説明

浄化フィルター、及び浄化装置

【課題】臭気や揮発性化学物質、オイルミスト又は湿気を効率よく除去できる浄化フィルターであって、通気抵抗が少なく、長期間の連続使用に耐え、低コストで生産性に優れた浄化フィルターの提供。
【解決手段】無機多孔質材料を含む成形材料で形成された棒状体を集合してなる浄化フィルターであって、上記棒状体同士が交叉して接した状態の多数の接点を有し、かつ、これらの接点が3次元空間に点在し、各接点の周囲に隙間を形成してなる状態の3次元構造を有することを特徴とする浄化フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化フィルター、及び、該フィルターを備えた浄化装置に関する。さらに詳しくは、空気浄化装置や厨房排気浄化装置などに備えることができ、汚染空気中に含まれる臭気、揮発性化学物質、オイルミスト及び湿気を効率良く除去できる浄化フィルター、及び、該フィルターを備えた浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの室内環境に、浄化フィルターを備えた空気浄化装置を設置することで、空気中に含まれる、アンモニアや硫化水素などの臭気、又は、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質を除去し、汚染空気を浄化して、室内環境の快適性を維持することが行われている。
【0003】
また、近年、ガスコンロなどのガス燃焼加熱器に代わって普及し始めた電気調理器は、二酸化炭素などの燃焼ガスが発生せず、調理による汚染空気を必ずしも屋外へ排出させる必要がないことから、汚染空気からオイルミスト、水蒸気及び臭気を除去する浄化フィルターを備えた室内空気循環型の厨房排気浄化装置が用いられるようになってきている。
【0004】
このような空気浄化装置や厨房排気浄化装置などの浄化装置に備えることができる浄化フィルターとしては、従来から様々なものが提案されている。例えば、活性炭や無機多孔質材料などの粒子を敷き詰めた構成の浄化フィルターが知られている。しかし、この構成の浄化フィルターを、上述したような浄化装置に用いた場合には、浄化フィルターの通気抵抗が大きいことから、汚染空気を確実にフィルター内を通過させるための大風量のファンが必要となる。このため、浄化装置が大型化して省スペース化が図れないばかりか、不経済であり、また、騒音を発生させるなどの問題があった。
【0005】
また、ひだ状に折り込まれた不織布からなる浄化フィルターも知られているが、繊維間の細かい隙間を利用して浄化する方法であるため、経時的に目詰まりが起こりやすく、長期間の連続使用が難しかった。また、この方法は、臭気や揮発性化学物質の除去効率が悪く、これを改善するために上記の不織布を複数枚併用させた場合にあっては、通気抵抗が大きくなってしまい、結果として上述したような省スペース化や経済性などの問題を生じさせていた。
【0006】
また、特許文献1には、厨房用浄化装置に用いる浄化フィルターとして、セル膜のない3次元網状骨格構造を有するポリウレタンフォームをセラミック材料からなる泥漿に浸漬し、余剰泥漿を除去し、次いで焼成することにより得られる3次元網状の浄化フィルターが提案されている。この3次元網状の浄化フィルターは、オイルミストの除去効率に優れているが、フィルター内の通気抵抗が高く、また、生産性に劣ることから非常に高価であり、さらには、目詰まりが生じやすく長期間の連続使用にも問題を有していた。
【0007】
また、特許文献2には、コルゲートハニカム基材の表面にゼオライトや活性炭を担持させてなる厨房排気用の浄化フィルターが、また、特許文献3には、無機調湿材を主体とする成形体であって、空気が通過する貫通路が隔壁を介して多数並設されたハニカム構造をした空気浄化用のフィルターがそれぞれ提案されている。これらのハニカム構造を有した浄化フィルターは、ストレートな通路が形成されているため通気抵抗が低く、長期の連続使用も可能である。しかしながら、一方で、ストレートに形成された通路は、汚染空気を浄化することなく通過させてしまうことがあるため、浄化効率が低く、これを改善するために通路を長く形成する必要があり、浄化装置の大型化が避けられなかった。また、ハニカム構造の浄化フィルターは、その構造上、生産性が低く、また、押出成型機で作製する場合においては、高密度な成形体を得ることが難しいなどの問題があった。特に、吸湿率の高い無機多孔質材料を多く含有させた場合においては、得られる成形体は、乾燥や焼成した際の収縮により、表面クラックや欠損などの成形不良が生じやすく、高密度のハニカム構造を成形するのは困難であった。
【0008】
【特許文献1】実開昭63−118915号公報
【特許文献2】特開2007−125466号公報
【特許文献3】特開2002−219316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、臭気や揮発性化学物質(以下、「臭気」や「揮発性化学物質」を単に「ガス」という場合がある。)、オイルミスト又は湿気を効率よく除去できる浄化フィルターであって、通気抵抗が少なく、長期間の連続使用に耐え、低コストで生産性に優れた浄化フィルターを提供することにある。また、本発明の目的は、該フィルターを備えた浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、無機多孔質材料を含む成形材料で形成された棒状体を集合してなる浄化フィルターであって、上記棒状体同士が交叉して接した状態の多数の接点を有し、かつ、これらの接点が3次元空間に点在し、各接点の周囲に隙間を形成してなる状態の3次元構造を有することを特徴とする浄化フィルターである。
【0011】
また、本発明の浄化フィルターは、棒状体が連続した直線部分を有する曲線形状をしており、該曲線が規則的に或いは不規則に折り返されて3次元構造を形成している第1の実施形態、棒状体が曲線或いは直線形状を有したものであり、該棒状体が不規則な状態に複数積み上げられて3次元構造を形成している第2の実施形態、棒状体が直線或いは曲線形状を有したものであり、該棒状体を同一平面上に互いに平行な隙間を介して複数配列して形成した構成を有するストライプ層を複数有し、かつ、該ストライプ層が、各ストライプ層を構成する棒状体同士が互いに交叉する状態に積み上げられて3次元構造を形成している第3の実施形態にすることができる。
【0012】
本発明の浄化フィルターの第3の実施形態において、各ストライプ層は、ストライプ層を構成する棒状体同士が、少なくとも一方の端部において連結されて一体化されていることが好ましく、また、各ストライプ層の少なくとも一方の表面に突起が形成されており、ストライプ層同士が、その最表面間に隙間を形成させた状態で隣接していてもよい。
【0013】
また、本発明の浄化フィルターは、各棒状体の太さが0.5mm〜10mmの範囲内であることが好ましく、また、無機多孔質材料が、その平均細孔半径が2〜8nmの範囲内で、その比表面積が80m2/g以上であり、かつ、その最高吸湿率が15質量%のものであることが好ましい。また、本発明において、無機多孔質材料が、珪質頁岩であることが好ましく、さらに、珪質頁岩が、その細孔内に、アルカリ性化合物を担持させたものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の浄化フィルターは、棒状体の表面に、納豆菌及び/又は土壌菌を担持させることができ、また、棒状体の表面に、酸化チタンを担持させることで光触媒機能を付与させることができ、さらに、棒状体中に、ノルマルパラフィンを内包するマイクロカプセルを含有させることができる。
【0015】
また、本発明の浄化装置は、上記の本発明の浄化フィルターを備えたことを特徴とする浄化装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス、オイルミスト又は湿気を効率よく除去できる浄化フィルターであって、通気抵抗が少なく、長期間の連続使用に耐え、生産性に優れた安価な浄化フィルターが提供される。また、本発明によれば、該フィルターを備えた、汚染空気の浄化効率に優れるとともに、省スペース化や低コスト化を実現させる浄化装置が提供される。
【0017】
より具体的には、本発明の浄化フィルターは、上下左右のあらゆる方向に隙間を有した構造であるため、フィルター内の通気抵抗を低く抑えることができる。したがって、大風量のファンで強制的に汚染空気を浄化フィルター内に通過させる必要がなく、浄化装置の省スペース化が図れ、経済性にも優れる。また、本発明の浄化フィルターの上下左右のあらゆる方向に隙間を有する構造は、浄化フィルター内を通過する汚染空気の流れを乱すことから、汚染空気と棒状体表面との接触機会を増加させる。すなわち、本発明の浄化フィルターは、通気抵抗を抑えた構造であるにもかかわらず、優れた浄化効率を発揮することが可能である。また、本発明の浄化フィルターは、無機多孔質材料が有する多量の微細孔を利用して汚染空気を浄化する方法であるため、不織布フィルターのように目詰まりが生じにくく、長期間の連続使用に耐え得るものである。さらに、上記の優れた性能を有する本発明の浄化フィルターは、後述するように、生産性に優れ、成形不良を生じにくい方法で得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の浄化フィルターを詳細に説明する。本発明の浄化フィルターは、無機多孔質材料を含む成形材料で形成された棒状体を集合してなる浄化フィルターであって、上記棒状体同士が交叉して接した状態の多数の接点を有し、かつ、これらの接点が3次元空間に点在し、各接点の周囲に隙間を形成してなる状態の3次元構造を有することを特徴とする。
【0019】
先ず、本発明において、無機多孔質材料とは、内部に無数の微細な孔を有した無機材料のことである。具体的には、珪藻泥岩、珪質頁岩、アロフェン、イモゴライト、セピオライト又はゼオライトなどを挙げることができ、これらは単独でも組み合わせても使用できる。このような無機多孔質材料は、優れた吸湿性を有しており、また、ガス吸着性及びオイルミスト吸着性にも優れていることが知られている。このため、これらの無機多孔質材料を原料として用いることで、上述した性質を有した浄化フィルターを得ることが可能となる。特に、本発明においては、平均細孔半径が2nm〜8nm、窒素法によるBET比表面積が80m2/g以上、最高吸湿率が15質量%以上の無機多孔質材料が好ましく、さらには、900℃までの耐熱性を有する無機多孔質材料であることが好ましい。このような無機多孔質材料としては、例えば、北海道で産出される珪質頁岩などを挙げることができる。この構成をした無機多孔質材料は、他の無機多孔質材料と比べても極めて優れた吸湿性(特に高湿度領域における吸湿性)やガス吸着性、さらにはオイル吸着性を有しており、より優れた浄化効率を有する浄化フィルターを得ることができる。また、珪質頁岩は、その細孔内に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩又は珪酸塩などのアルカリ性化合物を担持させていることが好ましい。この場合、硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスの吸着性をより向上させることができる。
【0020】
なお、本発明の特許請求の範囲及び明細書における「最高吸湿率」とは、対象物を40℃、相対湿度0%の恒温恒湿槽に入れ72時間保持した後に測定する対象物の質量と、その後、25℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に入れ48時間保持した後に再度測定する対象物の質量とから算出される質量増加率のことを示す。
【0021】
本発明の浄化フィルターは、このような機能を有する無機多孔質材料を成形材料中に含有させたものであるため、棒状体表面は多孔質に形成される。本発明において、棒状体中(成形材料中)に含まれる無機多孔質材料の含有量は、固形分換算で、20質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。無機多孔質材料の含有量が20質量%未満の場合は、浄化フィルターの浄化効率が劣る場合があり、一方、90質量%を超える場合は、浄化フィルターの強度が劣る場合がある。より好ましい無機多孔質材料の含有量は、60質量%〜80質量%の範囲内である。
【0022】
本発明を構成する棒状体は、直線形状或いは曲線形状のいずれであってもよく、また、その断面形状は、例えば、円形状又は角形状などにすることができる。好ましくは、比表面積を高くすることができ、汚染空気の浄化効率をより良好なものとできる断面が円形状の棒状体である。本発明に用いる棒状体の太さ(断面が円形状の場合は直径)は、特に制限はないが、0.5mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。棒状体の太さ(直径)をこの範囲内とすることで、微細な構造で優れた浄化効率を有しつつ、小型で生産性に優れた浄化フィルターを得ることが可能となる。より好ましい棒状体の太さは、0.7mm〜3mmの範囲内である。
【0023】
本発明の浄化フィルターは、このような棒状体が集合して形成されたものである。この場合、連続の棒状体(すなわち、1本で形成されている棒状体)が集合していてもよいし、不連続の棒状体(すなわち、複数個の棒状体)が集合していてもよい。そして、本発明の浄化フィルターは、この棒状体同士が交叉して接した状態の多数の接点を有し、かつ、これらの接点が3次元空間に点在し、各接点の周囲に隙間を形成してなる状態の立体的な3次元構造をしている。すなわち、本発明の浄化フィルターは、無機多孔質材料を含む成形材料で形成された棒状体を適度な通気性を有するように交絡させながら3次元構造に形成させたものである。本発明の浄化フィルターにおいて、フィルター内面風速は、0.1m/s〜5.0m/s、好ましくは1.0m/s〜5.0m/sの範囲内に調整されていることが好ましい。さらに、本発明の浄化フィルターは、単位体積あたりに占めるフィルターの容積率が30〜80%の範囲内に調整されていることが好ましい。
【0024】
以下に、本発明の浄化フィルターを好ましい実施形態を例に挙げて説明する。図1は、本発明の浄化フィルターの第1の実施形態を示す斜視図である。本発明において、第1の好ましい実施形態としては、図1に示すとおり、前記棒状体2が、連続した直線部分を有する曲線形状をしており、該曲線が規則的に或いは不規則に折り返されて3次元構造を形成している形態が挙げられる。具体的には、本実施形態の浄化フィルターは、固形の即席麺のような形状をしており、例えば、成形材料を棒状に連続で押出成形し、得られた棒状体を、棒状体の受けとなる容器を動かしながら充填させていくことにより得ることができる。また、押出成形した連続の棒状体を一度液媒体中で撹拌させた後、容器内に充填させることもでき、この場合、棒状体をより複雑に絡めることができる。ここで用いる容器は、フィルター内の通気性が適度なものになるようにランダムに動かされることが好ましく、また、この容器としては、例えば、金網などからなる通気性の容器を用いることができ、この場合、この通気性の容器に棒状体を充填させたままの状態で浄化フィルターとすることもできる。また、後述するように、棒状体を焼成固化させて一体化させた後、これを容器から取り出して得られたものを浄化フィルターとしてもよい。本実施形態の浄化フィルターは、上記のようにして得られるものであり、極めて生産性の高いものである。
【0025】
図2は、本発明の浄化フィルターの第2の実施形態を示す斜視図である。本発明のおいて、第2の好ましい実施形態としては、図2に示すような、前記棒状体2が曲線或いは直線形状を有したものであり、この棒状体2が不規則な状態に複数個積み上げられて3次元構造を形成している形態が挙げられる。すなわち、本実施形態の浄化フィルター1は、図2に示すように、複数の不連続な棒状体2を適度な通気性を有するように積み上げて形成されたものである。本実施形態においては、フィルター内に適度な隙間を形成できるよう、各棒状体は、その一部において曲線形状を有するものであることが好ましく、また、各棒状体は、互いに不揃いであることが好ましい。また、本実施形態の浄化フィルターは、例えば、成形材料を棒状に押出成形し、さらに、長さ10mm〜100mmの範囲にカットして得た複数の棒状体を通気性の容器に充填することにより得ることができる。また、複数の棒状体を容器に充填させた後、焼成固化して棒状体を一体化させたり、接着剤などを塗布して棒状体を一体化させることによっても得ることができる。
【0026】
図3は、本発明の浄化フィルターの第3の実施形態の一例を示す正面図である。また、図4は、図3に示す浄化フィルターの部分平面図である。本発明において、第3の好ましい実施形態としては、図3又は図4に示すとおり、棒状体2が直線或いは曲線形状を有したものであり、該棒状体2を同一平面上に互いに平行な隙間を介して複数配列して形成した構成を有するストライプ層を複数有し、かつ、該ストライプ層が、各ストライプ層を構成する棒状体2同士が互いに交叉する状態に積み上げられて3次元構造を形成している形態が挙げられる。本実施形態において、棒状体の長さは、特に制限はないが、例えば、5mm〜500mmであることが好ましい。
【0027】
本実施形態において、ストライプ層は、例えば、図4に示すように、上述した棒状体2が同一平面上に互いに平行に隙間を介して配列された構成を有したものである。また、本実施形態におけるストライプ層3は、図7に示すように、構成する各棒状体2同士が、これらの少なくとも一方の端部、好ましくはこれらの両端部において連結されて一体化されている構成であってもよい。このように各棒状体が連結されて一体化されている構成のストライプ層とした場合、後述するように、浄化フィルターの生産性をより優れたものとできる。また、各棒状体を一体的に連結させる部分は、成形加工を容易にするために各棒状体より幅広に形成してもよく、また、各棒状体の両端部において一体的に連結された構成のストライプ層を用いる場合においては、ストライプ層を構成する棒状体のうち両端に位置する棒状体を他の棒状体より幅広にしてもよい(図7参照)。このような形態にすることで、これらの幅広部分のみを固着させることにより、容易に浄化フィルターが得られる。
【0028】
また、本実施形態において、各ストライプ層を構成する隣り合う棒状体間の距離のそれぞれは、0.5mm〜20mmの範囲内であることが好ましい。この距離が0.5mm未満の場合、浄化フィルター内の通気抵抗が高くなる場合があり、一方、20mmを超える場合は、浄化フィルターの浄化効率が低下する場合がある。より好ましい棒状体間の距離は、0.7mm〜5mmの範囲内である。また、各ストライプ層において、同一平面上に配列される棒状体の配列数は、5本〜100本/100mmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
また、本実施形態において、各ストライプ層を構成する隣り合う棒状体間の距離のそれぞれは、等幅であってもよいし、非等幅であってもよい。等幅にした場合は、浄化フィルター内の通気抵抗を適度な状態に調整することが容易となり、非等幅の場合は浄化フィルター内を通過する汚染空気をより複雑に対流させ、汚染空気の滞留時間をより長くすることができる。
【0030】
本実施形態の浄化フィルターは、上述のような構成を有するストライプ層が、隣接するストライプ層の棒状体同士が互いに非平行となるように積層された構造をしている。本実施形態の浄化フィルターにおいて、ストライプ層の積層数は、少なくとも5層以上、好ましくは、30層以上、さらに好ましくは、60層以上であることが好ましい。一方、200層以上を超える場合は、浄化フィルターの強度が劣る場合や、浄化フィルターが大きくなり、小型の浄化装置に適用できない場合がある。しかし、本実施形態において、棒状体の配列数やストライプ層の積層数は、上述した範囲に限定されるものではなく、浄化フィルターを通過する空気の量や流速その他の環境条件又は配置させる浄化装置の大きさに合わせて、適切な浄化効率が得られるように設定しておけばよい。
【0031】
図5は、本発明の浄化フィルターの第3の実施形態の他の例を示す正面図である。図6は、図5に示す浄化フィルターの部分平面図である。図5又は図6に示すように、本実施形態の浄化フィルター1は、あるストライプ層における各棒状体2の配置位置と、これの2層先のストライプ層における各棒状体2の配置位置とをずらした構造であってもよい。このような構造にすることで、浄化フィルター内を通過する汚染空気をより複雑に対流させることが可能となり、汚染空気の滞留時間を長くすることが可能となる。
【0032】
また、図3〜図6に示すように、本実施形態の浄化フィルター1は、隣接するストライプ層の棒状体2同士が必ずしも直交している必要はなく、隣接するストライプ層の棒状体2同士が互いに非平行、すなわち、交叉している棒状体の接点の周囲に隙間が形成されていればよい。例えば、ベースとなるストライプ層の棒状体と、このストライプ層に隣接して積層されるストライプ層の棒状体との角度を、5度〜175度の範囲内となるように調整してストライプ層を積層することができる。一方、角度が0度を超えて5度未満である場合や、175度を超えて180度未満である場合は、隣接するストライプ層の棒状体同士の重なりにより、通気抵抗が大きくなる場合がある。
【0033】
さらに、本実施形態の浄化フィルターは、図7に示すように、各ストライプ層3の少なくとも一方の表面に突起2Aを形成させることで、図8に示すように、隣接するストライプ層3同士が、その最表面間に隙間を形成させた状態で隣接された形態にすることもできる。このような形態とすることで、浄化フィルター内を通過する汚染空気をより複雑に対流させることが可能となり、汚染空気の滞留時間を長くすることが可能となる。ストライプ層間に形成される隙間は、2.0mm以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の浄化フィルターにおいて、成形材料中にバインダー成分を含有させることができる。バインダー成分を含有させることにより、結合力を有した棒状体が得られる。バインダー成分としては、例えば、ベントナイト、ミラクレー、水簸粘土、木節粘土、蛙目粘土若しくは活性白土などの粘土鉱物、セメントなどの水硬性材料、又は、ナイロン樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。また、これらのうち、粘土鉱物は、天然鉱物から得られる無機多孔質材料に元来含まれるものをそのまま利用してもよい。本発明においては、比表面積の高い粘土鉱物をバインダー成分として用いることが好ましい。また、棒状体中(成形材料中)に含有されるバインダー成分の配合量は、例えば、固形分換算で、10〜80質量%の範囲内とすることができる。バインダー成分の配合量が10質量%未満の場合は、耐久性のある浄化フィルターが得られない場合があり、一方、80質量%を超える場合は、無機多孔質材料の機能が阻害される場合がある。
【0035】
本発明の浄化フィルターは、バインダー成分を含有させた棒状体を焼成固化することにより、これらを互いに固着して一体化させることができる。また、棒状体を金網などの通気性容器に充填することにより棒状体同士を一体化させることができる。勿論、この場合においても、棒状体を焼成固化させてもよい。さらには、棒状体の表面に酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂又はアクリル系樹脂などのエマルジョン接着剤などを塗布することで棒状体同士を一体化させてもよい。
【0036】
本発明の浄化フィルターは、その他にも、様々な機能性材料を棒状体に担持又は含有させることができる。例えば、棒状体の表面に納豆菌及び/又は土壌菌を担持させることで、これらが吸着したオイルを分解し、より長期間使用できる浄化フィルターを得ることが可能となる。また、棒状体の表面に酸化チタンを担持又は含有させることで、浄化フィルターに光触媒機能を付与させることも可能となる。また、本発明の浄化フィルターは、棒状体中にノルマルパラフィンを内包するマイクロカプセルを担持又は含有させていることが好ましい。このノルマルパラフィンを内包したマイクロカプセルは、固液相変化を利用した潜熱蓄熱機能を有するため、浄化フィルターの急激な温度変化を抑制することが可能となる。つまり、高温の汚染空気を浄化するのに用いる際、浄化フィルターの急激な発熱を抑えることができ、これにともない浄化フィルターを通過する汚染空気の温度を低い温度に制御し、浄化効率をより向上させることが可能となる。棒状部材中におけるノルマルパラフィンを内包するマイクロカプセルの含有量は、1.0〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の浄化フィルターは、棒状体中(成形材料中)に、無機多孔質材料又はバインダー成分、さらには上述した機能性材料以外にも、他の様々な添加剤を含有させてもよい。例えば、補強剤、分散剤、増量剤又は着色剤などを含有させることができる。
【0038】
本発明の浄化フィルターを製造する方法については、特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。第1の実施形態又は第2の実施形態の浄化フィルターは、例えば、上述したように、押出成形機を用いて棒状体を押出成形し、これを容器に充填させることにより製造することができる。この際、第1の実施形態における棒状体は連続で押出成形されたものであり、これを適度な通気性が得られるように折り曲げながら容器内に充填していき、浄化フィルターを作製する。また、第2の実施形態における棒状体は不連続にカットされたものであり、これを容器に適度な通気性が得られるように充填していき、浄化フィルターを作製する。これらの実施形態において、棒状体を容器に充填させた後、焼成することで、各棒状体は固化される。
【0039】
また、第3の実施形態の浄化フィルターは、例えば、以下のようにして製造することができる。例えば、図7に示すような、各棒状体2の少なくとも一方の端部において連結されて一体化されている構成のストライプ層3を積層させた構造の浄化フィルター1を製造する場合においては、以下の方法で製造することが可能である。先ず、無機多孔質材料とバインダー成分を含有する成形材料を、この構成のストライプ層が得られる金型を用いてプレス成形し、複数のストライプ層を作製する。また、ストライプ層は成形材料を平板状に成形した後、上記構成のストライプ層が得られるように打ち抜き加工することで作製してもよい。次に、得られたストライプ層を積層させた後、バインダー成分を固化させることで積層させたストライプ層同士を固着し、本実施形態の浄化フィルターを得る。
【0040】
また、例えば、図3〜図6に示すような、各棒状体2がその端部において一体的に連結されていない構成のストライプ層を積層させた構造の浄化フィルター1を製造する場合においては、以下の方法で製造することが可能である。先ず、無機多孔質材料とバインダー成分を含有する成形材料を棒状に押出成形し、所定寸法にカットして、複数の棒状体を作製する。次に、得られた複数の棒状体を配列させて複数のストライプ層を作製する。その後、得られたストライプ層を積層させた後、バインダー成分を固化させることで積層させたストライプ層同士を固着し、本実施形態の浄化フィルターを得る。
【0041】
これらの浄化フィルターの製造方法において、プレス成形、打ち抜き加工又は押出成形するための装置や方法などは、特に制限はなく、従来公知の装置や方法を適宜選択して使用することができる。また、押出成形により棒状体を得る場合に用いる押出金型の口金形状としては、所望とする棒状体の断面形状によって適宜調整できる。この場合、押出金型における口金の数は、1個でも複数でもよいが、特には、製造する浄化フィルターの、1層あたりに配列させる棒状体の本数を同時に押出成形できる数にすることもできる。
【0042】
また、第3の実施形態における、押出成形を用いた浄化フィルターの製造方法において、複数の棒状体を配列させてストライプ層を得る方法や、得られたストライプ層を積層させる方法は、特に制限はないが、例えば、以下の方法を用いることができる。例えば、上述した1層あたりに配列させる棒状体の本数だけ口金を有する押出金型を用いて棒状体を押出成形することで、これらが同一平面上に平行に配列されたストライプ層を得る。次に、得られたストライプ層を乗せた台を所定の角度回転させ、高さ調整する。その後、押出成形を再開し、先ほど得られたストライプ層の上に、新たなストライプ層を積層させる。この一連の作業を繰り返し、ストライプ層を積層させていく。この方法以外にも、1本ずつ押出成形された複数の棒状体を配列してストライプ層を形成し、得られたストライプ層を積層させてもよいが、この場合、生産性に劣る場合がある。なお、ストライプ層を所定数積層させた後に、必要により、各ストライプ層を密着させるための圧力を付与してもよい。
【0043】
また、本発明の浄化フィルターを製造する方法において、未固化状態の棒状体又はストライプ層を固化させる方法は、特に制限はなく、使用するバインダー成分の種類により適宜変更することができる。例えば、バインダー成分として、粘土鉱物を用いる場合は、棒状体を焼成して固化させたり、粘土鉱物が有する自硬性を利用して、棒状体を固化させたりすることができる。例えば、珪質頁岩と粘土鉱物を含有する成形材料を用いて成型した場合は、その後、温度700℃〜950℃の範囲で焼成することが好ましい。また、バインダー成分として水硬性材料を用いる場合は、棒状体を水和硬化するなどして固化させることができる。また、合成樹脂をバインダー成分として用いる場合は、棒状体を冷却するなどして固化させることができる。また、必要により、固化させる前に、乾燥工程を設けてもよい。
【0044】
なお、上述のように、各棒状体を固化させることで交叉する棒状体(又はストライプ層)同士を固着して一体化させる方法以外にも、固化させた棒状体(又はストライプ層)同士を、上述した接着剤を塗布して一体化させる方法を用いてもよい。
【0045】
上述した本発明の浄化フィルターを製造する方法は、上述した工程以外にも他の工程を含んでいてもよい。例えば、得られた浄化フィルターを所望の大きさとなるようにカットする工程、機能性材料を担持させる工程などを含むことができる。
【0046】
以上のように製造する本発明の浄化フィルターは、ハニカム構造のような複雑な成形体を成形するのではなく、単純な形状である棒状体を用いたり、単純な形状であるストライプ層を用いて作製するものであることから、生産性の向上や成形不良の減少を容易に実現でき、さらに、大掛かりな設備や緻密な成形条件や加工条件を必要としない。また、上述した口金を多数有する押出金型を用いるなど、成形方法を少し工夫するだけで、より高い生産性を実現することができ、これにより、低コスト性に優れた浄化フィルターを得ることが可能となる。
【0047】
本発明の浄化フィルターは、図9に示すように、例えば、調理時に発生する汚染空気を浄化するのに用いる厨房用排気浄化装置や、室内の汚染空気を浄化するのに用いる空気浄化装置などにおいて、通路10などの汚染空気が通過する場所に備えることで利用することができる。また、浄化フィルターの大きさは、浄化装置の浄化フィルターを備える通路の大きさにより適宜調整される。さらに、浄化フィルターには、通路の断面形状に合わせた枠材を側面に取り付けていてもよい。また、通路などに配置される浄化フィルターは、1つでも、2つ以上でもよく、要求される浄化性能などに併せて適宜変更できる。また、不織布からなる浄化フィルターなどの、上述した本発明の浄化フィルター以外の浄化フィルターを併用して備えてもよい。さらに、浄化装置に備えた本発明の浄化フィルターは、一定の汚れを吸着させた後、交換することが好ましい。さらに、第3の実施形態においては、通路に備える浄化フィルターの向きは、特に制限はないが、通気方向に対してストライプ層の面が正対するように配置することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0049】
<浄化フィルターの作製>
(実施例1)
成形材料として、北海道稚内層の珪質頁岩80質量%、粘土鉱物(比表面積40.8m2/g)20質量%を用いた。これらの成形材料を混合して湿式粉砕した後、これを真空押出成形機を用いて直径1mmの断面円形状の棒状体を連続で押出成形し、棒状体を折り返しながら、縦50mm×横50mm×長さ150mmの金網状の容器に充填した後、棒状体を850℃で焼成固化することにより、実施例1の浄化フィルターを作製した。なお、得られた実施例1の浄化フィルターにおける棒状体の充填量は、後述する方法で測定した差圧が42Paになるように調整されており、充填させた棒状体は130gであった。
【0050】
(実施例2)
成形材料として、北海道稚内層の珪質頁岩80質量%、粘土鉱物(比表面積40.8m2/g)20質量%を用いた。これらの成形材料を混合して湿式粉砕した後、これを真空押出成形機を用いて押出成形し、長さが30mm〜50mmになるようにカットした後、850℃で焼成固化することにより棒状体を作製した。得られた棒状体は、曲線形状或いは直線形状のものが混在しており、直径1mmの断面円形状をしている。これらの棒状体を縦50mm×横50mm×長さ150mmの金網状の容器に充填して実施例2の浄化フィルターを作製した。なお、得られた実施例2の浄化フィルターにおける棒状体の充填量は、後述する方法で測定した差圧が42Paになるように調整されており、充填した棒状体は128.7gであった。
【0051】
(実施例3)
成形材料として、北海道稚内層の粘土質珪質頁岩(粘土鉱物15質量%、珪質頁岩85質量%)70質量%、水簸粘土30質量%を用いた。これらの成形材料を混合して湿式粉砕した後、これをプレス成形機を用いて成形し、図7に示すような、ストライプ層の成形体を得た。ここで、プレス成形で用いた上下金型は、直径1mm、長さ45mmの円柱状の棒状体(ただし、両端に位置する棒状体は、厚さ1mm、幅2.5mm、長さ45mmの直方体状である。)が、1mmの隙間を介して平行に、等幅で24本配列され、さらに、各棒状体の両側が一体的に連結した構成のストライプ層の成形体(各棒状体を連結する部分は、厚さ1mm、幅2.5mm、長さ50mmの直方体状である。)が得られるものを使用した。次に、得られたストライプ層を、隣り合うストライプ層を構成する棒状体同士が垂直となるように150層積層させた後、これらを乾燥し、850℃で3時間焼成固化することにより棒状体同士を固着させて、本発明の実施例3である浄化フィルターを得た。
【0052】
なお、得られた実施例3の浄化フィルターは、全体の大きさが縦50mm・横50mm・長さ150mmである。得られた実施例3の浄化フィルターの外観を目視で確認したところ、欠損などの成形不良は生じていなかった。また、実施例3の浄化フィルターにおいて、後述する方法で、差圧を測定したところ42Paであった。
【0053】
<浄化フィルターの評価>
(測定装置)
ステンレス管からなる測定装置の通路(縦50mm×横50mm×長さ150mm)に実施例1の浄化フィルターを配置させた。また、測定装置の入口部には、標準ガス発生装置が配置されており、一定濃度に調整されたガス成分又はオイルミストが室内空気と混合されて入口部から導入されるようになっている。また、測定装置の出口部には、シロッコファン(最大風量150m3/hr)が配置されており、測定装置内の通気風量は1.0〜2.5m3/hr(浄化フィルター内の面風速0.1〜0.24m/s)に制御されている。また、実施例2、3の浄化フィルターについても、それぞれ、上記と同様にして、別々の測定装置内に配置させた。また、実施例1〜3の浄化フィルターの差圧は、測定装置に浄化フィルターを配置させた後、入口部の圧力と出口部の圧力をそれぞれマノメーターで測定し、得られた実測値から算出することにより得た。
【0054】
(浄化効率試験)
・ガス吸着試験(アンモニア)
実施例1〜3の浄化フィルターを配置させた各測定装置にそれぞれアンモニアを含む汚染空気を通過させた。測定装置の入口部におけるガス濃度(A1)と出口部におけるガス濃度(B1)を測定し、アンモニアの浄化効率((A1−B1)/A1)を算出した。なお、アンモニアの入口濃度は15〜20ppmとなるように調整した。測定は、低湿条件下(温度25℃、相対湿度20%、通気風量2.32m3/hr)と、高湿条件下(温度25℃、相対湿度70%、通気風量2.32m3/hr)で行った。低湿条件下において、実施例1〜3のいずれの浄化フィルターを配置させた場合でも、アンモニアの浄化効率は、5分後において67%以上であり、1時間後においても浄化効率は維持された。また、高湿条件下において、実施例1〜3のいずれの浄化フィルターを配置させた場合でも、アンモニアの浄化効率((A1−B1)/A1)は、5分後において70%以上であり、1時間後においても浄化効率は維持された。
【0055】
・ガス吸着試験(アセトアルデヒド)
実施例1〜3の浄化フィルターを配置させた各測定装置にそれぞれアセトアルデヒドを含む汚染空気を通過させた。測定装置の入口部におけるガス濃度(A2)と出口部におけるガス濃度(B2)を測定し、アセトアルデヒドの浄化効率((A2−B2)/A2)を算出した。なお、アセトアルデヒドの入口濃度は15〜20ppmとなるように調整した。測定は、低湿条件下(温度25℃、相対湿度20%、通気風量2.32m3/hr)と、高湿条件下(温度25℃、相対湿度70%、通気風量2.32m3/hr)で行った。低湿条件下において、実施例1〜3のいずれの浄化フィルターを配置させた場合でも、アセトアルデヒドの浄化効率((A2−B2)/A2)は、5分後において40%以上であり、1時間後においても浄化効率は維持された。また、高湿条件下において、実施例1〜3のいずれの浄化フィルターを配置させた場合でも、アセトアルデヒドの浄化効率((A2−B2)/A2)は、5分後において60%以上であり、1時間後においても浄化効率は維持された。
【0056】
・オイルミスト吸着試験
実施例1〜3の浄化フィルターを配置させた各測定装置の入口部と出口部の内壁面に、それぞれ、重量を測定しておいた濾紙を設置した。次に、100mlのビーカーに50mlのサラダ油を入れ、ホットスターラーにて160℃程度に加熱する。このとき発生するオイルミストを含む汚染空気を、実施例1〜3を配置させた各測定装置に風量2.2m3/hrで1時間通過させた。その後、入口部と出口部に設置した濾紙を取り外して、これらの重量を測定し、濾紙に付着したオイルミストの重量を算出した。測定装置の入口部におけるオイルミスト付着量(a1)と出口部におけるオイルミスト付着量(b1)とから、オイルミストの浄化効率((a1−b1)/a1)を算出した。試験は、温度25℃相対湿度30%の条件下で行った。実施例1〜3のいずれの浄化フィルターを配置させた場合でも、オイルミストの浄化効率((a1−b1)/a1)は、70%以上であった。
【0057】
・調理臭吸着試験
サンマを焼いて発生させた臭気を、ポンプを使ってガスバックに捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所、GCMS2010、DB−WAX、100−160℃(4℃/min))で臭気成分の定性分析を行った。さらに、ガスバックに捕集した臭気を、実施例1〜3の浄化フィルターにそれぞれ通過させた後、再度ガスバックに捕集し、上記と同様の方法で臭気成分の定性分析を行った。浄化フィルターを通過させる前に行った定性分析では、アルデヒド類が最も多く、次いで、有機酸やアルコール類、さらに脂肪酸由来の油分が検出されていたのに対し、実施例1〜3の各浄化フィルターを通過させた後に行った定性分析では、これらの臭気成分のいずれのピークも検出できなかった。
【0058】
・湿気吸着試験
実施例1〜3の浄化フィルターを、それぞれ、温度25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽に入れ48時間保持した後、質量を測定した。次に、これらを、温度25℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ24時間保持し、再度質量を測定した。測定した質量の増加率をそれぞれ算出したところ、実施例1〜3の浄化フィルターはいずれも10%以上の質量増加が見られた。
【0059】
(長期間の使用試験)
上記の、オイルミスト吸着試験後に、実施例1〜3の浄化フィルターを配置させた各測定装置の入口部と出口部の圧力をマノメーターで測定し、浄化フィルターの差圧をそれぞれ算出した。得られた実施例1〜3の各浄化フィルターの差圧はいずれも42Paであり、オイルミスト吸着試験前の各浄化フィルターの差圧と全く差はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の浄化フィルターの第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明の浄化フィルターの第2の実施形態を示す斜視図。
【図3】本発明の浄化フィルターの第3の実施形態を示す正面図。
【図4】本発明の浄化フィルターの第3の実施形態を示す部分平面図。
【図5】本発明の浄化フィルターの第3の実施形態の他の例を示す正面図。
【図6】本発明の浄化フィルターの第3の実施形態の他の例を示す部分平面図。
【図7】各棒状体の端部が連結されて一体化されている構成のストライプ層を説明する正面図。
【図8】突起を形成させたストライプ層を積層させた浄化フィルターを示す説明図。
【図9】本発明の浄化フィルターを浄化装置の通路に設置させた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0061】
1:浄化フィルター
2:棒状体
2A:突起
3:ストライプ層
4:容器
10:通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質材料を含む成形材料で形成された棒状体を集合してなる浄化フィルターであって、上記棒状体同士が交叉して接した状態の多数の接点を有し、かつ、これらの接点が3次元空間に点在し、各接点の周囲に隙間を形成してなる状態の3次元構造を有することを特徴とする浄化フィルター。
【請求項2】
棒状体が連続した直線部分を有する曲線形状をしており、該曲線が規則的に或いは不規則に折り返されて3次元構造を形成している請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項3】
棒状体が曲線或いは直線形状を有したものであり、該棒状体が不規則な状態に複数積み上げられて3次元構造を形成している請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項4】
棒状体が直線或いは曲線形状を有したものであり、該棒状体を同一平面上に互いに平行な隙間を介して複数配列して形成した構成を有するストライプ層を複数有し、かつ、該ストライプ層が、各ストライプ層を構成する棒状体同士が互いに交叉する状態に積み上げられて3次元構造を形成している請求項1に記載の浄化フィルター。
【請求項5】
各ストライプ層が、ストライプ層を構成する棒状体同士が、少なくとも一方の端部において連結されて一体化されている請求項4に記載の浄化フィルター。
【請求項6】
各ストライプ層の少なくとも一方の表面に突起が形成されており、ストライプ層同士が、その最表面間に隙間を形成させた状態で隣接している請求項4又は5に記載の浄化フィルター。
【請求項7】
各棒状体の太さが0.5mm〜10mmの範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項8】
無機多孔質材料が、その平均細孔半径が2〜8nmの範囲内で、その比表面積が80m2/g以上であり、かつ、その最高吸湿率が15質量%のものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項9】
無機多孔質材料が、珪質頁岩である請求項1〜8のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項10】
珪質頁岩が、その細孔内に、アルカリ性化合物を担持させたものである請求項9に記載の浄化フィルター。
【請求項11】
棒状体の表面に、納豆菌及び/又は土壌菌を担持させてなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項12】
棒状体の表面に、酸化チタンを担持させることで光触媒機能を付与させた請求項1〜11のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項13】
棒状体中に、ノルマルパラフィンを内包するマイクロカプセルを含有させた請求項1〜12のいずれか1項に記載の浄化フィルター。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の浄化フィルターを備えたことを特徴とする浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−213758(P2009−213758A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62443(P2008−62443)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(506106866)株式会社自然素材研究所 (21)
【出願人】(000237053)富士スレート株式会社 (10)
【Fターム(参考)】