説明

浣腸製剤およびその使用

【課題】
【解決手段】本発明は、ガンおよび非ガン性の症状の光線力学的療法ならびに光線力学的診断の改善された方法に関し、特にそのような方法で用いる改良された浣腸製剤に関する。前記浣腸製剤は、5−アミノレブリン酸(5−ALA)、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤を含む。そのような製剤は、1つ以上の増粘剤、粘膜粘着剤もしくは粘液溶解剤、浸透促進剤、またはキレート剤をさらに含み得る。本願に記載の方法および製剤は、直腸および/または結腸内のガンおよび非ガン性の症状の光線力学的な治療法および/または診断法で用いるのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンおよび非ガン性の症状の光線力学的療法ならびに光線力学的診断の改善された方法に関し、特に、そのような方法で用いる改善された浣腸製剤に関する。前記浣腸製剤は、5−アミノレブリン酸(5−ALA)、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば、5−ALAエステルである光増感剤を含む。本明細書に記載の方法および製剤は、結腸および/または直腸内のガンおよび非ガン性の症状の光線力学的な治療法および/または診断法で用いるのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(PDT)は、様々なガンならびに他の疾病の治療に用いられている比較的新しい手法である。PDTには光増感剤の投与を伴い、次いで光活性化光への露光を行い光増感剤を活性化させ、それらを細胞毒性の状態へと変換することによって細胞の破壊を起し、疾病を治療する。5−アミノレブリン酸(5−ALA)およびその特定の誘導体、例えば5−ALAエステルを含むいくつかの光増感剤が知られており、かつ文献に記載されている。
【0003】
現在、5−ALAまたはそのエステルを含有する3種類の医薬品が、PDTおよび光線力学的診断(PDD)で臨床的に用いられている。それらは、メトビックス(Metvix)(登録商標)(スイス、ガルデルマ社)、フォトキュアASA社(ノルウェー、オスロ)開発のヘックスビックス(Hexvix)(登録商標)、およびDUSAファーマシューティカルズ社(カナダ)開発のレブランケラスティック(Levulan Kerastick)(登録商標)である。メトビックス(登録商標)は、光線性角化症および基底細胞ガンの治療用の経皮薬で、乳液(クリーム)状であり、メチルALAエステルを含む。ヘックスビックス(登録商標)は、ヘキシルALAエステルを含む水溶液であり、膀胱ガンの診断用に膀胱に注入されるものである。レブランケラスティック(登録商標)は、2つに仕切られた(2−compartment)製剤であり、投与の直前に5−ALAの液剤を調製するのに用いられる。この製品は、皮膚病の治療に用いることができる。
【0004】
従来のPDT法またはPDD法を用いて治療するのが難しい体の部位は、胃腸管の下部、特に結腸および直腸であり、それらは、結腸炎、結腸直腸ガン、クローン病、過敏性腸症候群や様々な局所的な感染症等の数多くの危険で命にかかわる疾病と関係し得る。これらの疾病のうち潜在的に最も危険なのは結腸直腸ガンである。現在の結腸直腸ガンの診断法として、糞便中の血液、下腹部痛、または体重の減少等の臨床症状の観測、結腸鏡検査やX線に基づく撮像法が挙げられる。他の多くのガンの形態と同様に、結腸直腸ガン患者の予後は診断時の病期、とりわけ患者に遠隔転移が起きているか否かによって左右される。今日、いくつかの治療薬が結腸直腸ガンの治療に臨床的に用いられているが、現在の治療薬には臨床的な限界があるため、さらなる治療的養生法や代替的な早期診断の方法に対する医学的なニーズが依然としてある。
【0005】
5−ALAおよびその誘導体を含む従来の経口製剤、例えば液剤、懸濁剤、古典的な錠剤や水性製剤を含有するカプセル等には、それらを胃腸系の下部における症状の診断および/または治療で用いた場合にいくつかのデメリットがあり得る。それらは、医薬品の貯蔵安定性、医薬品が胃腸系全体を通過する際の生体内安定性、および5−ALAまたはその誘導体の吸収に起因する全身毒性に関係する。全身吸収によって、所望の治療部位における臨床効力の低下が生じる。効力の低下は、主に、胃腸系の下部において5−ALAまたはその誘導体の濃度が不均一で低いことに起因する。従って、経口製剤が所望の臨床効果を呈するためには、有効成分の量を増やす必要がある。しかしながら、これによって副作用が起こり得る。
【0006】
B.Mayingerら(Endoscopy40: 106〜109、 2008(非特許文献1))は、5−アミノレブリン酸ヘキシルエステルを含む浣腸剤と、検出手段として蛍光内視鏡検査とを用いた光線力学的診断による結腸内の前がん性の症状の検出に関する臨床研究を記載している。その研究で用いられた浣腸剤は、500mlまたは1000mlの滅菌されたリン酸緩衝生理食塩水に溶解された200mgの5−アミノレブリン酸ヘキシルエステル(HAL)を含む。これらの製剤における5−アミノレブリン酸ヘキシルエステルの最終濃度は、それぞれ1リットルあたり1.6mmol、および0.8mmolである。筆者は、PDDを用いると、白色光内視鏡観察法(white light endoscopic imaging)を用いる場合よりもポリープを28%多く検出することを明らかにしている。1リットルあたり1.6mmolの5−ALAヘキシルエステルの500mlの浣腸剤を、30分に渡って注入し、60分間保持した場合に最良の結果が得られた。従って、蛍光検出の前の総時間は90分であった。浣腸剤の漏出を防ぐために、前記60分間の保持時間中にブロッキングバルーンを用いなければならなかった。
【0007】
E.Endlicherら(Gastrointestinal Endoscopy60(3): 449〜454、2004(非特許文献2))は、患者の直腸腺腫または直腸ガンの光線力学的検出に5−ALAヘキシルエステル浣腸剤を用いている。1リットルあたり3.2mmolのHALの注入時間は30〜45分、休止時間は30分(検出前の総時間:60〜75分)であり、それにより満足のいく結果が得られた。
【0008】
H.Messmannら(Gut52: 1003〜1007、 2003(非特許文献3))は、潰瘍性大腸炎患者における低度および高度の形成異常の光線力学的検出に5−ALA浣腸剤を用いている。3gの5−ALAを250mlの0.9%NaClに溶解して(5−ALAの濃度は72mMに相当)浣腸剤を調製し、それを1時間に渡って注入した。休止時間は1〜2時間であり、検出前の総時間は2〜3時間になった。
【0009】
Mayinger、Endlicher、およびMessmannが行った研究にも関わらず、ガンまたは非ガン性の症状、例えば結腸または直腸内の非ガン性の病変の、光線力学的診断(PDD)または光線力学的療法(PDT)用の製品は現在市販されていない。MayingerおよびEndlicherが行った研究から、浣腸処置(enema procedure)、即ち、注入やインキュベーションについて、改善の余地があることが明らかである。患者にとって、処置の長さは不快であり、多くの患者が漏出や、浣腸剤貯留の際の困難を経験している。昨今、節約が要求され、そのため処置の簡素化により患者の処理能力を高めている病院に対して、浣腸処置は難題を投げかけている。処置等の経費が診断の改善をもたらしているにも関わらず、それが弁済に見合わなければ、決して受け入れられないだろう。開業医の場合、注入やインキュベーションの間に患者への看護師または医師の付き添いが必要となるそのような処置を行うための十分な医療スタッフを抱えていないことが多い。さらに、直腸全体が確実に浣腸剤で覆われるようにするために、患者を監視したり、横向きや後ろ向きにさせなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B.Mayingerら,Endoscopy,2008年、40巻、p.106〜109
【非特許文献2】E.Endlicherら,Gastrointestinal Endoscopy60(3),2004年、p. 449〜454
【非特許文献3】H.Messmannら、Gut、2003年、第52巻、p.1003〜1007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、下部胃腸管、例えば結腸および直腸における症状の早期診断、とりわけ結腸直腸ガンの診断の方法に対する医学的なニーズが依然としてある。特に、結腸直腸ガン、および結腸または直腸内の他の非ガン性の関連症状の診断のための改善された方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
我々は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体を含む光増感剤が浣腸剤の形で投与される光線力学的療法および光線力学的診断の改善された方法を開発した。そのような方法は、従来の経口製剤に比べて大幅に改善された治療効果および診断効果があり、さらに、相当量の薬剤を患部に直接投与できるという利点もある。
【0013】
特に、我々は、先行技術に記載の方法に比べて実施に要する時間が少ない方法を開発した。我々は、浣腸処置の総時間を短縮することで、患者、病院、および開業医にとっての許容性が改善された新しい浣腸製剤も開発した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一態様から見た場合、本発明は、胃腸管の下部における非ガン性の症状またはガンの光線力学的療法または光線力学的診断で用いる浣腸製剤を提供し、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0015】
本発明の他の態様では、胃腸管の下部におけるガン、とりわけ結腸直腸ガンの光線力学的療法(PDT)で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、胃腸系の下部における非ガン性の症状、好ましくは非前ガン性の症状の光線力学的療法(PDT)で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0017】
本発明のさらに他の態様では、胃腸系の下部における非ガン性の症状の光線力学的診断(PDD)で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0018】
本発明の別の態様では、胃腸系の下部におけるガン性の症状の光線力学的診断(PDD)で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0019】
本明細書に記載の診断法は、手術中に行われる場合もあり、その際、浣腸製剤が手術の前に患者に投与され、次いで手術が青色光下で行われる。病変または疾病が青色光下で発光するため、それは外科医が「外科的境界(surgical border)」を定める上での助けとなり、疾病領域、例えば腫瘍をより精選して切除することができるようになる。手術方法における本明細書に記載の浣腸製剤の使用は、本発明のさらなる態様を成している。
【0020】
本明細書に記載の治療法および診断法を、複合療法の形で用いることもできる。例えば、本明細書に記載の任意の方法を用いてガン性または非ガン性の病状に対して一連のPDTを行った後で、PDTがどの程度効果的であったかを測定するために、および/または症状がなんら再発していないかを検出するためにPDD法を行ってもよい。また、本明細書に記載の任意の方法を用いてガン性または非ガン性の症状に対して一連のPDDを行った後で、例えばPDDによって検出されたガン性または非ガン性の症状を治療するためにPDT法を行ってもよい。
【0021】
本発明の他の態様では、
(i)患者の胃腸系の下部、例えば結腸または直腸内の、非ガン性の症状またはガンの光線力学的療法を行う工程と、
(ii)前記患者に対して光線力学的診断を行う工程とを含む方法で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0022】
工程(i)および(ii)のうちの少なくとも1つは、前記患者に本発明に係る浣腸製剤を投与した後で行われる。工程(i)および(ii)の双方が、そのような浣腸製剤の投与の後に行われることが好ましい。
【0023】
よって、本発明の他の態様では、
(i)患者の胃腸系の下部、例えば結腸または直腸内の、非ガン性の症状またはガンの光線力学的診断を行う工程と、
(ii)前記患者に対して光線力学的療法を行う工程とを含む方法で用いる浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0024】
工程(i)および(ii)のうちの少なくとも1つは、前記患者に本発明に係る浣腸製剤を投与した後で行われる。工程(i)および(ii)の双方が、そのような浣腸製剤の投与の後に行われることが好ましい。
【0025】
本発明のさらに他の態様では、患者の非ガン性の症状またはガンの光線力学的療法または光線力学的診断の方法が提供され、前記方法は、
(i)5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤を前記患者に投与する工程と、
(ii)任意に、前記光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度に達するのに必要な期間だけ待つ工程と、
(iii)前記光増感剤を光活性化させる工程とを含む。
【0026】
本明細書に記載の治療法および診断法を行う前に、好ましくは、胃腸管の下部、例えば結腸および直腸を空にする、即ち洗浄するべきである。当該技術分野で従来公知ないくつかの方法、例えば等張食塩水の浣腸剤の使用、または経口摂取され得る緩下剤の投与等の従来の浣腸処置を用いてこれを果たすことができる。代表的な洗浄用の製品としては、ラックスベン(Laxbene)(登録商標)(ドイツ、メルクル社)等のビサコジル座薬、デルコプレップ(Delcoprep)(登録商標)(ドイツ、デルタセレクト社)およびエンドファルク(Endofalk)(登録商標)(ドイツ、DRファルク社)等の経口製剤、トイラックス(Toilax)(登録商標)(フィンランド、オリオン社)等のビサコジルを含む浣腸剤、クリクス(Klyx)(スウェーデン、フェーリング社)等のジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含有する直腸用溶液、およびミクロラックス(Microlax)(登録商標)(スウェーデン、マクニール社)等のラウリル硫酸ナトリウムを含む浣腸剤が挙げられる。多くの場合、患者は、例えば治療の前に最長で12時間絶食することも要求される。
【0027】
より好ましくは、本発明は、患者の非ガン性の症状またはガンの光線力学的療法または光線力学的診断の方法を提供する。前記方法は、
(i)前記患者の胃腸系の下部を空にする工程と、
(ii)任意に、前記胃腸系の下部に、例えば空気または気体を吹送する工程と、
(iii)5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤を前記患者に投与する工程と、
(iv)任意に、前記光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度に達するのに必要な期間だけ待つ工程と、
(v)必要に応じて前記胃腸系の下部に、例えば空気または気体を吹送する工程と、
(vi)前記光増感剤を光活性化させる工程とを含む。
【0028】
浣腸製剤の投与後、同製品の漏出を防ぐために直腸口にバルーンが挿入され得る。結腸全体がより均一に充填されるように、患者は左右に動いたり、また頭を少し上げ下げするよう要求されることもある。
【0029】
本明細書で用いる「ガン」および「ガン性」という用語は、悪性の細胞が存在する症状に関連して用いられている。従って、前ガン性の症状はこれらの用語に含まれない。
【0030】
「非ガン性」という用語に、前ガン性の症状は含まれ得る。しかしながら、本発明による治療に好ましい非ガン性の症状は、非前ガン性の症状である。
【0031】
本明細書で用いる「治療」または「療法」という用語には、治癒的ならびに予防的な治療または療法が含まれる。
【0032】
本明細書で用いる「前駆体」という用語は、代謝的に5−ALAに変換されるため、本質的には5−ALAと同等である5−ALAの前駆体を表わす。従って、「前駆体」という用語には、ヘム生合成のための代謝経路におけるプロトポルフィリンの生物学的前駆体が含まれる。「誘導体」という用語には、医薬的に許容可能な塩や化学修飾された作用物質、例えば5−ALAエステル等のエステルが含まれる。
【0033】
PDTおよびPDDにおける5−ALAおよびその誘導体、例えば5−ALAエステルの使用は学術文献ならびに特許文献で公知である(例えば、WO2006/051269、WO2005/092838、WO03/011265、WO02/09690、WO02/10120、および米国特許第6034267号参照。本明細書ではこれらの内容を参考のために援用する)。5−ALAのそのような誘導体の全て、および医薬的に許容可能なその塩は、本明細書に記載の方法で用いるのに適している。
【0034】
本発明による有用な5−ALA誘導体は、プロトポルフィンIX(PpIX)または他の任意の光増感剤、例えばPpIX誘導体を生体内で形成することが可能な5−ALAの任意の誘導体であり得る。通常、そのような誘導体は、ヘムの生合成経路におけるPpIXまたはPpIX誘導体、例えばPpIXエステルの前駆体であるため、生体内の投与された部位でPpIXの蓄積を誘導することが可能である。PpIXまたはPpIX誘導体の好適な前駆体としては、PpIXの生合成において中間体として生体内で5−ALAを形成することが可能であるか、または中間体として5−ALAを形成せずにポルフィリンに例えば、酵素作用によって変換され得る5−ALAプロドラッグが挙げられる。5−ALAエステルおよび医薬的に許容可能なその塩は、本明細書に記載の方法で用いるのに好ましい光増感剤に含まれる。
【0035】
5−アミノレブリン酸のエステル、およびそのN置換誘導体は、本発明で用いるのに好ましい光増感剤である。5−アミノ基が置換されていない化合物、即ちALAエステルが特に好ましい。そのような化合物は、一般に公知であり、文献(例えば、フォトキュアASA社のWO96/28412およびWO02/10120を参照。本明細書ではこれらの内容を参考のために援用する)に記載されている。
【0036】
置換または非置換アルカノール、好ましくは置換アルカノールと5−アミノレブリン酸とのエステル、即ちアルキルエステルおよび置換アルキルエステルは、本発明で用いるのにとりわけ好ましい光増感剤である。そのような化合物としては、下記式Iの化合物が挙げられる。
【0037】
22N−CH2COCH2−CH2CO−OR1 (I)
【0038】
式中、R1は置換または非置換アルキル基を表わし、R2のそれぞれは、独立して水素原子またはR1基を表わす。
【0039】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、別に規定していなければ、任意の長鎖状もしくは短鎖状、環状、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を含む。不飽和アルキル基は、一価不飽和または多価不飽和であってもよく、アルケニル基およびアルキニル基の双方を含んでもよい。別に規定していなければ、そのようなアルキル基は、40個までの炭素原子を含み得る。しかしながら、炭素原子を30個まで、好ましくは10個まで、特に好ましくは8個まで、とりわけ好ましくは6個まで含むアルキル基が好ましい。
【0040】
式Iの化合物において、R1基は置換または非置換アルキル基である。R1が置換アルキル基の場合、1つ以上の置換基はアルキル基に結合しているか、および/またはアルキル基に割込んでいるかのどちらかである。アルキル基に結合している好適な置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、ニトロ、オキソ、フルオロ、−SR3、−NR32、および−PR32基から選択される置換基である(ただし、R3は水素原子またはC1-6アルキル基である)。アルキル基に割込んでいる好適な置換基は、−O−、−NR3−、−S−、または−PR3基から選択される置換基である。
【0041】
1が置換アルキル基の場合、1つ以上のアリール置換基、即ちアリール基、好ましくは1つのアリール基が好ましい。
【0042】
本明細書で用いる「アリール」基という用語は、窒素、酸素、または硫黄等のヘテロ原子を含み得る、または含み得ない芳香族基を意味する。ヘテロ原子を含まないアリール基が好ましい。好ましいアリール基は20個までの炭素原子、より好ましくは12個までの炭素原子、例えば10個または6個の炭素原子を含む。好ましいアリール基としては、フェニルおよびナフチルが挙げられ、とりわけフェニルが好ましい。また、アリール基は任意で1つ以上、より好ましくは1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい。アリール基はメタ位またはパラ位で、最も好ましくはパラ位で置換されていることが好ましい。好適な置換基としては、ハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、アルコキシ、好ましくは1〜6個の炭素原子を含むアルコキシ基;ハロ、例えばヨード、ブロモ、クロロ、またはフルオロ、好ましくはクロロおよびフルオロ;ならびにニトロおよびC1-6アルキル、好ましくはC1-4アルキルが挙げられる。好ましいC1-6アルキル基としては、メチル、イソプロピル、およびt-ブチルが挙げられ、特にメチルが好ましい。特に好ましいアリール置換基はクロロおよびニトロである。しかしながら、アリール基は非置換であることがさらにより好ましい。
【0043】
好ましいそのようなR1基としては、ベンジル、4−イソプロピルベンジル、4−メチルベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−[t−ブチル]ベンジル、4−[トリフルオロメチル]ベンジル、4−メトキシベンジル、3,4−[ジクロロ]ベンジル、4−クロロベンジル、4−フルオロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル、3−ニトロベンジル、4−ニトロベンジル、2−フェニルエチル、4−フェニルブチル、3−ピリジニル−メチル、4−ジフェニル−メチル、およびベンジル−5−[(1−アセチルオキシエトキシ)−カルボニル]が挙げられる。より好ましいそのようなR1基としては、ベンジル、4−イソプロピルベンジル、4−メチルベンジル、4−ニトロベンジル、および4−クロロベンジルが挙げられる。ベンジルが最も好ましい。
【0044】
1が置換アルキル基の場合、1つ以上のオキソ置換基が好ましい。そのような基は、1つ、2つ、または3つのオキソ基で置換された直鎖状C4-12アルキル基であることが好ましい。そのような基としては、3,6−ジオキサ−1−オクチル、および3,6,9−トリオキサ−1−デシルが挙げられる。
【0045】
1が非置換アルキル基の場合、R1基は直鎖状または分岐状飽和アルキル基であることが好ましい。R1が直鎖状飽和アルキル基の場合、C1-10直鎖状アルキル基が好ましい。代表的な好適な直鎖状アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、およびn−オクチルが挙げられる。C1-6直鎖状アルキル基が特に好ましく、C3−C6直鎖状アルキル基、例えばn−ヘキシルが最も特に好ましい。R1が分岐状飽和アルキル基の場合、そのような分岐状アルキル基は、1つ以上のC1-6アルキル基、好ましくはC1-2アルキル基により分岐された4〜8個、好ましくは5〜8個の直鎖状炭素原子の幹からなることが好ましい。そのような分岐状飽和アルキル基としては、2−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、および3,3−ジメチル−1−ブチルが挙げられる。
【0046】
式Iの化合物において、R2のそれぞれは、独立して水素原子またはR1基を表わす。本発明で用いるのに特に好ましいのは、少なくとも1つのR2が水素原子を表わす式Iの化合物である。とりわけ好ましい化合物において、R2のそれぞれは水素原子を表わす。
【0047】
本発明に係る浣腸製剤で用いるのが最も好ましい光増感剤は、式Iの化合物、および医薬的に許容可能なその塩(ただし、R1はヘキシル、より好ましくはn−ヘキシルであり、またR2は双方とも水素を表わす)、即ち5−ALAヘキシルエステルおよび医薬的に許容可能なその塩、好ましくはHCl塩である。最も好ましい光増感剤は、HC1塩の形態の5−ALAヘキシルエステルである。
【0048】
本発明で用いる光増感剤は、例えばフォトキュアASA社のWO02/10120に記載されているような当該技術分野で利用可能な任意の従来の手法によって調製され得る。例えば、5−ALAのエステルは、塩基の存在下で5−ALAを適切なアルコールと反応させることによって調製され得る。あるいは、本発明で用いる化合物は、例えばフォトキュアASA社(ノルウェー)から市販されているものでもよい。
【0049】
本発明により使用される化合物は、遊離アミン、例えば−NH2、−NHR2、もしくは−NR22の形態、または好ましくは、生理学的に許容可能な塩の形態であり得る。そのような塩は、好ましくは、生理学的に許容可能な有機酸または無機酸との酸付加塩である。好適な酸としては、例えば、塩酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、およびスルホン酸誘導体が挙げられる。特に好ましい塩は、フォトキュアASA社のWO2005/092838に記載されているスルホン酸またはスルホン酸誘導体との酸付加塩であり、本明細書では、この文献の全内容を参考のために援用する。塩形成のための手法は、当該技術分野で従来から用いられているものである。
【0050】
本発明の他の態様では浣腸製剤が提供され、前記浣腸製剤は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む。
【0051】
医学における本明細書に規定の浣腸製剤の使用は、本発明のさらに他の態様を成す。
【0052】
結腸内投与に適していれば、浣腸製剤の剤型はどのようなものであってもよく、液剤状、懸濁剤状、ゾル状およびゲル状が挙げられる。本明細書に記載の浣腸剤は、液体状または泡状であり得る。従って、本発明の別の態様は、本明細書に記載の光増感剤を含む泡状浣腸剤に関する。泡状浣腸剤の代表的な組成物は広く先行技術で記載されており、例えば、米国特許第6432967号参照。従って、担体ビヒクルも、有効量のn−ブタン、プロパン、またはイソブタン等の起泡剤を含み得る。そのような製剤は加圧容器から運搬されることができるため、製剤が直腸に泡として送達され、その結果、標的部位からの放出が抑制される。
【0053】
5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体に加えて、本発明に係るおよび本発明で用いる浣腸製剤は、少なくとも1つの医薬的に許容可能な液体担体と、任意に様々な賦形剤とを含む。前記液体は、水もしくは生理学的に許容可能な溶剤、または水および1つ以上の生理学的に許容可能な溶剤の混合物であり得る。代表的なそのような溶剤としては、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールが挙げられる。特に好ましい液体担体は水である。
【0054】
別の実施形態では、油、例えば医薬品に一般的に用いられている天然油および/または合成油が溶剤として用いられる。油を用いる場合、5−ALAの親油性塩、または5−ALAの親油性塩および/または親油性エステル、例えば、5−ALAのメシラート塩もしくはトシラート塩、またはヘキシルもしくはベンジル等の炭素原子が2〜10個のアルキル残基を含む5−ALAエステルの塩を用いることが好ましい。
【0055】
本明細書に記載の医薬品に用い得るさらなる製薬用の賦形剤および担体は、様々な手引書に記載されている(例えば、D.E.Bugay、W.P.Findlay(編)、Pharmaceutical exipients (Marcel Dekker、New York、1999)、E−M Hoepfner、A.Reng、P.C.Schmidt(編)、Fiedler Encyclopedia of Excipients for Pharmaceuticals、 Cosmetics and Related Areas (Edition Cantor、 Munich、 2002)、およびH.P. Fielder(編)、Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie、 Kosmetik und angrenzede Gebiete (Edition Cantor、 Aulendorf、 1989))。
【0056】
緩衝剤、防腐剤、pH調製剤等の他の公知な賦形剤を含有させてもよい。
【0057】
本明細書に記載の光増感剤は、従来の任意の手法による浣腸製剤の製造に用いることができる。本発明の浣腸製剤における光増感剤の所望の濃度は、化合物の性質、製剤が提供される際の性質および剤型、治療されるかまたは診断されるガンの性質、および治療される対象を含むいくつかの要因により異なる。しかしながら、多くの場合、光増感剤の濃度は、1リットルあたり0.001〜10mmol、好ましくは1リットルあたり0.01〜5mmol、最も好ましくは1リットルあたり0.05〜4mmolの範囲が適切である。光増感剤を1リットルあたり2.5mmol未満の濃度で用いることが特に好ましい。
【0058】
本発明に係る浣腸製剤はさらに、以下のうちの1つ以上を含む。
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
【0059】
「以下のうちの1つ以上」という用語は、本発明に係る浣腸製剤が、化合物a)〜d)の群のうちの1つの化合物、即ちa)またはb)またはc)またはd)のいずれかを少なくとも含むことを意味している。あるいは、浣腸製剤は化合物a)〜d)の群のうちの2つ以上の化合物、例えば1つ以上の増粘剤a)、および1つ以上の浸透促進剤c)、または例えば1つ以上の粘液溶解剤b)、1つ以上のキレート剤d)、および1つ以上の増粘剤a)を含み得る。
【0060】
本発明に係る浣腸製剤の好ましい実施形態は、a)1つ以上の増粘剤、またはb)1つ以上の粘膜粘着剤もしくは1つ以上の粘液溶解剤、またはc)1つ以上の浸透促進剤、またはd)1つ以上のキレート剤を含む浣腸製剤;b)1つ以上の粘液溶解剤を、好ましくはc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む浣腸製剤;b)1つ以上の粘膜粘着剤を、好ましくはc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む浣腸製剤:ならびにa)1つ以上の増粘剤を、好ましくはb)1つ以上の粘膜粘着剤もしくは粘液溶解剤、およびc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む浣腸製剤である。
【0061】
本発明に係る、および本発明で用いる浣腸製剤は、投与され、任意に患者が任意の動きをした後、結腸全体に実質的に均一に充填される。結腸の均一な充填は、a)1つ以上の増粘剤を用いることで実現し得る。1つ以上の増粘剤は、医薬製剤で用いられるどのような増粘剤であってもよい。本発明に係る浣腸製剤に用いられる代表的な増粘剤としては、例えばゼラチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、ペクチン、多糖類、およびカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。
【0062】
本発明の好ましい一態様は、投与時は粘度が低いが、浣腸剤が対象の部位に注入された後で粘度が高くなるといった粘度が経時変化する浣腸製剤に関する。これは、膨潤性の化合物、一般的には多糖類を含む1つ以上の増粘剤を含有する浣腸製剤の投与によって実現可能であり、その場合、膨潤性の化合物は浣腸製剤の投与前には完全に膨潤していない。あるいは、室温前後から体温になるように温められると液体の粘度を増加させる1つ以上の増粘剤を用いてもよい。いくつかのそのような増粘剤が、ガレヌス製剤の分野でよく知られている。
【0063】
本発明に係る浣腸製剤は、b)1つ以上の粘膜粘着剤を含み得る。本発明の浣腸製剤における粘膜粘着剤は、結腸壁への粘着性の改善を助けることから、対象部位を均一に覆うことができる。本明細書で用いる「粘膜粘着剤」とは、粘膜表面に対して親和性を示す任意の薬剤、即ちその粘膜またはその下に横たわる細胞との相互作用を介して結合が起こるか否かに関わらず、性質的には一般的に非共有結合の結合の形成を通じて粘膜表面に粘着する薬剤を意味する。粘膜粘着剤は、医薬製剤で用いられているどの粘膜粘着剤であってもよい。現在の浣腸製剤で用いられている代表的な粘膜粘着剤としては、WO02/09690に記載のものが挙げられ、本明細書ではその全内容を参考のために援用する。
【0064】
本発明の浣腸製剤で用いられ得る粘膜粘着剤は、天然もしくは合成、ポリアニオン性、ポリカチオン性、もしくは中性、水溶性もしくは非水溶性であってもよいが、好ましくは分子量が大きく、より好ましくは分子量が500〜3000kDa、例えば1000〜2000kDaであり、あらゆる水和の前に水不溶性架橋された(例えば、ポリマーの全重量に対して0.05〜2%、例えば0.75〜1.5%の架橋剤を含む)、水素結合を形成可能な水膨潤性ポリマーである。本発明に係る粘膜粘着剤の粘膜付着力は、100より大きいことが好ましく、120より大きいことがとりわけ好ましく、150より大きいことが特に好ましい。粘膜付着力は、Smartらの方法(1984、J.Pharm.Pharmacol.、36、p295〜299)に基づいて評価され、生体外での基準に対するパーセントで表わされる。
【0065】
適切な粘膜粘着剤としては、水素結合の強い基を有するポリ(アクリル、マレイン、イタコン、シトラコン、ヒドロキシエチルメタクリル、またはメタクリル)酸、または塩やエステル等のその誘導体といったポリ(カルボン酸含有)系ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。あるいは、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそのセルロースエステルもしくはエーテルもしくは誘導体もしくは塩、等のセルロース誘導体を用いてもよい。他の天然または合成のポリマー、例えば:ガム類、例えばキサンタンガム、グアールガム、イナゴマメガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ガッチゴム、チョヤゴム(cholla gum)、オオバコ種子ガム、およびアラビアゴム;モンモリロナイト粘土、例えばビーガム(Veegun)やアタパルガイト粘土等の粘土類;デキストラン、ペクチン、アミロペクチン、寒天、マンナン、またはポリガラクトン酸、またはヒドロキシプロピルスターチもしくはカルボキシメチルスターチ等のデンプン等の多糖類;多糖類を含有する親油性製剤、例えばオーラベース(ブリストル−マイヤーズスクイブ社製);硫酸塩(エステル)、リン酸塩(エステル)、スルホン酸塩(エステル)、またはホスホン酸塩(エステル)等の基を有する多置換された炭水化物、例えば八硫酸スクロース;カゼイン、グルテン、ゼラチン、フィブリン接着剤等のポリペプチド類;キトサン、例えば、乳酸塩(エステル)またはグルタミン酸塩(エステル)、またはカルボキシメチルキチン;ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン類;アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸マグネシウム等のアルギン酸の金属類または水溶性塩類;スクレログルカン;酸化ビスマスまたは酸化アルミニウムを含有する接着剤;アテロコラーゲン;ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、上述のポリアクリル酸等のポリカルボキシル化ビニルポリマー等のポリビニルポリマー;ポリシロキサン類;ポリエーテル類;ポリエチレンオキサイド類およびポリエチレングリコール類;ポリアルコキシ類およびポリアクリルアミド類、ならびにその誘導体および塩、を用いることもできる。
【0066】
上記のポリマー性粘膜粘着剤は、架橋されて共重合体の形態をしていてもよい。例えば、ポリアルケニルポリエーテルを用いて好ましくは架橋され、ポリマーを不溶性にするために、例えば、二官能性のまたは多官能性のアリルエーテルもしくはアクリレートとのポリ(アクリル酸)ポリマーまたはコポリマーを利用することが好ましい。それらは分子量が高く、かつ揺変性である。この形態を有する適切な粘膜粘着剤は、(例えば、グッドリッチ社から)ポリカルボフィル、例えばノヴェオン(Noveon)AA−1として、カルボマー(Carbopol)、例えばカルボポールEX165、EX214、434、910、934、934P、940、941、951、974P、および1342等として市販されている。
【0067】
本発明の浣腸製剤で用いるのに好ましい粘膜粘着剤のいくつかとしては、ポリアクリル酸ヒドロゲル、キトサン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、スクレログルカン、キサンタンガム、ペクチン、オーラベース、およびポリガラクトン酸が挙げられる。
【0068】
本明細書での説明から、増粘剤および/または粘膜粘着剤それ自体に、担体または賦形剤が含まれることがあり、その場合さらなる担体または賦形剤が必要に応じて存在することが分かるだろう。1つ以上の化合物a)およびb)のいくつかは、有効な光増感剤の放出に影響を与え、それを引き伸ばす。そのような成分は当該技術分野では周知であり、ガーゴムまたは他のガム類がその例として挙げられる。当業者は、製剤におけるそのような成分、例えばガムの所望の含有量を容易に決定することができ、例えば、1〜10重量%の範囲であり得る。
【0069】
本発明に係る浣腸製剤は、b)1つ以上の粘液溶解剤を含み得る。そのような薬剤は、粘素を破壊するかまたは溶解することで結腸内の粘液の除去を促進させ、組織内への光増感剤の取り込みを助長する。そのような浣腸剤の使用により、浣腸処置の時間が短縮される。これは、組織が粘液で覆われていなければ(または粘液で覆われている程度が小さければ)、結腸の組織に取り込まれる時間単位あたりの光増感剤の量が高くなるからである。
【0070】
好適な粘液溶解剤は、遊離−SH基を有する化合物、好ましくはシステアミン、ペプシン、およびN−アセチル−l−システイン、または医薬的に許容可能なその塩である。1つ以上の粘液溶解剤が存在する場合、それが存在する浣腸製剤に対して0.5〜10重量%の濃度で用いることが適当であり得る。
【0071】
他の実施形態では、浣腸製剤の注入の前に胃腸系の下部を空にするのに用いられる製品に粘液溶解剤が含まれる。従って、粘液溶解剤を含む緩下剤、または粘液溶解剤を含む洗浄用浣腸剤の使用後に、本発明に係る浣腸製剤の注入が行われることが好ましい。
【0072】
本発明に係る浣腸製剤は、組織への光増感剤の浸透を高めることで前記光増感剤の光増感効果を高めるという有益な効果があるc)1つ以上の浸透促進剤を含み得る。そのような浣腸製剤は、浸透促進剤を含まない浣腸剤に比べて1時間単位あたりに組織に取り込まれる光増感剤がより多いことから、インキュベーションの時間が少なくて済む。従って、本発明に係る、および本発明で用いるのに好ましい浣腸製剤は、c)1つ以上の浸透促進剤を含む浣腸製剤である。好適な浸透促進剤としては、特にジメチルスルホキシド(DMSO)等のジアルキルスルホキシドが挙げられる。浸透促進剤は、医薬文献に記載の任意の皮膚浸透補助剤、例えば、EDTA等のキレート化剤、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、非界面活性剤、デオキシコール酸ナトリウム等の胆汁酸塩、および例えばオレイン酸等の脂肪酸であってもよい。適切な浸透促進剤の例としては、イソプロパノール、HPE−101(久光(Hisamitsu)より入手可能)、DMSO、および他のジアルキルスルホキシド、特に、n−デシルメチルスルホキシド(NDMS)、ジメチルスルファセタアミド、ジメチルホルムアミド(DMFA)、ジメチルアセトアミド、グリコール類、グリコール酸、様々なピロリドン誘導体(Woodfordら、J.Toxicol.Cut.& Ocular Toxicology、1986、:167〜177)、およびアゾン(Azone)(登録商標)(Stoughtonら、Drug Dpv.Ind.Pharm.1983,:725〜744)、またはその混合物が挙げられる。好ましい浸透促進剤は、EDTA、グリコール酸、およびDMSOである。
【0073】
浸透促進剤は、それが存在する浣腸製剤の全重量の0.2〜50重量%の範囲の濃度、例えば約10重量%の量で入っているのが適切であり得る。
【0074】
本発明に係る浣腸製剤は、プロトポルフィリン(Pp)の蓄積を高めるという有益な効果があるd)1つ以上のキレート剤を含み得る。これは、キレート剤によって鉄がキレート化されることで、フェロケラターゼ酵素の作用によるヘムの形成のために鉄がPpに取り込まれることが防止されるため、Ppの蓄積に繋がるからである。そのため、光増感効果が向上する。従って、1つ以上のキレート剤を含む浣腸製剤は本発明で用いるのが特に好ましい。何故なら、キレート剤を含まない浣腸剤に比べて、同様の発光を得るのに一時間単位で組織に取り込む光増感剤が少なくて済むため、それらの使用によって浣腸処置の時間が短縮されるからである。あるいは、浣腸製剤で用いる光増感剤の量が少なくなり得る。
【0075】
本発明の浣腸製剤に含まれ得る好適なキレート剤としては、アミノポリカルボン酸、例えば金属解毒用、または磁気共鳴映像造影剤における常磁性金属イオンのキレート化用として文献に記載の任意のキレート化剤が挙げられる。EDTA、CDTA(シクロヘキサントリアミン四酢酸)、DTPA、DOTA、ならびに公知なその誘導体および類似体を特に挙げることができる。EDTAおよびDTPAが特に好ましい。鉄キレート化効果を得るために、デスフェリオキサミンおよび他のシデロフォアを、例えばEDTA等のアミノポリカルボン酸キレート剤と組み合わせて用いることもできる。
【0076】
1つ以上のキレート剤が存在する場合、それが存在する浣腸製剤に対して0.05〜20重量%、例えば0.1〜10重量%の濃度で用いることが適切であり得る。
【0077】
本発明の浣腸製剤はさらに抗ガン剤を含み得る。従って、他の態様から見た場合、本発明は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤を抗ガン剤と併せて含むガンの治療に用いる浣腸製剤を提供する。そのような浣腸製剤の好ましい実施形態は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤と併せて抗ガン剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤である。
【0078】
さらに他の態様から見た場合、本発明は、上記で規定した浣腸製剤と、ガンの治療法において同時に、別々に、または連続的に用いる抗ガン剤を別途含むキットまたはパックを提供する。
【0079】
本発明の医薬品およびキットに存在する好ましい抗ガン剤は、抗新生物剤である。抗新生物剤の代表的な例としては、アルカロイド類、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、テニポシド(teniposiode)、パクリタキセル、エトポシド、およびドセタキセル;アルキル化剤、例えばブスルファン等のスルホン酸アルキル;アジリジン類、例えば、カルボコン、エチレンイミン、およびメチルメラミン;ナイトロジェンマスタード類、例えばクロランブチル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、およびメルファラン;ニトロソウレア(nitrosurea)誘導体、例えばカルムスチンおよびロムスチン;抗生物質、例えばマイトマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、およびブレオマイシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサートおよびラルチトレキセド等の葉酸類似体および拮抗体;プリン類似体、例えば6−メルカプトプリン;ピリミジン類似体、例えばテガフール、ゲムシタビン、フルオロウラシル、およびシタラビン;サイトカイン類;L−アスパラギナーゼ、ランピルナーゼ等の酵素類;免疫調整剤、例えばインターフェロン、免疫毒素、単一クローン抗体、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤;カルボプラチン、オキサリプラチン、およびシスプラチン等の白金錯体;ならびにアンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤等のホルモン剤が挙げられる。本発明で用いる他の抗新生物剤としては、イミキモド、イリノテカン、ロイコボリン、レバミソール、エトポシド、およびヒドロキシ尿素が挙げられる。
【0080】
本発明で用いるのが特に好ましい抗ガン剤としては、5−フルオロウラシル、イミキモド、サイトカイン、マイトマイシンC、エピルビシン、イリノテカン、オキサリプラチン(oxalipatin)、ロイコボリン、レバミソール、ドキソルビシン、シスプラチン、エトポシド、ドキシルビシン、メトトレキセート、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ヒドロキシ尿素、およびビノレルビンが挙げられる。抗ガン剤として用いるのがさらにより好ましいものは、マイトマイシン等の抗生物質、および5−フルオロウラシル等のピリミジン類似体である。
【0081】
本発明の浣腸製剤は、1つ以上の非光増感剤をさらに含み得る。そのような薬剤としては、例えば、様々な細菌感染症の治療用の抗生物質、下部胃腸管における炎症性腸疾患や炎症性の症状の治療用の、5−アミノサリチル酸およびその誘導体等の抗炎症剤、または5−HTリガンドおよびステロイド等の他の医薬物質が挙げられる。
【0082】
従って、他の態様から見た場合、本発明は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤と併せて非光増感剤を含む浣腸製剤を提供する。そのような浣腸製剤の好ましい実施形態は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤と併せて非光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤である。
【0083】
抗炎症剤の場合、そのような薬剤は浣腸処置の前の期間に経口的に用いてもよいし、および/または浣腸製剤の注入の前に胃腸系の下部を空にするのに用いられる製品内に存在していてもよい。従って、経口の抗炎症剤および/または緩下剤もしくは抗炎症剤を含む洗浄用浣腸剤を用いた後で、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えばALAエステルである光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤
b)必要に応じて1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上をさらに含む本発明に係る浣腸製剤の注入を行うことが好ましい。
【0084】
抗炎症剤の使用は、PDDの工程で「偽陽性」の結果につながり得る炎症性病変の非特定性発光を低減させるのを助ける上で有益となり得る。
【0085】
さらに他の態様から見た場合、本発明は、上記で規定した浣腸製剤と、非ガン性の症状の治療法で同時に、別々に、または連続的に用いる非光増感剤を別途含むキットまたはパックを提供する。
【0086】
本明細書に記載の製剤に診断薬が存在していてもよく、あるいは診断薬を浣腸製剤と組み合わせて投与してもよい。従って、本発明の別の態様は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体と、例えば、X線造影剤またはMRI造影剤といった診断薬とを含む浣腸製剤に関する。そのような浣腸製剤の好ましい実施形態は、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体、例えば5−ALAエステルである光増感剤と併せて診断薬と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤である。
【0087】
さらに他の態様から見た場合、本発明は、上記で規定した浣腸製剤と、ガンまたは非ガン性の症状の診断法またはその治療の続きにおいて、同時に、別々に、または連続的に用いる、例えばX線造影剤またはMRI造影剤といった診断薬を別途含むキットまたはパックを提供する。
【0088】
本発明によれば、用いるのが好ましいX線造影剤としては、例えばイオヘキソール、イオパミドール(iopamoidol)、およびイオジキサノール等の硫酸バリウムX線造影剤ならびに非イオンX線造影剤である。本発明に係る、X線造影剤を含む浣腸製剤は、光増感剤に加えて、通常2〜30重量%のX線造影剤を含む。好適なMRI造影剤は、鉄系、マンガン系、またはガトペンテト酸等のガドリニウム系のものである。X線造影剤またはMRI造影剤と組み合わせて本明細書に記載の浣腸製剤を用いた場合、二重の、即ちPDDとX線、またはPDDとMRIのコントラスト増強効果をもたらすことができる。あるいは、浣腸剤が結腸全体に、または少なくとも対象部位もしくは領域に存在していることをX線画像またはMRIで目視するために、造影剤が製剤中に存在していてもよい。
【0089】
本発明に係る浣腸製剤は、第2の光増感剤、好ましくは5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体を含むものと組み合わせて投与され得る。該して、第2の薬剤は、例えば経口等の他の投与手法で投与される。
【0090】
さらに他の態様から見た場合、本発明は、上記で規定した医薬品と、5−ALAまたはその前駆体もしくは誘導体を含む第2の光増感剤を含有する経口組成物を別途含むキットまたはパックを提供する。前記経口組成物は、胃腸系の下部のPDDまたはPDT用の経口組成物であることが好ましい。そのような組成物は、錠剤、ペレット、非水系製剤を含有したカプセル等の固形製剤であることが一般的である。好適な製剤としては、WO2009/074811に記載のものが挙げられる。
【0091】
本発明に係る浣腸製剤は、「すぐに使用できる(ready−to−use)」の形態で提供され得る。あるいは、これらは、1つ以上の別個の成分、例えば互いに混合されることで所望の製剤をもたらす2つの成分を含むキットまたはパックの形態で提供され得る。本発明の好ましい別の態様は、使用の前に混合される2つの構成成分を含む浣腸剤に関する。この2構成成分(2−component)システムは、通常、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体を含み、好ましくは固形として調製される製剤と、必要に応じて他の固形物とを収容した第1のバイアルと、液体を収容した第2のバイアルという2つのバイアルを含む。
【0092】
「すぐに使用できる」浣腸剤は、一般的に「使い捨て」のプラスチックまたはガラスの密閉使い捨て容器に入れられている。ポリマー性材料からなる容器は、患者が独力でも容易に用いることができるように十分な可撓性があるべきである。典型的なプラスチック容器はポリエチレンから作られていてもよい。これらの容器は、直腸に直接導入する先端部を備え得る。そのような容器は、容器と先端部との間に管も備え得る。先端部には、使用の前に取り外される保護シールドが設けられていることが好ましい。患者のコンプライアンスを改善するために、先端部は任意に潤滑剤を有する。
【0093】
本発明の浣腸製剤の投与の前に、先ず結腸部の洗浄が通常行われる。これは、洗浄用の第2の浣腸剤を用いて達成することができる。さらに他の態様から見た場合、本発明は、上記で規定した浣腸製剤と、洗浄用の第2の浣腸剤を別途含むキットまたはパックを提供する。この第2の浣腸剤は、市販のどの洗浄用浣腸剤であってもよい。
【0094】
本明細書に記載の任意のキットまたはパックは、さらに、投与後に浣腸剤の漏出を防止するのに用いるバルーン、とりわけ光増感剤を含むバルーンを必要に応じて含む。
【0095】
本発明の浣腸製剤は、公知の結腸内法で投与することができる。例えば、可撓性の容器に入っている場合、容器を圧搾することでこれを患者に投与することができ、これは、患者、看護師、または他の医療アシスタントによって行える。他の選択肢は、浣腸剤を患者の上に設置することで重力に基づいて浣腸剤を投与することであり、または診療所もしくは医師の診察室で利用可能な様々な装置を用いて浣腸剤を投与してもよい。そのような装置は、例えば、米国特許第4504270号、米国特許第4419099号、および米国特許第4117847号に記載されている。浣腸製剤の投与量は、その用途、患者の年齢、性別や他の状態、および症状の深刻度に応じて選択される。概して、浣腸剤の総量は、30ml〜1500mlの間で変化する。例えば、結腸直腸ガンの診断または治療用の一般的な浣腸剤の量は500ml前後である。
【0096】
光増感剤を含有する本発明に係る浣腸製剤の投与後、所望の光増感効果を得るために治療または診断される部位が露光される。投与後の露光が行われる時間の長さは、例えば、浣腸剤が液状か泡状か、浣腸剤が遅延放出剤を何ら含んでいるか等の浣腸剤の性質や、治療または診断される症状等によって異なる。概して、光増感剤は必然的に、光活性化の前に、症状(例えばガン)のある部位において有効な組織濃度に達しているべきである。これは一般的に0.5〜24時間、好ましくは0.5〜3時間の期間を要する。
【0097】
好ましい治療または診断工程では、光増感剤が患部に適用され、その後、例えば約0.5〜3時間後に照射が行われる。必要であれば、例えば治療の間に、この工程を、例えば最高でさらに3回、最高で30日、例えば7〜30日の間隔で繰り返してもよい。この工程によって、例えばガン等の症状が満足いくほど緩和されなかったり、または完全に治癒されなかった場合は、その数ヶ月後にさらなる治療が施され得る。
【0098】
治療を目的とした、体の様々な部位を、例えばランプまたはレーザーにより照射する方法が当該技術分野で周知である(例えば、Van den Bergh、Chemistry In Britain、1986年5月、p430〜439参照)。効果的な光増感効果を得るために、照射に用いる光の波長が選択され得る。最も効果的な光は、その波長の範囲が300〜800nm、一般的には、光の透過が比較的深いことが分かっている400〜700nmの光である。一般的に、照射は、レーザーを用いる場合には光量が10〜100ジュール/cm2、光度が20〜200mW/cm2で行われ、ランプを利用する場合には光量が10〜100J/cm2、光度が50〜150mW/cm2で行われる。治療の場合、照射を5〜30分間、好ましくは15分間行うことが好ましい。診断の場合、照射を診断工程の間ずっと、または例えば白色光検出と併用する場合は診断工程の一部の間に行うことが好ましい。単一照射を用いてもよく、あるいは、例えば照射の間数分から数時間に光量を少しずつ多くの回数送達する分割光量法(light split dose)を用いることもできる。また、複合照射を用いることもできる。結腸領域を照射するのに特に適した装置、例えば内視鏡が好適に用いられる。
【0099】
診断に用いる場合、先ず当該領域を白色光を用いて検査することが好ましい。次いで、疑わしい領域を青色光(通常、400〜450nmの範囲にある)に露光する。そして、発された蛍光(635nm)を用いて、健康な組織よりも代謝活動が高い冒されたガン性または非ガン性の組織を選択的に検出する。診断を行う場合、装置、例えば内視鏡を用い、青色光を使って蛍光を評価することが好ましい。
【0100】
本発明に係る浣腸剤の利点は、診断用途に用いた場合にはその効力、感度、および特異性に関連し、そしてPDFの場合には全体的な治療の結果に関連する。それに加えて、本発明の浣腸剤は患者のコンプライアンスの程度が高い。また、本発明の浣腸剤は著しく安定である。例えば、その医薬品は、例えば室温および常湿で少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月、さらにより好ましくは少なくとも36ヶ月以上貯蔵可能である。
【0101】
本発明の製品および方法は、下部胃腸管、特に大腸(結腸)、とりわけS字状結腸、下行結腸および直腸内のガンまたは非ガン性の症状を治療するか、および/または診断するのに用いられ得る。そのような症状としては、炎症性腸疾患、結腸直腸ガン、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群等が挙げられる。炎症性腸疾患は、大腸および小腸の炎症性疾患であり、それらは数多くの要因によって引き起こされ得る。患者の大多数において、冒された領域は、例えば下行結腸または横行結腸といった結腸の広い範囲に渡る。本明細書に記載の浣腸製剤を用いると、有効成分を患部に直接届けることができるため、所望の治療効果または診断効果が確実に得られる。
【0102】
以下の非限定の実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0103】
[実施例1] 結腸直腸ガンの治療的処置用の5−ALAヘキシルエステルを含む2構成成分(two−component)浣腸剤
【0104】
構成成分1:
5−ALAヘキシルエステルHCl 1000mg(850mgの5−ALAヘキシルエステルと同等)
ヒドロキシセルロース 1000mg
【0105】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0106】
構成成分2:
グリセロール 10g
ラウリル硫酸ナトリウム 200mg
精製水 500mlまで加える
【0107】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0108】
使用の前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
構成成分1を、水浴で45〜50℃に予め加熱する。構成成分1を構成成分2の容器に添加する。同容器を3分間振とうし、溶液を浣腸剤として投与する前に体温になるようにする。浣腸剤の投与後、10分間患者を左右に動かし、頭も約20°上下に動かす。この時の浣腸剤の粘度は、投与時の浣腸剤の粘度よりも高い。30分〜1時間後に浣腸剤を取り除き、直腸/結腸をPDDにより、次いでPDTにより検査する。
【0109】
[実施例2] 結腸直腸ガンの治療用の浣腸剤および経口投与錠剤を含む2構成成分キット
【0110】
5−ALAヘキシルエステルHClを含む被覆錠剤(キット構成成分1):
微結晶性セルロース(アビセル(Avicel)PH−102) 380mg
ラクトース一水和物 340mg
5−ALAヘキシルエステルHCl 150mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
【0111】
上記成分を混合し、直接打錠法により錠剤を調製する。錠剤の直径:13mm。前記錠剤を、ユードラギット(Eudragit)S−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液で被覆し、乾燥させる。
【0112】
5−ALAヘキシルエステルHClを含む浣腸剤(キット構成成分2):
【0113】
浣腸剤構成成分A:
5−ALAヘキシルエステルHCl 500mg(425mgの5−ALAヘキシルエステルと同等)
塩化ナトリウム 4g
【0114】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0115】
浣腸剤構成成分B:
グリセロール 30g
ラウリル硫酸ナトリウム 100mg
水性緩衝剤pH6.0 500mlまで添加
【0116】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0117】
前記キットの構成成分を以下のように用いる。
PDTの20時間前に錠剤を2錠投与する。
浣腸剤構成成分Bを浣腸剤構成成分Aに添加する。混合物を30秒間振り混ぜる。PDTの1時間前に、患者に浣腸剤を30分間に渡って注入して投与し、次に15〜30分休止させる。結腸が良好に充填されることを確実にするため、患者を実施例1で説明したように動かす。次いで浣腸剤を取り除き、PDTを行う。
【0118】
[実施例3] イオヘキソール溶液中に5−ALAヘキシルエステルを含む浣腸製剤(2構成成分)
【0119】
構成成分1:
5−ALAヘキシルエステルHCl 300mg(257mgの5−ALAヘキシルエステル)
【0120】
構成成分2:
イオヘキソール 43.3g
トロメタモール 180mg
EDTAカルシウム 15mg
pHを6.8〜7.0に調整するための塩化水素酸
精製水 150mlまで添加
【0121】
使用前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
浣腸剤構成成分2を浣腸剤構成成分1に添加する。混合物を30秒間振り混ぜる。PDTの2時間前に、患者に浣腸剤を投与する。結腸が良好に充填されることを確実にするために、患者を実施例1で説明したように動かす。直腸への充填後に、X線撮影を行う。浣腸剤を取り除き、PDTを行う。
【0122】
[実施例4] 結腸直腸ガンの治療的処置用の5−ALAベンジルエステルを含む2構成成分浣腸剤
【0123】
構成成分1:
5−ALAベンジルエステルHCl 1028mg(884mgの5−ALAベンジルエステルと同等)
ヒドロキシエチルセルロース 500mg
EDTA三ナトリウム 10mg
【0124】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0125】
構成成分2:
グリセロール 10g
ステアリン酸 0.5g
キトサン乳酸(FMCバイオポリマー) 1.0g
イソプロパノール 20g
精製水 500mlまで添加
【0126】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0127】
使用の前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
構成成分1を、水浴で45〜50℃に予め加熱する。構成成分1を構成成分2の容器に添加する。同容器を3分間振とうし、溶液を浣腸剤として投与する前に体温になるようにする。浣腸剤の投与後、10分間患者を左右に動かし、頭も約20°上下に動かす。この時の浣腸剤の粘度は、投与時の浣腸剤の粘度よりも高い。30分〜1時間後に浣腸剤を取り除き、直腸/結腸をPDDにより、次いでPDTにより検査する。
【0128】
[実施例5] 結腸直腸ガンの診断用の5−ALAベンジルエステルを含む2構成成分浣腸剤
【0129】
構成成分1:
5−ALAベンジルエステルHCl 514mg(442mgの5−ALAベンジルエステルと同等)
ヒドロキシエチルセルロース 200mg
EDTA三ナトリウム 10mg
【0130】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0131】
構成成分2:
グリセロール 10g
ラウリル硫酸ナトリウム 200mg
ペクチン(GENU型:LM−104AS−Z) 0.5g
ジメチルスルホキシド 20g
精製水 500mlまで添加
【0132】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0133】
使用の前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
構成成分1を、水浴で45〜50℃に予め加熱する。構成成分1を構成成分2の容器に添加する。同容器を3分間振とうし、溶液を浣腸剤として投与する前に体温になるようにする。浣腸剤の投与後、10分間患者を左右に動かし、頭も約20°上下に動かす。この時の浣腸剤の粘度は、投与時の浣腸剤の粘度よりも高い。30分〜1時間後に浣腸剤を取り除き、直腸/結腸をPDDにより、次いでPDTにより検査する。
【0134】
[実施例6] 結腸直腸ガンの治療的処置用の5−ALAベンジルエステルを含む2構成成分浣腸剤
【0135】
構成成分1:
5−ALAベンジルエステルHCl 1028mg(884mgの5−ALAベンジルエステルと同等)
ヒドロキシエチルセルロース 500mg
アセチルシステイン 200mg
EDTA三ナトリウム 10mg
【0136】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0137】
構成成分2:
グリセロール 10g
ステアリン酸 0.5g
ポリソルベート60 0.3g
ツイーン20 0.4g
ポリアクリル酸(フルカ) 1.0g
イソプロパノール 20g
ジメチルスルホキシド 5g
精製水 500mlまで添加
【0138】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0139】
使用の前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
構成成分1を、水浴で45〜50℃に予め加熱する。構成成分1を構成成分2の容器に添加する。同容器を3分間振とうし、溶液を浣腸剤として投与する前に体温になるようにする。浣腸剤の投与後、10分間患者を左右に動かし、頭も約20°上下に動かす。この時の浣腸剤の粘度は、投与時の浣腸剤の粘度よりも高い。30分〜1時間後に浣腸剤を取り除き、直腸/結腸をPDDにより、次いでPDTにより検査する。
【0140】
[実施例7] 結腸直腸ガンの治療的処置用の5−ALAメチルエステルを含む2構成成分浣腸剤
【0141】
構成成分1:
5−ALAメチルエステルメシラート塩 2000mg
メチルセルロース 100mg
サリチル酸 200mg
EDTA三ナトリウム 10mg
キトサン 200mg
【0142】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0143】
構成成分2:
グリセロール 10g
ステアリン酸 0.5g
ポリソルベート20 0.3g
ブリッジ30 0.2g
ポリアクリル酸(フルカ) 1.0g
イソプロパノール 30g
【0144】
精製水 500mlまで添加
【0145】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0146】
使用の前に、上記成分を以下のように混合し用いる。
構成成分1を、水浴で45〜50℃に予め加熱する。構成成分1を構成成分2の容器に添加する。同容器を3分間振とうし、溶液を浣腸剤として投与する前に体温になるようにする。浣腸剤の投与後、10分間患者を左右に動かし、頭も約20°上下に動かす。この時の浣腸剤の粘度は、投与時の浣腸剤の粘度よりも高い。30分〜1時間後に浣腸剤を取り除き、直腸/結腸をPDDにより、次いでPDTにより検査する。
【0147】
[実施例8] 結腸直腸ガンの治療用の浣腸剤および経口投与錠剤を含む2構成成分キット
【0148】
5−ALAヘキシルエステルHClを含む被覆錠剤(キット構成成分1):
【0149】
微結晶性セルロース(アビセルPH−102) 380mg
ラクトース一水和物 340mg
5−ALAヘキシルエステルHCl 150mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
【0150】
上記成分を混合し、直接打錠法により錠剤を調製する。錠剤の直径:13mm。前記錠剤を、ユードラギットS−100(6%)およびクエン酸トリエチル(1%)のアセトン溶液で被覆し、乾燥させる。
【0151】
5−ALAヘキシルエステルHClを含む浣腸剤(キット構成成分2):
【0152】
浣腸剤構成成分A:
5−ALAヘキシルエステルHCl 500mg(425mgの5−ALAヘキシルエステルと同等)
塩化ナトリウム 4g
EDTA三ナトリウム 30mg
ヒドロキシエチルセルロース 400mg
ペクチン(コペンハーゲンペクチン) 300mg
ラウリル硫酸ナトリウム 300mg
【0153】
上記成分をプラスチック容器(750ml)に充填する。
【0154】
浣腸剤構成成分B:
グリセロール 30g
エタノール 10g
イソプロパノール 15g
水性緩衝剤pH6.0 500mlまで添加
【0155】
上記成分をプラスチック容器(500ml)に充填する。
【0156】
前記キットの構成成分を以下のように用いる。
PDTの20時間前に錠剤を2錠投与する。
浣腸剤構成成分Bを浣腸剤構成成分Aに添加する。混合物を30秒間振り混ぜる。PDTの1時間前に、患者に浣腸剤を30分間に渡って注入して投与し、次に15〜30分休止させる。結腸が良好に充填されることを確実にするため、患者を実施例1で説明したように動かす。次いで浣腸剤を取り除き、PDTを行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体である光増感剤と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含み、さらに
a)1つ以上の増粘剤、
b)1つ以上の粘膜粘着剤、または1つ以上の粘液溶解剤、
c)1つ以上の浸透促進剤、および
d)1つ以上のキレート剤
のうちの1つ以上を含む浣腸製剤。
【請求項2】
前記光増感剤が、5−ALA誘導体または医薬的に許容可能なその塩、好ましくは5−ALAエステルまたは医薬的に許容可能なその塩である請求項1に記載の浣腸製剤。
【請求項3】
前記光増感剤が、式I:
22N−CH2COCH2−CH2CO−OR1 (I)
(式中、R1は、置換または非置換アルキル基を表わし、R2はそれぞれ、独立して水素原子またはR1基を表わす)の化合物、または医薬的に許容可能なその塩である請求項1または2に記載の浣腸製剤。
【請求項4】
前記R2のそれぞれは水素を表わし、前記R1は非置換アルキル基、好ましくはC1−C6アルキル基を表わす請求項3に記載の浣腸製剤。
【請求項5】
前記浣腸製剤は、a)1つ以上の増粘剤、またはb)1つ以上の粘膜粘着剤もしくは1つ以上の粘液溶解剤、またはc)1つ以上の浸透促進剤、またはd)1つ以上のキレート剤を含む先行する請求項のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項6】
前記浣腸製剤は、b)1つ以上の粘液溶解剤を、好ましくはc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む請求項1〜4のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項7】
前記浣腸製剤は、b)1つ以上の粘膜粘着剤を、好ましくはc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む請求項1〜4のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項8】
前記浣腸製剤は、a)1つ以上の増粘剤を、好ましくはb)1つ以上の粘膜粘着剤もしくは粘液溶解剤、およびc)1つ以上の浸透促進剤、および/またはd)1つ以上のキレート剤と併せて含む請求項1〜4のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項9】
医学に用いる先行する請求項のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項10】
胃腸管の下部における、好ましくは結腸および直腸内の、ガンまたは非ガン性の症状の光線力学的療法または光線力学的診断に用いる先行する請求項のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項11】
胃腸管の下部における、非ガン性の症状、好ましくは炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、および過敏性腸症候群から選択される非ガン性の症状の、光線力学的療法または光線力学的診断に用いる請求項10に記載の浣腸製剤。
【請求項12】
胃腸管の下部における、ガンまたは非ガン性の症状の光線力学的療法または光線力学的診断に用いる先行する請求項のいずれかに記載の浣腸製剤であって、前記療法または前記診断は、
(i)請求項1〜8のいずれかに記載の浣腸製剤を患者に投与する工程と、
(ii)任意に、前記光増感剤が所望の部位において有効な組織濃度に達するのに必要な期間だけ待つ工程と、
(iii)前記光増感剤を光活性化させる工程とを含む、浣腸製剤。
【請求項13】
前記工程(a)の前に、前記患者の胃腸系の下部を、好ましくは洗浄用浣腸剤または緩下剤を用いて、空にする請求項12に記載の使用のための浣腸製剤。
【請求項14】
抗ガン剤または非光増感剤、好ましくは抗生物質、X線造影剤またはMRI造影剤を、さらに含む先行する請求項のいずれかに記載の浣腸製剤。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の浣腸製剤と、5−ALA、またはその前駆体もしくは誘導体である第2の光増感剤を含む経口組成物を別途含むキットまたはパック。

【公表番号】特表2012−513429(P2012−513429A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542723(P2011−542723)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009293
【国際公開番号】WO2010/072419
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511152474)フォトキュア エイエスエイ (3)
【Fターム(参考)】