流動障害物は、涙滴形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項6】
前記流量制限器は、横長形状の軸方向断面を有する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項7】
前記流量制限器は、ダイアモンド形状の軸方向断面を有する請求項6に記載の流量センサ。
【請求項8】
前記流動障害物は、前記タップ高さ以上の大きさ及び形状を有した障害物高さを規定する請求項1に記載の流量センサ。
【請求項9】
Y字状接続器に一体に形成される請求項1に記載の流量センサ。
【請求項10】
内部を流通する流れの圧力を検出する2方向流量センサであって、
呼吸器側端部と患者側端部を備え、かつ、中心軸で孔を規定し、該孔が前記呼吸器側端部と前記患者側端部との間に配設されたスロート部を含む、中空管状部材と、
前記スロート部を二等分すると共に、各々タップ高さを規定する一対の圧力タップを含む、流量制限器と、
前記孔内の呼吸器側端部に配設され、前記圧力タップにおける非軸流を最小限とする大きさ及び形状を有したバッフルと、
を含んで構成される流量センサ。
【請求項11】
径方向に向けてベーンが配設される請求項10に記載の流量センサ。
【請求項12】
前記バッフルは、相互に等角度間隔に配設されたベーンを8個まで含んで構成される請求項11に記載の流量センサ。
【請求項13】
前記各ベーンが径方向内側にノッチを含み、ノッチ全体で圧力リリーフ機構を構成する請求項10に記載の流量センサ。
【請求項14】
前記孔は、前記バッフルに隣接して配設され、前記呼吸器側端部から前記患者側端部に向かう方向に沿って径方向内側に傾斜するテーパ部を含む請求項10に記載の流量センサ。
【請求項15】
前記各圧力タップのタップ高さは、中心軸に対して対称的である請求項10に記載の流量センサ。
【請求項16】
機械式人工呼吸器に付属して使用され、かつ、空気圧縮ノイズが約毎分0.1リットル(LPM)未満に維持される形状を有する請求項10に記載の流量センサ。
【請求項17】
Y字状接続器に一体に形成される請求項10に記載の流量センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−297498(P2009−297498A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−89852(P2009−89852)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508357268)カーディナル ヘルス 203、インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89852(P2009−89852)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508357268)カーディナル ヘルス 203、インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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