説明

浄水装置

【課題】小型化が可能であり且つ構造を簡素化しうる浄水装置の提供。
【解決手段】浄水装置2は、液体を透過させうる透過ユニット4と、ボディ6とを備える。透過ユニット4は、螺旋状隙間S1を形成しつつ螺旋状に配置された流路形成体8と、流路形成体8を螺旋状に保持しつつ螺旋状隙間S1を確保しているガイド部材10とを有する。ボディ6は、流入口x1と、流出口y1と、ろ過液流出口z1とを有する。流路形成体8は、その中空部である流路r1と、この流路r1に連通する流路導入口x2と、この流路r1に連通する流路排出口y2と、この流路r1の壁面の少なくとも一部を形成している膜部材m1とを有する。膜部材m1の少なくとも一部は透過膜である。流路r1内に流れ込んだ原液WGは、上記透過膜での透過を経てろ過液流出口z1から流出する透過液体WRと、流出口y1から排出される濃縮液体WCとに分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水源から取得された水は、複数段階のろ過を経て、浄化される。この複数段階のろ過は、プレろ過と本ろ過とに大別される。
【0003】
プレろ過では、比較的大きな不純物が除去される。このプレろ過では、通常、造核剤が用いられる。造核剤は、水溶液中に含まれる不純物及び有害物質を大粒子化する。例えば造核剤は、重金属イオン等の電荷を帯びた物質を大粒子化する。大粒子化された物質は、プレろ過において除去される。このプレろ過は、活性汚泥法で処理された水にも適用される。プレろ過では、造核又は活性汚泥法で生じるフロックが除去される。通常、プレろ過で除去が必要とされる物質の大きさは20μm以上であり、20μm未満の大きさの物質が同時に除去されてもよい。
【0004】
一方、本ろ過では、より細かい不純物が取り除かれる。典型的には、本ろ過では、逆浸透膜(RO膜)、限外ろ過膜(UF膜)及び/又は精密ろ過膜(MF膜)が用いられる。
【0005】
逆浸透膜(RO膜)の使用では、浸透圧より大きな圧力が加えられる。この圧力により、水分子のみが、逆浸透膜(RO膜)を透過し、濃厚溶液側から希薄溶液側に移行する。この逆浸透膜(RO膜)では、イオン類、低分子化合物等が分離される。
【0006】
限外ろ過膜(UF膜)は、0.001μm以上0.01μm以下程度の孔径を有している。例えば、ウイルス、酵素、高分子化合物等が、限外ろ過膜(UF膜)によって分離されうる。また、クリプトスポリジウム、細菌等も分離されうる。
【0007】
精密ろ過膜(MF膜)は、0.1μm以上数μm以下程度の孔径を有している。例えば、コロイド粒子、懸濁質等が、精密ろ過膜(MF膜)によって分離されうる。
【0008】
水道水用のろ過では、主として、限外ろ過膜(UF膜)及び精密ろ過膜(MF膜)が用いられている。逆浸透膜(RO膜)は、海水淡水化用途をはじめ、超純水、工業用水等の製造に用いられている。
【0009】
これらのろ過膜を用いた浄水装置が知られている。特開平11−207156号公報は、集水管の周りに膜ユニットを有し、この膜ユニットの外側に外装体を形成してなる流体分離素子を開示する。流体分離素子の少なくとも一端部に、テレスコープ防止板が着脱自在に装着されている。上記膜ユニットは、分離膜、透過液流路材及び原液流路材を含む。この膜ユニットは、集水管の周りにスパイラルに巻かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−207156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
浄水装置は、デッドエンド型とクロスフロー型とに大別される。デッドエンド型の場合、処理水の全量を膜に透過させるため、ろ過膜の詰まりが発生しやすい。このため、ろ過膜の清掃又は交換を頻繁に行う必要が生じる。クロスフロー型の浄水装置では、このような問題が抑制される。
【0012】
特開平11−207156号公報は、クロスフロー型の浄水装置を開示する。この特開平11−207156号公報では、液体の流路が、透過液流路材及び原液流路材を用いて形成されている。よって、構造が複雑であり、且つ、材料コスト及び製造コストが高い。また、膜ユニットの長手方向の両端部において、透過液流路及び原液流路が開放されているので、透過液と原液とが混合しやすい。また、テレスコープ板、金属バネ17(図5参照)、アジャスターボルト18(図6参照)などを用いた場合、構造はより複雑となり、製造コストが上昇する。また、これらテレスコープ板、金属バネ又はアジャスターボルトの組み付けの不具合により、透過液と原液との混合が抑制できない場合が生じうる。
【0013】
本発明の目的は、小型化が可能であり且つ構造を簡素化しうる浄水装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る浄水装置は、液体を透過させうる透過ユニットと、この透過ユニットを収容しうるボディとを備えている。上記透過ユニットは、螺旋状隙間を形成しつつ螺旋状に配置された流路形成体と、上記流路形成体を螺旋状に保持しつつ上記螺旋状隙間を確保しているガイド部材とを有している。上記ボディは、流入口と、流出口と、ろ過液流出口とを有している。上記流路形成体は、その中空部である流路と、この流路に連通する流路導入口と、この流路に連通する流路排出口と、この流路の壁面の少なくとも一部を形成している膜部材とを有している。上記膜部材の少なくとも一部が透過膜である。上記流入口を経て上記流路導入口から上記流路内に流れ込んだ原液が、上記透過膜での透過を経て上記ろ過液流出口から流出する透過液体と、上記流路排出口を経て上記流出口から排出される濃縮液体とに分離される。
【0015】
好ましくは、上記流路形成体の上記流路は、封着部材と、この封着部材に貼り付けられた上記膜部材とによって形成されている。好ましくは、上記封着部材は、上記ガイド部材によって螺旋状に保持されている。
【0016】
好ましくは、上記流路形成体と上記ガイド部材とを含む螺旋組立体が形成されている。好ましくは、この螺旋組立体は、上流面と下流面とを有している。好ましくは、この上流面に上記流路導入口が設けられている。好ましくは、この下流面に上記流路排出口が設けられている。好ましくは、上記上流面は、上記流路導入口を除き、止水部材によって封止されている。好ましくは、上記下流面は、上記流路排出口を除き、止水部材によって封止されている。
【0017】
好ましくは、上記流路形成体は、その内側の端部に内筒状体を有している。
好ましくは、上記流路形成体は、その外側の端部に外筒状体を有している。
好ましくは、上記内筒状体は、内筒端部開口と内筒側面開口とを有している。好ましくは、この内筒端部開口が上記流路導入口とされている。好ましくは、この内筒側面開口が上記流路に連通している。好ましくは、上記外筒状体は、外筒端部開口と外筒側面開口とを有している。好ましくは、この外筒端部開口が上記流路排出口とされている。好ましくは、この外筒側面開口が上記流路に連通している。
【0018】
好ましくは、上記流路形成体の上記流路が、第1封着部材と、第2封着部材と、これらの封着部材に貼り付けられた膜部材とによって形成されている。好ましくは、上記ガイド部材として、第1ガイド部材及び第2ガイド部材が設けられている。好ましくは、上記第1封着部材が、上記第1ガイド部材によって螺旋状に保持されている。好ましくは、上記第2封着部材が、上記第2ガイド部材によって螺旋状に保持されている。
【0019】
好ましくは、上記透過ユニットの側面にスペーサーが設けられている。好ましくは、このスペーサーの第1縁部が上記第1ガイド部材に当接している。好ましくは、このスペーサーの第2縁部が上記第2ガイド部材に当接している。
【0020】
本発明に係る浄水システムは、前述された浄水装置のいずれかと、貯液タンクと、管路とを有している。上記管路は、外部排出口と、上記貯液タンクの出口と上記浄水装置の流入口とを結ぶ第1管路系と、上記浄水装置の流出口と外部排出口とを結ぶ第2管路系と、上記浄水装置2を経由することなく上記貯液タンクの出口と上記外部排出口とを結ぶ第3管路系と、上記浄水装置の流出口と上記貯液タンクの入口とを結ぶ第4管路系と、バルブとを有している。この浄水システムでは、次の3つのルートへの切り替えが可能とされている。
(1)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由して上記貯液タンクに戻る循環ルート。
(2)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由して上記外部排出口に至る第1排出ルート。
(3)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由することなく上記外部排出口に至る第2排出ルート。
【発明の効果】
【0021】
クロスフロー型の浄水装置において、小型化及び簡素化が達成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る浄水装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1の浄水装置の一部断面斜視図である。
【図3】図3は、図1の浄水装置の縦断面図である。
【図4】図4は、図1の浄水装置の横断面図である。
【図5】図5は、流路形成体の斜視図である。
【図6】図6は、ガイド部材の斜視図である。
【図7】図7は、図3のF7部分の拡大図である。
【図8】図8は、内筒状体の斜視図である。
【図9】図9は、外筒状体の斜視図である。
【図10】図10は、スペーサーの斜視図である。
【図11】図11は、螺旋組立体及びスペーサーを示す斜視図である。
【図12】図12は、止水部材及び中間部材を示す斜視図である。
【図13】図13は、透過ユニットの変形例を示す拡大断面図である。
【図14】図14は、浄水システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る浄水装置2の斜視図である。図2は、この浄水装置2の断面斜視図である。図3は、この浄水装置2の断面図である。図2及び図3は、いずれも、縦方向の断面図である。図4は、横方向の断面図である。図2と図3とでは、断面の位置が相違している。図2における断面の位置が、図4においてF2−F2線で示されている。図3における断面の位置が、図4においてF3−F3線で示されている。
【0025】
浄水装置2は、透過ユニット4と、ボディ6とを有している。ボディ6は、透過ユニット4を収容している。浄水装置2において、透過ユニット4は、外部からは見えない。よって、浄水装置2の斜視図(図1)においては、透過ユニット4は描かれてない。この浄水装置2は、上記プレろ過において好適に用いられる。
【0026】
ボディ6は、上流側部材6a、下流側部材6b及び中間部材6cを有する。上流側部材6aは流入口x1を有する。下流側部材6bは流出口y1を有する。中間部材6cはろ過液流出口z1を有する。中間部材6cの上流側に上流側部材6aが接合されている。この接合として、接着剤による接着及びネジ結合が例示される。中間部材6cの下流側に下流側部材6bが接合されている。この接合として、接着剤による接着及びネジ結合が例示される。これらの接合部は、水密状態である。3つの開口x1、y1及びz1を除き、ボディ6は、透液性を有さない。
【0027】
上流側部材6aは、流入管7aを有する。流入管7aの端が、流入口x1である。下流側部材6bは、流出管7bを有する。流出管7bの端が、流出口y1である。中間部材6cは、ろ過液流出管7cを有する。ろ過液流出管7cの端が、ろ過液流出口z1である。
【0028】
ボディ6は、内部空間k1を有する(図3参照)。この内部空間k1に、透過ユニット4が収容されている。
【0029】
透過ユニット4は、流路形成体8と、ガイド部材10とを有している。図5は、流路形成体8の斜視図である。図6は、ガイド部材10の斜視図である。図7は、図3において2点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【0030】
図5に示される流路形成体8は、帯状の筒体である。換言すれば、この流路形成体8は、中空で且つ帯状の袋部材である。流路形成体8の内部は中空である。この中空部が、流路r1(後述)である。浄水装置2では、この帯状の流路形成体8が、螺旋状とされている。流路形成体8は柔軟性を有するため、螺旋状に巻回される。図5で示されている斜視図では、この螺旋状とされた状態が示されている。なお、この流路形成体8の螺旋形状は、正確な螺旋でなくてもよい。例えば、螺旋状隙間S1(後述)が変化していてもよい。また、流路r1の幅G1及び螺旋状隙間S1の幅G2(図7参照)は、一定でなくてもよい。
【0031】
なお、図面の理解を容易とする観点から、図4において、流路r1が、ハッチングで示されている。図4において、ハッチングの無い螺旋状の流路は、透過液流路r2(螺旋状隙間S1)である。流路形成体8が螺旋状とされることで、流路r1は螺旋状となり、透過液流路r2も螺旋状となる。
【0032】
図5が示すように、流路形成体8は、螺旋状隙間S1を形成しつつ螺旋状に配置されている。図面の理解を容易とする観点から、図5において、流路形成体8の上面(後述される第1封着部材f11)がハッチングで示されている。図5において、ハッチングの無い部分が、螺旋状隙間S1である。後述されるように、この螺旋状隙間S1は、透過液流路r2である。
【0033】
流路形成体8の構造の詳細は後述されるが、この流路形成体8は柔軟性のある部材である。流路r1に水圧が作用した際、流路形成体8単独では、螺旋状態を保持することは難しい。そのため、ガイド部材10が設けられている。図6が示すように、ガイド部材10は、螺旋形状に成形された部材である。ガイド部材10は、流路形成体8を螺旋状に保持しつつ、螺旋状隙間S1を確保している。換言すれば、このガイド部材10は、上記螺旋状隙間S1を形成するためのスペーサーとしての役割を果たす。透過ユニット4では、図5における螺旋状隙間S1に、ガイド部材10が嵌っている。後述されるように、2つのガイド部材10が用いられている。ガイド部材10は1つであってもよいが、2つのガイド部材10により、螺旋状態の保持がより確実とされている。
【0034】
図7が示すように、流路形成体8は、流路r1と、膜部材m1とを有している。互いに対向する一の膜部材m1と他の膜部材m1との間が、流路r1である。更に流路形成体8は、封着部材f1を有している。流路形成体8は、2つの封着部材f1を有する。図7において、第1封着部材f1が符号f11で示され、第2封着部材f1が符号f12で示されている。膜部材m1は、封着部材f11及び封着部材f12に接着されている。この接着により、流路r1が形成される。
【0035】
膜部材m1の少なくとも一部は、透過膜である。本実施形態では、膜部材m1の全てが、透過膜である。膜部材m1の一部が透過膜であってもよく、その場合の一例は後述される。
【0036】
膜部材m1は、流路r1を形成している。換言すれば、膜部材m1は流路r1に面している。膜部材m1のうち、流路r1に面している部分が、流路形成表面と称される。この流路形成表面の全体の面積がA1とされる。また、この流路形成表面のうち、透過膜である部分の面積がA2とされる。ろ過能力を高める観点から、(A2/A1)は、0.25以上であるのが好ましく、0.5以上がより好ましく、0.75以上が更に好ましく、0.9以上が特に好ましい。本実施形態では、(A2/A1)が1とされている。
【0037】
更に、流路形成体8は、内筒状体14と、外筒状体16とを有している。図5が示すように、内筒状体14は、流路形成体8の内側の端部に設けられている。一方、外筒状体16は、流路形成体8の外側の端部に設けられている。内筒状体14が、流路導入口x2を有している。外筒状体16が、流路排出口y2を有している。
【0038】
図8は、内筒状体14の斜視図である。内筒状体14は、内筒端部開口14aと内筒側面開口14bとを有している。内筒端部開口14aは、内筒状体14の一端に設けられている。この内筒端部開口14aが、流路導入口x2とされている。一方、内筒側面開口14bは、流路r1に連通している。他端の開口14cは、封着部材f1(第2封着部材f12)によって閉塞されている。
【0039】
更に、内筒状体14は、内筒壁体部14dを有する。この内筒壁体部14dは、流路r1の一端(内側の端)を閉塞している。換言すれば、この内筒壁体部14dにより、流路r1の一端が閉塞されている。
【0040】
図9は、外筒状体16の斜視図である。外筒状体16は、外筒端部開口16aと外筒側面開口16bとを有している。外筒端部開口16aは、外筒状体16の一端に設けられている。この外筒端部開口16aが流路排出口y2とされている。一方、外筒側面開口16bは流路r1に連通している。他端の開口14cは、封着部材f1(第1封着部材f11)によって閉塞されている。
【0041】
更に、外筒状体16は、外筒壁体部16dを有する。この外筒壁体部16dは、流路r1の他端(外側の端)を閉塞している。換言すれば、この外筒壁体部16dにより、流路r1の他端が閉塞されている。
【0042】
流路形成体8は、流路導入口x2及び流路排出口y2を除き、閉じられている。換言すれば、流路形成体8に設けられている開口は、流路導入口x2及び流路排出口y2に限られる。従って、流路導入口x2から流路r1に入った液体は、膜部材m1を透過するか、流路排出口y2から排出されるかのいずれかである。
【0043】
前述したように、ガイド部材10は2つである。図7が示すように、第1ガイド部材10aは、上流側に設けられており、第2ガイド部材10bは下流側に設けられている。第1ガイド部材10aと第2ガイド部材10bとは同一の部材である。第1ガイド部材10aは、流路形成体8の上流側を螺旋状に保持している。第2ガイド部材10bは、流路形成体8の下流側を螺旋状に保持している。第1ガイド部材10aと第2ガイド部材10bとの間に、螺旋状隙間S1が形成されている。従って、図3の断面図では、螺旋状隙間S1と流路r1とが交互に配置される。螺旋状隙間S1と流路r1とは膜部材m1によって仕切られている。
【0044】
膜部材m1はシートである。膜部材m1は剛性に乏しい。剛性の高い膜部材m1を用いない限り、膜部材m1のみでは、螺旋状の流路r1を保持することは難しい。一方、封着部材f1は、膜部材m1に比較して曲げ剛性が高い。この封着部材f1を利用することで、流路形成体8の螺旋形状が保持されやすい。ガイド部材10は、封着部材f1を螺旋状に保持している。第1ガイド部材10aが第1封着部材f11を螺旋状に保持している。第2ガイド部材10bが第2封着部材f12を螺旋状に保持している。このような構成により、螺旋状隙間S1と、螺旋状の流路r1とが精度よく確保される。
【0045】
浄水装置2は、更にスペーサー18を有する。図10は、スペーサー18の斜視図である。スペーサー18は、略帯状の部材である。図10では、スペーサー18は環状を呈しているが、実際には、単体のスペーサー18は、平板状となる。スペーサー18は弾性変形しうる材質により形成されている。中間部材6cの内部に配置することで、スペーサー18は弾性変形され、図10に示される環状となる。したがって、この図10及び後述の図11では、中間部材6cの内部に配置された状態のスペーサー18が示されている。もちろん、単体で環状をなすスペーサーが用いられても良い。
【0046】
図11は、螺旋組立体Spにスペーサー18が装着された状態を示す斜視図である。螺旋組立体Spは、流路形成体8と2つのガイド部材10とから構成されている。スペーサー18は、螺旋組立体Spの側面に設けられている。スペーサー18は、第1縁部18aと、第2縁部18bとを有する。第1縁部18aは第1ガイド部材10a(の下面)に当接している。第1縁部18aは、螺旋状の第1ガイド部材10aにおける最外周部に当接している。第2縁部18bは第2ガイド部材10b(の上面)に当接している。第2縁部18bは、螺旋状の第2ガイド部材10bにおける最外周部に当接している。
【0047】
スペーサー18は、ろ過液流出管7cとの干渉を回避するための回避部18cを有する。装着状態(図10及び11の環状の状態)において、回避部18cは、略円形である。ろ過液流出管7cは、この回避部18cを貫通している。
【0048】
装着状態において、スペーサー18は、第1隙間18dと、第2隙間18eとを有する。帯状のスペーサー18を環状としたとき、このスペーサー18の両端が対向する。この対向によって形成される隙間が、第1隙間18d及び第2隙間18eである。第1隙間18dは、第1縁部18aに形成される。第2隙間18eは、第2縁部18bに形成される。
【0049】
これら第1隙間18d及び第2隙間18eは、ガイド部材10の周方向における位置決めに利用される。図6及び図11が示すように、ガイド部材10は、突起20を有している。突起20は、ガイド部材10の螺旋の最外周部に設けられている。第1の突起20aは、ガイド部材10の表側に設けられている。更に、第2の突起20bが、ガイド部材10の裏側に設けられている。第1の突起20aの周方向位置は、第2の突起20bの周方向位置と同じである。
【0050】
図11が示すように、第1ガイド部材10aの第2の突起20bは、第1隙間18d(図10参照)に嵌められている。また、第2ガイド部材10bの第1の突起20aは、第2隙間18e(図10参照)に嵌められている。よって、第1ガイド部材10aと第2ガイド部材10bとの間で、周方向の位置関係が同一とされている。
【0051】
このように、スペーサー18は、第1ガイド部材10a及び第2ガイド部材10bを精度良く位置決めする。スペーサー18により、透過ユニット4が精度よく組み立てられうる。またスペーサー18は、透過ユニット4の組み立ての作業性を向上させる。
【0052】
第1ガイド部材10aと第2ガイド部材10bとは、全く同一の部材である。ガイド部材10が、第1ガイド部材10aとして上流側に用いられたとき、第1の突起20aは用いられず、第2の突起20bが用いられる。一方、ガイド部材10が第2ガイド部材10bとして下流側に用いられたとき、第2の突起20bは用いられず、第1の突起20aが用いられる。第1の突起20aと第2の突起20bとの両方を備えることで、同一の部材が、第1ガイド部材10aとしても利用でき、第2ガイド部材10bとしても利用できる。この部品(ガイド部材)の共通化は、コストの低減及び組み立ての効率化に寄与する。
【0053】
図3及び図7が示すように、流路形成体8の上流面8aは、流路導入口x2を除き、止水部材v1によって封止されている。また、流路形成体8の下流面8bは、流路排出口y2を除き、止水部材v2によって封止されている。本実施形態では、止水部材v1、v2は、接着剤の層である。なお、理解を容易とするために、図2においては、止水部材v1及び止水部材v2の記載が省略されている。
【0054】
図12は、中間組立体Ms1を示す斜視図である。この中間組立体Ms1は、螺旋組立体Spの上流面Sp1及び下流面Sp2に接着剤を塗布することで、得られる。止水部材v1及び止水部材v2は、この塗布された接着剤が硬化したものである。
【0055】
止水部材v1は、封着部材f1(第1封着部材f11)の外面を覆っている。図示しないが、止水部材v1を構成する接着剤の一部は、封着部材f1(第1封着部材f11)に含侵している。止水部材v2を構成する接着剤の一部は、封着部材f1(第2封着部材f12)に含侵している。これらの含侵により、封着部材f1の透水性が抑制されている。
【0056】
止水部材v2は、封着部材f1(第2封着部材f12)の外面を覆っている。図示しないが、止水部材v1を構成する接着剤の一部は、第1封着部材f11と第1ガイド部材10aとの間に入り込んでいる。同様に、止水部材v2を構成する接着剤の一部は、第2封着部材f12と第2ガイド部材10bとの間に入り込んでいる。接着剤は、封着部材f1とガイド部材10との間に位置する膜部材m1に含侵している。接着剤は、封着部材f1とガイド部材10との間からの水漏れを防ぐ。
【0057】
止水部材v1は、流路導入口x2を除き、螺旋組立体Spの上流面Sp1の全体を覆っている(図3、図7及び図12参照)。更に、止水部材v1の周囲は、ボディ6(中間部材6c)に密着している(図3及び図12参照)。止水部材v2は、流路排出口y2を除き、螺旋組立体Spの下流面Sp2の全体を覆っている(図3及び図7参照)。更に、止水部材v2の周囲は、ボディ6(中間部材6c)に密着している(図3参照)。
【0058】
止水部材v1により、上流面Sp1における水漏れは生じない。止水部材v2により、下流面Sp2における水漏れは生じない。原液WGは、ろ過液流出口z1から排出されるか、流出口y1から排出されるかの、いずれかである。ろ過液流出口z1から排出される透過液体WRには、透過膜を透過していない液体は混入しない。
【0059】
[水の流れ]
本願では、流入口x1に流入する液体が、原液WGとも称される。原液WGは、流入口x1から、浄水装置2に入る。この原液WGは、流入口x1から流路導入口x2に至る。水は、流路導入口x2から、流路r1に入る(図5の矢印ar1参照)。流路r1に入った原液WGは、流路r1を流れる。原液WGは、流路r1に沿って螺旋状に流れる。流路r1を流れる水の一部は、膜部材m1(透過膜)を透過して、螺旋状隙間S1に至る。螺旋状隙間S1は、透過液流路r2として機能する。螺旋状隙間S1(透過液流路r2)に流れ込んだ液体は、透過液流路r2を螺旋状に流れ、末端出口Ex2等から流出する(図5の矢印ar2参照)。透過液流路r2から流出した透過液体WRは、ろ過液流出口z1に至る。全ての透過液体WRが、ろ過液流出口z1に集まる。透過液体WRは、ろ過液流出口z1から、浄水装置2の外部に排出される。このように、浄水装置2は、クロスフロー型である。
【0060】
浄水装置2では、次の現象Aが生じる可能性がある。この現象Aが発生すると、ろ過された水の一部が、流出口y1から排出されうる。この排出により、ろ過効率が低下しうる。
[現象A]:螺旋状隙間S1(透過液流路r2)を流れる水のうちの一部が、透過膜を透過して、再び流路r1に移動する。
【0061】
ただし、上記現象Aが起こった場合でも、ろ過液流出口z1に至る透過液体WRは、少なくとも1回は、透過膜を透過している。透過液体WRには、透過膜を透過していない水は混ざっていない。
【0062】
前述の通り、流路排出口y2は、流路r1における唯一の出口である。よって、膜部材m1を透過しなかった水(濃縮液体WC)は、全て、流路排出口y2から排出される(図5の矢印ar3参照)。流路排出口y2から排出された濃縮液体WCは流出口y1に到達し、流出口y1から、浄水装置2の外部に排出される。
【0063】
前述の通り、上記現象Aが起こった場合には、流路r1には、ろ過膜を透過した水も存在しうる。しかし、ろ過膜を通過して流路r1に到達するためには、少なくとも2回、ろ過膜を透過しなければならない。ろ過膜を2回透過する確率は低い。現象Aが起こった場合であっても、ろ過膜を透過して流路r1に到達する水は、少ない。濃縮液体WCにおいて、ろ過膜を透過した液体の混合割合は低い。この理由の詳細については、後述される。
【0064】
このように、浄水装置2は、原液WGを、透過液体WRと濃縮液体WCとに分離する。透過液体WRは、流入口x1を経て流路導入口x2から流路r1内に流れ込み、透過膜での透過を経て、ろ過液流出口z1から排出される。一方、濃縮液体は、流路導入口x2から流路r1内に流れ込み、流路排出口y2から排出される。
【0065】
[水圧P1、P2]
流路r1における水圧がP1とされる。透過液流路r2における水圧がP2とされる。ここで、水圧P1と水圧P2との比較が考察される。
【0066】
前述したように、流路r1は、流路導入口x2及び流路排出口y2を除き、開口していない。これに対して、透過液流路r2(螺旋状隙間S1)において、その螺旋の末端出口Ex2(図5参照)は広い。透過液流路r2の縦方向長さがV2(図7参照)とされ、透過液流路r2の幅がG2(図7参照)とされるとき、この螺旋末端出口Ex2の開口面積は、積(V2×G2)である。この開口面積は、流路排出口y2の開口面積よりも広い。
【0067】
また、透過液体WRの出口は、螺旋末端出口Ex2だけではない。透過液体WRは、流路形成体8の螺旋の最外周部の外面fc(図5及び図4参照)に位置する透過膜mxからも排出される。流路r1の縦方向長さがV1(図7参照)とされ、外面fcの最大外形距離がDm(図4参照)とされるとき、この外面fcの面積は、積(V1×Dm×π)に略等しい。この外面fcが螺旋の最外周部に位置しているため、距離Dmが大きい。よって、この外面fcの面積は広い。
【0068】
このように、透過液体WRには、広い出口が確保されている。一方、濃縮液体WCの出口は、流路排出口y2に限定されている。このため、通常、水圧P1は、水圧P2よりも高くなる。この水圧の関係(P1>P2)に起因して、流路r1(水圧P1)から透過液流路r2(水圧P2)への透過は生じやすい。このため、透過液体WRが効率的に生成されうる。一方、(P1>P2)に起因して、透過液流路r2(水圧P2)から流路r1(水圧P1)への透過は生じにくい。水圧P1と水圧P2との大小関係が、一時的又は局所的に逆転する場合がありうる。この場合、上記現象Aが生じうる。しかし、そのような場合を除き、透過液流路r2から流路r1への透過は、ほとんど発生しないと考えられる。したがって、ろ過された液体が濃縮液体WCに混合することが効果的に抑制される。このように、浄水装置2では、透過液体WRと濃縮液体WCとの分離が効率的になされる。
【0069】
図7において両矢印G1で示されているのは、流路r1の幅である。図7において両矢印G2で示されているのは、透過液流路r2(螺旋状隙間S1)の幅である。通水した場合、膜部材m1が変形しうる。このため、幅G1及び幅G2は、通水していない状態での値である。
【0070】
水圧P1が高くなると、流路形成体8の膜部材m1が外側に変形しうる。この変形部分では、透過液流路r2の幅は狭くなる。透過液流路r2の幅が狭くなることで、上記水圧P2が上昇しやすい。水圧P2が上昇すると、上記現象Aの発生する確率が増える。現象Aを抑制する観点からは、比(G1/G2)は、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0071】
一方、原液の供給量が少ない場合、水圧P1は上昇にしくい。この場合、流路形成体8の膜部材m1の外側への変形は生じにくい。よって、この変形に起因する水圧P2の上昇は抑制される。この場合、G1を広くして、流路r1の流れを円滑としたほうが、透過膜への透過効率が高まることがある。この観点を考慮すると、比(G1/G2)は、1.5以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、2以上が特に好ましい。
【0072】
螺旋に沿って流れる液体には、遠心力が作用しうる。この遠心力により、原液WGが効率的に透過膜を透過しうる。また、流路r1を流れる水の流速を考察すると、螺旋の外側に位置する膜側の流速は、螺旋の内側に位置する膜側の流速よりも速くなりやすい。これにより、螺旋の外側に位置する膜の方が、螺旋の内側に位置する膜よりも、膜表面に汚れや異物などが付着しにくい。即ち、螺旋の外側に位置する膜は、螺旋の内側に位置する膜よりも、対汚れ性に優れる。
【0073】
上記遠心力及び対汚れ性に起因して、流路r1を流れる液体は、螺旋の内側に位置する膜よりも、螺旋の外側に位置する膜を透過しやすい。この観点を考慮すると、流路形成体8の膜部材m1を、次のように構成Xとしてもよい。
【0074】
[構成X]:流路r1を介して互いに対向する膜部材m1のうち、内側の膜部材m1を膜部材m1aとし、外側の膜部材m1を膜部材m1bとする(図7参照)。このとき、膜部材m1b(外側)を透過膜とし、膜部材m1a(内側)を非透過膜とする。
【0075】
この構成Xでは、流路r1を流れる際の遠心力により、また、対汚れ性に優れるため、原液WGが膜部材m1bを効率良く透過する。また、透過液流路r2を流れる際にも遠心力が作用するが、膜部材m1aにより、上記現象Aが抑制される。よって、ろ過効率が向上しうる。
【0076】
上記理由により、上記膜部材m1b(外側)の少なくとも一部が透過膜とされるのが好ましい。膜部材m1bのうち、流路r1に面している部分(流路形成表面)の面積の全体がB1とされる。この面積B1の部分のうち、透過膜である部分の面積がB2とされる。ろ過能力を高める観点から、(B2/B1)は、0.5以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.9以上が更に好ましい。本実施形態では、(B2/B1)が1とされている。
【0077】
また、次の構成Yも可能である。この構成Yでも、上記構成Xと同様の効果が得られうる。
[構成Y]:膜部材m1b(外側)及び膜部材m1a(内側)を、いずれも、透過膜とする。ただし、膜部材m1bの透過性が、膜部材m1aの透過性よりも高い。
【0078】
なお、使用時における浄水装置2の姿勢は限定されない。図1等では、流入口x1が上側とされ、流出口y1が下側とされているが、この姿勢に限定されない。例えば、浄水装置2は横向きの姿勢で用いられてもよい。この場合、流入口x1と流出口y1とが水平面に沿って配置される。
【0079】
図13は、変形例の透過ユニット30の一部を示す断面図である。この透過ユニット30では、透過ユニット4における第2封着部材f12が用いられていない。また、この透過ユニット30では、透過ユニット4における第2ガイド部材10bが設けられていない。ガイド部材10は、透過ユニット4における第1ガイド部材10aと同様に配置されている。封着部材f1は、透過ユニット4における第1封着部材f11と同様に配置されている。この透過ユニット30では、膜部材m1が折り曲げ部32を有している。1枚の膜部材m1の一端部m11が封着部材f1に接着されており、同じ膜部材m1の他端部m12が、上記一端部m11が接着されているのと同じ封着部材f1に、接着されている。即ち、1枚の膜部材m1を折り曲げることで、1つの封着部材f1のみで、閉じた流路r1が形成されている。この透過ユニット30では、コストの減少、部品点数の減少及び組み立ての効率化が達成されうる。
【0080】
ガイド部材10の形態は、図6に示される螺旋状に限定されない。例えば、円板に螺旋状の溝が形成された部材も、ガイド部材10として用いられうる。この例では、円板の直径は、中間部材6cの内径と略同一とされる。螺旋状の溝の幅は、流路形成体8の厚さ(封着部材f1の幅)と略同一とされる。螺旋状の溝に流路形成体8を挿入することで、流路形成体8が螺旋状に保持されうる。この形態のガイド部材では、円板の周縁部と中間部材6cとの隙間を埋めることで、水密性が確保されうる。よって、上記実施形態の如く、止水部材v1を広範囲に塗布する必要がなくなる。
【0081】
また、ガイド部材10は、流路形成体8の螺旋周方向の全長に亘って保持していなくてもよい。例えば、螺旋周方向において、ガイド部材10が間欠的に流路形成体8を保持していてもよい。
【0082】
[封着部材]
封着部材f1の曲げ剛性は、膜部材m1よりも高い。封着部材f1は、流路形成体8の形状の保持に寄与する。好ましくは、封着部材の幅は、流路r1の幅と同一とされる。封着部材の透水性は限定されないが、透水性が低いのが好ましく、透水性が無いのがより好ましい。封着部材f1の透水性は、膜部材m1の透水性よりも低いのが好ましい。ただし、止水部材により水密性が確保される場合、封着部材の透水性は、透過ユニット4の性能に影響しない。
【0083】
封着部材f1の材質として、フェルト、ゴム、発泡シリコン等が例示される。透過ユニット4は、飲用水の浄化にも用いられ得る。よって、飲用に適応するものとして食品衛生法の許可が下りた材質が好ましい。この観点から、発泡シリコン材、レイヨンフェルト及びフェノールフェルトが好ましい。
【0084】
流路形成体8の組み立てでは、流路形成体8が、ガイド部材10の螺旋状の隙間に沿って挿入される。この挿入を円滑とする観点から、封着部材f1は伸縮性を有するのが好ましい。この観点から、発泡シリコン材がより好ましい。
【0085】
封着部材f1は柔軟性を有している。流路形成体8も柔軟性を有している。よって、流路形成体8を製造した後に、流路形成体8を螺旋状に変形させることができる。したがって、流路形成体8の製造方法の自由度は高い。この製造方法の一例は、次の通りである。他の方法も適宜採用されうる。
(工程1)2枚の帯状の膜部材m1を用意する。この膜部材m1の幅はV3とされる。このV3は、流路形成体8の幅である(図7参照)。
(工程2)第1封着部材f11及び第2封着部材f12を用意する。
(工程3)第1の膜部材m1に、2本の封着部材f11、f12を接着する。
(工程4)工程3で得られた部材において、封着部材f11、f12に、第2の膜部材m1を接着する。この接着により、第1の膜部材m1と第2の膜部材m1との間に隙間が形成される。この隙間は、封着部材f11、f12によって形成される。この隙間を介して、第1の膜部材m1と第2の膜部材m1とが対向する。
(工程5)工程3及び/又は4において、内筒状体14及び外筒状体16を、膜部材m1及び/又は封着部材f11、f12に接着する。
【0086】
ガイド部材10の螺旋状の隙間に挿入する際の作業性の観点から、封着部材f1の硬度Hfは、50以下が好ましく、40以下がより好ましい。透過ユニット4の剛性不足を防止する観点、及び透過ユニット4の組み立ての生産性の観点から、硬度Hfは、20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上が更に好ましい。硬度Hfは、タイプEデュロメータにより測定される。この測定は、JIS−K−6253に準拠してなされる。
【0087】
止水部材v1、v2として接着剤等の塗布剤が用いられる場合がある。この場合、封着部材f1には、この塗布剤が浸透しうるのが好ましい。この浸透により、封着部材f1の透水性が抑制される。また、この浸透により、止水部材v1、v2と封着部材f1との密着性が高まる。
【0088】
[膜部材]
膜部材m1は、その少なくとも一部が透過膜とされる。例えば、流路r1を介して互いに対向する膜部材m1のうちの一方が透過膜とされ、他方が非透過膜とされてもよい。この場合の一例は、前述した構成Xである。一方、上記実施形態の流路形成体8では、膜部材m1の全てが透過膜とされている。
【0089】
非透過膜である膜部材m1の材質として、セルロース、ナイロン、ポリプロピレン及びポリエチレンが例示される。疎水性の観点から、ポリプロピレン及びポリエチレンが好ましい。強度の観点から、CCPポリプロピレン(無軸延伸ポリプロピレン)が特に好ましい。
【0090】
透過膜である膜部材m1の材質として織物及び不織布が挙げられ、適度な透水性、強度及びコストの観点から、不織布が好ましい。不織布の材質として、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、レーヨン及びアクリルが例示される。セルロース不織布は親水性である。ポリプロピレン不織布及びポリエチレン不織布は疎水性である。親水性の不織布では、ろ過における浸透性に優れる。この観点から、セルロース不織布が特に好ましい。セルロース不織布は、耐熱温度が高く、この点においても好ましい。均質性の観点から、ペーパーライクセルロース不織布が特に好ましい。このペーパーライクセルロース不織布は、柔軟性も高く、流路形成体8の製造及び透過ユニット4の組み立てを容易とする。上記実施形態では、膜部材m1として、このペーパーライクセルロース不織布が用いられた。本発明の透過膜は、20μm以上1mm以下程度の対象物を除去できる膜が好ましい。
【0091】
水圧による破損を抑制する観点から、透過膜の厚さT1は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。厚さT1が過大である場合、柔軟性が不足し、螺旋状に変形させにくい場合がある。この観点から、厚さT1は、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.25mm以下が特に好ましい。上記実施形態では、厚さT1は0.2mmとされた。
【0092】
なお、上記好ましい厚さT1を有する膜を2枚以上積層した透過膜も用いられうる。この積層により、透過膜の製造のバラツキ、繊維間隙間のバラツキ、及び、経時劣化による透過不良が抑制される。特に、不織布は、規則的に織られた布ではないため、繊維間の隙間にバラツキが生じやすい。また、このバラツキにより、局所的に、大きな隙間(隙間欠陥)が生じることがある。2枚以上を積層した場合、一の層における大きな隙間(隙間欠陥)が、他の層によって補完される。よって、より均質な透過膜が実現しうる。但し、積層枚数が多すぎる場合、生産性が低下しうる。この観点から、積層枚数は、3枚以下が好ましく、2枚が特に好ましい。
【0093】
詰まりを抑制する観点から、透過膜の目開きは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。大きなフロックの透過を防止する観点から、透過膜の目開きは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
【0094】
[膜部材m1と封着部材f1との接合]
膜部材m1と封着部材f1との接合には、食品衛生法上で認可された材質の接着剤が好ましい。この接着剤として、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤及びヒートシール材が例示される。このヒートシール材の材質として、ポリプロピレンが例示される。接着強度及び接着層を薄くできる観点から、シリコン系接着剤及びウレタン系接着剤が好ましい。また、止水部材v1、v2と同じ材質とされるのが好ましい。
【0095】
コストの観点から、ガイド部材10の製法として、射出成形が好ましい。ガイド部材10の材質として、射出成形が可能な材質が好ましい。この観点から、ガイド部材10の材質として、ABS、ナイロン及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)が例示される。封着部材f1との接着を考慮すると、ABS及びPBTが好ましく、コストの観点からABSが特に好ましい。上記実施形態では、ABSが用いられている。
【0096】
[膜部材m1とガイド部材10との接合]
膜部材m1と封着部材f1との接合に用いられるものと同じものが好ましい。なお、止水部材v1、v2を設ける場合、膜部材m1とガイド部材10とを単独で接合する工程を省略し、止水部材v1、v2によって、膜部材m1とガイド部材10との接合することもできる。この場合、製造工程が簡略化され、生産性が向上しうる。
【0097】
[ボディ6の材質]
ボディ6の材質として、塩化ビニル、ABS、ポリプロピレン等が挙げられる。塩化ビニルとしては、水道管に用いられている樹脂がよい。封着部材f1との接着を考慮すると、塩化ビニル及びABSが好ましく、水道用途での実績を考慮すると、塩化ビニルが特に好ましい。
【0098】
[止水部材v1、v2の材質]
止水部材v1、v2の材質には、食品衛生法上で認可された材質の接着剤が好ましい。この接着剤として、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤及びヒートシール材が例示される。適度な流動性(粘度)がある場合、上流面8a及び下流面8bにおける隙間に接着剤が浸透しうる。また、この適度な流動性により、接着剤が封着部材f1に浸透しうる。これらの浸透により、上流面8a及び下流面8bにおける止水性が向上する。この止水性及び接着強度の観点から、ウレタン系接着剤が好ましい。
【0099】
[内筒状体14及び外筒状体16の材質]
筒状体14、16の材質として、ABS、ナイロン、ポリプロピレン及びポリエチレンが例示される。薄肉成形性に優れているとの観点から、ポリプロピレンが好ましい。上記実施形態では、ポリプロピレンが採用されている。
【0100】
[浄水システム]
【0101】
本発明の他の形態は、上記浄水装置を用いた浄水システムである。図14は、本発明の一実施形態に係る浄水システム40の模式図である。浄水システム40は、前述した浄水装置2と、貯液タンク42と、管路44と、外部排出口46と、バルブVLと、ポンプPUとを有している。管路44は、分岐b1、分岐b2及び分岐b3を有している。管路44は、次の7つの区間を有している。
(区間1)貯液タンク42の出口42aから分岐b1までの第1区間K1
(区間2)分岐b1から、浄水装置2の流入口x1までの第2区間K2
(区間3)浄水装置2の流出口y1から分岐b2までの第3区間K3
(区間4)分岐b1から分岐b2までの第4区間K4
(区間5)分岐b2から分岐b3までの第5区間K5
(区間6)貯液タンク42の入口42bから分岐b3までの第6区間K6
(区間7)分岐b3から外部排出口46までの第7区間K7
【0102】
浄水システム40は、複数のバルブVL2、VL3、VL4、VL6及びVL7を有する。バルブVL2は、第2区間K2に設けられている。バルブVL3は、第3区間K3に設けられている。バルブVL4は、第4区間K4に設けられている。バルブVL6は、第6区間K6に設けられている。バルブVL7は、第7区間K7に設けられている。
【0103】
ポンプPUは、第5区間K5に設けられている。
【0104】
これらの区間K1からK7によって、管路44には、次の4つの管路系が形成されている。
(a)貯液タンク42の出口42aと、浄水装置2の流入口x1とを結ぶ第1管路系
(b)浄水装置2の流出口y1と外部排出口46とを結ぶ第2管路系
(c)浄水装置2を経由することなく、貯液タンク42の出口42aと外部排出口46とを結ぶ第3管路系
(d)浄水装置2の流出口y1と貯液タンク42の入口42bとを結ぶ第4管路系
【0105】
上記第1管路系は、第1区間K1と、第2区間K2とによって構成されている。上記第2管路系は、第3区間K3と、第5区間K5と、第7区間K7とによって構成されている。上記第3管路系は、第1区間K1と、第4区間K4と、第5区間K5と、第7区間K7とによって構成されている。上記第4管路系は、第3区間K3と、第5区間K5と、第6区間K6とによって構成されている。
【0106】
浄水システム40では、次の3つのルートの切り替えが可能である。このルートの切り替えは、バルブVL2、VL3、VL4、VL6及びVL7を適切に開閉することで、達成される。
(1)貯液タンク42から浄水装置2を経由して貯液タンク42に戻る循環ルート。
(2)貯液タンク42から浄水装置2を経由して外部排出口46に至る第1排出ルート。
(3)貯液タンク42から浄水装置2を経由することなく外部排出口46に至る第2排出ルート。
【0107】
上記循環ルートを採用する場合、各バルブの開閉は次の通りに設定される。
[循環ルート]
・バルブVL2:開く
・バルブVL3:開く
・バルブVL4:閉じる
・バルブVL6:開く
・バルブVL7:閉じる
【0108】
この循環ルートにおいて、液体が流れる管路44は、第1区間K1、第2区間K2、第3区間K3、第5区間K5及び第6区間K6である。
【0109】
上記第1排出ルートを採用する場合、各バルブの開閉は次の通りに設定される。
[第1排出ルート]
・バルブVL2:開く
・バルブVL3:開く
・バルブVL4:閉じる
・バルブVL6:閉じる
・バルブVL7:開く
【0110】
この第1排出ルートにおいて、液体が流れる管路44は、第1区間K1、第2区間K2、第3区間K3、第5区間K5及び第7区間K7である。
【0111】
上記第2排出ルートを採用する場合、各バルブの開閉は次の通りに設定される。
[第2排出ルート]
・バルブVL2:閉じる
・バルブVL3:閉じる
・バルブVL4:開く
・バルブVL6:閉じる
・バルブVL7:開く
【0112】
この第2排出ルートにおいて、液体が流れる管路44は、第1区間K1、第4区間K4、第5区間K5及び第7区間K7である。
【0113】
ポンプPUは、必要に応じて稼働される。浄水装置2におけるろ過の処理速度は、透過膜の詰まり度合いによって変化する。この処理速度を考慮しつつ、ポンプPUにより、流量及び流速が調整される。透過液体WRの生成効率が高まるように、ポンプPUとルート選択とが調整される。
【0114】
この浄水システム40は、次のように運用されうる。浄水装置2で処理されるべき水(原液)は、貯液タンク42に貯められる。好ましくは、貯液タンク42は、造核剤の投入及び攪拌を行う処理槽である。
【0115】
この貯液タンク42の原液WGを浄水装置2で処理する場合、上記循環ルート又は上記第1排出ルートが採用される。これらのルートが採用される場合、透過液体WRが生成される。
【0116】
浄水装置2による処理が、上記第1排出ルートにおいてなされる場合、全ての濃縮液体WCが外部排出口46から排出されてしまう。即ち、いわゆる捨て水が増加する。そこで、節水の観点から、上記循環ルートが採用される。この循環ルートでは、濃縮液体WCが貯液タンク42に戻る。よって、この濃縮液体WCが、原液WGとして再利用される。
【0117】
循環ルートの採用により、貯液タンク42の原液WGにおいて、異物の濃度が高まる。第2排出ルートでは、浄水装置2を経由することなく、この異物濃度が高い原液WGを廃棄することができる。よって、浄水装置2の透過膜の詰まりが効果的に抑制される。また、過度に汚染された濃縮液体WCが浄水装置2に流入することが抑制されるため、透過液体WRの清浄度を高めることができる。
【0118】
前述したように、好ましくは、貯液タンク42では、造核処理がなされる。この際に用いられる造核剤として、第2塩化鉄系の造核剤、納豆菌を用いた造核剤、ポリ塩化アルミニウム系造核剤等が挙げられる。人体への影響を考慮すると、ポリ塩化アルミニウム系造核剤は、飲用水の処理には好適ではない。納豆菌を用いた造核剤では、生成されたフロックが粘性を有する。よって透過膜の詰まりが懸念される。これらの観点から、飲用水用のろ過がなされる場合、第2塩化鉄系の造核剤が好ましい。
【0119】
バルブとしては、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ等、公知のバルブが用いられうる。開閉に加えて、流量の調整が可能なバルブが用いられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明された装置及びシステムは、水の浄化に適用されうる。
【符号の説明】
【0121】
2・・・浄水装置
4・・・透過ユニット
6・・・ボディ
8・・・流路形成体
10・・・ガイド部材
14・・・内筒状体
16・・・外筒状体
18・・・スペーサー
30・・・透過ユニット
40・・・浄水システム
42・・・貯液タンク
44・・・管路
46・・・外部排出口
m1・・・膜部材
r1・・・流路
r2・・・透過液流路
S1・・・螺旋状隙間
x1・・・流入口
y1・・・流出口
z1・・・ろ過液流出口
x2・・・流路導入口
y2・・・流路排出口
VL2、VL3、VL4、VL6、VL7・・・バルブ
PU・・・ポンプ
WG・・・原液
WC・・・濃縮液体
WR・・・透過液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を透過させうる透過ユニットと、この透過ユニットを収容しうるボディとを備えており、
上記透過ユニットが、螺旋状隙間を形成しつつ螺旋状に配置された流路形成体と、上記流路形成体を螺旋状に保持しつつ上記螺旋状隙間を確保しているガイド部材とを有しており、
上記ボディが、流入口と、流出口と、ろ過液流出口とを有しており、
上記流路形成体が、その中空部である流路と、この流路に連通する流路導入口と、この流路に連通する流路排出口と、この流路の壁面の少なくとも一部を形成している膜部材とを有しており、
上記膜部材の少なくとも一部が透過膜であり、
上記流入口を経て上記流路導入口から上記流路内に流れ込んだ原液が、上記透過膜での透過を経て上記ろ過液流出口から流出する透過液体と、上記流路排出口を経て上記流出口から排出される濃縮液体とに分離される浄水装置。
【請求項2】
上記流路形成体の上記流路が、封着部材と、この封着部材に貼り付けられた上記膜部材とによって形成されており、
上記封着部材が、上記ガイド部材によって螺旋状に保持されている請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
上記流路形成体と上記ガイド部材とを含む螺旋組立体が形成されており、
この螺旋組立体が、上流面と下流面とを有しており、
この上流面に上記流路導入口が設けられ、
この下流面に上記流路排出口が設けられ、
上記上流面が、上記流路導入口を除き、止水部材によって封止されており、
上記下流面が、上記流路排出口を除き、止水部材によって封止されている請求項1又は2に記載の浄水装置。
【請求項4】
上記流路形成体が、その内側の端部に内筒状体を有しており
上記流路形成体が、その外側の端部に外筒状体を有しており、
上記内筒状体が、内筒端部開口と内筒側面開口とを有しており、この内筒端部開口が上記流路導入口とされており、この内筒側面開口が上記流路に連通しており、
上記外筒状体が、外筒端部開口と外筒側面開口とを有しており、この外筒端部開口が上記流路排出口とされており、この外筒側面開口が上記流路に連通している請求項1から3のいずれに記載の浄水装置。
【請求項5】
上記流路形成体の上記流路が、第1封着部材と、第2封着部材と、これらの封着部材に貼り付けられた膜部材とによって形成されており、
上記ガイド部材として、第1ガイド部材及び第2ガイド部材が設けられており、
上記第1封着部材が、上記第1ガイド部材によって螺旋状に保持されており、
上記第2封着部材が、上記第2ガイド部材によって螺旋状に保持されている請求項1から4のいずれかに記載の浄水装置。
【請求項6】
上記透過ユニットの側面にスペーサーが設けられており、
このスペーサーの第1縁部が上記第1ガイド部材に当接しており、
このスペーサーの第2縁部が上記第2ガイド部材に当接している請求項5に記載の浄水装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の浄水装置と、貯液タンクと、管路とを有しており、
上記管路が、
外部排出口と、
上記貯液タンクの出口と上記浄水装置の流入口とを結ぶ第1管路系と、
上記浄水装置の流出口と外部排出口とを結ぶ第2管路系と、
上記浄水装置2を経由することなく、上記貯液タンクの出口と上記外部排出口とを結ぶ第3管路系と、
上記浄水装置の流出口と上記貯液タンクの入口とを結ぶ第4管路系と
バルブとを有しており、
次の3つのルートへの切り替えが可能とされている浄水システム。
(1)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由して上記貯液タンクに戻る循環ルート。
(2)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由して上記外部排出口に至る第1排出ルート。
(3)上記貯液タンクから上記浄水装置を経由することなく上記外部排出口に至る第2排出ルート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−78736(P2013−78736A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220710(P2011−220710)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】