説明

浚渫システム

【課題】ダム貯水池などの水底の(例えば、粒径200mm〜250mmの)大きな礫やごみなどの異物を含む堆砂を連続的に効率よく吸引する。
【解決手段】このシステムSは、超高圧ポンプ1、特殊エジェクター2、先端に破砕機4を有する吸引管3、流体注入装置5及び排砂管6を備え、エジェクター2を破砕機4及び流体注入装置5とともに駆動して、水底の堆砂を当該堆砂に含まれる大きな礫その他の含有物を破砕機4で破砕しながら、流体注入装置5により注入される流体と混合して、吸引管3を通してエジェクター2に吸引し、排砂管6へ圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの貯水池、湖水、河川などの水底の堆砂の浚渫に使用する浚渫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダム貯水池の堆砂の進行により、貯水池容量の減少、上流河床の上昇、下流河床の低下、海岸線の後退などの問題が発生し、また、生物環境へ影響を及ぼすことが指摘されている。ダム貯水池の堆砂問題の解決を図ることは万国共通の課題であり、この問題を放置することは次世代に対する負の遺産の継承を意味する。したがって、ダム貯水池自体の機能の維持やダム及び河道の安全確保、流域管理の視点から、ダム貯水池の堆砂に関する対策を講じることが必要である。
【0003】
この堆砂の対策には各種の工法があり、例えば、欧州諸国の発電用貯水池では、排砂バイパス・フラッシング排砂が多く、中国では、フラッシング排砂が多い。これに対して日本では、伝統的に掘削・浚渫が多く、特に、ダム貯水池内の水面下の堆砂の浚渫を必要とする場合、グラブ浚渫工法又はポンプ浚渫工法が一般に採用される。グラブ浚渫工法は、周知のとおり、グラブ船を用い、グラブバケットで水底に堆積した土砂を掘削する工法で、この種の工法が例えば特許文献1などに開示されている。ポンプ浚渫工法は、ポンプ船を用い、ポンプにより水底の土砂を吸い上げ、これを管路で搬送する工法で、この種の工法が例えば特許文献2などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−166262公報
【特許文献2】特開平3−244716公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグラブ浚渫工法では、グラブバケットの開閉構造により、必要以上の厚さの土砂を浚渫するため、水質の汚濁を発生させるだけでなく、余分な浚渫土砂の発生を招き、作業効率が悪いという問題がある。これに対して、従来のポンプ浚渫工法においては、ポンプにより土砂を連続的に吸引するため、作業効率がよく、また吸引部に濁りの発生が少ないというメリットがあるものの、他面で、この工法に用いられるポンプが遠心力によるインペラー方式の水中ポンプであるため、このような水中ポンプでは、多くのダム貯水池の堆砂に存在する粒径200mm〜250mmの大きな礫やごみなどの異物に対する適用性が低い、という問題がある。そして、このような浚渫工法の分野では、粒径250mm程度の大きな礫を含む砂礫土砂を対象として吸引を行い、例えば400mに亘る長い距離を搬送することのできる技術がない、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、ダム貯水池などの水底の(例えば、粒径250mm程の)大きな礫やごみなどの異物を含む堆砂を連続的に効率よく吸引し、(例えば、400m程の)長い距離を搬送することのできる新たなポンプを用いた浚渫システムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、水底に沈殿する堆砂をポンプで吸引し、排砂管へ送り出す浚渫システムにおいて、前記ポンプは、高圧の動力水を送給する超高圧ポンプと、噴射口、吸引口、及び吐出口を有し、前記超高圧ポンプから送給される動力水により駆動され、堆砂を吸引、圧送するエジェクターと、先端にスクリュー式の破砕機を有し、堆砂を前記エジェクターに吸引搬送する吸引管と、前記破砕機又は前記吸引管に接続され、前記破砕機と前記吸引管との接続付近に流体を注入する流体注入装置とを備え、前記エジェクターの噴射口、吸引口、吐出口にそれぞれ、前記超高圧ポンプ、前記吸引管、前記排砂管が接続され、前記破砕機又は前記吸引管に前記流体注入装置が接続されて構成され、前記エジェクターを前記破砕機及び前記流体注入装置とともに駆動して、水底の堆砂を、当該堆砂に含まれる吸引、圧送対象とする所定の大きさまでの礫その他の含有物を前記破砕機で前記エジェクターに吸引、圧送可能な大きさに破砕しながら、前記流体注入装置により注入される前記流体と混合して、前記吸引管を通して前記エジェクターに吸引し、前記排砂管へ圧送する、ことを要旨とする。
【0008】
また、この浚渫システムは次の各部に次のような構成を有することが好ましい。
(1)破砕機は、一端に開口を有し、他端に駆動モーター取付部を有する略円筒形状をなし、外周面の前記他端側に吸引管の接続口を形成され、内周面の前記接続口よりも前記開口側の中間部に前記開口側から前記駆動モーター取付部に向けて漸次小径のテーパー面が形成されてなる外筒と、前記外筒の前記駆動モーター取付部に出力軸を前記外筒の軸芯と同芯上に配置して取り付けられる油圧式の駆動モーターと、前記油圧式の駆動モーターの出力軸に前記外筒の軸芯に対して偏芯して作動連結され、正逆回転可能に駆動可能な回転軸と、前記回転軸の少なくとも基端側に形成され、軸芯に対して直角方向の断面形状を略円形とするコーンスクリュー、及び前記回転軸の先端側から前記コーンスクリューに向けて螺旋状に形成されるオーガ式のスクリューとを具備し、前記接続口に吸引管が接続される。
(2)破砕機の外筒のテーパー面及び/又はコーンスクリューの外周面に複数の凸部を有する。
(3)破砕機は多関節アーム装置に取り付けられ、前記多関節アーム装置を介して堆砂の吸引先に向けて操作される。
(4)破砕機に水中カメラが堆砂の吸引先に向けて取り付けられ、操作側に前記水中カメラにより撮像された画像情報を表示する表示装置が設置される。
(5)流体に空気が採用され、流体注入装置は、空気を供給するコンプレッサーと、前記コンプレッサーと破砕機又は吸引管との間に接続される注入管とからなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浚渫システムによれば、上記の構成により、エジェクターを破砕機及び流体注入装置とともに駆動して、水底の堆砂を、当該堆砂に含まれる吸引、圧送対象とする所定の大きさ(例えば、粒径250mm)までの礫その他の含有物を破砕機でエジェクターに吸引、圧送可能な大きさ(例えば、粒径150mm以下)に破砕しながら、流体注入装置により注入される流体と混合して、吸引管を通してエジェクターに吸引し、排砂管へ圧送するようにしたので、ダム貯水池などの水底の(例えば、粒径250mm程の)大きな礫やごみなどの異物を含む堆砂でも連続的に効率よく吸引することができる、という格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態における浚渫システムの構成を示すブロック図
【図2】同システムに用いるエジェクターの構成を示す図
【図3】同システムに用いる破砕機の構成を示す図((a)は側面断面図(b)は先端面図)
【図4】同システムを用いた浚渫工法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1に浚渫システムの構成を示している。図1に示すように、浚渫システムSは、水底に沈殿する堆砂をポンプで吸引し、排砂管6へ送り出す形式のシステムで、このシステムSのポンプは、高圧の動力水を送給する超高圧ポンプ1と、噴射口、吸引口、及び吐出口を有し、超高圧ポンプ1から送給される動力水により駆動され、堆砂を吸引、圧送するエジェクター2と、先端にスクリュー式の破砕機4を有し、堆砂をエジェクター2に吸引搬送する吸引管3と、破砕機4又は吸引管3に接続され、破砕機4と吸引管3との接続付近に流体を注入する流体注入装置5とを備え、エジェクター2の噴射口、吸引口、吐出口にそれぞれ、超高圧ポンプ1、吸引管3、排砂管6が接続され、破砕機4又は吸引管3に流体注入装置5が接続されて構成される。
【0012】
この浚渫システムSでは、最大粒径(直径)250mm程度までの大きさの石やごみを含む砂礫土砂を吸引、圧送対象として、超高圧ポンプ他各ポンプ機器が製作され、これらのポンプ機器がユニットフロートを用いた台船上に配置されて組み立てられる(図4参照)。
【0013】
超高圧ポンプ1は、エジェクター2で最大粒径150mm程度の石などを含む砂礫土砂を吸引、圧送するのに必要な高い圧力で大容量の動力水をエジェクター2に供給可能に、ポンプ性能として1800回転/分で揚程1.5MPa、流量5m3/分程度の送水が可能な大型の両吸込渦巻ポンプ11、12が2台使用され、これらのポンプ11、12が並列に連結されて、揚程1.5MPa、流量10m3/分程度の能力を有する。この場合、両吸込渦巻ポンプ11、12の動力はモーターでもよいが、エンジンが採用され、220kw相当のエンジンが取り付けられる。なお、エンジン式の超高圧ポンプにしたことで全体がコンパクトになる利点がある。
【0014】
エジェクター2は、図2に示すように、一端にノズル接続口211、他端に内管接続口212をそれぞれ有し、周面に吸引管接続口(吸引口)213を有するエジェクター本体をなす外管21と、外管21のノズル接続口211に嵌め込み固定されて、高圧水(ジェット水)を発生させるため噴射口をなすノズル22と、外管21の内管接続口212に嵌め込み固定されて、高圧水を受ける吐出口をなす内管23とからなり、このエジェクター2内に最大粒径150mm程度の礫などを含む砂礫土砂を吸引、圧送可能に、ノズル22の直径を60mm以上、内管22の直径を200mm以上(例えば、300mm)とし、ノズル22から内管23までの距離を150mm〜450mmの範囲、内管23の長さを500mm〜2000mmの範囲とする。なお、このエジェクター2は大型の超高圧ポンプ1に対応する大型のもので、自動制御された最適空気を外部から導入する点、絞りのない内管23を用いて真空を発生させる点で通常のエジェクターと異なり、その他管の磨耗に強い、管の閉塞や詰まりに強い、高濃度で吸引できる、吸引部の汚濁発生がない、などの利点がある。
【0015】
吸引管3は、フレキシブルホース又は鋼管が使用され、この吸引管3内に最大粒径150mm程度の礫などを含む砂礫土砂を吸引搬送可能に、直径を200mm以上とし、長さを閉塞防止のため20m以下とする。この吸引管3はエジェクター2の外管21の吸引管接続口213に連結固定される。
【0016】
破砕機4は、図3に示すように、一端に開口40を有し、他端に駆動モーター取付部41を有する略円筒形状をなし、外周面の他端側に吸引管3の接続口42を形成され、内周面の接続口42よりも開口40側の中間部に開口40側から駆動モーター取付部41に向けて漸次小径のテーパー面43が形成されてなる外筒44と、外筒44の駆動モーター取付部41に出力軸45を外筒44の軸芯と同芯上に配置して取り付けられる油圧式の駆動モーター46と、油圧式の駆動モーター46の出力軸45に外筒44の軸芯に対して偏芯して作動連結され、正逆回転可能に駆動可能な回転軸47と、回転軸47の少なくとも基端側に形成され、軸芯に対して直角方向の断面形状を略楕円形とするコーンスクリュー48、回転軸47の先端側からコーンスクリュー48に向けて螺旋状に形成されるオーガ式のスクリュー49、及び回転軸47の先端に取り付けられるウィング491とを具備し、外筒44の外周面の接続口42に吸引管3(の先端)が接続される。
この破砕機4では、外筒44内周面のテーパー面43の駆動モーター取付部41側の端部に延長して当該端部と略同じ高さの段部43Eが形成されて、これらテーパー面43及び段部43Eの各面に破砕ビットもしくは肉盛溶接により複数の凸部431が設けられる。このような外筒44において、コーンスクリュー48は外筒44内のテーパー面43及び段部43Eに対応する位置に配置され、コーンスクリュー48の外周面480はテーパー面43に対向する面が所定の外形寸法の略円錐台形に形成され、段部43Eに対向する面が所定の外形寸法の略円柱形に形成され、これら略円錐台形及び略円柱形の各面に肉盛溶接により複数の凸部481が設けられる。このようにして外筒44のテーパー面43及び段部43Eとコーンスクリュー48の外周面480との間に、粒径250mm程度の大きさの石やごみでも取り込み、かつエジェクター2に吸引可能な粒径150mm以下に破砕できるように、所定の間隔の空間が設けられ、また、既述のとおり、コーンスクリュー48は軸芯に対して直角方向の断面形状が略楕円形に形成されて、外筒44内でコーンスクリュー48の回転により、外筒44内のテーパー面43及び段部43Eとコーンスクリュー48の外周面480との間の空間を拡大縮小可能になっていて、外筒44内のテーパー面43及び段部43Eの複数の凸部431とコーンスクリュー48の外周面480の複数の凸部481はそれぞれ、この間隔が可変される空間に向けて突出される。なお、オーガ式のスクリュー49の外径はコーンスクリュー48の外径よりも大きく、外筒44の開口40側の内周面の内径よりも少し小さくなっており、開口40側の内周面内に配置される。先端のウィング491は破砕機4内で詰まりそうな大きな礫などを跳ね飛ばすため、外筒44の開口40内に回転可能に配置される。このような構成からなる破砕機4は、最大粒径250mm程度の大きさの石やごみでも外筒44の開口40から内部に取り込み、外筒44の内周面のテーパー面43及び段部43Eの各面とコーンスクリュー48の外周面480との間の拡縮される空間で外筒44のテーパー面43及び段部43Eの各面とコーンスクリュー48の外周面480とにより各面の複数の凸部431、481を介して大きな衝撃力で圧接し、エジェクター2に吸引可能に粒径150mm以下に破砕可能になっている。
また、この破砕機4ですべての石を破砕しようとすると、モーターが大きくなりすぎるため、この破砕機4では、一定の硬さ以上の石は破砕せず、スクリュー48、49の逆回転により、破砕機4外に排出するものとする。この破砕機4の場合、エジェクター2の駆動中は、常に吸引力が働いているので、スクリュー48、49を逆回転しても、土砂を連続的に吸引しており、土砂吸引の効率を高めることができる。
かかる破砕機4は多関節アーム装置に取り付けられ、多関節アーム装置を介して堆砂の吸引先に向けて操作される。この場合、多関節アーム装置に、図4に示すように、ロングアームバックホウBが利用され、破砕機4はバックホウBのロングアームaの先端に取り付けられる。なお、破砕機4の油圧ユニットは破砕機専用のものでもよいが、破砕機4の操作にバックホウBを使用するので、バックホウBに搭載された油圧ユニットを使用してもよい。バックホウBの油圧ユニットを用いることで、破砕機4の回転数を例えば20rpm〜100rpmの範囲で自由に変えることができ、オペレーターはバックホウBの油圧メーターを見ながら破砕機4を操作することができる。
また、この場合、破砕機4には水中カメラ70が堆砂の吸引先に向けて取り付けられ、操作側、この場合、バックホウBの運転席に水中カメラ70により撮像された画像情報を表示するモニター(表示装置)71が設置される。このようにしてオペレーターはモニター71を使って堆砂の吸引先の状態を確認しながら作業を行うことができ、堆砂の吸引効率を向上させることができる。
【0017】
破砕機4又は吸引管3に注入する流体は空気が採用される。流体注入装置5は空気注入装置で、図1に示すように、空気を供給するコンプレッサー50と、コンプレッサー50と破砕機4又は吸引管3との間に接続される注入管51とからなる。この場合、コンプレッサー50に接続された注入管51は、破砕機4外周面の吸引管の接続口42に形成された空気注入口に注入管51の吹出し口が土砂の吸引方向に向けて接続される。空気量は1気圧換算で5m3/分以下とする。吸引管3の長さが15m程度を超える場合、吸引管3内の土砂濃度は5〜8パーセント以上と濃くなって、吸引管3が閉塞する恐れがあるが、破砕機4の内部で破砕機4と吸引管3との接続付近に空気を注入することにより、吸引管3の閉塞を防止することができる。
【0018】
排砂管6は、鋼管が使用され、この排砂管6内に最大粒径150mm程度の礫などを含む砂礫土砂を排送可能に、1本の鋼管の直径を400mm又はそれ以上、長さを6mとし、複数の鋼管をそれぞれ、ゴムジョイントを介して、各鋼管のフランジをボルト止めすることにより連結して、延長を200m〜400mとする。また、この排砂管6を水に浮かせて配管するため、鋼管1本につき2個のフロートを設置して貯水池に配管する。なお、この排砂管6で距離400m以上の砂礫土砂の輸送を行う場合は、図1に示すように、排砂管6に流体を挿入する。この場合、流体は空気とし、空気注入装置8により空気を注入する。空気注入装置8は空気を供給するコンプレッサー81と、コンプレッサー81と排砂管6との間に接続される注入管82とからなり、注入管82がエジェクター2の吐出口の先0〜20mの位置で排砂管6の一部に配管された空気挿入管80に接続され、排砂管6内に空気を供給する。空気量は1気圧換算で20m3/分以下とする。
【0019】
この浚渫システムSはこのような超高圧ポンプ1、エジェクター2、吸引管3、破砕機4、流体注入装置5及び排砂管6を備え、エジェクター2の噴出口のノズル22に超高圧ポンプ1を接続し、吸引口213に吸引管3を接続し、吐出口の内管23に排砂管6を接続し、破砕機4に流体注入装置5を接続して構成され、エジェクター2を破砕機4及び流体注入装置5とともに駆動して、水底の堆砂を、当該堆砂に含まれる吸引、圧送対象とする所定の大きさまでの礫その他の含有物を破砕機4で所定の粒径以下の大きさに破砕しながら、流体注入装置5により注入される空気と混合して、吸引管3を通してエジェクター2に吸引し、排砂管6へ圧送するようになっている。
【0020】
続いて、この浚渫システムSを用いた浚渫施工について説明する。図4に示すように、バックホウBのロングアームaの先端に取り付けられた破砕機4をロングアームaの操作によりダム貯水池の水底に向けて降ろし、破砕機4の先端開口40を堆砂面に対して適宜の距離にセットする。この場合の作業は、破砕機4に取り付けられた水中カメラ70及び操作側に設置されたモニター71により、水底の堆砂面の状態を確認することにより、効率よく行うことができる。そして、超高圧ポンプ1を駆動してエジェクター2を作動させるとともに、破砕機4及び流体注入装置5を駆動する。
図1、図2及び図3において、超高圧ポンプ1の駆動によりこの超高圧ポンプ1から高圧の大容量の動力水がエジェクター2に送給され、この動力水がエジェクター2のノズル22で絞られて秒速50mを超える流速でエジェクター2の内部に内管23に向けて噴射され、これによってエジェクター2の内部に高い負圧が発生し、エジェクター2の吸引口213を介してエジェクター2の外部から内部に向けて真空吸引力が働く。この真空吸引力により、水底の堆砂が破砕機4の開口40から連続的に吸入され、吸引管3、吸引口213を通してエジェクター2内部に連続的に吸引され、内管23を通じて排砂管6へ圧送される。
また、このとき、破砕機4の駆動により破砕機4の各スクリュー48、49が回転され、併せて、空気注入装置5の駆動により破砕機4内部の破砕機4と吸引管3との接続付近に空気が砂礫土砂の吸引方向に注入されるので、堆砂に含まれる吸引、圧送対象の所定の大きさまでの礫その他の含有物が破砕機4内で所定の粒径又は大きさ以下に破砕され、これらの礫その他の含有物を含む砂礫土砂に空気が混合されて、吸引管3に吸引される。
この場合、既述のとおり、超高圧ポンプ1による高い圧力と大容量の動力水の送給能力と、これに対応可能な大口径の内管23を有する大型の特殊エジェクター2とにより、エジェクター2は粒径150mm程度の石を吸引、圧送することができ、また、破砕機4は直径250mm程度の大きさの石を取り込み、150mm程度以下に破砕する能力を有するので、破砕機4から吸入される砂礫土砂の中に直径250mm程度の大きさの石が含まれていても、この石は破砕機4で150mm程度以下に破砕されて、砂礫土砂とともに、吸引管3を通じてエジェクター2内部へ送られ、内管23を通して排砂管6へ排送される。
また、この場合、吸引管3内の土砂濃度が濃い場合、吸引管3の長さが15mを超えると、閉塞する可能性が高まるが、破砕機4内部で破砕機4と吸引管3との接続付近に空気が注入され、砂礫土砂に混合されるので、吸引管3内の砂礫土砂の見かけの流速が速くなって、土砂濃度が低くなり、併せて、この空気の注入により破砕機4と吸引管3との接続付近に適度の振動が発生し、この振動により砂礫土砂が流動しやすくなり、吸引管3内が砂礫土砂により閉塞されるのを防止される。
このようにして最大粒径250mm程度の石を含む砂礫土砂であっても、エジェクター2に連続的に吸引され、排砂管6に圧送される。
なお、エジェクター2の内管23の先0〜20mの位置で排砂管6の一部に配管された空気挿入管80に空気注入装置8により空気が供給され、排砂管6内に排送される砂礫土砂に空気が混合されるので、排砂管6内の土砂濃度が低くなり、排砂管6内が砂礫土砂により閉塞されるのを防ぎ、所定の排送先まで確実に排送されることになる。
【0021】
以上説明したように、この浚渫システムSによれば、超高圧ポンプ1、エジェクター2、吸引管3、破砕機4、流体注入装置5及び排砂管6を備え、エジェクター2の噴出口のノズル22に超高圧ポンプ1を接続し、吸引口213に吸引管3を接続し、吐出口の内管23に排砂管6を接続し、破砕機4に流体注入装置5を接続して構成され、エジェクター2を破砕機4及び流体注入装置5とともに駆動して、水底の堆砂を、当該堆砂に含まれる吸引、圧送対象とする所定の大きさまでの礫その他の含有物を破砕機4で所定の粒径又は大きさ以下に破砕しながら、流体注入装置5により注入される空気と混合して、吸引管3を通してエジェクター2に吸引し、排砂管6へ圧送するので、ダム貯水池などの水底の大きな礫やごみなどの異物を含む堆砂でも連続的に効率よく吸引することができる。
この浚渫システムSの場合、特に、超高圧ポンプ1による高い圧力と大容量の動力水の送給能力と、これに対応可能な大口径の内管23を有する大型特殊のエジェクター2とにより、エジェクター2は粒径150mm程度の石を吸引、圧送することができ、また、破砕機4は直径250mm程度の大きさの石を取り込み、150mm程度以下に破砕する能力を有するので、破砕機4から吸入される砂礫土砂の中に直径250mm程度の大きさの石が含まれていても、この石を破砕機4で150mm程度以下に破砕して、砂礫土砂とともに、吸引管3を通じてエジェクター2内部へ連続的に吸引し、排砂管6へ圧送することができる。
また、この浚渫システムSの場合、吸引管3の長さが15m程度を超えるものであっても、破砕機4内部で破砕機4と吸引管3との接続付近に空気を注入し、砂礫土砂に混合するので、吸引管3内の土砂濃度を低くすることができ、さらに、この空気の注入により破砕機4と吸引管3との接続付近に適度の振動を発生し、この振動により砂礫土砂を流動しやすくすることができ、これらの作用により、吸引管3内が砂礫土砂により閉塞されるのを防止することができる。
【0022】
(この浚渫システムSによる砂礫土砂の吸引、輸送、陸揚げの試験施工の結果)
この浚渫システムSを用いて、水深4〜9mの貯水池で堆積砂礫を大きな玉石は破砕機4で破砕又は除去しながら吸引を行い、最大400mの距離を輸送し陸揚げしたところ、河床の状況にもよるが、吸引、輸送した砂礫土砂は1時間当たり35m3程度であり、吸引された土砂の中に粒径200mm程度の石、長さ500mm程度の木片、自動車のタイヤなどが混ざっており、この浚渫システムSが、貯水池内の粒径の大きな石や長い木片、ごみなどの異物に対する適応性が高いことを確認できた。
この浚渫システムSによれば、水中に堆積した土砂を、貯水池運用に大きく制約を与えることなしに、効果的に採取、輸送することができ、ダム貯水池の堆砂対策として有効で、採取した土砂をダム下流河川に供給することにより河川の環境改善にも資する新たな工法として今後の発展を期待することができる。
【0023】
なお、この実施の形態では、破砕機の外筒のテーパー面及び段部の各面とコーンスクリューの外周面に複数の凸部を設けたが、破砕機の外筒のテーパー面及び段部又はコーンスクリューの外周面のいずれか一方にのみ複数の凸部を設けるようにしてもよい。
また、この実施の形態では、流体に空気を採用し、流体注入装置を、空気を供給するコンプレッサーと、コンプレッサーと破砕機又は吸引管との間に接続する注入管とにより構成したが、流体に水その他の液体を採用し、流体注入装置を水その他の液体を供給する供給装置と、この供給装置と破砕機又は吸引管との間に接続する注入管とにより構成してもよい。
このようにしても上記実施の形態と略同様の作用効果を得ることができる。
さらに、エジェクターは水中エジェクターとして水中に設置するようにしてもよい。水深の深い箇所を浚渫する場合には、吸引管を長くするよりもエジェクターを水中に設置して吸引管を短くした方が有利となる。
【符号の説明】
【0024】
S 浚渫システム
1 超高圧ポンプ
2 エジェクター
211 ノズル接続口
212 内管接続口
213 吸引管接続口(吸引口)
21 外管
22 ノズル(噴射口)
23 内管(吐出口)
3 吸引管
4 破砕機
40 開口
41 駆動モーター取付部
42 吸引管の接続口
43 テーパー面
43E 段部
431 凸部
44 外筒
45 出力軸
46 油圧式の駆動モーター
47 回転軸
48 コーンスクリュー
480 外周面
481 凸部
49 オーガ式のスクリュー
491 ウィング
5 流体注入装置(空気注入装置)
50 コンプレッサー
51 注入管
6 排砂管
70 水中カメラ
71 モニター(表示装置)
8 空気注入装置
80 空気挿入管
81 コンプレッサー
82 注入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に沈殿する堆砂をポンプで吸引し、排砂管へ送り出す浚渫システムにおいて、
前記ポンプは、
高圧の動力水を送給する超高圧ポンプと、
噴射口、吸引口、及び吐出口を有し、前記超高圧ポンプから送給される動力水により駆動され、堆砂を吸引、圧送するエジェクターと、
先端にスクリュー式の破砕機を有し、堆砂を前記エジェクターに吸引搬送する吸引管と、
前記破砕機又は前記吸引管に接続され、前記破砕機と前記吸引管との接続付近に流体を注入する流体注入装置と、
を備え、
前記エジェクターの噴射口、吸引口、吐出口にそれぞれ、前記超高圧ポンプ、前記吸引管、前記排砂管が接続され、前記破砕機又は前記吸引管に前記流体注入装置が接続されて構成され、
前記エジェクターを前記破砕機及び前記流体注入装置とともに駆動して、水底の堆砂を、当該堆砂に含まれる吸引、圧送対象とする所定の大きさまでの礫その他の含有物を前記破砕機で前記エジェクターに吸引、圧送可能な大きさに破砕しながら、前記流体注入装置により注入される前記流体と混合して、前記吸引管を通して前記エジェクターに吸引し、前記排砂管へ圧送する、
ことを特徴とする浚渫システム。
【請求項2】
破砕機は、一端に開口を有し、他端に駆動モーター取付部を有する略円筒形状をなし、外周面の前記他端側に吸引管の接続口を形成され、内周面の前記接続口よりも前記開口側の中間部に前記開口側から前記駆動モーター取付部に向けて漸次小径のテーパー面が形成されてなる外筒と、前記外筒の前記駆動モーター取付部に出力軸を前記外筒の軸芯と同芯上に配置して取り付けられる油圧式の駆動モーターと、前記油圧式の駆動モーターの出力軸に前記外筒の軸芯に対して偏芯して作動連結され、正逆回転可能に駆動可能な回転軸と、前記回転軸の少なくとも基端側に形成され、軸芯に対して直角方向の断面形状を略円形とするコーンスクリュー、及び前記回転軸の先端側から前記コーンスクリューに向けて螺旋状に形成されるオーガ式のスクリューとを具備し、前記接続口に吸引管が接続される請求項1に記載の浚渫システム。
【請求項3】
破砕機の外筒のテーパー面及び/又はコーンスクリューの外周面に複数の凸部を有する請求項1又は2に記載の浚渫システム。
【請求項4】
破砕機は多関節アーム装置に取り付けられ、前記多関節アーム装置を介して堆砂の吸引先に向けて操作される請求項1乃至3のいずれかに記載の浚渫システム。
【請求項5】
破砕機に水中カメラが堆砂の吸引先に向けて取り付けられ、操作側に前記水中カメラにより撮像された画像情報を表示する表示装置が設置される請求項1乃至4のいずれかに記載の浚渫システム。
【請求項6】
流体に空気が採用され、流体注入装置は、空気を供給するコンプレッサーと、前記コンプレッサーと破砕機又は吸引管との間に接続される注入管とからなる請求項1乃至5のいずれかに記載の浚渫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−53437(P2013−53437A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191677(P2011−191677)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(396000374)株式会社西日本油機 (4)