説明

浮遊移動体

【課題】バルーンのサイズが浮遊移動体の運動性能に干渉しにくい基本構造からなると共に、スラスタ推力が浮遊移動体の姿勢に干渉しにくいスラスタ配置とされた、制御すべき4次元の推力を4個のスラスタで発生させることが可能な浮遊移動体の提供。
【解決手段】機体の揚力に頼らない基本構造からなる浮遊移動体とした上で、スラスタS1−S4をバルーンBより下方に配置することをも含め浮遊移動体上で適切に配置すること、そしてスラスタの推力だけではなく回転スラスタの回転方向の反作用トルクを利用することで制御すべき4次元の推力を4個のスラスタで発生させることが可能な浮遊移動体1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中および水中において、流体を駆動することによって推力を発生するスラスタを持つ浮遊移動体の新規な構造および制御方法に関する。
より具体的には、本発明は主にハイブリッド飛行船への適用を前提としたものである。ただし、それに限定されるものではなく、通常の飛行船(軽飛行船)や、水中の浮遊移動体(潜水艇、水中ロボット等)にもそのままで応用可能なものである。
【背景技術】
【0002】
ビルの外壁その他の高所や危険区域等、人間が到達しにくい箇所の外観目視検査を行う用途に対しては、バキュームや電磁石を応用して壁面に張り付きながら移動するロボットや、ラジコンヘリに監視用の小型カメラを搭載し、これらを遠隔操作することにより安全な検査を行えるようにする技術が提供されている。
【0003】
しかしながら、バキュームや電磁石を応用して壁面に張り付きながら移動するロボットについては凹凸壁面や非磁性体の壁面に対応できないといった欠点があり、目的位置へ到達するためのルート選定が困難な技術であった。またラジコンヘリコプターについては、静止(ホバリング)や高精度な軌道制御など、低速度域でのコントロールが困難という欠点があった。
このように、現在提供されている技術には、いずれも一長一短があった。
【0004】
そこで、次世代の空中浮遊移動体として期待されている現在のハイブリッド飛行船に注目し、監視カメラを搭載可能な程度の小型ハイブリッド飛行船を遠隔操作することにより、ビルの外壁その他の高所や危険区域等、人間が到達しにくい箇所の外観目視検査を行うといった検討もなされている。
【0005】
ところが、このアイデアを実現可能な新規な浮遊移動体を提供するためには以下に代表される諸問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/081082号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】川村,崔,田中,木野,“パラレルワイヤ駆動方式を用いた超高速ロボット FALCON の開発”,日本ロボット学会誌,vol.15, no.1, pp.82-89, 1997.
【非特許文献2】Sadao Kawamura, Hitoshi Kino, and Choe Won, "High-speed manipulation by using parallel wire-driven robots," Robotica, vol.18, pp.13-21, 2000.
【非特許文献3】Xiumin Diao and Ou Ma, "Force-closure analysis of 6-DOF cable manipulators with seven or more cables," Robotica, vol.27, pp.209-215, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、係る諸問題を解決した浮遊移動体は、これまで世の中に提供されていなかった。
そこで、本発明は、以下に代表される諸問題を解決し、上記アイデアを実現可能な新規な浮遊移動体を提供することを課題とする。
【0009】
[1] バルーンのサイズからくる悪影響
空中および水中において、流体を駆動することによって推力を発生するスラスタを持つ浮遊移動体には通常、飛行機、ヘリコプター、飛行船(軽飛行船、重飛行船)や水中の浮遊移動体(潜水艇、水中ロボット)などが例示される。
その中でも、次世代の空中浮遊移動体として注目されている現在のハイブリッド飛行船は、バルーンを含めた機体重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない飛行船(重飛行船)であり、さらにバルーン自体が揚力を発生するような形状を持つ、いわゆるリフティングボディとなっており、スラスタの推進力によって巡航することでバルーン=リフティングボディが揚力を発生し、不足している浮力を補って浮遊する構造となっている。つまり、伝統的な飛行船同様に従来知られたハイブリッド飛行船も、スラスタ等の動力発生機器やキャビン或いは貨物室の大きさに対して相対的に巨大なバルーンを備える基本構造をなしていた(図5および図6参照)。
【0010】
しかしながら、そのような大きなバルーンは浮遊移動体の運動性能に悪影響を及ぼしてしまうものであった。バルーンが大きなことで必然的に機体全体の慣性や空気抵抗が大きくなってしまっていたのである。
結果として、従来のハイブリッド飛行船は、運動性能が良くないものばかりであった。
【0011】
機体全体の慣性や空気抵抗が大きなことによる従来のハイブリッド飛行船の運動性能の悪さは、巡航ではなく静止(ホバリング)と高精度な軌道制御など、低速度域での運用を主体とする場合には非常なデメリットとなる。その一例として、監視カメラを搭載した小型飛行船を遠隔操作することにより、ビルの外壁その他の高所や危険区域等、人間が到達しにくい箇所の外観目視検査を行うと言った用途を想定した場合においても、やはり、従来のハイブリッド飛行船のバルーンのサイズとそれに起因する運動性能の悪さは致命的であった。
【0012】
この問題を解決し、バルーンのサイズが浮遊移動体の運動性能に干渉しにくい基本構造を提供することを課題とする。
【0013】
[2] スラスタ推力の姿勢への悪影響
飛行船において、浮心と重心を適切に配置する(すなわち、浮心を重心の鉛直上方に配置する)ことで、受動的にロール方向およびピッチ方向の姿勢が維持され、能動的に制御すべき次元数を6から4に減らすことが可能であることは一般に知られている。
【0014】
しかし、バルーンによる浮力とスラスタによる推力を併用するハイブリッド飛行船では、一般の飛行船と比べてスラスタが大きな推力を発揮するため、スラスタ推力が飛行船の姿勢に干渉し、受動的な姿勢維持に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0015】
この問題を解決し、スラスタ推力が飛行船の姿勢に干渉しにくいスラスタ配置方法を提供することを課題とする。
【0016】
[3] 制御すべきスラスタの個数
一般に、多くの実用的なスラスタが正方向への推力しか発生しない(負方向=逆噴射はできない)ことを考慮すると、制御すべき4次元(すなわちx方向、y方向、z方向の並進およびヨー方向の旋回)の任意の推力ベクトルを正負の両方向を含めて発生するためには、少なくとも4+1=5個のスラスタが必要である。これは、多指ハンドロボットやワイヤ駆動ロボットの分野で知られるVector Closure(非特許文献1および2参照)あるいはForce Closure(非特許文献3参照)の概念である。
【0017】
つまり、ハイブリッド飛行船において浮心を重心の鉛直上方に配置して、制御すべき次元数を6から4に減らしたとしても、この4次元の推力空間の中で任意の推力を発生するためには、スラスタを5個以上設置しなければならない。
【0018】
しかし、スラスタの個数の増加は重量やコストの増加を意味するため、スラスタの個数を減らすことができれば、ハイブリッド飛行船の性能向上が期待される。
【0019】
この問題を解決し、制御すべき4次元の推力を4個のスラスタで発生するスラスタ配置方法およびスラスタ制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記諸問題を解消すべく種々検討を行った結果、本発明者は、機体の揚力に頼らない基本構造からなる浮遊移動体とした上で、スラスタを浮遊移動体上で適切に配置すること、そしてスラスタの推力だけではなく回転スラスタの回転方向の反作用トルクを利用することによって、上記諸課題を解決可能なことを見い出し、本発明を完成した。
【0021】
上記課題を解決可能な本発明の浮遊移動体は、(1)バルーンの浮力と、流体を駆動することによって推力を発生するスラスタの推力の鉛直上方への分力とによって重力に抗して浮遊すると共に、浮遊に使われないスラスタ推力の余剰分によって移動する浮遊移動体であって、
前記バルーンが前記浮遊移動体の上部に、前記スラスタが前記浮遊移動体の下部に配置されることにより、
前記バルーンの浮力が浮遊のほか、浮心が機体全体の重心の鉛直上方に配置されることによって前記浮遊移動体の受動的な姿勢維持に用いられる、
ことを特徴とするものである。
【0022】
このとき、(2)前記浮遊移動体の下部において、4基以上の回転スラスタが、各回転スラスタの推力の作用線が前記浮遊移動体上部に適切に定めた一点である推力作用点において交差するか、或いはその近傍において近接するように配置されると共に、前記各回転スラスタの推力ベクトルのうちの任意の3個が、xyzの並進の3次元空間内で線形独立であるように配置されていることが好ましい。
さらに、(3)前記各回転スラスタは、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないようにされており、それによって前記浮遊移動体は、前記各回転スラスタに生じ得る互いに逆方向の反作用トルクを調節することで前記浮遊移動体にヨー方向の旋回トルクを発生させる、構成を備えていることが好ましい。
またさらに、(4)前記回転スラスタが前記浮遊移動体の下部に6基以上、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないように配置され、それにより得られる前記浮遊移動体のスラスタ6自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回に加え、ロール方向の回転とピッチ方向の回転とを含めた6次元推力空間における推力を独立に発生させ得る構成からなるものであることが好ましい。
【0023】
又上記(1)〜(4)に記載の浮遊移動体は、(5)前記スラスタが空中において空気を駆動することによって推力を発生させることにより機体を空中浮遊或いは移動させる飛行船であることが好ましい。
【0024】
さらに、上記(5)に記載の飛行船は、(6)前記飛行船がハイブリッド飛行船すなわち、前記バルーンを含めた前記機体全体の重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない重飛行船となっていることがより好ましい。
【0025】
また本発明のハイブリッド飛行船は、(7)バルーンの浮力と、空気を駆動することによって推力を発生するスラスタの推力の鉛直上方への分力とによって重力に抗して浮遊すると共に、浮遊に使われないスラスタ推力の余剰分によって移動する飛行船であって、
前記バルーンは前記飛行船の上部に配置され、
前記飛行船の下部において、4基以上の回転スラスタが、各回転スラスタの推力の作用線が前記飛行船上部に適切に定めた一点である推力作用点において交差するか、或いはその近傍において近接するように配置されると共に、前記各回転スラスタの推力ベクトルのうちの任意の3個が、xyzの並進の3次元空間内で線形独立であるように配置されており、さらに、
前記各回転スラスタは、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないようにされており、それによって前記飛行船は、前記各回転スラスタに生じ得る互いに逆方向の反作用トルクを調節することで前記飛行船にヨー方向の旋回トルクを発生させる、
構成を備えていることを特徴とするものである。
このとき、(8)前記飛行船はハイブリッド飛行船すなわち、前記バルーンを含めた前記機体全体の重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない重飛行船となっていることが好ましい。
【0026】
[補足]
本明細書にいう「従来知られたハイブリッド飛行船」或いは「従来のハイブリッド飛行船」とは、バルーンを含めた機体重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない飛行船(重飛行船)であり、さらにバルーン自体が揚力を発生するような形状を持つ、いわゆるリフティングボディとなっており、スラスタの推進力によって巡航することでバルーン=リフティングボディが揚力を発生し、不足している浮力を補って浮遊するものである。このハイブリッド飛行船は、気体の比重のみで浮上可能な従来の飛行船(軽飛行船)と区別するため重飛行船とも呼ばれる。
しかしながら、次に本発明の一実施例として説明するハイブリッド飛行船は、重飛行船であることは同じであるが、リフティングボディは必ずしも持たなくてもよい。それは、本実施例におけるハイブリッド飛行船の主な機能が、巡航ではなく静止(ホバリング)と高精度な軌道制御であることによる。したがって、低速度域での運用が主体であり、巡航による揚力には期待できない。
本実施例におけるハイブリッド飛行船では、リフティングボディの揚力ではなくスラスタの推力を直接、揚力として使用する。このように、本実施例ではバルーンの浮力の不足分は、スラスタ推力の鉛直上方への分力によって補う構成となっている。
本実施例におけるハイブリッド飛行船におけるバルーンの役割は、もちろん一つは浮力を揚力として利用することであるがそれだけではない。むしろ浮力によって、上述したように飛行船の姿勢を受動的に維持する、すなわち浮心を重心の鉛直上方に配置することによって浮遊移動体の受動的な姿勢維持に用いることが重要な役割である。
以下、単にハイブリッド飛行船とした場合は、本実施例におけるハイブリッド飛行船を意味するものとし、その他の場合は「従来のハイブリッド飛行船」として言及する。
【0027】
[1]’ スラスタの適切な配置について
前述のように、ハイブリッド飛行船のような浮遊移動体において浮心と重心を適切に配置する(すなわち、浮心を重心の鉛直上方に配置する)ことで、受動的にロール方向およびピッチ方向の姿勢が維持され、能動的に制御すべき次元数を6から4に減らすことが可能である。
スラスタSは多くの場合、浮遊移動体にとって無視できない重量を持つため、浮心に対して重心を下げるためにはスラスタSを浮遊移動体の下部に配置することが望ましい。そこで、図5に示すような配置とすることが一般的である。この配置によって重心は下がるが、スラスタ推力の作用線は、浮遊移動体の下部のみに存在することとなる。浮遊移動体の下部に浮遊移動体の重心が存在するならば、推力の作用線が浮遊移動体の重心を貫くように設計することは可能である。
【0028】
しかし、浮遊移動体においては、浮遊移動体自体の慣性の効果と比べてバルーンBの空気抵抗(或いは、浮き袋として機能するバルーンBが受ける水の抵抗)や付加慣性の効果が無視できないほど大きいため、推力の作用線が重心を貫くように設計したとしても、推力が浮遊移動体の受動的な姿勢の維持に悪影響を及ぼす。つまり、大きな推力を発生させると飛行船の姿勢が乱れることになる(図6参照)。
【0029】
そこで、本発明では以下のようなスラスタの配置方法としている。
i) 4個以上のスラスタを浮遊移動体の下部に配置する
ii) 前記スラスタの推力の作用線が浮遊移動体上部の適切な一点(推力作用点)において交差するか、あるいはその近傍において近接するように配置する
iii) 前記スラスタの推力ベクトルのうちの任意の3個が、xyzの並進の3次元空間内で線形独立であるように配置する
【0030】
このような配置とすることにより、浮遊移動体下部に重心を位置させると共に、実質上、xyzの並進方向に任意の推力を発生するスラスタが浮遊移動体上部の推力作用点に存在するのと同等の推力を発生させることが可能である。このことは、前記Vector Closureの概念(非特許文献1および2参照)と、力学の基礎である、いわゆる「作用線の定理」から理解される。
【0031】
[2]’ スラスタ推力の適切な方向について
上で述べたように、浮遊移動体下部に配置したスラスタの推力の作用線が、浮遊移動体上部の推力作用点を貫くようにスラスタを配置すると、自ずとスラスタは水平ではなく鉛直上方に近い「立った」角度で設置されることとなる。これは、本発明において主な対象としている、機体の揚力のみに頼らないハイブリッド飛行船に好適である。
【0032】
すなわち、スラスタの設置角度に応じたスラスタ推力の分力が鉛直上方への推力成分となることで、スラスタ推力をハイブリッド飛行船の揚力として用い、余剰分のスラスタ推力を、xyzの並進方向への移動のための推進力として用いることが可能となる。
したがって、鉛直線に対するスラスタの設置角度は、浮遊移動体の揚力と推進力へのスラスタ推力の配分比を考慮して決めるべきである。
【0033】
[3]’ スラスタの反作用トルクについて
上記のようにスラスタを配置することによって、スラスタを浮遊移動体下部に置いたまま、実質上、xyzの並進方向に任意の推力を発生するスラスタが浮遊移動体上部の推力作用点に存在するのと同等の推力を発生させることが可能となった。
しかし、浮遊移動体一般において能動的に制御すべき次元数は前述のように4である。この内、ヨー方向の旋回(水平旋回)については、上記のスラスタ配置方法では考慮されていなかった。
【0034】
ヨー方向のトルクを発生させる一つの方法は、前述の配置方法で配置したスラスタに加えて、別途ヨー方向のトルクを発生させるスラスタを追加してスラスタ数を5以上とすることである。これが適切な場合もあり得るが、スラスタの個数が増加するため、必ずしも望ましい方法ではない。
【0035】
そこで、必要なスラスタの個数を増加させずにヨー方向のトルクを発生させるための、以下のようなスラスタの配置方法および制御方法を発明した。
i) 複数の回転スラスタを、水平ではなく鉛直上方に近い「立った」角度で浮遊移動体に設置する
ii) 前記複数のスラスタにおいて、ファンの回転方向が上方(あるいは下方)から見てすべて同一方向とならないようにする
iii) 前記複数のスラスタの、互いに逆方向の反作用トルクを適切に調節し、浮遊移動体にヨー方向の旋回トルクを発生させる
【0036】
ここでいう回転スラスタとは、モータやエンジン等の何らかのアクチュエータによってファンを回転させ、流体を推し出した反作用で推力を発生させるスラスタである。このような回転スラスタの場合、流体はスラスタから推し出されるだけでなく、螺旋状に回転しながら推し出される。これはすなわち、回転スラスタが並進方向の推力だけではなく、流体を回転させた反作用としてのトルクを発生させることを意味する。
【0037】
並進方向の反作用の力(推力)だけではなく、回転スラスタであれば常に同時に発生させているこの回転方向の反作用トルクを、共に制御において陽に考慮することで、4個のスラスタでxyzの並進方向の推力に加えてヨー方向の旋回トルクをも任意に発生させることが可能である。
ただし、このような4次元推力空間における任意の推力を発生させるためには、上述のように、互いに逆回転する回転スラスタを配置することが必要となる。
【0038】
本発明は、以上に述べた各構成からなる浮遊移動体とすることで上記諸問題が解決可能となることが本発明者により見い出されたことによって完成されたものである。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、バルーンのサイズが浮遊移動体の運動性能に干渉しにくい基本構造からなる浮遊移動体を提供できる。
また本発明によれば、スラスタ推力が浮遊移動体の姿勢に干渉しにくいスラスタ配置とされた浮遊移動体を提供できる。
さらに本発明によれば、制御すべき4次元の推力を4個のスラスタで発生させることが可能なスラスタ配置方法およびスラスタ制御方法並びにこれらの方法が適用された浮遊移動体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1に係る外観構成図である。(a)は斜め下方から見た図、(b)は側方から見た図、(c)は下方から見た図である。
【図2】図1に示すスラスタ1と2が発生する主推力と副推力につき説明する図である。
【図3】図1に示すスラスタ3と4が発生する主推力と副推力につき説明する図である。
【図4】本発明の実施例2に係る外観構成図である。(a)は斜め下方から見た図、(b)は側方から見た図、(c)は下方から見た図である。
【図5】従来例に係る飛行船における一般的なスラスタ配置に付き説明する図である。
【図6】従来例に係る飛行船に関し、重心を貫くスラスタ推力に起因する姿勢の乱れに付き説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明につき一実施例を挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
これより実施例として説明する本発明に係る浮遊移動体は、バルーンによる浮力とスラスタによる推力とを併用する新規なハイブリッド飛行船の構造および制御方法に係るものである。
【実施例1】
【0042】
[構成]
図1は、本発明の実施例1に係る外観構成図である。(a)は斜め下方から見た図、(b)は側方から見た図、(c)は下方から見た図である。
本実施例は、スラスタ個数4のハイブリッド飛行船への実装例に係るものである。
前述のように、飛行船一般において能動的に制御すべき次元数は4である。この4次元推力空間において任意の推力を発生させ得る最少のスラスタ個数nは4である。そこで、この実施例では、最少スラスタ個数n=4による実装を考える。
【0043】
上記の通り、n=4のスラスタを適宜配置し、実装すると、例えば図1のようなハイブリッド飛行船1となる。本実施例では、4個のスラスタS1−S4が飛行船1下部に集中して配置されており、各スラスタ推力の作用線は、ハイブリッド飛行船1上部の推力作用点において交差するようになっている(図2、図3参照)。この例では、推力作用点は、バルーンB中心、すなわち浮心と一致させている。また、図中のxyzの矢印は慣性座標系Σであり、便宜上x方向が前方、y方向が鉛直上方である。
【0044】
図1において、スラスタS1−S4の円筒形状の違いは、互いに逆回転のスラスタであることを表現している。以下で詳述する通り、本実施例ではスラスタS1およびS2のファンが右ネジ方向(正方向とする)に回転し、スラスタS3およびS4のファンがその逆の左ネジ方向(負方向とする)に回転する構成となっている。
【0045】
その他の構成要素につき図1に基づき説明すると、本実施例のハイブリッド飛行船1は、少なくともスラスタS1−S4の駆動エネルギーおよびこのハイブリッド飛行船1の制御ユニットのほか、或いはさらに、遠隔操作を行う場合には送受信ユニットが内蔵された機器収納部Mと、機器収納部M底部に設けられた操縦用および検査用の2基の小型カメラCと、上方にバルーンBを保持し、下方において機器収納部Mを保持すると共にスラスタS1−S4がそれぞれ縦桟に固定されるフレームFと、とからなっている。本実施例では機器収納部Mは、バルーンBの下方において、フレームFの4本の縦桟からそれぞれ機器収納部Mに向かって延びる横桟によってフレームFに固定されている。
このように、本実施例では鉛直方向から見て四隅に配置された4本の縦桟と、これら4本の縦桟に囲まれた中に配置された機器収納部Mと、これら4本の縦桟から機器収納部Mに向かって延びる横桟とからフレームFの剛体構造が形成され、そのフレームFの上方において、4本の縦桟に保持される形でバルーンBが設けられている。この、バルーンBが上方に、スラスタその他重いものが下方に配置される基本構造となっていることからも、本実施例のバルーンBは、ハイブリッド飛行船1の姿勢を保つために備えられていることが理解される。
【0046】
本実施例では、バルーンBを含めた機体全体の全高および全幅は成人の標準身長および標準肩幅と同程度のサイズとされる。これにより、本実施例のハイブリッド飛行船1は、人間が歩行して通過可能な程度の開口部やゲート等を通過させることが可能となっている。
【0047】
上記からも明らかな通り、本発明では、i)バルーン自体は、姿勢制御に用いられることを主目的に備えられており、ii)バルーンとスラスタからなる浮遊移動体全体のコントロールはスラスタによって、より具体的には各スラスタのファン回転数の強弱を制御することによって行われる基本構造となっている。
反面、公知のヘリコプターは原理上、姿勢制御も含めて全てのコントロールをロータで行わなければならない構造となっている。この点において、本発明の浮遊移動体とヘリコプターとは本質的に相違している。
このように、浮遊移動体全体の移動制御と姿勢制御とを別々に行うことが出来、しかも従来のハイブリッド飛行船より相対的に小型なバルーンを備えることで高い運動性能を発揮し得る本発明の浮遊移動体は、静止(ホバリング)と高精度な軌道制御など、低速度域での運用を主体とする用途には好適なものである。
【0048】
なお、スラスタS1−S4がフレームFの下方において、各スラスタ推力の作用線がハイブリッド飛行船1上部の推力作用点において交差するように固定されている点に付き補足すると、仮にスラスタS1−S4が首振り機構を介してフレームFに固定されるものだとすると、首振り機構を構成するためのアクチュエータが別途必要になり、構造に加えて制御も複雑化する弊害がある。その点、本実施例のような構成を採れば、首振り機構等の可動部を省略でき、機械的構造も簡素化される。また、制御も各ファンの回転数の強弱制御だけでよく、簡単に行えるメリットがある。
【0049】
本実施例では、スラスタS1−S4には回転するファンを持つ回転スラスタを使用するところ、この場合、各スラスタはファンの回転に伴い、スラスト方向の並進力としての主推力と、スラスト軸まわりのトルクとしての副推力を、空気を螺旋状に推し出すことによる反作用として同時に発生する。
【0050】
このとき、4個のスラスタで8方向の推力が発生することになる。しかし、この推力のうち独立なのは4自由度のみなので、n=8とはならず、やはりn=4である。なお以下の理論検証では、空気に対する作用反作用以外の動力学的効果(ロータ慣性に起因するリアクションおよびジャイロモーメント等)は簡単のため考慮しないが、一般にそれらの効果は前記主推力、副推力に比べて小さく、以下の理論検証に大きな齟齬をきたすことはない。
【0051】
[理論検証]
また以下では、上記したスラスタの4自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回の4次元推力空間における推力が独立に発生できるかどうかを確認する。
【0052】
図1の実装例においてx軸正方向から見たときの、ハイブリッド飛行船の推力作用点とスラスタの位置関係を図2に示す。スラスタS1とS2はそれぞれ、斜め上方への主推力f、fと共に、ファンが右ネジ方向(正方向)に回転しているため、左ネジ方向(負方向)の反作用トルクとして副推力n、nを発生する。
なお、図2中の座標系はハイブリッド飛行船のボディに固定された座標系Σであり、この図においてはΣの各軸方向はΣと一致しているものとする。また、θ(0<θ<π/2)とθ2(−π/2<θ2<0)は、鉛直線からの各スラスタの傾斜角度である。さらに、ハイブリッド飛行船1の座標系Σが慣性座標系Σ同様にxyzの並進とxyz軸まわりの回転(6次元)座標系からなるものとすると、上記f−f並びにn−nはそれぞれ3次元ベクトルである(以下、同様とする)。
【0053】
このとき、スラスタS1とS2が発生する主推力と副推力は以下のように記述される。
【数1】

ただし、スラスタSi(i=1、2、3、4)のファン回転角速度をωとし、スラスタSiの主推力と副推力は共に回転角速度の自乗に比例すると仮定した。また、回転角速度の自乗から主推力および副推力への正の比例係数をそれぞれkfi、kniとしている。
【0054】
次に、図1の実装例においてz軸正方向から見たときの、ハイブリッド飛行船の推力作用点とスラスタの位置関係を図3に示す。スラスタS3とS4はそれぞれ、斜め上方への主推力f、fと共に、ファンが左ネジ方向(負方向)に回転しているため、右ネジ方向(正方向)の反作用トルクとして副推力n、nを発生する。
なお、図3中の座標系は、やはりハイブリッド飛行船の座標系Σであり、この図においてもΣの各軸方向はΣと一致しているものとする。また、θ3(0<θ3<π/2)とθ4(−π/2<θ4<0)は、鉛直線からの各スラスタの傾斜角度である。
【0055】
このとき、スラスタS3とS4が発生する主推力と副推力は以下のように記述される。
【数2】

【0056】
以上で各スラスタが発生する主推力と副推力が導出された。この結果から、全スラスタが発生する主推力と副推力それぞれの総和をf、n(いずれもベクトル)とすると、
【数3】

となる。ただし、JEGとuは式(1)〜式(4)から以下のように求められる。
【数4】

このuは、4個のスラスタの角速度(の自乗)を表すベクトルであり、JEGは転置ヤコビ行列である。
【0057】
これで、スラスタの4自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回の4次元推力空間における推力が独立に発生できるかどうかを確認するために必要な準備は整った。
【0058】
式(6) の転置ヤコビ行列JEGから、能動的に制御すべき4次元であるxyz方向の並進およびヨー方向の旋回(y軸まわりの回転)に対応する第1、2、3、5行を取り出して、4×4の正方行列としたものを改めてJEG4とおく。
【数5】

ただし、簡単のために、
【数6】

とした。このとき、
【数7】

である。すなわち、図1のハイブリッド飛行船のスラスタ4自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回の4次元推力空間における推力が独立に発生可能であることが示された。
【0059】
[動作]
次に、本実施例に係るハイブリッド飛行船1全体の移動制御或いは姿勢制御に関連し、各スラスタS1−S4の制御方法について説明する。
【0060】
ヨー方向の旋回トルクをn(スカラー)とすると、転置ヤコビ行列JEG4を用いて式(5)は改めて以下のように書ける。
【数8】

式(9)から、転置ヤコビ行列JEG4は正則なので、
【数9】

となる。
すなわち、式(11)に従えば、ハイブリッド飛行船が全スラスタから得るべき所望のスラスタ主推力と副推力f、nに対して、各スラスタへ指令すべき角速度uを求めることができる。
【0061】
いま、
【数10】

のように、スラスタが対称に配置されているとすると、転置ヤコビ行列JEG4T の逆行列は、以下のように簡単な形となる。
【数11】

ただし、
【数12】

とした。
【0062】
[比較例]
参考までに、互いに逆回転する回転スラスタを配置しない場合すなわち、図1のハイブリッド飛行船1において、すべてのスラスタS1−S4のファンの回転方向が右ネジ方向(正方向)である場合について考察しておく。
【0063】
このとき、式(6)の転置ヤコビ行列JEGは、nとnの符号が逆となって以下のようになる。
【数13】

ただし、簡単のために、
【数14】

とした。式(15)の転置ヤコビ行列JEGについて階数を計算すると、
【数15】

である。
【0064】
すなわち、すべてのスラスタS1−S4が同一方向に回転している場合、図1のハイブリッド飛行船1のスラスタ4自由度を用いても、xyz方向の並進とヨー方向の旋回の4次元推力空間における推力は独立に発生できず、独立に発生できるのは3次元までの推力であることが示された。
【0065】
以上説明した本実施例に係るハイブリッド飛行船は、運動性能に優れたものであり、特に、巡航ではなく静止(ホバリング)と高精度な軌道制御など、低速度域での運用を主体とする場合には非常に取り回しがよい。
したがって、例えば本実施例に係るハイブリッド飛行船に監視カメラを搭載し、これを遠隔操作することにより、ビルの外壁その他の高所や危険区域等、人間が到達しにくい箇所の外観目視検査を行うと言った用途を想定した場合においても、十分満足行く運用を行うことができる。
【実施例2】
【0066】
次に、実施例1のハイブリッド飛行船に実装されたスラスタの個数を変化させた実施例2に付き説明する。図4は、本発明の実施例2に係る外観構成図である。(a)は斜め下方から見た図、(b)は側方から見た図、(c)は下方から見た図である。
本実施例は、スラスタ個数6のハイブリッド飛行船への実装例に係るものである。スラスタ実装数以外は上記実施例1の基本構成と同様である。
【0067】
本発明を実装する最少のスラスタ個数は4であるが、それ以上のスラスタを配置しても構わない。例えば、スラスタ個数を6とすれば、図4のようなハイブリッド飛行船10とすることができる。
このように、互いに逆回転する回転スラスタを配置すれば、図4のハイブリッド飛行船10のスラスタ6自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回に加え、ロール・ピッチ方向の回転も含めた6次元推力空間における推力が独立に発生可能である。
【0068】
[変形例]
以上、一実施例を用いて本発明に係る浮遊移動体に付き説明したが、本発明は上記構成に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0069】
まず、本明細書では、本発明に係る浮遊移動体の構成およびその制御方法を、ハイブリッド飛行船として具現化した一実施例を用いて説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、通常の飛行船(軽飛行船)や、水中の浮遊移動体(潜水艇、水中ロボット等)にもそのままで応用可能な技術である。
【0070】
上記実施例では、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないように配置されたスラスタの配置が4基である場合と6基である場合について説明したが、これに限らず、4基以上であればxyzの並進方向の推力に加えてヨー方向の旋回トルクをも任意に発生させることが可能である。さらに、6基以上とすれば、それにより得られるスラスタ6自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回に加え、ロール方向の回転とピッチ方向の回転も含めた6次元推力空間における推力を独立に発生させることが可能である。
【0071】
カメラCの配置位置も、機器収納部Mの底部に限定されず、縦桟の一部に固定する等、適宜変更を加えても構わない。
バルーンのサイズや機体の全高或いは全幅、さらに各スラスタの推力についても、実際の使用状況次第で適宜改変を加えて構わない。
【0072】
また本発明による浮遊移動体の制御システムとしては、この浮遊移動体を、浮遊移動体の一部を占める、単一剛体とみなし得る本体部と、浮遊移動体に対して推力を発生する効果器部に分離した上、この本体部と効果器部を力学的に結合する唯一の部分(推力伝達ゲート)に力・トルクセンサを設置するか、あるいは加速度センサを設置することによって仮想的に推力伝達ゲートを構成するか、いずれかによって本体部と効果器部の間に掛かる力とトルクを全て計測出来、この値をフィードバックすれば、浮遊移動体に与えるべき推力が得られる。その推力指令値を式(11)に代入することによって各スラスタへ指令すべき角速度が得られる。つまり、浮遊移動体の推力を直接制御出来、それによって、波浪や潮流等の流体力学的な外乱下にあっても、浮遊移動体を所定位置に精度良く静止させたり、或いは目標軌道に精度良く追従させたりすることが可能である(特許文献1参照)故、当該システムを適用することも有用である。この制御システムを用いて本発明に係る浮遊移動体を制御することで、よりスムーズに浮遊移動体を制御することが可能となる。
【0073】
[産業上の利用可能性]
以上からも理解される通り、本発明では、バルーン自体は、姿勢制御に用いられることを主目的に備えられており、バルーンとスラスタからなる浮遊移動体全体のコントロールはスラスタによって、より具体的には各スラスタのファン回転数の強弱を制御することによって行われる基本構造となっている。
このように、浮遊移動体全体の移動制御と姿勢制御とを別々に行うことが出来、しかも従来のハイブリッド飛行船より相対的に小型なバルーンを備えることで高い運動性能を発揮し得る本発明の浮遊移動体は、静止(ホバリング)と高精度な軌道制御など、低速度域での運用を主体とする用途に特に有用な、新規かつ革新的なものであることが明らかである。
【符号の説明】
【0074】
1、10 ハイブリッド飛行船
B バルーン
C カメラ
F フレーム
M 機器収納部
S1、S2、S3、S4、S5、S6 スラスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンの浮力と、流体を駆動することによって推力を発生するスラスタの推力の鉛直上方への分力とによって重力に抗して浮遊すると共に、浮遊に使われないスラスタ推力の余剰分によって移動する浮遊移動体であって、
前記バルーンが前記浮遊移動体の上部に、前記スラスタが前記浮遊移動体の下部に配置されることにより、
前記バルーンの浮力が浮遊のほか、浮心が機体全体の重心の鉛直上方に配置されることによって前記浮遊移動体の受動的な姿勢維持に用いられる、
ことを特徴とする浮遊移動体。
【請求項2】
前記浮遊移動体の下部において、4基以上の回転スラスタが、各回転スラスタの推力の作用線が前記浮遊移動体上部に適切に定めた一点である推力作用点において交差するか、或いはその近傍において近接するように配置されると共に、前記各回転スラスタの推力ベクトルのうちの任意の3個が、xyzの並進の3次元空間内で線形独立であるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の浮遊移動体。
【請求項3】
さらに、前記各回転スラスタは、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないようにされており、それによって前記浮遊移動体は、前記各回転スラスタに生じ得る互いに逆方向の反作用トルクを調節することで前記浮遊移動体にヨー方向の旋回トルクを発生させる、
構成を備えていることを特徴とする請求項2に記載の浮遊移動体。
【請求項4】
前記回転スラスタが前記浮遊移動体の下部に6基以上、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないように配置され、それにより得られる前記浮遊移動体のスラスタ6自由度を用いて、xyz方向の並進とヨー方向の旋回に加え、ロール方向の回転とピッチ方向の回転とを含めた6次元推力空間における推力を独立に発生させ得る構成からなるものとしたことを特徴とする請求項2に記載の浮遊移動体。
【請求項5】
前記浮遊移動体は、前記スラスタが空中において空気を駆動することによって推力を発生させることにより機体を空中浮遊或いは移動させる飛行船であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の浮遊移動体。
【請求項6】
さらに、前記飛行船がハイブリッド飛行船すなわち、前記バルーンを含めた前記機体全体の重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない重飛行船となっていることを特徴とする請求項5に記載の浮遊移動体。
【請求項7】
バルーンの浮力と、空気を駆動することによって推力を発生するスラスタの推力の鉛直上方への分力とによって重力に抗して浮遊すると共に、浮遊に使われないスラスタ推力の余剰分によって移動する飛行船であって、
前記バルーンは前記飛行船の上部に配置され、
前記飛行船の下部において、4基以上の回転スラスタが、各回転スラスタの推力の作用線が前記飛行船上部に適切に定めた一点である推力作用点において交差するか、或いはその近傍において近接するように配置されると共に、前記各回転スラスタの推力ベクトルのうちの任意の3個が、xyzの並進の3次元空間内で線形独立であるように配置されており、さらに、
前記各回転スラスタは、そのファンの回転方向が上方或いは下方から見たとき全て同一方向とならないようにされており、それによって前記飛行船は、前記各回転スラスタに生じ得る互いに逆方向の反作用トルクを調節することで前記飛行船にヨー方向の旋回トルクを発生させる、
構成を備えていることを特徴とする飛行船。
【請求項8】
さらに、前記飛行船がハイブリッド飛行船すなわち、前記バルーンを含めた前記機体全体の重量が空気より重く、動力なしでは浮遊できない重飛行船となっていることを特徴とする請求項7に記載の飛行船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245944(P2011−245944A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119685(P2010−119685)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)