浮床用緩衝体
【課題】緩衝体の一部を立ち上がり部として切り離して使用することができ、しかも一定位置で立ち上がり部を切り離すことができることによって安定した施工品質を得やすく、さらに、施工現場等への輸送等の際には嵩張らない浮床用緩衝体の提供を目的とする。
【解決手段】発泡体の板状体11には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込み19が、板状体の表面11Aまで貫通することなく板状体の裏面11Bに形成され、切り込み位置19で切り離さない場合には、浮床用緩衝体10の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、一方、切り込み位置19で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分41として使用され、切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部43として使用されるように構成した。
【解決手段】発泡体の板状体11には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込み19が、板状体の表面11Aまで貫通することなく板状体の裏面11Bに形成され、切り込み位置19で切り離さない場合には、浮床用緩衝体10の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、一方、切り込み位置19で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分41として使用され、切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部43として使用されるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮床用緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製の床を有する建築物においては、床面を伝わる振動や騒音を低減するための構造として浮床構造がある。
浮床構造は、図16の(16−A)に示すようにコンクリート製スラブ床501の上に発泡体からなる緩衝体511を載置し、またスラブ床501の周縁には、該周縁から立ち上がる壁面503に接触するように発泡体からなる立ち上がり部513を配置し、前記緩衝体511上にコンクリート(モルタルの場合もある)505を打設する構造からなる。前記緩衝体511は板状の発泡体からなり、所定位置に表面と裏面間を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、前記貫通孔に緩衝体511よりも剛性の高いゴム等からなる防振弾性体を挿入する場合がある。前記立ち上がり部513は、平板状のものを起こして(立てて)使用する場合、あるいは図16の(16−B)に示す立ち上がり部513Aのように断面形状がL字状のものを使用する場合がある(特許文献1、2、3)。
【0003】
しかしながら従来においては、スラブ床上に載置される緩衝体と、起こして使用される立ち上がり部との2種類を用意しなければならず、品番管理や在庫管理等に手間がかかる問題がある。また、立ち上がり部が平板状の場合には、施工中に立ち上がり部が倒れ易く、倒れた場合には直すのに手間がかかる問題がある。一方、断面L字形の立ち上がり部は、輸送や保管等の際に嵩張る問題もある。
また、施工現場で緩衝体の一部を切り取って平板状の立ち上がり部として使用することも行われているが、その場合には、切断位置が一定し難く、また切断に手間がかかり、しかも施工時に立ち上がり部が倒れ易いため、安定した施工品質が得難く、施工時間が長くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−294063号公報
【特許文献2】特開2001−200629号公報
【特許文献3】特開2003−35002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、緩衝体の一部を立ち上がり部として切り離して使用することができ、しかも一定の切り離し位置で切り離せるようにすることによって安定した施工品質が得られ、さらに、施工現場等への輸送等の際には嵩張らず、また施工時には立ち上がり部を倒れにくくできる浮床用緩衝体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コンクリート製スラブ床に配置される浮床用緩衝体において、発泡体の板状体からからなり、前記板状体には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込みが、前記板状体の表面まで貫通することなく、該板状体の裏面に形成された構成からなり、前記切り込み位置で切り離さない場合には、前記浮床用緩衝体の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、一方、前記切り込み位置で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分として使用され、前記切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部として使用されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記切り込みは、前記板状体の一端に対して突出した凸形状部と窪んだ凹形状部が前記切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状からなり、前記切り込みで切り離された場合には、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分と前記コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、前記凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を狭くして形成され、前記凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を広くして形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4において、前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部及び前記凹形状部の側部が階段状に形成され、前記凸形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に狭くされると共に前記凹形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に広くされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、立ち上がり部を別に用意しなくても、施工現場で浮床用緩衝体の一部を切り込み位置で切り離すことによって立ち上がり部が得られるため、品番管理や在庫管理等が容易になる。さらに、切り込みの存在により、一定位置で立ち上がり部を切り離すことができるため、安定した施工品質を得ることができる。さらに、本発明の浮床用緩衝体は、施工現場等への輸送や保管等の際に平板状であるため、嵩張らず、スペースを取らないことから、輸送コスト及び保管コストを低減することができる。また、板状体の裏面に形成された切り込みが表面まで貫通していないため、浮床の施工時に、切り込み位置で切り離すことなくコンクリート製スラブ床に載置された浮床用緩衝体の部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリートが、浮床用緩衝体の切り込みを通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、浮床用緩衝体の裏面に形成された切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されているため、浮床用緩衝体が切り込み位置で切り離されることなくコンクリート製スラブ床上に載置された場合には、切り込みが連続する線状の切り込み線で形成されたものと比べ、浅く切り込まれた部分あるいは切り込まれていない非切り込み部分で強度低下を抑えることができ、浮床用緩衝体上に荷重が加わった場合に、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、コンクリート製スラブ床に載置される部分と、コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成するため、施工時に互いの係合部を係合させてスラブ床及び壁面に配置することにより、立ち上がり部が倒れたり、ずれたりすることを防ぐことができ、施工作業を効率的に行うことができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、凹凸形状の切り込みは、凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅が狭くなるように形成されると共に凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅が広くなるように形成されているため、浮床用緩衝体が凹凸形状の切り込みで立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分とに切り離された場合、形成された凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の基部で幅が狭くなり、また凸状係合部の基部で幅が広くなる。しかも、立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分が組み合わされた場合に互いに係合することとなる凹状係合部と係合部は、凹凸形状の切り込みにおける同一の凸形状部あるいは同一の凹形状部で切り離されて形成されるため、凹凸形状の切り込みにおける一つの凸形状部あるいは凹状係合部で形成された凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の基部側(奥側)が凸状係合部の基部側の幅よりも狭くなり、凸状係合部の基部側が凹状係合部の基部側の幅よりも広くなる。
【0015】
切り離された立ち上がり部が起こされて、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側に組み合わされて互いの係合部が係合する場合、立ち上がり部における下向きの凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の上端の基部側で幅が最も狭くなり、また、凸状係合部の上端の基部側で幅が最も広くなる。そして、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の凹状係合部における上端の最も幅の狭い基部側に、コンクリート製スラブ床に載置される部分の凸状係合部において、前記立ち上がり部の凹状係合部における基部側よりも幅の広い前記凸状係合部の基部側が圧縮されて係合し、また立ち上がり部の凸状係合部における上端の最も幅の広い基部側が、コンクリート製スラブ床に載置される部分の凹状係合部において、前記立ち上がり部の凸状係合部における基部側よりも幅の狭い前記凹状係合部の基部側に圧縮されて係合するため、互いの係合部が強固に密に係合することになる。したがって、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部が強固に密に係合し、立ち上がり部を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部から漏れるのを防ぐことができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項4の場合と同様に、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部が強固に密に係合し、立ち上がり部を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部から漏れるのを防ぐことができる。さらに請求項5の発明によれば、切り込みで切り離された立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部は、側部が階段状となる。そのため、立ち上がり部を起こして立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部を係合させた場合、係合部が階段状の部分で当接するため、係合及び密着がより確実かつ安定し、立ち上がり部をより確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが係合部から漏れるのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る浮床用緩衝体の表面図と裏面図である。
【図2】図1の浮床用緩衝体における各位置の断面図である。
【図3】ミシン刃の例を示す斜視図である。
【図4】図1の浮床用緩衝体を切り離した状態の表面図である。
【図5】図1の浮床用緩衝体を切り離して組み合わせる際を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る浮床用緩衝体の裏面図と切り離した状態の図である。
【図8】図7の浮床用緩衝体を切り離した後に組み合わせる際を示す斜視図である。
【図9】第3実施形態に係る浮床用緩衝体の裏面図と切り離した状態の図である。
【図10】図9の浮床用緩衝体を切り離した後に組み合わせる際を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る浮床用緩衝体の表面図と裏面図である。
【図12】図11の浮床用緩衝体における各位置の断面図である。
【図13】図11の浮床用緩衝体を切り離した状態の表面図である。
【図14】図11の浮床用緩衝体を切り離して組み合わせた状態を示す斜視図である。
【図15】第4実施形態の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【図16】従来の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態の浮床用緩衝体について説明する。図1及び図2に示す第1実施形態の浮床用緩衝体10は、前記浮床構造に使用されるものであって、コンクリート製スラブ床に載置される部分41と、コンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離して使用可能なものである。
【0019】
前記浮床用緩衝体10は、発泡体の板状体11からなる。前記発泡体としては、ポリスチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体等の独立気泡構造の発泡体が好ましい。また、前記発泡体はビーズ法によるものは切断する際に細かく分離しやすいため、押出成形や連続スラブ発泡品を裁断等により所定形状にしたものが好ましい。前記板状体11の形状は、特に限定されないが、浮床構造の床が通常四角形とされることから、平面視形状が四角形、特には正方形あるいは長方形のものが好ましい。前記板状体11の一例として、平面視形状が一辺950mmの正方形のものを挙げる。板状体11の厚み、すなわち浮床用緩衝体10の厚みは、15〜60mm程度が好ましい。一例として前記板状体11の厚みが25mmの場合を挙げる。
【0020】
前記板状体11には、前記浮床用緩衝体10よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔14が、前記板状体11の表面11Aと裏面11B間を貫通して所定位置に形成されている。
また、前記板状体11の裏面11Bには、一端15から所定幅の部分を立ち上がり部43として切り離すための切り込み19が形成されている。前記板状体11の一端15は、図示の例では、四角形(正方形)の一辺である。前記立ち上がり部43の幅(前記一端15と前記切り込み19との間隔t1)は、前記浮床構造においてコンクリート製スラブ床に載置された緩衝体上に打設されるコンクリート(モルタルの場合を含む。以下同様。)の厚みと略等しくされる。また、前記立ち上がり部43は、略長方形の板状とされている。
【0021】
前記切り込み19は、前記板状体11の表面11Aまで貫通することなく該板状体11の裏面11Bに形成されている。また、図2の符号23は、前記切り込み19の位置において板状体11の表面11A側に残された切り残し部である。
【0022】
前記切り込み19は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されたミシン目状の切り込み、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない(非切り込み)部分が交互に形成されているミシン目状の切り込みからなる。
【0023】
図3の(3−A)に示すミシン刃31は、切り込まれた部分と切り込まれていない部分を交互に有するミシン目状の切り込みを形成するためのミシン刃の例である。符号32が切り込み部分を形成する刃の部分、符号33が非切り込み部分を形成する部分である。また図3の(3−B)に示すミシン刃31Aは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分を交互に有するミシン目状の切り込みを形成するためのミシン刃の例である。符号32Aが深い切り込み部分を形成する刃の部分、符号33Aが浅い切り込み部分を形成する部分である。前記切り込み部分の長さ(刃32の長さa1)及び深く切り込む部分の長さ(刃32Aの長さb1)と、非切り込み部分の長さ(切り込み部分の間隔a2)及び浅く切り込む部分の長さ(刃33Aの長さb2)は、適宜決定されるが、一例として切り込み部分の長さ(刃32の長さa1)及び深く切り込む部分の長さ(刃32Aの長さb1)と非切り込み部分の長さ(すなわち切り込み部分の間隔a2)及び浅く切り込む部分の長さ(刃33Aの長さb2)がそれぞれ5mmの場合を挙げる。
【0024】
また、前記板状体11の裏面11Bからの切り込み19の深さは、浮床の施工時に前記浮床用緩衝体10の表面に荷重が加わった際、切り込み部分で破断を生じ難い深さが好ましく、前記板状体11の材質等にもよるが、深い切り込みは板状体11の厚みの2/3程度、浅い切り込みは板状体11の厚みの1/3程度の例を挙げる。
【0025】
前記切り込み19は、図1の(1−B)に示すように、前記板状体11の一端15(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端15に向かって)突出した凸形状部20と窪んだ凹形状部21が、前記切り込み19の長さ方向nに隣り合う凹凸形状に形成されている。前記一端15から前記切り込み19の凸形状部20までの距離t1が前記浮床構造においてコンクリート製スラブ床に載置された緩衝体上に打設されるコンクリートの厚みと略等しくされている。t1の例として100mmを挙げる。また、t2とt1の差は、前記板状体11の厚みと略等しくするのが好ましい。
【0026】
前記浮床用緩衝体10は、前記切り込み19の位置をナイフ等の刃物で切断することにより、コンクリート製スラブ床に載置される部分41とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離すことができる。図4に示すように、前記切り込み19で切断された部分19a、19bには、互いに係合する係合部41a、41b、41c、41d、41e、43a、43b、43c、43d、43eが形成される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された係合部41a、41c、41eは、前記切り込み19の凹形状部21で切断された凹状係合部であり、また係合部41b、41dは、前記切り込み19の凸形状部20で切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部43に形成された係合部43a、43c、43eは、前記切り込み19の凹形状部21で切断された凸状係合部であり、また係合部43b、43dは、前記切り込み19の凸形状部20で切断された凹状係合部である。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された凹状係合部41a、41c、41eと、前記立ち上がり部43に形成された凸状係合部43a、43c、43eは、嵌合により係合し、また、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された凸状係合部41b、41dと前記立ち上がり部43に形成された凹状係合部43b、43dは、嵌合により係合する。
【0027】
前記浮床用緩衝体10は、施工現場等への輸送及び保管等の際には、前記切り込み19で切り離される前の平板状の状態で所要数積層される。そのため、複数の浮床用緩衝体10を嵩張ることなく輸送したり保管等したりすることができ、輸送コストや保管コストを低減することができる。
【0028】
前記浮床用緩衝体10を用いて浮床を施工する場合について説明する。浮床の施工に際して前記浮床用緩衝体10の必要数が施工現場に輸送される。施工現場では、一部を切り離して立ち上がり部を形成する浮床用緩衝体10aについては、図4に示すように、前記切り込み19の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分41とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離す。切り離されたコンクリート製スラブ床に載置される部分41と立ち上がり部43には、切り離しによって前記切り込み19で切断された部分19a、19bに前記係合部41a〜41e、43a〜43eが形成される。
【0029】
次に、図5の(5−A)及び(5−B)に示すように、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41の係合部41a〜41eと、前記立ち上がり部43の係合部43a〜43eを嵌合させて係合することにより、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41の縁に前記立ち上がり部43を起こした状態で組み合わせる。そして、図6に示すように、コンクリート製スラブ床51周縁の壁面53に前記立ち上がり部43を当接するようにして配置し、また前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41をコンクリート製スラブ床51上に載置する。なお、前記コンクリート製スラブ床51上に、予めポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを敷いておく場合もある。
【0030】
一方、切り離すことなく使用する浮床用緩衝体10bについては、前記切り込み19で切り離すことなく、浮床用緩衝体10bの全体を前記裏面11Bが下向きとなるようにして、コンクリート製スラブ床51の上に載置し、前記浮床用緩衝体10aにおけるコンクリート製スラブ床に載置される部分41よりも内側に敷き詰める。なお、前記浮床用緩衝体の貫通孔14には、浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体45を、浮床用緩衝体の配置前または浮床用緩衝体の配置後に挿入する。その後、前記浮床用緩衝体10aのコンクリート製スラブ床に載置される部分41と前記浮床用緩衝体10bの上にコンクリート57を打設する。前記施工時、前記立ち上がり部43は前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41と係合しているため、倒れたり位置ずれを生じ難く、施工を効率よく、かつ安定した品質で行うことができる。
【0031】
また、前記切り込み19は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されており、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で強度低下を抑えることができるため、コンクリート57の打設等の際に前記浮床用緩衝体10bにおける切り込み19近辺に荷重が加わっても、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で支えることができ、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。さらに、前記切り込み19が裏面に形成されて表面まで貫通していないため、前記浮床用緩衝体10bの部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリート57が、浮床用緩衝体10bの切り込み19を通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0032】
図7に第2実施形態の浮床用緩衝体100を示す。第2実施形態の浮床用緩衝体100は、発泡体からなる平面視四角形の板状体110の裏面110Bに、第1実施形態とは異なる凹凸形状の切り込み190が形成された例である。切り込み190は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第2実施形態の浮床用緩衝体100は、前記凹凸形状の切り込み190が、前記板状体110の一端150(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端150に向かって)突出した凸形状部200b、200dと窪んだ凹形状部200a、200c、200eが、前記切り込み190の長さ方向uに隣り合う凹凸形状に形成されたもので、前記凸形状部200b、200dが前記板状体110の一端150に向けて幅wb、wdを徐々に狭くして形成され、また前記凹形状部200cの幅wcを前記板状体110の一端150に向けて徐々に広くして形成されている点で、第1実施形態の浮床用緩衝体10と相違し、他の構成は第1実施形態の浮床用緩衝体10と同様である。符号140は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、410は切り離された場合のコンクリート製スラブ床に載置される部分、430は立ち上がり部である。
【0033】
前記浮床用緩衝体100は、浮床の施工時、必要に応じて前記切り込み190の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分410とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部430とに切り離される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410と立ち上がり部430には、前記切り込み190で切断された部分190a、190bに、係合部410a、410b、410c、410d、410e、430a、430b、430c、430d、430eが形成される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410に形成された係合部410a、410c、410eは、前記切り込み190の凹形状部200a、200c、200eで切断された凹状係合部であり、また係合部410b、410dは、前記切り込み190の凸形状部200b、200dで切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部430に形成された係合部430a、430c、430eは、前記切り込み190の凹形状部200a、200c、200eで切断された凸状係合部であり、また係合部430b、430dは、前記切り込み190の凸形状部200b、200dで切断された凹状係合部である。
【0034】
前記浮床用緩衝体100は、前記切り込み190の凸形状部200b、200dが前記板状体110の一端150に向けて幅wb、wdを狭くして形成されているため、前記凸形状部200b、200dの切り込みで形成された立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dは、幅m1b、m1dが、基部側(奥側)430b1、430d1で最も狭くなり、一方、前記凹形状部200cの切り込みで形成された立ち上がり部430の凸状係合部430cは、幅m1cが、基部側430c1で最も広くなる。また、前記凸形状部200b、200dの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dは、幅m2b、m2dが、基部側410b1、410d1で最も広くなり、一方、前記凹形状部200cの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cは、幅m2cが、基部側410c1で最も狭くなる。さらに、前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dにおける基部側430b1、430d1の幅m1b、m1dは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dにおける基部側410b1、410d1の幅m2b、m2dよりも狭くなる。また、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cにおける基部側430c1の幅m1cは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cにおける基部側410c1の幅m2cよりも広くなる。
【0035】
図8の(8−A)及び(8−B)に示すように、切り離された前記立ち上がり部430は、起こされた状態で前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部の位置に上方から組み合わされ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部410a〜410eと、前記立ち上がり部430の係合部430a〜430eを嵌合させて係合が行われる。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410a、410c、410eには、上方から立ち上がり部430の凸状係合部430a、430c、430eが下向きに挿入されて係合し、一方、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dには、上方から立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dが下向きに嵌合して係合する。
【0036】
前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dにおける基部側430b1、430d1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dにおける基部側410b1、410d1よりも幅が狭くなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dの圧縮が大になり、前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dとの係合が強固かつ密になる。また、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cにおける基部側430c1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cの基部側410c1よりも幅が広くなっているため、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cの圧縮が大になり、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cとの係合が強固かつ密になる。その結果、コンクリート製スラブ床に載置される部分410の上面側では、前記立ち上がり部430の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部が強固かつ密に係合し、前記立ち上がり部430を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが立ち上がり部430の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部から漏れるのを防ぐこともできる。
【0037】
図9に第3実施形態の浮床用緩衝体101を示す。第3実施形態の浮床用緩衝体101は、発泡体からなる平面視四角形の板状体111の裏面111Bに、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる凹凸形状の切り込み191が形成された例である。切り込み191は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第3実施形態は、前記凹凸形状の切り込み191が、前記板状体111の一端151(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端151に向かって)突出した凸形状部201b、201dと窪んだ凹形状部201a、201c、201eが切り込み191の長さ方向vに隣り合う凹凸形状に形成されたもので、前記凸形状部及び凹形状部のそれぞれの側部202が階段状とされ、前記板状体111の一端151に向けて前記凸形状部201b、201dの幅zb、zdが段階的に狭く形成され、また前記板状体111の一端151に向けて前記凹形状部201cの幅zcが段階的に広くされている点で、第1実施形態の浮床用緩衝体10及び第2実施形態の浮床用緩衝体100と相違し、他の構成は第1実施形態の浮床用緩衝体10及び第2実施形態の浮床用緩衝体100と同様である。符号141は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、411は切り離された場合にコンクリート製スラブ床に載置される部分、431は立ち上がり部である。
【0038】
前記浮床用緩衝体101は、浮床の施工時、必要に応じて前記切り込み191の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分411とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部431とに切り離される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と立ち上がり部431には、前記切り込み191で切断された部分191a、191bに係合部411a、411b、411c、411d、411e、431a、431b、431c、431eが、該各係合部の側部を階段状Sとして形成される。
【0039】
前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411に形成された係合部411a、411c、411eは、前記切り込み191の凹形状部201a、201c、201eで切断された凹状係合部であり、また係合部411b、411dは、前記切り込み191の凸形状部201b、201dで切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部431に形成された係合部431a、431c、431eは、前記切り込み191の凹形状部201a、201c、201eで切断された凸状係合部であり、また係合部431b、431dは、前記切り込み191の凸形状部201b、201dで切断された凹状係合部である。
【0040】
前記浮床用緩衝体101は、前記切り込み191の凸形状部201b、201dが前記板状体110の一端151に向けて幅zb、zdを段階的に狭くして形成されているため、前記凸形状部201b、201dの切り込みで形成された立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dは、幅x1b、x1dが、基部側(奥側)431b1、431d1で最も狭くなり、一方、前記凹形状部201cの切り込みで形成された立ち上がり部431の凸状係合部431cは、幅x1cが、基部側431c1で最も広くなる。
【0041】
また、前記凸形状部201b、201dの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dは、幅x2b、x2dが、基部側411b1、411d1で最も広くなり、一方、前記凹形状部201cの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cは、幅x2cが、基部側(奥側)411c1で最も狭くなる。
【0042】
さらに、前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dにおける基部側431b1、431d1の幅x1b、x1dは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dにおける基部側411b1、411d1の幅x2b、x2dよりも狭くなる。また、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cにおける基部側431c1の幅x1cは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cにおける基部側411c1の幅x2cよりも広くなる。
【0043】
図10の(10−A)及び(10−B)に示すように、切り離された前記立ち上がり部431は、起こされた状態で前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部の位置に上方から組み合わされ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部411a〜411eと、前記立ち上がり部431の係合部431a〜431eを嵌合させて係合が行われる。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411a、411c、411eには、上方から立ち上がり部431の凸状係合部431a、431c、431eが下向きに挿入されて係合し、一方、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dには、上方から立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dが下向きに嵌合して係合する。
【0044】
前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dにおける基部側431b1、431d1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dにおける基部側411b1、411d1よりも幅が狭くなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dの圧縮が大になり、前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部411b、411dとの係合が強固かつ密になる。また、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cにおける基部側431c1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cの基部側411c1よりも幅が広くなっているため、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cの圧縮が大になり、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cとの係合が強固かつ密になる。
【0045】
さらに、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と前記立ち上がり部431に形成された係合部411a、411b、411c、411d、411e、431a、431b、431c、431eの各側部が階段状Sとなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と前記立ち上がり部431は、係合部同士の係合が安定して、より確実に行われる。
【0046】
その結果、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の上面側では、前記立ち上がり部431の係合部と前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部が密に係合し、前記立ち上がり部431を、より確実に保持することができるようになると共に、その後に打設されるコンクリートが、立ち上がり部431の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部から漏れるのを、より確実に防ぐことができるようになる。
【0047】
図11及び図12に第4実施形態の浮床用緩衝体60を示す。第4実施形態の浮床用緩衝体60は、発泡体からなる平面視四角形の板状体61の裏面61Bに切り込み69が形成され、図13に示すように、前記切り込み69の位置でコンクリート製スラブ床に載置される部分71とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに切り離して使用可能なものである。前記切り込み69は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第4実施形態は、前記切り込み69が、板状体61の一端65に対して凹凸の無い直線状に形成され、切り離しによって形成されるコンクリート製スラブ床に載置される部分71とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに、前記シン目状の切り込み69で切断された部分69a、69bに係合部を有しない点で、前記第1実施形態の浮床用緩衝体10と相違し、他の構成は同様である。前記立ち上がり部73は略長方形の板状とされている。なお、符号64は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、符号70は、前記切り込み69の位置において板状体61の表面61A側に残された切り残し部である。
【0048】
浮床の施工に際して前記浮床用緩衝体60の必要数が施工現場に輸送される。施工現場に輸送された浮床用緩衝体60は、図13に示すように、一部を切り離して立ち上がり部を形成する浮床用緩衝体60aについては、施工現場で前記切り込み69の位置をナイフ等で切断し、コンクリート製スラブ床に載置される部分71と、コンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに切り離す。そして、図14に示すように、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71の縁に前記立ち上がり部73を起こして当接させ、図15に示すように、コンクリート製スラブ床81の周縁の壁面83に、前記立ち上がり部73を当接させ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71をコンクリート製スラブ床81の上に載置する。また、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71よりも内側に配置される浮床用緩衝体60bについては、前記切り込み69で切り離すことなく、浮床用緩衝体60bの全体を裏面が下向きとなるようにして前記コンクリート製スラブ床81の上に載置して敷き詰める。前記浮床用緩衝体の貫通孔64には、浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体75を、浮床用緩衝体の配置前または浮床用緩衝体の配置後に挿入する。その後、前記浮床用緩衝体60aのコンクリート製スラブ床に載置される部分71と前記浮床用緩衝体60bの上にコンクリート87を打設する。なお、前記コンクリート製スラブ床81上には、前記浮床用緩衝体60a、60bの配置前に、予めポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを敷いておく場合もある。
【0049】
前記第4実施形態の浮床用緩衝体60においても、施工現場等への輸送及び保管等の際には、前記切り込み69で切り離される前の平板状の状態で所要数積層することができるため、複数の浮床用緩衝体60を嵩張ることなく輸送したり保管等したりすることができ、輸送コストや保管コストを低減することができる。また、前記切り込み69は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されており、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で強度低下を抑えることができるため、コンクリート87の打設等の際に前記浮床用緩衝体60bにおける切り込み69近辺に荷重が加わっても、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で支えることができ、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。さらに、前記浮床用緩衝体60bの部分においては、前記切り込み69が裏面に形成されて表面まで貫通していないため、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリート87が、浮床用緩衝体60bの切り込み69を通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0050】
このように、本発明の浮床用緩衝体は、立ち上がり部を別途用意する必要がなく、品番管理や在庫管理等が容易になり、管理コストを低減することができ、しかも、一定位置で立ち上がり部を切り離すことができるため、安定した施工品質を得ることができる。さらに、施工現場等への輸送や保管等の際に平板状で積み重ねることができるため、嵩張らず、スペースを取らないことから、輸送コスト及び保管コストを低減することができる。
【0051】
また、板状体の裏面に形成された切り込みが表面まで貫通していないため、浮床の施工時に、切り込み位置で切り離すことなくコンクリート製スラブ床に載置された浮床用緩衝体の部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリートが、浮床用緩衝体の切り込みを通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。さらに、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されているミシン目状の切り込みとすることにより、浮床用緩衝体上に荷重が加わった場合に、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。また、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されているミシン目とすれば、深さの差はあるものの一定量切りこまれた切り込み面にカッターなどの刃をあてて切断することができるので、定規などが不要となり現場での作業に好適である。また、切り込みを、凸形状部と凹形状部が切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状とすることにより、切り込みで切り離されたコンクリート製スラブ床に載置される部分と、コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部とに、互いに係合する係合部を形成することができ、施工時に互いの係合部を係合させてスラブ床及び壁面に配置することにより、立ち上がり部が倒れたり、ずれたりすることを防ぐことができ、施工作業を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
10、60、100、101 浮床用緩衝体
11、61、110、111 板状体
19、69、190、191 切り込み
41、71、410、411 スラブ床に載置される部分
41a〜41e、410a〜410e、411a〜411e スラブ床に載置される部分に形成された係合部
43、73、430、431 立ち上がり部
43a〜43e、430a〜430e、431a〜431e 立ち上がり部に形成された係合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮床用緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製の床を有する建築物においては、床面を伝わる振動や騒音を低減するための構造として浮床構造がある。
浮床構造は、図16の(16−A)に示すようにコンクリート製スラブ床501の上に発泡体からなる緩衝体511を載置し、またスラブ床501の周縁には、該周縁から立ち上がる壁面503に接触するように発泡体からなる立ち上がり部513を配置し、前記緩衝体511上にコンクリート(モルタルの場合もある)505を打設する構造からなる。前記緩衝体511は板状の発泡体からなり、所定位置に表面と裏面間を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、前記貫通孔に緩衝体511よりも剛性の高いゴム等からなる防振弾性体を挿入する場合がある。前記立ち上がり部513は、平板状のものを起こして(立てて)使用する場合、あるいは図16の(16−B)に示す立ち上がり部513Aのように断面形状がL字状のものを使用する場合がある(特許文献1、2、3)。
【0003】
しかしながら従来においては、スラブ床上に載置される緩衝体と、起こして使用される立ち上がり部との2種類を用意しなければならず、品番管理や在庫管理等に手間がかかる問題がある。また、立ち上がり部が平板状の場合には、施工中に立ち上がり部が倒れ易く、倒れた場合には直すのに手間がかかる問題がある。一方、断面L字形の立ち上がり部は、輸送や保管等の際に嵩張る問題もある。
また、施工現場で緩衝体の一部を切り取って平板状の立ち上がり部として使用することも行われているが、その場合には、切断位置が一定し難く、また切断に手間がかかり、しかも施工時に立ち上がり部が倒れ易いため、安定した施工品質が得難く、施工時間が長くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−294063号公報
【特許文献2】特開2001−200629号公報
【特許文献3】特開2003−35002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、緩衝体の一部を立ち上がり部として切り離して使用することができ、しかも一定の切り離し位置で切り離せるようにすることによって安定した施工品質が得られ、さらに、施工現場等への輸送等の際には嵩張らず、また施工時には立ち上がり部を倒れにくくできる浮床用緩衝体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、コンクリート製スラブ床に配置される浮床用緩衝体において、発泡体の板状体からからなり、前記板状体には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込みが、前記板状体の表面まで貫通することなく、該板状体の裏面に形成された構成からなり、前記切り込み位置で切り離さない場合には、前記浮床用緩衝体の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、一方、前記切り込み位置で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分として使用され、前記切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部として使用されることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記切り込みは、前記板状体の一端に対して突出した凸形状部と窪んだ凹形状部が前記切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状からなり、前記切り込みで切り離された場合には、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分と前記コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、前記凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3において、前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を狭くして形成され、前記凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を広くして形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4において、前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部及び前記凹形状部の側部が階段状に形成され、前記凸形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に狭くされると共に前記凹形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に広くされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、立ち上がり部を別に用意しなくても、施工現場で浮床用緩衝体の一部を切り込み位置で切り離すことによって立ち上がり部が得られるため、品番管理や在庫管理等が容易になる。さらに、切り込みの存在により、一定位置で立ち上がり部を切り離すことができるため、安定した施工品質を得ることができる。さらに、本発明の浮床用緩衝体は、施工現場等への輸送や保管等の際に平板状であるため、嵩張らず、スペースを取らないことから、輸送コスト及び保管コストを低減することができる。また、板状体の裏面に形成された切り込みが表面まで貫通していないため、浮床の施工時に、切り込み位置で切り離すことなくコンクリート製スラブ床に載置された浮床用緩衝体の部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリートが、浮床用緩衝体の切り込みを通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、浮床用緩衝体の裏面に形成された切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されているため、浮床用緩衝体が切り込み位置で切り離されることなくコンクリート製スラブ床上に載置された場合には、切り込みが連続する線状の切り込み線で形成されたものと比べ、浅く切り込まれた部分あるいは切り込まれていない非切り込み部分で強度低下を抑えることができ、浮床用緩衝体上に荷重が加わった場合に、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、コンクリート製スラブ床に載置される部分と、コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成するため、施工時に互いの係合部を係合させてスラブ床及び壁面に配置することにより、立ち上がり部が倒れたり、ずれたりすることを防ぐことができ、施工作業を効率的に行うことができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、凹凸形状の切り込みは、凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅が狭くなるように形成されると共に凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅が広くなるように形成されているため、浮床用緩衝体が凹凸形状の切り込みで立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分とに切り離された場合、形成された凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の基部で幅が狭くなり、また凸状係合部の基部で幅が広くなる。しかも、立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分が組み合わされた場合に互いに係合することとなる凹状係合部と係合部は、凹凸形状の切り込みにおける同一の凸形状部あるいは同一の凹形状部で切り離されて形成されるため、凹凸形状の切り込みにおける一つの凸形状部あるいは凹状係合部で形成された凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の基部側(奥側)が凸状係合部の基部側の幅よりも狭くなり、凸状係合部の基部側が凹状係合部の基部側の幅よりも広くなる。
【0015】
切り離された立ち上がり部が起こされて、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側に組み合わされて互いの係合部が係合する場合、立ち上がり部における下向きの凹状係合部と凸状係合部は、凹状係合部の上端の基部側で幅が最も狭くなり、また、凸状係合部の上端の基部側で幅が最も広くなる。そして、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の凹状係合部における上端の最も幅の狭い基部側に、コンクリート製スラブ床に載置される部分の凸状係合部において、前記立ち上がり部の凹状係合部における基部側よりも幅の広い前記凸状係合部の基部側が圧縮されて係合し、また立ち上がり部の凸状係合部における上端の最も幅の広い基部側が、コンクリート製スラブ床に載置される部分の凹状係合部において、前記立ち上がり部の凸状係合部における基部側よりも幅の狭い前記凹状係合部の基部側に圧縮されて係合するため、互いの係合部が強固に密に係合することになる。したがって、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部が強固に密に係合し、立ち上がり部を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部から漏れるのを防ぐことができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項4の場合と同様に、コンクリート製スラブ床に載置される部分の上面側では、立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部が強固に密に係合し、立ち上がり部を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部から漏れるのを防ぐことができる。さらに請求項5の発明によれば、切り込みで切り離された立ち上がり部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部は、側部が階段状となる。そのため、立ち上がり部を起こして立ち上がり部の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分の係合部を係合させた場合、係合部が階段状の部分で当接するため、係合及び密着がより確実かつ安定し、立ち上がり部をより確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが係合部から漏れるのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る浮床用緩衝体の表面図と裏面図である。
【図2】図1の浮床用緩衝体における各位置の断面図である。
【図3】ミシン刃の例を示す斜視図である。
【図4】図1の浮床用緩衝体を切り離した状態の表面図である。
【図5】図1の浮床用緩衝体を切り離して組み合わせる際を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る浮床用緩衝体の裏面図と切り離した状態の図である。
【図8】図7の浮床用緩衝体を切り離した後に組み合わせる際を示す斜視図である。
【図9】第3実施形態に係る浮床用緩衝体の裏面図と切り離した状態の図である。
【図10】図9の浮床用緩衝体を切り離した後に組み合わせる際を示す斜視図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る浮床用緩衝体の表面図と裏面図である。
【図12】図11の浮床用緩衝体における各位置の断面図である。
【図13】図11の浮床用緩衝体を切り離した状態の表面図である。
【図14】図11の浮床用緩衝体を切り離して組み合わせた状態を示す斜視図である。
【図15】第4実施形態の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【図16】従来の浮床用緩衝体を使用した浮床構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態の浮床用緩衝体について説明する。図1及び図2に示す第1実施形態の浮床用緩衝体10は、前記浮床構造に使用されるものであって、コンクリート製スラブ床に載置される部分41と、コンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離して使用可能なものである。
【0019】
前記浮床用緩衝体10は、発泡体の板状体11からなる。前記発泡体としては、ポリスチレン樹脂発泡体、ポリプロピレン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体等の独立気泡構造の発泡体が好ましい。また、前記発泡体はビーズ法によるものは切断する際に細かく分離しやすいため、押出成形や連続スラブ発泡品を裁断等により所定形状にしたものが好ましい。前記板状体11の形状は、特に限定されないが、浮床構造の床が通常四角形とされることから、平面視形状が四角形、特には正方形あるいは長方形のものが好ましい。前記板状体11の一例として、平面視形状が一辺950mmの正方形のものを挙げる。板状体11の厚み、すなわち浮床用緩衝体10の厚みは、15〜60mm程度が好ましい。一例として前記板状体11の厚みが25mmの場合を挙げる。
【0020】
前記板状体11には、前記浮床用緩衝体10よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔14が、前記板状体11の表面11Aと裏面11B間を貫通して所定位置に形成されている。
また、前記板状体11の裏面11Bには、一端15から所定幅の部分を立ち上がり部43として切り離すための切り込み19が形成されている。前記板状体11の一端15は、図示の例では、四角形(正方形)の一辺である。前記立ち上がり部43の幅(前記一端15と前記切り込み19との間隔t1)は、前記浮床構造においてコンクリート製スラブ床に載置された緩衝体上に打設されるコンクリート(モルタルの場合を含む。以下同様。)の厚みと略等しくされる。また、前記立ち上がり部43は、略長方形の板状とされている。
【0021】
前記切り込み19は、前記板状体11の表面11Aまで貫通することなく該板状体11の裏面11Bに形成されている。また、図2の符号23は、前記切り込み19の位置において板状体11の表面11A側に残された切り残し部である。
【0022】
前記切り込み19は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されたミシン目状の切り込み、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない(非切り込み)部分が交互に形成されているミシン目状の切り込みからなる。
【0023】
図3の(3−A)に示すミシン刃31は、切り込まれた部分と切り込まれていない部分を交互に有するミシン目状の切り込みを形成するためのミシン刃の例である。符号32が切り込み部分を形成する刃の部分、符号33が非切り込み部分を形成する部分である。また図3の(3−B)に示すミシン刃31Aは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分を交互に有するミシン目状の切り込みを形成するためのミシン刃の例である。符号32Aが深い切り込み部分を形成する刃の部分、符号33Aが浅い切り込み部分を形成する部分である。前記切り込み部分の長さ(刃32の長さa1)及び深く切り込む部分の長さ(刃32Aの長さb1)と、非切り込み部分の長さ(切り込み部分の間隔a2)及び浅く切り込む部分の長さ(刃33Aの長さb2)は、適宜決定されるが、一例として切り込み部分の長さ(刃32の長さa1)及び深く切り込む部分の長さ(刃32Aの長さb1)と非切り込み部分の長さ(すなわち切り込み部分の間隔a2)及び浅く切り込む部分の長さ(刃33Aの長さb2)がそれぞれ5mmの場合を挙げる。
【0024】
また、前記板状体11の裏面11Bからの切り込み19の深さは、浮床の施工時に前記浮床用緩衝体10の表面に荷重が加わった際、切り込み部分で破断を生じ難い深さが好ましく、前記板状体11の材質等にもよるが、深い切り込みは板状体11の厚みの2/3程度、浅い切り込みは板状体11の厚みの1/3程度の例を挙げる。
【0025】
前記切り込み19は、図1の(1−B)に示すように、前記板状体11の一端15(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端15に向かって)突出した凸形状部20と窪んだ凹形状部21が、前記切り込み19の長さ方向nに隣り合う凹凸形状に形成されている。前記一端15から前記切り込み19の凸形状部20までの距離t1が前記浮床構造においてコンクリート製スラブ床に載置された緩衝体上に打設されるコンクリートの厚みと略等しくされている。t1の例として100mmを挙げる。また、t2とt1の差は、前記板状体11の厚みと略等しくするのが好ましい。
【0026】
前記浮床用緩衝体10は、前記切り込み19の位置をナイフ等の刃物で切断することにより、コンクリート製スラブ床に載置される部分41とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離すことができる。図4に示すように、前記切り込み19で切断された部分19a、19bには、互いに係合する係合部41a、41b、41c、41d、41e、43a、43b、43c、43d、43eが形成される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された係合部41a、41c、41eは、前記切り込み19の凹形状部21で切断された凹状係合部であり、また係合部41b、41dは、前記切り込み19の凸形状部20で切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部43に形成された係合部43a、43c、43eは、前記切り込み19の凹形状部21で切断された凸状係合部であり、また係合部43b、43dは、前記切り込み19の凸形状部20で切断された凹状係合部である。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された凹状係合部41a、41c、41eと、前記立ち上がり部43に形成された凸状係合部43a、43c、43eは、嵌合により係合し、また、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41に形成された凸状係合部41b、41dと前記立ち上がり部43に形成された凹状係合部43b、43dは、嵌合により係合する。
【0027】
前記浮床用緩衝体10は、施工現場等への輸送及び保管等の際には、前記切り込み19で切り離される前の平板状の状態で所要数積層される。そのため、複数の浮床用緩衝体10を嵩張ることなく輸送したり保管等したりすることができ、輸送コストや保管コストを低減することができる。
【0028】
前記浮床用緩衝体10を用いて浮床を施工する場合について説明する。浮床の施工に際して前記浮床用緩衝体10の必要数が施工現場に輸送される。施工現場では、一部を切り離して立ち上がり部を形成する浮床用緩衝体10aについては、図4に示すように、前記切り込み19の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分41とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部43とに切り離す。切り離されたコンクリート製スラブ床に載置される部分41と立ち上がり部43には、切り離しによって前記切り込み19で切断された部分19a、19bに前記係合部41a〜41e、43a〜43eが形成される。
【0029】
次に、図5の(5−A)及び(5−B)に示すように、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41の係合部41a〜41eと、前記立ち上がり部43の係合部43a〜43eを嵌合させて係合することにより、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41の縁に前記立ち上がり部43を起こした状態で組み合わせる。そして、図6に示すように、コンクリート製スラブ床51周縁の壁面53に前記立ち上がり部43を当接するようにして配置し、また前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41をコンクリート製スラブ床51上に載置する。なお、前記コンクリート製スラブ床51上に、予めポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを敷いておく場合もある。
【0030】
一方、切り離すことなく使用する浮床用緩衝体10bについては、前記切り込み19で切り離すことなく、浮床用緩衝体10bの全体を前記裏面11Bが下向きとなるようにして、コンクリート製スラブ床51の上に載置し、前記浮床用緩衝体10aにおけるコンクリート製スラブ床に載置される部分41よりも内側に敷き詰める。なお、前記浮床用緩衝体の貫通孔14には、浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体45を、浮床用緩衝体の配置前または浮床用緩衝体の配置後に挿入する。その後、前記浮床用緩衝体10aのコンクリート製スラブ床に載置される部分41と前記浮床用緩衝体10bの上にコンクリート57を打設する。前記施工時、前記立ち上がり部43は前記コンクリート製スラブ床に載置される部分41と係合しているため、倒れたり位置ずれを生じ難く、施工を効率よく、かつ安定した品質で行うことができる。
【0031】
また、前記切り込み19は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されており、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で強度低下を抑えることができるため、コンクリート57の打設等の際に前記浮床用緩衝体10bにおける切り込み19近辺に荷重が加わっても、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で支えることができ、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。さらに、前記切り込み19が裏面に形成されて表面まで貫通していないため、前記浮床用緩衝体10bの部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリート57が、浮床用緩衝体10bの切り込み19を通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0032】
図7に第2実施形態の浮床用緩衝体100を示す。第2実施形態の浮床用緩衝体100は、発泡体からなる平面視四角形の板状体110の裏面110Bに、第1実施形態とは異なる凹凸形状の切り込み190が形成された例である。切り込み190は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第2実施形態の浮床用緩衝体100は、前記凹凸形状の切り込み190が、前記板状体110の一端150(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端150に向かって)突出した凸形状部200b、200dと窪んだ凹形状部200a、200c、200eが、前記切り込み190の長さ方向uに隣り合う凹凸形状に形成されたもので、前記凸形状部200b、200dが前記板状体110の一端150に向けて幅wb、wdを徐々に狭くして形成され、また前記凹形状部200cの幅wcを前記板状体110の一端150に向けて徐々に広くして形成されている点で、第1実施形態の浮床用緩衝体10と相違し、他の構成は第1実施形態の浮床用緩衝体10と同様である。符号140は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、410は切り離された場合のコンクリート製スラブ床に載置される部分、430は立ち上がり部である。
【0033】
前記浮床用緩衝体100は、浮床の施工時、必要に応じて前記切り込み190の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分410とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部430とに切り離される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410と立ち上がり部430には、前記切り込み190で切断された部分190a、190bに、係合部410a、410b、410c、410d、410e、430a、430b、430c、430d、430eが形成される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410に形成された係合部410a、410c、410eは、前記切り込み190の凹形状部200a、200c、200eで切断された凹状係合部であり、また係合部410b、410dは、前記切り込み190の凸形状部200b、200dで切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部430に形成された係合部430a、430c、430eは、前記切り込み190の凹形状部200a、200c、200eで切断された凸状係合部であり、また係合部430b、430dは、前記切り込み190の凸形状部200b、200dで切断された凹状係合部である。
【0034】
前記浮床用緩衝体100は、前記切り込み190の凸形状部200b、200dが前記板状体110の一端150に向けて幅wb、wdを狭くして形成されているため、前記凸形状部200b、200dの切り込みで形成された立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dは、幅m1b、m1dが、基部側(奥側)430b1、430d1で最も狭くなり、一方、前記凹形状部200cの切り込みで形成された立ち上がり部430の凸状係合部430cは、幅m1cが、基部側430c1で最も広くなる。また、前記凸形状部200b、200dの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dは、幅m2b、m2dが、基部側410b1、410d1で最も広くなり、一方、前記凹形状部200cの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cは、幅m2cが、基部側410c1で最も狭くなる。さらに、前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dにおける基部側430b1、430d1の幅m1b、m1dは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dにおける基部側410b1、410d1の幅m2b、m2dよりも狭くなる。また、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cにおける基部側430c1の幅m1cは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cにおける基部側410c1の幅m2cよりも広くなる。
【0035】
図8の(8−A)及び(8−B)に示すように、切り離された前記立ち上がり部430は、起こされた状態で前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部の位置に上方から組み合わされ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部410a〜410eと、前記立ち上がり部430の係合部430a〜430eを嵌合させて係合が行われる。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410a、410c、410eには、上方から立ち上がり部430の凸状係合部430a、430c、430eが下向きに挿入されて係合し、一方、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dには、上方から立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dが下向きに嵌合して係合する。
【0036】
前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dにおける基部側430b1、430d1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dにおける基部側410b1、410d1よりも幅が狭くなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dの圧縮が大になり、前記立ち上がり部430の凹状係合部430b、430dと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部410b、410dとの係合が強固かつ密になる。また、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cにおける基部側430c1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cの基部側410c1よりも幅が広くなっているため、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cの圧縮が大になり、前記立ち上がり部430の凸状係合部430cと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凹状係合部410cとの係合が強固かつ密になる。その結果、コンクリート製スラブ床に載置される部分410の上面側では、前記立ち上がり部430の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部が強固かつ密に係合し、前記立ち上がり部430を確実に保持することができると共に、その後に打設されるコンクリートが立ち上がり部430の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分410の係合部から漏れるのを防ぐこともできる。
【0037】
図9に第3実施形態の浮床用緩衝体101を示す。第3実施形態の浮床用緩衝体101は、発泡体からなる平面視四角形の板状体111の裏面111Bに、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる凹凸形状の切り込み191が形成された例である。切り込み191は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第3実施形態は、前記凹凸形状の切り込み191が、前記板状体111の一端151(図示の例では一辺)に対して(すなわち一端151に向かって)突出した凸形状部201b、201dと窪んだ凹形状部201a、201c、201eが切り込み191の長さ方向vに隣り合う凹凸形状に形成されたもので、前記凸形状部及び凹形状部のそれぞれの側部202が階段状とされ、前記板状体111の一端151に向けて前記凸形状部201b、201dの幅zb、zdが段階的に狭く形成され、また前記板状体111の一端151に向けて前記凹形状部201cの幅zcが段階的に広くされている点で、第1実施形態の浮床用緩衝体10及び第2実施形態の浮床用緩衝体100と相違し、他の構成は第1実施形態の浮床用緩衝体10及び第2実施形態の浮床用緩衝体100と同様である。符号141は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、411は切り離された場合にコンクリート製スラブ床に載置される部分、431は立ち上がり部である。
【0038】
前記浮床用緩衝体101は、浮床の施工時、必要に応じて前記切り込み191の位置をナイフ等で切断して、コンクリート製スラブ床に載置される部分411とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部431とに切り離される。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と立ち上がり部431には、前記切り込み191で切断された部分191a、191bに係合部411a、411b、411c、411d、411e、431a、431b、431c、431eが、該各係合部の側部を階段状Sとして形成される。
【0039】
前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411に形成された係合部411a、411c、411eは、前記切り込み191の凹形状部201a、201c、201eで切断された凹状係合部であり、また係合部411b、411dは、前記切り込み191の凸形状部201b、201dで切断された凸状係合部である。一方、前記立ち上がり部431に形成された係合部431a、431c、431eは、前記切り込み191の凹形状部201a、201c、201eで切断された凸状係合部であり、また係合部431b、431dは、前記切り込み191の凸形状部201b、201dで切断された凹状係合部である。
【0040】
前記浮床用緩衝体101は、前記切り込み191の凸形状部201b、201dが前記板状体110の一端151に向けて幅zb、zdを段階的に狭くして形成されているため、前記凸形状部201b、201dの切り込みで形成された立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dは、幅x1b、x1dが、基部側(奥側)431b1、431d1で最も狭くなり、一方、前記凹形状部201cの切り込みで形成された立ち上がり部431の凸状係合部431cは、幅x1cが、基部側431c1で最も広くなる。
【0041】
また、前記凸形状部201b、201dの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dは、幅x2b、x2dが、基部側411b1、411d1で最も広くなり、一方、前記凹形状部201cの切り込みで形成されたコンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cは、幅x2cが、基部側(奥側)411c1で最も狭くなる。
【0042】
さらに、前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dにおける基部側431b1、431d1の幅x1b、x1dは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dにおける基部側411b1、411d1の幅x2b、x2dよりも狭くなる。また、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cにおける基部側431c1の幅x1cは、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cにおける基部側411c1の幅x2cよりも広くなる。
【0043】
図10の(10−A)及び(10−B)に示すように、切り離された前記立ち上がり部431は、起こされた状態で前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部の位置に上方から組み合わされ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部411a〜411eと、前記立ち上がり部431の係合部431a〜431eを嵌合させて係合が行われる。前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411a、411c、411eには、上方から立ち上がり部431の凸状係合部431a、431c、431eが下向きに挿入されて係合し、一方、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dには、上方から立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dが下向きに嵌合して係合する。
【0044】
前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dにおける基部側431b1、431d1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dにおける基部側411b1、411d1よりも幅が狭くなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凸状係合部411b、411dの圧縮が大になり、前記立ち上がり部431の凹状係合部431b、431dと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分410の凸状係合部411b、411dとの係合が強固かつ密になる。また、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cにおける基部側431c1は、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cの基部側411c1よりも幅が広くなっているため、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cの圧縮が大になり、前記立ち上がり部431の凸状係合部431cと前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の凹状係合部411cとの係合が強固かつ密になる。
【0045】
さらに、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と前記立ち上がり部431に形成された係合部411a、411b、411c、411d、411e、431a、431b、431c、431eの各側部が階段状Sとなっているため、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411と前記立ち上がり部431は、係合部同士の係合が安定して、より確実に行われる。
【0046】
その結果、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の上面側では、前記立ち上がり部431の係合部と前記コンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部が密に係合し、前記立ち上がり部431を、より確実に保持することができるようになると共に、その後に打設されるコンクリートが、立ち上がり部431の係合部とコンクリート製スラブ床に載置される部分411の係合部から漏れるのを、より確実に防ぐことができるようになる。
【0047】
図11及び図12に第4実施形態の浮床用緩衝体60を示す。第4実施形態の浮床用緩衝体60は、発泡体からなる平面視四角形の板状体61の裏面61Bに切り込み69が形成され、図13に示すように、前記切り込み69の位置でコンクリート製スラブ床に載置される部分71とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに切り離して使用可能なものである。前記切り込み69は、実施形態1で述べた通りのミシン目状からなる。第4実施形態は、前記切り込み69が、板状体61の一端65に対して凹凸の無い直線状に形成され、切り離しによって形成されるコンクリート製スラブ床に載置される部分71とコンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに、前記シン目状の切り込み69で切断された部分69a、69bに係合部を有しない点で、前記第1実施形態の浮床用緩衝体10と相違し、他の構成は同様である。前記立ち上がり部73は略長方形の板状とされている。なお、符号64は浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体を挿入するための貫通孔、符号70は、前記切り込み69の位置において板状体61の表面61A側に残された切り残し部である。
【0048】
浮床の施工に際して前記浮床用緩衝体60の必要数が施工現場に輸送される。施工現場に輸送された浮床用緩衝体60は、図13に示すように、一部を切り離して立ち上がり部を形成する浮床用緩衝体60aについては、施工現場で前記切り込み69の位置をナイフ等で切断し、コンクリート製スラブ床に載置される部分71と、コンクリート製スラブ床周縁の壁面に対する立ち上がり部73とに切り離す。そして、図14に示すように、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71の縁に前記立ち上がり部73を起こして当接させ、図15に示すように、コンクリート製スラブ床81の周縁の壁面83に、前記立ち上がり部73を当接させ、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71をコンクリート製スラブ床81の上に載置する。また、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分71よりも内側に配置される浮床用緩衝体60bについては、前記切り込み69で切り離すことなく、浮床用緩衝体60bの全体を裏面が下向きとなるようにして前記コンクリート製スラブ床81の上に載置して敷き詰める。前記浮床用緩衝体の貫通孔64には、浮床用緩衝体よりも剛性の高い高密度ポリウレタンフォームやゴム等からなる防振弾性体75を、浮床用緩衝体の配置前または浮床用緩衝体の配置後に挿入する。その後、前記浮床用緩衝体60aのコンクリート製スラブ床に載置される部分71と前記浮床用緩衝体60bの上にコンクリート87を打設する。なお、前記コンクリート製スラブ床81上には、前記浮床用緩衝体60a、60bの配置前に、予めポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムを敷いておく場合もある。
【0049】
前記第4実施形態の浮床用緩衝体60においても、施工現場等への輸送及び保管等の際には、前記切り込み69で切り離される前の平板状の状態で所要数積層することができるため、複数の浮床用緩衝体60を嵩張ることなく輸送したり保管等したりすることができ、輸送コストや保管コストを低減することができる。また、前記切り込み69は、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されており、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で強度低下を抑えることができるため、コンクリート87の打設等の際に前記浮床用緩衝体60bにおける切り込み69近辺に荷重が加わっても、浅く切り込まれた部分あるいは非切り込み部分で支えることができ、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。さらに、前記浮床用緩衝体60bの部分においては、前記切り込み69が裏面に形成されて表面まで貫通していないため、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリート87が、浮床用緩衝体60bの切り込み69を通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。
【0050】
このように、本発明の浮床用緩衝体は、立ち上がり部を別途用意する必要がなく、品番管理や在庫管理等が容易になり、管理コストを低減することができ、しかも、一定位置で立ち上がり部を切り離すことができるため、安定した施工品質を得ることができる。さらに、施工現場等への輸送や保管等の際に平板状で積み重ねることができるため、嵩張らず、スペースを取らないことから、輸送コスト及び保管コストを低減することができる。
【0051】
また、板状体の裏面に形成された切り込みが表面まで貫通していないため、浮床の施工時に、切り込み位置で切り離すことなくコンクリート製スラブ床に載置された浮床用緩衝体の部分においては、浮床用緩衝体上に打設されたコンクリートが、浮床用緩衝体の切り込みを通って下方へ漏れるおそれがなく、良好に施工することができる。さらに、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されているミシン目状の切り込みとすることにより、浮床用緩衝体上に荷重が加わった場合に、切り込み位置で局部的に大きく屈曲したり、破断したりすることを防ぐことができる。また、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されているミシン目とすれば、深さの差はあるものの一定量切りこまれた切り込み面にカッターなどの刃をあてて切断することができるので、定規などが不要となり現場での作業に好適である。また、切り込みを、凸形状部と凹形状部が切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状とすることにより、切り込みで切り離されたコンクリート製スラブ床に載置される部分と、コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部とに、互いに係合する係合部を形成することができ、施工時に互いの係合部を係合させてスラブ床及び壁面に配置することにより、立ち上がり部が倒れたり、ずれたりすることを防ぐことができ、施工作業を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
10、60、100、101 浮床用緩衝体
11、61、110、111 板状体
19、69、190、191 切り込み
41、71、410、411 スラブ床に載置される部分
41a〜41e、410a〜410e、411a〜411e スラブ床に載置される部分に形成された係合部
43、73、430、431 立ち上がり部
43a〜43e、430a〜430e、431a〜431e 立ち上がり部に形成された係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製スラブ床に配置される浮床用緩衝体において、
発泡体の板状体からからなり、
前記板状体には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込みが、前記板状体の表面まで貫通することなく、該板状体の裏面に形成された構成からなり、
前記切り込み位置で切り離さない場合には、前記浮床用緩衝体の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、
一方、前記切り込み位置で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分として使用され、前記切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部として使用されることを特徴とする浮床用緩衝体。
【請求項2】
前記切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浮床用緩衝体。
【請求項3】
前記切り込みは、前記板状体の一端に対して突出した凸形状部と窪んだ凹形状部が前記切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状からなり、前記切り込みで切り離された場合には、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分と前記コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、前記凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮床用緩衝体。
【請求項4】
前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を狭くして形成され、前記凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を広くして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の浮床用緩衝体。
【請求項5】
前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部及び前記凹形状部の側部が階段状に形成され、前記凸形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に狭くされると共に前記凹形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に広くされていることを特徴とする請求項4に記載の浮床用緩衝体。
【請求項1】
コンクリート製スラブ床に配置される浮床用緩衝体において、
発泡体の板状体からからなり、
前記板状体には一端から所定幅の部分を切り離すための切り込みが、前記板状体の表面まで貫通することなく、該板状体の裏面に形成された構成からなり、
前記切り込み位置で切り離さない場合には、前記浮床用緩衝体の全体がコンクリート製スラブ床に載置され、
一方、前記切り込み位置で切り離された場合には、切り離された一方の部分がコンクリート製スラブ床に載置される部分として使用され、前記切り離された他方の部分がコンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部として使用されることを特徴とする浮床用緩衝体。
【請求項2】
前記切り込みは、深く切り込まれた部分と浅く切り込まれた部分が交互に形成されている、あるいは切り込まれた部分と切り込まれていない部分が交互に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浮床用緩衝体。
【請求項3】
前記切り込みは、前記板状体の一端に対して突出した凸形状部と窪んだ凹形状部が前記切り込みの長さ方向に隣り合う凹凸形状からなり、前記切り込みで切り離された場合には、前記コンクリート製スラブ床に載置される部分と前記コンクリート製スラブ床の周縁の壁面に対する立ち上がり部は、前記凹凸形状の切り込みで切断された部分が互いに係合する係合部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮床用緩衝体。
【請求項4】
前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を狭くして形成され、前記凹形状部が前記板状体の一端へ向けて幅を広くして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の浮床用緩衝体。
【請求項5】
前記凹凸形状の切り込みは、前記凸形状部及び前記凹形状部の側部が階段状に形成され、前記凸形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に狭くされると共に前記凹形状部の幅が前記板状体の一端へ向けて段階的に広くされていることを特徴とする請求項4に記載の浮床用緩衝体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−225110(P2012−225110A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95729(P2011−95729)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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