浮遊砂採取器
【課題】河川を流れる流水の異なる水深位置における流水を同時に採取できる浮遊砂採取器を提供することを課題とする。
【解決手段】河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体2と、前記複数の筒状体2を支持する支持枠体3と、一端が前記支持枠体3に固定され他端が前記筒状体2を水中に出し入れする昇降装置4に接続される支柱5とを有する浮遊砂採取器1であって、前記筒状体2が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部にアクチュエータ6により操作可能な蓋板7を備える。また、前記筒状体2の開口部のうち、前記蓋板7を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することにより上記の課題を解決する。
【解決手段】河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体2と、前記複数の筒状体2を支持する支持枠体3と、一端が前記支持枠体3に固定され他端が前記筒状体2を水中に出し入れする昇降装置4に接続される支柱5とを有する浮遊砂採取器1であって、前記筒状体2が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部にアクチュエータ6により操作可能な蓋板7を備える。また、前記筒状体2の開口部のうち、前記蓋板7を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することにより上記の課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する浮遊砂採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の洪水による災害を防止するため、全国各地の河川には数多くの砂防ダムが建設され、災害防止に大きな役割を果たしている。しかし、河川出水時の土砂移動の実態や流砂系全体における土砂移動の実態は充分に把握されていないのが実情である。
【0003】
河川出水時に移動する土砂は、主として川底に沿って移動する掃流砂と、流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂とに分類される。また、掃流砂と浮遊砂とは異なる移動形態をとることが経験的に知られている。したがって、河川の土砂移動の実態を把握するためには、掃流砂と浮遊砂について各別に採取して調査する必要がある。ここで、掃流砂の採取方法については、すでに本願の発明者らによって掃流砂採取器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−3442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来技術においては、掃流砂の採取器は開示されているが、流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂の採取器については何ら開示されていない。もっとも、浮遊砂の採取について水面近傍の浮遊砂だけを採取するのであれば、比較的簡易な採取器で採取することもできる。しかしながら、流水に含まれる浮遊砂の含有量は水深に依存する傾向があり、浮遊砂の正確な把握には異なる水深位置における浮遊砂の含有量を調べることが不可欠となる。そこで、本発明は水深の異なる複数位置での流水を同時に採取できる浮遊砂採取器を提供することを第1の目的とする。また、本発明の第2の目的は、浮遊砂の採取作業が容易で、安全性の高い浮遊砂採取器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、一端が前記支持枠体に固定され他端が前記筒状体を水中に出し入れする昇降装置に接続される支柱とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部に操作手段により操作可能な蓋板を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浮遊砂採取器において、前記筒状体の前記蓋板を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の浮遊砂採取器において、前記曲管と前記支持枠体とを着脱手段により取付けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、前記支持枠体を水中に出し入れする昇降装置とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が直管からなり、該直管の両端開口部に操作手段により操作可能な蓋体を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器において、前記操作手段が遠隔操作により操作されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器において、川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器を併設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の浮遊砂採取器によれば、水深方向に沿って複数の筒状体を設けたので、水深が異なる部位の流水に含まれる浮遊砂を同時に採取できる。したがって、浮遊砂含有量の水深依存性を把握することができる。また、浮遊砂を採取する筒状体が曲管からできているので、曲管の両端開口部に蓋をせずに一端開口部に蓋をするだけで流水に含まれる浮遊砂を採取することができる。したがって、浮遊砂の採取作業が容易で作業時の安全性も向上する。
【0012】
請求項2記載の浮遊砂採取器によれば、河川流の上流側に筒状体開口部の蓋板があるので、浮遊砂採取器を水中から引き上げる際にも筒状体によって採取される浮遊砂の流入や流出を防止することができる。
【0013】
請求項3記載の浮遊砂採取器によれば、曲管と支持枠体とを着脱手段により脱着できるので、曲管である筒状体の着脱作業が容易で短時間で行うことができる。
【0014】
請求項4記載の浮遊砂採取器によれば、流水に含まれる浮遊砂の含有率が多い場合であっても筒状体が直管であるので、浮遊砂を直管から容易に排出することができる。
【0015】
請求項5記載の浮遊砂採取器によれば、洪水により河川の水量が増加しても手動操作によることなく筒状体の蓋板を遠隔操作することができるので、作業の安全性が向上する。
【0016】
請求項6記載の浮遊砂採取器によれば、異なる移動形態をとる浮遊砂と掃流砂を同時に採取できるので、浮遊砂の移動形態と掃流砂の移動形態との相互関係を同時に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る浮遊砂採取器の正面図、図2は左側面図、図3は平面図、図4は本発明による浮遊砂採取器を実際の河川において設置する状況を説明する図面である。図1乃至図4に示すように、本発明に係る浮遊砂採取器1は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体2と、これら複数の筒状体2を支持する支持枠体3と、一端が前記支持枠体3に固定され、他端が前記筒状体2を水中に出し入れする昇降装置4に接続される支柱5とを有するものであって、前記筒状体2を曲管状に形成して、該曲管の両端開口部2a,2bのうち、少なくとも一端開口部にアクチュエータ6により操作可能な蓋板7を備えたものである。そして、前記アクチュエータ6が、蓋体7を操作して開閉する操作手段である。
【0018】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する筒状体2は、異なる水深位置における流水に含まれる浮遊砂量を把握するため、水深方向に沿って所定間隔を隔てて複数個が装着されている。図1乃至図4に示す実施例においては、全部で5個の筒状体2が水深方向に沿って装着されている。なお、この実施例では5個の筒状体2を水深方向に沿って等間隔に設置しているが、必ずしも等間隔で設置する必要はなく、浮遊砂の分布状況調査の目的に応じて川底に近い部分を重視する場合には、川底に近い部分の筒状体設置間隔を狭く配置することもできる。要するに複数の筒状体2の設置間隔は調査対象となる河川の特性に応じて任意に変更して決定すればよい。
【0019】
各筒状体2は、図5に図示するように、多くの場合鋼製の直管2aと45度エルボ2bとを溶接により接合したものを用いるが、45度エルボ2bを用いることなく一本の直管を適宜曲げることにより曲管を形成してもよい。また、この実施例では製作の容易さを考慮して市販されている汎用の45度エルボ2bを使用しているが、曲管の曲がりの角度は必ずしも45度である必要はない。特に水流の勢いが強い場合には曲管の曲がり角度が大きいと管内を流れる水の抵抗が大きくなり、ひいては曲管を支持している支持枠体3の位置保持にも大きな負担となることから、曲管の曲がり角度は45度以下とするのが好適である。なお、曲管を構成する管には種々の材料の管材を用いることができる。鋼管、ステンレス管、アルミ管等の金属管はもちろん、木管や樹脂管等であってもよい。
【0020】
曲管である筒状体2の側面概略形状は、図5に示すように中央部が凹状となるものであり、設置姿勢は中央部が凹状となる姿勢で支持枠体3に装着される。決して中央部が凸状となる姿勢で設置されるものではない。その理由は中央の凹状部に河川の流水を満たした状態で浮遊砂を採取するためである。このような配置とすることにより筒状体2の両端開口部2a,2bを塞ぐことなく流水を採取することが可能となる。
【0021】
5本の筒状体2の両端開口部2a,2bは面一の状態に配置され、一方の開口部2aには、5本の筒状体に対してそれぞれ端面板8が設けられている。また、各端面板8には蓋板7がスライド可能なように端面板8の両側部に溝9が形成されており、その溝9に一枚の蓋板7が上部から挿入されている。そして、最下端の端面板8にはストッパー8aが設けられ、そのストッパー8aにより蓋板7は移動制限されるようになっている。
【0022】
一方、蓋板7の上端近くには蓋板7を手動で持上げ易くするための穴7aとともに係止穴7bが形成され、この係止穴7bには伝動ケーブル11を介してアクチュエータ6により駆動されるリンク12の一端に枢支された保持棒13が挿入可能にされている。また、前記保持棒13は端面板8の上部に取り付けられた案内穴14にも挿通されている。したがって、蓋板7を手動で持上げた後、アクチュエータ6により保持棒13を突出させて係止穴7bに挿入すれば、蓋板7はその位置で保持されることになる。
【0023】
蓋板7には、蓋板7を前記保持棒13により係止された状態で浮遊砂を採取する筒状体2の開口部2aに対応する位置に穴7cが設けられている。すなわち、合計5個の穴7cが設けられている。これらの穴7cは筒状体2の管径よりやや大きな穴径を有している。したがって、蓋板7が保持棒13により係止された状態では、浮遊砂を採取する筒状体2は両端とも開口した状態になり、筒状体2内を流水が通過することができる。
【0024】
また、アクチュエータ6を作動させて蓋板7に設けた係止穴7bから保持棒13を引き抜くと、蓋板7は重力により落下して蓋板7の下端が端面板8の下部に設けられたストッパー8aに当接して、そのままの状態で位置保持される。そして、蓋板7がこの位置にある場合には、蓋板7に設けられた5個の穴7cの位置は筒状体2の開口部2aから外れ、筒状体2の開口部2aは蓋板7によって塞がれることになる。
【0025】
5本の筒状体2は蓋板7を備えた側の開口部2aを河川流の上流側になるように配置して浮遊砂の採取に用いられる。下流側にも上流側と同様な蓋板7を備えた筒状体2を用いることも可能であるが、上流側だけに蓋板7を備えた筒状体2であっても開口した下流側から河川水が筒状体2内に流入する量は多くないので、実用的には上流側だけに蓋板7を備えた筒状体2であっても浮遊砂採取器としては充分である。このように一方の開口部2aにのみ蓋板7を備えた筒状体2を用いることにより浮遊砂採取器1の製作コストを低減することができる。
【0026】
個々の筒状体2は、曲管取付け板15に溶接や締結ボルトなどのファスナーによって固着されている。そして、筒状体2が固着された曲管取付け板15の支持枠体3への取付けは、図8に示すように着脱手段たるボールロックピン16によって行われている。すなわち曲管である筒状体2を固着した曲管取付け板15と支持枠体3とを着脱手段たるボールロックピン16により取付けている。したがって、支持枠体3から筒状体2を着脱する際には、ボールロックピン16を抜き差しするだけでよく、支持枠体3から筒状体2を着脱する作業がきわめて容易になる。
【0027】
また、支持枠体3は山形鋼や溝形鋼等により形成され、筒状体2が固着された曲管取付け板15を支持するとともに、上端部が昇降装置4に接続される支柱5に固定されている。したがって、昇降装置4により支柱5を昇降することにより、支柱5と支持枠体3と複数の筒状体2を一体として昇降することができる。
【0028】
なお、昇降装置4としてはチェーンレールや汎用土木建設機械である油圧ショベルを用いることができる。図4の例では油圧ショベルを用いている。汎用油圧ショベルを用いると、アーム先端に取り付けられるバケットの代わりに支柱5を取り付けるだけでよく、油圧ショベルの操作により浮遊砂採取器1を河川に出し入れして容易に浮遊砂を採取することができる。
【0029】
支柱5は、その上部を昇降装置4に接続して浮遊砂採取器1全体を昇降するものであるから、充分な機械的強度と剛性を備えている必要がある。とりわけ支柱5の長さが長くなる場合に剛性が不足すると、河川の水流の勢いが原因となって自励振動が生じることもあるので支柱側面には補強リブを配して充分な剛性を確保するのが好ましい。また、支柱5の長さは浮遊砂を採取する河川の水深を考慮して水深よりも長いものが用意する必要がある。そのため、支柱5はいくつかの柱状体5aの両端に結合フランジ5bを備えた標準ブロックとして構成され、必要に応じて標準ブロックの数を調整して所要の長さとなる支柱5を構成することができるようにされている。
【0030】
また、支持枠体3に取り付けられたブラケット17の上部には遠隔操作により作動するアクチュエータユニット6が設置されている。アクチュエータユニット6をこのように高い位置に設置するのは浮遊砂採取時においてもアクチュエータユニット6が水没することを防止するためである。本発明に係る浮遊砂採取器は屋外で使用することを前提とするものであり、アクチュエータユニット6を構成する機器についても防水仕様のものを使用しているが、アクチュエータユニット6が水没すると、防水仕様の機器であっても障害が発生する場合もあるからである。
【0031】
アクチュエータユニット6としては、油圧、空圧、電動等のアクチュエータユニット6を用いることができる。本実施例では電動機の回転を直線運動に変換する電動シリンダ22を用いている。このアクチュエータユニット6を構成する機器には、遠隔信号を受信するアンテナ18、受信機19、この受信機19の信号により電動機をオン・オフ制御するコントローラ21等が含まれる。また、直線運動をする電動シリンダ22のロッドの先端には、電動シリンダ22の直線運動を蓋板7に設けられた係止穴7bに挿入して、蓋板7を端面板8に係止する保持棒13の動作に変換する伝動ケーブル11が結合されている。したがって、電動シリンダ22の直線運動は、伝動ケーブル11、レバー12、保持棒13を介して蓋板7の開閉動作に供せられる。
【0032】
浮遊砂採取器1により浮遊砂を採取する際には、浮遊砂採取器1を水中に入れる前に電動シリンダ22のロッドを最大限突出させておく。そうすると伝動ケーブル11も突出することになり、レバー12は図6の実線で示す位置にある。そして、蓋板7の上端に設けられた係止穴7bに、レバー12の一端に枢支された保持棒13が、端面板8の上部に設けられた案内穴14に挿入され、蓋板7は図6に示す位置に保持される。すなわち、5個の筒状体2は両端部とも開口した状態になる。次に、この状態で昇降装置4により浮遊砂採取器1全体を吊り上げて浮遊砂採取器1を調査しようとする河川の所定の水深位置に水没させる。その結果、筒状体2に河川の流水が流れ込む。さらに、所定時間が経過して水の流れが安定したら、昇降装置4により浮遊砂採取器1を水中から吊り上げて回収するわけであるが、その前に、浮遊砂を採取する筒状体2内部の状態変化を回避するため、筒状体2の入口側に装着された蓋板7を閉じる必要がある。すなわち、遠隔操作により電動シリンダ22の作動ロッドを引き込む方向に動作させてレバー12の位置を図6に示す二点鎖線の位置にする。そうすると、レバー12に枢支された保持棒13は蓋板7に設けられた係止穴7bから引き抜かれ、蓋板7は自重により降下して各筒状体2の入口2aは蓋板7によって塞がれることになる。図1は蓋板7が降下して各筒状体2の入口2aが塞がれた状態を示している。このように流水が流れ込む筒状体2の入口側2aに蓋板7を当接すると、蓋板7には水流による動圧が作用して筒状体2の端面に蓋板7が密着するので、筒状体2と蓋板7との間に特段のシール装置を設ける必要はない。
【0033】
次に、この状態で支柱5や支持枠体3と一緒に浮遊砂採取器1を昇降装置4により水中から引き上げる。この状態で浮遊砂採取器1を水中から引き上げると、引き上げの途中で各筒状体2の位置する水深は次第に浅くなって水面上に引き上げられるわけであるが、筒状体2の流水入口側2aは蓋板7により塞がれているので、引き上げ途中の水深位置での流水が筒状体2に流入することを防止できる。したがって、水深の異なる位置での流水に含まれる浮遊砂を確実に採取することができることになる。仮に、このような蓋板7を設けないとすれば、筒状体2を所定位置に保持して筒状体2内に流水を満たしたとしても、筒状体2を引き上げる際により浅い水深位置での流水が筒状体2内に流れ込んでしまい、意図した水深位置での流水の採取が困難となってしまう。その点、本発明のように筒状体2の流水入口2a側に蓋板7を当接することにより意図した水深での流水を確実に採取できるようになる。なお、筒状体2の流水出口側2bにも入口側2aと同様な蓋板7を設けても構わないが、流水の入口側2aにのみ蓋板7を設けただけでも、流水の入口側2aを塞ぐことにより流水出口側2bからの流水の出入りもなくなるので流水入口側2aにのみ蓋板7を設けただけでも、目的を達成することができる。
【0034】
また、蓋板7の面積が広く、かつ水流の勢いが強い場合には、アクチュエータ6を作動させて蓋板7に設けられた係止穴7bからレバー12に枢支された保持棒13を引き抜いても、蓋板7が薄くて質量が小さいと、蓋板7の落下が阻害されることがある。したがって、そのよう場合には、蓋板7の板厚を厚くして質量を大きくするか、蓋板7に下向きの付勢力を加えるようなバネを装着して確実に蓋板7が落下するようにする必要がある。
【0035】
図10は本発明の他の実施例を示す浮遊砂採取器に用いられる筒状体23の一部断面図である。上記した実施例では、曲管からなる筒状体2を用いたが、本実施例では製作が容易な直管24を筒状体として用いている。ただし、直管24では水中から引き上げると筒状体23内に河川水が滞留しないので、筒状体23の両端開口部にはシール25付きの蓋26を設ける必要がある。図10において、直管24の両端開口部には弾性材からなるシール25が装着されている。また、直管24の両端近くにはヒンジ26を介して揺動自在に取り付けられた蓋体27が設けられている。さらに、蓋体27にはレバー28が取り付けられ、該レバー28に他端がアクチュエータ6に接続された伝動ケーブルの一端が接続されている。その結果、遠隔操作によりアクチュエータ6が作動すると、伝動ケーブルの動きを介して蓋体27も開閉動作するようになっている。
【0036】
この実施例による筒状体23を用いた浮遊砂採取器1により浮遊砂を採取する場合には、筒状体23を水中に入れる前に蓋体27を開状態にしておく。次に、蓋体27を開状態のまま水中に入れ、所定水深位置に保持して浮遊砂を含んだ流水を直管24内に流す。そして、昇降装置4により筒状体23を水中から引き上げる直前に遠隔操作によりアクチュエータ6を作動させて、蓋体27により直管両端部の開口部を閉状態にする。その後、昇降装置4により筒状体23を水中から引き上げる。なお、水中から引き上げた筒状体23から浮遊砂を含んだ水を回収する作業を容易にするため、筒状体23には排水バルブ31とエア抜きバルブ32が設けられている。
【0037】
図11は、本発明に係る浮遊砂採取器1に、公知技術である川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器33を併設したものである。図11において、掃流砂採取器33は、設定された開口面積を有して河川の上流に向けて開口することにより河川の流水を掃流砂と共に流入させる流路入口34と、支持枠体3により支持され流路入口34から流入した流水を河川の水流の下流側へ向けて案内する流路を形成する円筒状の筒状胴部35と、該筒状胴部35内を流れた流水を河川の水流の下流側へ向けて排出する流路出口36と、該筒状胴部35に並列して隣接するようにして支持枠体3により支持され、筒状胴部35と概ね同径で側壁部には多数の水抜孔37が形成されたダミー筒体38とを備えている。この掃流砂採取器33は川底を移動する掃流砂を採取するものであるから、浮遊砂採取用の筒状体2の取付け位置に比較して相対的に水深の深い位置において浮遊砂採取用の筒状体2と平行な姿勢で支持枠体3に取付けられている。
【0038】
図11に示すように、筒状胴部35とダミー筒体38との間には流路入口の近傍の位置から流路出口の近傍の位置まで延びる一本の回動軸39が、回動可能に配設されている。該回動軸39の流路入口側の端部には流路入口遮閉体41が連結されている。この流路入口遮閉体41は、筒状胴部35の直径と概ね同等の直径を有する環状の端縁部41aと、水流に対する抵抗を少なくするために環状の端縁部から円錐形状に軸方向外方に延びる尖頭部41bとを有する。
【0039】
また、前記回動軸39の流路出口側の端部にも流路入口遮閉体41と同様にして流路出口遮閉体42を装着することもできる。ただし、流路出口遮閉体42の場合には流路の下流側になることから流水の動圧による抵抗が直接作用しないため、流路出口遮閉体42の形状はコーン状を形成する必要はなく、平板状で充分である。
【0040】
図11に示すように、回動軸39の流路入口寄りの部分と、支持枠体3の流路入口側の枠部との間には、回動軸39と同心に当該回動軸39を取り囲むようにして付勢ばね43が配設されているとともに、当該回動軸39の流路出口寄りの部分と、支持枠体3の流路出口側の枠部との間にも、回動軸39と同心に当該回動軸39を取り囲むようにして付勢ばね43が配設されている。そして、これらの付勢ばね43の作用により、回動軸39と一体に回動するように回動軸39に連結された流路入口遮閉体41が、常に、筒状胴部35と整合するように、すなわち流路入口遮閉体41が筒状胴部35の流路入口34を塞ぐように、例えば図1においては時計方向に回動させようとする付勢力を受けている。
【0041】
流路入口遮閉体41の外周近傍の一箇所には、図1に詳細を示すように係合突起41cが設けられている。この係合突起41cには、ダミー胴体38の近傍の支持枠体3に揺動自在に枢支されたリンク44の一端に設けられた係合軸45が係合されており、上述したばねの付勢力によって流路入口遮閉体41が時計方向に回転しようとするのを阻止している。また、掃流砂を採取する筒状胴部35の流路入口近傍の左半部の端面の一部には、流路入口遮閉体41が当接する円弧状をなす回転ストッパー46が設けられている。
【0042】
ここで、掃流砂採取器33により掃流砂を採取しようとする際には、予め流路入口遮閉体41をダミー筒体38に整合する位置に手操作により回動した上、流路入口遮閉体41の係合突起41cをリンク44の一端に設けられた係合軸45に係合させておく。この状態で昇降装置4を用いて流路入口を上流側に向けるようにして掃流砂採取器33を水流中の所定の深度位置に沈めると、筒状胴部35内には流水及び掃流砂が自由に流れ込む。そして、所定時間が経過して掃流砂が筒状胴部35内に流入した時点で、遠隔操作によりアクチュエータ6を作動させ、伝動ケーブル47を介してリンク44の一端に取り付けられ係合軸45を流路入口遮閉体41に形成された係合突起41cから離脱させると、流路入口遮閉体41が、付勢ばね43の付勢力により、筒状胴部35と整合するように回動し、回転ストッパー46に当接する位置で停止する。その結果、流路入口遮閉体41が筒状胴部35の流路入口を塞いで筒状胴部35内に掃流砂を閉じ込めることができる。この状態で昇降装置4により支柱5を持上げれば筒状胴部35内に掃流砂を採取することができる。
【0043】
なお、浮遊砂採取器1に川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器33を併設した実施例においては、浮遊砂を採取する筒状体2の開口部を塞ぐ蓋板7を動作させる伝動ケーブル11と、掃流砂を採取する筒状胴部35の流路入口を塞ぐ流路入口遮閉体41を動作させる伝動ケーブル47とは別々のケーブルを用いる必要がある。したがって、伝動ケーブルを駆動する電動シリンダ22も2個で構成するのが好ましい。
【0044】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施例においては複数の筒状体を水深方向に沿って配置したが、水面と平行方向に複数の筒状体を配置して、河川の幅位置での浮遊砂の分布状況を調査するのに供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による浮遊砂採取器の正面図である。
【図2】本発明による浮遊砂採取器の左側面図である。
【図3】本発明による浮遊砂採取器の平面図である。
【図4】本発明による浮遊砂採取器を実際の河川において油圧ショベルを用いて設置する情況を示す河川断面を含む説明図である。
【図5】複数の筒状体の側面図である。
【図6】蓋板を保持する部位を示す拡大図である。
【図7】図6中におけるB−B矢視図である。
【図8】支持枠体への曲管取付け板の取り付けを示す拡大図である。
【図9】アクチュエータの構成を示す図面である。
【図10】他の実施例を示す筒状体の一部断面図である。
【図11】図1中におけるA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 浮遊砂採取器
2 筒状体
3 支持枠体
4 昇降装置
5 支柱
6 アクチュエータ(アクチュエータユニット)(操作手段)
7 蓋板
15 曲管取付け板
16 ボールロックピン(着脱手段)
33 掃流砂採取器
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する浮遊砂採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の洪水による災害を防止するため、全国各地の河川には数多くの砂防ダムが建設され、災害防止に大きな役割を果たしている。しかし、河川出水時の土砂移動の実態や流砂系全体における土砂移動の実態は充分に把握されていないのが実情である。
【0003】
河川出水時に移動する土砂は、主として川底に沿って移動する掃流砂と、流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂とに分類される。また、掃流砂と浮遊砂とは異なる移動形態をとることが経験的に知られている。したがって、河川の土砂移動の実態を把握するためには、掃流砂と浮遊砂について各別に採取して調査する必要がある。ここで、掃流砂の採取方法については、すでに本願の発明者らによって掃流砂採取器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−3442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来技術においては、掃流砂の採取器は開示されているが、流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂の採取器については何ら開示されていない。もっとも、浮遊砂の採取について水面近傍の浮遊砂だけを採取するのであれば、比較的簡易な採取器で採取することもできる。しかしながら、流水に含まれる浮遊砂の含有量は水深に依存する傾向があり、浮遊砂の正確な把握には異なる水深位置における浮遊砂の含有量を調べることが不可欠となる。そこで、本発明は水深の異なる複数位置での流水を同時に採取できる浮遊砂採取器を提供することを第1の目的とする。また、本発明の第2の目的は、浮遊砂の採取作業が容易で、安全性の高い浮遊砂採取器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、一端が前記支持枠体に固定され他端が前記筒状体を水中に出し入れする昇降装置に接続される支柱とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部に操作手段により操作可能な蓋板を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浮遊砂採取器において、前記筒状体の前記蓋板を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の浮遊砂採取器において、前記曲管と前記支持枠体とを着脱手段により取付けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、前記支持枠体を水中に出し入れする昇降装置とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が直管からなり、該直管の両端開口部に操作手段により操作可能な蓋体を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器において、前記操作手段が遠隔操作により操作されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器において、川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器を併設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の浮遊砂採取器によれば、水深方向に沿って複数の筒状体を設けたので、水深が異なる部位の流水に含まれる浮遊砂を同時に採取できる。したがって、浮遊砂含有量の水深依存性を把握することができる。また、浮遊砂を採取する筒状体が曲管からできているので、曲管の両端開口部に蓋をせずに一端開口部に蓋をするだけで流水に含まれる浮遊砂を採取することができる。したがって、浮遊砂の採取作業が容易で作業時の安全性も向上する。
【0012】
請求項2記載の浮遊砂採取器によれば、河川流の上流側に筒状体開口部の蓋板があるので、浮遊砂採取器を水中から引き上げる際にも筒状体によって採取される浮遊砂の流入や流出を防止することができる。
【0013】
請求項3記載の浮遊砂採取器によれば、曲管と支持枠体とを着脱手段により脱着できるので、曲管である筒状体の着脱作業が容易で短時間で行うことができる。
【0014】
請求項4記載の浮遊砂採取器によれば、流水に含まれる浮遊砂の含有率が多い場合であっても筒状体が直管であるので、浮遊砂を直管から容易に排出することができる。
【0015】
請求項5記載の浮遊砂採取器によれば、洪水により河川の水量が増加しても手動操作によることなく筒状体の蓋板を遠隔操作することができるので、作業の安全性が向上する。
【0016】
請求項6記載の浮遊砂採取器によれば、異なる移動形態をとる浮遊砂と掃流砂を同時に採取できるので、浮遊砂の移動形態と掃流砂の移動形態との相互関係を同時に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る浮遊砂採取器の正面図、図2は左側面図、図3は平面図、図4は本発明による浮遊砂採取器を実際の河川において設置する状況を説明する図面である。図1乃至図4に示すように、本発明に係る浮遊砂採取器1は、河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体2と、これら複数の筒状体2を支持する支持枠体3と、一端が前記支持枠体3に固定され、他端が前記筒状体2を水中に出し入れする昇降装置4に接続される支柱5とを有するものであって、前記筒状体2を曲管状に形成して、該曲管の両端開口部2a,2bのうち、少なくとも一端開口部にアクチュエータ6により操作可能な蓋板7を備えたものである。そして、前記アクチュエータ6が、蓋体7を操作して開閉する操作手段である。
【0018】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する筒状体2は、異なる水深位置における流水に含まれる浮遊砂量を把握するため、水深方向に沿って所定間隔を隔てて複数個が装着されている。図1乃至図4に示す実施例においては、全部で5個の筒状体2が水深方向に沿って装着されている。なお、この実施例では5個の筒状体2を水深方向に沿って等間隔に設置しているが、必ずしも等間隔で設置する必要はなく、浮遊砂の分布状況調査の目的に応じて川底に近い部分を重視する場合には、川底に近い部分の筒状体設置間隔を狭く配置することもできる。要するに複数の筒状体2の設置間隔は調査対象となる河川の特性に応じて任意に変更して決定すればよい。
【0019】
各筒状体2は、図5に図示するように、多くの場合鋼製の直管2aと45度エルボ2bとを溶接により接合したものを用いるが、45度エルボ2bを用いることなく一本の直管を適宜曲げることにより曲管を形成してもよい。また、この実施例では製作の容易さを考慮して市販されている汎用の45度エルボ2bを使用しているが、曲管の曲がりの角度は必ずしも45度である必要はない。特に水流の勢いが強い場合には曲管の曲がり角度が大きいと管内を流れる水の抵抗が大きくなり、ひいては曲管を支持している支持枠体3の位置保持にも大きな負担となることから、曲管の曲がり角度は45度以下とするのが好適である。なお、曲管を構成する管には種々の材料の管材を用いることができる。鋼管、ステンレス管、アルミ管等の金属管はもちろん、木管や樹脂管等であってもよい。
【0020】
曲管である筒状体2の側面概略形状は、図5に示すように中央部が凹状となるものであり、設置姿勢は中央部が凹状となる姿勢で支持枠体3に装着される。決して中央部が凸状となる姿勢で設置されるものではない。その理由は中央の凹状部に河川の流水を満たした状態で浮遊砂を採取するためである。このような配置とすることにより筒状体2の両端開口部2a,2bを塞ぐことなく流水を採取することが可能となる。
【0021】
5本の筒状体2の両端開口部2a,2bは面一の状態に配置され、一方の開口部2aには、5本の筒状体に対してそれぞれ端面板8が設けられている。また、各端面板8には蓋板7がスライド可能なように端面板8の両側部に溝9が形成されており、その溝9に一枚の蓋板7が上部から挿入されている。そして、最下端の端面板8にはストッパー8aが設けられ、そのストッパー8aにより蓋板7は移動制限されるようになっている。
【0022】
一方、蓋板7の上端近くには蓋板7を手動で持上げ易くするための穴7aとともに係止穴7bが形成され、この係止穴7bには伝動ケーブル11を介してアクチュエータ6により駆動されるリンク12の一端に枢支された保持棒13が挿入可能にされている。また、前記保持棒13は端面板8の上部に取り付けられた案内穴14にも挿通されている。したがって、蓋板7を手動で持上げた後、アクチュエータ6により保持棒13を突出させて係止穴7bに挿入すれば、蓋板7はその位置で保持されることになる。
【0023】
蓋板7には、蓋板7を前記保持棒13により係止された状態で浮遊砂を採取する筒状体2の開口部2aに対応する位置に穴7cが設けられている。すなわち、合計5個の穴7cが設けられている。これらの穴7cは筒状体2の管径よりやや大きな穴径を有している。したがって、蓋板7が保持棒13により係止された状態では、浮遊砂を採取する筒状体2は両端とも開口した状態になり、筒状体2内を流水が通過することができる。
【0024】
また、アクチュエータ6を作動させて蓋板7に設けた係止穴7bから保持棒13を引き抜くと、蓋板7は重力により落下して蓋板7の下端が端面板8の下部に設けられたストッパー8aに当接して、そのままの状態で位置保持される。そして、蓋板7がこの位置にある場合には、蓋板7に設けられた5個の穴7cの位置は筒状体2の開口部2aから外れ、筒状体2の開口部2aは蓋板7によって塞がれることになる。
【0025】
5本の筒状体2は蓋板7を備えた側の開口部2aを河川流の上流側になるように配置して浮遊砂の採取に用いられる。下流側にも上流側と同様な蓋板7を備えた筒状体2を用いることも可能であるが、上流側だけに蓋板7を備えた筒状体2であっても開口した下流側から河川水が筒状体2内に流入する量は多くないので、実用的には上流側だけに蓋板7を備えた筒状体2であっても浮遊砂採取器としては充分である。このように一方の開口部2aにのみ蓋板7を備えた筒状体2を用いることにより浮遊砂採取器1の製作コストを低減することができる。
【0026】
個々の筒状体2は、曲管取付け板15に溶接や締結ボルトなどのファスナーによって固着されている。そして、筒状体2が固着された曲管取付け板15の支持枠体3への取付けは、図8に示すように着脱手段たるボールロックピン16によって行われている。すなわち曲管である筒状体2を固着した曲管取付け板15と支持枠体3とを着脱手段たるボールロックピン16により取付けている。したがって、支持枠体3から筒状体2を着脱する際には、ボールロックピン16を抜き差しするだけでよく、支持枠体3から筒状体2を着脱する作業がきわめて容易になる。
【0027】
また、支持枠体3は山形鋼や溝形鋼等により形成され、筒状体2が固着された曲管取付け板15を支持するとともに、上端部が昇降装置4に接続される支柱5に固定されている。したがって、昇降装置4により支柱5を昇降することにより、支柱5と支持枠体3と複数の筒状体2を一体として昇降することができる。
【0028】
なお、昇降装置4としてはチェーンレールや汎用土木建設機械である油圧ショベルを用いることができる。図4の例では油圧ショベルを用いている。汎用油圧ショベルを用いると、アーム先端に取り付けられるバケットの代わりに支柱5を取り付けるだけでよく、油圧ショベルの操作により浮遊砂採取器1を河川に出し入れして容易に浮遊砂を採取することができる。
【0029】
支柱5は、その上部を昇降装置4に接続して浮遊砂採取器1全体を昇降するものであるから、充分な機械的強度と剛性を備えている必要がある。とりわけ支柱5の長さが長くなる場合に剛性が不足すると、河川の水流の勢いが原因となって自励振動が生じることもあるので支柱側面には補強リブを配して充分な剛性を確保するのが好ましい。また、支柱5の長さは浮遊砂を採取する河川の水深を考慮して水深よりも長いものが用意する必要がある。そのため、支柱5はいくつかの柱状体5aの両端に結合フランジ5bを備えた標準ブロックとして構成され、必要に応じて標準ブロックの数を調整して所要の長さとなる支柱5を構成することができるようにされている。
【0030】
また、支持枠体3に取り付けられたブラケット17の上部には遠隔操作により作動するアクチュエータユニット6が設置されている。アクチュエータユニット6をこのように高い位置に設置するのは浮遊砂採取時においてもアクチュエータユニット6が水没することを防止するためである。本発明に係る浮遊砂採取器は屋外で使用することを前提とするものであり、アクチュエータユニット6を構成する機器についても防水仕様のものを使用しているが、アクチュエータユニット6が水没すると、防水仕様の機器であっても障害が発生する場合もあるからである。
【0031】
アクチュエータユニット6としては、油圧、空圧、電動等のアクチュエータユニット6を用いることができる。本実施例では電動機の回転を直線運動に変換する電動シリンダ22を用いている。このアクチュエータユニット6を構成する機器には、遠隔信号を受信するアンテナ18、受信機19、この受信機19の信号により電動機をオン・オフ制御するコントローラ21等が含まれる。また、直線運動をする電動シリンダ22のロッドの先端には、電動シリンダ22の直線運動を蓋板7に設けられた係止穴7bに挿入して、蓋板7を端面板8に係止する保持棒13の動作に変換する伝動ケーブル11が結合されている。したがって、電動シリンダ22の直線運動は、伝動ケーブル11、レバー12、保持棒13を介して蓋板7の開閉動作に供せられる。
【0032】
浮遊砂採取器1により浮遊砂を採取する際には、浮遊砂採取器1を水中に入れる前に電動シリンダ22のロッドを最大限突出させておく。そうすると伝動ケーブル11も突出することになり、レバー12は図6の実線で示す位置にある。そして、蓋板7の上端に設けられた係止穴7bに、レバー12の一端に枢支された保持棒13が、端面板8の上部に設けられた案内穴14に挿入され、蓋板7は図6に示す位置に保持される。すなわち、5個の筒状体2は両端部とも開口した状態になる。次に、この状態で昇降装置4により浮遊砂採取器1全体を吊り上げて浮遊砂採取器1を調査しようとする河川の所定の水深位置に水没させる。その結果、筒状体2に河川の流水が流れ込む。さらに、所定時間が経過して水の流れが安定したら、昇降装置4により浮遊砂採取器1を水中から吊り上げて回収するわけであるが、その前に、浮遊砂を採取する筒状体2内部の状態変化を回避するため、筒状体2の入口側に装着された蓋板7を閉じる必要がある。すなわち、遠隔操作により電動シリンダ22の作動ロッドを引き込む方向に動作させてレバー12の位置を図6に示す二点鎖線の位置にする。そうすると、レバー12に枢支された保持棒13は蓋板7に設けられた係止穴7bから引き抜かれ、蓋板7は自重により降下して各筒状体2の入口2aは蓋板7によって塞がれることになる。図1は蓋板7が降下して各筒状体2の入口2aが塞がれた状態を示している。このように流水が流れ込む筒状体2の入口側2aに蓋板7を当接すると、蓋板7には水流による動圧が作用して筒状体2の端面に蓋板7が密着するので、筒状体2と蓋板7との間に特段のシール装置を設ける必要はない。
【0033】
次に、この状態で支柱5や支持枠体3と一緒に浮遊砂採取器1を昇降装置4により水中から引き上げる。この状態で浮遊砂採取器1を水中から引き上げると、引き上げの途中で各筒状体2の位置する水深は次第に浅くなって水面上に引き上げられるわけであるが、筒状体2の流水入口側2aは蓋板7により塞がれているので、引き上げ途中の水深位置での流水が筒状体2に流入することを防止できる。したがって、水深の異なる位置での流水に含まれる浮遊砂を確実に採取することができることになる。仮に、このような蓋板7を設けないとすれば、筒状体2を所定位置に保持して筒状体2内に流水を満たしたとしても、筒状体2を引き上げる際により浅い水深位置での流水が筒状体2内に流れ込んでしまい、意図した水深位置での流水の採取が困難となってしまう。その点、本発明のように筒状体2の流水入口2a側に蓋板7を当接することにより意図した水深での流水を確実に採取できるようになる。なお、筒状体2の流水出口側2bにも入口側2aと同様な蓋板7を設けても構わないが、流水の入口側2aにのみ蓋板7を設けただけでも、流水の入口側2aを塞ぐことにより流水出口側2bからの流水の出入りもなくなるので流水入口側2aにのみ蓋板7を設けただけでも、目的を達成することができる。
【0034】
また、蓋板7の面積が広く、かつ水流の勢いが強い場合には、アクチュエータ6を作動させて蓋板7に設けられた係止穴7bからレバー12に枢支された保持棒13を引き抜いても、蓋板7が薄くて質量が小さいと、蓋板7の落下が阻害されることがある。したがって、そのよう場合には、蓋板7の板厚を厚くして質量を大きくするか、蓋板7に下向きの付勢力を加えるようなバネを装着して確実に蓋板7が落下するようにする必要がある。
【0035】
図10は本発明の他の実施例を示す浮遊砂採取器に用いられる筒状体23の一部断面図である。上記した実施例では、曲管からなる筒状体2を用いたが、本実施例では製作が容易な直管24を筒状体として用いている。ただし、直管24では水中から引き上げると筒状体23内に河川水が滞留しないので、筒状体23の両端開口部にはシール25付きの蓋26を設ける必要がある。図10において、直管24の両端開口部には弾性材からなるシール25が装着されている。また、直管24の両端近くにはヒンジ26を介して揺動自在に取り付けられた蓋体27が設けられている。さらに、蓋体27にはレバー28が取り付けられ、該レバー28に他端がアクチュエータ6に接続された伝動ケーブルの一端が接続されている。その結果、遠隔操作によりアクチュエータ6が作動すると、伝動ケーブルの動きを介して蓋体27も開閉動作するようになっている。
【0036】
この実施例による筒状体23を用いた浮遊砂採取器1により浮遊砂を採取する場合には、筒状体23を水中に入れる前に蓋体27を開状態にしておく。次に、蓋体27を開状態のまま水中に入れ、所定水深位置に保持して浮遊砂を含んだ流水を直管24内に流す。そして、昇降装置4により筒状体23を水中から引き上げる直前に遠隔操作によりアクチュエータ6を作動させて、蓋体27により直管両端部の開口部を閉状態にする。その後、昇降装置4により筒状体23を水中から引き上げる。なお、水中から引き上げた筒状体23から浮遊砂を含んだ水を回収する作業を容易にするため、筒状体23には排水バルブ31とエア抜きバルブ32が設けられている。
【0037】
図11は、本発明に係る浮遊砂採取器1に、公知技術である川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器33を併設したものである。図11において、掃流砂採取器33は、設定された開口面積を有して河川の上流に向けて開口することにより河川の流水を掃流砂と共に流入させる流路入口34と、支持枠体3により支持され流路入口34から流入した流水を河川の水流の下流側へ向けて案内する流路を形成する円筒状の筒状胴部35と、該筒状胴部35内を流れた流水を河川の水流の下流側へ向けて排出する流路出口36と、該筒状胴部35に並列して隣接するようにして支持枠体3により支持され、筒状胴部35と概ね同径で側壁部には多数の水抜孔37が形成されたダミー筒体38とを備えている。この掃流砂採取器33は川底を移動する掃流砂を採取するものであるから、浮遊砂採取用の筒状体2の取付け位置に比較して相対的に水深の深い位置において浮遊砂採取用の筒状体2と平行な姿勢で支持枠体3に取付けられている。
【0038】
図11に示すように、筒状胴部35とダミー筒体38との間には流路入口の近傍の位置から流路出口の近傍の位置まで延びる一本の回動軸39が、回動可能に配設されている。該回動軸39の流路入口側の端部には流路入口遮閉体41が連結されている。この流路入口遮閉体41は、筒状胴部35の直径と概ね同等の直径を有する環状の端縁部41aと、水流に対する抵抗を少なくするために環状の端縁部から円錐形状に軸方向外方に延びる尖頭部41bとを有する。
【0039】
また、前記回動軸39の流路出口側の端部にも流路入口遮閉体41と同様にして流路出口遮閉体42を装着することもできる。ただし、流路出口遮閉体42の場合には流路の下流側になることから流水の動圧による抵抗が直接作用しないため、流路出口遮閉体42の形状はコーン状を形成する必要はなく、平板状で充分である。
【0040】
図11に示すように、回動軸39の流路入口寄りの部分と、支持枠体3の流路入口側の枠部との間には、回動軸39と同心に当該回動軸39を取り囲むようにして付勢ばね43が配設されているとともに、当該回動軸39の流路出口寄りの部分と、支持枠体3の流路出口側の枠部との間にも、回動軸39と同心に当該回動軸39を取り囲むようにして付勢ばね43が配設されている。そして、これらの付勢ばね43の作用により、回動軸39と一体に回動するように回動軸39に連結された流路入口遮閉体41が、常に、筒状胴部35と整合するように、すなわち流路入口遮閉体41が筒状胴部35の流路入口34を塞ぐように、例えば図1においては時計方向に回動させようとする付勢力を受けている。
【0041】
流路入口遮閉体41の外周近傍の一箇所には、図1に詳細を示すように係合突起41cが設けられている。この係合突起41cには、ダミー胴体38の近傍の支持枠体3に揺動自在に枢支されたリンク44の一端に設けられた係合軸45が係合されており、上述したばねの付勢力によって流路入口遮閉体41が時計方向に回転しようとするのを阻止している。また、掃流砂を採取する筒状胴部35の流路入口近傍の左半部の端面の一部には、流路入口遮閉体41が当接する円弧状をなす回転ストッパー46が設けられている。
【0042】
ここで、掃流砂採取器33により掃流砂を採取しようとする際には、予め流路入口遮閉体41をダミー筒体38に整合する位置に手操作により回動した上、流路入口遮閉体41の係合突起41cをリンク44の一端に設けられた係合軸45に係合させておく。この状態で昇降装置4を用いて流路入口を上流側に向けるようにして掃流砂採取器33を水流中の所定の深度位置に沈めると、筒状胴部35内には流水及び掃流砂が自由に流れ込む。そして、所定時間が経過して掃流砂が筒状胴部35内に流入した時点で、遠隔操作によりアクチュエータ6を作動させ、伝動ケーブル47を介してリンク44の一端に取り付けられ係合軸45を流路入口遮閉体41に形成された係合突起41cから離脱させると、流路入口遮閉体41が、付勢ばね43の付勢力により、筒状胴部35と整合するように回動し、回転ストッパー46に当接する位置で停止する。その結果、流路入口遮閉体41が筒状胴部35の流路入口を塞いで筒状胴部35内に掃流砂を閉じ込めることができる。この状態で昇降装置4により支柱5を持上げれば筒状胴部35内に掃流砂を採取することができる。
【0043】
なお、浮遊砂採取器1に川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器33を併設した実施例においては、浮遊砂を採取する筒状体2の開口部を塞ぐ蓋板7を動作させる伝動ケーブル11と、掃流砂を採取する筒状胴部35の流路入口を塞ぐ流路入口遮閉体41を動作させる伝動ケーブル47とは別々のケーブルを用いる必要がある。したがって、伝動ケーブルを駆動する電動シリンダ22も2個で構成するのが好ましい。
【0044】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施例においては複数の筒状体を水深方向に沿って配置したが、水面と平行方向に複数の筒状体を配置して、河川の幅位置での浮遊砂の分布状況を調査するのに供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による浮遊砂採取器の正面図である。
【図2】本発明による浮遊砂採取器の左側面図である。
【図3】本発明による浮遊砂採取器の平面図である。
【図4】本発明による浮遊砂採取器を実際の河川において油圧ショベルを用いて設置する情況を示す河川断面を含む説明図である。
【図5】複数の筒状体の側面図である。
【図6】蓋板を保持する部位を示す拡大図である。
【図7】図6中におけるB−B矢視図である。
【図8】支持枠体への曲管取付け板の取り付けを示す拡大図である。
【図9】アクチュエータの構成を示す図面である。
【図10】他の実施例を示す筒状体の一部断面図である。
【図11】図1中におけるA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 浮遊砂採取器
2 筒状体
3 支持枠体
4 昇降装置
5 支柱
6 アクチュエータ(アクチュエータユニット)(操作手段)
7 蓋板
15 曲管取付け板
16 ボールロックピン(着脱手段)
33 掃流砂採取器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、一端が前記支持枠体に固定され他端が前記筒状体を水中に出し入れする昇降装置に接続される支柱と、を有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部に操作手段により操作可能な蓋板を備えたことを特徴とする浮遊砂採取器。
【請求項2】
前記筒状体の前記蓋板を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することを特徴とする請求項1記載の浮遊砂採取器。
【請求項3】
前記曲管と前記支持枠体とを着脱手段により取付けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮遊砂採取器。
【請求項4】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、前記支持枠体を水中に出し入れする昇降手段とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が直管からなり、該直管の両端開口部に操作手段により操作可能な蓋体を備えたことを特徴とする浮遊砂採取器。
【請求項5】
前記操作手段が遠隔操作により操作されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器。
【請求項6】
川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器を併設したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器。
【請求項1】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、一端が前記支持枠体に固定され他端が前記筒状体を水中に出し入れする昇降装置に接続される支柱と、を有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が曲管からなり、該曲管の両端開口部のうち、少なくとも一端開口部に操作手段により操作可能な蓋板を備えたことを特徴とする浮遊砂採取器。
【請求項2】
前記筒状体の前記蓋板を備えた開口部を河川流の上流側に配置して前記浮遊砂を採取することを特徴とする請求項1記載の浮遊砂採取器。
【請求項3】
前記曲管と前記支持枠体とを着脱手段により取付けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浮遊砂採取器。
【請求項4】
河川の流水と混ざり泥水となって流れる浮遊砂を採取する複数の筒状体と、前記複数の筒状体を支持する支持枠体と、前記支持枠体を水中に出し入れする昇降手段とを有する浮遊砂採取器であって、前記筒状体が直管からなり、該直管の両端開口部に操作手段により操作可能な蓋体を備えたことを特徴とする浮遊砂採取器。
【請求項5】
前記操作手段が遠隔操作により操作されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器。
【請求項6】
川底を移動する掃流砂を採取する掃流砂採取器を併設したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の浮遊砂採取器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−26139(P2008−26139A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198795(P2006−198795)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(501028390)国土交通省北陸地方整備局長 (12)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(501028390)国土交通省北陸地方整備局長 (12)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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