説明

流量調整方法および装置

【課題】 開度調整手段等の流れの障害となる部材を流路内に配置することなく、流量を調整することができる流量調整方法および装置を提供する。
【解決手段】 異物を含む供給流体を流量調整管5へ通液し、流量調整管5において送液部6から分岐する供給部7へ供給流体を分流し、流量調整管5の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して供給部7へ分流する供給流体の流量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量調整方法および装置に関し、家畜ふん尿処理設備及び廃水処理設備における高濃度流体の移送・分配の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家畜ふん尿処理設備においては、ふん尿貯留槽に貯留した家畜ふん尿を移送ポンプで汲み上げて移送管路を通して脱水機等の設備に移送しており、移送管路を流れる家畜ふん尿の流量調整は移送管路の途中に介装したバルブ、ダンパー等の開度調整、もしくは移送ポンプの能力調整(回転数制御による吐出量の調整等)によって行っている。
【特許文献1】特開2003−38013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、家畜ふん尿などの高濃度で夾雑物を多く含む流体の流量を制御する場合に、バルブ、ダンパーなどのように弁体等の開度調整手段によって流路断面積を増減して流量を制御する方式では、家畜ふん尿に含まれた夾雑物がバルブ、ダンパー等を通過する際に、弁体等の開度調整手段が夾雑物の流れを阻害する障害物となり、夾雑物が弁体等に固着する。この弁体等に固着した固着物層が成長すると開度調整に支障を来たし、最終的に閉塞を免れなかった。
【0004】
また、移送ポンプの能力調整よって夾雑物を多く含む流体の流量を制御する場合には、移送流量が少流量となると移送管内における流体の流速が低速度となるために、流体に含まれた夾雑物が移送管内に沈降して堆積し、堆積物層が流れを阻害して沈降を助長し、最終的に閉塞を免れなかった。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、開度調整手段等の流れの障害となる部材を流路内に配置することなく、流量を調整することができる流量調整方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流量調整方法は、異物を含む供給流体を流量調整管へ通液し、流量調整管において送液部から分岐する供給部へ供給流体を分流し、流量調整管の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して供給部へ分流する供給流体の流量を調整するものである。
【0007】
上記した構成において、流量調整管へ通液した異物を含む供給流体は、流量調整管内で送液部から供給部へ分流する。この流量調整管内を流れる流体は、重力の作用を受けて鉛直方向下方へ付勢力を受けながら流動する。このため、送液部から分岐する供給部の分岐口が送液部の下方位置にあると、重力の付勢力は供給部へ分流する供給流体の流れを加勢して分流量を増加させる要因として作用し、分岐口の軸心が鉛直軸方向に沿うほどに分流量が増加し、分岐口の軸心が水平軸方向に沿うほどに分流量が減少する。
【0008】
また、分岐口が送液部の上方位置にあると、重力の付勢力は供給部へ分流する供給流体の流れを減勢して流量を減少させる要因として作用し、分岐口の軸心が鉛直軸方向に沿うほどに分流量が減少し、分岐口の軸心が水平軸方向に沿うほどに分流量が増加する。
【0009】
この重力が分流量の増減に与える影響は流量調整管内を流れる流体の流速が遅いほどに大きくなり、一般的に家畜ふん尿などの高濃度で夾雑物を多く含む流体の移送は低流速で行うので、その影響が大きい。
【0010】
このため、流量調整管の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して、流量調整管における供給部の分岐口の上下方向位置を調整することで、開度調整手段等の流れの障害となる部材を流路内に配置することなく、供給部を流れる分流量を調整できる。
【0011】
本発明の流量調整装置は、異物を含む供給流体を通液する送液部と送液部から分岐する供給部とを形成した流量調整管と、流量調整管の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更する角度変更手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、異物を含む供給流体を通液する送液部と送液部から分岐する供給部とを形成した流量調整管において、その水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更することで、開度調整手段等の流れの障害となる部材を流路内に配置することなく、あるいは供給流体を供給するためのポンプ能力を調整することなく、流量を調整できる。よって、供給流体である家畜ふん尿に含まれた異物の夾雑物が流量調整管に固着したり、沈降して堆積することに起因する閉塞を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、ふん尿貯留槽1には、脱水機等の処理装置へ供給する供給流体として、高濃度で夾雑物を多く含む家畜ふん尿を貯留している。
【0014】
ふん尿貯留槽1に配置した水中ポンプ等からなる移送ポンプ2には移送管3を接続しており、移送管3は流量調整装置4の流量調整管5に連通している。流量調整管5はその角度を変更可能に流量調整装置4に保持されており、その構成は本実施の形態に限るものではない。
【0015】
本実施の形態において、流量調整管5は供給流体を通液する送液部6と送液部6から分岐する供給部7とからなり、送液部6に接続した返送管8はふん尿貯留槽1に連通し、供給部7に接続した供給管9が脱水機等の処理装置へ連通している。移送管3、返送管8、供給管9はフレキシブルな部材からなり、流量調整管5の姿勢の変化を許容する。
【0016】
流量調整管5は角度変更手段をなす懸架装置10によって懸垂支持されている。懸架装置10は索体等からなる複数の支持部材11が送液部6の基端部および先端部ならびに供給管9の先端部に連結しており、各支持部材11を個別に独立して巻上げ操作および繰出し操作することにより、流量調整管5の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更する。角度変更手段は懸架装置10に限定されるものではなく、シリンダー等の他のアクチュエータによって構成することも可能である。
【0017】
以下、上記した構成における作用を説明する。流量調整管5は、送液部6が水平となり、供給部7が送液部6の下方に位置するように、懸架装置10により懸垂支持する。この状態で移送ポンプ2によって一定流量で夾雑物等の異物を含む家畜ふん尿を供給流体として移送管3に供給する。
【0018】
移送管3に供給する供給流体は、流量調整管5へ通液して送液部6ならびに返送管8を通してふん尿貯留槽1へ循環する状態で、流量調整管5において送液部6から供給部7へ分流し、供給管9を通して脱水機等の処理装置へ供給する。
【0019】
移送ポンプ2の吐出圧を駆動力として流量調整管5を流れる供給流体は、重力の作用を受けて鉛直方向下方へ付勢力を受けながら流動する。
このため、送液部6から分岐する供給部7の分岐口が送液部6の下方位置にあると、重力の付勢力は供給部7へ分流する供給流体の流れを加勢して分流量を増加させる要因として作用する。この場合に、分岐口の軸心が鉛直軸方向に沿うほどに分流量が増加し、分岐口の軸心が水平軸方向に沿うほどに分流量が減少する。
【0020】
また、供給部7の分岐口が送液部6の上方位置にあると、重力の付勢力は供給部6へ分流する供給流体の流れを減勢して流量を減少させる要因として作用する。この場合に、分岐口の軸心が鉛直軸方向に沿うほどに分流量が減少し、分岐口の軸心が水平軸方向に沿うほどに分流量が増加する。
【0021】
この重力が分流量の増減に与える影響は流量調整管5を流れる供給流体の流速が遅いほどに大きくなり、一般的に家畜ふん尿などの高濃度で夾雑物を多く含む流体の移送は低流速で行うので、その影響が大きい。本実施の形態では流量調整管5の入口における供給流体の流速を約0.25m/s(流量3m/h、管の呼び口径100A)とする。
【0022】
このため、供給管9を通して脱水機等の処理装置へ供給する流量を調整する場合には、懸架装置10を駆動して各支持部材11を適宜に巻上げ操作および繰出し操作することにより、流量調整管5の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して供給部7へ分流する供給流体の流量を調整する。
【0023】
例えば、図1において破線で示すように、送液部6の先端部を基端部よりも上位に保持し、流量調整管5に水平軸に対する傾斜角度を与え、供給部7の分岐口の上下方向位置を変更し、分岐口の軸心を水平軸方向に近づくように沿わせることで供給部7への分流量を減少させる。
【0024】
逆に、送液部6の先端部を基端部よりも下位に保持し、流量調整管5に水平軸に対する傾斜角度を与え、供給部7の分岐口の上下方向位置を変更し、分岐口の軸心を鉛直軸方向に近づくように沿わせることで供給部7への分流量を増加させる。
【0025】
また、送液部6を水平に支持する状態で、供給部7の先端部を持ち上げ、流量調整管5に水平軸廻りに対する回転角度を与え、供給部7の分岐口の上下方向位置を変更し、分岐口の軸心を水平軸方向に近づくように沿わせることで供給部7への分流量を減少させる。
【0026】
また、送液部6を水平に支持する状態で、供給部7の先端部を下げて、流量調整管5に水平軸廻りに対する回転角度を与え、供給部7の分岐口の上下方向位置を変更し、分岐口の軸心を鉛直軸方向に近づくように沿わせることで供給部7への分流量を増加させる。
【0027】
あるいは、上述した動作を組み合わせることで供給部7への分流量を増減調整する。
本実施の形態では、移送管3に供給する供給流体を、流量調整管5から移送ポンプ2により移送管3、送液部6ならびに返送管8を通してふん尿貯留槽1へ循環する状態で、供給流体の一部を送液部6から供給部7へ分流し、供給管9を通して脱水機等の処理装置へ供給したが、送液部6を通過した供給管9を別途の処理装置等へ供給することも可能であり、この場合には、供給部7へ分流する分流量を調整することで、必然的に送液部6の流量が調整される。
【0028】
したがって、流量調整管5の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して、流量調整管5における供給部の分岐口の上下方向位置を調整することで、開度調整手段等の流れの障害となる部材を流路内に配置することなく、供給部を流れる分流量を調整でき、供給流体である家畜ふん尿に含まれた異物の夾雑物が流量調整管5に固着したり、沈降して堆積することに起因する閉塞を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態を示す模式図
【符号の説明】
【0030】
1 ふん尿貯留槽
2 移送ポンプ
3 移送管
4 流量調整装置
5 流量調整管
6 送液部
7 供給部
8 返送管
9 供給管
10 懸架装置
11 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物を含む供給流体を流量調整管へ通液し、流量調整管において送液部から分岐する供給部へ供給流体を分流し、流量調整管の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更して供給部へ分流する供給流体の流量を調整することを特徴とする流量調整方法。
【請求項2】
異物を含む供給流体を通液する送液部と送液部から分岐する供給部とを形成した流量調整管と、流量調整管の水平軸に対する傾斜角度および水平軸廻りの回転角度の少なくとも一方の角度を変更する角度変更手段とを備えたことを特徴とする流量調整装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−272104(P2006−272104A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93352(P2005−93352)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】