説明

浄水器

【課題】確実に除菌を行うことができる浄水器を提供する。
【解決手段】浄水器1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置され、活性炭を含む吸着フィルター3と、同じくケーシング2内に配置され、吸着フィルター3を通過した水が流入する収容部材6と、収容部材6内に、拡散可能に収容された多数のヨウ素含有粒体9と、収容部材6から流出する水の流量を制限する流量制限手段8とを備えることを特徴とする浄水器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素を利用して除菌を行う浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素は、優れた殺菌作用を有し、しかも人体に対して比較的安全な物質であることが知られている。ヨウ素を利用して除菌を行う浄水器として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の浄水器は、ヨウ素含有樹脂層と活性炭セラミック層とが、上下方向に交互に密着状態で積み重ねられた多層構造(特許文献1の図1では6層構造)の濾過材料層を有する。ヨウ素含有樹脂層は、ヨウ素と陰イオン交換樹脂とをイオン結合させた化合物で構成されており、活性炭セラミック層は、活性炭をセラミックで固めた活性炭セラミックで構成されている。浄水器に導入された水は、濾過材料層を下から上に通過するようになっており、ヨウ素除菌樹脂層と活性炭セラミック層とを交互に通過する。ヨウ素含有樹脂層を通過する際に、細菌等が除菌され、活性炭セラミック層を通過する際に、化学物質等が吸着除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3029998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の浄水器の場合、水はヨウ素含有樹脂層の内部をほぼ直線状に通過する。そのため、ヨウ素含有樹脂層と水との接触時間が短く、除菌を十分に行えない場合がある。除菌を確実に行うには、ヨウ素含有樹脂層の数を増やすか、厚みを大きくすればよいが、この場合、浄水器が大型化すると共に、材料コストが高くなってしまう。
【0005】
また、浄水器を繰り返し使用した場合、水はヨウ素含有樹脂層中の同じ経路を通過するため、その経路においてヨウ素が局所的に除菌に消費される。そのため、ヨウ素含有樹脂層全体が持つ除菌能力を十分に活かすことができずに、早期に除菌性能が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、確実に除菌を行うことができる浄水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
第1の発明の浄水器は、ケーシングと、前記ケーシング内に配置され、活性炭を含む吸着フィルターと、同じく前記ケーシング内に配置され、前記吸着フィルターを通過した水が流入する収容部材と、前記収容部材内に、拡散可能に収容された多数のヨウ素含有粒体と、前記収容部材から流出する水の流量を制限する流量制限手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、ケーシング内に導入された水は、活性炭を含む吸着フィルターを通過して、活性炭により塩素等の化学物資や有機物が吸着除去されると共に、ゴミなどの異物が濾過除去された後、収容部材内に流入する。流量制限手段によって、収容部材から流出する流量は制限されているため、収容部材内で水の乱流が生じる。この乱流によって、収容部材内に収容された多数のヨウ素含有粒体は拡散する。そのため、収容部材内に流入した水は、ヨウ素含有粒体との衝突を繰り返して除菌された後、収容部材内から排出される。従って、ヨウ素含有粒体と水との接触時間が長いため、水を確実に除菌することができる。さらに、多数のヨウ素含有粒体は収容部材内でばらばらに移動できるため、浄水器を繰り返し使用したときに、全てのヨウ素含有粒体がほぼ均一に除菌に消費される。そのため、長期間にわたって除菌能力を発揮することができる。
【0009】
第2の発明の浄水器は、前記第1の発明において、前記流量制限手段が、前記ヨウ素含有粒体が通過不能なフィルターであることを特徴とする。この構成によると、流量制限手段は、収容部材内のヨウ素含有粒体が外部に流出するのを防止する役割を兼ねることができる。従って、浄水器の構成を簡易化できる。
【0010】
第3の発明の浄水器は、前記第1又は第2の発明において、前記収容部材が、上下方向に延在する筒状に形成されていると共に、前記吸着フィルターを通過した水が上側開口部から流入されて、下側開口部から流出されることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、収容部材は、筒状に形成されており、その上側開口部から水が流入し、且つ、その下側開口部から水が流出するようになっているため、水が流入する位置と流出する位置とは対向している。そのため、収容部材内で水の乱流を均一に生じさせやすい。
また、収容部材は、上側開口部から水が流入し、且つ、下側開口部から水が流出するようになっているため、上側開口部から流入した水は、収容部材内の底部分に集まるヨウ素含有粒体に衝突するため、ヨウ素含有粒体を拡散させやすい。
【0012】
第4の発明の浄水器は、前記第3の発明において、前記吸着フィルターは、上下方向に延在する筒状に形成されており、前記収容部材は、その上側開口部が前記吸着フィルターの上端よりも低い位置となるように、前記吸着フィルターの内周側に配置されていると共に、前記上側開口部から、前記吸着フィルターを外周側から内周側に通過した水が流入されることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、ケーシング内に導入された水は、筒状の吸着フィルターを外周側から内周側に通過する。水面の高さが収容部材の上端を超えた時点で、収容部材の上側開口部から収容部材内に水が流れ込む。流量制御手段によって、収容部材から流出する流量は制限されているため、収容部材内には水が溜まっていく。ある程度の水が溜まると、流量制御手段によって、収容部材から流出する流量は制限されていることにより、収容部材内で水の乱流が生じて、収容部材内のヨウ素含有粒体が拡散する。
【0014】
吸着フィルターは、上下方向に延在する筒状に形成されているため、水が通過する面積を広く確保しつつ、吸着フィルターをコンパクトにすることが可能である。従って、浄水器を小型化できる。また、収容部材は、吸着フィルターの内周側に配置されているため、吸着フィルターの外周側に配置される場合に比べて、浄水器を小型化できる。
【0015】
第5の発明の浄水器は、前記第1〜4の何れかの発明において、前記収容部材の水が流入する部分に、前記ヨウ素含有粒体が通過不能な通水キャップが取り付けられていることを特徴とする。この構成によると、通水キャップによって、収容部材内のヨウ素含有粒体が外部に流出するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る浄水器の使用前の状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浄水器の使用中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態の浄水器1は、水道の蛇口に取り付けられて使用される浄水器である。図1に示すように、浄水器1は、ケーシング2と、筒状の吸着フィルター3と、吸着フィルター3に取り付けられる上キャップ4及び下キャップ5と、吸着フィルター3の内周側に配置される中筒(収容部材)6と、中筒6に取り付けられる通水キャップ7及び流量制限フィルター(流量制限手段)8と、中筒6内に収容される多数のヨウ素含有粒体9とを備えている。図1及び図2は、水道の蛇口に取り付けられた状態での浄水器1を示している。図1及び図2中の上下方向を上下方向と定義して以下説明する。
【0018】
ケーシング2は、例えば合成樹脂で構成されており、上下両端が塞がれた略円筒状に形成されている。ケーシング2の周壁の下側部分には、導入孔2aが形成されており、この導入孔2aは、図示しない連結金具を介して水道の蛇口と連結されている。また、ケーシング2の底部の中央部には、浄化された水を排出するための排出孔2bが形成されている。また、ケーシング2は、吸着フィルター3やヨウ素含有粒体9の交換を行いやすいように、上下に分割可能に構成されている。
【0019】
吸着フィルター3は、円筒状に形成されており、筒軸方向が上下方向となる向きに、ケーシング2内に配置されている。吸着フィルター3の上端と下端には、不透水性の上キャップ4と下キャップ5がそれぞれ被せられている。下キャップ5の中央部には、下方に突出する円筒部5aが形成されており、この円筒部5aは、ケーシング2の排出孔2bに気密状態で着脱自在に内嵌されている。上キャップ4及び下キャップ5は、例えば合成樹脂で構成されている。
【0020】
吸着フィルター3は、粒状又は粉末状の活性炭を、多孔質を形成する高分子材料からなる結合材で固化した多孔質成形体で構成されている。多孔質を形成する高分子材料としては、例えば、分子量が数十万〜数百万程度の超高分子量ポリエチレンが用いられる。
【0021】
吸着フィルター3の作成方法としては、次のような方法が挙げられる。所定量の活性炭と結合材とを混合して、金型に充填し、200℃前後の温度にて所定時間加熱した後、圧縮してから、冷却することによって吸着フィルター3を作成することができる。加熱後の圧縮量を調整することによって、吸着フィルター3の密度を調整することができる。
【0022】
結合材として超高分子量ポリエチレンを用いる場合、超高分子量ポリエチレンとしては、平均粒径が約100μm、カサ密度が0.3g/cm未満であって、メルトインデックスが、1.1〜2.3g/10min(ASTMD1238、190℃、15kg Load)であるものが用いられる。なお、メルトインデックスとは、ポリマー溶融時の熱流動性を表す尺度であり、この値が小さいほど流動性が低いことを示す。結合材として上記範囲のメルトインデックスのものを用いることによって、吸着フィルター3の成形時に、溶融したポリマーが活性炭の細孔部を覆うのを防止することができ、しかも、ある程度の流動性を確保できるため、比較的少ない量の結合材であっても活性炭を固めることができる。
【0023】
また、活性炭は、60〜100メッシュパスの粒径のものが用いられる。粒径の異なる複数種の活性炭を使用してもよいが、粒径のほぼ揃った活性炭を使用してもよい。なお、メッシュとは、網目の大きさを表す尺度である。メッシュパスとは、そのメッシュを通過する全ての粒径の粒子を意味し、メッシュパスが大きいほど粒径が小さいことを示す。例えば、60メッシュパスとは、60メッシュ(1インチ(25.4mm)平方中に縦60本、横60本の網目)の篩を通過する全ての粒径の粒子を意味する。
【0024】
60メッシュパス未満の比較的大きい粒径の活性炭を用いると、結合材で活性炭を固めることが困難になることと、吸着フィルター3中の空隙が大きくなりすぎて活性炭に接触することなく吸着フィルター3を通過してしまう水が多くなる。一方、100メッシュパスよりも細かい、例えば300メッシュパス以上の粒径の活性炭を用いると、吸着フィルター3中の空隙部分が少なくなってしまい、十分な流量を確保できなくなる。従って、60〜100メッシュパスの粒径の活性炭を用いることにより、水を活性炭に確実に接触させることができるため、高い吸着除去性能を得ることができ、しかも、十分な流量を確保することができる。
【0025】
吸着フィルター3を構成する活性炭と結合材の配合比は、例えば、活性炭100質量部に対して結合材を10〜25質量部とすることが好ましい。活性炭100質量部に対して結合材が10質量部未満であると、結合材で活性炭を固化することが困難となる。一方、結合材が25質量部を超えると、結合材が活性炭の表面を覆う部分が多くなりすぎて、活性炭を水が通過しにくくなる。従って、活性炭と結合材との配合比を上記範囲内とすることにより、結合材で活性炭を確実に固化することができ、しかも、活性炭に水を確実に通過させることができる。
【0026】
また、活性炭と結合材の配合比が上記範囲内の場合、吸着フィルター3の密度は、例えば0.5〜0.65g/cmであって、吸着フィルター3の厚みは、例えば20〜40mmである。
【0027】
吸着フィルター3は、許容流量が、下側開口部6bに流量制限フィルター8を設けない状態で、ケーシング2内に導入される流量を上回るように形成されている。吸着フィルター3の許容流量は、吸着フィルター3の密度、厚み、上下方向長さ、活性炭と結合材の配合比等を調整することにより調整される。
【0028】
中筒6は、円筒状に形成されており、吸着フィルター3の内側に、筒軸方向が上下方向となる向きに配置されている。中筒6の下端部は、下キャップ5の円筒部5aの内周面に、気密状態で着脱自在に内嵌されている。中筒6の上下方向長さは、吸着フィルター3の上下方向長さよりも短く、中筒6の上端は、吸着フィルター3の上端よりも下方に位置している。また、中筒6の外径は、吸着フィルター3の内径よりも小さく、中筒6の外周面と吸着フィルター3の内周面との間には、隙間が形成されている。
【0029】
中筒6を構成する材料としては、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(PA)などの合成樹脂が挙げられる。ABS樹脂は、耐衝撃性と接着性が良好で、さらに、成形時の寸法安定性が良いため、特に好ましい。
【0030】
中筒6の上側開口部6aには、通水キャップ7が取り付けられている。通水キャップ7は、不織布又は織布で構成されている。通水キャップ7は、許容流量が、下側開口部6bに流量制限フィルター8を設けない状態で、下側開口部6bから流出する流量を上回るように形成されている。また、通水キャップ7に形成されている細孔の径は、後述するヨウ素含有粒体9の径よりも小さく、通水キャップ7はヨウ素含有粒体9が通過不能である。
【0031】
中筒6の下側開口部6bには、流量制限フィルター8が取り付けられている。流量制限フィルター8は、吸着フィルター3と同様の、活性炭を結合材で固化した多孔質成形体で構成されている。流量制限フィルター8は、許容流量が、下側開口部6bに流量制限フィルター8を設けない状態で、上側開口部6aから通水キャップ7を通って中筒6内に流入する流量を下回るように形成されている。これにより、下側開口部6bから流出する流量は、流量制限フィルター8によって制限されている。また、上記内容から当然であるが、流量制限フィルター8の許容流量は、通水キャップ7及び吸着フィルター3の許容流量を下回る。また、流量制限フィルター8に形成されている細孔の径は、後述するヨウ素含有粒体9の径よりも小さく、通水キャップ7はヨウ素含有粒体9が通過不能である。
【0032】
流量制限フィルター8を構成する多孔質成形体の密度、厚み、活性炭と結合材との配合比、活性炭の粒径などは、吸着フィルター3を構成する多孔質成形体と同じであってもよいが、異なっていてもよい。なお、流量制限フィルター8を構成する多孔質成形体と吸着フィルター3を構成する多孔質成形体とが同じ構成の場合でも、流量制限フィルター8を水が通過する面積は、吸着フィルター3を水が通過する面積よりも小さいため、流量制限フィルター8の許容流量は、吸着フィルター3の許容流量よりも小さくなる。
【0033】
中筒6内には、多数のヨウ素含有粒体9が拡散可能に収容されている。ヨウ素含有粒体9の平均粒径は、例えば4〜10mmである。中筒6内の空間(詳細には、通水キャップ7と流量制限フィルター8との間の空間)に対するヨウ素含有粒体9の体積比は、10〜70体積%が好ましく、20〜40体積%がより好ましい。
【0034】
ヨウ素含有粒体9としては、ヨウ素と陰イオン交換樹脂との化合物(例:商品名「アイオマック」、アルピコ株式会社製)を粉砕したもの、または、この粉砕物と熱可塑性樹脂とを混合した後、成形することによって形成された成形品が用いられる。ヨウ素と陰イオン交換樹脂との化合物とは、陰イオン交換樹脂にヨウ素をイオン結合させたものである。
【0035】
陰イオン交換樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。また、上記粉砕物と混合される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド樹脂などが用いられる。ヨウ素は高温に曝されると気化しやすいため、成形時の加熱によるヨウ素の損失を抑えるためには、融点が100〜140℃と比較的低いポリエチレンを用いることが特に好ましい。ヨウ素含有粒体9は、熱可塑性樹脂(陰イオン交換樹脂を含む)100質量部に対してヨウ素を10〜40質量部含有している。
【0036】
ヨウ素と陰イオン交換樹脂との化合物による除菌作用は以下の通りである。
細菌などの生物の細胞は、大量の核酸を内部に含み、表面近くには酸性アミノ酸を含んでいるため、細胞膜はマイナスに帯電している。一方、ヨウ素と陰イオン交換樹脂との化合物は、プラスに帯電している。細菌等が、ヨウ素と陰イオン交換樹脂との化合物に接近すると、ヨウ素イオンとイオン交換しようとする力が働くため、ヨウ素イオンが離脱して、ヨウ素が生成される。このヨウ素により、細菌等が酸化されて除菌される。従って、細菌等が存在しない限り、ヨウ素は過剰に離脱することがないため、長期間にわたって除菌性能を発揮することができる。
【0037】
次に、浄水器1の作用について説明する。
ケーシング2の導入孔2aからケーシング2内に導入された水は、吸着フィルター3を外周側から内周側に向かって通過する。このとき、ごみ等の異物が濾過除去されると共に、活性炭により塩素等の化学物質や微細な有機物が吸着除去される。
【0038】
水面の高さが中筒6の上端を上回ると、上側開口部6aから通水キャップ7を通って中筒6内に水が流れ込む。流量制限フィルター8によって、下側開口部6bから流出する流量は、上側開口部6aから流入する流量よりも少なくなるように制限されているため、中筒6内には水が溜まっていく。
【0039】
中筒6内にある程度の水が溜まると、流量制限フィルター8によって、下側開口部6bから流出する流量が制限されていることから、中筒6内において水の乱流が生じる。この乱流によって、中筒6内に収容された多数のヨウ素含有粒体9は拡散する。そのため、中筒6内に流入した水は、ヨウ素含有粒体9との衝突を繰り返して除菌された後、流量制限フィルター8を通って、下側開口部6b及び円筒部5aから外部に排出される。流量制限フィルター8を通過する際、ヨウ素含有粒体9から遊離したヨウ素が吸着される。
【0040】
以上説明した浄水器1によると、中筒6の下側開口部6bに流量制限フィルター8を設けて、下側開口部6bから流出する流量を制限していることにより、中筒6内で乱流を生じさせて、中筒6内でヨウ素含有粒体9を拡散させることができる。そのため、中筒6内に流入した水は、ヨウ素含有粒体9との衝突を繰り返して除菌された後、中筒6から流出する。従って、ヨウ素含有粒体9と水との接触時間が長いため、水を確実に除菌することができる。さらに、多数のヨウ素含有粒体9は中筒6内でばらばらに移動できるため、浄水器1を繰り返し使用したときに、全てのヨウ素含有粒体9がほぼ均一に除菌に消費される。そのため、長期間にわたって除菌能力を発揮することができる。
【0041】
また、中筒6は、上側開口部6aから水が流入し、且つ、下側開口部6bから水が流出するようになっているため、水が流入する位置と流出する位置とは対向している。そのため、中筒6内で水の乱流を均一に生じさせやすい。
【0042】
また、中筒6は、上側開口部6aから水が流入し、且つ、下側開口部6bから水が流出するようになっているため、上側開口部6aから流入した水は、中筒6内の底部分に集まるヨウ素含有粒体9に衝突するため、ヨウ素含有粒体9を拡散させやすい。
【0043】
また、中筒6の上側開口部6aに通水キャップ7が取り付けられ、また、下側開口部6bに流量制限フィルター8が取り付けられていることにより、中筒6に収容されたヨウ素含有粒体9が外部に流出されるのを防止することができる。
【0044】
また、中筒6内の空間に対するヨウ素含有粒体9の体積比が10体積%よりも少なすぎる場合、中筒6内に流入した水がヨウ素含有粒体9とほとんど衝突せずに中筒6内から流出してしまう。一方、ヨウ素含有粒体9の体積比が70体積%よりも多すぎると、乱流が生じにくいため、ヨウ素含有粒体9があまり移動しない。その結果、ヨウ素含有粒体9と水との接触時間が短くなると共に、特定のヨウ素含有粒体9のみが水と接触するため、ヨウ素含有粒体9全体の持つ除菌能力を十分に発揮できずに、早期に除菌性能が低下してしまう場合がある。従って、中筒6内の空間に対するヨウ素含有粒体9の体積比を、10〜70体積%、より好ましくは20〜40体積%とすることにより、長期間にわたって高い除菌性能を発揮することができる。
【0045】
また、吸着フィルター3は、上下方向に延在する筒状に形成されているため、水が通過する面積を広く確保しつつ、吸着フィルター3をコンパクトにすることが可能である。従って、浄水器1を小型化できる。さらに、中筒6は、吸着フィルター3の内周側に配置されているため、吸着フィルター3の外周側に配置される場合に比べて、浄水器1を小型化できる。
【0046】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0047】
1]ヨウ素含有粒体9は、前記実施形態のように、ヨウ素を化学的に樹脂と結合させたものに限定されず、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂等の多孔質を形成する高分子材料にヨウ素を担持させたものでもよい。また、例えば、粘土鉱物やその焼結体などのセラミックにヨウ素を担持させたものでもよい。
【0048】
2]前記実施形態では、中筒6は、筒軸方向に関して径が変化しない円筒形状に形成されているが、この形状に限定されるものではなく、例えば、下側に向かって径が小さくなる筒形状であってもよい。
【0049】
3]前記実施形態では、流量制限フィルター8は、吸着フィルター3と同様の、活性炭を結合材で固化した多孔質成形体で構成されているが、流量制限フィルター8は、下側開口部6bから流出する流量を制限でき、且つ、ヨウ素含有粒体9が通過できないものであれば、上記多孔質成形体に限定されない。例えば、不織布や織布で構成されていてもよい。
【0050】
4]前記実施形態では、中筒6から流出する流量を制限する流量制限手段として、下側開口部6bに流量制限フィルター8を設けているが、流量制限手段はこれに限定されるものではない。例えば、中筒6の下端部を先細り形状にして、下側開口部6bの径を小さくすることにより、下側開口部6bから流出する流量を制限してもよい。また、例えば、バルブを設けて中筒6から流出する流量を制限してもよい。これらの場合、中筒6内のヨウ素含有粒体9が、下側開口部6bから外部に流出するのを防止するために、下側開口部6bには網状物や不織布等を設けることが好ましい。なお、前記実施形態では、流量制限手段(流量制限フィルター8)が、中筒6内のヨウ素含有粒体9が外部に流出するのを防止する役割を兼ねているため、浄水器1の構成を簡易化できる。この点において前記実施形態の方が好ましい。
【0051】
5]前記実施形態では、通水キャップ7は、不織布又は織布で構成されているが、許容流量が流量制限フィルター8の許容流量よりも大きく、且つ、ヨウ素含有粒体9が通過できないものであれば、不織布又は織布に限定されない。例えば、網状物や、多数の貫通孔が形成された樹脂成形物で構成されていてもよい。
【0052】
6]吸着フィルター3には、活性炭以外に、水の汚れや塩素などを除去できるような添加物が含まれていてもよい。
【0053】
7]前記実施形態では、吸着フィルター3は、活性炭を、多孔質を形成する高分子材料からなる結合材で固化した多孔質成形体で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、活性炭をセラミックで固めたものであってもよい。
【0054】
8]吸着フィルター3の内周面又は外周面に、浄水効果を有するフィルターを取り付けてもよい。例えば、吸着フィルター3の外周面に、不織布又は織布からなる濾過フィルターを取り付けてもよい。濾過フィルターによって比較的大きいごみを除去することにより、吸着フィルター3の早期目詰まりを防止できる。
【0055】
9]前記実施形態では、吸着フィルター3の上端は、上キャップ4によって塞がれているが、この構成に限定されるものではない。例えば、吸着フィルター3は、上端がケーシング2の天井面まで達するように形成されていてもよい。また、例えば、吸着フィルター3の上端に、上キャップ4の代わりに、吸着フィルター3と同じ構成の多孔質成形体が取り付けられていてもよい。
【0056】
10]前記実施形態の浄水器1は、筒状の吸着フィルター3の内側に、ヨウ素含有粒体9が収容された中筒6が配置された構成となっているが、本発明を適用可能な浄水器の構成は、これに限定されるものではない。例えば、ケーシング2の内部が、平板状の吸着フィルターによって左右に仕切られ、一方の空間に中筒6が配置された構成であってもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、ヨウ素含有粒体9を収容する収容部材(中筒6)は、上から下に水が通過するようになっているが、浄水器の構成によっては、収容部材は、下から上に向かって水が通過するようになっていてもよい。また、左右方向に水が通過するようになっていてもよい。また、水が流入する位置と流出する位置とは必ずしも対向していなくてもよい。これらの場合であっても、収容部材から流出される流量が制限されていることにより、収容部材内で水の乱流を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 浄水器
2 ケーシング
2a 導入孔
2b 排出孔
3 吸着フィルター
4 上キャップ
5 下キャップ
6 中筒(収容部材)
6a 上側開口部
6b 下側開口部
7 通水キャップ
8 流量制限フィルター(流量制限手段)
9 ヨウ素含有粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、活性炭を含む吸着フィルターと、
同じく前記ケーシング内に配置され、前記吸着フィルターを通過した水が流入する収容部材と、
前記収容部材内に、拡散可能に収容された多数のヨウ素含有粒体と、
前記収容部材から流出する水の流量を制限する流量制限手段と、
を備えることを特徴とする浄水器。
【請求項2】
前記流量制限手段が、前記ヨウ素含有粒体が通過不能なフィルターであることを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
前記収容部材が、上下方向に延在する筒状に形成されていると共に、前記吸着フィルターを通過した水が上側開口部から流入されて、下側開口部から流出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記吸着フィルターは、上下方向に延在する筒状に形成されており、
前記収容部材は、その上側開口部が前記吸着フィルターの上端よりも低い位置となるように、前記吸着フィルターの内周側に配置されていると共に、前記上側開口部から、前記吸着フィルターを外周側から内周側に通過した水が流入されることを特徴とする請求項3に記載の浄水器。
【請求項5】
前記収容部材の水が流入する部分に、前記ヨウ素含有粒体が通過不能な通水キャップが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−131147(P2011−131147A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292023(P2009−292023)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】