説明

流量制御装置

【課題】全閉状態における外部出力流量値に起因する種々の問題を解決することができるマスフローコントローラを提供する
【解決手段】流路1内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部2と、制御バルブ3と、前記制御バルブ3を強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブ3の開度を制御するバルブ制御部42と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部41と、を備えたマスフローコントローラ100であって、前記バルブ制御部42が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部41が、前記外部出力流量値を前記測定流量値に関わりなくゼロと出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路に流れる流体の流量を外部に出力することができる流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流量制御装置の一種であるマスフローコントローラは、特許文献1に示されるように流路に流れる流体の流量を流量センサにより測定し、その流体の測定流量値が目標値である設定流量値となるように流体制御バルブの開度を制御するように構成されている。このようなマスフローコントローラには、流量制御を行っている最中の流路に流れている流体の流量値を液晶画面等によって外部に表示する、又は、他の機器においてその流量値を使用できるようにするための外部出力端子等の外部出力部が設けてある。この外部出力部は、通常、前述した流量センサから出力される測定流量値をそのまま又はノイズ成分等の微小変動成分が表示されないようにして液晶画面等に表示するように構成されている。
【0003】
ところで、マスフローコントローラは、ある一定の流量が流路に流れるように流量制御するだけでなく、全閉指令を受け付けて強制的に制御バルブを閉じて全閉状態にする、又は、設定流量をゼロに設定して、流路に全く流体が流れない全閉状態にするために使用されることもある。
【0004】
この全閉状態においては、制御バルブが完全に閉じられており、流体が流れることはないので、当然、外部出力部から出力される外部出力流量値もゼロであるものと通常考えられる。
【0005】
しかしながら、制御バルブが閉じられた後に、流量センサが設けられている上流側において流体に圧力変動が生じると制御バルブよりも下流においては実際には流体が流れていないにも関わらず、流量センサがあたかも制御バルブを通過して流体が流れているかのように測定流量値を出力し、それに伴って外部出力部も制御バルブを通過して流体が流れていると出力してしまうという不具合が発生することがある。
【0006】
このように実際には流体制御バルブが完全に閉止されており、制御バルブを通過してその下流の流路に流体が流れていないにも関わらず、外部出力部が略ゼロ以外の値を出力してしまうと以下のような具体的な問題が生じてしまう。
【0007】
a)マスフローコントローラを実際に使用している顧客の立場から考えると、マスフローコントローラによって全閉状態にしているにも関わらず、制御バルブを通過して流体が流れているかのように表示されるので、実際に流体が流れていると誤解する、又は、実際には使用に関して何の問題もないとしても顧客はマスフローコントローラが故障していると勘違いしてしまう。
【0008】
b)マスフローコントローラのメンテナンス等を行う製造者の立場からすると、全閉状態において、マスフローコントローラ自体には何の問題もないのに外部出力流量値にある値が示されているだけなのか、流量センサのドリフトや故障等の不具合に起因して値が示されているのかが判断しにくい。つまり、どのようなメンテナンスを行うべきかについての判断基準として外部出力流量値を用いることが困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−280689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、流量制御装置を全閉状態することによって、制御バルブを通過して流体が流れないようにしているにもかかわらず、外部出力流量値として通常考えられない値が出力されてしまうことに起因する種々の不具合を解決することができる流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の流量制御装置は、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量センサと、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令を受け付ける又は前記バルブ制御部の前記設定流量値がゼロに設定されてから、前記外部出力部が、前記外部出力流量値を前記測定流量値に関わりなくゼロとして出力することを特徴とする。ここで、「ゼロとして出力する」とは、流体の流量が実質的に存在しないことを示すことである。
【0012】
また、本発明の流量制御装置用プログラムは、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置において、前記外部出力部が出力する前記外部出力流量値を制御するための流量制御装置用プログラムであって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部が、前記外部出力流量値を前記測定流量値に関わりなくゼロとして出力するように制御することを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、前記バルブ制御部に前記制御バルブを全閉状態とするよう指令されてから、完全に制御バルブが閉止された状態において、前記外部出力部が、前記外部出力流量値を前記測定流量値に関わりなくゼロとして出力するように構成されているので、制御バルブから見て流量センサが設けられている側の流路において圧力変動があり、制御バルブを通過して流体は流れていないにも関わらず、流量センサがゼロ以外の測定流量値を出力したとしても、それが外部に出力されることはない。従って、流量制御装置を実際に使用している顧客が、全閉状態における実際には正しくない外部出力流量値を見て、流量制御装置が故障している、又は、信頼できるものではないと誤解してしまうことを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の流量制御装置は、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量センサと、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部が、前記測定流量値に関わりなく前記バルブ制御部の前記設定流量値がゼロに設定されてからのある時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の流量制御装置用プログラムは、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置において、前記外部出力部が出力する前記外部出力流量値を制御するための流量制御装置用プログラムであって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部が、前記測定流量値に関わりなく前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてからのある時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力するように制御することを特徴とする。
【0016】
このようなものであれば、制御バルブが完全に閉止された後において、ある時点で値を出力させ続けることができるので、制御バルブを通過する流体がない状態でのドリフト等を含んだ測定流量値だけを外部出力流量値として表示させることができる。このことから、制御バルブを通過する流体が無い状態での流量センサのゼロ出力を外部出力流量値として表示させることができるので、その値から流量センサに故障があるかどうか等の判断材料とすることができる。また、「ある時点」とは全閉指令が受け付けられた直後でもよいし、ある程度時間が経過してからであれば実際に全閉となり制御バルブを通過して流れる流体が無い状態での測定流量値を外部出力値とすることができ、より実態に即した流量の表示が可能となる。
【0017】
加えて、本発明の流量制御装置は、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量センサと、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定流量値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった時点から、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の流量制御装置用プログラムは、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置において、前記外部出力部が出力する前記外部出力流量値を制御するための流量制御装置用プログラムであって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定流量値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力するように制御することを特徴とする。
【0019】
このようなものであれば、制御バルブが完全に閉止された後において、前記測定流量値の時間変化量が所定の値以上となる、すなわち、急激に変化した場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として一定時間出力するように構成されているので、圧力変動による誤った測定流量値は外部に出力することなく、全閉状態で安定している時の流量センサのドリフト等は表れている測定流量値を外部出力流量値として出力することができる。従って、流量センサの故障やドリフト等と言ったメンテナンス等を行う判断基準となる情報は外部出力流量値として出力させることができるとともに、不要な圧力変動による誤検知は排除する事ができるので、外部出力流量値をメンテナンス等に好適に用いることが可能となる。
【0020】
さらに、本発明の流量制御装置は、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量センサと、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、前記制御バルブに対して前記流量センサと同じ側に設けられ、流路内の圧力を測定し、その測定圧力値を出力する圧力センサを更に具備し、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定圧力値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする。
【0021】
加えて、本発明の流量制御装置用プログラム流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、前記制御バルブに対して前記流量測定部と同じ側に設けられ、流路内の圧力を測定し、その測定圧力値を出力する圧力測定部と、を備えた流量制御装置において、前記外部出力部が出力する前記外部出力流量値を制御するための流量制御装置用プログラムであって、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定圧力値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力するように制御することを特徴とする。
【0022】
このようなものであれば、前記圧力センサを前記流量制御弁の上流に設けてあるので、流量制御装置が全閉状態において、流体が流れていないにも関わらず、流量センサが流量を誤検知する原因となる圧力の変動を直接測定することができる。そして、圧力変動があった場合には、その圧力変動が生じた時点での測定流量値を外部出力流量値として一定時間出力するように構成されているので、誤検知されている測定流量を外部へ出力されてしまうことを防ぐことができる。また、安定時における測定流量値が外部出力値として一定時間出力されているので、流量センサのドリフトや故障に起因する値は外部へ出力することができ、メンテナンス時の判断材料として用いることが可能となる。
【0023】
流量センサから、随時更新される測定流量値をできる限り使用しつつ、明らかな誤検出のみを排除して外部出力流量値として出力できるようにするには、前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定圧力値の時間変化量が略ゼロの場合には、前記外部出力部が、前記流量センサによって測定されている測定流量値を前記外部出力流量値として出力するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、流量制御装置を全閉状態とし、前記制御バルブを全閉とした場合における外部出力流量値を常にゼロとして表示させる、あるいは、測定流量値の急激な変化を検知した場合には、その時点での測定流量値を一定時間の間は外部出力流量値として使用するように構成されているので、流路を流体が流れていないにも関わらず、外部出力流量値としては流体が流れているかのように出力されてしまうことを防ぐことができる。従って、流量制御装置の使用者が故障であると勘違いするのを防ぐ、あるいは、メンテナンスを行うものが外部出力流量値を一つの判断基準として好適にしようすることを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流量制御装置の模式図。
【図2】第1実施形態における全閉時の外部出力流量値の表示に関するフローチャート。
【図3】第1実施形態における全閉時の外部出力流量値の変化を示すグラフ。
【図4】第2実施形態に係る流量制御装置における全閉時の外部出力流量値の表示に関するフローチャート。
【図5】第2実施形態における全閉時の外部出力流量値の変化を示すグラフ。
【図6】第3実施形態に係る流量制御装置における全閉時の外部出力流量値の表示に関するフローチャート。
【図7】第3実施形態における全閉時の外部出力流量値の変化を示すグラフ
【図8】第4実施形態に係る流量制御装置の模式図
【図9】第4実施形態における全閉時の外部出力流量値の表示に関するフローチャート。
【図10】第4実施形態における全閉時の測定圧力値と外部出力流量値の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0026】
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本発明の第一実施形態に係る流量制御装置の一種であるマスフローコントローラ100は、図1に示すようにブロック状の基体の内部に形成された溝からなる流路1と、流路1に流れる流量を測定するための流量センサ2と、前記流量センサ2の下流に設けられた制御バルブ3と、少なくとも前記制御バルブ3の開度の制御、現在流路1を流れている流体の流量を外部へ表示、出力する制御部4と、を備えたものである。
【0028】
このマスフローコントローラ100は、例えば、半導体製造工程等において、各種成分ガスや希釈ガスの流量を制御するために用いられるものであり、ある一定流量が常に流れるようにするだけでなく、前記制御バルブ3を完全に閉止させることによって、流路1に流体が全く流れないようにするためにも用いられるものである。
【0029】
各部について図1を参照しながら説明する。
【0030】
前記流量センサ2は、熱式の流量センサ2であり、前記流路1に対して並列に設けてある小径管に2つのコイルが設けてある。これら2つのコイルに電圧を印加し、それぞれが同じ温度で一定温度となるように制御を行い、その時に印加される各電圧に基づいて図示しない流量演算部が流路1を流れる質量流量を算出するものである。ここで、前記流量センサ2と流量演算部を組み合わせたものが請求項での流量測定部に相当する。
【0031】
前記制御バルブ3は、例えば、ソレノイド式のものであって、図示しない弁座に対して弁体を電磁石によって移動させ、その開度が制御されるように構成してある。
【0032】
前記制御部4は、CPU、メモリ、AC/DCコンバータ、入力端末、外部出力ディスプレイ、外部出力機構等を有した所謂コンピュータであり、前記メモリに格納された各種プログラムをCPUによって実行することによって少なくとも、バルブ制御部42、外部出力部41としての機能を発揮するものである。制御ブロック図に示してあるように、前記流量センサ2からの測定流量値は、前記バルブ制御部42、前記外部出力部41に提供するように構成してあり、流量制御は測定流量値を用いて行うようにしてある。また、前記外部出力部41から出力される外部出力流量値は、前記バルブ制御部42へは入力されず、流量制御に用いられるものではない。
【0033】
この制御部4は、マスフローコントローラ100に設けてあるものに限られるものではなく、他の半導体製造用製膜装置等に設けてあるコンピュータや、その他の汎用コンピュータ等によってその機能を実現されるものであっても構わない。
【0034】
前記バルブ制御部42は、前記制御バルブ3を強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブ3の開度を制御するように構成してある。全閉指令は、前記流量センサ2が出力する測定流量値に関わりなく強制的に前記制御バルブ3を閉止させるための指令である。通常の流量制御においては、所望の設定流量値と、前記測定流量値との偏差が小さくなるように開度の制御する所謂フィードバック制御を行う。つまり、設定流量値をゼロに設定することによっても前記制御バルブ3を閉止するように制御することもできる。
【0035】
前記外部出力部41は、例えば、マスフローコントローラ100の筺体等に設けてある外部出力ディスプレイである液晶表示装置等に現在、流路1を流れている流量を表示させたり、別の機器に前記流量センサ2が測定した測定流量値に基づいた外部出力流量値を出力させたりするものである。通常時には、測定流量値のノイズ等の微小変動成分をカットして外部出力流量値として出力するように構成してある。前記バルブ制御部42が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから所定時間経過後である全閉状態時においては、第1実施形態ではそれ以降において測定されている測定流量値に関わらず、常に外部出力流量値はゼロとして表示されるように構成してある。ここで、所定時間経過後とは、ゼロ秒後を含む概念である。
【0036】
このように構成されたマスフローコントローラ100の全閉状態における動作を図2のフローチャートと図3に示されたグラフを参照しながら説明する。なお、図3に示してある流量は外部出力流量値である。
【0037】
まず、前記バルブ制御部42が前記全閉指令を受け付ける、又は、前記設定流量値をゼロに設定される(ステップS1)。このとき、前記制御バルブ3の開度は小さくなっていくので図3に示すように徐々に外部出力流量値がゼロへと近づいていく。そして、前記流量バルブが完全に閉止される全閉状態となり、流路1を流れる流量がゼロ近傍で安定するようになるまで所定時間待機する(ステップS2)。所定時間が経過するのを検知すると、前記外部出力部41は、現在測定されている測定流量値に関わりなく、外部出力流量値をゼロとして表示する(ステップS3)。
【0038】
このようにして、全閉状態において流体が流れていないにも関わらず、前記制御バルブ3の上流において圧力変動が生じたことによって前記流量センサ2が流体は流れていると誤検知してしまい、ある値の測定流量値を出力したとしても、前記外部出力部41はゼロとして外部出力流量値を出力させることができる。
【0039】
このことから、第1実施形態のマスフローコントローラ100によれば、使用者が、マスフローコントローラ100に何の問題もないにも関わらず、故障が発生している、又は、このマスフローコントローラ100は信頼性のないものであると誤解させることを好適に防ぐことができる。また、あくまでも、外部出力流量値をゼロにしているだけであり、マスフローコントローラ100の流量制御には用いられるものではないので、全閉状態を維持する制御に何ら悪影響を与えることもない。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係るマスフローコントローラ100について説明する。以降の説明において前記第1実施形態と対応する部材には同じ符号を付すものとする。
【0041】
第2実施形態では、前記バルブ制御部42が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから所定時間経過後において、前記外部出力部41が、前記測定流量値に関わりなく前記所定時間経過後の時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力するように構成してある。
【0042】
この第2実施形態のマスフローコントローラ100の全閉状態における動作を図4のフローチャートと図5に示されたグラフを参照しながら説明する。
【0043】
まず、前記バルブ制御部42が前記全閉指令を受け付ける、又は、前記設定流量値をゼロに設定される(ステップS4)。このとき、前記制御バルブ3の開度は小さくなっていくので図5に示すように徐々に外部出力流量値がゼロへと近づいていく。そして、前記流量バルブが完全に閉止される全閉状態となり、流路1を流れる流量がゼロ近傍で安定するようになるまで所定時間待機する(ステップS5)。所定時間が経過するのを検知すると、前記外部出力部41は、現在測定されている測定流量値に関わりなく、所定時間経過時点での測定流量値を外部出力流量値をとして表示しつづける。(ステップS6)。
【0044】
このように第2実施形態に係るマスフローコントローラ100によれば、全閉状態において流体が流れていないにも関わらず、前記制御バルブ3の上流において圧力変動が生じたことによって前記流量センサ2が流体は流れていると誤検知してしまい、ある値の測定流量値を出力したとしても、前記外部出力部41は誤検知する直前の測定流量値を外部出力流量値を出力させることができる。
【0045】
図5のグラフに示してあるように、例えば、測定流量値に流量センサ2のドリフト成分が現れている場合、その値が外部出力流量値に安定して現れることとなるので、例えば製造者がメンテナンス等を行う際に、誤検知による流量値が現れることがなく、この外部出力流量値を判断基準として使用することができる。
【0046】
次に本発明の第3実施形態に係るマスフローコントローラ100について説明する。
【0047】
第3実施形態では、前記バルブ制御部42が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから所定時間経過後において、前記測定流量値の時間微分値の絶対値が所定の値以上となった時点から、前記外部出力部41がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力し続けるように構成してある。なお、時間微分値は請求項での時間変化量に相当するものである。
【0048】
この第3実施形態の動作を、前記バルブ制御部42が全閉状態となるように制御を開始し、所定時間経過した後について図6のフローチャートと、図7のグラフを参照しながら説明する。
【0049】
測定流量値の時間微分値の絶対値が所定の値以上となったことを前記外部出力部41が検知すると(ステップS7)、当該外部出力部41は、その時点での測定流量値を保持する。そして、以降の外部出力流量値は、新たに前記流量センサ2から出力される測定流量値が、保持している値と同じ値を出力するまで間は、保持されている測定流量値を外部出力流量値として出力し続ける(ステップS8)。保持している値と同じ値の測定流量値が流量センサ2から出力されると(ステップS9)、外部出力部41はそれ以降については再び測定流量値をそのまま外部出力流量値として出力し続けるように切り替えられる(ステップS10)。
【0050】
従って、図7のグラフに示すように、実際の測定流量値においてインパルス状の誤った値が出力されているとすると、測定流量値が上昇し始める点からその値を外部出力流量値としてしばらく出力し続けた後、再び、測定流量値をそのまま使うので台形形状の突出部分が形成される事が分かる。
【0051】
このように構成した第3実施形態に係るマスフローコントローラ100によれば、全閉状態において、圧力変動等によって誤って流量があると検知されている部分のみを外部出力流量値として出力されるのを防ぐことができ、その他の正常な部分についてはそのまま外部出力流量値として出力することができる。つまり、外部出力流量値にできる限り現在の測定出力流量値を反映させつつ、誤検出部分は排除できるので、より信頼性を向上させた外部出力にするとともに、第2実施形態と同様に流量センサ2のドリフト等も好適に検出することができる。従って、メンテナンス等の指標としてより光的に用いることができる。
【0052】
次に、本発明の第4実施形態に係るマスフローコントローラ100について説明する。第4実施形態では、図8で示すように第1〜第3実施形態のマスフローコントローラ100に、前記制御バルブ3よりも上流に、流路1内の圧力を測定し、その測定圧力値を出力する圧力センサ5を更に具備しているものである。
【0053】
この圧力センサ5の測定圧力値は、前記外部出力部41に入力されて全閉状態における外部出力流量値の出力態様を決定するために用いられるように構成してある。すなわち、前記外部出力部41は、前記バルブ制御部42が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから所定時間経過後において、前記測定圧力値の時間微分値の絶対値が所定の値以上となった時点から、その時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力し続けるように構成してある。
【0054】
この第4実施形態の動作を、前記バルブ制御部42が全閉状態となるように制御を開始し、所定時間経過した後について図9のフローチャートと、図10のグラフを参照しながら説明する。
【0055】
測定圧力値の時間微分値の絶対値が所定の値以上となったことを前記外部出力部41が検知すると(ステップS11)、当該外部出力部41は、その時点での測定流量値を保持する。そして、以降の外部出力流量値は、新たに前記流量センサ2から出力される測定流量値が、保持している値と同じ値を出力するまで間は、保持されている測定流量値を外部出力流量値として出力し続ける(ステップS12)。保持している値と同じ値の測定流量値が流量センサ2から出力されると(ステップS13)、外部出力部41はそれ以降については再び測定流量値をそのまま外部出力流量値として出力し続けるように切り替えられる(ステップS14)。
【0056】
従って、図10のグラフに示すように、圧力が変動している(傾きを有している)箇所においては、変動が始まる直前の値が保持されて一定値となる。つまり、実際の測定流量値においてインパルス状の誤った値が出力されていると、測定流量値が上昇し始める点からその値を外部出力流量値としてしばらく出力し続けた後、再び、測定流量値をそのまま使うので台形形状の突出部分が形成される事が分かる。
【0057】
このように構成された第4実施形態のマスフローコントローラ100によれば、誤った測定流量値の原因となる全閉状態における圧力変動を測定し、その圧力変動に基づいて外部出力値を安定時の値のみを表示させることができる。従って、外部出力流量値としては、誤った値が表示されるのを防ぐことをより精度よく防ぐことができ、メンテナンスの判断指標等としてより精度が高く好適なものとして使用することができるようになる。
【0058】
その他の実施形態について説明する。
【0059】
前記実施形態では熱式の流量センサであったが、差圧式等の他方式の流量センサであっても構わない。制御バルブもソレノイド式に限られるものではなく、ピエゾ式等の他方式のものであっても構わない。
【0060】
前記実施形態では流量センサの下流に制御バルブが設けてあり、制御バルブを完全に閉止した状態において、制御バルブの上流、すなわち、流量センサが設けてある側の流路で圧力変動等により制御バルブを通過して流れる流体は存在しないにも関わらず測定流量値が検出され、それが外部出力として出力されてしまうのを防ぐものであった。そのようなものに限られず、流量センサの上流に制御バルブが設けてあるマスフローコントローラであっても本発明を適用することができる。すなわち、制御バルブの下流において後に続く工程等により圧力変動が生じ、制御バルブを通過する流体が存在しないにも関わらず、測定流量値が検出され、その値がそのまま外部出力流量値として出力されてしまうことにより生じる様々な不具合を前記実施形態と同様に防ぐことができる。
【0061】
さらに、第4実施形態のように圧力センサを新たに設け、その測定圧力に基づいて、全閉状態時の外部出力流量値をどのような値とするかを決める場合には、圧力センサは制御バルブに対して流量センサと同じ側の流路に設けてあるものであればよい。すなわち、流量センサが制御バルブの上流にある場合には上流に、下流にある場合には下流に設ければよい。
【0062】
前記実施形態では、全閉状態における外部出力値をどのような値に設定するかの判断基準として全閉指令を受け付ける又は設定流量値がゼロに設定されてから所定時間経過しているかどうかを一つの判断条件にしていたが、時間による判断を行わなくもてよい。例えば、流量センサが出力する測定流量値がゼロの近傍の数%以内であるかどうかを一つの判断基準とできる、さらに前述した判断基準とともに測定流量値の時間微分値が所定の値になった場合に外部出力部の外部出力流量値を通常のものから切り替えるようにしてもよい。また、測定流量の時間微分値が所定の値になったかどうかだけによって通常の外部出力から別の表示態様へと変更するようにしても構わない。
【0063】
また、圧力センサを設け、測定圧力値に基づいて外部出力流量値として出力する値を切り替える場合にも、所定時間が経過しているかどうかを判断基準として使用しなくてもよい。例えば、圧力の微分値が略所定の値以下であまり変動していないかどうかにより、圧力変動が生じていないかどうかを確認し、インパルス状の圧力変動を検出したらその時点での測定流量値を外部出力流量値として出力するようにしても構わない。
【0064】
制御バルブが全閉状態における外部出力流量値を通常の表示から変更した後において、全閉指令が解除される又は設定流量値がゼロ以外の値が設定された場合には、現在測定されている測定流量値を外部出力流量値として出力するように戻すよう構成してあればよい。このようなものであれば、全閉状態とそれ以外の状態における外部出力の切り替えを非常に簡単に行うことができるようになる。
【0065】
前記各実施形態では流量制御装置の一例としてマスフローコントローラを使用していたが、マスフローコントローラのように流量制御装置が一つのパッケージとして構成されているものでなくても構わない。例えば、制御バルブ、流量センサを個別に用意し、汎用のコンピュータ等でその制御を行う流量制御装置で本発明を適用することができる。
【0066】
前記第3実施形態、又は、前記第4実施形態では、時間変化量として時間微分値を用いていたが、その他の変化量を用いても構わない。例えば、測定流量値や測定圧力値の移動平均に基づいてその変化量を捉えるようにしても構わないし、単純に差分等を取るようにしても構わない。また、第3実施形態、第4実施形態では外部出力流量値を通常の表示とは異ならせるような判断をした場合には、その直前の値を保持し、その値を出力し続けるように構成してあったが、測定される測定流量値に関わりなく強制的にゼロと表示するようにしても構わない。
【0067】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、各実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0068】
100・・・マスフローコントローラ(流量制御装置)
1・・・流路
2・・・流量センサ(流量測定部)
3・・・制御バルブ
41・・・外部出力部
42・・・バルブ制御部
5・・・圧力センサ(圧力測定部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、
前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部が、前記外部出力流量値を前記測定流量値に関わりなくゼロとして出力することを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、
前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記外部出力部が、前記測定流量値に関わりなく前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてからのある時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする流量制御装置。
【請求項3】
流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって、
前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定流量値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする流量制御装置。
【請求項4】
流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定流量値を出力する流量測定部と、制御バルブと、前記制御バルブを強制的に全閉させる全閉指令、又は、目標値として設定される設定流量値に基づいて前記制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記測定流量値に基づいた外部出力流量値を外部に出力する外部出力部と、を備えた流量制御装置であって
前記制御バルブに対して前記流量測定部と同じ側に設けられ、流路内の圧力を測定し、その測定圧力値を出力する圧力測定部を更に具備し、
前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定圧力値の時間変化量の絶対値が所定の値以上となった場合には、前記外部出力部がその時点での測定流量値を前記外部出力流量値として出力することを特徴とする流量制御装置。
【請求項5】
前記バルブ制御部が、前記全閉指令又は前記設定流量値としてゼロを受け付けてから、前記測定圧力値の時間変化量が略ゼロの場合には、前記外部出力部が、前記流量測定部によって測定されている測定流量値を前記外部出力流量値として出力する請求項4記載の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−160215(P2012−160215A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121394(P2012−121394)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2009−194811(P2009−194811)の分割
【原出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】