説明

流量計測式充填方法及び装置

【課題】流量変動の他に加圧タンク内圧力変動、駆動装置の空気圧変動、充填液温度変動などの充填環境条件が変わっても充填量の誤差がなく、煩雑な事前作業が必要でない流量計測式充填方法を提供する。
【解決手段】既知の加圧タンク4内圧力と充填バルブ7の閉鎖所要時間との関係から、加圧タンク4内圧力をもとに充填中の充填バルブ7に閉鎖指令を出してから該バルブが完全に閉鎖されるまでの閉鎖所要時間を求めるとともに、既知の流量と閉鎖所要時間と閉鎖所要時間内に充填バルブから流出する充填落差量との関係から、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計測手段にて計測した瞬時流量と先に求めた閉鎖所用時間とをもとに充填落差量を求め、充填中に逐次計測積算した液量と計算して求めた充填落差量とから、充填バルブに閉鎖指令を出すタイミングを決定して容器内に充填液を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPETボトル、飲料用他のガラスびん、缶等の容器に液体を充填する流量計測式充填方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に所定量の液体を充填する流量計測式充填方法および装置において、充填液を貯留するタンクと、このタンクと連通して容器内に充填液を充填する充填バルブと、充填バルブを開閉させる制御装置と、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計とを備え、制御装置によって充填バルブを開放させて容器内に充填液の充填を開始し、制御装置によって充填バルブを閉鎖させて容器内への充填液を終了させ、容器内に所定量の充填液を充填するようにしたものは提案されていた(特許文献1、2および3)。
また、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計を備え、瞬時流量を積算することで充填量の設定を容易にする方式が提案されている(特許文献4)。
特に参考文献として例示しないが、流量計としては、電磁流量計、タービン流量計、渦流量計等の流量計を用いているものが幾つか提案されており、また、流量を計測する手段として、容器に重量検出手段を設け、容器に充填された重量から流量を計測する充填装置も幾つか提案されている。欧州ではVolumetric Filling System として、容量計測式充填装置とも言われている。
また、加圧タンクを用いた充填機で加圧タンクの圧力をもとにした充填方式が提案されている(特許文献5)。
【0003】
それらの概略を説明すると、特許文献1に示す流量計測式充填方法および装置では、容器に充填液を充填する毎に、目標充填量と実際に容器に充填された充填量との差を求めて、その充填量の差をもとに次回の充填バルブを閉鎖させるタイミングを求めるようにしている。
【0004】
特許文献2に示す流量計測式充填の制御方法では、充填バルブが開放された際の流量毎に、充填バルブに閉鎖指令を出してから完全に閉鎖されるまでの容器内への充填量を予め計測しておく。そして、実際に容器に充填液を充填する際には、上記予め計測した充填量から逆算して、充填バルブの流量に応じた充填バルブの閉鎖タイミングを決定するとしている。
【0005】
特許文献3に示す流量計測式充填装置では、充填液を貯留するタンク(4)(特許文献3の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ。)と、このタンク(4)と連通して容器(2)内に充填液を充填する充填バルブ(6)と、充填バルブ(6)を開閉させる制御装置(8)と、充填バルブ(6)によって容器(2)内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計(7)とを備え、制御装置(8)によって充填バルブ(6)を開放させて容器(2)内に充填液の充填を開始し、制御装置(8)によって充填バルブ(6)を閉鎖させて容器(2)内への充填液の充填を終了させて、容器(2)内に所定量の充填液を充填するようにした流量計測式充填装置(1)において、制御装置(8)は、以前の充填時に容器(2)内に充填液を充填中の充填バルブ(6)に閉鎖指令を出してから充填バルブ(6)が完全に閉鎖されるまでの所要時間を求めるとともに、今回充填バルブ(6)によって充填液を充填する際には、現在の開放状態の充填バルブ(6)の流量と上記所要時間をもとにして、開放状態の充填バルブ(6)が制御装置(8)から閉鎖指令を受けて完全に閉鎖されるまでの間に容器(2)内に充填されるであろう予想充填量を演算し、既に容器(2)内に充填された充填液の充填量と予想充填量の和が、容器(2)内に充填されるべき目標充填量と一致したら、充填バルブ(6)への閉鎖指令を出して充填バルブ(6)を閉鎖させる方式の流量計測式充填装置としている。
【0006】
特許文献4に示す流量計測式充填方法では、液体が容器(50)(特許文献4の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ)に向かって流れると、流量計(49)が流量を測定して、その結果を制御ユニット(61)へ送り、制御ユニット(61)では、単位時間当り流量から規定充填量を充填する時間を算定して、算定時間が経過したときに、開閉弁(51)に閉の指令を発して容器(50)に一定量の液体を充填するとしている。
【0007】
特許文献5に示す圧力充填方法では、導管(5)(特許文献5の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ。)を介して薬液(3)を貯留する圧力タンク(4)と連通する分配管(6)に取り付けられた液圧センサ(15)が検出した分配管(6)内の液圧を制御装置(8)に入力して、予め定めた液圧と充填時間との関数に基づいて充填終了予想時間を演算し、充填開始後、該充填終了予想時間になったら開閉弁(13)を閉じて充填終了とするとしている。
【特許文献1】特許第2660036号公報(第1図〜第3図)
【特許文献2】特許第2934400号公報(図1〜図4)
【特許文献3】特許第3948073号公報(図1、図2)
【特許文献4】特許第3712452号公報(図1)
【特許文献5】特許第3844029号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に示す流量計測式充填方法および装置では、タンク、流量計、充填バルブなどが1系列として構成された場合には有効であるが、1台のタンクに対して流量計、充填バルブなどをN系列設けた充填装置の場合には、1台目の流量計、充填バルブによって充填を終え、再度その系列の流量計などを用いて充填するまでに、(N−1)系列についての充填後に充填するため、その間にタンク内圧力などの充填環境が急激に変動するなどして、現在充填中の充填バルブの流量が変動することがある。このような場合当初の予測値が役に立たなくなって、充填終了後の充填量と目標充填量とに誤差が生じるという欠点がある。
【0009】
また、前記特許文献2に示す流量計測式充填の制御方法では、処理すべき充填液の種類や粘性係数の違いに応じて予め前記した計測を行っておく必要があるため、そのような事前の計測作業が煩雑であるという欠点がある。
【0010】
また、前記特許文献3に示す流量計測式充填装置では、タンク内の圧力変動が大きい場合には流量が変動して充填量の誤差が大きくなってしまう。
特に特許文献3では記載されていないが、タンク内が加圧されていて、かつ、充填バルブの流路開閉のための弁体を流路外部から駆動し、流体を外部へ漏らさないようにシールする部分がある構造の場合には、充填バルブの駆動装置は大気開放された場所にあるので、流れる充填液圧力がシール材および充填バルブ弁体に作用し、流路外部の駆動装置からの駆動力に対して妨げる力を及ぼす。
そのためタンク内の圧力変動が大きい場合、充填バルブの動作特性が変化したり、流量が変動したりして充填量の誤差が大きくなるという欠点がある。
また、実際の制御装置では、空気圧などの操作圧力による駆動方式の場合、操作圧力が変動すると操作圧力が印加され実際に動き出すまでの遅れ時間が変動し、これも無視できない場合がある。
駆動方式としては電気的な力による電磁弁式と空気圧力を用いたエアシリンダ式が一般的であるが、電気的な駆動の場合は電圧変動が駆動力に及ぼす影響はそれほど大きくないが、空気圧力式の場合、工場エアの圧力は変動しやすく、その影響は無視できない場合がある。
これにさらに厳密に充填バルブ動作の誤差要因を挙げれば、温度変化が加わると非線形な補正が必要となる。温度によってシール材の摺動抵抗が変化したり、液体圧力によって膜状の弾性体の受圧面積および弁体の受圧面積に作用する力が変化したり、温度によってシールゴム体の変形弾性係数や摺動摩擦係数が変化したりする。また、温度変動は、液体の粘性係数の変化も引き起こすので、レイノルズ数が変化し、流路内の管内摩擦係数や形状抵抗係数の変化も引き起こす。その他の外乱要因として、回転式充填機械の場合、遠心力の影響も受け、タンク内液面傾きによる波状変動が生じたり、流体慣性項にも影響が出る。また、シール方式としてゴムなどの弾性体で摺動部を持つ方式では、液圧により摺動部抵抗力が変化したり、ダイヤフラム膜のような膜状の弾性体でシールする場合は、膜に作用する力が変化する場合がある。
このような充填バルブの駆動装置の動作に関する誤差要因により、上記流量計測式充填装置では充填量の誤差が極めて大きくなってしまうという欠点がある。
【0011】
また、前記特許文献4に示す流量計測式充填装置では、充填液を貯留するタンクは大気開放されており、かつ、充填される容器も加圧されていないので、充填液を貯留するタンクが加圧タンクで、かつ、充填される容器に圧力を加える充填の場合に対しての配慮がなされていない。
【0012】
さらに、前記特許文献5に示す圧力充填方法では、充填液を貯留するタンクは加圧されているが、充填される容器は加圧されておらず、また、流量計を有した流量計測式充填方法ではないので、予め求められた充填時間で充填バルブ制御をしており、圧力以外の流量変化要素があると変動しやすいという欠点がある。また、充填時間制御は充填環境条件がある程度一定である必要があり、充填環境条件が変動しやすい場合には充填量の誤差が大きくなってしまうという欠点がある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みて提案するものであり、その目的とするところは、充填液を貯留する加圧タンクと、容器内に圧力を加える圧力印加手段と、この加圧タンクと連通して加圧された容器内に充填液を充填する流路の間に開閉弁形式の充填バルブと、充填バルブの開閉弁体を流路の外側からシール部を有しながら開閉させる駆動装置および制御装置と、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計測手段を備え、流量計測手段にて計測した瞬時流量を計測積算し、所定の充填量になるように制御装置によって充填バルブを閉鎖させて容器内への充填液の充填を終了させる流量計測式充填装置において、流量変動の他に加圧タンク内圧力変動、駆動装置の空気圧変動、充填液温度変動などの充填環境条件が変わっても充填量の誤差がなく、煩雑な事前作業が必要でない充填方法および装置を提供しようとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段により課題を解決する。
(1)第1の手段の流量計測式充填方法および装置は、充填液を貯留する加圧タンクと、容器内に圧力を加える圧力印加手段と、この加圧タンクと連通して加圧された容器内に充填液を充填する流路の間に開閉弁形式の充填バルブと、充填バルブの開閉弁体を流路の外側からシール部を有しながら開閉させる駆動装置および制御装置と、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計測手段を備え、流量計測手段にて計測した瞬時流量を計測積算し、所定の充填量になるように制御装置によって充填バルブを閉鎖させて容器内への充填液の充填を終了させる流量計測式充填手段および装置において、前記加圧タンク内の圧力計を設けて、上記制御装置は、予め求めておいた加圧タンク内圧力と充填バルブの閉鎖所要時間との関係から、測定した加圧タンク内圧力をもとに充填中の充填バルブが閉鎖指令を出してから該充填バルブが完全に閉鎖されるまでの閉鎖所要時間を算出するとともに、予め求めておいた流量と閉鎖所要時間と閉鎖所要時間内に充填バルブから流出する充填落差量との関係から、流量計測手段にて計測した瞬時流量と先に算出した閉鎖所要時間とをもとに充填落差量を算出し、充填中に逐次計測積算した液量と計算して求めた充填落差量とから、充填バルブに閉鎖指令を出すタイミングを決定して充填することを特徴とする。
(2)第2の手段の流量計測式充填方法および装置は、上記(1)の流量計測式充填方法および装置において、充填中に逐次計測積算した液量と、時々刻々算出した充填落差量との和が所定の充填目標値に達したら、充填バルブに閉鎖指令を出して充填することを特徴とする。
(3)第3の手段の流量計測式充填方法および装置は、上記(1)および(2)の流量計測式充填方法および装置において、充填バルブの開閉弁体を開閉させる駆動装置に電気的な指令を出して駆動系が応答するまでの遅れ時間に流れる流量を計測手段によって得られた瞬時流量から求め、目標充填量のうち一定量が充填された時点でその時に算出して求めた充填落差量と既に充填された充填量を、目標充填量から引いた液量をその時の流量で割って閉鎖遅延時間を算出し、その閉鎖遅延時間経過後充填バルブに閉鎖指令を出すように補正することを特徴とする。
(4)第4の手段の流量計測式充填方法および装置は、上記(1)から(3)の流量計測式充填方法および装置において、充填バルブの開閉弁体を開閉させる駆動装置に空気圧力を用い、駆動操作空気圧力を計測する圧力計測手段を設け、駆動操作空気圧力を加えた加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係から閉鎖所要時間を求めて充填バルブへの閉鎖指令を補正することを特徴とする。
(5)第5の手段の流量計測式充填方法および装置は、上記(1)から(4)の流量計測式充填方法および装置において、流体特性やシールゴム特性は複雑に影響するので、充填バルブ内の充填液温度を計測する温度計測手段を設けて、充填バルブ周りの特性を充填バルブの代表温度毎に、加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係から閉鎖所要時間を求めて充填バルブへの閉鎖指令を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および請求項2に係わる本発明は、上記第1および第2の手段の流量計測式充填方法および装置であり、充填バルブに閉鎖指令を出してから充填バルブが閉鎖するまでの間の充填精度向上が図れる。
先ず最も大きな誤差要因である充填液を貯留する加圧タンク内圧力により、駆動装置の動特性と充填落差量を補正する。駆動装置の動特性は、充填バルブ内の流体圧力の影響を受ける。これは、充填バルブには加圧された容器内に充填液が充填されているため、充填バルブ内の圧力関係は充填バルブの弁体に大気中の駆動装置と流体圧力の差圧が作用するようになる。本来、充填バルブ内の流体圧力を測定すればより正確となるが、加圧タンクから充填バルブ内までの流体抵抗や加圧タンクの液位変化による充填バルブ内の流体圧力変化が、タンク内圧力に比べて小さく無視できる範疇では、加圧タンク内圧力とほぼ相関関係が得られるので、加圧タンク内圧力から充填バルブの閉鎖所要時間との関係とを予め測定しておけば、充填中に測定した加圧タンク内圧力をもとに、充填中の充填バルブが閉鎖指令を受けてからの該充填バルブが完全に閉鎖されるまでの閉鎖所要時間を求めることができる。
また、その上で予め瞬時流量と閉鎖所要時間内に充填バルブから流出する充填落差量との関係を求めておけば、充填中の瞬時流量から充填落差量を求めることができる。
これにより、流量計測式では充填中に逐次計測積算した流量で充填制御を行っているので、逐次タンク内圧力を測定しながら充填落差量を求め、積算流量とその充填落差量を加えたものが所定の充填目標値に達したら、充填バルブに閉鎖指令を出して充填することでタンク内圧力変動にも対処して、充填量の誤差を極めて小さくすることができる。
【0016】
請求項3に係わる本発明は、上記第3の手段の流量計測式充填方法および装置であり、制御装置の演算速度が遅い場合など、(請求項2の場合のように)逐次、充填落差量を演算することが困難な場合、時々刻々の演算量を少なくするように、目標充填量のうち、一定量が充填された時点で充填落差量を演算し、この充填落差量と既に充填された充填量を、目標の充填量から引いた量をその時の流量で割って閉鎖遅延時間を算出し、その閉鎖遅延時間経過後、充填バルブに閉鎖指令を出して充填バルブを閉鎖することにより、自動的に流量変動の他にタンク内圧力変動にも対処して、充填バルブ閉鎖指令を出してから充填バルブが閉鎖するまでの間の充填量を一定にすることができ、充填量の誤差を極めて小さくすることができる。
【0017】
請求項4に係わる本発明は、上記第4の手段の流量計測式充填方法および装置であり、充填バルブに閉鎖指令を出してから充填バルブが閉鎖するまでの間の充填量に影響する空気圧駆動式の空気圧力源の変動に対しても、操作空気圧力値を計測し、その空気圧力毎に加圧タンク内圧力から充填バルブの閉鎖所要時間との関係を予め測定しておけば、充填中に計測した加圧タンク内圧力をもとに、充填中の充填バルブが閉鎖指令を受けてからの該充填バルブが完全に閉鎖されるまでの閉鎖所要時間を求めることができ、充填量の誤差を極めて小さくすることができる。
【0018】
請求項5に係わる本発明は、上記第5の手段の流量計測式充填方法および装置であり、充填バルブに閉鎖指令を出してから充填バルブが閉鎖するまでの間の充填量に影響する充填バルブ内の充填液温度を計測することで、充填バルブ周りの流体摩擦抵抗の変化やシールゴムなどの摺動抵抗の変化を含んだ補正を行うことができる。本来は、液体温度や充填バルブ本体内温度を測定した方がよいが、その場合は各物理的な特性の補正となる。ある程度充填条件が安定すれば充填バルブと周囲雰囲気との熱バランスも安定し始めるので、補正対象の温度は充填バルブの風の影響を受けない場所で測定すれば充填バルブの温度特性変化を補正可能となり、充填量の誤差を極めて小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施の形態は、PETびん、ガラスびん、缶などの容器に飲料を充填する流量計測式充填装置に応用するものであり、第1の実施の形態および第2の実施の形態について、以下図に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明に係わる流量計測式充填装置の第1の実施の形態および第2の実施の形態を示す概略の構成図で、一部を断面図としてあり、計測および制御信号を破線で示す。
図2は、図1に示す流量計測式充填装置による第1の実施の形態の充填開始後の経過時間と充填流量との関係を示す図で、充填落差量を示した図である。
図3は、図2に示す充填開始後の経過時間と充填流量との関係において、第2の実施の形態の閉鎖遅延時間を示した図である。
図4は、図1に示す流量計測式充填装置における加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係を示す図で、第1の実施の形態および第2の実施の形態に共通のものである。
図5は、図1に示す流量計測式充填装置における閉鎖所要時間とその間の充填落差量との関係を、流量をパラメータにして示す図で、第1の実施の形態および第2の実施の形態に共通のものである。
図6は、図1に示す流量計測式充填装置の第1の実施の形態の充填制御処理フローである。
図7は、図1に示す流量計測式充填装置の第2の実施の形態の充填制御処理フローで、閉鎖遅延時間を取り入れた場合のものである。
図8は、第1の実施の形態および第2の実施の形態の充填バルブに閉鎖指令が出されてからの経過時間と開閉弁体の移動量との関係と、同じ経過時間で弁体通過流出流量の変化を示す図である。
【0021】
図1に示すように、流量計測式充填装置1は容器2内に所定量の充填液を充填するロータリー式の充填装置であり、中心線YYを中心にして回転するフレーム3に取り付けられた加圧タンク4内の充填液が、充填液供給管5の途中に設けられた流量計6を通して、制御装置8からの開閉指令に基づいて作動する充填バルブ7により、容器台9に載せられた容器2に充填されるようになっている。充填液供給管5、流量計6、充填バルブ7は図1では一組が示されているが、中心線YYの周りの円周上に等分で複数組が設けられている。
加圧タンク4内の充填液上部の気体圧力は圧力計10により、充填液温度は充填液温度計11により計測されて、それぞれの信号が制御装置8に取り込まれるようになっている。
また、流量計6で計測された流量信号は制御装置8に取り込まれ、制御装置8では取り込まれた各信号に基づいて充填バルブ7の閉鎖タイミングなどを演算して、充填バルブ7に開閉指令を出すようになっている。
充填バルブ7は、バルブ本体71の内部の充填液通路72の充填液が、弁棒73と一体になった開閉弁体74の弁座部に嵌め込まれた弁座パッキン75が開閉弁体74の上昇作動で離れることにより、充填液が出口充填液通路71Aを通って容器2に充填される構造となっている。
バルブ本体71には、充填液供給管5との接続穴55が設けられていて、充填液は充填液供給管5から接続穴55を介して充填液通路72に流れるようになっている。
なお、弁棒73は図示していないガイドによって垂直方向に上下作動するように案内される構造となっている。
容器2は容器台9の上昇により容器口がバルブ本体71の下部にあるパッキンで液シールされるようになっているが、図示は省略してある。容器2には、充填液が充填される前に図示していない制御弁の作動によりバルブ本体71の下部にある導入流路77を経て圧縮気体が印加されるようになっている。また、容器2に充填液が充填されると容器2内の気体が充填液で押し出されるが、押し出された気体はバルブ本体71の下部にある排出流路78を経て図示していない制御弁の切替え作動で外部へ排出されるようになっている。
導入流路77は圧縮気体供給管77Pと接続され、排出流路78は気体排出管78PPと接続されており、容器2への圧力印加手段の構成の一部となっている。圧力印加手段については、公知文献の特開2004−217246号にもその構造、作用が示されているので、ここでは図示および説明を省略する。
開閉弁体74は、充填液通路72の外部に設けられた駆動装置80によって、駆動装置80の出力軸と一体になった軸79および軸79と連結された弁棒73を介して上下に駆動される。駆動装置80は、バルブ本体71が取り付けられているフレーム3に図示せぬブラッケト等を介して取り付けられている。バルブ本体71と弁棒73はOOリング76により、充填バルブ7内の充填液を外部に漏らさないようにシールされる構造となっており、かつ、弁棒73が滑らかに上下作動するように弁棒73がOリング76に嵌め合いされている。また、駆動装置80は圧縮エアで作動するエアシリンダであり、図示していない制御弁の作動でエア配管81からエアが供給されると開閉弁体74を閉止作動させ、図示していない制御弁の作動でエア配管83からエアが供給されると開閉弁体74を開放作動させるようになっており、制御装置8からの信号に基づいて軸79、弁棒73を介して上下駆動される構造となっている。エア配管81およびエア配管83の通路には供給エア圧力を計測する圧力計82および圧力計84が設けられていて、圧力計82および圧力計84で計測された圧力信号は制御装置8に取り込まれるようになっている。
【0022】
(第1の実施の形態)
先ず、第1の実施の形態の充填制御について説明する。充填バルブ7の開閉は次のように制御して行われる。制御装置8からの開放指令によって、エア配管83にエアが供給されて駆動装置80の作動により軸79を介して弁棒73と一体になった開閉弁体74が上方へ持ち上がって充填が開始され、図2に示すように充填流量が漸増となった後、ほぼ一定流量で流れるようになる。制御装置8から閉鎖指令が出力されると、図示しない制御弁の作動を通してエア配管81にエアが供給され、駆動装置80の作動により充填バルブ7は閉鎖を開始するが、開閉弁体74は、電気的な閉鎖指令が出されて駆動装置80が作動するまでには無駄時間があるため、図2に示すように、遅れて作動を開始して流量が漸減となり、開閉弁体74が完全に閉止して充填は終了する。
図2の閉鎖指令が出てから充填終了するまでの時間Tsが閉鎖所要時間であり、斜線部V0、即ち、閉鎖指令出力が出てから充填終了までに充填バルブ7から流出する流量が充填落差量である。
加圧タンク4内の圧力は所定圧力より高くなったり、低くなったり変動することがあり、これに伴って、充填バルブ7内の液圧が同じように高くなったり、低くなったり変動する。充填バルブ7の開閉弁体74には大気中の駆動装置80の駆動エア圧と充填バルブ7内の液圧の差圧が作用するため、加圧タンク4内の圧力が所定圧力より増加すると、即ち、充填バルブ7内の液圧が増加すると、図8に示すように、閉鎖指令が出た時点S0から駆動装置80の駆動エア圧が実際に変化するまでの時間が、SS1からS2へと遅れる。また、液圧増加により開閉弁体74の移動速度が若干ではあるが、図8のMM10からM11へと遅くなる。それに伴い、最終的な開閉弁体74の閉鎖完了が図8のF1からF2へと遅れる。なお、開閉弁体74の通過流出流量は図8のQQ10からQ11へと変化する。このように、閉鎖指令出力後の開閉弁体74の動きを代表するパラメータとして前記の閉鎖所要時間Tsを考えており、加圧タンク内圧力Pfが高くなると閉鎖所要時間Tsは長くなり、加圧タンク内圧力Pfが低いと閉鎖所要時間Tsは短くなって、図4に示すようなタンク内圧力Pfと閉鎖所要時間Tsとの関係になる。この関係を制御装置8に予め入力しておく。
また、充填落差量V0は、上記説明のように開閉弁体74の動きとその時の流量により決まる。閉鎖所要時間Tssが長くなると充填落差量V0が多くなって、閉鎖所要時間Tsが短くなると充填落差量V0が少なくなり、充填流量、即ち、流量計6で計測する流量QがQ1、Q2、Q3と大きい場合は小さい場合に比して充填落差量V0は大きくなって、流量Qと閉鎖所要時間Tsと充填落差量V0は図5に示すような関係になる。この関係も制御装置8に予め入力しておく。
制御装置8による充填制御は図6に示すようなフローで行われる。即ち、圧力計10で加圧タンク内圧力Pfを計測して、予め求めておいた加圧タンク内圧力Pfと閉鎖所要時間Tsとの関係から、計測した加圧タンク内圧力Pfの場合の閉鎖所要時間Tsを求める。次いで、流量計6で瞬時の流量Qを計測して、予め求めておいた流量Qと閉鎖所要時間Tsと閉鎖所要時間内に充填バルブ7から流出する充填落差量V0との関係から、計測した瞬時の流量Qの場合の充填落差量V0を求め、充填中に計測積算した流量Vsと上記求めた充填落差量V0の和の予想充填量Vaが目標充填量Vtになったら充填バルブ7に閉鎖指令を出力する。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の制御について説明する。
図3および図7に示すように、充填中に計測積算した積算液量Vsが目標充填量Vt以内の一定充填量である一次充填量V1に達した時点で、圧力計10で加圧タンク内圧力Pfおよび流量計6で瞬時の流量Qを計測して、その時点での閉鎖所要時間Tsおよび充填落差量V0を、前記第1の実施の形態の充填制御の場合と同様に、予め求めておいた加圧タンク内圧力Pfと閉鎖所要時間Tsとの関係および流量Qと閉鎖所要時間Tsと閉鎖所要時間内に流出する充填落差量V0との関係から求めて、その時点で求めた充填落差量V0と既に充填された積算液量Vsとの和を目標充填量Vtから引いた量をその時点の瞬時の流量Qで割って閉鎖遅延時間Tdを算出し、その閉鎖遅延時間Td経過後、充填バルブ7に閉鎖指令を出力する。
【0024】
さらに、駆動装置80の駆動にエア圧力を用いる場合、駆動エア圧力が変動することがある。開閉弁体74が、駆動エア圧力と充填バルブ7内の液圧とのバランスで作動するので、駆動エア圧力が変動すると、加圧タンク内圧力Pfが変動の場合の図8の説明と同様に、閉鎖所要時間Tsおよび充填落差量V0に影響が生じる。
駆動エア圧力の変動に対しても、供給エア圧力値を圧力計82で計測して制御装置8に取り込み、そのエア圧力毎に加圧タンク内圧力Pfから充填バルブ7の閉鎖所要時間Tsとの関係を予め求めておけば、充填中に圧力計10で計測した加圧タンク内圧力Pfをもとに閉鎖所要時間Tsを求めて、前記と同様に充填制御することができる。
【0025】
また、充填液温度が変動することがあり、これに伴い、充填バルブ7に閉鎖指令を出してから充填バルブ7が閉鎖するまでの間の充填量に影響することがある。
充填液温度変動に対しても、充填液温度を充填液温度計11で計測して制御装置8に取り込み、その充填液温度毎に加圧タンク内圧力Pfから充填バルブ7の閉鎖所要時間Tsとの関係を予め求めておけば、充填中に圧力計10で計測した加圧タンク内圧力Pfをもとに閉鎖所要時間Tsを求めて、前記と同様に充填制御することができる。
なお、上記では、加圧タンク4内の充填液温度計11で充填液温度を計測する例で説明したが、個別に充填バルブ7に温度計を設けて充填液温度を計測することにしてもよい。この場合は温度計の個数が多くなるため、コスト高にはなるが、充填しつつある充填液の温度を計測することになるので、充填液温度変動による充填量誤差への影響が大きい場合には誤差をさらに小さくする充填制御として有効になるので、目的に合わせて選択すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態および第2の実施の形態に係わる流量計測式充填装置の概略の構成図で、一部断面図で示し、計測および制御信号を破線で示す。
【図2】図1に示す流量計測式充填装置による第1の実施の形態の充填開始後の経過時間と充填流量との関係で充填落差量を示す。
【図3】図2に示す充填開始後の経過時間と充填流量との関係において、第2の実施の形態の閉鎖遅延時間を示す。
【図4】図1に示す流量計測式充填装置における加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係を示す図で、第1の実施の形態および第2の実施の形態に共通のものである。
【図5】図1に示す流量計測式充填装置における閉鎖所要時間とその間の充填落差量との関係を、流量をパラメータにして示す図で、第1の実施の形態および第2の実施の形態に共通のものである。
【図6】図1に示す流量計測式充填装置の第1の実施の形態の充填制御処理フローを示す。
【図7】図1に示す流量計測式充填装置の第2の実施の形態の充填制御処理フローで、閉鎖遅延時間を取り入れた場合を示す。
【図8】第1の実施の形態および第2の実施の形態の充填バルブに閉鎖指令が出されてからの経過時間と開閉弁体の移動量との関係と、同じ経過時間で弁体通過流出流量の変化を示す。
【符号の説明】
【0027】
1…流量計測式充填装置、
2…容器、
4…加圧タンク、
5…充填液供給管、
6…流量計、
7…充填バルブ、
8…制御装置、
10…(加圧タンク内)圧力計、
11…充填液温度計、
71…バルブ本体、
72…充填液通路、
73…弁棒、
74…開閉弁体、
76…Oリング、
77…(圧縮気体の)導入流路、
77A…(圧力印加手段の)圧縮気体供給管、
78…(気体の)排出流路、
78A…(圧力印加手段の)気体排出管、
80…駆動装置、
81…エア配管、
82…(駆動エア)圧力計、
83…エア配管、
Pf…加圧タンク内圧力、
Ts…閉鎖所要時間、
Q…流量、
V0…充填落差量、
Vs…積算液量、
Vt…目標充填量、
V1…一次充填量、
Va…予想充填量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填液を貯留する加圧タンクと、容器内に圧力を加える圧力印加手段と、この加圧タンクと連通して加圧された容器内に充填液を充填する流路の間に開閉弁形式の充填バルブと、充填バルブの開閉弁体を流路の外側からシール部を有しながら開閉させる駆動装置および制御装置と、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計測手段を備え、流量計測手段にて計測した瞬時流量を計測積算し所定の充填量になるよう制御装置によって充填バルブを閉鎖させて容器内への充填液の充填を終了させる流量計測式充填方法において、
前記加圧タンク内の圧力を計測する圧力計を設けて、上記制御装置は、予め求めておいた加圧タンク内圧力と充填バルブの閉鎖所要時間との関係から、計測した加圧タンク内圧力をもとに充填中の充填バルブに閉鎖指令を出してから該充填バルブが完全に閉鎖されるまでの閉鎖所要時間を求めるとともに、予め求めておいた流量と閉鎖所要時間と閉鎖所要時間内に充填バルブから流出する充填落差量との関係から、流量計測手段にて計測した瞬時流量と先に求めた閉鎖所用時間とをもとに充填落差量を求め、充填中に逐次計測積算した液量と計算して求めた充填落差量とから、充填バルブに閉鎖指令を出すタイミングを決定して充填することを特徴とする流量計測式充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載する流量計測式充填方法において、充填中に逐次計測積算した液量と、時々刻々計算して求めた充填落差量との和が目標充填量に達したら充填バルブを閉鎖することを特徴とする流量計測式充填方法。
【請求項3】
請求項1に記載する流量計測式充填方法において、目標充填量のうち一定量が充填された時点でその時に算出して求めた充填落差量と既に充填された液量を、目標充填量から引いた量をその時の流量で割って閉鎖遅延時間を算出し、その閉鎖遅延時間経過後、充填バルブに閉鎖指令を出して充填バルブを閉鎖することを特徴とする流量計測式充填方法。
【請求項4】
請求項1から3に記載する流量計測式充填方法において、充填バルブの開閉弁体を開閉させる駆動装置にエア圧力を用い、駆動操作圧力を計測する圧力計測手段を設け、駆動操作圧力と加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係から閉鎖所要時間を求めて、充填バルブの閉鎖指令を補正することを特徴とする流量計測式充填方法。
【請求項5】
請求項1から4に記載する流量計測式充填方法において、充填バルブ内の充填液温度計測手段を設け、計測した充填液温度を加えた加圧タンク内圧力と閉鎖所要時間との関係から閉鎖所要時間を求めて、充填バルブの閉鎖指令を補正することを特徴とする流量計測式充填方法。
【請求項6】
充填液を貯留する加圧タンクと、容器内に圧力を加える圧力印加手段と、この加圧タンクと連通して加圧された容器内に充填液を充填する流路の間に開閉弁形式の充填バルブと、充填バルブの開閉弁体を流路の外側からシール部を有しながら開閉させる駆動装置および制御装置と、充填バルブによって容器内に充填液が充填される際の単位時間当りの流量を計測する流量計測手段を備え、流量計測手段にて計測した瞬時流量を計測積算し、所定の充填量になるように制御装置によって充填バルブを閉鎖させて容器内への充填液の充填を終了させる流量計測式充填装置において、流量変動の他に加圧タンク内圧力変動、駆動装置の空気圧変動、充填液温度変動などの充填環境条件に対応して、上記請求項1〜5に記載の各流量計測式充填方法により、充填バルブを閉鎖させて容器内へ充填液を充填することを特徴とする流量計測式充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−190770(P2009−190770A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34607(P2008−34607)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】