説明

流量計及び流れ方式分析装置

【課題】微小流量を迅速に測定可能な流量計及び流れ方式分析装置を提供する。
【解決手段】流量計2は、上方に行くに従って拡径するように所定のテーパ比aで形成したテーパ管21と、所定の比重の材質及び所定の直径dで形成され、テーパ管21を通過する試料の流量に応じて管内で軸方向の位置を変えるフロート22と、を備えている。フロート22の比重が1.5〜9.0であり、フロート22の直径dが0.9〜3.2mmであり、テーパ管21のテーパ比aが0.01〜0.04である場合には、流量計2を用いて微小流量を計測することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の流量を測定する流量計及び当該流量計を用いた流れ方式分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料の流量を測定する流量計は、従来から様々な方式のものが提案されている。例えば、フロートを用いた面積式流量計、羽根車を用いた回転式流量計及びだ円歯車を用いた容積式流量計等をあげることができる。これらの中で構造が簡単で且つ安価な方式のものは、面積式流量計である。
【0003】
この面積式流量計は、テーパ管内にフロートを配置し、テーパ管内の口径が狭い方から広い方に液体を流すと共に、フロートの位置をテーパ管に付された目盛から読み取って流量を検知するものである。管内を流れる液体の圧力とフロートの重量とが釣り合った位置にフロートが留まり、これにより、液体の流量を測定することができる。
【0004】
このような面積式流量計については、従来から各種の改良がなされている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、光透過性のテーパ管と、遮光性のフロートと、テーパ管の外部にテーパ管を介して互いに対向するように配置された発光素子及び受光素子とを備え、試料の流量に応じて移動するフロートの位置を受光素子の受光量により検出して試料の流量を測定する面積式流量計が開示されている。具体的には、この面積式流量計は、各々個別に点灯される複数の発光素子をテーパ管の軸方向に沿って配置すると共にこれらの発光素子に対向させて単一の受光素子を配置している。そして、各発光素子について、流量測定時の受光素子出力信号とフロートを検出範囲から除外した際の受光素子出力信号との比をそれぞれ検出し、これらの複数の比に基づいてフロートの位置を検出するように構成している。
【0005】
【特許文献1】特開平1−180419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、試料中の目的成分を分析可能な流れ方式分析装置における液体の流量は微小であるものが多いが、そのような微小流量を測定できる流量計は、従来には存在していなかった。そのため、流れ方式分析装置の流量を調整する作業を行う際には、一定時間内に装置から排出されるサンプル液の量を測定し、その測定結果を単位時間に換算する演算により、微小流量の測定を代用していた。そして、そのような代用の測定は、適宜な流量となるまで複数回繰り返されていた。したがって、流れ方式分析装置の複数回の流量調整に時間を費やし、作業者の工数削減の実現が困難であった。また、流れ方式分析装置では、所定の流量になるように送液ポンプを制御するが、実際の流れが制御通りであることを確認することは困難であった。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、微小流量を迅速に測定可能な構造を提供することにある。
また、別の目的は、微小流量の迅速測定が可能であると共にそれよりも多い流量にも対応可能な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明が適用される流量計は、流量を測定する試料が通過する管内を管内の下流側に行くに従って拡径するように所定のテーパ比で形成したテーパ管と、テーパ管の管内に収容され、テーパ管を通過する試料の流量に応じて管内で軸方向の位置を変えるフロートと、を含み、テーパ管の所定のテーパ比は0.01〜0.04であり、フロートの比重が1.5〜9.0であり、フロートの直径が0.9〜3.2mmであることを特徴とするものである。
このテーパ管は、所定のテーパ比で拡径する部分の下流側において所定のテーパ比よりも大きいテーパ比で拡径する膨らみ部を有することを特徴とすることができる。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明が適用される流れ方式分析装置は、試料中の目的成分を分析する流れ方式分析装置であって、試料が通過する管内を管内の下流側に行くに従って拡径するように所定のテーパ比で形成したテーパ管と、テーパ管の管内に収容され、テーパ管を通過する試料の流量に応じて管内で軸方向の位置を変えるフロートと、を含み、テーパ管の所定のテーパ比は0.01〜0.04であり、フロートの比重が1.5〜9.0であり、フロートの直径が0.9〜3.2mmであることを特徴とするものである。なお、ここにいう流れ方式分析装置としては、例えば、FIA(フローインジェクションアナリシス)装置、逆FIA装置、イオンクロマトグラフ装置、液体クロマトグラフ装置等をあげることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微小流量を迅速に測定可能な構造を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ここで、試料液の成分を簡便に測定する方法として、細管中を流れる試薬液又は試料液中にそれぞれ試料液又は試薬液を導入し、反応操作等を行った後、下流に設けた検出器で目的成分を検出するFIA法が知られている。このFIA法は、ビーカーやフラスコなどの反応容器を用いずに、層流状態の細管内の流れにおいて試薬と試料との混合を制御しながら化学反応を行わせて、その反応結果を検知するものである。このFIA法の内、試料液の連続流れ系に試薬液を断続的に注入するものは逆FIAと呼ばれ、試薬の消費量を抑制できることから、水質監視などのような長時間の連続運転に適している。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る流れ方式分析装置1の概略構成図である。
図1に示すように、試料液が流れる管状の主流路11には、試料送液手段としてペリスタポンプやプランジャーポンプ等のポンプ12が介装されている。ポンプ12の吸引端は、試料液槽13内に挿入されている。また、試薬液注入手段を構成するシリンジポンプ14の吐出側先端は、合流位置15において主流路11と合流している。また、シリンジポンプ14の吸引端は試薬液タンク16内に挿入されている。また、主流路11の合流位置15よりも下流側には、試料液と試薬液との反応を検出する検出器17を備えている。また、検出器17の下流に流量計2が配設されている。
【0013】
なお、シリンジポンプ14を吸引時には試薬液タンク16側から試薬液が吸引され、吐出時には合流位置15に向かって試薬液が吐出されるよう、スライド弁等の切り替えバルブや逆止弁等が適宜用いられて送液方向が制御されている。また、シリンジポンプ14は、試薬液タンク16からまとまった量の試薬液を一度に吸引した後、一回の注入に必要な量毎の試薬液をステッピングモータ等を用いて順次吐出していくようになっている。そして、内部の試薬液を総て吐出してしまうと、再度吸引からの動作を繰り返すようになっている。
【0014】
本分析装置では、ポンプ12を作動させて試料液を主流路11に連続的に流しておく。そして、シリンジポンプ14を作動させて、試薬液を吐出して試料液と合流させる。すると、主流路11の中に合流した試薬液が、周囲の試料液と拡散混合しつつ反応する。そして、この反応生成物を検出器17で検出することにより試料液中の目的成分を分析することができる。
【0015】
図2は、流れ方式分析装置1の流量計2の概略構成図である。
図2に示す流量計2は、流路の下流側(上方)に行くに従って拡径するように所定のテーパ比aで形成したテーパ管(測定管、微小テーパ管)21と、テーパ管21の管内に収容され、テーパ管21を通過する試料の流量に応じて管内で軸方向の位置を変えるフロート(浮子、可動部)22と、を備えている。更に説明すると、流量計2は、上向に傾斜するテーパ比aのテーパ管21内に自由に昇降できる直径dのフロート22を収め、そのテーパ管21を図示しない適当な支持具で組み立てた面積式流量計である。
このように構成された流量計2に、サンプル液を含む溶離液(流体)を下方から上方へ流すと、フロート22は、その前後に生ずる圧力差による力のために上へ押し上げられる。なお、フロート22としては、例えば微小セラミックビーズを採用することができる。
【0016】
ここで、フロート22が上方へ移動するにつれてフロート22とテーパ管21との流通面積が増加する。そのため、フロート22が上方に移動すると、通過する流体の速度が減って圧力差が減少する。すなわち、フロート22は、そのフロート22の質量(比重γ)と圧力差による力とが均衡した高さhの位置で静止する。このときのテーパ管21におけるフロート22の高さhによって決まる流通面積と通過する流体の流量(体積流量)Qとは一定関係にある。したがって、テーパ管21内におけるフロート22の高さhを検出することにより、試料液の流量Qを測定することができる。
これらテーパ管21のテーパ比a、フロート22の直径d及びフロート22の比重γとフロート22の高さhと流量Qとの関係については、後述する。
【0017】
図3は、流量計2のテーパ管21を説明するための図である。
図3に示すように、テーパ管21は、管内が所定のテーパ比aで形成されている本体21aと、本体21aの上端から上方に延在し、テーパ比aよりも大きなテーパ比で拡径するように形成された段部(膨らみ部)21bと、段部21bの上端から更に上方に延びる大径部21cと、を備えている。このような段部21b及び大径部21cにより、テーパ管21の流量範囲が広がる。
なお、テーパ比aは、本体21aの上端部の直径φeと、フロート22が最も下方にあるときのフロート底部が位置する部分における本体21aの直径φfと、これらの間の長さsと、から導き出せる。すなわち、テーパ比a=(e−f)/sにより算出される。
【0018】
図4は、テーパ比a、直径d(mm)及び比重γとフロート22の高さh(mm)と流量Q(ml/分)との関係を示す表である。
図4に示すように、フロート22の比重γが1.5〜9.0の範囲内であり、フロート22の直径dが0.9〜3.2mmの範囲内であり、かつ、テーパ管21の本体21aのテーパ比aが0.01〜0.04の範囲内である場合に、微小な流量を測定することが可能になる。
【0019】
例えば、比重γが1.5、直径dが3.2mm、テーパ比aが0.01の場合において、フロート22の高さhが10mmのときは毎分9.7ml、高さhが20mmのときは毎分10.5ml、高さhが30mmのときには毎分11.4ml、高さhが50mmのときには毎分13.2mlである。
また、例えば、比重γが9、直径dが0.9mm、テーパ比aが0.01の場合において、フロート22の高さhが10mmのときは毎分0.26ml、高さhが20mmのときは毎分0.83ml、高さhが30mmのときには毎分1.44ml、高さhが50mmのときには毎分2.83mlである。このように、上述した3つの条件を満たす場合には、微小な流量を測定することが可能になる。なお、ここにいう微小流量とは、おおむね毎分0〜5mlの範囲内の流量をいう。
【0020】
上述した3つの条件のうち、より好ましいのは、比重γが3.0〜7.0の範囲内であり、直径dが1.0〜2.0mmの範囲内であり、かつ、テーパ比aが0.01〜0.03の範囲内の場合である。
例えば、比重γが3、直径dが1mm、テーパ比aが0.03の場合において、フロート22の高さhが10mmのときは毎分1ml、高さhが20mmのときは毎分2.2ml、高さhが30mmのときには毎分3.7ml、高さhが50mmのときには毎分7.4mlである。
【0021】
上述した3つの条件のうち、更に好ましいのは、比重γが5.0〜6.5の範囲内であり、直径dが1.0〜1.4mmの範囲内であり、かつ、テーパ比aが0.01〜0.025の範囲内の場合である。
例えば、比重γが6.5、直径dが1mm、テーパ比aが0.01の場合において、フロート22の高さhが10mmのときは毎分0.5ml、高さhが20mmのときは毎分1ml、高さhが30mmのときには毎分1.6ml、高さhが50mmのときには毎分2.9mlである。このように、流量計2により毎分1ml付近の流量が手軽に計測することができれば、流れ方式分析装置1においては、流量調整の作業性を向上させることができる。
【0022】
図5は、所定の条件における理論式により計算した結果を示すグラフであり、縦軸はフロート22の高さh(mm)で、横軸は流量(ml/分)である。ここにいう所定の条件とは、比重γが8.8、直径dが1.10、テーパ比aが0.02の場合をいう。
また、図6は、実際に実験した結果を図5に示す理論式と比較して示すグラフであり、縦軸はフロート22の高さh(mm)で、横軸は流量(ml/分)である。図6における試作1は、比重γが6、直径dが1.10、テーパ比aが0.02である。また、試作2は、比重γが6、直径dが1.15、テーパ比aが0.02である。図6に示すように、試作1、試作2及び理論式を比較すると、理論式と試作品の実験データは、若干解離しているが、近似式によって高さと流量の関係を求めることができる。
【0023】
図7は、本実施の形態に係る流れ方式分析装置1の一例であるイオンクロマトグラフ装置3の概略構成図である。
ここで、図7に示すイオンクロマトグラフ装置3は、試料液中のイオンの濃度を測定するためのものであり、試料中の目的イオンをイオン分析カラムを用いて成分分離することにより目的イオンを分析するためのものである。その概要を更に説明すると、イオンクロマトグラフは、高速液体クロマトグラフの一種であり、水溶液中のイオン成分を分離して測定する分析装置として、排水管理や環境測定など様々な分野で利用されている。
【0024】
イオンクロマトグラフ装置3の構成を説明すると、図7に示すように、イオンクロマトグラフ装置3は、脱気装置31、送液ポンプ32、圧力センサ33、インジェクタ34、カラム35、検出器36、データ処理装置41、表示器42及びプリンタ43で構成されている。また、カラム35及び検出器36は、測定温度を一定に保つための恒温槽37に収納されている。
【0025】
溶離液は、気体成分を除去するための脱気装置31を通過し、送液ポンプ32により、圧力センサ33を通ってインジェクタ34に送られる。測定すべき試料液をインジェクタ34に注入すると、溶離液によりカラム35に送られ、カラム35でイオン成分が分離され、検出器36に到達して電気伝導率の変化として検出される。データ処理装置41は、検出器36による検出結果に基づいてデータ処理が行われ、その結果は、表示器42に表示され、また、必要に応じてプリンタ43で印字される。
試料液を含む溶離液は、検出器36を出て、流量計2を通って廃液される。
【0026】
ここで、検出器36としては、一般的に電気伝導率検出器を用いるが、イオンクロマトグラフの溶離液は高い電気伝導性を持つため、サプレッサーと呼ばれるバックグラウンドを低減させる装置を併用することもある。イオンクロマトグラフの感度は、一般的なループ(容量;数十μl)注入法の場合、数10ppbレベルのイオン成分を定量することができる。
【0027】
図8は、クロマトグラムを示すグラフであり、縦軸が電気伝導率変化であり、横軸が溶出時間である。
イオンクロマトグラフ装置3において試料液による電気伝導率の変化は、図8のようなクロマトグラムとして表される。データ処理装置41(図7参照)では、クロマトグラムの各ピークについて、溶出時間(例えばt)からイオン種が計算され、また、ピーク面積(例えば斜線部S)からそのイオンの濃度が計算される。
【0028】
流れ方式分析装置1においては、あらかじめ試料液(溶離液)の流量調整を行っておく必要がある。このため、流量計2を備えた装置であれば、流量調整の作業性が向上し、また、装置の運転中において、試料液(溶離液)が正常に流れていることを目視で簡単にチェックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施の形態に係る流れ方式分析装置の概略構成図である。
【図2】流れ方式分析装置の流量計の概略構成図である。
【図3】流量計のテーパ管の上部を説明するための図である。
【図4】テーパ比、直径及び比重とフロートの高さと流量との関係を示す表である。
【図5】理論式により計算した結果を示すグラフである。
【図6】実際に実験した結果を理論式と比較して示すグラフである。
【図7】本実施の形態に係る流れ方式分析装置の一例であるイオンクロマトグラフ装置の概略構成図である。
【図8】クロマトグラムを示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1…流れ方式分析装置、2…流量計、21…テーパ管、21a…本体、21b…段部、21c…大径部、22…フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量を測定する試料が通過する管内を当該管内の下流側に行くに従って拡径するように所定のテーパ比で形成したテーパ管と、
前記テーパ管の管内に収容され、当該テーパ管を通過する試料の流量に応じて管内で軸方向の位置を変えるフロートと、
を含み、
前記テーパ管の所定のテーパ比は0.01〜0.04であり、前記フロートの比重が1.5〜9.0であり、当該フロートの直径が0.9〜3.2mmであることを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記テーパ管は、前記所定のテーパ比で拡径する部分の下流側において当該所定のテーパ比よりも大きいテーパ比で拡径する膨らみ部を有することを特徴とする請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
試料中の目的成分を分析する流れ方式分析装置であって、
試料が通過する管内を当該管内の下流側に行くに従って拡径するように所定のテーパ比で形成したテーパ管と、
前記テーパ管の管内に収容され、当該テーパ管を通過する試料の流量に応じて当該管内で軸方向の位置を変えるフロートと、
を含み、
前記テーパ管の所定のテーパ比は0.01〜0.04であり、前記フロートの比重が1.5〜9.0であり、当該フロートの直径が0.9〜3.2mmであることを特徴とする流れ方式分析装置。
【請求項4】
前記テーパ管は、前記所定のテーパ比で拡径する部分の下流側において当該所定のテーパ比よりも大きいテーパ比で拡径する膨らみ部を有することを特徴とする請求項3に記載の流れ方式分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327818(P2007−327818A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158381(P2006−158381)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】