説明

浮遊粒子状物質の測定装置

【課題】 浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を連続的に測定することを可能にする浮遊粒子状物質の連続測定装置を提供する。
【解決手段】 連続測定装置1は、連続的に送給される捕集フィルタ4上に、浮遊粒子捕集手段2によって大気中で浮遊する粒子状物質を捕集し、捕集された浮遊粒子状物質3を容器6内へ捕集フィルタ4とともに送給し、光源9から出射されて浮遊粒子状物質3を透過した光の吸光度を検出器11によって測定する。吸光度の検出に際しては、捕集されたままの状態にある浮遊粒子状物質3透過光の吸光度と、減圧雰囲気下で加熱された後の浮遊粒子状物質3透過光の吸光度とが、検出される。加熱前後の吸光度を用いて演算手段12が、浮遊粒子状物質3中の元素状炭素、有機炭素および水分の定量値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中には、燃料の燃焼過程で発生した揮発性ガスが冷却凝集して形成される超微細粒子、燃料の燃焼過程および気相化学反応で形成されるたとえば黒煙粒子などの微細粒子、自然現象で発生するたとえば海塩粒子、黄砂などの粗大粒子等種々の浮遊粒子状物質いわゆる粉塵が存在する。このような大気中の浮遊粒子状物質は、人体の鼻腔・咽頭、気管支、肺臓などに沈着し、健康に影響を及ぼすことが知られ、古くは黒い霧(スモッグ)と呼ばれた頃から環境問題として採り上げられ、大気汚染の状態を示す一つの指標として測定がなされてきた。
【0003】
大気中の浮遊粒子状物質は、測定間隔を予め定め、定めた期間ごとにたとえば集塵フィルタを交換するなどによって、その大気中の総量が測定されてきた。近年測定技術の進展とともに、大気中に存在する浮遊粒子状物質の総量にとどまらず、浮遊粒子状物質の中でも人体の肺臓に沈着しやすく長期にわたって健康に影響を及ぼすとされる微細粒子の含有量を総量から分離して測定するとともに、連続的に測定する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このように浮遊粒子状物質の測定技術は長足の進歩を遂げているけれども、特許文献1に開示される技術は、あくまでも大気中におけるの浮遊粒子状物質の量の測定であり、浮遊粒子状物質中の組成に言及するものではない。たとえばディーゼルエンジン搭載車両の排気ガスを成因とする浮遊粒子状物質には、元素状炭素(Elementary Carbon:略称EC)が含まれ、このECには窒素酸化物、硫黄酸化物などのような健康に有害な物質が吸着されていると考えられている。したがって、浮遊粒子状物質中のたとえばEC含有量を知ることができれば、浮遊粒子状物質中ひいては大気中の有害物質の存在量を知る一つの指標足り得る。したがって、大気中の浮遊粒子状物質における組成分析を可能にすることが強く望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−343319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定することを可能にする浮遊粒子状物質の測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置である。
【0008】
また本発明は、大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を予め捕集した捕集フィルタを内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置である。
【0009】
また本発明は、大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置である。
【0010】
また本発明は、検出器が、複数の波長の吸光度を検出する検出器であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を連続的に測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質によって散乱される反射散乱光を検出する検出器と、
検出器によって検出される光強度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置である。
【0012】
また本発明は、光源は、捕集フィルタ上の浮遊粒子上物質に向けて波長が1〜10μmの赤外光を含む光を照射することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、浮遊粒子捕集手段によって捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質に対してβ線を照射するβ線照射手段と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過したβ線を検出するβ線検出器とを、さらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素(EC)、有機炭素(
Particle Organic Matter:略称POM)および水分(HO)を、光吸収法を用いて連続的に測定することのできる浮遊粒子状物質の測定装置が提供される。
【0015】
また本発明によれば、大気中で浮遊する粒子状物質を予め捕集した捕集フィルタを用いて、バッチ式でEC、POM、HOを測定することができるので、種々の採取装置および採取方法で採取された浮遊粒子状物質の測定に対応することができる。
【0016】
また本発明によれば、減圧手段および加熱手段を備えない簡略な構成の装置によって、EC、POMおよびHOの概略測定値を得ることができる。
【0017】
また本発明によれば、検出器として、複数の波長の吸光度を検出する検出器が用いられるので、簡素な構成で、光吸収法による浮遊粒子状物質の測定装置が提供される。
【0018】
また本発明によれば、捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質によって散乱される反射散乱光を検出する検出器が備えられるので、赤外光散乱法を用いてEC、POM、HOを測定することができる浮遊粒子状物質の測定装置が提供される。
【0019】
また本発明によれば、捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて波長が1〜10μmの赤外光を含む光を照射する光源が備えられるので、高い精度で浮遊粒子状物質中のEC、POM、HOを測定することができる。
【0020】
また本発明によれば、浮遊粒子状物質に対してβ線を照射するβ線照射手段と、捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過したβ線を検出するβ線検出器とを備えるので、浮遊粒子状物質の全質量も測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の実施の第1形態である浮遊粒子状物質の測定装置1の構成を簡略化して示す系統図である。浮遊粒子状物質の測定装置1(以後、測定装置1と略称する)は、大気中で浮遊する粒子状物質中のEC、POMおよびHOを連続的に測定することに用いられる。
【0022】
測定装置1は、大略、大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段2と、浮遊粒子捕集手段2による浮遊粒子状物質3の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタ4と、連続的に送給される捕集フィルタ4上に捕集された浮遊粒子状物質3をその内部空間5に収容する容器6と、容器6の内部空間5を減圧する減圧手段7と、容器6を介して容器6の内部空間5および内部空間5に収容される捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3を加熱する加熱手段8と、容器6の内部空間5に収容される捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3に向けて光を照射する光源9と、光源9から出射されて捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質3を透過した光を分光する分光器10と、分光器10による分光を受光して吸光度を検出する検出器11と、検出器11によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中のEC、POMおよびHOの量を演算する演算手段12とを含む。
【0023】
捕集フィルタ4は、フッ素樹脂から成るフィルタであり、テープ状の形状を有し、心材に巻きまわされたコイル状態で巻戻リール21に装着される。巻戻リール21においてコイルの外周から巻戻された捕集フィルタ4は、予め定める距離だけ離隔した位置に設けられる巻取リール22に噛込み巻取られる。巻取リール22には、巻取リール22を回転駆動させる不図示の電動機が連結され、電動機にはさらに制御電源が接続される。電動機は、制御電源からの動作指令に従って、予め定める時間間隔で、予め定める回数だけ回転するように動作する。このことによって、電動機で回転駆動される巻取リール22が、捕集フィルタ4を予め定める時間間隔で予め定める長さだけ矢符23方向に巻取るので、捕集フィルタ4が浮遊粒子状物質3の捕集位置へ連続的に送給される。
【0024】
浮遊粒子捕集手段2および容器6は、捕集フィルタ4の巻戻リール21と巻取リール22との間に、矢符23で示す捕集フィルタ4の巻取方向すなわち送給方向の上流側から下流側に向ってこの順序で設けられる。
【0025】
浮遊粒子捕集手段2は、大気中に開口部24を有して浮遊粒子状物質を含む大気を後述する分級器26へと流過させる流路を形成するダクト25と、ダクト25に連接され大気中の浮遊粒子状物質をその粒子の大きさによって分級する分級器26と、分級器26に連接される捕集チャンバ27と、捕集チャンバ27に捕集管路28によって接続されて捕集チャンバ27内空間の大気を吸引する捕集ポンプ30と、捕集ポンプ30を制御して大気の流量を調整する流量制御装置29とを含んで構成される。
【0026】
ダクト25は、たとえば金属製または合成樹脂製などの筒状部材であり、大気中に位置する一方の端部側に前述の開口部24が形成され、他方の端部側が分級器26に連接され、浮遊粒子状物質を含む大気を分級器26へと流入させることができる。
【0027】
本実施の形態では、分級器26としてPM2.5インパクターが用いられる。PM2.5インパクター26は、粒径(厳密には空気力学的粒径)2.5μm以下の粒子のみを下流へ流過させ、粒径2.5μmを超える粒子の流過を阻止することができる。したがって、PM2.5インパクター26を備える本実施の形態の測定装置1は、人体の肺臓に沈着して健康に影響を及ぼすと言われている粒径2.5μm以下の微細粒子に含まれるEC,POMおよびHOを測定するように構成される。
【0028】
PM2.5インパクター26の大気流過方向下流側に連接される捕集チャンバ27は、たとえば金属製の直方体形状を有する箱形部材であり、捕集フィルタ4の送給路上に配置される。捕集フィルタ4の送給路上に位置する捕集チャンバ27の対向する一対の壁面には、フィルタ挿通孔31a,31bがそれぞれ形成される。巻戻リール21から巻戻された捕集フィルタ4は、フィルタ挿通孔31a,31bを挿通されることによって、捕集チャンバ27内空間を通過し、巻取リール22に巻取られる。この捕集チャンバ27内空間を流過する大気は、捕集フィルタ4によってフィルタリングされ、捕集チャンバ27内空間における捕集フィルタ4によるフィルタリング位置が、浮遊粒子状物質の捕集位置である。
【0029】
捕集ポンプ30は、流量制御装置29によって好ましくはその吸気量が16.7L(リットル)/min(=1m/hour)に設定される。捕集ポンプ30が捕集管路28を通じて捕集チャンバ27内の大気を吸引することによって、開口部24から浮遊粒子状物質を含む大気がダクト25内に吸引される。ダクト25内に吸引された大気は、PM2.5インパクター26によって微細粒子のみを含む大気に分別され、該大気が捕集チャンバ27内を流過する際、捕集チャンバ27内の捕集位置に供給された捕集フィルタ4によってフィルタリングされ、捕集フィルタ4上に浮遊粒子状物質3が捕集される。
【0030】
容器6は、浮遊粒子捕集手段2に対して矢符23で示す補修フィルタ4の送給方向下流側に設けられる。この容器6と浮遊粒子捕集手段2との離隔距離は、電動機で回転駆動される巻取リール22が、捕集フィルタ4を矢符23方向に巻取るべく予め定められる長さと等しい距離に設定される。
【0031】
容器6は、たとえばステンレス鋼などの金属から成る箱型部材であり、捕集フィルタ4の送給路上に位置するように設けられる。捕集フィルタ4の送給路上に位置する容器6の対向する壁面には、捕集された浮遊粒子状物質3を有する捕集フィルタ4が、容器6の内部空間5へ入るフィルタ挿通孔32aと、内部空間5から出るフィルタ挿通孔32bとが形成される。フィルタ挿通孔32a,32bは、簡易的な封止構造を備え、捕集された浮遊粒子状物質3bを有する捕集フィルタ4が通過可能であり、かつ容器6の内部空間5を気密にすることができるように構成される。
【0032】
この容器6に減圧手段7が接続される。減圧手段7は、真空ポンプ34と、真空ポンプ34の動作を制御する圧力制御装置39と、真空ポンプ34と容器6とに接続される導管35とによって構成される。容器6の内部空間5は、圧力制御装置39に動作制御される真空ポンプ34の吸引によって、10torr以下、好ましくは約1torrの減圧雰囲気にされる。
【0033】
また容器6には、容器6および容器6を介して捕集フィルタ4と捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3を加熱する加熱手段8が装着される。加熱手段8は、たとえば抵抗発熱体と、抵抗発熱体に電力を供給する不図示の電源とを含んで構成される。さらに加熱手段8は、容器6内の温度を検出する温度センサと、温度センサの検出出力に応じて前記電源を動作制御する制御器とを含むことが望ましい。加熱手段8によって、容器6内の温度は150℃以下の所定温度になるように加熱される。
【0034】
容器6の上部であって捕集フィルタ4に捕集された浮遊粒子状物質3の上方には光源9が装着される。光源9としては、たとえばフィラメント型赤外連続光源などが挙げられ、少なくとも波長が1〜10μmの赤外光を含む光を出射することのできるものが選択される。この光源9の出力は光源点灯制御回路33によって制御され、光源点灯制御回路33は、後述のメモリ13にストアされる動作プログラムに従う演算回路12によって動作制御される。光源9から出射される光36aは、容器6上部であって光源9の直下に設けられるサファイアレンズ37によって集光されて捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3に照射される。浮遊粒子状物質3を透過した光は、容器6の底板部に形成される開口部を封止するように装着されるサファイア窓38を透過し、容器6と検出器11との間に設けられる分光器10へ入射される。
【0035】
分光器10は、浮遊粒子状物質3を透過して入射した光を分光して出射し、検出器11へと入射する。検出器11は、分光器10によって分光された光36bを受光し、その光光吸収スペクトル、すなわち波長ごとの吸光度を検出する。
【0036】
以下に本発明の測定装置1を用いて浮遊粒子状物質中のEC、POMおよびHOを測定するに際して、その動作原理について説明する。図2は、検出器11によって浮遊粒子状物質3の透過光から検出される光光吸収スペクトルを示す図である。
【0037】
EC、POMおよびHOは、赤外領域にそれぞれ吸収波長を有し、その値は、大略EC:2.90〜3.20μm、POM:2.80〜3.00μm、HO:3.1〜3.5μmであり、比較的近接した領域に存在する。このようにPOMとHOとの吸収波長は重畳しないけれども、ECの吸収波長は、POMとHOとの両者に対して重畳域を有する。
【0038】
浮遊粒子捕集手段2によって捕集したままの浮遊粒子状物質を容器6内へ装入し、そのまま光源9から出射した光36aを照射し、浮遊粒子状物質3を透過した光について、検出器11で光吸収スペクトルを求めると、図2中の加熱前にて示すライン41のように、ECとPOMおよびHOとの光吸収スペクトルが重畳した形の測定結果が得られる。
【0039】
しかしながら、浮遊粒子状物質3を減圧雰囲気下において加熱すると、POMおよびHOは揮発して消失し、ECのみが残存する。したがって、減圧雰囲気下において加熱した後、再度浮遊粒子状物質3について光吸収スペクトルを求めると、ECについての光吸収スペクトルのみが得られる。図2中、加熱後にて例示する光吸収スペクトルは、1torrの減圧雰囲気下において150℃で15分間加熱した後、測定したものである。
【0040】
このように同一の浮遊粒子状物質3について、捕集ままの加熱前と、減圧雰囲気下で加熱後との2回光吸収スペクトルを測定することによって、次のようにしてEC、POMおよびHOの組成分析をすることが可能になる。
【0041】
図2を参照してEC、POMおよびHOの組成分析について説明するに際して、ここでは、説明に用いる各記号を以下のように定義する。
ABS(2.92,b) :減圧加熱前の波長2.92μmにおける見かけの吸光度
ABS(3.1,b) :減圧加熱前の波長3.1μmにおける見かけの吸光度
ABS(3.3,b) :減圧加熱前の波長3.3μmにおける見かけの吸光度
ABS(4.0,b) :減圧加熱前の波長4.0μmにおける見かけの吸光度
ABS(2.92,a) :減圧加熱後の波長2.92μmにおける見かけの吸光度
ABS(3.1,a) :減圧加熱後の波長3.1μmにおける見かけの吸光度
ABS(3.3,a) :減圧加熱後の波長3.3μmにおける見かけの吸光度
ABS(4.0,a) :減圧加熱後の波長4.0μmにおける見かけの吸光度
ε(2.92,EC) :波長2.92μmにおける単位重量当たりのECの吸光係数
ε(2.92,POM) :波長2.92μmにおける単位重量当たりのPOMの吸光係数
ε(2.92,H2O) :波長2.92μmにおける単位重量当たりのH2Oの吸光係数
ε(3.1,EC) :波長3.1μmにおける単位重量当たりのECの吸光係数
ε(3.1,POM) :波長3.1μmにおける単位重量当たりのPOMの吸光係数
ε(3.1,H2O) :波長3.1μmにおける単位重量当たりのH2Oの吸光係数
ε(3.3,EC) :波長3.3μmにおける単位重量当たりのECの吸光係数
ε(3.3,POM) :波長3.3μmにおける単位重量当たりのPOMの吸光係数
ε(3.3,H2O) :波長3.3μmにおける単位重量当たりのH2Oの吸光係数
ε(4.0,EC) :波長4.0μmにおける単位重量当たりのECの吸光係数
ε(4.0,POM) :波長4.0μmにおける単位重量当たりのPOMの吸光係数
ε(4.0,H2O) :波長4.0μmにおける単位重量当たりのH2Oの吸光係数
m(H2O) :浮遊粒子状物質中のHOの含有重量
m(EC) :浮遊粒子状物質中のECの含有重量
m(POM) :浮遊粒子状物質中のPOMの含有重量
【0042】
捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3が、減圧および加熱処理を受ける前の各波長2.92μm,3.1μm,3.3μmおよび4.0μmにおける吸光度は、以下の式(1)〜式(4)によってそれぞれ与えられる。
ABS(2.92,b)=ε(2.92,EC)・m(EC)+ε(2.92,POM)・m(POM)
+ε(2.92,H2O)・m(H2O) …(1)
ABS(3.1,b)=ε(3.1,EC)・m(EC)+ε(3.1,POM)・m(POM)
+ε(3.1,H2O)・m(H2O) …(2)
ABS(3.3,b)=ε(3. 3,EC)・m(EC)+ε(3.3,POM)・m(POM)
+ε(3.3,H2O)・m(H2O) …(3)
ABS(4.0,b)=ε(4.0,EC)・m(EC)+ε(4.0,POM)・m(POM)
+ε(4.0,H2O)・m(H2O) …(4)
【0043】
通常、POMは採取場所によって含有する成分の異なることが予想されるので、一義的に各波長における単位重量当たりの吸光係数ε(2.92,POM)、ε(3.1,POM)、ε(3.3,POM)、ε(4.0,POM)を決めることができない。そこで、減圧および加熱処理することによって、POMは揮発し消失するので、減圧および加熱後においては、上記式におけるm(POM)、を無視することができる。またHOも減圧および加熱処理することによって揮発し消失するので、減圧および加熱後においては、上記式におけるm(H2O)を無視することができる。したがって、減圧および加熱処理後においては、上記の式(1)〜式(4)が、以下の式(5)〜式(8)のように変形される。
ABS(2.92,a)=ε(2.92,EC)・m(EC) …(5)
ABS(3.1,a)=ε(3.1,EC)・m(EC) …(6)
ABS(3.3,a)=ε(3.3,EC)・m(EC) …(7)
ABS(4.0,a)=ε(4.0,EC)・m(EC) …(8)
【0044】
ECの各波長における吸光係数ε(EC)は、予め求めておくことができる。したがって、たとえば最も大きい吸光度を示す波長3.1μmについての式(6)に基づき、予め求めておいた吸光係数ε(3.1,EC)用いて浮遊粒子状物質中のECの含有重量m(EC)を算出することができる。
【0045】
また各波長における吸光係数εは減圧加熱の前後において変化しないので、減圧加熱前後の各波長における吸光度差ABS(λ,Δ)[=ABS(λ,b)−ABS(λ,a)]が式(9)〜式(12)で与えられる。
ABS(2.92,Δ)=ε(2.92,POM)・m(POM)+ε(2.92,H2O)・m(H2O) …(9)
ABS(3.1,Δ)=ε(3.1,POM)・m(POM)+ε(3.1,H2O)・m(H2O) …(10)
ABS(3.3,Δ)=ε(3.3,POM)・m(POM)+ε(3.3,H2O)・m(H2O) …(11)
ABS(4.0,Δ)=ε(4.0,POM)・m(POM)+ε(4.0,H2O)・m(H2O) …(12)
【0046】
波長3.3μmにおいて、吸光係数ε(3.3,POM)がε(3.3,H2O)に比べて極小と仮定すれば、ε(3.3,POM)・m(POM)を無視し、予め求めておいたε(3.3,H2O)を用いて式(11)に基づき、浮遊粒子状物質中のHOの含有重量m(H2O)を求めることができる。
【0047】
また波長2.92μmにおいて、吸光係数ε(2.92,H2O)がε(2.92,POM)に比べて極小と仮定すれば、ε(2.92,H2O)・m(H2O)を無視し、予め求めておいたε(2.92,H2O)を用いて、式(9)に基づいて、浮遊粒子状物質中のPOMの含有重量m(POM)を求めることができる。式(12)において、ε(4.0,POM)=0、ε(4.0,H2O)=0なので、ABS(4.0,Δ)はベースラインの変動に相当し、この変動はランプの光量の変動および/またはフィルタの吸光度の変化に由来するものと考えられるが、これを利用することにより、他の波長の吸光度の変化を補償することができる。さらに、より多くの波長を測定することができれば、単にPOMの重量だけでなく、その組成についての情報を得ることができる。
【0048】
演算手段12は、上記の吸光度を求める演算および検量線と対照して定量値を求める演算を実行する回路である。演算手段12は、たとえば中央処理装置(略称CPU)を搭載するコンピュータなどによって実現される。また演算手段12には、記憶手段であるメモリ13が併設される。メモリ13は、随時書込みと読出しとが可能なたとえばハードディスクドライブ(略称HDD)などによって実現される。
【0049】
メモリ13には、浮遊粒子状物質3について加熱前に測定した光吸収スペクトルのデータと、同一浮遊粒子状物質3について減圧雰囲気下で加熱後に測定した光吸収スペクトルのデータとがストアされるとともに、EC、POMおよびHOについて予め求められる検量線がストアされる。
【0050】
演算手段12を構成するCPUは、浮遊粒子状物質3について加熱後の測定が終えられると、まずメモリ13から加熱前後の光吸収スペクトルのデータを読出して、前記式(6)、式(9)および式(11)の演算を行って、EC、POMおよびHOについての吸光度を求め、次に求めた吸光度とメモリ13から読出したそれぞれについての検量線とを比較演算し、定量値を算出する。なお演算手段12には、さらに表示手段であるプリンタなどが設けられてもよく、プリンタなどを設けておくことによって、前述の演算結果を表示しかつ記録することができる。
【0051】
以下では測定装置1の全体動作について簡単に説明する。まず巻取リール22で予め定める長さだけ捕集フィルタ4を巻取ることによって、捕集フィルタ4の新規部分を、浮遊粒子捕集手段2の捕集チャンバ27内の所定位置まで送給する。捕集フィルタ4の新規部分が捕集チャンバ27内の所定位置に送給された状態で、捕集ポンプ30をたとえば1m/hourの吸気量で運転し、ダクト25およびPM2.5インパクター26を通じて導入された大気が、捕集フィルタ4によってフィルタリングされて、浮遊粒子状物質3が捕集される。
【0052】
浮遊粒子捕集手段2によって、たとえば1時間浮遊粒子状物質3の捕集が行われた後、巻取リール22を動作させ、捕集フィルタ4における浮遊粒子状物質3の捕集部分が、容器6内の所定測定位置まで移動するように、予め定める距離だけ捕集フィルタ4を巻取る。
【0053】
捕集フィルタ4で捕集された浮遊粒子状物質3が、容器6内の所定測定位置にある状態で、減圧加熱することなく、光源9から浮遊粒子状物質3に光を照射し、浮遊粒子状物質3を透過した光を検出器11が受光して吸光スペクトルを検出する。検出された吸光スペクトルデータが演算手段12に備わるメモリ13にストアされる。ついで容器6内を減圧し、容器6内の浮遊粒子状物質3を加熱し、浮遊粒子状物質3内に含まれるPOMおよびHOを揮発させる。この減圧加熱条件としては、たとえば前述のように、1torrで150℃×15minが設定される。なお、POMおよびHOを揮発させる目的のためには、容器6内の圧力を低くすればするほど、加熱温度を低くすることができる。加熱温度は、可能な範囲で低い方が好ましく、特に150℃を超えないように設定される。加熱温度が150℃を超えると、カルボン酸が炭素になるので、ECの分析精度に影響を及ぼすからである。
【0054】
減圧雰囲気下で加熱後、再び光源9から浮遊粒子状物質3に光を照射し、浮遊粒子状物質3を透過した光を検出器11が受光して吸光スペクトル、すなわち残存するECのみの吸光スペクトルを検出する。検出された吸光スペクトルデータが演算手段12に備わるメモリ13にストアされる。
【0055】
その後、演算手段12は、加熱前後の光吸収スペクトルデータをメモリ13から読出して式(6)、式(9)および式(11)の演算を実行するとともに、得られたEC、POMおよびHOの吸光度と、メモリ13から読出した検量線とを比較して、それぞれの定量値を演算する。
【0056】
捕集フィルタ4が連続したテープ状なので、浮遊粒子状物質3を捕集した捕集フィルタ4を捕集位置から測定位置へ移動させたとき、捕集位置には新規な捕集フィルタ4が供給されて、浮遊粒子捕集手段2による次の1時間の浮遊粒子状物質の捕集動作が連続して実行される。このように測定装置1によれば、定点測定位置において、1時間ごとの浮遊粒子状物質中に含まれるEC、POMおよびHOの連続測定が可能である。
【0057】
なお本実施の形態では、1時間ごとの定点連続測定を例示するけれども、1時間ごとに限定されることなく、さらに短い時間間隔で連続測定が実行されてもよく、またさらに長い時間間隔で連続測定が実行されてもよい。
【0058】
図3は、本発明の実施の第2形態である測定装置50の構成を簡略化して示す系統図である。本実施の形態の測定装置50は、実施の第1形態の測定装置1に類似し、対応する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施の形態の測定装置50において注目すべきは、浮遊粒子捕集手段および捕集フィルタの連続供給手段を備えないことである。測定対象である大気中で浮遊する粒子状物質は、限定されることのない種々の採集装置によって捕集フィルタ上に捕集される。測定装置50では、上記の浮遊粒子状物質を予め捕集した捕集フィルタが測定試料として用いられる。すなわち、測定装置50によれば、浮遊粒子状物質の捕集手段に限定されることなく、また特定に測定位置に限定されることなく、バッチ式で浮遊粒子状物質を予め捕集した捕集フィルタ4を容器6内に装入してEC、POMおよびHOの測定が行われる。測定動作は、実施の第1形態の測定装置1と同様なので説明を省略する。
【0060】
図4は、本発明の実施の第3形態である測定装置の光源51まわりの構成を簡略化して示す図である。本実施の形態の測定装置は、光源51まわりの構成を除いて、実施の第1形態の測定装置1に類似するので、全体構成を示す図を省略するとともに、対応する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
本実施形態の測定装置において注目すべきは、光源51として、発光ダイオード(略称LED)を用いることである。光源51では、LEDとバンドパスフィルタ(略称BPF)とを組合せることによって、所望の波長を照射することのできるLEDユニットが構成される。本実施の形態では、波長が異なる4つのLEDユニット52,53,54,55が設けられる。本実施形態の光源51では、4つの異なる波長として、ベース吸光度測定のための波長4.0μm、HOの吸収波長である波長3.3μm、ECの吸収波長である波長3.1μm、POMの吸収波長である波長2.9μmが選択される。
【0062】
光源51は、第1LED56と第1BPF57とによって波長2.9μmの光を照射する2.9μmLEDユニット52と、第2LED58と第2BPF59とによって波長3.1μmの光を照射する3.1μmLEDユニット53と、第3LED60と第3BPF61とによって波長3.3μmの光を照射する3.3μmLEDユニット54と、第4LED62と第4BPF63とによって波長4.0μmの光を照射する4.0μmLEDユニット55と、各LEDユニットから出射される各波長の光を反射し、該反射光が容器6の上部に設けられるサファイアレンズ37に入射するように設けられる球面鏡64とを含んで構成される。
【0063】
本実施の形態の測定装置50において注目すべきは、光源51として4波長発光ダイオード(LED)が用いられるので、分光器を必要としないことである。吸光度を測定するとき、各LEDユニットを1つずつ順番に点灯させることによって、単一波長の光を浮遊粒子状物質3に対して照射し、その特定波長について直接吸光度を測定することができるので、所望の波長の吸光度を得るために分光する必要がなくなり、分光器10が不要となる。このように、所望の波長の光を出射できるLEDユニットを複数個備える光源51を設けることによって、分光器10を省くことができるので、測定装置の構成を簡略化することが可能になる。
【0064】
図5は、光源51を備える測定装置において検出器11で検出される吸光度を示す模式図である。浮遊粒子状物質中のEC、POMおよびHOの測定は、スペクトルを検出するのではなく、特定波長の光を検出することを除いて測定装置1による場合と全く同様にして実行される。
【0065】
図6は、本発明の実施の第4形態である測定装置70の構成を簡略化して示す系統図である。本実施の形態の測定装置70は、実施の第1形態の測定装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0066】
測定装置70において注目すべきは、光源9から出射されて浮遊粒子状物質3に照射され、浮遊粒子状物質3で反射散乱された散乱光71を検出器72で検出し、検出器72によって検出される散乱強度から浮遊粒子状物質中のEC、POMおよびHOの量を測定することである。したがって、測定装置70では、光源9から出射されて浮遊粒子状物質3で反射される散乱光71を受光することができるように、サファイアレンズ37および検出器72が、連続送給される捕集フィルタ4に関して光源9と同じ側に設けられる。
【0067】
この測定装置70によれば、光源51から出射されて浮遊粒子状物質3で反射された散乱光71を、分光器10で、4.0μm、3.3μm、3.1μmおよび2.92μmの各波長成分に分光し、分光したそれぞれの散乱光強度を検出器72で検出し、該検出結果を用いて前述の測定装置1の場合と同様にして測定が実行される。
【0068】
図7は、本発明の実施の第5形態である測定装置80の構成を簡略化して示す系統図である。本実施の形態の測定装置80は、実施の第1形態の測定装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態の測定装置80において注目すべきは、ベータ線式吸収法を用いることによって浮遊粒子状物質の全質量の測定が可能に構成されることである。測定装置80は、捕集チャンバ27内に、捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3を挟むようにして対向して配置されるβ線照射手段であるβ線源81と、β線源81から出射されて捕集フィルタ4上の浮遊粒子状物質3を透過したβ線の透過度を測定するβ線検出器82と、β線検出器82が検出した信号を増幅するβ線検出器用増幅回路83とを備える。β線検出器用増幅回路83の増幅出力は、演算回路12に与えられる。
【0070】
β線式吸収法では、捕集フィルタ4上に捕集した浮遊粒子状物質3に対してβ線源81からβ線を照射し、β線検出器82によって検出されるβ線の吸収量から下記式(13)に基づいて浮遊粒子状物質3の質量を求めることができる。なお、式(13)中の質量吸収係数kは、β線源に固有の値で浮遊粒子状物質の種類には無関係であるので、β線量を検出することによって浮遊粒子状物質の質量が求められる。
I=Iexp(−kχ) …(13)
ここで、I:捕集フィルタおよび浮遊粒子状物質を透過したβ線量
:捕集フィルタのみを透過したβ線量
k:質量吸収係数(cm/mg)
χ:浮遊粒子状物質の質量(mg/cm
【0071】
したがって、本実施形態の測定装置80によれば、浮遊粒子状物質3中のEC、POMおよびHOの定量分析に加えて、浮遊粒子状物質3の全質量の測定も可能である。
【0072】
図8は、本発明の実施の第6形態である測定装置90の構成を簡略化して示す系統図である。本実施の形態の測定装置90は、実施の第1形態である測定装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0073】
測定装置90において注目すべきは、補修チャンバ91が分析容器を兼ね、減圧手段および加熱手段を備えないことであり、捕集チャンバ91の一方の側にサファイアレンズ37と光源9とが装着され、捕集フィルタ4を介し、サファイアレンズ37と光源9とに対向する位置である他方の側にサファイア窓38と分光器10とが装着される。
【0074】
したがって、測定装置90では、捕集チャンバ91内で捕集フィルタ4上に捕集された浮遊粒子状物質3を、減圧および加熱処理することなく、捕集されたままの状態で測定を実行する。
【0075】
減圧および加熱処理を行うことによって、揮発性物質であるPOMおよびHOを確実に揮散させてECを高精度で測定できるけれども、POMの組成があまり変わらずに、一定のものが含まれる所であれば、減圧および加熱処理を行うことなく、POMのm(POM)、HOのm(H2O)、ECのm(EC)を求めることができる。ε(4.0,POM)=0、ε(4.0,H2O)=0なので、予め求めておいたε(4.0,EC)より、式(4)を用いて、m(EC)を算出することができる。式(1)〜式(3)に、算出したm(EC)と、予め求めておいたε(2.92,EC)、ε(3.1,EC)、ε(3.3,EC)とを代入することによって、m(POM)とm(H2O)との関係式になるので、前述した方法と同様にして、m(H2O)とm(POM)とを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の第1形態である浮遊粒子状物質の連続測定装置1の構成を簡略化して示す系統図である。
【図2】検出器11によって浮遊粒子状物質3の透過光から検出される光光吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の実施の第2形態である測定装置50の構成を簡略化して示す系統図である。
【図4】本発明の実施の第3形態である測定装置の光源51まわりの構成を簡略化して示す図である。
【図5】光源51を備える測定装置において検出器11で検出される吸光度を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の第4形態である測定装置70の構成を簡略化して示す系統図である。
【図7】本発明の実施の第5形態である測定装置80の構成を簡略化して示す系統図である。
【図8】本発明の実施の第6形態である測定装置90の構成を簡略化して示す系統図である。
【符号の説明】
【0077】
1,50,70,80,90 測定装置
2 浮遊粒子捕集手段
3 浮遊粒子状物質
4 捕集フィルタ
6,73 容器
7 減圧手段
8 加熱手段
9,51 光源
10 分光器
11,72 検出器
12 演算手段
13 メモリ
21 巻戻リール
22 巻取リール
25 ダクト
26 分級器
27,91 捕集チャンバ
30 捕集ポンプ
33 光源点灯手段
34 真空ポンプ
37 サファイアレンズ
38 サファイア窓
81 β線源
82 β線検出器
83 β線検出器用増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項2】
大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を予め捕集した捕集フィルタを内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項3】
大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過した光を受光して吸光度を検出する検出器と、
検出器によって検出される吸光度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項4】
検出器が、
複数の波長の吸光度を検出する検出器であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項5】
大気中で浮遊する粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分を測定する浮遊粒子状物質の測定装置において、
大気中で浮遊する粒子状物質を捕集する浮遊粒子捕集手段と、
浮遊粒子捕集手段による浮遊粒子状物質の捕集位置へ連続的に送給される捕集フィルタと、
連続的に送給される捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質を内部空間に収容する容器と、
容器の内部空間を減圧する減圧手段と、
容器を介して容器の内部空間および内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を加熱する加熱手段と、
容器の内部空間に収容される捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質に向けて光を照射する光源と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質によって散乱される反射散乱光を検出する検出器と、
検出器によって検出される光強度から浮遊粒子状物質中の元素状炭素、有機炭素および水分の量を演算する演算手段とを含むことを特徴とする浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項6】
光源は、捕集フィルタ上の浮遊粒子上物質に向けて波長が1〜10μmの赤外光を含む光を照射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の浮遊粒子状物質の測定装置。
【請求項7】
浮遊粒子捕集手段によって捕集フィルタ上に捕集された浮遊粒子状物質に対してβ線を照射するβ線照射手段と、
捕集フィルタ上の浮遊粒子状物質を透過したβ線を検出するβ線検出器とを、さらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の浮遊粒子状物質の測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−162343(P2006−162343A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351503(P2004−351503)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】