説明

浮上搬送加熱装置

【課題】塗布膜に乾燥ムラを生じさせずに基板を加熱しながら搬送することができる浮上搬送加熱装置を提供する。
【解決手段】基板を超音波振動浮上させる振動板部2と、前記振動板部を加熱するヒータ部3と、前記振動板部に超音波振動を与える超音波発生部4と、基板の端部を支持して基板の浮上方向と垂直な方向に基板を搬送する搬送部5と、を備える浮上搬送加熱装置であって、ヒータ部3は、振動板部2の基板を浮上させる面の裏面側に振動板部2と所定間隔を設けて配置され、基板の搬送方向と直交する方向の振動板部2の寸法は同方向の基板Wの寸法よりも大きく、ヒータ部3により振動板部2が加熱されることにより、浮上搬送中の基板W全面が振動板部2によって加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜が形成された基板を超音波浮上により浮上させた状態で加熱および搬送を行う浮上搬送加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、塗布装置により基板上にレジスト液が均一に塗布されることによって塗布膜が形成され、その後、例えば、下記特許文献1に示されるような加熱乾燥装置により塗布膜を乾燥させることにより生産される。
【0003】
この加熱乾燥装置は、電磁放射線などの加熱手段を用いて、基材を加熱している。また、複数の加熱手段同士の間に超音波浮揚板を設置し、そこへ与えられる超音波振動により基材を浮上させ、その状態で基板を搬送しながら基材を加熱している。このように基材加熱中の搬送手段に浮上搬送を採用することにより、たとえばガイドローラを用いた場合に発生する、基材と接触している部位と他の部位との熱的特性の差異に起因する塗布膜の乾燥ムラを防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された加熱乾燥装置では、それでも塗布膜表面に乾燥ムラが発生するおそれがあるという問題があった。具体的には、交互に配列された加熱手段と超音波浮揚板との間には熱的特性に差異があり、基材は加熱手段の上方を通過するときは強く加熱され、超音波浮揚板の上方を通過するときはほとんど加熱されない(むしろ冷却されることもある)といった、大きな波がある加熱環境を通過するため、それが塗布膜の乾燥ムラを生じやすくさせていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、塗布膜に乾燥ムラが形成されることを抑えることができる浮上搬送加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の浮上搬送加熱装置は、基板を超音波振動浮上させる振動板部と、前記振動板部を加熱するヒータ部と、前記振動板部に超音波振動を与える超音波発生部と、基板の端部を支持して基板の浮上方向と垂直な方向に基板を搬送する搬送部と、を備える浮上搬送加熱装置であって、前記ヒータ部は、前記振動板部の基板を浮上させる面の裏面側に前記振動板部と所定間隔を設けて配置され、基板の搬送方向と直交する方向の前記振動板部の寸法は同方向の基板の寸法よりも大きく、前記ヒータ部により前記振動板部が加熱されることにより、浮上搬送中の基板全面が前記振動板部によって加熱されることを特徴としている。
【0008】
上記浮上搬送加熱装置によれば、ヒータ部が振動板部の基板を浮上させる面の裏面側に振動板部と所定間隔を設けて配置されているため、振動板部が輻射加熱される。したがって、振動板部を均一な温度に加熱することができる。また、基板の搬送方向と直交する方向の振動板部の寸法を同方向の基板の寸法よりも大きくすることにより、基板の搬送方向と直交する方向において基板を均一に加熱することができる。そして、この振動板部上を基板を搬送させることにより、基板全面を均一に加熱することができ、基板上の塗布膜をムラなく乾燥させることが可能である。
【0009】
また、前記超音波発生部は、前記振動板部の基板を浮上させる領域および前記振動板部において当該領域の裏面側にあたる領域の両領域の外部において前記振動板部と接触し、前記振動板部に超音波振動を与えることを特徴とする構成とすると良い。
【0010】
この構成によれば、超音波発生部を、基板を浮上させる振動板部上の領域および振動板部に対して当該領域の裏面側にあたる領域の両領域の外部において振動板部の下面と接触させることによって、振動板部上で温度ムラを起こす可能性のある、超音波発生部と振動板部との接触部が、基板を浮上させる領域、すなわち基板を加熱する領域から外れるため、振動板部における基板を加熱する領域の温度ムラを防ぎ、さらに乾燥ムラを起こすことなく基板上の塗布膜を乾燥させることが可能である。
【0011】
また、前記振動板部は、複数の振動板を一方向に連続して配列して形成され、前記振動板同士の継ぎ目は基板の搬送方向と略直交し、前記搬送部は前記振動板部上の基板を等速で搬送することを特徴とすると良い。
【0012】
こうすることにより、振動板部に継ぎ目が存在し、その部分で振動板部の温度に他の部分と若干差がある場合でも、振動板を連続して配列することによって、温度変化を極小にすることができ、また、振動板同士の継ぎ目を基板の搬送方向と略直交させ、その上を等速で基板が搬送されることにより、基板のどの箇所も同じ加熱プロファイルで加熱させることができるため、乾燥ムラを防ぐことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浮上搬送加熱装置によれば、塗布膜に乾燥ムラを生じさせずに基板を加熱しながら搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における浮上搬送加熱装置の概略図であり、斜視図である。
【図2】浮上搬送加熱装置の側面図である。
【図3】振動板の配列方向による基板の加熱特性の違いを表す概略図である。
【図4】浮上搬送加熱装置の動作フローである。
【図5】本発明の浮上搬送加熱装置を用いた塗布膜焼成ラインの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明の一実施形態における浮上搬送加熱装置の斜視図および側面図である。浮上搬送加熱装置1は、振動板部2、ヒータ部3、超音波発生部4、および搬送部5を備えており、振動板部2がヒータ部3により加熱される。また、振動板部2は超音波発生部4により超音波振動し、その振動による放射圧によって振動板部2上の基板Wを浮上させる。これらにより、基板Wは、振動板部2によって浮上、加熱されながら、搬送部5によって振動板部2上を搬送される。
【0017】
なお、以下の説明では、基板Wが搬送される方向をY軸方向、Y軸方向と水平面上で直交する方向をX軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0018】
振動板部2は、複数の振動板21を有している。振動板21は、本実施形態ではアルミ製(アルミ合金製)で矩形板状の形状を有した金属板であり、それらが基板搬送方向(Y軸方向)に連続的に配列されることにより、振動板部2が形成されている。このとき、振動板21同士の継ぎ目22は、基板搬送方向と直交する方向(X軸方向)に沿って存在している。
【0019】
ここで、各々の振動板21のX軸方向の寸法は、振動板21に基板Wが載置されたときの基板WのX軸方向寸法よりも大きく設定されている。これにより、基板Wが搬送部5により振動板部2の上を搬送される際、X軸方向に関して基板Wが振動板部2からはみ出る部分が存在することなく、基板Wの全面が振動板部2の上を通過するため、ヒータ部3により加熱された振動板部2によって基板WをX軸方向に関して均一に加熱することができる。また、さらに搬送部5によって等速で基板Wが搬送されることによって、後述の通り、基板Wの全面が均一に加熱される。
【0020】
ヒータ部3は、振動板部2の基板Wを浮上させる面6の裏面7側に位置し、複数のヒータユニット31およびスペーサ32を有している。ヒータユニット31がX軸方向およびY軸方向に並べられることにより、一つのヒータ集合体33が形成される。また、スペーサ32は、一部のヒータユニット31に設置されて振動板21を支持し、また、スペーサ32によって振動板部2とヒータ集合体33とが所定の間隔を設けて離間されている。
【0021】
ヒータユニット31は、本実施形態ではカートリッジヒータまたはシーズヒータが矩形板状のアルミ板に挿入されて構成されるプレートヒータであり、これらがX軸方向およびY軸方向に隙間無く並べられている。なお、ここでプレートヒータの代わりにマイカヒータを用いても良い。
【0022】
ここで、ヒータ集合体33のX軸方向の寸法は、振動板部2のX軸方向の寸法よりも大きく、また、ヒータ集合体33のY軸方向の寸法は、振動板部2のY軸方向と同等以上である。そして、Z軸方向に沿って振動板部2からヒータ集合体33を見たときに、振動板部2の領域がヒータ集合体33の領域に収まる配置となっている。これによって、ヒータ集合体33は振動板部2の全面を同時に加熱することができ、振動板部2全体を均一な温度に加熱することが可能である。なお、ヒータ集合体33を形成する各々のヒータユニット31は、振動板21よりもX軸方向およびY軸方向の寸法が小さくても構わない。また、集合体の形をとらず、X軸方向およびY軸方向の寸法が振動板部2よりも大きい1つのヒータユニット31のみを用いて振動板部2を加熱する方法をとっても良い。
【0023】
スペーサ32は、例えば樹脂製の小径のブロックであり、本実施形態では、スペーサ32によって振動板部2とヒータ集合体33の間に1mmの間隔が設けられている。このように振動板部2とヒータ集合体33とを離間することにより、ヒータ集合体33による振動板部2への加熱は直接加熱でなく輻射加熱となり、直接加熱と比較して振動板部2全体の温度を均一にすることが容易となる。
【0024】
また、振動板部2とヒータ集合体33とが接触する配置であった場合、両者の固有振動数など振動特性の差異により、ヒータ集合体33が振動板部2の振動の妨げとなることがあるが、両者を離間することにより、振動板部2はヒータ集合体33によって振動を妨げられることなく、設定された通りに振動することができる。
【0025】
ここで、スペーサ32は、振動板21の振動の節にあたる位置で振動板21を支持するよう、ヒータユニット31上に配置されることが望ましい。これにより、スペーサ32が振動板21から受ける振動を極小にすることができるため、スペーサ32が振動板21との干渉によって摩耗することを防ぐことができる。
【0026】
超音波発生部4は、超音波振動子41およびホーン42を有している。超音波振動子41は、Z軸方向から見て振動板21に対してヒータユニット31と同じ側にあり、ヒータユニット31よりも振動板21から離れた位置に配置されている。超音波振動子41にはホーン42が接続されており、このホーン42がヒータユニット31を突き抜けて、振動板21に接触している。
【0027】
超音波振動子41は、図示しない発振器からの発振信号に基づいて対象物を励振させるものであり、例えば電極およびピエゾ素子を有するランジュバン型振動子がある。ランジュバン型振動子は、発振器によって電極に駆動電圧が印加されることでピエゾ素子が振動し、所定の振幅および周波数で発振する。このように発振した超音波振動子41の振動は、ホーン42を経由して、対象物である振動板21へ伝播し、振動板21を振動させる。振動板21が振動することで、振動板21から放射音圧が発せられ、この放射音圧によって、振動板21上にある基板Wには上向きの力が加わる。これにより、基板Wを振動板21の上方に所定の浮上量だけ浮上した状態で保持することが可能である。
【0028】
また、超音波振動子41の振動は、発振器から与えられる駆動電圧を制御することで振幅および周波数を調整することができ、これによって振動板21上で浮上する基板Wの浮上量を調整することが可能である。基板Wの浮上量は、本実施形態では0.1mm程度としている。
【0029】
ホーン42は、円柱もしくは複数の円柱をつなげた形状をとっており、片端が超音波振動子41と接続され、他端が振動板21に接触しており、超音波振動子41が発する振動の振幅を増幅もしくは減衰して振動板21に伝播させる。また、ホーン42はヒータユニット31を突き抜ける配置となるため、ホーン42が配置される位置においてヒータユニット31には貫通穴もしくは切り欠きが設けられ、ホーン42との干渉を回避している。
【0030】
また、ホーン42は、超音波振動子41と振動板21との間に設置されることにより、超音波振動子41をヒータ集合体33から離間する役割も兼ねている。超音波振動子41は熱に弱く、加熱されるとピエゾ素子の損傷などの異常が発生するため、ヒータ集合体33からの熱が超音波振動子41に伝わらないよう、ホーン42を用いて超音波振動子41がヒータ集合体33から遠ざけてられている。
【0031】
また、本実施形態では、ホーン42をチタン製とし、熱伝導率を低くしているため、ホーン42が振動板と接触している端部およびヒータユニット31と近接する部分において加熱されても、その熱が超音波振動子41と接続している端部まで伝導しにくくなっている。また、図示しない空冷装置などにより超音波振動子41を冷却し、さらに、ヒータユニット31の超音波振動子41と対向する面には図示しない断熱材を設け、ヒータ集合体33が超音波振動子41へ及ぼす影響を極小にしている。
【0032】
ここで、本実施形態では、基板Wの搬送の妨げにならないことを考慮して、超音波振動子41をZ軸方向から見て振動板21に対してヒータユニット31と同じ側、すなわち基板Wと反対側において振動板21と接触させているが、基板Wと同じ側で接触させても構わない。超音波振動子41を基板Wと同じ側で接触させても、本実施形態のように基板Wと反対側で接触させた場合と同様に、基板Wを振動浮上させる効果を得ることが可能である。
【0033】
搬送部5は、ハンド51および進退機構52を有している。ハンド51は、例えばL字型のブロックを有し、基板Wの角部において基板Wの2辺と接触して支持する。ハンド51は基板Wの対角を位置決めして支持ができるよう、基板W1枚の支持に対して基板Wの対角方向に2つ設けられている。また、進退機構52は、エアシリンダなどの直動機構であり、ハンド51が取付けられ、基板Wの支持時および支持解除時にそれぞれのハンド51を移動させる。この進退機構52によって、ハンド51は基板Wの支持時には基板Wに接近し、支持解除時には基板Wから退避する。ここで、ハンド51が退避している状態では、基板WはX軸方向およびY軸方向の拘束が解除されている状態であるため、次にハンド51が接近する時には基板Wの位置がずれ、ハンド51と衝突して基板Wおよびハンド51が破損する可能性がある。この場合、振動板部2に上下動するピンを設け、ハンド51が退避している時はピンが上昇して基板Wの位置を拘束し、基板Wが振動板部2上を搬送される時はピンが下降して搬送動作を妨げないようにすると良い。
【0034】
また、進退機構52は図示しないY軸方向の走行軸に接続されている。ハンド51が基板Wの角部に接近し、基板Wを支持している状態において、この走行軸によりハンド51および進退機構52がY軸方向に移動することによって、基板WがY軸方向へ搬送される。
【0035】
ここで、ハンド51が振動板21と接触してハンド51または振動板21が摩耗することおよびパーティクルが発生することを防ぐために、ハンド51の下面にエアベアリングを設け、ハンド51と振動板21とが一定の間隔を保つようにすると良い。
【0036】
次に、振動板部2への超音波発生部4の取付け位置について、図1および図2を用いて説明する。
【0037】
先述の通り、超音波振動子41からの振動を振動板21に伝播するために、ホーン42が振動板21に接触しており、また、ホーン42が配置される位置においてヒータユニット31には貫通穴もしくは切り欠きが設けられている。そのため、振動板21のホーン42が接触している箇所およびその近辺では、他の箇所と比べ、ヒータユニット31からの加熱を受けにくくなり、温度が低くなる。それは基板Wを浮上させる側の面でも同じであり、裏面側でホーン42が接触している箇所およびその近辺では、温度が低くなる。このような箇所にて基板Wを加熱すると、他の箇所に比べて十分に加熱することができないため、基板Wに乾燥ムラを発生させる可能性がある。
【0038】
したがって、本実施形態では、上記のような箇所では基板Wを加熱しないようにし、乾燥ムラの発生を防止している。具体的には、図1および図2中に示している、振動板部2の基板Wを浮上させる領域R1、およびその裏面側にあたる領域をR2に対して、それらの領域の外部、すなわち、基板Wを加熱する領域の外部において振動板21がホーン42と接触している。
【0039】
次に、複数の振動板部21の配列方向と基板Wの乾燥ムラの発生との関係について、図3を用いて説明する。図3は、振動板21の配列方向による基板Wの加熱特性の違いを表す概略図である。図3(a)は、振動板21同士の継ぎ目が基板搬送方向(Y軸方向)に沿うように振動板21が配列された場合、図3(b)は、継ぎ目が基板搬送方向と直交する方向(X軸方向)に沿うように配列された場合、図3(c)は、継ぎ目が基板搬送方向と直角以外の傾きを有するように配列された場合のものであり、それぞれの図の左側には基板搬送方向と振動板21の配列方向との関係を表した模式図を、右側には模式図上で表している基板W上のA点およびB点の2点における基板温度の変化を表すグラフ(加熱プロファイル)を示している。
【0040】
振動板部21が複数枚配列されて振動板部2が形成されるとき、ヒータ部3により振動板部2の全面が加熱されたとしても、振動板部21同士の継ぎ目22まで他の部分と同じ温度になることは困難であり、大抵、継ぎ目22の部分の温度は他の部分の温度よりも低くなる。ここで、図3(a)のように継ぎ目がY軸方向に沿っている場合、基板W上のB点のように、浮上搬送中、常に継ぎ目22の上を通過する点が存在する。このような点における加熱プロファイルは、図3(a)右のグラフに示すように、A点に代表するような継ぎ目22以外の上を通過する点の加熱プロファイルに比べて低くなってしまう。すなわち、基板Wは全面を均一に加熱されず、塗布膜には継ぎ目22に沿った筋状の乾燥ムラが発生する。
【0041】
これに対し、図3(b)のように継ぎ目22がX軸方向に沿っている場合、A点、B点ともに同じ加熱状態となる。各点とも継ぎ目22の上を通過する際に若干基板温度が下がるが、そのタイミングも同時であるため、各点の加熱プロファイルは同一となる。また、この状態においてさらに基板Wの搬送速度を等速とすることにより、X軸方向に並んだA点およびB点だけでなく基板W上の全ての点で同一の加熱プロファイルとなることが可能である。
【0042】
本実施形態では、前述の通り、振動板部2は振動板21がY軸方向に配列されることにより、継ぎ目22はX軸方向に沿って存在している。そのため、図3(b)に示すように基板W上の全ての点が同一の加熱プロファイルをとることで基板W全面が均一に加熱され、塗布膜の乾燥ムラを防ぐことが可能である。
【0043】
ここで、図3(c)のように継ぎ目22の方向がX軸方向に沿っていなくても、Y軸方向に対して傾きを有していれば、継ぎ目22の上しか通過しない点が基板W上に存在することを回避することが可能である。ただし、図3(c)右のグラフに示すように、継ぎ目22の上を通過して基板温度が低くなるタイミングは各点で一定にはならず、同一の加熱プロファイルにはならない。これが原因で乾燥ムラが発生する可能性もあるため、継ぎ目22はX軸方向に近い方向(基板搬送方向と略直交する方向)であることが望ましい。
【0044】
なお、搬送する基板Wの面積が小さく、1枚の振動板21を用いて十分に塗布膜の乾燥が完了するまで加熱できる場合、1枚の振動板21のみで振動板部2を形成すると良い。そうすることにより、振動板部21同士の継ぎ目による温度変化を考慮する必要が無くなり、容易に乾燥ムラを防ぐことが可能である。
【0045】
次に、浮上搬送加熱装置1における基板Wの浮上搬送加熱動作のフローについて、図4をもとに説明する。ここで、搬送動作時は振動板部2はすでにヒータ部3によって最高温度まで加熱された状態にあるものとする。また、振動板部2は超音波発生部4によって振動している状態であり、振動板部2上に搬送された基板Wはすぐに浮上するものとする。
【0046】
まず、塗布液が塗布された基板Wが上流工程より搬送開始位置へ搬入される(ステップS1)。基板の搬入方法は、コンベアによるもの、ローダによるものなど、種類は問わない。ここで、この搬送開始位置においては、まだ基板Wは振動板部2に差しかかっていなく、基板Wを加熱する環境下には無い。この位置では基板Wは一定時間停止するため、仮に振動板部2で加熱を開始してしまうと、継ぎ目22の存在によって乾燥ムラが発生するためである。
【0047】
次に、進退機構52によってハンド51が基板Wに接近し、基板Wが位置決め、支持される(ステップS2)。基板Wの位置を拘束するピンを振動板部2に設けている場合、まずハンド51が基板Wに接近して基板Wを支持してから、ピンが下降する。
【0048】
次に、図示しない走行軸により、ハンド51および進退機構52がY軸方向へ等速移動し、それとともに基板WがY方向へ等速で搬送される。(ステップS3)。この移動中、基板Wは振動板部2に差しかかり、差しかかった箇所から基板Wの加熱乾燥が行われる。
【0049】
基板Wの搬送と同時に加熱乾燥が続けられ、次にハンド51および進退機構52が搬送端に到達する(ステップS4)。これ以降、次工程への受け渡しのため基板Wは一定時間停止する。また、この時点において、基板Wの加熱乾燥は完了している。もし、この時点で基板Wの加熱乾燥が完了していなければ、振動板部2の継ぎ目22により、乾燥ムラが発生する可能性がある。したがって、ハンド51が搬送端に到達するまでに基板の加熱乾燥が完了するよう、等速搬送の速度および搬送距離が設定されている必要がある。
【0050】
次に、ハンド51が基板Wから退避し、基板Wの支持が解除される(ステップS5)。基板Wの位置を拘束するピンを振動板部2に設けている場合、まずピンが上昇して基板Wを拘束してから、ハンド51が退避する。そして、次の受け渡しが行われるまで基板Wを拘束する。
【0051】
次に、ハンド51および進退機構52が初期位置(ステップS1の搬送開始位置にて基板Wを支持できる位置)に戻り、次の基板Wの搬送への待機状態となる(ステップS6)。
【0052】
最後に、浮上搬送加熱装置1から次工程へ基板Wが受け渡しされることで加熱乾燥工程が終了し、次工程へと基板Wが渡される(ステップS7)。ここで、基板搬入時と同様、搬出方法の種類は問わない。
【0053】
以上説明した浮上搬送加熱装置によれば、塗布膜に乾燥ムラが形成されることなく基板を加熱乾燥させることができ、また、基板の搬送と加熱乾燥を同時に実施することが可能である。
【0054】
図5は、本発明の浮上搬送加熱装置1を用いた塗布膜焼成ラインの一例である。浮上搬送加熱装置1は、先述の基板乾燥の工程だけでなく、ヒータユニット31の設定温度をさらに高くして、塗布膜の焼成に適用することも可能である。また、ヒータユニット31内のカートリッジヒータなどを冷却材に置き換え、ヒータユニット31を冷却ユニットとして用いることにより、基板Wの冷却にも適用可能である。こうすることにより、基板Wの乾燥、焼成、冷却の工程を本発明の浮上搬送加熱装置1のみで形成することが可能である。
【0055】
また、従来の技術では、これらの工程に対してそれぞれ炉を設けて実施することもあるが、この場合、各炉間の基板の移動にローダの設置が必要となる。これに対し、本発明の浮上搬送加熱装置1を用いた塗布膜焼成ラインでは、ローダ無しで工程間の基板の搬送が可能であるため、ライン長の短縮および装置コストの減縮を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 浮上搬送加熱装置
2 振動板部
3 ヒータ部
4 超音波発生部
5 搬送部
6 基板を浮上させる面
7 基板を浮上させる面の裏面
21 振動板
22 継ぎ目
31 ヒータユニット
32 スペーサ
33 ヒータ集合体
41 超音波振動子
42 ホーン
51 ハンド
52 進退機構
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を超音波振動浮上させる振動板部と、
前記振動板部を加熱するヒータ部と、
前記振動板部に超音波振動を与える超音波発生部と、
基板の端部を支持して基板の浮上方向と垂直な方向に基板を搬送する搬送部と、
を備える浮上搬送加熱装置であって、
前記ヒータ部は、前記振動板部の基板を浮上させる面の裏面側に前記振動板部と所定間隔を設けて配置され、
基板の搬送方向と直交する方向の前記振動板部の寸法は同方向の基板の寸法よりも大きく、
前記ヒータ部により前記振動板部が加熱されることにより、浮上搬送中の基板全面が前記振動板部によって加熱されることを特徴とする、浮上搬送加熱装置。
【請求項2】
前記超音波発生部は、前記振動板部の基板を浮上させる領域および前記振動板部において当該領域の裏面側にあたる領域の両領域の外部において前記振動板部と接触し、前記振動板部に超音波振動を与えることを特徴とする、請求項1に記載の浮上搬送加熱装置。
【請求項3】
前記振動板部は、複数の振動板を一方向に連続して配列して形成され、前記振動板同士の継ぎ目は基板の搬送方向と略直交し、前記搬送部は前記振動板部上の基板を等速で搬送することを特徴とする、請求項1または2に記載の浮上搬送加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−248755(P2012−248755A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120762(P2011−120762)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】