説明

流量制御弁

【課題】 頻繁な弁操作により、未反応モノマーや触媒が残存するプロセス流体や固体粒子を含むプロセス流体の流量制御を長期かつ安定的に制御を行うことが可能な流量制御弁を提供する。
【解決手段】 弁のステムが弁座に対し直角方向に移動し、ステムと弁座との間隙によりプロセス流体の流量制御を行う弁であって、当該ステムを支持するステム摺動部分に開口部を有し、かつ開口部からリンス液を注入可能にしたパージリングを備え、リンス液がステム摺動部を通過する際の流速が、ステムの移動速度以上になる様にし、ステム摺動部にプロセス流体が入らない様にした流量制御弁。前記ステムの先端部が、直径dmm以下の粒子が通過可能なように偏心させた切欠き部分を形成してなるステムで、切欠き部分を弁入口の反対側を向けて設置したものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス流体の流量制御を行う弁において、ステム部分にリンス流体を注入する機構を設けると共に、流量制御部分に偏心させた切り欠き部を設け、固体流体が摺動部及び、流量制御部に詰まらない構造とし、長期にわたり安定的に流量制御を行う事を可能にした制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体を含むプロセス流体、例えばポリプロピレン重合プロセスのスラリー重合における、スラリーの移送に際しては、重合槽の圧力制御と重合槽抜出ラインの閉塞防止を同時に満足させるような弁の開閉操作を行う必要がある。このような弁操作は非常に過酷であり、例えば、圧力制御状態から弁を0.5sec以内に全開とし、ラインブローを行い、数100msec後、オーバーシュート3回以内でかつ2sec以内に元の圧力制御状態に復帰する動作(以下、バンピング操作と言う)のような弁の開閉操作を必要とする。しかし、スラリー中には、未反応のモノマーおよび触媒が存在しているので、抜き出し弁のステムと摺動部分の間隙にポリマーが生成し、弁の作動が不良になることがしばしばあった。また、スラリー中には、例えば直径10mm程度のポリマー粒子を含んでいることがあり、この粒子がステムと弁座の間隙に詰まり精密な流量制御ができなくなる場合等、長期にわたり安定的な制御を行うことは困難なことがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような状況下においてなされたものであって、頻繁な弁操作により、未反応モノマーや触媒が残存するプロセス流体や固体粒子を含むプロセス流体の流量制御を長期かつ安定的に制御を行うことが可能な流量制御弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明は、弁のステムが弁座に対し直角方向に移動し、ステムと弁座との間隙によりプロセス流体の流量制御を行う弁であって、当該ステムを支持するステム摺動部分に開口部を有し、かつ開口部からリンス液を注入可能にしたパージリングを備え、リンス液がステム摺動部を通過する際の流速が、ステムの移動速度以上になる様にし、ステム摺動部にプロセス流体が入らない様にした流量制御弁である。請求項2に係る発明は、前記ステムの先端部が、直径dmm以下の粒子が通過可能なように偏心させた切欠き部分を形成してなるステムで、切欠き部分を弁入口の反対側を向けて設置した請求項1記載の流量制御弁である。請求項3に係る発明は、前記ステムの先端部の切欠き部は、弁の流量特性を失わないように形成し、前記直径dmmが10mm以下である請求項1または2記載の流量制御弁である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、頻繁な弁操作により、未反応モノマーや触媒が残存するプロセス流体や固体粒子を含むプロセス流体の流量制御を長期かつ安定的に制御を行うことが可能な流量制御弁を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る流量制御弁の一実施態様を示す断面図、図3、図4、図5はリンス液注入口およびリンス液注入リングの要部断面図である。図1、図5に示した実施態様は、ボディー1、ステム2、Oリング付グランドブッシュ3、グランドパッキン4a、グランドパッキン4b、ランタンリング5、リンス液入口6、リンス液注入リング7、リンス液出口7a、ガイド8、リンス液通過部8a、弁座9より構成されている。又、ステムの移動速度をVa、リンス液が8a部を通過する際の流速をVbとする。リンス液量はQとする。プロセス流体は、プロセス流体入口Aから入り弁座9とステム2の間隙により流量制御されて、プロセス流体出口Bから次工程へ移送される。
【0007】
プロセス流体中に未反応モノマーと残存触媒が存在する場合には、従来の制御弁においては、ガイド8、及びグランドパッキン4bとステム2との間隙に入り込み、ポリマーを生成しステムの作動が不良となりプロセス流体の制御ができなくなる。本発明においては、図示したようにグランドパッキン4bとガイド8の間にリンス液入口6およびリンス液注入リング7を設け、リンス液、例えば、当該プロセスのモノマーまたは溶媒等をガイド8とステム2との間隙部分8aに流すことができるようにしたことにより、プロセス流体が侵入しないようにした。
【0008】
図3は、リンス液注入リングを上部より見た断面図である。リンス液注入リング7はステム2が挿入される中央部分、数個のリンス液出口7a、リンス液分配部分7bより構成されている。図4はリンス液注入リングを側面から見た断面図である。図5は流量制御弁のボディーのステムを支える部分、ステム2、リンス液入口6およびリンス液注入リング7との関係を示した概略図である。図5に基づいて本発明のリンス液注入リングの作用を説明する。リンス液入口6から注入されたリンス液は、ボディー1とリンス注入リング7との間隙部分に形成されたリンス液分配部分7bに満たされ、数個のリンス液出口7aからステム2との間隙に入り、ガイド8の方へ移動する。このようにしてグランドパッキンとステムの間隙または、ガイドとステムの間隙に入り込もうとするプロセス液を下部へ洗い流してそれらの間隙にポリマーが反応生成することを防止する。又、リンス液量Qは、ステム2とガイド8の間隙8a部の通過流速Vbが、ステムの作動速度Va以上になる量とし、プロセス液がステムに付着し注入リング7部に入り込むことを防止する。上記の作用によって、プロセス液量の制御に必要なステムの頻繁な上下運動が支障なく長期にわたり行われる。
【0009】
尚、リンス液注入リング7とガイド8の間にグランドパッキンを配置してもいいが、リンス液注入リング7で注入したリンス液の滞留時間が長くなり、偏流等によりプロセス液が浸入してしまった場合、そこでポリマーが反応生成し機能を失う可能性があるため、リンス液注入リング7とガイド8は、上下に重ねて配置した方が好ましい。
【0010】
プロセス流体の流量制御は、ステムの先端部分と弁座との間隙の広さをステムを移動させることにより変化させて行われる。従来の形状のステムを用いた流量制御弁では、例えば、図8に示すように弁座9とステム2の間隙部分11はステム2の円周に沿って均等に形成され、プロセス流体は流れ12にしたがって流れ、間隙部分11の広さを調節して流量制御が行われる。しかし、プロセス流体がポリマー等の粒子を含むスラリーである場合には、この間隙部分11に粒子が詰まって、間隙全体としては流量を保つのに十分な広さがあるにも拘わらず粒子が通過できなくなり、粒子が通過できるようにすると間隙部分の広さが大きくなりすぎて流量制御はうまく行われないことがある。かかるポリマー粒子等がステムと弁座の間隙部分を閉塞させない構造のステム先端部分の一例を図6および図7に示した。図6は、本発明に係るステムの切欠き部分の側面を示す図であり、図7は、本発明に係るステムの切欠き部分の正面を示す図である。図6または図7において、ステム先端部分の側面を2a、ステム先端部分の正面を2b、切欠き部分を10で表している。切欠き部分の大きさは、切欠き部分の最も広い部分に通過させたい粒子の直径dmmに相当する内接円が納まる大きさになるように切欠き部分10を形成し、かつ、流量制御が可能な流量特性を持つ。流量特性は、固有特性、リニア特性、イコールパーセント特性の何れでも良い。切欠き部に流量特性を持つため、図8の流体通過部分の様なリング状で小さな粒子しか通らない間隙では無く、同じ開口面積でも切欠き部が一ヶ所の、大きな開口部となり、図8の形状に比べ、大きな粒子を通過させることが出来る。又、切欠き部分は流体入口Aの反対側を向くように設置する。反対側を向けることで、図2のように弁全体に流れが生じ、切欠き部分に集中して流れが生じることから、弁入口側内部にポリマー粒子が沈殿することを防止出来るため、ステム先端部分の側面2aと弁座9との間に粒子の詰まりが生じることがなくなり安定した作動が確保出来る。このようにステム先端部を弁座との間に形成される間隙部分を偏心させるような構造にし、切欠き部分を直径dmm以下、好ましくは直径10mm以下の粒子が通過できるように形成すること、及び、切欠き部10を流体入口Aの反対側を向けて設置することにより、ボデー内面へのポリマー粒子の沈殿がなくなることで、ステム2と弁座9の間隙部分に粒子が閉塞することなく、プロセス流体の精密な流量制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る流量制御弁の一実施態様を示す断面図である。
【図2】流体入口Aの反対側にステム先端部の切欠き部分10を向けた場合の流体の流れ摸式図(図1のC−C部断面)
【図3】リンス液注入リングを上部より見た要部の断面図である。
【図4】リンス液注入リングを側面から見た要部の断面図である。
【図5】ボディー、ステム、リンス液入口、リンス液注入リングとの関係を示した概略図である。
【図6】本発明に係るステムの切欠き部分の側面を示す図である。
【図7】本発明に係るステムの切欠き部分の正面を示す図である。
【図8】ステムの構造とプロセス流体の流れを示す概念図である。
【符号の説明】
【0012】
1…ボディー、2…ステム、2a…ステム先端部分の側面、2b…ステム先端部分の正面、3…Oリング付グランドブッシュ、4a…グランドパッキン、4b…グランドパッキン、5…ランタンリング、6…リンス液入口、7…リンス液注入リング、7a…リンス液出口、7b…リンス液分配部分、8…ガイド、8a…ステム2とガイド8の間隙部分、9…弁座、10…切欠き部分、11…間隙部分、12…プロセス流体の流れ、A…プロセス流体入口、B…プロセス流体出口、d…内接円の直径 、Va…ステムの移動速度、Vb…8a部の流体通過速度、Q…リンス液量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁のステムが弁座に対し直角方向に移動し、ステムと弁座との間隙によりプロセス流体の流量制御を行う弁であって、当該ステムを支持するステム摺動部分に開口部を有し、かつ開口部からリンス液を注入可能にしたパージリングを備え、リンス液がステム摺動部を通過する際の流速が、ステムの移動速度以上になる様にし、ステム摺動部にプロセス流体が入らない様にした流量制御弁。
【請求項2】
前記ステムの先端部が、直径dmm以下の粒子が通過可能なように偏心させた切欠き部分を形成してなるステムで、切欠き部分を弁入口の反対側を向けて設置した請求項1記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記ステムの先端部の切欠き部は、弁の流量特性を失わないように形成し、前記直径dmmが10mm以下である請求項1または2記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−112539(P2006−112539A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301315(P2004−301315)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000155056)株式会社本山製作所 (3)
【Fターム(参考)】