説明

浄水器

【課題】紫外線によって水を効率良く殺菌することが可能な浄水器を提供する。
【解決手段】水を貯留する容器1と、この容器1内の水に紫外線を照射する紫外線発光ダイオード3と、容器1内に配置された撹拌子6を容器1の外部から磁力により回転させるマグネティックスターラー4を備える。紫外線発光ダイオード3は、容器1を載置可能な基台2にマグネティックスターラー4と共に設けられ、容器1の底部のうち、紫外線発光ダイオード3の発光面と重合する位置に、石英ガラス7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線によって飲料水などの被処理水を殺菌する浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水を殺菌する方法としては、塩素による殺菌やオゾンによる殺菌、加熱殺菌、紫外線殺菌などが知られている。このうち紫外線は、水中に照射しても薬剤のように残留することがなく、薬剤殺菌のように耐性菌を生じるようなこともなく、しかも、紫外線はウイルスの種類を選ばず、すなわち殆どすべての菌やウイルスの殺菌に有効である。
【0003】
紫外線によって飲料水を殺菌する技術としては、従来から、例えば下記の特許文献1〜3に記載のようなものが知られている。
【0004】
このうち特許文献1に開示された技術は、飲料水を供給するサーバーのタンク内に石英ガラス管で封印した紫外線ランプを配置し、前記タンク内の飲料水に紫外線ランプによる紫外線を照射しながら超音波によって撹拌するものである。
【0005】
また、特許文献2に開示された技術は、浄水カートリッジを備えるポットに、紫外線を発生するUV−LED(紫外線発光ダイオード)を含む発光体アセンブリを設け、前記UV−LEDで生じた紫外線を浄水カートリッジと吐水口との間の浄水通路内に照射するようにしたものである。
【0006】
また、特許文献3に開示された技術は、水を溜める容器にUV−LEDユニットを配置し、前記容器の内面に、鏡面状酸化チタン膜を形成した構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3099926号公報
【特許文献2】特開2010−214241号公報
【特許文献3】特開2011−16074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術のように紫外線ランプを用いた場合、紫外線ランプはサイズが大きいため、装置が大型化してしまう問題がある。また、超音波による撹拌では撹拌効果が小さく、しかも超音波による振動やキャビテーションが紫外線ランプや石英ガラス管に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術は、ポットに浄水カートリッジを通して、水道水などを給水する際に、浄水カートリッジによって水中のカルキなどの殺菌剤も除去されるため、ポット内で菌が繁殖するのを防止する手段としてUV−LEDを用いているが、このUV−LEDは、浄水通路内を通って吐水される水に紫外線を照射するものであるため、照射時間が短く、十分に殺菌することができないおそれがある。
【0010】
さらに、特許文献3に開示された技術によれば、紫外線が容器の内面に形成した鏡面状酸化チタン膜によって次々と反射されて、容器内の水に広範囲に紫外線が照射されるようにしたものであるが、鏡面状酸化チタン膜を形成したチタン容器は製造工程が複雑でコストが高くなってしまい、しかも紫外線の反射だけで容器内の水全体を殺菌することは困難である。
【0011】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、紫外線によって水を効率良く殺菌することが可能な浄水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る浄水器は、水を貯留する容器と、この容器内の水に紫外線を照射する紫外線発光ダイオードと、前記容器内に配置された撹拌子を容器の外部から磁力により回転させるマグネティックスターラーを備えるものである。
【0013】
上記構成によれば、紫外線の照射を紫外線発光ダイオードによって行うものであるため装置が大型化せず、また、紫外線が照射される容器内の水が、容器外部のマグネティックスターラーの磁力によって容器内で回転する撹拌子により撹拌されるので、紫外線による殺菌を効率良く行うことができ、しかも容器も大型化及び複雑化しない。
【0014】
請求項2の発明に係る浄水器は、請求項1に記載された構成において、紫外線発光ダイオードが、容器を載置可能な基台にマグネティックスターラーと共に設けられ、前記容器の底部のうち、前記紫外線発光ダイオードの発光面と重合する位置に石英ガラスが設けられたものである。
【0015】
上記構成によれば、紫外線発光ダイオードが容器外部の基台にマグネティックスターラーと共に設けられるので、容器が複雑化・大型化しない。そして石英ガラスは全波長の光に対して透明性が著しく高く、したがって前記基台に設けられた紫外線発光ダイオードからの紫外線は、前記基台に載置した容器の底部の石英ガラスを透過する際に殆ど吸収・減衰されることなく容器内に照射されるので、優れた殺菌効果を得ることができる。
【0016】
請求項3の発明に係る浄水器は、請求項1又は2に記載された構成において、容器が紫外線吸収性を有する合成樹脂材料、又は内面に紫外線吸収剤が塗布された合成樹脂材料からなるものである。
【0017】
上記構成によれば、容器内に照射されて水の殺菌に供され容器の内面に到達した紫外線は、容器の内面で吸収されるので、紫外線に対する耐性が高いものとなり、容器外部への紫外線の漏れも防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る浄水器によれば、容器内の水を、マグネティックスターラーによってこの容器内で回転される撹拌子によって撹拌しながら、紫外線発光ダイオードにより紫外線を照射するものであるため、水を効率良く殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る浄水器の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る浄水器のポット本体の底壁を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る浄水器の好ましい実施の形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0021】
この図1において、参照符号1はポット、参照符号2はこのポット1を載置可能な基台である。基台2には、複数の紫外線発光ダイオード(以下、UV−LEDという)3と、マグネティックスターラー4と、これらUV−LED3及びマグネティックスターラー4を駆動させる電源回路5が内蔵されている。
【0022】
ポット1は、請求項1に記載された容器に相当するものであって、非磁性の合成樹脂材からなる有底筒状のポット本体11と、その内部空間の上部に着脱可能に取り付けられた合成樹脂材からなる有底筒状の内筒12と、この内筒12の上部開口を開閉する蓋体13とを備える。ポット本体11の内面11aと、内筒12の外面12aは公知の紫外線吸収剤で塗装されている。ポット1は、例えば家庭用冷蔵庫の扉の内側のポケットに収納できる程度の比較的小型のものであって、片手でも取り扱いやすいように、ポット本体11の容積は例えば1リットル程度となっている。
【0023】
ポット1における内筒12の底部に開設された開口12bには、浄水カートリッジ14が着脱可能に取り付けられている。浄水カートリッジ14は、例えば多孔質プレートからなるケース14aに、中空糸膜フィルタや、あるいは活性炭などの充填材14bが充填されたものである。すなわち、内筒12内の注水槽1Aに注入された水道水などの処理対象水が、浄水カートリッジ14によって濾過されながらポット本体11内の紫外線照射槽1Bへ供給されるようになっている。また、ポット本体11の上端の一部は蓋体15によって開閉可能な吐水口1Cとなっている。
【0024】
ポット本体11の底壁上には、水中に浸漬された状態で撹拌子6が投入される。この撹拌子6は棒状の磁石の表面をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などによって被覆したものである。
【0025】
マグネティックスターラー4は基台2の上部に設置され、水平に配置した棒状の駆動磁石と、この駆動磁石を、鉛直軸を中心として回転させるモータが内蔵されており、駆動磁石の磁力が、基台2上に載置したポット1における非磁性のポット本体11の底壁を介して、棒状の磁石からなる撹拌子6に作用するようになっている。すなわちこのマグネティックスターラー4は、駆動磁石を回転させることによってポット本体11内の撹拌子6を回転させ、ポット本体11内に貯留された水を撹拌するものである。
【0026】
なお、撹拌子6は、回転による摩擦等によってポット本体11の底壁の上面をなるべく傷付けないように、角ばっていない形状とすることが好ましい。
【0027】
UV−LED3としては、20mAの電流によって波長280nm程度の電磁波(紫外線)を、出力1.17mW、発光面での発光強度18.32mJ/cmで発光するLEDチップが好適に用いられ、基台2の上面部にその直径方向へ適当な間隔で並んで複数取り付けられている。なお、UV−LED3の設置個数や設置位置は、ポット本体11内の紫外線照射槽1Bを通過する水量の95%以上に対して積算照射量が10mJ/cmを確保できるように設定される。
【0028】
図2に示すように、ポット本体11の底壁11bには、基台2の上面におけるUV−LED3の設置位置と対応して複数の円形窓部11cが設けられていて、各窓部11cには石英ガラス7が封着されている。なお、図1に示すようにポット1を基台2上に載置した場合、石英ガラス7がUV−LED3の発光面と重合する位置となるように、ポット1の底壁11bと基台2の上面には、凹凸嵌合等による不図示の位置決め手段が設けられている。
【0029】
UV−LED3は、その発光面から10mmの距離におけるスポット径が約15mmであり、このため、図1に示すポット1の載置状態において、前記発光面からの石英ガラス7の距離が10mmである場合、その外径φは15mm以上とする。
【0030】
基台2に設けられた電源回路5は、マグネティックスターラー4及びUV−LED3を駆動させるための電力を供給するもので、外部電源を用いても良いが、図示の形態による浄水器は小型であるため、電池によるものとすることができる。
【0031】
以上のような構成を備える本発明による浄水器は、まずポット1の蓋体13を開いて内筒12内の注水槽1Aに水道水などの処理対象水を注入する。注水槽1Aに注入された処理対象水は浄水カートリッジ14によって濾過され、菌類やカルキ、トリハロメタンなど不純物が除去されながらポット本体11内の紫外線照射槽1Bへ流入して貯留される。
【0032】
浄水カートリッジ14は、水中のカルキなどの殺菌剤も除去してしまうため、紫外線照射槽1Bに貯留された水には短期間で雑菌が繁殖するおそれがある。そこでポット1を基台2に載せて、電源回路5をONにすると、UV−LED3が通電されてその発光面から石英ガラス7を介してポット本体11の紫外線照射槽1B内の水に紫外線を照射すると共に、マグネティックスターラー4が駆動して撹拌子6が回転して前記水を撹拌する。
【0033】
詳しくは、石英ガラス7は紫外線の透過率が著しく高く、したがってUV−LED3の発光面から出射された紫外線は、石英ガラス7を透過する際に殆ど減衰されることなくポット本体11の紫外線照射槽1B内の水に照射される。また、紫外線照射槽1B内の水はマグネティックスターラー4によりポット本体11内で回転される撹拌子6によって撹拌されるので、UV−LED3からの紫外線照射位置を水が繰り返し通過することでまんべんなく殺菌される。したがって、UV−LED3及びマグネティックスターラー4を数十分間駆動させることで、十分に殺菌することができる。
【0034】
また、紫外線照射槽1Bに面するポット本体11の内面11a及び内筒12の外面12aには紫外線吸収剤が塗装されているため、紫外線照射槽1B内の水を透過してポット本体11の内面11a及び内筒12の外面12aに到達した紫外線は、塗布された紫外線吸収剤によって吸収される。このためポット1は紫外線に対する耐性が高く、しかもポット1の外部への紫外線の漏れも防止することができる。
【0035】
また、ポット1の下面から外部へ紫外線が漏洩するのを防止するために、UV−LED3の通電による殺菌中は、ポット1及び基台2を不図示の箱などに収容することが好ましいが、このような紫外線の漏洩を防止するために、例えば基台2の上部外周に不図示の筒状突縁を形成し、ポット1を基台2の上に載置したときにポット1(ポット本体11)の下部外周が前記筒状突縁によって包囲されるように構成しても良い。
【0036】
上述のようにして殺菌処理された水は、ポット1の吐水口1Cから任意のコップなどに注いで飲用に供することができる。このとき、ポット1は基台2と別体であるため、片手での取り扱いも容易に行うことができる。
【0037】
しかも、ポット1は、基台2と別体であることによって構造が複雑にならず、軽量であり、したがって内部の洗浄なども容易に行うことができる。
【0038】
また、UV−LED3は紫外線ランプに比較して十分に小さいものであると共に、紫外線照射槽1B内の水をマグネティックスターラー4により回転する撹拌子6により撹拌するものであることも、装置の小型・簡素化や、内部の洗浄の容易化に寄与する。
【符号の説明】
【0039】
1 ポット(容器)
1B 紫外線照射槽
11 ポット本体
12 内筒
14 浄水カートリッジ
2 基台
3 UV−LED(紫外線発光ダイオード)
4 マグネティックスターラー
5 電源回路
6 撹拌子
7 石英ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留する容器と、この容器内の水に紫外線を照射する紫外線発光ダイオードと、前記容器内に配置された撹拌子を容器の外部から磁力により回転させるマグネティックスターラーを備えることを特徴とする浄水器。
【請求項2】
紫外線発光ダイオードが、容器を載置可能な基台にマグネティックスターラーと共に設けられ、前記容器の底部のうち、前記紫外線発光ダイオードの発光面と重合する位置に石英ガラスが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
容器が紫外線吸収性を有する合成樹脂材料、又は内面に紫外線吸収剤が塗布された合成樹脂材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−94690(P2013−94690A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237025(P2011−237025)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】