説明

浄水装置および浄水用水栓

【課題】浄水器への加圧や雑菌侵入を防止できて、小型コンパクト化を図ることができる浄水装置を提供する。
【解決手段】本発明の浄水装置は、栓内原水経路21,22および栓内浄水経路23,24を有する浄水用水栓1と、浄水器6と、を備え、原水が栓内原水経路21,22を通って浄水器6に導かれ、浄水が栓内浄水経路23,24を通って吐出される。栓内原水経路21,22を開閉する元止め弁と、栓内浄水経路23,24を開閉する先止め弁とが設けられる。開閉操作部15の開閉操作によって、元止め弁および先止め弁が共に開かれる吐水状態と、元止め弁および先止め弁が共に閉じられる止水状態との間で切り換え可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道水等の原水を浄水器で浄化して吐出するようにした浄水装置および浄水用水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅において、キッチンの流し台には、水を供給する単水栓や、水およびお湯を供給する混合栓等を備えた給水装置が設けられているが、それ以外に浄水機能を備えた浄水装置が設けられるものがある。
【0003】
ビルトインタイプの浄水装置は、例えばシンクの下側に浄水器が設置されるとともに、シンクに臨むように浄水用水栓が取り付けられている。そして水道水等の原水が浄水器を通って浄化され、その浄水が浄水用水栓から吐出されるようになっている。
【0004】
このような浄水用水栓においては、例えばレバー操作やハンドル操作によって、吐水/止水を行っているが、この操作によって開閉される開閉弁は、使用時(吐水時)以外に、水道圧が浄水器に加わるのを防止するために、通常、浄水器の上流側に設けられている。
【0005】
ところが、浄水器の上流側に開閉弁を取り付ける場合、例えば止水状態が長く続くと、空気中の一般細菌や放線菌等の雑菌が吐水ノズルから浄水器内に侵入して増殖し、雑菌の侵入による悪影響、例えば水質を悪化させる等の不具合が発生する。
【0006】
そこで、下記特許文献1に示す浄水装置が提案されている。この浄水装置は、浄水器の入口部および出口部にそれぞれ設けられた電磁弁と、浄水用水栓に設けられた開閉スイッチと、開閉スイッチの押操作に応答して、電磁弁を開閉駆動する制御盤とを備え、開閉スイッチを押操作することによって、吐水/止水を行うようにしている。
【0007】
この浄水装置において、止水状態では、電磁弁によって浄水器の上流側が閉じられているため、水道水の水圧が浄水器内に加わることがなく、水道圧の悪影響を回避することができる。さらに止水状態では、電磁弁によって浄水器の下流側も閉じられているため、吐水ノズルから雑菌等が浄水器内に侵入するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−159967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の浄水装置においては、構造が複雑な電磁弁や、電磁弁を制御する制御盤の他、これらと開閉スイッチとを電気接続する信号線、電磁弁や制御盤に電力を供給する電源コード等、多くの複雑な部材を設置する必要があり、構造の複雑化および装置の大型化を来すおそれがある。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、浄水器に水道水等の水圧が加わることによる悪影響および浄水器への雑菌侵入による悪影響等を回避しつつ、構造の簡素化および小型化を図ることができる浄水装置および浄水用水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0012】
[1]栓内原水経路および栓内浄水経路を有する浄水用水栓と、内部を通過する水を浄化する浄水器と、前記栓内原水経路の出口および前記浄水器の入口間を連結する原水往き管と、前記浄水器の出口および前記栓内浄水経路の入口間を連結する浄水戻り管と、を備え、前記栓内原水経路にその入口から導入された原水が前記栓内原水経路および前記往き管を通って前記浄水器に導かれ、そこで浄化された浄水が前記浄水戻り管および前記栓内浄水経路を通って吐出されるようにした浄水装置であって、
前記浄水用水栓に前記栓内原水経路を開閉する元止め弁が設けられるとともに、
前記浄水用水栓に前記栓内浄水経路を開閉する先止め弁が設けられ、
前記浄水用水栓に前記元止め弁および前記先止め弁を開閉操作するための開閉操作部が設けられ、
前記開閉操作部の開閉操作によって、前記元止め弁および前記先止め弁が共に開かれて前記浄水用水栓から浄水が吐出される吐水状態と、前記元止め弁および前記先止め弁が共に閉じられて前記浄水用水栓から浄水が吐出されない止水状態との間で切り換え可能に構成されたことを特徴とする浄水装置。
【0013】
[2]前記吐水状態から前記止水状態に切り換える際に、前記元止め弁が閉じられた後、前記先止め弁が閉じられるようにした前項1に記載の浄水装置。
【0014】
[3]前記止水状態から前記吐水状態に切り換える際に、前記先止め弁が開かれた後、前記元止め弁が開かれるようにした前項1または2に記載の浄水装置。
【0015】
[4]前記元止め弁および前記先止め弁を構成する弁機構は、固定バルブと、その固定バルブの正面に接触した状態で前記開閉操作部の操作に連動して前記固定バルブに対し回転可能な回転バルブとを備え、
前記栓内原水経路は、その前半部分を構成する原水経路前半と、後半部分を構成する原水経路後半とを備え、前記原水経路前半の出口が前記固定バルブの正面に開口するとともに、前記原水経路後半の入口が前記固定バルブの正面に開口し、
前記栓内浄水経路は、その前半部分を構成する浄水経路前半と、後半部分を構成する浄水経路後半とを備え、前記浄水経路前半の出口が前記固定バルブの正面に開口するとともに、前記浄水経路後半の入口が前記固定バルブの正面に開口し、
前記回転バルブの前記固定バルブとの対向面には、その対向面側に開放された原水経路連通溝および浄水経路連通溝が形成され、
前記吐水状態では、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口が前記原水経路連通溝内にそれぞれ配置されて、前記原水経路前半および前記原水経路後半が前記原水経路連通溝を介して連通し、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半の入口が前記浄水経路連通溝内にそれぞれ配置されて、前記浄水経路前半および前記浄水経路後半が前記浄水経路連通溝を介して連通する態様に、前記回転バルブが前記固定バルブに対し回転操作される一方、
前記止水状態では、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口のうち少なくとも一方が前記原水経路連通溝内から逸脱して、前記原水経路前半および前記原水経路後半間が非道通状態となり、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半のうち少なくとも一方が前記浄水経路連通溝内から逸脱して、前記浄水経路前半および前記浄水経路後半間が非道通状態となる態様に、前記回転バルブが前記固定バルブに対し回転操作されるようにした前項1〜3のいずれか1項に記載の浄水装置。
【0016】
[5]前記吐水状態から前記止水状態に切り換える際、または前記止水状態から前記吐水状態に切り換える際に、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口のうち少なくとも一方が前記原水経路連通溝内から逸脱し、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半の入口が前記浄水経路連通溝内にそれぞれ配置される元閉じ先開き状態を経由するようにした前項4に記載の浄水装置。
【0017】
[6]栓内原水経路および栓内浄水経路を有し、前記栓内原水経路にその入口から導入された原水を出口から流出させて浄水器へと送り出すとともに、浄水器によって浄化された浄水を前記栓内浄水経路にその入口から導入させて出口から流出させて吐出するようにした浄水用水栓であって、
前記栓内原水経路を開閉する元止め弁と、
前記栓内浄水経路を開閉する先止め弁と、
前記元止め弁および前記先止め弁を開閉操作するための開閉操作部と、を備え、
前記開閉操作部の開閉操作によって、前記元止め弁および前記先止め弁が共に開かれて浄水が吐出される吐水状態と、前記元止め弁および前記先止め弁が共に閉じられて浄水が吐出されない止水状態との間で切り換え可能に構成されたことを特徴とする浄水用水栓。
【発明の効果】
【0018】
発明[1]の浄水装置によれば、浄水器の上流側および下流側に元止め弁および先止め弁を設け、止水時には、浄水器の上流側および下流側が閉じられるため、浄水器に水道圧が加わるのを防止できるとともに、浄水器に雑菌が侵入するのを防止することができる。さらに浄水用水栓に元止め弁および先止め弁を設けるものであるため、電磁弁等を浄水器周辺に設ける場合と比較して、設置部品数を削減できて、構造の簡素化および小型化を図ることができる。
【0019】
発明[2]の浄水装置によれば、止水する際に、浄水器の上流側が閉じられて、浄水器内の水圧が低減してから、下流側が閉じられるため、原水の水圧が浄水器に加わることがなく、その水圧による悪影響を回避することができる。
【0020】
発明[3]の浄水装置によれば、吐水する際に、浄水器の下流側が開いてから、上流側が開くため、上流側が開放された直後に浄水器内に原水の水圧が加わることがなく、その水圧による悪影響を回避することができる。
【0021】
発明[4][5]の浄水装置によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0022】
発明[6]の浄水用水栓によれば、上記と同様に、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はこの発明の実施形態である浄水装置が適用された流し台の給水設備を説明するための斜視図である。
【図2】図2は実施形態の給水設備に採用された浄水用水栓をその一部を切り欠いて示す側面図である。
【図3】図3は実施形態の浄水用水栓における内部経路を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は実施形態の浄水用水栓における弁機構の固定バルブを示す正面図である。
【図5】図5は実施形態の浄水用水栓における弁機構の回転バルブを示す正面断面図である。
【図6A】図6Aは実施形態における弁機構の止水状態を説明するための正面断面図である。
【図6B】図6Bは実施形態における弁機構の操作途中状態を説明するための正面断面図である。
【図6C】図6Cは実施形態における弁機構の吐水状態を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施形態である浄水装置が適用された流し台の給水設備を説明するための斜視図である。
【0025】
同図に示すように、本実施形態の給水設備は、ビルトイン型の浄水装置(浄水器)を備えるものであって、流し台のシンク周縁部に配置される浄水用水栓1および混合水栓5と、シンクの下側等に配置される浄水器6と、これらの部材等を配管接続する配管群とを基本的な構成要素として備えている。
【0026】
さらに混合水栓5には、給水管51および給湯管52がそれぞれ連結されるとともに、これらの給水管51および給湯管52が給水用水栓53および給湯用水栓54にそれぞれ連結されている。給水用水栓53には、外部の水道管等から原水としての水道水が供給され、その水道水が給水管51を介して混合水栓5に供給されるようになっている。
【0027】
また給湯用水栓54には、外部の給湯機等からお湯が供給され、そのお湯が給湯管52を介して混合水栓5に供給されるようになっている。
【0028】
そして混合水栓5のレバー55を操作することによって、水、お湯、これらの混合水を適宜、ノズル56から吐出できるようになっている。
【0029】
給水管51における給水用水栓53との接続部には、分岐水栓57が取り付けられており、後述するように、分岐水栓57で分岐された水道水が浄水用水栓1に供給されるようになっている。
【0030】
浄水器6は、縦筒型のカートリッジ式のものであり、内部に水浄化材として中空糸膜フィルター等の濾材が装填されている。
【0031】
また浄水器6の上端面には、入口62および出口63が設けられており、入口62から導入された水が内部の濾材中を通過することによって濾過されて、浄水となって出口63から流出されるようになっている。
【0032】
なお浄水器6の入口62および出口63は、いわゆるクイックジョイントによって構成されており、所定の管をワンタッチで着脱できるようになっている。
【0033】
図1,2に示すように、浄水用水栓1は、ボディ10と、浄水が吐出されるノズル14と、吐水および止水操作を行うハンドル15と、ボディ10内に組み込まれた弁機構2とを備えている。
【0034】
さらに浄水用水栓1におけるボディ10の下端には、原水入口管11、原水出口管12および浄水入口管13がそれぞれ連結されている。
【0035】
なお後に詳述するが、浄水用水栓1は、原水入口管11を介してボディ10内に導入された水が原水出口管12から流出されるようになっている。さらに浄水入口管13を介してボディ10内に導入された水がノズル14から流出されるようになっている。
【0036】
ハンドル15は、ボディ10に対し軸心回りに回転自在に取り付けられており、そのハンドル15を回転操作することによって、後述するように、ノズル14からの吐水および止水が行われるようになっている。
【0037】
なお、本明細書においては、浄水用水栓1を、ハンドル15側からハンドル14の軸心方向に沿って見た場合を正面視として説明する。
【0038】
弁機構2は、ボディ10内におけるハンドル15に対応する位置に組み込まれており、セラミックス製の固定バルブ3と、同じくセラミックス製の回転バルブ4とを備えている。
【0039】
固定バルブ3および回転バルブ4は、図4,5に示す正面視の状態で略円形に形成されており、その正面視の状態で、固定バルブ3は回転バルブ4に対して大きさが少し大きく形成されている。
【0040】
固定バルブ3は、その軸心をハンドル15の軸心に対し一致させた状態で、ボディ10に対し固定状態に取り付けられている。
【0041】
回転バルブ4は、その軸心をハンドル15および固定バルブ3の各軸心に対し一致させるとともに、固定バルブ3上に重ね合わせて配置された状態で、ボディ10に対し軸心回りに回転自在に、かつハンドル15に対し固定状態に取り付けられている。
【0042】
これにより、この回転バルブ4は、ハンドル15の回転操作に連動して軸心回りに回転するようになっている。つまり本実施形態の弁機構2は、電力で駆動する電磁弁等とは異なり、使用者の操作力で作動する機械的な機構によって構成されている。
【0043】
図4に示すように、固定バルブ3における中央の下側には、原水経路前半出口31が形成されるとともに、中心位置には、原水経路後半入口32がそれぞれ形成されている。さらに固定バルブ3における中央の上部両側には、浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34がそれぞれ形成されている。浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34は、周方向に並んで配置されており、互いに固定バルブ3の中心からの径方向の距離が等しく形成されている。
【0044】
図3の破線に示すように、ボディ10内には、原水経路前半出口31および原水入口管11間を連通接続する原水経路前半21が形成されるとともに、原水経路後半入口32および原水出口管12間を連通接続する原水経路後半22が形成されている。
【0045】
さらにボディ10内には、浄水経路前半出口33および浄水入口管13間を連通接続する浄水経路前半23が形成されるとともに、浄水経路後半入口34およびノズル14間を連通接続する浄水経路後半24が形成されている。
【0046】
図5に示すように、回転バルブ4における固定バルブ3との対向面(裏面)には、その対向面側に開放される溝によって構成される原水経路連通溝41および浄水経路連通溝43が設けられている。
【0047】
図6A〜Cに示すように、原水経路連通溝41は、中心位置から径方向に沿って連続して延びるように形成されており、中心に位置する内端側が、原水経路後半入口32に臨むように配置されている。
【0048】
さらに浄水経路連通溝43は、浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34に対応して、周方向に沿って連続して延びるように形成されている。
【0049】
本実施形態においては、既述したように、回転バルブ4は、固定バルブ3に対し回転自在に取り付けられており、固定バルブ3に対し、回転バルブ4の回転角度が異なる第1〜第3の3つの回転状態が実現できるようになっている。
【0050】
図6Aに示すように、第1の回転状態である止水状態では、回転バルブ4の原水経路連通溝41内に、固定バルブ3の原水経路後半入口32が配置されるものの、原水経路前半出口31が配置されない状態となっている。この状態では、原水経路前半出口31が回転バルブ4によって閉塞されるため、原水経路前半21と原水経路後半22とが遮断されて、原水経路前半21から原水経路後半22に水が流通できないようになっている。
【0051】
さらに同図に示す止水状態では、回転バルブ4の浄水経路連通溝43内に、固定バルブ3の浄水経路前半出口33が配置されるものの、浄水経路後半入口34が配置されない状態となっている。この状態では、浄水経路後半入口34が回転バルブ4によって閉塞されるため、浄水経路前半23と浄水経路後半24とが遮断されて、浄水経路前半23から浄水経路後半24に水が流通できないようになっている。
【0052】
また図6Bに示すように、第2の回転状態である操作途中状態(元閉じ先開き状態)では、回転バルブ4の原水経路連通溝41内に、固定バルブ3の原水経路後半入口32が配置されるものの、原水経路前半出口31が配置されない状態となっている。この状態では、上記と同様、原水経路前半出口31が回転バルブ4によって閉塞されるため、原水経路前半21と原水経路後半22とが遮断されて、原水経路前半21から原水経路後半22に水が流通できないようになっている。
【0053】
さらに同図に示す操作途中状態では、回転バルブ4の浄水経路連通溝43内に、固定バルブ3の浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34が共に配置された状態となっている。この状態では、浄水経路前半23と浄水経路後半24とが浄水経路連通溝43を介して連通されるため、浄水経路前半23から浄水経路連通溝43を介して浄水経路後半24に水が流通できるようになっている。
【0054】
また図6Cに示すように、第3の回転状態である吐水状態では、回転バルブ4の原水経路連通溝41内に、固定バルブ3の原水経路後半入口32および原水経路前半出口31が共に配置された状態となっている。この状態では、原水経路前半21と原水経路後半22とが原水経路連通溝41を介して連通されるため、原水経路前半21から原水経路連通溝41を介して原水経路後半22に水が流通できるようになっている。
【0055】
さらに同図に示す吐水状態では、回転バルブ4の浄水経路連通溝43内に、固定バルブ3の浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34が共に配置された状態となっている。この状態では、浄水経路前半23と浄水経路後半24とが浄水経路連通溝43を介して連通されるため、浄水経路前半23から浄水経路連通溝43を介して浄水経路後半24に水が流通できるようになっている。
【0056】
ここで本実施形態においては、原水経路前半21および原水経路後半22によって栓内原水経路が構成されるとともに、浄水経路前半23および浄水経路後半24によって栓内浄水経路が構成されている。
【0057】
さらに原水経路前半21における原水入口管11との連結部が、栓内原水経路の入口(原水経路入口)として構成されるとともに、原水経路後半22における原水出口管12との連結部が、栓内原水経路の出口(原水経路出口)として構成される。
【0058】
さらに浄水経路前半23における浄水入口管13との連結部が、栓内浄水経路の入口(浄水経路入口)として構成されるとともに、浄水経路後半24におけるノズル14との連結部が、栓内浄水経路の出口(浄水経路出口)として構成されている。
【0059】
また本実施形態においては、固定バルブ3および回転バルブ4等を含む弁機構2が、栓内原水経路を開閉する元止め弁として機能するとともに、栓内浄水経路を開閉する先止め弁として機能する。
【0060】
図1に示すように、浄水用水栓1の原水入口管11には、フレキシブルチューブによって構成される分岐給水管71を介して、上記分岐水栓57に連結されている。従って、給水用水栓53から供給される水道水が、給水管51、分岐水栓57および分岐給水管71を介して、原水入口管11に導入されるようになっている。
【0061】
さらに原水出口管12には、フレキシブルチューブによって構成される原水往き管72を介して、上記浄水器6の入口62に連結されている。そして後述するように、原水出口管12から導出される水道水が、原水往き管72を介して浄水器6に導入されるようになっている。
【0062】
さらに浄水入口管13には、フレキシブルチューブによって構成される浄水戻り管73を介して、浄水器6の出口63に連結されている。従って、浄水器6から流出される浄水が、浄水戻り管73を介して、浄水入口管13に導入されるようになっている。
【0063】
以上のように構成された給水設備の浄水装置において、図6Aに示す止水状態では、原水経路前半21および原水経路後半22間が非導通状態で、浄水経路前半23および浄水経路後半24間も非道通状態となっているため、ノズル14から浄水が吐出されることはない。
【0064】
そしてこの止水状態からハンドル15を回転操作して、図6Cに示す吐水状態に切り換えると、既述したように原水経路前半21および原水経路後半22間が導通されるとともに、浄水経路前半23および浄水経路後半24間が導通されるため、水道水が浄水器6を通って濾過されて、その濾過水(浄水)がノズル14から吐出される。すなわちこの吐水状態において、給水用水栓53から給水管51に供給される水道水は、分岐水栓57および分岐給水管71を通って、浄水用水栓1の原水入口管11に導入される。原水入口管11に導入された水道水は、原水経路前半21、原水経路連通溝41および原水経路後半22を通って、原水出口管12から流出される。原水出口管12から流出された水道水は、原水往き管72を通って、浄水器6に導入されて濾過される。浄水器6で濾過された浄水は、浄水戻り管73を通って、浄水入口管13に導入される。浄水入口管13に導入された浄水は、浄水経路前半23、浄水経路連通溝43および浄水経路後半24を通って、ノズル14から吐出される。
【0065】
さらに図6Aの止水状態から図6Cの吐水状態に切り換える際には、図6Bの操作途中状態を経由してから、図6Cの吐水状態となる。図6Bの操作途中状態では、原水経路前半21および原水経路後半22間が非道通状態であるものの、浄水経路前半23および浄水経路後半24間は導通状態となっている。つまり止水状態から吐水状態に切り換える際には、図6Bに示すように浄水器6の下流側に位置する浄水経路23,24が開放してから、原水経路21,22が開放される。このため、以下に説明するように、水道水による高い水圧が瞬間的に浄水器6に加わるのを防止でき、その水圧による悪影響を回避することができる。
【0066】
すなわち仮に、吐水状態に切り換える際に、浄水器6の上流側を先に開放してから、下流側を開放したり、あるいは浄水器6の上流側および下流側を同時に開放するようにすると、上流側を開放した直後は、下流側が閉塞されているため、浄水器6に水道水の高い水圧が加わってしまうことになる。
【0067】
そこで本実施形態のように、浄水器6の下流側を先に開放しておくことによって、上流側を開放した直後であっても、高い水圧が浄水器6に加わるのを防止することができる。
【0068】
一方、図6Cに示す吐水状態からハンドル15を回転操作して、図6Aに示す止水状態に切り換える場合には、その操作途中において、図6Bに示す操作途中状態を経由してから、図6Aに示す止水状態となる。このため、吐水状態から止水状態に切り換える際には、図6Bに示すように浄水器6の上流側に位置する原水経路21,22が先に遮断された後、図6Aに示すように浄水器6の下流側に位置する浄水経路23,24が遮断されて、浄水の供給が停止するようになっている。
【0069】
このように先に浄水器6の上流側に位置する原水経路21,22が閉じられた後、下流側に位置する浄水経路23,24が閉じられるため、浄水器6内における水道水の圧力が低減した後、浄水器6の下流側が閉じられる。従って止水状態で、水道水の水圧が浄水器6に加わることがなく、その水圧による悪影響を回避することができる。
【0070】
その上さらに、止水状態に切り換える際には、浄水器6の上流側が先に閉じられるため、ウォーターハンマーによる高圧が浄水器6に加わることもない。
【0071】
また止水状態に切り換えた際には、浄水器6の下流側も閉じられるため、浄水器6内の残留圧力によって、ノズル14から浄水が滴り落ちるような不具合も確実に防止することができる。
【0072】
さらにこの止水状態においては、浄水器6の下流側に位置する浄水経路23,24が閉じられているため、長時間放置しておいたとしても、ノズル14から侵入する雑菌が浄水器6内で増殖することがなく、雑菌増殖による不具合、例えば水質の悪化を確実に防止することができる。
【0073】
また本実施形態においては、浄水器6の上流側および下流側を開閉するための弁機構2を浄水用水栓1の内部に組み込んでいるため、これらの開閉弁を浄水用水栓1の外部、例えば浄水器6の出入口部に設ける場合と比較して、浄水装置全体の構成が簡素化されて、小型コンパクト化を図ることができる。
【0074】
さらに本実施形態では、ハンドル操作によって機械的に弁機構2を作動させるものであるため、構造が複雑な電磁弁等を用いる場合と比較して、制御盤、信号線、電源コード等を設置する必要がなく、その分、構造が簡素化されて、小型コンパクト化をより一層確実に図ることができる。
【0075】
なお、上記実施形態においては、開閉操作部を回転ハンドルによって構成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、開閉操作部を回転レバー等によって構成するようにしても良い。
【0076】
また上記実施形態では、図6Aの止水状態において、原水経路連通溝41内に原水経路前半出口31だけが配置されないようにしているが、それだけに限られず、本実施形態においては、止水状態において、原水経路連通溝41内に原水経路前半出口31および原水経路後半入口32の双方が配置されないようにしても良いし、原水経路連通溝41内に原水経路後半入口32だけが配置されないようにしてもよい。
【0077】
さらに、図6Aの止水状態において、浄水経路連通溝43内に浄水経路後半入口34だけが配置されないようにしているが、それだけに限られず、本実施形態においては、止水状態において、浄水経路連通溝43内に浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34の双方が配置されないようにしても良いし、浄水経路連通溝43内に浄水経路前半出口33だけが配置されないようにしてもよい。
【0078】
また上記実施形態では、図6Bの元止め先開き状態において、原水経路連通溝41内に原水経路前半出口31だけが配置されないようにしているが、それだけに限られず、本実施形態においては、元止め先開き状態において、原水経路連通溝41内に原水経路前半出口31および原水経路後半入口32の双方が配置されないようにしても良いし、原水経路連通溝41内に原水経路後半入口32だけが配置されないようにしてもよい。
【0079】
また言うまでもなく、固定バルブ3に設けられる原水経路前半出口31,原水経路後半入口32,浄水経路前半出口33および浄水経路後半入口34の大きさ、形状、位置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、どのように設定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明の浄水装置は、例えば一般家屋におけるキッチンの流し台等に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:浄水用水栓
15:ハンドル(開閉操作部)
2:弁機構
21:原水経路前半
22:原水経路後半
23:浄水経路前半
24:浄水経路後半
3:固定バルブ
31:原水経路前半出口
32:原水経路後半入口
33:浄水経路前半出口
34:浄水経路後半入口
4:回転バルブ
41:原水経路連通溝
43:浄水経路連通溝
6:浄水器
62:入口
63:出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栓内原水経路および栓内浄水経路を有する浄水用水栓と、内部を通過する水を浄化する浄水器と、前記栓内原水経路の出口および前記浄水器の入口間を連結する原水往き管と、前記浄水器の出口および前記栓内浄水経路の入口間を連結する浄水戻り管と、を備え、前記栓内原水経路にその入口から導入された原水が前記栓内原水経路および前記往き管を通って前記浄水器に導かれ、そこで浄化された浄水が前記浄水戻り管および前記栓内浄水経路を通って吐出されるようにした浄水装置であって、
前記浄水用水栓に前記栓内原水経路を開閉する元止め弁が設けられるとともに、
前記浄水用水栓に前記栓内浄水経路を開閉する先止め弁が設けられ、
前記浄水用水栓に前記元止め弁および前記先止め弁を開閉操作するための開閉操作部が設けられ、
前記開閉操作部の開閉操作によって、前記元止め弁および前記先止め弁が共に開かれて前記浄水用水栓から浄水が吐出される吐水状態と、前記元止め弁および前記先止め弁が共に閉じられて前記浄水用水栓から浄水が吐出されない止水状態との間で切り換え可能に構成されたことを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記吐水状態から前記止水状態に切り換える際に、前記元止め弁が閉じられた後、前記先止め弁が閉じられるようにした請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
前記止水状態から前記吐水状態に切り換える際に、前記先止め弁が開かれた後、前記元止め弁が開かれるようにした請求項1または2に記載の浄水装置。
【請求項4】
前記元止め弁および前記先止め弁を構成する弁機構は、固定バルブと、その固定バルブの正面に接触した状態で前記開閉操作部の操作に連動して前記固定バルブに対し回転可能な回転バルブとを備え、
前記栓内原水経路は、その前半部分を構成する原水経路前半と、後半部分を構成する原水経路後半とを備え、前記原水経路前半の出口が前記固定バルブの正面に開口するとともに、前記原水経路後半の入口が前記固定バルブの正面に開口し、
前記栓内浄水経路は、その前半部分を構成する浄水経路前半と、後半部分を構成する浄水経路後半とを備え、前記浄水経路前半の出口が前記固定バルブの正面に開口するとともに、前記浄水経路後半の入口が前記固定バルブの正面に開口し、
前記回転バルブの前記固定バルブとの対向面には、その対向面側に開放された原水経路連通溝および浄水経路連通溝が形成され、
前記吐水状態では、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口が前記原水経路連通溝内にそれぞれ配置されて、前記原水経路前半および前記原水経路後半が前記原水経路連通溝を介して連通し、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半の入口が前記浄水経路連通溝内にそれぞれ配置されて、前記浄水経路前半および前記浄水経路後半が前記浄水経路連通溝を介して連通する態様に、前記回転バルブが前記固定バルブに対し回転操作される一方、
前記止水状態では、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口のうち少なくとも一方が前記原水経路連通溝内から逸脱して、前記原水経路前半および前記原水経路後半間が非道通状態となり、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半のうち少なくとも一方が前記浄水経路連通溝内から逸脱して、前記浄水経路前半および前記浄水経路後半間が非道通状態となる態様に、前記回転バルブが前記固定バルブに対し回転操作されるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の浄水装置。
【請求項5】
前記吐水状態から前記止水状態に切り換える際、または前記止水状態から前記吐水状態に切り換える際に、前記原水経路前半の出口および前記原水経路後半の入口のうち少なくとも一方が前記原水経路連通溝内から逸脱し、かつ前記浄水経路前半の出口および前記浄水経路後半の入口が前記浄水経路連通溝内にそれぞれ配置される元閉じ先開き状態を経由するようにした請求項4に記載の浄水装置。
【請求項6】
栓内原水経路および栓内浄水経路を有し、前記栓内原水経路にその入口から導入された原水を出口から流出させて浄水器へと送り出すとともに、浄水器によって浄化された浄水を前記栓内浄水経路にその入口から導入させて出口から流出させて吐出するようにした浄水用水栓であって、
前記栓内原水経路を開閉する元止め弁と、
前記栓内浄水経路を開閉する先止め弁と、
前記元止め弁および前記先止め弁を開閉操作するための開閉操作部と、を備え、
前記開閉操作部の開閉操作によって、前記元止め弁および前記先止め弁が共に開かれて浄水が吐出される吐水状態と、前記元止め弁および前記先止め弁が共に閉じられて浄水が吐出されない止水状態との間で切り換え可能に構成されたことを特徴とする浄水用水栓。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2013−99722(P2013−99722A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245210(P2011−245210)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000137982)株式会社メイスイ (5)
【Fターム(参考)】