説明

浄水カートリッジ及び浄水器

【課題】 濾材の抗菌機能が低下した場合でも、雑菌の繁殖を抑えることができる浄水カートリッジ及び浄水器を提供すること。
【解決手段】 浄水器31の容器32内に浄水カートリッジ38が収容配置されている。浄水カートリッジ38は、円筒状の濾過部41を備え、上部内側フィルタ45は下部内側フィルタ46よりも厚くなっていて、通水抵抗が高い。濾床の厚い下部濾過部47bと流動濾過床52を通過するため、含有塩素のほとんどが除去され、一方、サブ流路Sを流れる原水は、濾床の薄い上部濾過部47aを通過するため、メイン流路Mを通る原水と比較して、残留塩素の量が多い。このため、比較的塩素を含んだ濾過水となり、雑菌の繁殖を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばジュースディスペンサ等に用いられ、水道水等の原水を濾過する場合に使用される浄水カートリッジ及び浄水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浄水器としては、例えば、特許文献1において、図3に示すような構成のものが提案されている。すなわち、この従来構成においては、この浄水器11の容器12内に、浄水カートリッジ13が収容配置されている。浄水カートリッジ13は、濾過部14と、その濾過部14の上端部に取り付けられた上蓋15aと、濾過部14の下端部に取り付けられた下蓋15bとを備えている。そして、上蓋15aの上面の中心に出口21が一体に突出形成されている。濾過部14は、多孔質材料よりなる大径円筒状の外側フィルタ18と、その外側フィルタ18内に同一軸線上に配置された多孔質材料よりなる小径円筒状の内側フィルタ19とを備えている。外側フィルタ18と内側フィルタ19との間の円筒状の空隙には、粒状活性炭よりなる濾材20が充填されている。
【0003】
そして、この浄水器11の使用時には、水道水等の原水が容器12の流入口16から流入されて、容器12内に満たされる。この状態で、容器12の流出口17に接続された図示しない浄水を供給するための給水パイプ中の給水ポンプが起動されたりすると、容器12内の原水が外側フィルタ18、濾材20及び内側フィルタ19を通過して、内側フィルタ19内の連通路22に流される。これにともなって、容器12内に流入口16から原水が供給される。原水に対する濾過により、原水に含まれる異物や細菌等が除去される。その後、濾過された浄水が連通路22から出口21及び流出口17を介して、前記給水パイプ側に流出されて、利用されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−82067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の浄水カートリッジ13において、原水を前記濾材20を通過させて濾過するのみでは、原水中の殺菌用の塩素が除去されることにより、浄水カートリッジ13から下流側の配管内に雑菌が繁殖したりするおそれがある。
【0005】
このため、濾材20を構成する粒状活性炭として、銀等の抗菌コーティングを施したものを用いることも考えられる。このように構成した場合は、浄水中に抗菌コーティングが溶出して、雑菌の繁殖を抑える。しかし、原水濾過を続けると、抗菌コーティングが薄くなったりして、溶出量が少なくなって徐々に抗菌機能が低下し、雑菌の繁殖を抑えられなくなる。
【0006】
この発明の目的は、濾材の抗菌機能が低下した場合でも、雑菌の繁殖を抑えることができる浄水カートリッジ及び浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、抗菌濾過部を有し、原水を抗菌濾過処理をするメイン流路と、通常濾過部を有し、塩素が多く残留するように原水を濾過するサブ流路とを備え、前記サブ流路の通水抵抗をメイン流路の通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明においては、給水ポンプの起動時のように、大量の原水が流れるときに、その一部がサブ流路を通って濾過される。このため、比較的塩素含有量の多い濾過処理水が浄水器の下流側に供給され、抗菌濾過部の機能が低下したとしても、塩素により抗菌機能を維持できる。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記メイン流路及びサブ流路は、それぞれ対向するフィルタ間に濾材を設けて構成され、サブ流路のフィルタの通水抵抗をメイン流路のフィルタの通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする。
【0010】
従って、請求項2に記載の発明においては、濾材を保持するフィルタの通水抵抗を設定したのみの構成であるため、部品店数が増えることはなく、構成が簡単である。
請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の発明において、メイン流路の濾過能力をサブ流路の濾過能力よりも高くしたことを特徴とする。
【0011】
従って、請求項3に記載の発明においては、メイン流路の濾過能力が高いために、結果として十分な濾過能力を得ることができる。
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記メイン流路は、抗菌コーティングを施した粒状濾材を流動可能にした流動濾過部を有し、この流動濾過部を前記抗菌処理部としたことを特徴とする。
【0012】
従って、請求項4に記載の発明においては、濾過処理水に対して抗菌イオンを効果的に溶出させることができ、有効な抗菌機能を得ることができる。
請求項5に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、円筒状をなす外側フィルタと、その外側フィルタと同軸上に配置されるとともに、軸方向に隣接配置された第1,第2内側フィルタと、外側フィルタと両内側フィルタとの間に介在された濾材とを備え、前記第1フィルタの通水抵抗を第2フィルタの通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする。
【0013】
従って、請求項5に記載の発明においては、全体を円筒状に形成でき、浄水器の容器内に収容するのに都合がよい。
浄水器に係る請求項6に記載の発明においては、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の浄水カートリッジを容器内に収容して用いたことを特徴とする。
【0014】
従って、請求項6に記載の発明においては、請求項1〜5に記載の発明の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明においては、抗菌濾過部の機能が低下したとしても、有効な抗菌機能を維持でき、配管系を清潔に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を具体化した実施形態を図1及び図2について説明する。
浄水器31の容器32は有底円筒状に形成され、その上端開口部には蓋体33がシールリング34を介して止め具35により着脱可能に取り付けられている。前記容器32及び蓋体33は、ステンレススチール等の金属よりなる。蓋体33の頂壁の中心より偏倚した位置には、水道水等の原水を流入させるための円筒状の流入口36が配設されている。蓋体33の頂壁の中心には、濾過後の浄水を流出させるための円筒状の流出口37が配設されている。
【0017】
前記容器32と蓋体33との間には、浄水カートリッジ38がその周側部及び下部と容器32の内面との間に所定の空隙をおいた状態で着脱可能に収容配置されている。すなわち、浄水カートリッジ38の頂部の中心には円筒状の出口39が突設され、その外面にはネジ部40が形成されている。そして、容器32内に浄水カートリッジ38を挿入することにより、その浄水カートリッジ38の底部が容器32の内底部に当接して位置規制されるようになっている。また、この状態で容器32の上端開口部に蓋体33を閉鎖装着することにより、浄水カートリッジ38上の出口39がネジ部40を介して、蓋体33の流出口37のネジ部37aに螺合されて、出口39と流出口37とが接続されるようになっている。
【0018】
図1に示すように、前記浄水カートリッジ38は、円筒状の濾過部41と、その濾過部41の上端部に取り付けられた上蓋42と、濾過部41の下端部に取り付けられた下蓋43とを備えている。そして、上蓋42の上面の中心に前記出口39が一体に突出形成されている。濾過部41は、多孔質材料あるいは不織布よりなる大径円筒状の外側フィルタ44と、その外側フィルタ44内に同一軸線上に配置された多孔質材料あるいは不織布よりなる小径円筒状の上部内側フィルタ45及び下部内側フィルタ46とを備えている。
【0019】
外側フィルタ44と内側フィルタ45,46との間の円筒状の空隙には、粒状活性炭よりなる濾材47が充填されている。この粒状活性炭においては、全活性炭粒のうちの所定割合(例えば、10%)の活性炭粒が銀等の抗菌コーティングを有しており、濾材47中に雑菌が繁殖するのを抑制するようになっている。
【0020】
下部内側フィルタ46の上端には複数の小孔48を形成した中間板49が載置状態で配置されており、この中間板49の上面外周には前記上部内側フィルタ45が載置されている。
【0021】
そして、下部内側フィルタ46は例えば厚さ3mmで、上部内側フィルタ45は例えば厚さ5mmで、上部内側フィルタ45が厚くなっている。また、濾材47は、下部内側フィルタ46に対応する上部濾過部47aの濾床が厚く、上部内側フィルタ45に対応する下部濾過部47bの濾床が薄くなっている。そして、上部濾過部47aが厚くても、下部内側フィルタ46が薄いために、上部濾過部47aと比較して、下部濾過部47b側の通水抵抗が低い。前記下蓋43,下部内側フィルタ46及び中間板49により下部室50が形成され、前記上蓋42、上部内側フィルタ45及び中間板49により上部室51が形成されている。この上部室51内には、銀コーティングを施した粒状活性炭よりなる流動濾過床52が収容されており、この粒状濾材としての粒状活性炭は、水流により上部室51内を流動可能である。この流動濾過床52は、流動濾過部,抗菌濾過部及び抗菌処理部を構成する。
【0022】
そして、この実施形態においては、外側フィルタ44、上部濾過部47a、下部内側フィルタ46、下部室50、小孔48及び上部室51により、出口39に至るメイン流路Mが形成されている。また、外側フィルタ44、下部濾過部47b、上部内側フィルタ45及び上部室51により出口39に至るサブ流路Sが形成されている。従って、メイン流路Mの通水抵抗がサブ流路Sの通水抵抗よりも低い。
【0023】
前記上蓋42及び下蓋43には透孔61を有する筒状部63が一体形成され、両筒状部63間にはバイパス筒62が嵌合連結されている。
さて、この浄水器31の使用時には、水道水等の原水が容器32の流入口36から流入されて、容器32内に満たされる。この状態で、流出口37に接続された図示しない浄水を供給するための給水パイプ中の給水ポンプ(図示しない)が起動されると、その起動時には、配管内の水が給水ポンプに一時的に多量に吸引される。このため、原水がメイン流路M及びサブ流路Sの双方を介して流れる。メイン流路Mを流れる原水は、下部濾過部47bで濾過されるとともに、流動濾過床52で再度濾過されて、出口39及び流出口を介して、前記給水パイプ側に流出される。またサブ流路Sを流れる原水は、上部濾過部47aで濾過されて、出口39及び流出口から流出される。
【0024】
このとき、メイン流路Mを流れる原水は、濾床の厚い下部濾過部47bと流動濾過床52を通過するため、含有塩素のほとんどが除去され、しかも、流動濾過床52において、銀イオンを含む。このため、有効に抗菌作用を付加された濾過水となる。一方、サブ流路Sを流れる原水は、濾床の薄い上部濾過部47aを通過するため、メイン流路Mを通る原水と比較して、残留塩素の量が多い。このため、比較的塩素を含んだ濾過水となる。
【0025】
その後、給水ポンプが定常運転状態に移行すると、同給水ポンプの吸引圧力が低下するため、原水は通水抵抗の高いサブ流路S内をほとんど流れることなく、通水抵抗の低いメイン流路Mを通って濾過される。
【0026】
なお、流入口36からの原水の一部は、バイパス筒62を介してバイパスされて、容器32内に満たされる。従って、原水が逆方向の2方向から流れることになり、容器32内における原水の滞留を抑制できる。
【0027】
以上に述べたこの実施形態においては、以下の効果を発揮する。
・ 給水ポンプの起動時には、残留塩素を多く含んだ浄水がサブ流路Sを通って給水される。言い換えれば、給水ポンプが起動するごとに比較的多くの塩素が浄水器以降の処理水供給系統内を流れることになる。従って、流動濾過床52の銀コーティングが薄くなって、銀イオンの溶出量が減少したとしても、給水ポンプが起動するごとにサブ流路Sを介して供給される浄水の残留塩素により配管系の雑菌の繁殖を抑制できる。
【0028】
・ サブ流路Sを介して供給される残留塩素を多く含んだ浄水は給水ポンプの起動時のみに供給されるだけである。しかも、サブ流路Sにも濾材47の上部濾過部47aが存在するために、かなりの量の塩素が除去されている。従って、サブ流路Sを介して浄水が供給されて、それが飲料に供されても、カルキ臭を感じることはない。
【0029】
なお、この発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化できる。
・ 流動濾過床52を省略すること。この場合、濾材47の粒状活性炭として、銀コーティングを施した活性炭粒の比率を高くするのが好ましい。
【0030】
・ 流動濾過床52の代わりに、繊維状活性炭等、別の濾材を設けること。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明を具体化した浄水カートリッジの断面図。
【図2】同じく浄水器の断面図。
【図3】従来構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
31…浄水器、32…容器、38…浄水カートリッジ、41…濾過部、44…外側フィルタ、45…内側フィルタ、46…内側フィルタ、47…濾材、52…流動濾過床、M…メイン流路、S…サブ流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌濾過部を有し、原水を抗菌濾過処理をするメイン流路と、通常濾過部を有し、塩素が多く残留するように原水を濾過するサブ流路とを備え、
前記サブ流路の通水抵抗をメイン流路の通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記メイン流路及びサブ流路は、それぞれ対向するフィルタ間に濾材を設けて構成され、サブ流路のフィルタの通水抵抗をメイン流路のフィルタの通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項3】
メイン流路の濾過能力をサブ流路の濾過能力よりも高くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記メイン流路は、抗菌コーティングを施した粒状濾材を流動可能にした流動濾過部を有し、この流動濾過部を抗菌処理部としたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の浄水カートリッジ。
【請求項5】
円筒状をなす外側フィルタと、その外側フィルタと同軸上に配置されるとともに、軸方向に隣接配置された第1,第2内側フィルタと、外側フィルタと両内側フィルタとの間に介在された濾材とを備え、前記第1フィルタの通水抵抗を第2フィルタの通水抵抗よりも高くしたことを特徴とする請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の浄水カートリッジを容器内に収容して用いたことを特徴とする浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−212578(P2006−212578A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29473(P2005−29473)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(591024719)クリタック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】