説明

浮遊物付着抑制用ガス供給装置

【課題】 対象面に浮遊物が付着することを抑制するためのガスを噴射するノズルの、当該対象面に垂直な方向の設置スペースを従来よりも小さくする。
【解決手段】 スリットノズル41bによって、センサ面31aの下方の空間の周方向全体(全周)から、センサ面31aの下方の空間に対してガスを噴射するに際し、ガス噴射軸の角度θと、ガス噴射の広がり角度γとの関係が、0<θ≦γ/2、好ましくはθ=γ/2の関係を満足するように、スリットノズル41bの形状を決定する。したがって、従来のように、センサ面31aに垂直な方向に、2種類のノズルを形成する必要がなくなる。よって、センサ面31aに垂直な方向におけるノズルの設置スペースを従来よりも小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊物付着抑制用ガス供給装置に関し、特に、対象面に浮遊物が付着することを、ガスを噴射することにより抑制するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の対象面に浮遊物が付着することを、その対象面の表面上の空間に対してガスを噴射することにより抑制することが行われている。
特許文献1には、圧延工程において帯状の鋼板の一面側から照射され、当該鋼板を透過した放射線(γ線)の量を、当該鋼板の他面側で検出することにより、当該鋼板の板厚を計測する板厚計において、当該板厚計の入射面(窓)に浮遊物が付着することを抑制する技術が開示されている。具体的には、板厚計の窓の表面上の空間が中空部となるように、当該板厚計の窓側に中空円筒状の筒を設ける。この筒の窓側の領域と鋼板側の領域には、それぞれ、窓の表面上の空間の側方から当該空間に対して水平方向に空気を噴射するための空気吐出口が形成されている。筒の鋼板側の領域に形成されている空気吐出口から、窓の表面上の空間に噴射される空気は、浮遊物が窓の方に進入するのを抑制する役割を果たす。一方、筒の窓側の領域に形成されている空気吐出口から、窓の表面上の空間に噴射される空気は、当該空間を大気圧よりも高い圧力に保つ役割を果たす。このように、特許文献1に記載の技術では、高さ方向に並べられている2つの空気吐出口を用いて、板厚計の窓に浮遊物が付着することを抑制するようにしている。
【0003】
また、特許文献2には、炉内の情報を得るために、炉壁開口部を通して外部から炉内の様子を見えるようにするためのシールガラスの炉内側の面に浮遊物が付着することを抑制する技術が開示されている。具体的には、炉壁開口部の形状に応じた中空部を有する構造物を炉壁開口部の炉外側に設ける。構造物の当該炉壁開口部と対向する面にはシールガラスが設けられている。構造物の内壁のシールガラス側の領域には、シールガラスの面方向と平行な方向に延びるスリットが、当該構造物の内壁の周方向全周に亘って形成されている。また、構造物の内壁の炉壁開口部側の領域には、シールガラスの面方向に対して炉壁開口部側に傾斜したスリットが、当該構造物の内壁の周方向全周に亘って形成されている。構造物の内壁の炉壁開口部側の領域に形成されているスリットから、シールガラスの炉内側の面の表面上の空間に噴出される空気は、浮遊物がシールガラスの方に進入するのを抑制する役割を果たす。一方、構造物の内壁のシールガラス側の領域に形成されているスリットから、シールガラスの炉内側の面の表面上の空間に噴出される空気は、当該空間を炉内の圧よりも高い圧力に保つ役割を果たす。このように、特許文献2に記載の技術では、構造物の軸方向に並べられている2つのスリットを用いて、シールガラスに浮遊物が付着することを抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2815938号公報
【特許文献2】実公平7−9039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術では、対象面(板厚計の入射面、シールガラスの炉内側の面)の表面上の空間を周方向から取り囲む領域において、当該対象面と垂直な方向に2種類のノズル(空気吐出口、スリット)を並べなければならない。したがって、対象面に浮遊物が付着することを抑制するための設備が大掛かりなものになるという問題点があった。更に、対象面と垂直な方向に2種類のノズルを並べるので、対象面と垂直な方向に大きなスペースを確保しなければならないという問題点もあった。例えば、板厚計と鋼板との間の距離を十分に確保することができない場合や、炉壁開口部の炉外側に設ける構造物の軸方向の長さを十分に確保することができない場合には、ノズルを設けるスペースを確保することができず、前述した技術を適用することができない虞があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、対象面に浮遊物が付着することを抑制するためのガスを噴射するノズルの、当該対象面に垂直な方向の設置スペースを従来よりも小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浮遊物付着抑制用ガス供給装置は、対象面の表面上の空間に対してガスを噴射することにより、当該対象面に浮遊物が付着することを抑制させる浮遊物付着抑制用ガス供給装置であって、前記対象面の表面上の空間を、当該空間の周方向全体から取り囲むように配置された中空形状の構造物を有し、前記構造物には、前記対象面に浮遊物が付着することを抑制するためのガスを噴射するノズルとして、当該構造物の内周面において全周に亘り形成された単一のスリットノズルのみが形成されており、前記スリットノズルは、前記構造物の内周面に近い箇所ほど、前記対象面からの距離が遠くなるように傾斜しており、前記スリットノズルにおけるガスの噴射軸の方向と前記対象面の面方向とのなす角度θ°と、前記スリットノズルから噴射されるガスの広がり角度γ°との関係が、以下の(A)式の関係を満足することを特徴とする。
0°<θ≦γ/2 ・・・(A)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象面の表面上の空間に対して、当該空間の周方向全体の領域からガスを噴射する単一のスリットノズルを、内周側に近い箇所ほど当該対象面からの距離が遠くなるように傾斜させる。そして、当該スロットノズルにおけるガスの噴射軸の方向と当該対象面の面方向とのなす角度θ°と、当該スリットノズルから噴射されるガスの広がり角度γ°との関係が、0°<θ≦γ/2になるようにした。したがって、従来のように、対象面に垂直な方向に2種類のノズルを形成しなくても、対象面に浮遊物が付着することを可及的に抑制することが可能になる。よって、対象面に垂直な方向におけるノズルの設置スペースを従来よりも小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を示し、浮遊物付着抑制用ガス供給装置(ガスパージ装置)が適用される板厚計が配設された圧延ラインの一部の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、板厚計付近の様子の概略の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、ガスパージ装置の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、ガス噴射軸の角度θと、ガス噴射の広がり角度γとが種々の関係となる場合のガスの状態の一例を概念的に示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、本実施形態のようにして対策(本対策)を行った場合と、比較例の場合におけるセンサ面への浮遊物の付着量を比較した結果の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、ガスパージ装置の比較例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、浮遊物付着抑制用ガス供給装置(以下の説明では、必要に応じてガスパージ装置と称する)が適用される板厚計が配設された圧延ラインの一部の概略構成の一例を示す図である。
図1において、最終圧延スタンド1を通った帯状の鋼板2は、テンションリール3でコイル状に巻き取られる。最終圧延スタンド1からテンションリール3までの間において、板厚計10により鋼板2の板厚が計測される。
図2は、板厚計10付近の様子の概略の一例を示す図である。具体的に図2(a)は、板厚計10をその側方から見た図であり、図2(b)は、図2(a)のA方向から見た図である。
図2において、板厚計10は、放射線発生装置20と、放射線検出装置30とを有している。本実施形態では、この板厚計10に、ガスパージ装置40、ガス供給源50、及びガス供給管51が取り付けられている場合を例に挙げて説明する。
【0010】
放射線発生装置20は、放射線源21と、放射線源遮蔽ボックス22とを有し、放射線源21で発生し、放射線源遮蔽ボックス22を通った放射線(γ線)を、鋼板2の一面側(図2に示す例では裏面側)から放射線検出装置30の方向に照射するものである。後述するように本実施形態では、放射線検出装置30における放射線の入射面に浮遊物が付着することを抑制するために、ガスパージ装置40を設けるようにすることが特徴の一つであるが、本実施形態では、放射線発生装置20にも、放射線源21における放射線の出射面21a(以下の説明では、必要に応じて放射線出射面21aと称する)に浮遊物が付着するのを抑制するためのエアーワイプノズル23を設けるようにしている。すなわち、エアーワイプノズル23は、放射線出射面21aの表面上の空間(図2に示す例では放射線出射面21aの上方の空間)に対して、当該空間の周方向の領域(図2に示す例では側方の領域)からガスを噴射することにより、放射線出射面21aに浮遊物が付着することを抑制するようにしている。尚、このガスは、ガス供給源50からガス供給管51を通って供給されるものである。また、このガスは、浮遊物を飛ばすことができるフリーなガスであれば、空気や窒素ガス等、どのようなガスであってもよい。
【0011】
放射線検出装置30は、放射線検出器31と、遮熱ボックス32とを有し、放射線発生装置20から照射された放射線を、鋼板2の他面側(図2に示す例では表面側)で入射し、入射した放射線の量を検出することにより、鋼板2の板厚を計測するものである。放射線検出器31は、遮熱ボックス32内に入っており、放射線検出装置30を側方から見た場合には、放射線検出器31は見えないので、図2(a)では放射線検出器31を破線で示している。
【0012】
前述したように、放射線発生装置20から照射された放射線を、放射線検出器31における放射線の入射面(以下の説明では、必要に応じてセンサ面と称する)31aで入射できるように、放射線検出器31におけるセンサ面31aが、放射線源21における放射線出射面21aと鋼板2を介して相互に対向するように、放射線発生装置20と、放射線検出装置30とが配置されている。
本実施形態では、ガスパージ装置40によって、放射線検出器31におけるセンサ面31aの表面上の空間(図2に示す例ではセンサ面31aの下方の空間)に対して、当該空間の周方向全体の領域(図2に示す例では側方全体の領域)からガスを噴射することにより、放射線検出器31におけるセンサ面31aに浮遊物が付着することを抑制するようにしている。尚、このガスも、ガス供給源50からガス供給管51を通って供給されるものである。
【0013】
図3は、ガスパージ装置40の構成の一例を示す図である。具体的に図3(a)は、ガスパージ装置40の外観構成の概略の一例を示す図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A´方向から見た断面図であり、図3(c)は、図3(a)のB−B´方向から見た断面図である。
図3に示すように、ガスパージ装置40は、概ね中空円筒形状(リング状)の構造物41を有している。構造物41の中空部分の直径は、図2(b)に示すように、放射線検出器31におけるセンサ面31aの直径よりも大きく、構造物41の中空部分が、放射線検出器31におけるセンサ面31aの表面上の空間(図2に示す例ではセンサ面31aの下方の空間)に位置するようにしている。このようにガスパージ装置40の構造物41は、中空形状を有し、放射線検出器31におけるセンサ面31aの表面上の空間(図2に示す例ではセンサ面31aの下方の空間)を、当該空間の周方向全体から取り囲むようにして配置されている。
【0014】
ガスパージ装置40の構造物41の内部には、ガスパージノズルが形成されている。ガスパージノズルは、ガス受入領域41aと、スリットノズル41bとを有する。ガス受入領域41aは、構造物41の内部において、構造物41の周方向全体に亘り形成された中空の領域であり、その一部がガス供給管51の中空の領域と繋がっている。スリットノズル41bは、構造物41の周方向全体に亘って、ガス受入領域41aと、構造物41の内周面とを繋ぐ単一のスリットである。また、スリットノズル41bは、構造物41の内周面に近い箇所ほど、センサ面31aからの距離が遠くなるように傾斜している。このようにスリットノズル41bは、ガスパージ装置40の構造物41の内周面において、当該内周面の全周に亘り形成された単一のノズルである。
【0015】
以上のように本実施形態では、単一(1種類)のスリットノズル41bを用いてガスを噴射するようにしている。また、本実施形態では、ガス供給管51からのガスを、ガス受入領域41aで受け入れた後に、スリットノズル41bからセンサ面31aの下方の空間に噴射するようにしている。このようにすることによって、スリットノズル41bは、可及的に均一な圧力のガスを、構造物41の周方向全体(全周)から、センサ面31aの下方の空間を取り囲むようにして噴射することができる。尚、本実施形態では、例えば、2[kg・f/cm2]〜3[kg・f/cm2]程度の圧力でガスを噴射するようにしている。
【0016】
また、本実施形態では、スリットノズル41bのガス噴射軸(スリットノズル41bの中心軸であり、通常は、後述する広がり角度γの1/2に位置する)の方向とセンサ面31aの面方向とのなす角度(以下の説明では、必要に応じてガス噴射軸の角度と称する)をθ[°]とし、スリットノズル41bから噴射されるガスの広がり角度(以下の説明では、必要に応じてガス噴射の広がり角度と称する)をγ[°]とすると、以下の(1)式、好ましくは以下の(2)式が満足するように、スリットノズル41bの形状(スリット厚や傾斜角度)を決定するようにしている。
0<θ≦γ/2 ・・・(1)
θ=γ/2 ・・・(2)
以下にこのようにする理由を説明する。
【0017】
図4は、ガス噴射軸の角度θと、ガス噴射の広がり角度γとが種々の関係となる場合のガスの状態の一例を概念的に示す図である。具体的に図4(a)は、ガス噴射軸の角度θが0[°]である場合のガスの状態の一例を概念的に示す図であり、図4(b)は、ガス噴射軸の角度θが0[°]<θ<γ/2である場合のガスの状態の一例を概念的に示す図であり、図4(c)は、ガス噴射軸の角度θがθ=γ/2である場合のガスの状態の一例を概念的に示す図であり、図4(d)は、ガス噴射軸の角度θがθ>γ/2である場合のガスの状態の一例を概念的に示す図である。
図4(a)に示すように、ガス噴射軸の角度θが0[°]である場合、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突すると、センサ面31a側(図4に示す例では上側)への流れと、センサ面31aとは反対側(図4に示す例では下側)への流れとが概ね均等になる。したがって、センサ面31aの表面上の空間(図4に示す例ではセンサ面31aの下方の空間)の流れが乱れ、この乱れた流れの空間に、粉塵やヒュームといった浮遊物が巻き込まれてセンサ面31aに浮遊物が付着する虞がある。
【0018】
これに対し、図4(b)に示すように、ガス噴射軸の角度θが0[°]<θ<γ/2である場合、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突すると、センサ面31aとは反対側(図4に示す例では下側)への流れが、センサ面31a側(図4に示す例では上側)への流れよりも多くなり、所謂エアーカーテンの効果を発揮する。すなわち、粉塵やヒュームといった浮遊物をセンサ面31aとは反対側への流れに随伴させることができ、浮遊物がセンサ面31aの方向に進入するのを抑制することができる。また、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突することにより生じるセンサ面31a側(図4に示す例では上側)への流れにより、センサ面31a近傍の圧力を大気圧に対して正圧(大気圧よりも高い圧力)に保つことができる。このことによって、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突することによって生じた流れに粉塵やヒュームといった浮遊物が巻き込まれてセンサ面31aに付着することを抑制することができる。
【0019】
更に、図4(c)に示すように、ガス噴射軸の角度θがθ=γ/2である場合、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突すると、殆どがセンサ面31aとは反対側(図4に示す例では下側)への流れとなり、この流れにより、所謂エアーカーテンの効果をより効果的に発揮させることができる。すなわち、粉塵やヒュームといった浮遊物をセンサ面31aとは反対側への流れに随伴させることをより確実に行うことができ、浮遊物がセンサ面31aの方向に進入するのをより確実に抑制することができる。また、ガス61のセンサ面31a側の部分がセンサ面31と平行に衝突することで、センサ面31a近傍の圧力を大気圧に対して正圧に保つことをより安定して行うことができ、このことによって、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突することによって生じた流れに粉塵やヒュームといった浮遊物が巻き込まれてセンサ面31aに付着することをより確実に抑制することができる。
【0020】
一方、図4(d)に示すように、ガス噴射軸の角度θがθ>γ/2である場合、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突すると、ほとんど全ての流れが、センサ面31aとは反対側(図4に示す例では下側)へ向く。このため、センサ面31a近傍の圧力が大気圧に対して負圧(大気圧よりも低い圧力)になる。これにより、スリットノズルから噴射されたガス61が衝突することによって生じる流れの少しの乱れによって、この乱れた流れの領域に、粉塵やヒュームといった浮遊物が巻き込まれてセンサ面31aに付着する虞がある。
本実施形態では、以上のような理由から、以下の(1)式、好ましくは以下の(2)式が満足するように、スリットノズル41bの形状(スリット厚や傾斜角度)を決定するようにしている。尚、ガス噴射の広がり角度γは、例えば、以下の(3)式の範囲の何れかの値を採用することができる。
0[°]<γ<90[°] ・・・(3)
【0021】
図5は、本実施形態のようにして対策(本対策)を行った場合と、比較例の場合におけるセンサ面31aへの浮遊物の付着量を比較した結果の一例を示す図である。図5では、比較例におけるセンサ面31aへの浮遊物の付着量を「1」とした場合の、本対策におけるセンサ面31aへの浮遊物の付着量を示している。また、本対策では、以下の(2)式が満足するように、スリットノズル41bの形状を決定するようにしている。具体的には、ガス噴射の広がり角度γを20[°]としたため、ガス噴射軸の角度θは10[°]となる。また、本対策と比較例における、ガスパージ装置以外の構成及び動作条件は同じである。
図6は、ガスパージ装置の比較例の構成を示す図である。具体的に図6(a)は、ガスパージ装置が取り付けられた板厚計を、その側方から見た図であり、図6(b)は、図6(a)のA方向から見た図である。図6は、図2に対応する図である。
図6に示すように、比較例では、1つのエアーワイプノズル71aにより、センサ面31aの下方の空間に対して、当該空間の側方から、センサ面31aと平行な方向に、ガスを噴射する。また、比較例では、3つのエアーワイプノズル71b〜61dにより、センサ面31aの下方の空間に対して、当該空間の側方から、エアーワイプノズル71aにより噴射されるガスと直交し、且つ、センサ面31aと平行な方向に、ガスを噴射する。
図5に示す結果から、本対策を行った場合のセンサ面31aへの浮遊物の付着量は、比較例の対策を行った場合のセンサ面31aへの浮遊物の付着量の12[%]となり、センサ面31aへの浮遊物の付着量を十分に低減することができることが確認された。
【0022】
以上のように本実施形態では、スリットノズル41bによって、センサ面31aの下方の空間の周方向全体(全周)から、センサ面31aの下方の空間に対してガスを噴射するに際し、ガス噴射軸の角度θと、ガス噴射の広がり角度γとの関係が、0<θ≦γ/2、好ましくはθ=γ/2の関係を満足するように、スリットノズル41bの形状を決定する。したがって、従来のように、センサ面31aに垂直な方向に、2種類のノズルを形成する必要がなくなる。よって、センサ面31aに垂直な方向におけるノズルの設置スペースを従来よりも小さくすることができる。これにより、例えば、板厚計10との干渉により、ガスパージ装置40を板厚計10に取り付けられなくなることを抑制することができる。
【0023】
(変形例)
本実施形態では、ガスパージ装置40を板厚計10のセンサ面31aに適用した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、浮遊物が付着することを、ガスを噴射することにより抑制するものであれば、ガスパージ装置40を適用する対象は、このようなものに限定されない。例えば、炉内を観察するためののぞき窓の炉内側の面にガスパージ装置40を適用してもよい。このようにする場合、のぞき窓の炉内側の面近傍の圧力(対象面の近傍の圧力)が、炉内の圧(雰囲気の圧力)よりも高くなるように、スリットノズル41bからガスを噴射する点以外は、本実施形態で説明したのと同じようにしてガスパージ装置40を適用することができる。
【0024】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 最終圧延スタンド
2 鋼板
3 テンションリール
10 板厚計
20 放射線発生装置
30 放射線検出装置
31 放射線検出器
31a センサ面
40 浮遊物付着抑制用ガス供給装置(ガスパージ装置)
41 構造物
41a ガス受入領域
41b スリットノズル
50 ガス供給源
51 ガス供給管
61 ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面の表面上の空間に対してガスを噴射することにより、当該対象面に浮遊物が付着することを抑制させる浮遊物付着抑制用ガス供給装置であって、
前記対象面の表面上の空間を、当該空間の周方向全体から取り囲むように配置された中空形状の構造物を有し、
前記構造物には、前記対象面に浮遊物が付着することを抑制するためのガスを噴射するノズルとして、当該構造物の内周面において全周に亘り形成された単一のスリットノズルのみが形成されており、
前記スリットノズルは、前記構造物の内周面に近い箇所ほど、前記対象面からの距離が遠くなるように傾斜しており、
前記スリットノズルにおけるガスの噴射軸の方向と前記対象面の面方向とのなす角度θ°と、前記スリットノズルから噴射されるガスの広がり角度γ°との関係が、以下の(A)式の関係を満足することを特徴とする浮遊物付着抑制用ガス供給装置。
0°<θ≦γ/2 ・・・(A)
【請求項2】
前記対象面は、帯状の鋼板の一面側から照射され、当該鋼板を透過した放射線を、当該鋼板の他面側で検出する放射線検出装置における前記放射線の入射面、又は、炉内を観察するための窓における前記炉内側の面であることを特徴とする請求項1に記載の浮遊物付着抑制用ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2434(P2011−2434A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148055(P2009−148055)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】