説明

浮屋根式貯槽の改造方法

【課題】 既設浮屋根式貯槽から固定屋根式貯槽へ改造する場合にこの改造を施工性良く行う浮屋根式貯槽の改造方法、この固定屋根形成後の既設の浮屋根の処理を適切に行う浮屋根式貯槽の改造方法、及び既設の浮屋根処理後に新規浮屋根を適切に形成する浮屋根式貯槽の改造方法を提供する。
【解決手段】 既設の浮屋根式貯槽の上部に固定屋根を形成する浮屋根式貯槽の改造方法であって、前記浮屋根式貯槽に水張りし、前記浮屋根を上昇させて前記浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、吊り上げ装置と前記浮屋根上に形成して前記固定屋根の屋根骨を支持する支持装置とを用いて前記浮屋根の上で前記固定屋根を形成するステップと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設の浮屋根式貯槽の上部に固定屋根を形成する浮屋根式貯槽の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、タンクの側板の組立完了後に、タンク側板内の底板上で組立てられた浮屋根を水張りによって所定高さまで浮上させ、該浮屋根上に仮設された足場および支柱等の支持部材を利用して固定屋根を組立てることから成るインナーフロート式タンクの屋根組立工法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−19877号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のインナーフロート式タンクの屋根組立工法は新設タンクの組立工法であって、この特許文献1には既設浮屋根式貯槽から固定屋根式貯槽へ改造する場合に施工性良く行う方法は開示されていない。さらに、固定屋根形成に利用した既設の浮屋根は固定屋根形成後には不要な場合があり、この浮屋根を適切に撤去することが望まれ、さらに新たな浮屋根を設けることが必要とされる場合があるが、この点についても特許文献1に開示が無い。
【0005】
この発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、既設浮屋根式貯槽から固定屋根式貯槽へ改造する場合にこの改造を施工性良く行う浮屋根式貯槽の改造方法、この固定屋根形成後の既設の浮屋根の処理を適切に行う浮屋根式貯槽の改造方法、及び既設の浮屋根処理後に新規浮屋根を適切に形成する浮屋根式貯槽の改造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の浮屋根式貯槽の改造方法は、 既設の浮屋根式貯槽の上部に固定屋根を形成する浮屋根式貯槽の改造方法であって、 前記浮屋根式貯槽に水張りし、前記浮屋根を上昇させて前記浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、 吊り上げ装置と前記浮屋根上に形成して前記固定屋根の屋根骨を支持する支持装置とを用いて前記浮屋根の上で前記固定屋根を形成するステップと、 を有することを特徴とする。
【0007】
この浮屋根式貯槽の改造方法は、前記浮屋根式貯槽に水張りし、前記浮屋根を上昇させて前記浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、吊り上げ装置と前記浮屋根上に形成して前記固定屋根の屋根骨を支持する支持装置とを用いて前記浮屋根の上で前記固定屋根を形成するステップと、を有するので、上昇させた浮屋根の上で固定屋根を形成することになる。このように、上昇させた浮屋根の上で固定屋根を形成するこの改造方法は、浮屋根が水によって高い位置で支持されているので、底板近傍に位置させた浮屋根の上で固定屋根の屋根骨を形成してから水張りして浮屋根を上昇させて固定屋根を形成する従来の方法に比べて、固定屋根の部材を吊り上げ装置を用いて吊り上げて側板を越えさせた後に吊り下ろす距離、及び、その後にこの部材を吊り上げていた吊り上げ装置のフック等を上方に移動させる距離を短くすることが出来る。このため、従来の方法に比べて、安全かつ容易に固定屋根を形成できる。また、工期の時間も短く出来る。このように、この浮屋根式貯槽の改造方法は、施工性良く行うことが出来る改造方法になる。
【0008】
また、請求項2に係る発明の浮屋根式貯槽の改造方法では、 前記固定屋根の形成後に水抜きし、前記浮屋根を前記浮屋根式貯槽の底板近傍に移動させるステップと、 前記固定屋根に形成した取出口から前記浮屋根の解体部材を取り出すステップと、 をさらに有することを特徴とする。
【0009】
この浮屋根式貯槽の改造方法は、前記固定屋根の形成後に水抜きし、前記浮屋根を前記浮屋根式貯槽の底板近傍に移動させるステップと、前記固定屋根に形成した取出口から前記浮屋根の解体部材を取り出すステップと、を有するので、底板近傍に移動させた浮屋根を解体し、浮屋根を解体した解体部材を取出口を利用して作業性良く取り出すことが出来る。そして、取出口を固定屋根に形成するため、この取出口を大きく形成出来、解体部材がある程度大きくても許容されるので、浮屋根の切断解体回数を減らすことができる。このため、この浮屋根式貯槽の改造方法は、既設の浮屋根を適切に撤去することが出来る。
【0010】
また、請求項3に係る発明の浮屋根式貯槽の改造方法では、 前記浮屋根の解体後、新たに形成する浮屋根の部材を前記取出口及び又は前記浮屋根式貯槽の側板のマンホールから前記浮屋根式貯槽の内部に搬入し、前記浮屋根式貯槽の内部で前記部材を組立てて新たな浮屋根を形成するステップをさらに有することを特徴とする。
【0011】
この浮屋根式貯槽の改造方法は、前記浮屋根の解体後、新たに形成する浮屋根の部材を前記取出口及び又は前記浮屋根式貯槽の側板のマンホールから前記浮屋根式貯槽の内部に搬入し、前記浮屋根式貯槽の内部で前記部材を組立てて新たな浮屋根を形成するステップをさらに有することを特徴とするので、この浮屋根式貯槽の改造方法は、新たな浮屋根を容易かつ簡易に形成出来る。特にマンホールから新規浮屋根の部材を浮屋根式貯槽内に搬入する場合には、部材の搬入が簡単になる。一方で、取出口から新規浮屋根の部材を浮屋根式貯槽内に搬入する場合には、部材を大きく出来、浮屋根の組立て回数(溶接回数)を減らすことができる。このように、この浮屋根式貯槽の改造方法は、新規浮屋根を適切に形成することが出来る。
【0012】
なお、浮屋根式貯槽に固定屋根を形成した後、或いは浮屋根を撤去した後の貯槽は、浮屋根式貯槽とはいえない場合がある。本発明の説明においては、このような貯槽が、固定屋根形成前又は浮屋根撤去前において浮屋根式貯槽であれば、この貯槽を浮屋根式貯槽と表現することもある。また、本発明の説明においては、内部に新規の浮屋根を構築した貯槽を固定屋根式貯槽と表現することもある。
【発明の効果】
【0013】
上記のように請求項1記載の発明によれば、既設浮屋根式貯槽から固定屋根式貯槽へ改造する場合にこの改造を施工性良く行うことが出来る。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、固定屋根形成後の既設の浮屋根の処理を適切に行うことが出来る。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、既設の浮屋根処理後に新規浮屋根を適切に形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明する。なお、図面において、同様のもの、対応するもの、又は総称出来るものについては同じ符号を付して説明する場合がある。また、図面において、同様のもの、対応するもの、又は総称出来るものが複数ある場合、一部のもののみに符号を付して説明する場合がある。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素(部材等)の省略又は付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、下記で説明するような、各部材等の組立てや形成においては、適宜溶接等を用いる。
【0017】
(ステップ1) まず、浮屋根式貯槽100に貯蔵した貯蔵液を全て抜く(図1参照)。浮屋根式貯槽100は、円盤状の底板102と、この底板102に立設した円筒状の側板104と、貯蔵液に浮く浮屋根1と、その他の諸設備と、により構成される。諸設備としては、ゲージングホーム116、ゲージポール(図示せず)、エアフォーム(図示せず)、せき板(図示せず)、雨よけ板108、ローリングラダー112、レール114、液面計(図示せず)等がある。
【0018】
貯蔵液が抜かれると、浮屋根式貯槽100の浮屋根1は、デッキサポート106等の浮屋根サポート部材により、底板102から上方向に間隔をあけて支持される。これにより、浮屋根1は、底板102近傍に位置する。貯蔵液は、例えば工業用水や海水等である。図示した浮屋根1はシングルデッキタイプの浮屋根1であって、この浮屋根1は、デッキ板2と、このデッキ板2の外側(すなわち浮屋根1の外周部)に位置する外周部ポンツーン3と、を有する。デッキ板2の形状は、浮屋根式貯槽100の形状に合わせて決定し、例えば円盤状等の板状になる。外周部ポンツーン3の形状は、浮屋根式貯槽100の形状に合わせて決定し、例えば円環状等の環状(円環に限らず多角環状も含む。)になる。浮屋根1は、シングルデッキタイプであるが、他の例としてダブルデッキタイプ、パンタイプであっても良い。
【0019】
(ステップ2) そして、上記諸設備のうちの、この固定屋根の形成方法に不要な設備を撤去する。なお、図2以降ではデッキサポート106が適宜省略されているが、デッキサポート106等の浮屋根サポート部材は、固定屋根を設置して浮屋根1が降下した際の支えに使うため残しておく。また、図2以降では、シール部材110が省略されているが、シール部材110を残しておけば、下降時の浮屋根降下ガイドに使用出来、加えて、転落災害防止にも役立つ。
【0020】
(ステップ3) 浮屋根式貯槽100に注水して水張りし、浮屋根1を上昇させて浮屋根式貯槽100の上部に移動させる(図2参照)。浮屋根式貯槽100への水張りは、上記の工業用水や海水を用いても良い。工業用水や海水も水である。海水を用いると、浮力が増し、浮屋根1がより安定する。
【0021】
(ステップ4) 浮屋根1上に、固定屋根30の形成に必要な支持装置及び作業足場を形成する(図3参照)。支持装置は、固定屋根30の屋根骨7等を支持する装置で、例えば、浮屋根1の中央に形成した中央支持装置20(すなわち仮架台)がある。また、作業足場(図示せず)は、固定屋根30の形成に必要な足場で、例えば、外周部ポンツーン3上に形成したものがあるが、外周部ポンツーン3上を直接作業足場としてもよい。このような作業足場を利用して、ブラケット8を側板104の上部に形成する(図3参照)。ブラケット8は、固定屋根の屋根骨7と側板104とを連結する。ブラケット8により、屋根骨7と側板104との連結をスムーズに行うことが出来る。
【0022】
(ステップ5) 上昇した浮屋根1を利用し、浮屋根1の上で、クレーン等の吊り上げ装置40と、中央支持装置20等の支持装置と、を用いて固定屋根30を浮屋根式貯槽100の上部に形成する。
【0023】
具体的には、まず、屋根骨7を、吊り上げ装置40、中央支持装置20等の支持装置、及び、作業足場を利用して形成する。屋根骨7の部材43は、吊り上げ装置40により吊り上げられ、運ばれる。屋根骨7は、中央支持装置20とブラケット8との間に懸け渡す形状になるように部材43を組立てて形成する。この屋根骨7は、浮屋根式貯槽中央上方を中心として、複数方向に伸びてブラケット8に渡る形状である。そして、この屋根骨7の上に屋根板9を設置する(図3及び図4参照)。これにより、固定屋根30が浮屋根式貯槽100の上部に形成される(図4参照)。
【0024】
このように、上昇させた浮屋根1の上で固定屋根30を形成するこの改造方法は、浮屋根1が水によって高い位置で支持されているので、底板102近傍に位置させた浮屋根1の上で固定屋根30の屋根骨7を形成してから水張りして浮屋根1を上昇させて固定屋根30を形成する従来の方法に比べて、固定屋根30の部材43を吊り上げ装置を用いて吊り上げて側板104を越えさせた後に吊り下ろす距離、及び、その後にこの部材43を吊り上げていた吊り上げ装置40のフック等を上方に移動させる距離を矢印Lのように短くすることが出来る。このため、従来の方法に比べて、安全かつ容易に固定屋根30を形成できる。また、工期の時間も短く出来、落下物についても安全性が高くなる。このように、この浮屋根式貯槽100の改造方法は、施工性良く行うことが出来る改造方法になる。
【0025】
また、上記のように、浮屋根式貯槽100の上部に浮屋根1を上昇させてから上記の支持装置又は作業足場を形成する場合、すなわち、上昇させた浮屋根1の上で必要な支持装置又は作業足場を形成する場合、上記同様、支持装置自体、作業足場自体、又はこれらの部材を吊り下ろす距離、及び、その後にこの部材を吊り上げていた吊り上げ装置40のフック等を上方に移動させる距離を矢
印Lのように短くすることが出来る。このため、従来の方法に比べて、安全かつ容易に支持装置等を形成できる。
【0026】
また、水張りによって側板104上端縁の真円度が上昇し精度良く固定屋根30を構築することが出来る。さらに、浮屋根1を、支持装置及び作業足場を支持する部分に有効利用することが出来、既設の浮屋根1を、固定屋根30の形成に有効利用する。さらに、浮屋根1が水によって支持されているので、浮屋根1全体の広い面積で、支持装置及び作業足場からの荷重を平均に受けることが出来る。このため、上記従来の方法に比べ浮屋根1の補強をしなくて良いか又は少なくできる。また、浮屋根1が水によって支持されているので、浮屋根1自体を支持する支持装置を設ける必要もなくなるので、上記従来の方法に比べ、支持装置等を削減することが出来る。また、この浮屋根式貯槽100の改造方法によれば、地震災害などに対応した安全性向上の観点、或いは有効なる消火設備の観点から、既設の浮屋根式貯槽100を固定屋根式貯槽に改造する需要に応じることが出来る。なお、浮屋根1が高い位置にあるので、固定屋根30中央部は正規高さよりも少し高く持ち上げるなどして荷重による降下分を予め配慮することによって屋根骨7を組むことが容易となる。
【0027】
(ステップ6) 固定屋根30の形成後に水抜きし、浮屋根1を浮屋根式貯槽100の底板102近傍(底板102上)に移動させる(図5参照)。底板102近傍に移動させた浮屋根1は、デッキサポート106等の浮屋根サポート部材により、底板102から上方向に間隔をあけて支持される(図6参照)。
【0028】
なお、水抜き前、特に屋根骨7形成後に上記の支持装置及び作業足場を撤去すると良い。支持装置及び作業足場は、吊り上げ装置40を用いて撤去されるが、このときに撤去すれば、支持装置自体、作業足場自体、又はこれらの部材を吊り上げる距離、及び、その後にこの部材を吊り上げていた吊り上げ装置40のフック等を下方に移動させる距離を短くすることが出来、安全かつ容易に支持装置及び作業足場の撤去を行える。
【0029】
(ステップ7) 固定屋根30に形成した取出口35から浮屋根1の解体部材45を取り出す(図6参照)。具体的には、固定屋根30に取出口35(屋根開口部)を形成するとともに、浮屋根1を切断解体し、切断解体した浮屋根1の解体部材45を取出口35から吊り上げ装置40を使って吊り上げ、搬出撤去する。
【0030】
固定屋根30の形成後に水抜きし、浮屋根1を浮屋根式貯槽100の底板102近傍に移動させ、固定屋根30に形成した取出口35から浮屋根1の解体部材41を取り出すので、底板102近傍に移動させた浮屋根1を解体し、浮屋根1を解体した解体部材45を取出口35を利用して作業性良く取り出すことが出来る。そして、取出口35を固定屋根30に形成するため、この取出口35を大きく形成出来、解体部材45がある程度大きくても許容されるので、浮屋根1の切断解体回数を減らすことができる。このため、浮屋根式貯槽100の改造方法は、固定屋根30形成に利用した浮屋根1を適切に撤去することが出来る。このため、浮屋根1を作業性良く、解体、搬出撤去することが出来る。特に、切断解体した浮屋根1の解体部材45を取出口35から吊り上げ装置40を使って搬出撤去するので、解体部材45がある程度大きくても、容易に搬出撤去出来る。
【0031】
なお、浮屋根1を解体する際等のステップ7において、底板102上に少量の水を張って作業すれば、浮屋根1の切断火花養生が可能となり、加えて、表面保護養生のために亜鉛引き鋼材などの薄板を敷いておけば、底板102表面、塗装ライニングなどを損傷することなく、作業性良く、浮屋根1を切断、解体、撤去することが出来る。更に、張った水を利用して浮体上に解体部材45等を載せて移動させれば、大きな重機搬入と移動が困難な閉塞した浮屋根式貯槽100内での解体部材45の移動を大きな重機に頼らず効率的に行うことが出来る。
【0032】
(ステップ8) 簡易浮屋根等の新たな浮屋根50を設ける場合、浮屋根1の解体後、新たに形成する浮屋根の部材47(図7参照)及び又は49(図8参照)を取出口35(図7参照)及び又は浮屋根式貯槽100の側板104のマンホール60(図8参照)から浮屋根式貯槽100の内部に搬入し、浮屋根式貯槽100の内部で部材(図7参照)及び又は49(図8参照)を組立てて新たな浮屋根50を形成する。
【0033】
取出口35は、上記の取出口をそのまま用いる事が出来、浮屋根50形成が容易になる。マンホール60は、通常、建設時や清掃等の時に利用されるものであり、浮屋根式貯槽100の側板104に予め形成してある。
【0034】
浮屋根50は、例えば、デッキ板51と、このデッキ板51の裏面に形成する浮き53と、デッキ板の外側かつ側板104の間に形成したシール部材54(ショック吸収材)と、を有する。また、貯蔵液が浮屋根式貯槽100に貯蔵されていない場合、浮屋根50は、底板102近傍に位置し、デッキサポート52等の浮屋根サポート部材により、底板102から上方向に間隔をあけて支持される(図7参照)。浮屋根50の部材47又は49は、アルミ材などの軽量屋根材である。
【0035】
簡易浮屋根等の新たな浮屋根50を設ける場合にも、底板102上には、浮屋根50の溶接火花養生のための水を少量張っておくか、表面保護養生のために亜鉛引き鋼材などの薄板を敷いておくかする。これにより、底板102表面、塗装ライニングなどを損傷することなく、作業性良く、新規浮屋根50を形成することが出来る。更に、張った水を利用して浮体上に部材47又は49等を載せて移動させれば、大きな重機搬入と移動が困難な閉塞した貯槽内での部材47又は49の移動を大きな重機に頼らず効率的に行うことが出来る。なお、浮屋根50は、シングルタイプであるが、ポンツーンタイプ又はダブルデッキタイプとしても良い。
【0036】
浮屋根1の解体後、新たに形成する浮屋根50の部材47及び又は49を取出口35及び又は浮屋根式貯槽100の側板104のマンホール60から浮屋根式貯槽100の内部に搬入し、浮屋根式貯槽100の内部で部材47及び又は49を組立てて新たな浮屋根50を形成するので、この浮屋根式貯槽の改造方法は、新たな浮屋根50を容易かつ簡易に形成出来る。特に図8のように低位置にあるマンホールから新規浮屋根50の部材49を浮屋根式貯槽100内に搬入する場合には、部材49の搬入が簡単になる。一方で、取出口35から新規浮屋根50の部材47を浮屋根式貯槽100内に搬入する場合には、部材47を大きく出来、浮屋根50の組立て回数(溶接回数)を減らすことができる。いずれにしても、この浮屋根式貯槽の改造方法は、新規浮屋根50を適切に形成することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法は、浮屋根と水張りを利用して、既設の浮屋根式貯槽を固定屋根式貯槽に改造する場合に広く適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、貯槽の貯蔵液を抜いた状態を示す説明図である。
【図2】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図1に続いて、浮屋根式貯槽に注水して水張りし、浮屋根を上昇させる状態を示す説明図である。
【図3】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図2に続いて、固定屋根を形成する状態を示す説明図である。
【図4】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図3に続いて、固定屋根形成後の状態を示す説明図である。
【図5】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図4に続いて、浮屋根式貯槽から水抜きし、浮屋根を下降させる状態を示す説明図である。
【図6】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図5に続いて、浮屋根を解体撤去する状態を示す説明図である。
【図7】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図6に続いて、取出口を用いて新たな浮屋根を形成する状態を示す説明図である。
【図8】この発明に係る浮屋根式貯槽の改造方法の一例を説明する説明図であり、図6に続いて、マンホールを用いて新たな浮屋根を形成する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 浮屋根2 デッキ板3 外周部ポンツーン7 屋根骨8 ブラケット9 屋根板20 中央支持装置30 固定屋根35 取出口40 吊り上げ装置43 部材45 解体部材47 部材49 部材50 浮屋根51 デッキ板52 デッキサポート53 浮き54 シール部材60 マンホール100 浮屋根式貯槽102 底板104 側板108 雨よけ板110 シール部材112 ローリングラダー114 レール116 ゲージングホーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の浮屋根式貯槽の上部に固定屋根を形成する浮屋根式貯槽の改造方法であって、 前記浮屋根式貯槽に水張りし、前記浮屋根を上昇させて前記浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、 吊り上げ装置と前記浮屋根上に形成して前記固定屋根の屋根骨を支持する支持装置とを用いて前記浮屋根の上で前記固定屋根を形成するステップと、 を有することを特徴とする浮屋根式貯槽の改造方法。
【請求項2】
請求項1記載の浮屋根式貯槽の改造方法において、 前記固定屋根の形成後に水抜きし、前記浮屋根を前記浮屋根式貯槽の底板近傍に移動させるステップと、 前記固定屋根に形成した取出口から前記浮屋根の解体部材を取り出すステップと、 をさらに有することを特徴とする浮屋根式貯槽の改造方法。
【請求項3】
請求項2記載の浮屋根式貯槽の改造方法において、 前記浮屋根の解体後、新たに形成する浮屋根の部材を前記取出口及び又は前記浮屋根式貯槽の側板のマンホールから前記浮屋根式貯槽の内部に搬入し、前記浮屋根式貯槽の内部で前記部材を組立てて新たな浮屋根を形成するステップをさらに有することを特徴とする浮屋根式貯槽の改造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−228247(P2009−228247A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72805(P2008−72805)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】